夜が明けるその前に　（〆.）

ほんと、キザな言葉が似合うやつ･･･。俺はこの後拠点に行って、報告とかしたら帰ってくるよ。遠くなきゃ夕飯も食べられそうだけど･･･。

(魔法は解けたみたいだね、なんてむず痒くなるような言葉がかけられ脱力する。自分が言ったのでは格好がつかないというか言うのも難しいのだが相手はそれを難なくこなすのだからキザ、という言葉が似合うのだろう。コーヒーを用意してくれているであろう相手の近くによって手元を覗けば正解で、差し出されたカップを受けとった。コーヒーを啜りながら今のところ決めている予定を伝えれば夕飯は出来れば一緒に食べたいな、と呟いて。なかなかお互い時間が合わないからか一緒にいられる時間は少なく、休みも合わないことがざらでもっと触れ合いたいと少し下にある相手の頭に自分の頭をくっつけると溜息をこぼして)


(/悪い見落としてた。
こちらこそありがとう。俺だってお前のこと沢山知りたいと思うし、愛おしいって気持ちが溢れてくる。そのうち押し負けそうな勢いもあるけど、負けないからな。)

それ、褒めてる？…そうか、一緒に食べられると良いね。君が出掛けてる間、僕も料理でも習おうかな。そうしたら食事を作って君を待てる。

（キザな言葉を吐く事に慣れすぎて最早なんの抵抗も無い訳だが、脱力したように言う相手に呆れられている気しかしないと不服そうに尋ねて。相手にはこれからも胸焼けするような甘ったるい台詞をたくさんお見舞いしてやろうと思いながらコーヒーを渡し自分もそれを啜る。一度拠点に行ってから戻ってくると言う相手に頷いて、額同士をくっつけてマグカップを持っていない方の手で相手の髪を撫でると今日は一緒に夕食を楽しめると良いと思いながら。自分が料理を作れるようになれば相手に手間を掛けずに帰りを待つことができるのにと、料理教室にでも通うか家で練習するかしてみようかと口にして。）

（/ 気にしないで。そう言って貰えると嬉しい、宣戦布告だね。僕も負けないよ。これからも君とのやり取りが楽しみだ。）

褒めてる褒めてる。キザな言葉が似合う色男だよ、ほんと。･･･それいいな。どんな料理食べさせてくれるか楽しみだ。

(不服そうにしながらも額を合わせて頭を撫でてくる相手に微笑んでみせ。キザな言葉が似合う色男だと揶揄い混じりに言えば、自分が外に出ている間に料理を何処かで習おうかなと考えているようで自分が教えられない分相手の料理の腕が上がっていくのが楽しみで素直に口に出して。ちゃんと習うのなら間違ったことは教わらないだろうし、自分の持っているレパートリーとは違うものを習えて色々なものが食べられるかもと期待感が募った。しかしふと、料理教室だときっと女性が多いだろうし見た目のいい相手が料理を習うのは話題になるだろう。女性に囲まれて楽しそうにする相手の姿を想像すると眉を寄せて不満げに本音もこぼして)

でも、お前のことだから料理教室行ったらモテるんだろうな。それは少し面白くない気もする･･･。


(/ふは、俺も。ま、お前に食い尽くされないよう頑張るよ。じゃあ俺はこのへんで下がるな。また何かあったら何時でも呼び出してくれ)

…テオに言われると、揶揄われてるって分かっていても少し嬉しい。良いアイディアだろう、新婚の夫婦みたいだ。

（揶揄われていると分かっているのに、相手に色男だなんて言われると少し嬉しい気もする。不服そうな表情を浮かべつつも僅かに頬を染めるとそんな気持ちを口にして。相手が同意を示してくれると嬉しそうに表情を明るくして、料理を作って帰りを待つなんて新婚の夫婦みたいで憧れると笑って。ちゃんと食事を口にするようになったのは相手と出会ってからで味覚には自信が無いし料理だって相手と作ったオムライスぐらいしか経験がない。料理教室に通えば、そんな自分でも相手に美味しい食事を振る舞えるかもしれないとワクワクした様子を見せたものの少しして聞こえた相手の言葉に顔を向けると不満そうな表情を浮かべていて。瞬きをして相手を見つめると嫉妬とも取れる相手の反応に嬉しそうに笑うと、慰めるように相手の髪を撫でて顔を近づけて。相手が嫌なら行かないし、行く教室は相手が選んでくれても良いと候補を挙げては可笑しそうに笑って。）

