一両で買える酒があるらしい__。
そう誰かが口火を切ったことで、僕は人間の道を踏み外してしまったんだと今は思う。
「っ……か、返し「うるっせぇぞ!!金ならたんまり払っただろうがっ!!」
どこからか流れ出たその噂は酒癖の悪い人間の耳に入り、あの日の晩僕は命よりも大切だった“寿老酒”を持っていかれてしまった。
残った寿老酒は腰紐で吊してある瓢箪の中のほんの少しだけ。
だから僕は決めた。このお酒は人間ではなく巷で噂の妖たちに売ろうと。
その変わり金は受け取らず、一杯一“縁”としてこの酒を売ろうと。
僕はどの道先が短い。両親もいなければ身寄りもない。面倒くさい人間関係はまっぴら御免だった。
ならば先が長い…例えそれが妖だとしても、このとき一心不乱だった僕はそれでも良いと思っていた。
僕がこの世で生きていた事実を心に留めてくれる者が居ればそれだけで楽になる…と。
だからこの先波瀾万丈な人生が己に待ち受けていたことなんぞ知るよしもなかったのだ____。
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___今しばらくお待ち下され___