三丁目のミケネコさん 2021-09-10 12:59:26 |
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──…早くその子を離しなさい、アスタロッド!
( 自身が友人の元へ駆け寄る前に奴が彼女を担ぎあげてしまえば、一定の距離を保ちつつ相手と向き合い、強い口調で言葉を放つ。
正直、友人との関係は今日の一件で気まずくなったし、彼からの提案を不意にしたことでこの関係がすぐに修復することはない。それでも、自分にとっては大事な友人に変わりはなく、どうしたらよいか思考をフル回転させる。
そうしていると、だんだんとパトカーのサイレンが近づいてきているのに気付きハッとする。民間の学校が巻き込まれたことで警察もやってきたのだろう。
警察に介入されれば、生徒への被害を考慮して自身の動きも制限されかねない。その前に友人を助けなければ…。
もう一度膝をぐっと曲げると、相手に向かって真っ直ぐ飛躍し、近距離から目を眩まそうとフラッシュ攻撃を繰り出そうとし)
(( 気が付けば2年も月日が経ってしまいました…。突然お返事が返せなくなり申し訳ない思いと共に、久しぶりに戻ってくると、誠に勝手ながらまた2人に会いたくなって更新してしまいました。。
お相手様がまだいらっしゃるか分かりませんが、もしいらっしゃいましたらどれだけ嬉しいか…))
(遠くから聞こえてくるサイレンの音に小さく舌打ちを。これは魔法少女との戦いであり、外部からの余計な介入は邪魔以外の何者でもない。後ほど纏めて始末してしまえばいいとしても、警察の存在は多少なりともこの戦闘に支障をきたす。ここは早めに決着をつけた方がお互いのためだろう。
そんな中で、折角たった一人を犠牲にするだけで全てが丸く収まる選択肢を示してやったのに――この魔法少女はあっさりとそれを拒絶した。
どちらのほうが犠牲が少なく済むかは一目瞭然の筈。しかし奴はこの人質を助けるため、現在進行形で此方を狙っている。
相変わらずの正義感。だが相手側から近付いて来たことをいいことに、何か行動を起こされる前にと至近距離で一発蹴りを)
そんなに大事か?この人間が。
お前は全校生徒の命を賭けてまでコイツを助ける道を選ぶ?
((反応が速すぎて引かれてしまったりしませんでしょうか…。お久し振りです。そしてお帰りなさい。
いつ何があるか分からない時代ですし、そう気落ちなさらないでくださいね。お元気そうで安心致しました。久々に目にした名前のトピに驚きはしたものの、個人的にすごく印象深い2人でしたので、こうして再びお会いできてとっても嬉しいです、!
此方はいつでも続きを紡ぐ準備は出来ておりますので、余裕のある際にまた覗いて頂けばと思います。))
(自ら近付いたものの、相手からの一撃を受けてしまい再度後方へ。こちらから先制しようにも友人が捕まっている以上此方から迂闊に打撃はできず、かといって無闇に能力も使う訳にもいかずに、膝をついたまま相手の様子を伺う。
ちらりと校舎の方へ目を向ければ、教員や駆け付けた警察が避難誘導をとったのだろう、此方から見る限り人の姿は無くなっていた。だが、未だ校舎内を移動しているはずだし、あまり時間は掛けてられない。
そんな事を考えながら相手の言葉を聞くと、ゆっくりと立ち上がりいつもと変わらぬ明るい声で返答を。)
あら、勘違いしないでよね。
その子も、他の生徒も、みんな助ける…!
残念だけど、懸けるのは私の命だけだよ!
( 肉体的な疲労や痛みは勿論あるものの、その表情はそれを見せずに相手を真っ直ぐみては笑顔でそう言った。
そして、腰のベルトからステッキを取り出せば、その先端からは鞭のようなものが細く長く現れる。まるで光の粒子が集まって出来たようなそれは、相手と一定の距離を保ちながらもその身を拘束しようと素早く振られ、僅かな隙を生み出さんとしている。)
((まさかお返事頂けるとは思っておらず、とても嬉しい限りです!お優しい言葉までありがとうございます。
ぜひぜひ、続きを共に紡がせてくださいませ。
改めまして、よろしくお願い致します!))