大丈夫だよ、僕はそんなにモテないしきっと奥さん達しか居ない。でもテオが嫌なら行かない、それかテオが探してくれても良いよ。男向けの教室とか、年齢層が高めの所とか。

（/ 了解、またね。）

･･･クラウスが料理教室に行くのは嫌じゃない、だから俺が自分で安心できるとこ探してくるな。

(自分が仕事をしている間に料理を作って待っているのが新婚夫婦みたいだと笑う相手に自分も笑みを見せる。確かにそれはいい事だと楽しみになっていたが、つい不安を零してしまうと慰めるように髪を撫でて顔を近づけて自分に選択肢を委ねてくれた。確かに旦那さんがいる奥さんたちしか居ないだろうが女性の中に見た目のいい相手が居ればアイドルのような扱いをされてしまうだろうし、また今回のような勘違いを起こしたくはなく思わず口に出してしまったが相手がそう言ってくれるなら少し甘えることにした。料理を習うことには不安は無いのだが囲まれるということに不安を覚えたため、自分が安心できるところを探してみると伝えて)

選ばせてくれるんならクラウスはどこくらいからがいい？初歩的なことから教えてくれるところとか、一通りの知識と技術があるからすぐ料理を作れるところとか。

ありがとう、テオ。初歩的なことから教えて貰いたいな、子供向けの料理教室でも良いくらいだ。僕のはじめての料理はテオと作ったオムレツだから。

（相手が料理を習う事に理解を示してくれたことが嬉しくて表情を緩めると、教室を探してくれると言う相手に礼を述べて。もともと食事をすることが無かったため料理の経験は皆無に近いし、子供向けの親子で参加する料理教室くらいが自分のレベルに合っているかもしてないと肩をすくめつつ笑って見せて。しかしふと、楽しげな料理教室に自分が参加している様子を想像して表情が翳る。誰かのために美味しい食事を作りたくて参加している人や、料理が上手くなりたいと希望に溢れて参加している人、そんな人達の中に正体を隠した吸血鬼がいたらその幸せを壊してしまいそうな気がして。相手との暮らしがあまりに幸せで、自分も人間になれたような気さえしていたがあくまでも自分は人を何人も手にかけた吸血鬼だということが突然頭を過ってしまったのだった。急に怖くなって、自分はやはり外の世界に出るべきではないかもしれないと、話を切り上げようとして。）

…でも、やっぱり時間の確保が難しいかもしれない。まずは自分で練習してみるよ、それからにする。

･･･どうした突然。あんなに乗り気だったのに。

(男向けで初歩的なところから始められる教室なら探せば多めにあるだろう。ふむ、と頭の中にメモを作ってコーヒーを啜ればカップの中はカラになりシンクに置いた。さて、そろそろ着替えて行くかと考えていれば楽しげな表情から一変して表情が翳り、不安な様子の相手の顔が見えた。あんなに料理教室を楽しみにしていたのにどうしたのだろうと問いかけると、相手の不安を引き出せるよう先程相手がしてくれたように頭を撫でて)

……テオといると余りに幸せで、時々忘れそうになるけど僕は吸血鬼だ。人間と関わるべきじゃない。時々、幸せでいることは許されないんじゃないかって怖くなる。

（誰かの幸せを奪った自分が幸せでいる事に、時折胸が苦しくなるような嫌な感情に苛まれる。その正体が昔は一切持ち合わせていなかったはずの罪悪感だということも知らずにいたが、相手を始めとする人間と関わるようになりその優しさを知って初めて、かつて無慈悲にも人の命を奪った暗い影が付き纏ってくることを自覚した。相手の胸元に額を押しつけてそんな思いを吐き出しながら、あんなに楽しく話していたのに自分の不安定な心変わりのせいで空気を悪くしてしまっただろうか、相手に心配をかけてしまったかもしれないと、しょんぼりした様子で謝って。）

…ごめん、突然こんな話。

いや、大丈夫だ。そうだよな、お前にとっては不安なことが多いよな。

(相手からこぼれた本音にそうだ、相手は吸血鬼だったのだと改めて認識する。自分もつい相手がこれまで自分が憎んでいた存在で、人の命を軽々しく刈り取っていた吸血鬼だということを忘れていたが、しょんぼりと落ち込む相手の不安を聞いて受け止める。胸元に額を押し付けた相手の背中に腕を回し、優しく頭を撫でるとその髪に軽くキスを落とす。でもさ、と続けて自分の気持ちを伝えると柔らかく微笑んで)

でもさ、お前はその罪を受け入れて前に進もうとしているだろう。苦しい思いをしてでも変わろうと努力しているじゃないか。吸血鬼だから幸せになっちゃいけないなんて可笑しいだろう？吸血鬼だって幸せになっていいんだよ。

