下級妖怪 2021-05-06 19:39:12 |
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「チッ……くそ……どこだよ……ッ!!」
苛立ちから彼は舌打ちと拳を握り締める。
見知らぬ夜道に右往左往しながら必死に駆け抜ける。
アルバイトの帰り道、日々触れ合っている子猫を追いかけ、真っ赤な鳥居に吸い込まれるよう歩いたらこのありさまだ。潜った先は、昔のように着物を着た者達が行き交う屋台が並んだ大きな通り。
「マジで、……帰りたいのに………」
涙がじわっと零れてくる。
親とはぐれた迷子のようにとはいかないが声を押し殺しながら静かに涙を流し、しゃがみ込む。
不安で仕方がないのだが、助けを求められるそんな素直な性格でもない彼はふーっと息を吐く。
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