三丁目のミケネコさん 2021-09-10 12:59:26 |
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(何処か清々しく見える相手には、もう先程迄の表情の曇りは感じない。あれほど暗かったのに、もう呑気に欠伸まで出来てしまうとは。その切り替えの早さには驚くばかりだが、正直正体を明かした後、警察に突き出されなかったという事実が一番の驚きであった。クラスメイトである故の罪悪感なのか、そもそも本人にそのつもりはあるのか。理由は想像もつかないものの、ライバルであるコイツは想像以上に変な奴かもしれない。それだけは確信した。)
はぁ?
…どうせロクなことに使われなそうだから嫌だ。
(昨日は写真のせいで惨敗したと言っても過言ではない。戦闘時の写真を撮られただけで痛いのに、通常時の姿も撮られてしまえば何をされるか分かったもんじゃない。
相手の提案に眉を寄せ、断固拒否の姿勢を見せる。)
えー…そんなこと言わないでさー
1人で映りたくないなら一緒に映ってあげるから!
(断固拒否の姿勢を見せる相手に、まぁまぁと言いながらにじり寄る。目的は大方、彼が想像している通りなので嫌がるのも当然だろう。しかし、隠し撮りをすると言う所までは思考が回っていないらしい。
家族や親しい友人にすら言えない秘密を抱えるというのは何処と無く孤独感を味わう。その為本音を言えば、バレたからとは言え大きな隠し事1つ無いだけで気持ちが楽になる。例え相手が敵であろうと、クラスメイトにも変わりはないのだから。しかし、軽蔑されるだろうから本人には絶対に言えないが。)
『おはよー………何してんの?
…てか、あんたら昨日から妙に仲良しだね。
2人揃って午後の授業いなかったしさー』
( 彼を追いかけ回し制服を掴もうとしたその時、教室の扉が開き、友人が登校してくるや否や、騒ぐ2人の様子を見て呆れたように上記を述べるのであった。)
そういう問題じゃ__って、
コイツと仲良くなった覚えなんてないから。
(一人で映るのが嫌だから一緒にだとか、そういうことではない。見た目は只の携帯でも、変身道具であることに変わりもないし、きっと此方にとって余計な、大迷惑な機能もわんさか付いていることだろう。だから一人でも二人でも、写真として収められる事が大問題なわけで__。
彼女の友人にはきちんと訂正を入れておく。あっちはどう思っているかなんて知らないが、正体がバレたところで敵なのは変わりない。変な誤解なんてされたらたまったもんじゃないと、首を横に振った。)
あはは、そう見える?
昨日はほら、いつも通りサボってただけだって
…それよりさ、聞いてよ!
(友人におはよう、と挨拶をすれば呑気に笑いそう応える。写真の事は諦めたのか、彼から身を離せばそのまま友人の元へと駆け寄り他わいも無い会話を始める。こうしていれば何処にでもいる女子高生になれるのだ。
しかし、真面目な生徒とは言えないもので、いざ授業が始まれば、殆どは窓の外を見て耽っているか居眠りをしているかのどちらかである。細かくいえば、特定の敵だけを追いかけるのではなく、小さな事件や犯罪においても出動する事が多いため、学校側からして見ればサボり常習犯の問題児だろう。勿論、学校側から家へ連絡されない訳もなく、手のかかるやんちゃな娘として生活するしかない。
特にこの日は、大半を寝て過ごし時間が過ぎていくのであった。)
(何時も通りの面白味のない授業を受けて、気付けば時計の針は下校時刻を指していた。一つ欠伸を溢して通学鞄を肩に掛け、教室を出る。
誰かと帰るつもりも無いので一人廊下を歩いていると、自然と耳に入ってくるのは噂話。「誰々が誰々のことを好き」だったり「テストが散々だった」なんて日常的な会話から、「昨日も出たんだって、ラブフラワー!」など、アイツの話題も山程聞こえてくる。携帯のニュースだって駅前での一件がトップ記事になっていたし、嫌でも目に入ってくる、耳に聞こえてくる宿敵の名前は正直聞き飽きた。
こんなに注目され、信頼という大きなプレッシャーを抱えて日々暮らしている彼女は一体どんな気持ちなのだろう__。
考えようとして止めた。何故肩を持つようなことをしようとしたかは自分でも分からない。小さく息を吐いた後、ぼそりと呟いた。)
……魔法少女も楽じゃないんだな、
…あ、早瀬じゃん。
( 職員室から戻り、鞄を手にすれば跳ねるようにして廊下を進んでいく。1日居眠りをしていた為担任からお叱りを受けていたようだが、反省している気配は特に無い。
ふと、目前に彼の姿が目に留まる。知り合った途端によく会うように感じる、といったところか。軽く肩を叩き上記を発せば、此方にまで届く噂話に耳を傾ける。)
……ふぅん、やっぱりラブって有名人なのね。
( そう呟きながら鞄を肩に掛け直す姿は、どこか他人事で無関心のようにも感じる。そして平然と隣を歩いている事にも何も感じてはいないようだ。)
何、友達と帰ったんじゃなかったの?