(少しでも相手の不安を取り除きたくて、その気持ちを共有したくて告げる。罪を犯しているから幸せでいちゃいけないなんて、自分だって同じだ。罪のない人を救うことが出来なかった、命を奪ったとはいえ吸血鬼を討伐した。自分も恨まれて当然なのだから。それに相手の言った言葉も気になる。人間と関わるべきじゃないなんて、自分はどうするのかと、相手の頬に手を添えて上を向かせると目を細めてくつくつと笑い)

それに人間と関わるべきじゃないなんて、俺と離れる気か？そんなの許さないからな。

──テオは、僕にとっては特別な人間だ。他の誰とも関わりを持たなくても、テオとは絶対に離れないって決めてる。

（自分を抱きしめながら紡ぐ相手に言葉はどれも優しく、胸の内に渦巻く漠然とした暗い不安が取り除かれて行くような気さえした。相手と視線を重ねると、自分にとって相手だけは他の人間とは全く違うのだと告げて、例え他の人間との関わりを絶ったとしても相手とだけは絶対に離れないと約束して。自分はいつの間にこれ程感情を持つようになったのだろうか。血を貰い受け人間の死になにも感じていなかったはずがいつの間にかこれほど臆病になっている。人間とも吸血鬼ともつかない自分が、今よりもう少し人間に近づいて幸せになる事が許されるだろうかと、相手の体温を感じながらぽつりと呟いて。）

…可笑しいよね、何も感じていなかった筈なのに。…正体を隠して人の中に紛れる事を、僕は許されるかな。

何も可笑しくないし、他の誰かが許さなくても俺が許すよ。何にも感じなかったお前が、こうして色んなことに感情を動かされてるのはとても嬉しいしな。

(相手から紡がれる独占欲に笑みを深めると相手を抱きしめる力を強める。相手と交わした約束通り、相手が周りと関係を絶っても自分とはずっと一緒だと相手の中では変わらない約束らしい。人とか関わりを絶って自分のことだけを見てくれているのは心躍る提案だったが、相手が相手らしく人と接して生活している姿を見れるのは別の嬉しさが混じっていて嬉しいもので、これまで何にも心を動かされなかった相手が自分のせいで悩む姿は優越感が味わえて好ましいものだった。だからこそ、その感情は可笑しいものでは無いのだと。人に紛れて生活していくことを自分だけは許すのだと、自分の考えを隠すことなく伝えて)

テオ……ごめん、ありがとう。やってみるよ、もう絶対に人を傷付けない事だけは約束する。

（例え多くの人に忌み嫌われ人に紛れることを許されなかったとしても、相手が許してくれるのならそれだけで心を強く持っていられる気がした。感情を動かされて不安定になるのも可笑しな事では無いと、自分を肯定してくれる相手の言葉のひとつひとつが不安から暗い所へ落ちて行きそうになる自分を救いそこから引っ張り上げてくれるような力強い物に感じられて。相手の言葉に頷いて顔を上げ相手を見つめる瞳は元の色を取り戻していて、相手に背中を押されたように頷いて挑戦してみたいと口にして。人間の世界に足を踏み入れても、決して人を無差別に傷つけるようなことはもうしないと改めて相手に約束しつつ相手の肩口に顔を埋め、自分に勇気をくれたことにもう一度礼を述べて。）

あぁ、そうだな。でも辞めたくなったらすぐに言えよ、無理してもいいことないからな。

(相手の瞳は不安な色を消していて、どうやら元気がでたらしい。それに安心して微笑むと肩に顔を埋める相手のこめかみにキスをして無理はしないように、と告げる。人と関わるのはいいがやはり限界を押してまで関わろうとするならば止めなければと思っていた。相手のことを抱きしめていればふと時計に目をやり時間を確認する。そろそろ家を出なければ帰ってくるのも遅くなると考えると「そろそろ着替えてくる」と告げて頭をひとなでしてから手を離して)

ん、ありがとう。無理はしないようにする。──そうだった、ごめん。

（相手の優しい言葉に安心した様子で頷くと相手のために料理を作れるように自分も頑張ろうと改めて料理教室に通うことを楽しみにして。着替えてくるという言葉に、つい相手の予定も忘れて自分に付き合わせてしまったと慌てて身体を離してリビングを出て行く相手を見送る。残念ながら今日は相手に料理を作って帰りを待つことは出来ないが、相手に怪我が無く無事に戻ってくるのを待っていようと思えばコーヒーを入れていたマグカップをキッチンに運び、マグカップを洗って）

