下級妖怪 2021-05-06 19:39:12 |
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「何でもない、気にしないで」
相手の燭手を見ながらも、僅かに目を見開く。自分の時と経緯がほとんど一緒だ。見た目は違えど、何か――説明し難いが、本質的に似たような何かを感じる。
しかし、自分と同じ境遇の者がこんな偶然に見つかるものだろうか。相手から見えないように、自身の持っている燭手を手繰り寄せるかのように自分の方へと寄せつつ、考える。突如出てきた動揺が増幅していくのを感じながらも、それを否定するように相手の燭手から視線を逸らしつつもそう言い
「危険があったらまた戻って来れば? ここ、誰も来ないし……これは万が一の話、だけど」
相手が元の場所とやらに戻ることは引き止めないものの、代わりにそんな話を持ちかけて。これで相手が戻ってきたら、自分と彼は同じような状況に置かれていると考えても良いかもしれない。自分がこの国の住民だろう人に見つかった時には、憎悪の籠った嫌な目で見られたものである。ともかくこれで一旦話は終わりだろうと、海の方へと戻って行き
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