下級妖怪 2021-05-06 19:39:12 |
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再び帰路に着きつつも、しばらくすればそのうち殺されているのだろうと周についてぼんやりと考えていて。同時に、本当なら私は今頃あの人に手を差し伸べてるとこなんだろうなぁ、なんて思いが頭の中をぐるぐると回る。環がそう思ってしまうのは、外来者に対する感情が好奇心を中心としたものだからだろう。
「……!」
そんな最中、突然誰かに触られたかと思えば、視界がぐるりと回転する。一体何事だと冷静に考える頃には、誰かが自分に頭を下げているのを何となく捉えていた。
「ああ、誰かと思えば、また貴方ですか。……なんて、そうお願いされてしまっては仕方ありませんね」
周の発言に目の前の男はさっきの彼かと認識を改めつつ、袖で口元を隠せば目を細めて。彼の言葉を一通り聞けば、わざとらしく溜息をつきながらも嫌味っぽくそう言うも、口元を隠すのを止めすぐに愛想の良い笑みを作れば「なんて、」と茶目っぽくふふっと笑い。周の懇請を受け入れた、ということなのだろう。
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