(教室に彼女は居なかった為、既に友人と帰ったものだと思っていた。馴れ馴れしく肩を叩く相手にちらりと視線を向ければ平坦な口調でそう述べる。
噂話は彼女の耳にも届いていたようだ。自分の事である筈なのに、こんなにも他所事の反応が出来るものだろうか。自分のような悪役ならまだしも、正義のヒロインという称賛されるべき立場ならもう少し得意気になってもおかしくはないと思うのだが。)
あー、みんな部活とかあるから今日は別なの…
それに、私は職員室で先生とデートしてたから。
( 大きく伸びをしながらそう答えれば、歩きながらもグラウンドで部活動に勤しむ他生徒達を眺める。本来なら自分も運動部に入りたかったが、そういう訳にもいかない。まぁ、部活動に入るよりも遥かな運動量をこなしている事になるが。
そして、先程まで説教されていた事をわざわざデートなどと称し “眠かったんだから仕方ないじゃんね” なんて笑って見せた。 )
デートって…それは春風の自業自得だろ。
疲れてんのは分かるけど。
(デートとは名ばかりで、きっと実際は説教でも食らっていたのだろう。簡単に済ませられるような話ではないのに、今こうして笑っていられるなんて。メンタルが強いのか余程怒られるのに慣れているのか。
何してるんだよ、と呆れる反面どこか同情するような気持ちもある。まあ昨日はあれだけの接戦だったのだ。たった一日で疲れが取れるわけがない。
じと目で相手に視線を送った後、また直ぐに他所を向くと小さなフォローを入れた。)
……… … 。
…ね、早瀬、ちゃっとさ私に付き合ってよ。
( 自業自得だと言われれば、まぁね、と再度笑って見せる。しかし、その後小さく呟かれた言葉に思わず相手を見つめてしまう。“優しいところあるじゃーん” といつもの調子で返したくなったが、きっとまたウザがられてしまうだろうとその言葉を飲み込んだ。
だが、その代わりに他所を向く相手の顔を覗き込めば、何を考えているのか遊びに誘い出した。)
は?……付き合うって何処に?
(突然黙ったかと思えば何を言い出したんだコイツは。顔を覗き込んできた相手と目があった瞬間に眉をひそめた。
これでも一応敵なんだが…、そんな事を一切感じさせない相手の誘い方。切り替えの速さというかなんというか……ある意味尊敬すべき場所ではあるのかもしれない。暫く悩んだが、話くらいは聞いてやってもいいかと言葉を返した。)
私の暇つぶしに。
さ、行こ行こ!
( 彼の言葉を聞くや否や、悪戯っぽく笑いながら背を押し、小走りで学校を後にする。行き場所は特に決めてはいないようだったが、半強制的に近くの商店街へとやってきた。様々な店が立ち並ぶ中、一度前を通り過ぎたアイスクリーム屋に戻りソフトクリームを2つ購入した。)
あんまりさ、こうやって友達と出歩くことって出来ないのよね。ほら、なんて言うか…遊びに集中できないし。
でも、今は不安の種が目の前にいるから、ずいぶん楽ね。
(購入したうちの1つを相手へ差し出せば、上記を静かに述べる。長時間友達や家族といても、どうしてもアラートが鳴らないか、奴がやってこないかが気になり、会話にも身が入らないのだ。…湿っぽく話しているようだが “でも” と続けられた言葉は本心に違いはないが、明らかにからかっているようである。)
っ、おい!
(抵抗する暇もない。相手の勢いに乗せられて気付けば商店街のど真ん中。普段なら有り得ないような成り行きに自分でも理解が追い付いていない。何をしているんだろうと冷静になる隙もない。ただ相手の背中を追っていた。)
____、
こっちは邪魔者が目の前にいたら好きに暴れられないっての。
(いつの間にか自分が友達としてカウントされているような気がする。"友達になった覚えはない"と何時ものように突っぱねることは出来たが、それを話す相手からは何処か寂しさも感じ取れ、つい口にするのを憚られてしまった。"あの"姿ではないから、まだ悪の道に身を落とす以前の感情が残っているのかもしれない。
それを隠す為か、拗ねたように口を尖らせると貰ったソフトクリームを一口齧る。)
あら、ご名答ね、それが狙いだもん。
それに、連れ回して体力削れば一石二鳥ってやつよ。
( 相手の言葉に、ニカッと笑うと得意そうにそう言ってソフトクリームに齧り付く。半分はそれも本心だし嘘は付いていない。それにしても、勢いで付き合わせてしまったがこの状況は自分でも妙だと思う。お互いに正体がバレてしまって弱みを握りあっている、それでもお互いにしか分かりえない事もある。なんとも言葉では形状しがたい気持ちだ。)
変なこと聞くけど…早瀬はさ、“正義”になりたいって思ったことある?