なんだ――と、
(一点の曇りもない、吐き気を催すほどの義侠心。綺麗事だと嘲笑う暇もなく粒子のリボンは一直線に此方へ伸び、自身の胴へと巻き付いて締め付ける。普段ならこのくらい簡単に躱せる筈だが、人質を取ったお蔭でかえって反射神経が鈍った模様。魔法少女を追い詰める切り札は、いつしか己への足枷に変化していた。
こうなればもうこの女子生徒に用は無くなった。お荷物と化したその身体を振り落とすように宙へ放り、動きが制限されるなかで悔しげに相手へ鋭い視線を向ける。
あの清々しい笑みは己の不快感を増幅させるばかりで、このままでは本当に――魔法少女の宣言通りに事が運んでしまう。
今もなおぎりぎりと身体に纏わりつく金色は一切緩むことなく、下手に動けば無駄に体力を消費することは明らかだった。いつの間にか野次馬諸々生徒の姿も消えており、そいつらを狙うことでこの場を混乱に陥れることも不可能。圧倒的不利な現状からどう動くのが最善か、脳内であらゆる仮説を組み立てつつ、少しの油断も許されないと真っ直ぐ相手を見据えて)
( 相手の姿をリボンが捉え、そのままこの手で身柄を拘束しようとした瞬間、捨てるように放られた友人の姿を見て思わず身体が反応してしまう。
手にしていたステッキを手放し、持ち前の飛躍力で友人の元へと飛び出せば、間一髪でその身体を両手で受け止めて転がるようにして受け身を取る。手放したことにより、相手を拘束していた粒子のリボンが緩み、その輝きは瞬く間に消えてしまう。
友人の体重を支え受け身を取ったことで体力の消耗に拍車がかかり思わず息が上がるが、相手の拘束が解けてしまった以上、傍に友人を静かに寝かせると休む暇もなく相手の方へもう一度飛躍を。
それと同時に、手放してしまったステッキを拾おうかとも考えるが、距離的にも動作的にも現実的ではない。
その為、相手にそのまま突っ込んでいけば、再度蹴りを繰り出し、尚も高い声音で語りかける。)
…ッ、あら、いつの間にか2人きりね。
また仲良くデートでもしましょうか?
、ふざけたことを言うな!
("2人きり"この一言がトリガーとなったのか突如蘇る放課後の記憶。一瞬動揺した様子で瞳が揺れるも、間髪入れず飛んでくる攻撃により現実へと引き戻された。
限られた魔力を有効に使うためにも直接的に体力を消費する肉弾戦は避けたいところ。ステッキが相手の手元から離れた分、再び拘束系の攻撃が続くとは考えにくい。下敷き程度の簡易的バリアで足蹴を受け、その反動を用いて魔法少女とある程度の距離を取る。考えたくはないが――最悪、逐電という選択を採るとしてもこれが一番だろう。
キンキンと脳内で反芻する彼女の声をかき消すように声を張り上げた。一刻も早く決着を付けなければならないのに、只でさえ耳障りなそれに精神まで掻き乱されては堪ったものじゃない。珍しく冷静さを欠いた様子で不快感を顕にし、その元凶である相手に向け黒光りする光束を放ち)
そんなに、怒らなくてもいいじゃないッ、ツレないのね…!
