少年D 2021-02-22 00:09:26 |
通報 |
>>28 / 轟 焦凍クン
( __足が止まった。彼の手を握って、その手を引いた筈なのに、共に走り出せないのはきっと彼が彼自身の足に力を入れているから。もしかして手を繋いだのが嫌だったのだろうか、そんな疑問が頭の中を渦巻いている中で放たれた彼の言葉。パッと顔を上げ、交差する視線。彼の真っ直ぐな眼差しに頭がくらくらした。心臓の遥か深くから、じんわりと溶かされていくような、焦がされるような。そんな感情が湧き上がり、彼の手を握る自身の手に若干汗が滲む。暫く言葉を発せないで居た、暫く身動きを取れないで居た。呼吸音の一つでさえも大きく反響したように聞こえる、瞬き一つする度に空気が歪んだように思える、それらはまるで自らの個性で形成された幻覚に、幻想に囚われてしまったみたいで。"音倉"、と自分を呼ぶ声が、大好きで。嫌っている筈の両親から授かった苗字が、彼に囁かれるだけで特別な意味を持つような気がして。風になって流れるその場の空気は、きっと相手が彼でなければ気不味くなっていた筈だ。目を伏せると、詩楽の長い睫毛がより強調される。言葉を紡ぐのは、案外簡単だった。頭の中で整理をして、決意をして、まるで歌を歌い出すように紡いだ言葉。自らの名に相応しい、そんな言葉の紡ぎ方。)
「__充分、なんだよ?充分焦くんは、僕を大切にしてくれてるよ。…小さい頃からずーっと。僕のこと、ちゃんと理解、してくれてるんだよ」
( 脳内で奏でられる音楽は、ドビュッシーの月の光。きっともう直ぐ月が顔を出す頃で、流れる空気も冷たくなってくる頃だ。けれど彼と自分の間に紡がれる旋律は、確かに温もりを宿している。それは幼い頃からずっと変わらない空気感。何処か不安げに、きゅっ、と結んで居た口も、直ぐに緩くカーブを描く。此れは彼と時を過ごすことで得た"本当の笑顔"。ずっと張り付く笑顔に囚われ続けていた毎日に、彼という色彩が加えられて、何時しか本心から笑うことを忘れていたことを、思い出した。彼のお陰で取り戻せた。自らの本当の笑顔、というヤツを。だからもう充分過ぎるくらい大切にされているのだ。彼の言葉に、彼の行動に、彼という存在に、何時だって自分は助けられてきたから。__それでも、彼を求めてしまう気持ちを、僕を愛さない神様はきっと許してはくれない。だけど好きは止められない。…止まらない。だから伝えなくてはならない、大好きな彼に。彼の幸せを願い続ける為に。)
「僕は、…大丈夫だよ。心配掛けちゃってごめんね…?
でも僕が毎日楽しいのは、焦くんのお陰なんだよ!…いつも、ありがとね。…ふふ、本当に焦くんは優しいなぁ、そういうとこ昔から変わらないね」
トピック検索 |