マイホームは格子つき　〆

尊敬する沖田さんから呑みに誘われるなんて光栄です！…なんてお世辞でも言った方が良かったですか？
(意地悪な内容に笑顔を崩すことなく笑っているが目は一切笑っておらず。周りを気にせず言い合えるのが内心嬉しくあるが、つい反射的に後輩として女性としても可愛くない発言ばかりしてしまい。しかし負けていられず考え何か閃いたのかしなやかな動きで相手の腕へ身を寄せては腕を組み、さり気なく身体密着させ)
ご馳走様です、先輩！居酒屋は好きなので嬉しいです。沖田さんは何が食べたいですか？

入社したての神楽にそれ言われてたら、純粋な俺は騙されてたかもしれねーが…ちっと遅かったなァ？
(笑顔崩さず返してはいるが、その笑顔は更に黒さを増したようで。突然腕を組まれたことに一瞬目を見開くも、特に表情は崩さず。しかし相手を引き剥がそうともせず相変わらず悪態つきながらそのまま歩き出し)
……っ。あー重い、歩きにくい。俺ァ酒さえ飲めりゃツマミは何でも。普通の居酒屋だしだいたい何でもあんだろ。

あの頃の純粋さは何処へやら。今の先輩は性根が腐りきってますからね！
(黒さが増す毎に焦りつつもしっかり反撃し、口では悪態つくも引き剥がされぬ事に疑問を抱くとゆっくり離れて様子伺う様に見遣り。隣で並んで歩いているがその間には何時の間にか距離が生まれ、その距離を保ちつつ会話は続かれて)
重くてすみませんでした！…そういえば、先輩って好き嫌いありますか？ 私は酢昆布が好きなので昆布料理沢山食べられたらいいなと。今日は先輩の奢りなので高いお酒も沢山呑んじゃいますね！

その台詞そっくりそのまま返すぜィ。テメーも入社したての頃のままならまだちっとは可愛げがあったんだがな。
(お互い息を吐くように出てくる悪態によくもこれほど続くものだと喉を鳴らして笑い。歩き始めると開いた距離をちらりと一瞥、しかしすぐに目線を前に向け彼女の好みに訝しげな声色で返事をしていると、仕事終わりの会社員で賑わう大衆居酒屋に到着し)
別に、旨けりゃ何でもいい。…酢昆布っておっさんみたいな嗜好してやがんな。昆布料理なんざまたピンポイントすぎだろィ、おでんとか佃煮とかならあるんじゃね？つーか高い酒なんざお前にはもったいねー…っと、着いたぜィ。

先輩の目は節穴ですか？ こんな可愛いくて先輩想いの後輩は中々いませんよ。
(自分で言って内心驚きながらもこの会話は止まるの知らず、居酒屋に到着した事で一旦会話は途切れて。店員の粋な計らいにより個室へ案内され、取り敢えずハンガーへコートを掛けてから着席し。互いに見やすいようメニュー動かすとゆっくり捲っていき)
人の食の好みにケチつけないでくださいよ。こんな可愛い女性が渋すぎる酢昆布好きってギャップが良くないですか？＿＿一杯目は何を呑もうかな……あ。カクテルのカンパリオレンジいいな。

自分で言ってくるあたりが胡散臭さマックスなんでィ。誰が得するんだよそんなギャップ。……すいやせーん、とりあえず生ひとつとカンパリオレンジ。
(案内された個室につくとわざとらしく溜息つきつつ、同じくコートを掛けて席に着き。首元のネクタイ軽く緩めながら相手が広げてくれたメニューに目を通すも、個室の外を通る店員の気配に待ちきれないとばかりに先にドリンク注文して。パラパラと捲られるメニュー表には、寒くなってきた季節に対応するようなラインナップが目立ち始めており)
食うもんは適当に決めちまっていいぜィ。…お、噂をすればでおでんもあるじゃねーか。

きっと誰かの性癖に刺さるはず、かと。私が決めていいのなら、焼き鳥の盛り合わせと枝豆は外せませんね。あとは……おでん！温かなおでんも食べたいです！
(メニュー見るとやはり食欲が増し、人一倍食べるという事を誰にも言っていなかったのでどうするか迷い。相手はこんな事で気にする人ではないと言い聞かせるも自信がないのか俯き加減で)
先輩あの……私、先輩の何倍も食べるので財布が危なくなりそうになったら止めてください。私も、払いますから。

いたとすりゃ相当の物好きだな……あ、どーも。ついでに注文いいですかィ？
(相手が選ぶ様子を見ていると先ほど頼んだドリンクが届き、そのまま彼女が決めた分を注文して。店員が立ち去った後、急に大人しくなった相手を不思議に思い声をかけようとすると先に飛んできた言葉にきょとんとし。珍しく不安げな彼女を励ますように、自らが日頃小馬鹿にしている上司の名前を挙げて実現は難しいであろう冗談とともにグラス掲げて)
…何でィ、そんな小せえこと気にすんな。心配しなくても、腹空かした後輩にたらふく飯食わせるぐらいの甲斐性は持ってると自負してんで。ま、最悪は土方さんの名前で領収切るからどうとでもならァ、ハイ乾杯。

ありがとうございます……乾杯。あの、先輩って偶に優しくなりますよね？…あ、そうだ。知ってましたか？ 女性社員の間で今、先輩がモテていること。
(普段から仕事中もじゃれ合うように言い争うのだが、こうやって偶に優しい時がある為励まされるとゆっくり顔を上げてグラスを持ち乾杯となり。お酒は弱い為ゆっくり呑もうと一口呑んでから最近女性社員の間で何かと話題になっている事をさらっと言ってしまい。この流れのままこっそり小声で彼女について質問し)
この世の中には物好きが沢山いるんですね！そんなモテモテな先輩に質問です。聞こうと思ってずっと聞けなかったのですが、今彼女いるのですか？

