名無しさん 2021-08-27 23:46:26 |
通報 |
帰ってこないおじいさんを永遠に待ち続けるおばあさん。
おばあさんは毎日をいつも通りに過ごしながらおじいさんの帰りを待っていた。
いつしか酷く衰弱し、おばあさんは息絶えてしまった。
それでもおばあさんはおじいさんを待ち続けている。
おじいさんは不治の病を患っていた。
順調に回復していたその病は急に悪化してしまった。
だが、その事実はお婆さんには告げなかった。
おじいさんはおばあさんを悲しませたくなかったのだ。
おじいさんは山へ「死ばかり」に出かけた。
この山はいつも芝刈りに出かける普通の山ではない。
呪われた山と言われる、一度登れば決して下山できないと言われる山である。
おじいさんはこの山でひっそりと死のうと考えた。
そうすればおばあさんの悲しむ顔を見ながら死ぬことはないと。
最後に見るおばあさんの顔は笑顔のままが良いと願ったのである。
しかし、残してきてしまったおばあさんを思い続け、山の奥深くで死んでしまった後も
おじいさんはおばあさんを思い下山しようとしている。
ある日おじいさんが山を彷徨っていると、目の前に大きな桃の木が現れた。
背丈は天まで届くほど、果実は人間の子供がすっぽり収まってしまうほど大きな桃だった。
古来より桃には不老長寿の力が宿るという。
老いた体でひとり残してきてしまったおばあさんへの償いに、山に囚われてしまった自分の代わりにと、おじいさんはもいだ桃に想いを託し、里へと繋がる川に流した。
それが呪われた桃であるとも知らずに。
おばあさんが虚ろな目で川を見ていると、上流から大きな桃が流れてきた。
よく見るとその桃の、いや"それ"の周りの水は黒く汚れて濁っている。
正常な判断が出来る者であればそんな桃など取ろうとは思わないだろうが、おばあさんはおじいさんを待つことにもう疲れてきてしまっていた。
自分が霊になった後も待ち続ける意味などあるのか。そもそもいつまで待ち続ければいいのか。本当に自分はおじいさんから愛されていたのだろうか。
こんな思いをするくらいなら、いっそ…
その桃をおばあさんは手に取って家に持ち帰った。持ち帰ってしまった。
一方各地では、異変を察知した者たちが動き出していた。
狼と共に森を駆け狼と共に戦う者 その強さはまさに伝説
いたって普通の少女 ー 赤ずきん
かの竜宮城よりの唯一の生還者にして大海原を住処とする乙姫の加護を受けた者 ー 浦島太郎
不思議の国と現世を駆け巡り相棒のウサギと共に数々の事件を解決してきた英雄 ー アリス
最も小さく最も勇敢にして最も強靭な心を持つ その身体に秘める力は未知数 ー 一寸法師
ガラスの靴を身にまとい魔法の力で神秘をまとう 約束を胸にいざゆかん ー シンデレラ
各地の英雄たちがおばあさんの元へゆく
伝説が今、動き出す
一方その頃
鬼ヶ島でも英雄達が集いし事を
鬼ヶ島七代目頭領が知り
妖怪、八百万の神々、
各地の総大将を集めていました
三大妖怪三大総大将
河童の総大将、天狗の総大将、
そして鬼の総大将、
神々からは
東の総大将青龍
西の総大将白虎
南の総大将朱雀
北の総大将玄武
これらが鬼ヶ島に集いつつある
そして今
妖怪の姫、九尾の狐
神々の母、天照大神
が目覚めつつあった
みんな桃の中の者が生まれてしまった際の対策を考えておりました。
おばあさんはもうなにも考えないようにしていましたが、その桃が明らかに異様なものであることには気づいていました
とんでもない呪いのこもったその桃を持っているときにふと考えました
これを使えば 世界を作り直せるかもしれない
そしたらまた おじいさんと 会える…?
呪いの桃を自身の願いのために使おうとおばあさんは考えました。おばあさんに迷いはなく桃を割ろうと大きく振りかぶり全身の力を込めて斧を振るいました。
しかし
その夢が叶うことはありませんでした。おばあさんが桃を割ろうとした時
世界は闇に包まれました
各地の人々は何が起こったのかわけが分かりませんでしたが、これだけは分かっていました。
何かとんでもないことが起ころうとしている、と。
各地の英雄や神々は桃から産まれるものとの戦いに備え各々が準備を進めていました。
皆が最大限の力を以って戦いに臨みます。
逃げ惑う人々。力を解放する戦士たち。桃を食べるおばあさん。
それぞれの想いが交錯し、今ここに戦いの火蓋は切って落とされようとしていました。
おじいさんは何もできない自分の無力さを悔やみ、ただただ桃を食べるおばあさんを眺めておりました。
太陽が消え、世界が闇と恐怖に包まれてもなお、おばあさんはおじいさんを待ち続けました。
国中の鬼が徒党を組んだという噂も、各地を賑わす英雄達の冒険譚も、おばあさんの耳には届きません。
呪いの桃をすっかり食べきってしまった今、おばあさんにできることは暗い川で洗濯をし、おじいさんの帰りを待つ日常をただ繰り返す事だけなのでした。
変化も救いもない無限地獄のような日々。
しかし、ある日おばあさんは気がつきます。
自分のお腹が大きく膨らんでいることに。
お婆さんは膨らんだお腹をさすりながら、ある決意を胸に家へと帰って行きました
この子にたっぷりの愛情を注いだ後、自分もお爺さんのもとへ向かおう…そして、お婆さんは産婆さんを呼びました、呼んでしまいました
トピック検索 |