宿命　／　非募集　

えー、だって頭良い奴に頼んでも自分でやれって言われるじゃん。なー？お前のが一番借りやすいし。
(　呆れた様子ながらしっかり希望に答えてくれる彼に感謝しつつ、すぐに受け取る。優しいから甘えてばかりになっていることを他の幼馴染み女子たちに怒られることもあるけれど、それはそれ、これはこれ。部活動が忙しいのだから仕方ないだろう。毎日遅くまで練習して、ご飯を食べて。お風呂から上がった頃には睡魔に負けてベッドに寝転んでしまうのだから、宿題をやる暇なんてあるはずもない。まだ行きたい学校なんて決まっていないし、中学校は赤点がない。怒られるだけなら真面目にやる必要もない、なんて言ったら間違いなく説教コースだろうけれど。だから所謂エリートとは縁が遠いわけで、そもそも宿題を写す行為自体許されない可能性が高い。とすれば気兼ねなく頼れるのは彼である。幼馴染みとはいえ女子といたらひゅーひゅー、とからかわれるのがオチだから未来と咲も論外となる。「つーことで、これからも頼むわ」さりげなく今後も頼る前提であらことを堂々と示し。楽しいことだけを拾う耳は教師の放った"席替え"の言葉をばっちりとキャッチ。彼と近くになれればもっと貸し借りが楽になるし、何より楽しい。朝からやってくれたらもっと良いのだが、生憎それは五限の学活の時間に行われるらしい。「席替え、近くになれるようにまじないしとくわー」そろそろ朝の会が始まるだろう。さすがに彼まで巻き込むわけには行かないから、緩いノリで手をひらひらと振って自分の席へと戻っていった。　)