大丈夫だ、すぐ戻るな。

(慌てる相手に軽く声をかけるとリビングを出て自室に行けば以前相手と買いに行った黒のハイネックニットを着、ズボンを穿き、鏡の前で身支度を整える。やはり胸元にネームタグがないと落ち着かない気分で、今日早めに帰れるのならアクセサリー店で調達してきてもいいかと考える。頭の中で予定を組み立てるとリビングに戻り、コート掛けから自分のコートを取ると羽織って)

･･･よし、じゃあ行ってくる。

行ってらっしゃい、気を付けてね。

（支度を終えた相手が部屋から出て来ると相手の元へと向かい、コートを羽織った相手に少し背伸びをしてキスを贈る。任務に向かう相手が今日も怪我なく無事に帰ってくる事が出来るようにと願いながら相手を見送って。──その頃、数日前に久しぶりにこの街に足を踏み入れた女の吸血鬼が一人。昔この街で出会った恋人と別れてからは寄り付く事も無く、離れた街で別の恋人との暮らしを楽しんでいた訳だがその恋人と別れたことでふとこの街が恋しくなって戻ってきたのだった。一般的に吸血鬼の被害に遭うのは女性の方が多かったが、夜の街で自身の美貌に釣られた男を獲物として捕まえる女吸血鬼がやってきた事で、ここ最近になって男性の被害者が増えているという報告が拠点にも上がっていて。）

ん、行ってきます。

(外に出ようとすれば相手からいってらしゃいのキスを受け、頬を緩ませる。それだけで今日も一日頑張れそうだと思えば、自分からも軽くキスをして手を振りながら外へ出た。明るい日差しと賑やかな人の声が聞こえてきて街の様子が伺えた。
拠点に行き、聖堂に足を運べば明らかに増えている男性被害者の数。じわじわと増える被害者の数に眉を寄せれば踵を返し、報告へと向かって。見慣れぬ女性の吸血鬼がいるため気をつけることと今日の任務地の説明を受ければ早々に拠点を後にしてシルバーアクセサリーの店に足を運び目当てのものを買い付ける。すぐに出来るようだが昼食でも、と用事を済ませていれば夕方近くになり頼んだドッグタグを受け取ってから1度家に帰って)

（相手を見送ってからは家で本を読んだり掃除をしたり少し昼寝をしたりと気ままに過ごし、夕方になって玄関の扉が開く音に顔を上げると読んでいた本を閉じてソファーから立ち上がり相手を迎えて。まだ満月まで少し時間はあるがこの所の街の状況はどうなのだろうか、今夜の任務も危険が無ければ良いけど、と相手に尋ねて。）

──おかえり、テオ。何か変わった事はありそうだった？

ただいま。なんか見慣れない女吸血鬼が出てきてるみたいで男の被害者が増えてきてるから注意しろだってさ。

(ただいま、と返すと近寄ってきた相手にキスを落としてからコートを脱ぎ、コート掛けに引っ掛けて。何か変わったことは、と尋ねられると男性被害者が増えていることへの注意喚起があったことを伝える。これまでも女性の吸血鬼は見てきたが数えるくらいしかなく、元々数は少ないのだろうと考えてはいた。きっと相手と自分は誘われても行くことは無いだろうと思っていつつも相手に軽く、気をつけろよ。と声をかけて。また、今日の任務地は家の近くであるため夕飯を一緒に食べられることを告げるとリクエストを聞いて)

あ、あと今日の任務はここの近くだから夕飯は食べていけそうだ。何か食べたい？

…確かにこの町では珍しいね。女性に対しては警戒心が無い人が多い、お酒が入ると尚更そうだ。だから飲食店なんかが並ぶエリアが狙われやすいと思うよ。

（相手の話を聞き、確かにこの町で女性の吸血鬼が狩をするのは珍しいと頷いて。そもそもの母数が少ないこともあり、女性というだけで吸血鬼ではないかという警戒心は抱かれにくい。狙われやすいのは、アルコールを摂取し幾らか気分が高揚していて、自分の美貌にも興味を持つ男性だろう。それを思うと出没場所は飲食店やバーの並ぶエリアに限定されるだろうと言いながら。今夜は一緒に夕食を取れると聞き嬉しそうにすると、相手の作る料理を思い浮かべる。かなり人間の食事にも慣れ、相変わらず相手と食べる食事、特に相手の手料理は美味しいと味をしっかり感じることができるようになっていて、いくつか候補を挙げて。）

テオのビーフシチューか…ロールキャベツも良いな、