( 一瞬、相手が動揺したように見えたが、自分の蹴りが上手くはいることは無く、バリアで防がれるとまたも距離を取られる。
自分自身の体力も残り少なく、酸欠になりそうな頭で追撃の方法を必死に考える。だがその時、背後で呻き声のような声を聞くと、地面に横たわっていた友人がどうやら目を覚まそうとしているのか小さく身じろいでいるのが見える。
彼女が目覚める前に決着を付けたいが、それも時間切れのようでまたも彼女が目を覚ますとこの状況にパニックするに違いないし、彼に再度目をつけられてもおかしくは無い。
そんな事を考えて一瞬彼から離していた隙に、此方に向かって黒光が放たれ、即座に避けるべく身体を跳ねさせ側転を。そのまま動きを止めることはなく、尚も身じろぐ友人を抱えると、酷く痛みだした右手に若干顔を顰めながら、その手で大きく指を鳴らす。
大きな花が相手の足元に咲くと、その花は爆発することはなく、まるで花粉を飛ばすかのように濃いピンクの霧が瞬く間に周囲に広がる。攻撃性はなく目眩しに使う手だが、友人を避難させる為にその間に屋上へと飛躍する。
さっと屋上から周囲を見渡せば、辺りは警察や消防に包囲され、警察官が校庭へなだれ込んでいく様が見えた。)
――ッ
(攻撃は当たらなかったものの確実に体力は減らせた筈。これで形勢逆転か、更に追い打ちを掛けるべく、友人諸共吹き飛ばすつもりで片手を突き出した――ところで、突如足下に開いた巨大な花弁。そこから放たれた濃霧によって刹那、視界が薄紅色一色に染まる。
体感的にその濃霧自体に殺傷能力は無さそうだが、如何せんタイミングが悪すぎた。霧が晴れる迄の数十秒の間に例の友人含む魔法少女の姿は跡形もなく消え、その代わりに鬼の形相で此方へ向かう警官らを視界に捉える。戦いの強制終了を意味するそれは、残された採るべき選択肢が一択に絞られたことも表していた。
もうあまり考えている時間はない。即席の閃光を発し周りの目を晦ませれば、テレポートの要領でその場から姿を消した。
残り僅かな魔力を使って転移した先は校舎裏。短距離の移動とはいえ相当な体力を消費したようで、変身が解けると同時に膝から崩れ落ちる。幸いにも校庭やその周辺からは死角に位置しているらしく、大きな音さえ立てなければそう簡単に見つかることも無いだろう。
大きく荒れた息を整えるよう校舎に凭れ掛かるも、嫌でも耳に入ってくる校庭の喧騒。その中には教師陣の必死な注意喚起も含まれているようだが今更避難した生徒達に紛れる気は起きず、あの魔法少女の眩しい笑顔を思い出しては宙を睨んだ。)
(相手がテレポートで姿を消してから数分後、校庭に集まる警察官に囲まれている魔法少女の姿があった。
友人を警官に引渡し救急車に運んだ後、現場をそのまま離れるわけにも行かず、被害状況などの確認に協力していたようだ。
だが、まさか相手がクラスメイトで、最初は口裏を合わせて行ったものだとは言い出せるはずも無く、真実を言えば相手をすぐさま捕まえられるかもしれないが、自分の正体がバレるリスクも遥かに高く、思わず言い淀んでしまう。
結局、決定的な事を伝えることはなく、この喧騒の中ではとある男子生徒と女子生徒が避難していないことに学校側も把握しきれていない事だろう。ましてや、その2人が騒動の張本人とは知る由もない。)
…………。
( その後、警察との仕事を終え、なんとか避難した生徒の中に紛れて家に帰れば、その日の内から学校が戦闘に巻き込まれたと大々的にニュースで取り上げられていた。
SNS等では誰かが撮った動画や写真も出回った上、 生徒が1名人質に取られ気を失う自体に加え、犯人を捕まえることができなかった事など、当事者である彼の事に加え、魔法少女側への非難の声も殺到していた。
