下級妖怪 2021-05-06 19:39:12 |
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心にも思っていないことをそれっぽく言うのは慣れている筈が、知らず知らずのうちに多少の緊張を覚えていたらしい。とりあえず鈍感な人で良かったと、すっかり騙されている相手を見ながらも内心少しばかり安堵して。ぽわぽわしている相手の様子を見つつ、僅かに目を細める。こうも簡単に誤魔化しが効くとは、やはり人間は馬鹿であるようだ。
「ええ、まあ……貴方のような人間は、側にいて守ってあげなければいけない存在ですから」
相手の言葉にふっ、とちょっとだけ口角を上げながらそう言って。狡猾な者が多いこの世界では、このような単純な生き物はすぐに喰われてしまうに違いない。それを防ぐためにも、自分は人間を守らなければいけない。まぁ、人間そのものに興味があるからというのも理由の一つ……いや、実を言えばそっちの方が大半を占めてはいるのだが。
「──さあ、着きましたよ」
そうこうしているうちに暗がりの道も終点が近づいてきたのか、月明かりが差し込みはじめ。木造の家が見えはじめれば、相手に向かってそう呼びかけて
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