下級妖怪 2021-05-06 19:39:12 |
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「ええ、まあ……貴方のような人間は、側にいて守ってあげなければいけない存在ですから」
環のその言葉に周は明らかに動揺してしまう。
「えッ」と短く声を上げ瞬きを繰り返せば不貞腐れたように口を尖がらせて不機嫌そうに眉根を顰める。
「………僕だって男です………気持ちは嬉しいですけど……環さんに守られてる素直に自分が格好悪くて何だか……嫌です」
小さな声でぼそぼそと呟く周は上目遣いに口角をふ、と上げている環を見つめ視線を落として。
「──さあ、着きましたよ」
真っ暗闇で自分の恐怖心を煽っていた道にも月明かりが差し込みはじめ、やっと周は周りを見渡せるようになる。月明かりに照らされた道はきらきらと光っているようで周は眼を見開いて、表情を綻ばせた。
澄んでいる空気を吸って吐き、深呼吸を繰り返す。風が、自分の頬を撫でる心地良さに目を伏せて木造の家が見え始めた景色に「あれが環さんのおうちですか……」と呟いてこれで一安心だとばかり環を一瞥して。
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