さすらいの旅人さん 2021-02-27 21:41:52 |
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STORY.
親に捨てられ家を出て、行くあてを失った少女は奇妙な豪邸に迷い込みます。あれよあれよという間に仮面をした人物に促され、参加者だと間違えられた少女はドレスに着替えて豪邸の中へ。中で開かれていたのは仮面を付けた人々による舞踏会のようでした。
"お嬢さん、お相手が居ないのなら是非にわたくしと。"
"いいえ、わたくしの手をお取りください。"
何人もの男性が少女に目を付け、ダンスの相手をとせがみます。
迫る男の様子に恐ろしくなり硬直した少女。
すると背後からひとりの男が現れました。
「(失礼。)」
「─── すまない、待たせたね。」
「お、…遅かったじゃない。もう少し貴方が遅かったら、他の人の相手をしてたわ」
「それは困るなあ……おや、彼女に何か?」
少女の肩に手を添えてあたかも待ち合わせていたかのように振る舞い、それに感づいた利口な少女はぎこちない演技をして見せます。少女の肩に手を置いた男はその演技を少しばかり可笑しそうに笑っては、すぐ目の前の怪しい男たちへ低い声をかけると怪しい男らはそそくさと散らばっていきました。声色か気配か、どことなく安心できる声の主へお礼を言おうと振り向けば、言葉を発する前に唇に指先をあてられ、周りに聞こえないよう耳元で囁かれます。
「良くできました、利口な小鳥だね。でも、ここはお前の様な小鳥が囀る場所ではないよ、お家に帰って絵本でも読んでいなさい」
一瞬の事で、言葉を理解するのに数秒かかった少女が言葉の意味を理解した瞬間、思わずカッとなり精一杯の強がりで仮面の奥にある瞳を睨みつけると声を上げました。
「帰る場所がないんです、── なっ、何ならさっきの人達に買われたって構いません!」
「おっと、見かけによらず大胆だ。それ、意味わかって言ってる?」
「わかってるつもりです。」
「二言はない?買われたら二度と帰れないかもしれないよ。」
「帰る場所が無いといったはずです、帰りたいなんて言いません。」
「いいね、合格。じゃあ慈悲深い私が買ってやろう、可哀想な小鳥ちゃん。」
「えっ?あ、あの。わたし、頑張ります ... ?」
こうして自称慈悲深いという男に拾われた少女は男の家で家政婦として働くのでした。
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