翌日の朝からも同じようなニュースが流れる中、テレビのリモコンを手に取るとそのまま電源を切り、痛む右手の包帯を外してゴミ箱に投げ捨てた。
昨日の今日でまだ警察が調査を行っているため、学校は臨時休校。特に行くあても無いが、パーカーのポケットに財布だけを突っ込み家の外へ。しかし、こんな時でも例の携帯は首からぶら下がったまま。
ふらふらと散歩をしながらなんとなく商店街へ足が向くと、あのゲームセンターに立ち寄って、2体のマスコットキーホルダーがあったクレーンゲーム台の前で立ち止まる。
既に別のグッズが並んだ其れをぼんやり見つめると、小さくため息をついて頭をかいた。)
(騒動から一晩明けた翌日のこと。スマホを開いて勝手に飛び込んでくるネットニュースは殆どが自分や魔法少女のことで、然程興味もなさそうにそれらを一読すれば添付されていた画像にも目を落とす。何処かのテレビ局が発表した記事なのか、視聴者提供の言葉が添えられたそれには己の変身後の姿がばっちり捉えられており、思わず苦笑をこぼした。
出来るだけ手掛かりは残さない主義とはいえ、こうも大衆の目に触れてしまえば拡散も已む無いか。あーあ、半ば諦めたような声色で一人呟いては画面をスクロール、そして次に液晶へ映し出されたのは、今回の騒動を大袈裟に誇張したような憶測や偏見に塗れたフェイク記事だった。信憑性を持たせる為か記事内でSNS上での呟きも多数引用されていたが、その殆どが魔法少女側を批判するようなもの。幾ら対象がライバルとはいえ傍観者の立ち位置で好き勝手放言を吐くその様子はあまり気分の良いものでは無く、自然と眉を顰めた。矢張りこんな世界は早く壊してしまった方がいい。
寝癖直し程度の身支度を済ませ私服姿で学校へ。態々休校にする程の大捜索。警察の捜査状況を把握するために「忘れ物を取りに来たんですけど」なんて適当な理由をつけて校内の侵入を狙ったが、見事に門前払いを食らってしまった。下手に食い下がって疑いの目を向けられては元も子もないと、ここは大人しく引き下がることにする。この様子じゃロクな証拠も掴んでいないようだし、普段通り放置しても問題ないだろう。
さて、予定より大幅に時間が余ってしまった。このまま帰宅するのはなんだか気が引けて、暇潰し代わりにゲームセンターへ。入店してから十数分、一通りの筐体を見て回りそれなりに金銭も使ったところで――視界に映った見覚えのある背格好に思わず立ち止まる。
他人のフリで素通りしても良かったが、そう神妙な顔をされては意識しない方が難しい。足音を立てぬよう静かに距離を詰めれば少々揶揄うような口調で)
元気ないね、魔法少女さん
あら、何言ってるの?私はいつでも元気いっぱいよ!
…って言いたいところだけど、寝不足なの。
( 突然背後から揶揄うような言葉を掛けられれば、ピクりと肩を跳ねさせて其方を睨む。相手が誰だか分かると、一度呆れたようなため息を。そして、無理やり作ったような明るい声音と笑顔で一瞬揶揄いの言葉に便乗し、次の瞬間にはまたため息をひとつ。
昨夜は色んなことを考えていたせいで頭が冴えてしまいあまり眠れず、おまけにあれだけニュースで騒がれてしまっては意識せずにはいられない。勿論、寝不足だけが今状態の根本的な理由にはならないが…。)
あ、そうだ。
アンタ、あの後も居ないこと気付かれてなかったよ。
どんだけ普段から存在感無いんだよって感じ。
(大きな欠伸をして、パーカーのポケットに両手を突っ込めば、思い出したように笑えば揶揄い返すようにそんなことを言って。
仕事を終え他の生徒と合流した時、当たり前だがみんなパニックになっていて、教員も対応に追われ細かなところまで気を配る暇なんて無かっただろう。)
いいんだよ、そっちの方が都合良いし。
