下級妖怪 2021-05-06 19:39:12 |
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「──お待たせしました、もう中に入って大丈夫ですよ」と声を掛けられたのは十数分後。
にこりと穏やかな笑みを携えたまま言って家の中へと招くような仕草をする環にぺこぺこと「失礼します……」と俯きながらも環の家に入っていき。
そう言えば人の家、もっと言うなら女性の家に入るのは初めてでは、と気付いてしまい何だが変な気分になってしまう。どきどきと胸躍らせるも緊張して歩く姿はかちかちになってしまっていたが部屋を見た瞬に周は表情をなくしてしまう。
「……えっと」
喉から何とか声を絞り出す。環の部屋は、本当に生活しているのかってぐらいに物がなく、テレビに出るミニマリストのように片付いていて。もっと言えば殺風景で、想像していた女の子の部屋、とは思えない感じで黙り込んでしまう。
まあ、言って見れば女の子、ではなくそもそも論で人間ではないし、と整理をする周は笑いながら「わ、わぁー……綺麗ですね、えっと僕の部屋なんかごちゃごちゃ本とか散乱してますよ」と言い。
「環さんてお片付け上手なんですね、ほんと凄い。生活してるのかなって思うくらいで驚いちゃいました」
あ、っと出してしまった本音に心の中でああっと唸っているが周は笑顔でにこにこしていて。
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