De Paris 2021-05-22 20:38:22 |
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画家:ハリー・スコット
世紀末芸術の波に挑む画家志望の青年。25歳。パリ画壇で活躍する新鋭の画家たちに強い憧れを抱き、一年程前にロンドンからパリのモンマルトルへ移住したイギリス人。制作した作品は未だ殆ど売れないまま、故郷の兄から仕送りを受けて生活している。貧しい生活を強いられていながら自尊心だけは高く、自身の信じる芸術を疑わず突き進む強い意志を持つが、結果が伴わない今はただの高慢に過ぎない。
〈容姿〉くすんだダークブロンドの短髪を適当に整え、瞳は濃いオリーブ色で生来目つきが悪い。痩身で背丈は175cm程。所々絵の具の付着したシャツと、サスペンダーで留めてある拠れたズボンが普段着。
Case 01
──1897年9月 パリ18区 小さなアトリエ
( 朝っぱらから賑やかでどこか猥雑とした様相のルピック通りを抜け、小道を進んで石畳の急な坂を登りきれば愛すべきオンボロの安アパートが見えてくる。いつもの事ながら情けなく上がった息を落ち着けて最後の砂利道を進み、漸く辿り着いたアパートの自室の扉を開けばむわりと絵の具の匂いが鼻をつく。今朝出かける前に換気をするのをすっかり忘れていた。買ったばかりのバゲットとリンゴをローテーブルに転がし、最後に今日付の新聞、ル・プティ・ジュルナルを取り出して表紙に目を走らせる。そこに描かれるのは固く手を結ぶこの国のフォール大統領とロシアのニコライ二世、その間には両者を取り持つ女神。そしてタイトルは〝同盟〟を意味する〝Alliance!〟。緊張状態が続く欧州情勢を今更憂うこともなく、思う事と言えば近いうちに戦争なんか起こらなければ良い、それぐらいのものだ。ふと壁掛け時計を見れば10時半を僅かに過ぎた頃で、人物画のモデルを依頼していた客人が来る約束の時間までもう半刻も無いことに気がつく──その為の準備を録にしていないことにも。ナイフで半分に割ったリンゴを齧りながら部屋の隅に立てかけてあるイーゼルを片手で運び、机の上に放りっぱなしの酒瓶をキッチンの隅に寄せて置き、続いて画材を取りに行こうとしたところで玄関の戸を叩くノック音が響いた。ウソだろ参ったな、とつい漏れ出た独り言の後に散らかった部屋を見渡して舌打ちを一つ。とても客人を招き入れられる状態ではないが、此方から呼びつけた相手を外で待たせるわけにもいかず、逡巡の末に渋々玄関のドアノブに手を掛け )
──どうも、随分と早いご到着でしたね。
(/気軽に募集したい&気軽にお声掛け頂きたくて設立したトピです。西洋のノスタルジックな雰囲気に触れたい時にどうぞ~! ※初回なので少々文章が長くなっておりますが普段はもっと短いです。短文からでも是非。)
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