( 通り過ぎゆく店々を眺めながらソフトクリームを頬張り、ふと、上記を述べた。特に深い意味は無いのだが、そう訊ねてしまった。彼が強く意図して悪になったのか、そうでないのかは分からない。
サクッとコーンを噛む食感と音が頭に響いた。)
なりたい……ってより
俺は、俺が正義だと思ってるよ。
(相手の方には顔を向けずに、前を向いたまま答える。何故自分が此方側にいるのか、その理由を事細かに話す気も無いが、ただ何の理由もなくこんなことをしている訳でもない。
端から見れば…勿論正義は彼方、魔法少女側にあるのだろうが、果たしてそれは本当の正義なのか。
自分にだってそれ相当の信念がある、それを噛みしめながら、小さくなったコーンの欠片を口に放り込んだ。)
…そっか。そうよね。
( 顔は前を向いたまま視線を隣へと移せば、相手の言葉に静かにそう頷く。
周りの印象や評価がどうであれ、皆、自分の感性を持って生き、行動している。それは、自分も彼も変わらない。肝心なのは多分、自分がどう思うかだ。寧ろ、信念でいえば自分よりもきっと彼の方が強いのだろう。そんな強い意志を阻止せんとばかりに立ちはだかる自分は、彼にとっての悪だ。
弱い頭で難しいこと考えても分からないわね。と笑えば、もう1つ齧りつき、それとなしにすれ違う人々を目で追ってみる。)
……じゃあ春風は、なんで魔法少女してんの?
俺が関わってるならまだしも、他の事件なんて、別にお前が動かなくても警察が勝手に動くだろ。
(暫くの沈黙の後、彼女にそう聞き返してみる。今こそ自分のライバルは彼女__ラブフラワーだが、アスタロッドとして動き始めた当初は毎度毎度警察が対抗してきていた。いつからか彼女が現れるようになり、次第に警察も介入しなくなっていったのだが…。
本来ならこれは警察の仕事。幾ら手がつけられないからといって、魔法少女が全て担う義務はなにもない。魔法少女になることを拒否して、普通の女子高生として生活することも出来た筈だ。
それに、噂によれば彼女は、自分以外の事件や犯罪にも関わってるらしい。それこそ警察に任せておけばいいものを…。
自分にとっては無駄でしかない行為、それを進んでやる彼女の意図がどうしても分からない。)
…うーん、何でかなぁ。
ぶっちゃけ、魔法少女とか興味あった訳でもないし。
あの格好、正直恥ずいしね。
( 彼から問われれば、ソフトクリームの最後の1口を食べきり、モグモグと口を動かしながら考える。しかし、首を傾げて肩を竦めれば出てきたのは曖昧な言葉だった。
魔法少女になったのは偶然といえば偶然だ、携帯を手にして変身してみれば、それは全く知らない世界に立ったようだった。未知の力に戸惑いながらも、気が付けばニュース記事を飾るほどになってしまっていた。
制服越しにそっと携帯に触れれば、でもね、といつもの笑顔で続ける。)
私は真面目でも優等生でもないし、何も出来ないけど
ラブは出来ることもたくさんあって、人の役に立てる子だから…出来ることはやろうって思うのかも。
それに、ラブだからこそ助けられる人も居るんじゃないかなって。
( そこまで言えば、何だか自意識過剰のようにも聞こえて少し照れくさいのか、頭を掻く。
この力は、本人次第でどんな事にも利用ができる。勿論、悪用することだって簡単だ。でも、キラキラとした世界は綺麗で楽しくて、自分は皆が喜んでくれるのが嬉しいんだと今考えれば思う。)
……とんだ親切心だな。
(返ってきた答えは、想像とは違うものだった。自ら魔法少女になることを望んだ訳では無さそうなのに、それについて話す彼女は何処か輝いているようにも見える。此方に向けてきた笑顔からは、魔法少女としての大きな誇りも感じ取れた。
"そんなものは戯言だ"、"下らない"、敵であるあの時のように、厳しい言葉で一蹴することも出来たが、何故かそれはしなかった。
ふーん。自分から聞いておいて、どうでも良さそうな反応を返す。ぼそりと上記を述べた後、彼女をサッと一瞥して宙を見つめた。)
んー、というより、負けず嫌いなだけかも?
( 助けられる人は多く早く助けたいし、もしそれが出来なかったならとても悔しいと思う、と顎に指を当てもう1度考えれば、軽いテンポで上記を述べる。)
というか、早瀬もわりと親切よね。
なんだかんだ話してくれるし
( 再度横目で相手を見れば、そう言って笑いかける。ほぼ強制的に連れてきたとはいえ、ソフトクリームも受け取ってくれたしこうして会話をしてくれる。意外といえば意外だったなぁと呟けば、通りがかりにゲームセンターを見つけ、これまた相手の背を押し連れていこうとする。)
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