下級妖怪 2021-05-06 19:39:12 |
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「……!」
突然上がった女の声らしき悲鳴と大きな鈍い音。なんとなく何かがいる気配はしていたから、さほど驚くようなものでは無かったが、気を引き締めるには十分だった。
まあちょうど良い、返り討ちにしてやろう。そう殺意を心に宿せば忍ばせていたナイフに手を添えつつ、音のした方向へと足を運んで
「……。……死んでいる、だと?」
そこには倒れ伏している女の姿があった。見たところ人間のようである。
こんなところに何故人間が?と疑問を抱かずにはいられないが、それよりも疑問なのは、この女は一見したところ死んでいるようで──
「いや、生きている……のか?」
いやしかし、さっき聞こえて来た悲鳴が彼女のものでなければ、あの悲鳴について一切の説明もつかなくなってしまうだろう。そう考え、呼吸の有無を確認しようと顔を近づければ、微かに呼吸音が聞こえて来て。呼吸音などまさしく生きている証であろう、死人が出せない音の筈だ。
なんだか腑に落ちないような顔を浮かべながらも、怪訝そうな声でそう呟き
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