暗殺者ちゃん 2021-08-25 08:06:43 |
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( 帳に溶け込む様な暗闇の一角で然計り近付いて漸く、少年の眸子に浮かぶ微々たる感情が覗き込めた。今この時、死を覚悟した様な瞳が見詰める先は私でも天井でもなく、何処か遠い未来や過去に思いを馳せている様だ。しかし追憶も一瞬の事だったらしく、光も差さぬ灰色の瞳と視線が交わる。__暗殺者とは、シリアルキラーとはまた異なる存在だ。獲物を狩る事を職務としているだけで、その行為自体に快楽や幸福感を抱いてなど居ない。その筈なのに。こうして男と向き合って初めて、死の間際に出て来る言葉が楽しみとさえ思ってしまっている。それはもしかしたら、少年とも呼べる目前の男がかんばせに浮かべた、人間らしくも人らしからぬ強情な感情故だろうか。形良い唇から溢れ出す言葉は、最後の結論を口にしないままで虚空に消えて行く。その先に続く言葉など態々口にする必要すらない。今ここで依頼人や暗殺ギルドを裏切って彼の手駒になれと言うつもりなのだろう。頭の中に思い描くは嫌がらせの様に甘味を押し付けてくる、それでも嫌いになれなかった様なマスターの顔。同じギルドに所属していた仲間とは呼べぬ商売敵たち。忌々しくも私に依頼してきたあの髭面。悔しい事に、彼等を思い浮かべたとしても、口から出て来る答えに迷いも怖れもなかった。己では気付かぬうちに上がった口角、挑むが如き目付きのままで柔らかなシーツに沈み込んだ少年を捉え )
別件依頼を受けるなとは、契約書に書かれていなかったからね。そのターゲットが互いだとしても。……まあ、死んだら依頼は無効だし、契約主を殺すなとも言われてはいない。暗黙のルールってやつかもしれないけど。__でも、そのタブーを犯してなお素晴らしい席を用意してくれるんだろう、殿下?
(/お久しぶりです!お返事頂けて嬉しい限りです…!それからお優しい言葉まで掛けていただき、有難うございます。お言葉に甘え、続きから再開させてください。ペースはまちまちになってしまいますが、ネロくんの事も背後様の書く素敵な文章も大好きですので、これからもお相手していただけますと嬉しいです! )
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