(クラスメイト含む他人との関わりは今後の活動に支障が出るからと、此方へ向けられた笑みを一瞥した後にそう淡々と返す。しかし幾ら正体を明かし合った仲とはいえども、現に目前の相手には色々と狂わされているのだが――明確にそこに気付くのはもう少し先の話。
言い方から察するに、相変わらず彼女は戦闘後も最後まで学校に残っていたのだろう。お蔭で自分が教師からお咎めを受けることは無さそうだが、それを伝える言葉の節々から普段のような覇気は感じられなかった。本人は寝不足だと片付けていたけれど、今朝例の記事を読んでいたこともあり、理由は安易に想像がつく。
騒動が騒動とはいえ、ここまで大々的にあらゆるメディアで魔法少女が取り上げられたのは初めてだったような気がする。更にそこへ部外者から好き勝手言われてしまえば相当なストレスだろう。精神状態を見定めるべく、不意にその顔をじっと覗き込んでみた。そして、まるで年頃の苛めっ子を彷彿とさせる悪戯っぽい笑みを浮かべれば)
今なら簡単に倒せそうだな。
(相手から帰ってきた言葉には、それはそうだ、と乾いた笑いを返す。自分も彼のように他者と程よい距離を保ちながら目立たぬよう生活していれば、今回のようにはならなかったのでは、と思う。元はと言えば、私生活で悪目立ちしている事が仇となり、彼にあんな提案をさせてしまった。
まぁ、学校が巻き込まれるのはどのみち起こりうる事だったかもしれないが、今回の原因は間違いなく自分自身。報道にあった批判も全て自業自得なんだと思う。)
…──アンタに倒されるなんて真っ平よ。
(悪戯っぽい笑みを見れば、「うるさい」と笑い上記を述べれば小突き返す。本当にその気があるのなら、有無を言わさずとも変身して襲ってしまえば良いものの、きっと、彼は自分でも気付いていないほど優しい面がある。勿論、そんなことを言ったら臍を曲げそうなので絶対に言わないが。
一度背筋を伸ばして大きく深呼吸をすれば、彼の腕に自分の腕を絡ませて強引に歩き出し、ゲームセンターを後にする。)
朝ごはん、忘れてたからお腹空いちゃった。
どっかファミレスでも寄ろ。
?!、ちょっと待っ――!
(昨日の戦闘が響いているのかなんとなく街を襲う気にはならず、その代わりにと偶然見掛けた魔法少女を適当に揶揄ったところで今日は帰るつもりだったのだが。瞬く間にがっしりと拘束された片腕とどこか身に覚えのある展開に嫌な汗が背中を伝う。決定事項とでも言わんばかりに迷いなく歩みを進めるその様子を見るに、矢張り拒否権はないらしい。有無を言わさず押し寄せる怒涛の展開にはもう身を任せるしか選択肢が残っておらず、諦めたように溜息を吐いた。
ゲームセンターを出て一番に視界に飛び込んでくるのは幾つもの飲食店が並ぶ大通り。平日の街中は想像以上に人通りが多く、休校になった影響か通行人の中には同年代の男女の姿も散見される。
が、未だ解放されることのない片腕のせいで正直それどころではなかった。正義と悪、そんな特別かつ特殊な関係とはいえ、なんなんだこの距離感は。
自分が下手に騒ぎを起こさぬよう監視するためか、男女二人で街を歩くことに対しての周りへのカモフラージュか。そもそも彼女本人にそういった意図があるかどうかも知らんが、余計な誤解を産みかねないことには変わりない。クラスメイトに目撃されていないことを切に願いながら足を進める。)
……俺、これでもお前の宿敵なんだけど。
そんなこと分かってる。前も言ったでしょ、隣にいてくれた方が安心だって。
これで逃げられないわよ!…なんちゃってね。
