puu 2021-01-26 06:46:23 |
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第1章
「出会いは突然に 。」
もも 「すみません!降ります!」
いつもなら早起きして早めの電車に乗るのだが 、今日は寝坊をしてしまい混んでる時間帯の電車に乗らなければならない 。そのため 、苦手な満員電車に乗ることに… 。
乗る時も大変だが降りる時も一苦労 。まだ通勤の段階だがすでに 、帰りたいほど疲れる 。
周りの人々をなんとかくぐり抜けて 、会社の最寄り駅に降りた 。一息ついたところで会社へと思い足取りを運ぶ 。
パキッ
何か割れるような音と共に体勢が崩れる 。
? 「大丈夫ですか?」
後ろに倒れそうになった身体を支えてくれたのは 、若い男の子だった 。
もも 「す、すみませんっ!…」
慌てて自身の体勢を取り直し 、頭を下げた 。体勢を崩したのは履いていたヒールのかかと部分が折れてしまったようだ 。かなり履いていたがもう限界だったのだろう 。
だが 、ヒールが折れて転けるなんて 、しかも人通りが多いところで 、と考えるととても恥ずかしくなった 。
そのため 、一言発するのが精一杯で吐き捨てたあとは足早にその場を去った 。
?「ちょっ 、…行っちまった …」
アルバイトに行く途中の出来事だった 。目の前で倒れそうになった彼女を背中から支えるように咄嗟に抱えた 。頭で考えるより身体が勝手に動いた 。
抱えるなり彼女はとても驚いた顔をしていたが 、すぐに状況を理解したのだろうか自分に頭を軽く下げて足早に去っていった 。
彼女も去ってしまったし時間に遅れそうだ 、アルバイト先へ向かおうとした時 、
足元に軽い何かが当たった 。
チャリ…
?「ネックレス…?か、」
さっき 、彼女が落としていったものだろうか 。丸い形をした少し重みのある銀色に輝くそれを拾い 、後で交番にでも届けようと握りしめてアルバイト先へと足を運んだ 。
オフィスにつき 、同期や上司へ挨拶を済ませてお茶を口に含んだ 。仕事柄立ち仕事をすることがほとんどないのが不幸中の幸いだ 。仕事が終わったら新しいヒール買いに行かなきゃな … 、そんなことを考えている内に始業時間までもうまもなくだった 。
上司 「みんな 、おはよう 。」
毎朝行われる朝礼だ 。みんな上司の挨拶にきちんと返事を返す 。いつもなり業務内容などつらつらと説明後に業務に入るのだが 、今日は少し違った 。
上司 「今日は紹介したい人がいる 。入ってきてくれ 。」
上司が手招きする先から軽い足取りで入ってきたのは…
上司 「今日から3ヶ月間アルバイトとしてみんなを手伝ってくれる櫻井くんだ 。自己紹介よろしくね 。」
ハル 「櫻井 ハルと申します 。大学3年の服飾学部にてデザインなどについて学んでいます。少しの間ですが 、みなさんのお手伝いさせて頂きますのでよろしくお願い致します 。」
そう 、まさかの出会いに驚きが隠せなかった 。なにせ今朝私のことを助けてくれた彼だったのだから 。
上司は彼の自己紹介が終わるなり 、よろしく頼むよ と肩を軽く叩いた 。
私は今朝のこともあり恥ずかしさが残っているためこれ以上あまり関わらないでおこうと一足先にデスクに戻ろうとしたとき呼び止められた 。
ハル 「あの… 、さっき…」
彼が私の所まで走ってきたのだ 。もしかして 、先程のことをバラされてしまうのではないか 、そう思った矢先彼の口から`さっき`という言葉が盛れだした 。慌てて私は彼の口を塞ぐ 。
もも 「お願い…っさっきのことは黙ってて… 。」
彼にだけ聞こえるように小さな声で呟くと彼はポカンとしていた 。
上司 「なんだ 、君たちは知り合いなのか 。だったら話は早いね 、神宮寺さんに会社案内と教育係をお願いしようかな 。」
私たちが知り合いだと勘違いした上司が 、彼の教育係へと私を任命した 。冗談じゃない 、とてもではないが先程あんなことがあった私が彼に何かを教えるなんて… 、。そう思った私は断ろうとしたが
ハル 「はい 、僕もその方が嬉しいです 。」
私の言葉を遮るように彼が 、私が教育係になることを希望したのだ 。上司もうんうんと頷き 、私が教育係になることは確定だろう 。まだ受け入れられていない状態だが時間は待ってくれず業務開始となった 。
ハル「余計なこと言っちゃいました?」
私の顔を覗き込むなり少し意地悪そうに笑みを浮かべながら聞いてきた 。わざとだ 、これから朝のことをネタに喝上げかなにかされるんだ 。そう思うとこれから3ヶ月が本当に憂鬱だ 。仕方ない 、3ヶ月さえ乗り切ればなんとかなるのだから 。がんばろう … 。そう覚悟を決めた時気づいた 。
もも「大丈夫ですよ、…あれ?、」
自分が決心する時や落ち着く時に首元につけるネックレス 。それがないのだ 。一気に冷や汗が出て手が震える 。あれは命の次に大事なものといっても大袈裟ではないくらい大切なものなのだ 。
ハル「そういえば 、さっきこれが落ちてたんですけど…違いますか?」
焦っている私に手にプラプラと光るものを持ち彼は聞いてきた 。その光るものは今 、この瞬間私が求めていたものだった 。
もも「あっ…!、拾っててくれたの…?」
思わず泣きそうになる 。そんな私を見て彼は慌てたようすでそのネックレスを私に渡した 。手に渡った瞬間 、安心した 。とても言葉では言い表せないほどに 。彼はまた言葉を放つ 。
ハル「とりあえず 、会社案内してくれませんか?」
先程とは違い 、優しく微笑むように 。私は小さく頷き 、彼を案内し始めた 。
第2章 「先輩とバイトとネックレスと」
驚いた 。先程 、走っていった彼女は今自分がこれからお世話になる会社にいたのだから 。彼女も少し気まづいのだろう、あまりこちらとは目線を合わせてはくれない 。
だが 、先程拾ったものが彼女のものならばきちんと渡さなければいけない 。この様子だと自分のことをきっと避けて 、渡す機会がなくなる 。ならば 、今声をかけるしかないと思い発した 。
すると彼女はいきなり口を塞いできた 。もごもごする自分に彼女は小さな声で呟いてきた 。別に誰にも話すつもりなんて毛頭ないし 、だけど彼女は先走ることが多い 。少しは此方の話にも耳を傾けてほしいものだ 。そんな時 、上司が教育係にと彼女を指名した 。都合がいいと思った 。
上司を後押しするなり 、彼女のほうを向くと目をまん丸にさせていた 。そんな彼女が少しおもしろいと思った 。
ネックレスを渡すなり 、目を潤ませて泣きそうになる彼女を見て驚きと共に焦った 。と 、同時にきちんとあの時拾っておいて良かったと安堵した 。そしてまた思う 、彼女はこんなにも喜怒哀楽がはっきりしていて丸で自分とは正反対だと思った 。そんな彼女のことをもっと知りたいと思った 。
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