偶には余計でィ。…へー、女性社員つっても俺まともに話した事ねーけどな。
(仕事終わりのビールは何より美味く、ぐいっとグラスを傾けて一息に半分近くを飲み。出された話題は己に関する事でありながら、そこまで興味は無さそうな様子で。先ほど自分が言った言葉をそっくりそのまま返してきた相手にピクリと眉上げつつ質問に答え)
テメーに言われると何か腹立つなチクショー。今はいねェ…つーかお前ってそういう話題に興味あるんだな？意外に。

先輩ってまさか、さり気なく異性に気遣いできる男性だったのですか！？ だって異性から好かれて嬉しくない男性はいませんよね。
(好きな人がいるのか反応確かめたくそういう話題をふっても表情が全く変わらずいつも通りに返されてしまうと、内心安心するも今はという発言が気になってしまい元カノを勝手想像し)
先輩でも悔しがる時があるとは意外でした……って、私だって恋する乙女なんですから、恋くらいしますよ。ということは先輩は今フリーなんですね。元カノは尽くすタイプのおっとりした女性だったり……イメージできませんが。

他の奴らは知らねーが少なくとも俺は、不特定多数に好かれても自分が好いた相手に好かれなきゃ意味なんざ無いと思ってんで。…あ、すいやせん同じの。
(相手の目を真っ直ぐ見て答えた後、運ばれてきた食事をつまみつつグラスを空けて次を注文し。続けて出された元カノの話題にもさして興味は無さそうな素振りで)
恋する乙女ねぇ……。元カノっつっても何年も前だし、期間も短いしで正直もう顔すらあやふやでィ。……神楽こそ…って、彼氏がいるような奴が男と二人で飲みに来ねェよな。

ということは、先輩って一途なんですね。意外に可愛いところあるじゃないですか。一途な男性は好きですよ。
(一瞬視線が重なると反射的に逸らしてしまい半分程呑んでから枝豆を食べ始め。“自分が好いた相手”という発言から現在誰かに片想いしているのか否かどちらとも捉えられる為、無意識のうちに悩ましい表情になるもすぐ何時もの表情へ戻り、今日こそはと素直になって本音を吐き出し)
元カノのやプライベートな事をチラッと聞けたり先輩のことを少しでも知ることが出来て嬉しいな……なんて可愛い後輩が言ってみました。仮に彼氏がいたとしても、私は仕事を優先していましたよ。先輩に嫌われたくないですし。

そーかィ、そりゃ何よりでさァ。…可愛い後輩ねぇ、自分で言うなって。ま、さっさと仕事覚えて俺の手離れるくらい成長してもらわねーとこっちも困るからな。教育係ってサボれねェし。
(相手の発言に軽く頬緩ませ、運ばれてきたビールに再び口をつけ。相変わらずのツッコミ所にしっかり反応し、自らの願望を冗談混じりに悪びれる事なく口に出して。その後もしばらく会話と食事、そして酒を適度に楽しみ、気付けば入店よりすでに数時間経過しており)
──っと、もうこんな時間になっちまってらァ。明日休みとはいえさすがに飲み過ぎんのもアレだしそろそろ出るか。

給料泥棒はだめですよ、先輩？しっかり働きましょうね──…もうこんな時間か。
(腕時計で時間確認し、グラスに入っている残りを飲み干してからコートを着たり身支度整え。その後会計を終えては店外へ、来た時よりも寒くなっており腕を擦りながらご馳走になった礼を伝えると続け様に休みの予定を問うて)
今日はご馳走様でした。……あの、先輩。明日休みですよね？予定あったりしますか。

へいへいどういたしまして。明日？あー…いや、何もねーな。
(店外、僅かに軽くなった財布をポケットに仕舞い、寒さに少し眉間に皺寄せ。相手の質問に考え巡らせ、特に用事もなく家で過ごすことになるであろう明日を思い浮かべて。予定より遅くなってしまって時間に、相手を送ろうと提案し)
つーかお前家どこなんでィ。付き合わせたのは俺だし、さすがに送っていくわ。

(住んでいるマンション名を伝えては予定がないことに安心しつつ、意を決してデートのお誘い提案し)
明日予定がなかったら私とデートしてください！先輩とデートしたいです。ダメ、ですか？

！…別にいいけど……デートってお前、俺のこと好きすぎんだろ。
(マンション名を聞いてきょとんとしたのも束の間、続けてかけられた言葉に肯定しつつ茶化すように笑い)

すすす、好きって、違いますよ！どうしてそうなるのですか！？ 自意識過剰です！
(予想外な発言に思わず過剰に反応してしまい、頬もお酒の影響もあってか急に赤らんで必死に否定するも反応から肯定しているのは明らかで。顔を見られたくないのか歩き出し)
デートと言ったのがよくなかったですね。気をつけないと！

へーえ？それにしちゃいやに顔が赤いけどな？…別に構いやせんぜ、デートでも。
(にやにやと意地悪い笑み浮かべながら隣歩き、最後に辛うじて聞こえる程の声量で呟き。目前に見えてきた建物に話題を変えて、何かを含んでいるように問い)
……おっ、アレだろマンション。ここまで来たついでに聞くが部屋はどこでィ。