少年D 2021-02-22 00:09:26 |
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>音倉 詩楽 (/>>16)
真面目な事を言ったあとで笑われた時は、テンネンってやつを出しちまってるらしい。出してる自覚はねぇんだ、悪い…
(口にした言葉は心からの言葉であり続く言葉も至って真剣に答えたつもりであったが、我慢したが耐えられないと言った具合に笑われてしまった。何か間違った事を言ってしまったかとも思ったが、繰り返される言葉を聞く限りでは失言をしたという事ではないらしい。以前に緑谷や飯田にも同じ様に笑われた事があった。その時にも自分は真面目に答えていたつもりであったが何やら受け取り手は考えるものがあったらしく、そういった流れの時は必ず"テンネンが出てる"と口を揃えられたものだ。厄介な事にテンネンというものを出している自覚はなく、どんなものか得体も知れない為に上記を口にしては大丈夫かと心配の言葉を添えた。然しやがて一頻り笑い切った相手が涙を拭き、花が咲くように綻ぶ笑顔を視界に収めたところで自身のそんな話はどうでも良くなってしまうのだから我ながら単純な性格だなと思える。一一暫しの沈黙。気付けば辺りは程よい暗さに包まれ始め、眩い程に2人を照らしていた赤オレンジの夕陽は間も無く消えようとしていた。ふと、裾を緩やかな力でひかれる。随分と歩いた帰り道もあと僅かで終わり、そんな時間を引き止めるような一手だった。思わず足を止めて彼に視線を落とす。今度こそと開かれた唇。どうやら此方の意が伝わって、頼って貰えるらしい。応えるように黙って頷いてみせた。鳥が羽を畳む様な緩やかな動きで睫毛が伏せて、同じ様にゆっくりと揺れる肩をみれば深呼吸をしたのだと解る。心を落ち着かせてからするお願い事、勇気がいるものなのだろうか。どんな願い事がくるのか、様々な思考が渦巻く中で差し出されたペンダント。彼の口から零れ落ちたお願い事は想像をいい意味で裏切る様な、なんとも愛らしく、胸を擽られる様なそれだった。)
…そんな畏まって強請らなくても、おまえとなら何時でも出掛ける。写真も撮ろう。帰りには冷たい蕎麦も食いてぇ。
(緊張した様な、どこか張り詰めた様にも見える彼の表情に随分と勇気を出してくれた事が伺える。思えばこの学校に入ってから色んな事があったせいで、誘い難い雰囲気はあったのかもしれない。裾を掴む手に自身の手を重ねては、答えは簡単だ。目を細め緩やかなカーブを描いて少しだけ口角を上げつつ上記を口にした。幼き日の様に、2人で肩を並べて良く歩いた。色んな場所へ行った。そんな思い出を新たに作ること。想像しては胸のうちに込み上げたのは確かなる喜びだった。)
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