(大人しく、というよりも諦めたように連れ立って歩いてくれる相手の言葉にはふふ、と悪い笑顔を浮かべながら返答する。不安の種が隣にいれば安心だと、前にも言った覚えがあるなぁ、なんてぼんやり考える。と同時に、宿敵だという関係性を無しにしたところで、急に女子から距離を詰められても迷惑か、と思案する。だけど、今はただ、なんとなく誰かの腕に縋りたいだなんて、そんな胸の内はかっこ悪くて絶対に口には出せない。
揶揄うようにして明るく言葉を付け加え、ぎゅっと捕まえた腕を抱き締めるが、その直後にはするりと解放して。
また、ファミレスとは言ったものの、周りを見れば同年代の姿も随分と増えていて。そんな中、中高生に大人気なファミレスに入ってしまえば更にクラスメイトに目撃される可能性は高くなるわけで。しかも、彼とは最近親しげに映っているが為に、彼も友人に目をつけられていたばかりだ。彼もきっと、迷惑に違いはない。
目的地のファミレスの前まで来たものの、そこで歩みを止め、珍しく自信なさげに視線が泳ぐ。普段ならあまり周りの目なんて気にしないのに。
胸の節々にチクチクと刺すような痛みを感じれば、其れを誤魔化すように、突然自分の頬を両手で挟み込むように勢いよく叩いて。相手に笑顔を向ければ気分やな提案を再度して。)
やっぱ気が変わった!散歩しながら帰ろー
(お昼時も近いからか、向かった先のファミレスはそこそこの賑わいを見せていた。外まで漂うレストラン特有の食欲をそそる香りに釣られ現在進行形で通行人が店内へと吸い込まれていく中、入口を前に足を進める気配のない隣へと視線を向ける。つい先程迄冗談を飛ばしていたのが嘘のように、どこか思い詰めた表情を見せる彼女。"入らねーの?"そう訊ねようと口を開いたが、ぱんと頬を叩く音と相手の提案によってそれはかき消される。
気紛れにころころ変わる意見と向けられた若干のぎこちない笑顔。違和感を覚えてファミレス店舗へ視線を向けると、窓越しに既視感のある顔がいくつか見えた。ぱっと名前は出てこないけれど、確かクラスの女子生徒に同じ顔が居た気がする。つい最近別のクラスメイトから彼女との関係を指摘されたことも鑑みるに、まさか彼女はそれを危惧して――?
分かり易い奴だと思った。あの勢いを貫いて無理にでも自分を連れて行けばいいものを、突然そんな優しさを見せるから。悪いがその笑顔で騙されるほど勘は鈍くない。)
…へたくそ
(短く息を吐いて、ぼそりと呟いた。そして徐に相手の片手首を掴めば、了承も得ずにつかつかとファミレスとは反対方向へ足を進める。普段振り回される側としてこのくらいの報復は許される筈だ。
行先も告げず黙々と歩いて到着したのはカラオケボックス。二人分の受付を済ませ、割り当てられた個室へと彼女を押し込むと備え付けのソファに腰を落とす。要は人目のつかない場所に移動できれば良かったわけで、尚且つカラオケはファミレスのような本格的な食事とまではいかなくとも空腹を埋めるくらいならどうにかなるだろう。机上に置かれた広告やキャンペーンなどの紙の束からフードメニューを抜き取ればそのまま相手へ差し出して)
腹減ってんだろ、好きなもの頼めば。
え?へたくそってなに……ッ!──
(短く吐かれる言葉になんの事だろうかと首を傾げたその時、相手から手首を掴まれそのまま正反対の方向へと引っ張られ、体の向きがぐるりと変われば付いていく他無く。
途中途中で声をかけるものの相手は何も言わず口を噤んだままで、暫くこのやり取りが続いた後、此方も諦めて黙り込んでは腕を掴まれたまま連行されていく。
一体どうしたのだろうかと思案していると、たどり着いたのはカラオケボックス。何故、と首を捻っている間にあっという間に受付を済まされると、目の前に差し出されたのはメニュー表。それを受け取った後にやっとのことで思考が合致すれば、目を輝かせて声音を弾ませる。)
なるほどね!早瀬、天才じゃーん!
