右半分、 2021-03-28 16:35:50 |
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( こんなにも、寂しい夜があるなんて考えもしなかった。いつも横にある生身の人間の暖かさを感じられないのは、慣れない上に泣きたくなる程に、冷たい。孤独な空間を誰かに無理して作られたような、自分の喉の奥に何かがつっかえる感じがする。ごくん、と唾を飲み込む。息苦しさから解放される方法が分からなくて、ただ、唾を飲み込むことしかできなかった。人間は対応能力が高くて、ほとんどは体が何とかしてくれている。だが、寂しさは身体でも埋めれないらしい。「寂しい」口にポロリと出してしまえば、ひゅるる、と何かが身体から抜けたように心が軽くなる。嗚呼、生きるのはこういうことなのだなと改めて実感もする。彼女は二度と帰ってこない、これは、何となく察しがついてしまう。俺の知らない場所で恋をして、恋人を作って、幸せになって、家庭を持って、息絶えて。何が、駄目だったか。なんて、分かりきったこと。自分なんて、消えてしまえ。顔を埋めていた枕に、生暖かい水が染み込む。それと同時に重たい瞼が閉じていく。依存するのは止めにして、自分だけの世界に潜り込んでしまおうか。そうすれば、きっと、俺の世界には君がいるはずだから。寂しくないように、撫でてくれた君の柔らかく小さな手を思いだしながら、静かな寝息と共に眠りについて。 )
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