(もしかして、自分がファミレスに入るのを躊躇してしまったから逆に気を使わせてしまったのだろうか、と内心考えるも、わざわざこんな所に連れてきてくれるなんて思ってもみなかった為に少しばかり顔がニヤついてしまい。メニューが相手にも見えるように少し身体を寄せれば「早瀬もなんか食べる?」と笑顔で聞いてみる。)
(現状を理解した途端にワントーン上がった彼女の声色と緩む口許。どんな形にしろ魔法少女に肩入れしても今後苦労するだけだと昨日の戦闘で身に染みた筈なのに、ほんの気紛れでここまで連れてきてしまう己の行動力には我ながら反吐が出る。とはいえ、仮にあの場で彼女の提案を呑んでいたとしても、妙な居心地の悪さに耐えられずにきっと同様の選択を採っただろう――そう半ば強制的に理由付けをして、無理矢理自分を納得させた。それでも消化しきれない複雑な感情は、今回だけは見なかったことにする。)
……昼はここで済まそうと思ってる、けど。
(どうにかして気持ちの整理をつけた後、折角だからと彼女の広げたそれを覗き込む。時計の針は既に12時を回っていたが、そこまで空腹でもないため軽食でいいだろう。ざっとメニュー全体に目を通せば彼女を一瞥して淡々と。心なしか口調が冷たいのは一定の距離感を保つためなんだろうが、今更感は否めない。)
取り敢えずフライドポテトでいい。春風は?
え、それだけでいいの?
私はねぇ…、あ、たこ焼き美味しそう!唐揚げもいいなぁ。一応サラダも頼んどこ。ねぇねぇ、ポテトと唐揚げ1個ずつ交換しようよ。
( お昼を済ませると言いながらフライドポテトのみの注文を聞けば首を傾げつつ、相手からの質問に頭を悩ませながらあれもこれもと食べたいものを挙げていって。ちなみに、サラダに関しては気持ち程度に栄養を考えた結果らしい。
おまけにポテトも食べたいのかシェアを提案しつつ、それなのに相手の返事も聞かず次の瞬間には部屋に備え付けられている受話器を手に取り注文を済ませていた。
注文を終え受話器を元の場所に戻すと、再度隣へと戻ってきて、カラオケに来たのに歌わないまま帰るのも癪だ、とデンモクを引き寄せて画面を操作する。)
早瀬って、カラオケとか行くイメージあんまないけど、実際どうなの?
(何を選曲しようかと頬杖を付き尚も画面に目を向けながらも、なんとなく気になったのかそんな質問をする。口に出したようにあまりイメージはないが、先程受付を済ませていた時なんかはスムーズだったし、と思考を巡らせながらちらりと顔を上げて彼の方へ視線を移す。)
クラスの付き合いで何回か行ったくらい。よくあるだろ、親睦を深めるための――とかなんとか。それ以外は全く。
(過去のカラオケ歴といえば、最低限の人間関係を得るため――下手に孤立して悪目立ちするのを防ぐため、学期初めにクラスの一軍と呼ばれるような面子が企画する「親睦会」を謳ったカラオケ大会に参加したくらい。あくまでも目的は参加したという実績を得ることなので、適当な理由をつけて途中で抜け出してしまったのだが。思い返してみると、こうした"付き合い"以外での入店は初めてのような気がする。個人的には寧ろ、手際よくフードの注文を終えていた彼女の方が行き慣れているように感じたけれど。
何か歌うらしくデンモクを眺める相手の隣。歌う気はさらさら無い様で、現在流れているCD販促映像をBGMに視線を彼女から室内へ移す。と、机上に置かれた空のグラスが目に入った。最初に説明は受けたものの、すっかり存在を忘れていたドリンクバー。丁度喉は渇いていたし、誰にも聞こえない言い訳をして、グラス二つを手に取れば)
飲み物取ってくるけど、何がいい?
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