切札は風と共に【〆】

もうすっかり秋か、風邪が冷たい。1年会っていないが僕の事覚えてるかな
（少し散歩するだけなのにお気に入りを被ったのが嬉しくて内心テンション上がりルンルン気分で出たものの冷たい風に小さく身震いして。メモリの中から相棒の姿は見守っていたが情報屋達はどう過ごしているか考えれば1年経つが忘れられてしないか気掛かりで、クリスマスに集まったりもした仲で覚えてくれてるはずだがとモヤモヤを飛ばすように歩きながら足元に転がる小石を蹴って）

これからもっと寒くなるだろうな…、暖かそうだな、それ。 心配すんなって、俺の相棒のこと忘れてる訳ないだろ？
（夕方になればあっという間に冷え込む気候になり、拘りのファッションを持つ自分にとってはコートを羽織るには早くいつもの服装では寒い中途半端な時期であり。薄いコートを着る相棒が随分と暖かそうに見えれば話題振って。 何処か心配そうに呟く相手に明るく声掛ければ、彼らに会う度に相棒がいなくて寂しそうとからかわれている事は伏せつつ大丈夫だと告げては彼らがいそうな人通りの多い通りにたどり着いて）

痩せ我慢せずコートを着たらいいのに。そうだよね、彼らは皆良いばかりだし
（てっきりコートを羽織るかと思ったがシャツとベストだけでは見ている方が寒いと苦笑いで腕を伸ばし着ているコート眺め。心配ないと掛けて貰った言葉に頷き安心していれば『あれー、翔ちゃんじゃん』と気だるげなクイーンの声に続き『キャー、フィリップ君帰って来たの！？』とテンション高めに此方に駆け寄るなり腕を組むエリザベスがいて、片腕の身動きを封じられながら杞憂に過ぎなかったと胸を撫で下ろして）

うるせぇ、これくらい全然寒くねぇって。 と噂をすればだな。 相棒が帰ってきたんだ、改めて宜しく頼むぜ
（正論で返されると何事にも動じないハードボイルドを目指している身としては寒くないと言い張って暖かそうなコートから視線逸らし。そんな話をしているうちにお目当ての2人に遭遇すれば相変わらずの絡み方に笑み零して「言った通りだったろ？」とちらと視線向けて。誇らしげに相棒の肩ぽんぽんと叩きながら2人に帰ってきた事説明して.）

仕方がない、寒くなったら手を繋いであげようか。留学？もちろん充実していたとも
（寒くないと言い張る相棒をからかい片手ひらひらして暖を取る方法を冗談混じりに提案して。腕を組んだ状態で留学はどうだったとか英語を喋れるかとか続け様にされた質問にそれっぽく聞こえる返答すれば離れなさいとクイーンにより剥がされ解放され。相棒の言った通り何の心配も要らなかったと頷き、女子高生2人のおかえりなさいパーティをしてくれるとの提案は素直に嬉しく機会があればとお願いして）

いい考えだが、お前の手が冷たくなるだろ。 確かにまた盛大にパーティすんのも良いな、今度作戦会議でもするか
（ノリに合わせる形で好感示すも相棒まで冷たい思いをさせてはならないと受け流して。 3人の賑やかな会話聞きながら改めて良い仲間達に恵まれたと想いを馳せて。 ふと会話にパーティの話題が出れば楽しそうだと賛成の意思示して後から日程調整しようと話つけて。 話の中で残りのウォッチャマンサンタちゃんの居場所聞けば「そろそろ行こうぜ、相棒」と声掛けて）

君の手が暖まるなら別に構わない。それじゃあまた、ありがとう。パーティ楽しみにしておくよ
（勿論冗談として提案したが然り気無く断られると何故か寂しさが生まれ、表情こそ何食わぬものだが挙げた手を降ろし虚しく宙を掴み。相棒の声掛け立ち話もなんだから今度ゆっくり話そうとの流れになり立ち去る女子高生達に礼を述べれば手を振り見送って、なかなかに癖は強いが良い人に変わりない次なる2人に会うべく教えて貰った場所を目指し歩き始めて）

心配してくれてありがとな。 余計な事言わなくていんだよ、またな。 さて、居場所を聞いたのはいいが風都タワーの辺りって結構広くないか？
（相手の感情の起伏など知る由もなく、寒いのを心配してくれたと捉えば礼伝えて。去り際に「翔ちゃんを宜しくね。フィリップ君がいなかった時寂しそうだったから」と揶揄う様な口調で伝えてくる2人の話を遮ればそのまま見送って。居場所のヒントを貰ったのは良いものの案外広そうな範囲に困った様に呟き零すも散歩だしいいかと思考切り替えながら歩き）

…いや、別に。君が寂しがらないようにと思ったまでさ。思ったより広いが、この街は君の庭なんだろう？
（子供じゃあるまいし何故そんな事をしたいかも分からず素直に手を繋ぎたいとは言えなくて、両手をコートのポケットに突っ込み去り際に聞いた話しをからかって。組織から逃げ隠れていた時じっくり散策出来なかった街中は案外広く、容姿が特徴的と言えどもこの中から男性2人を見つけ出すのは難しそうで片手を目の上に持って来て遠くを探す動作してすっかり元通りの姿を取り戻したタワーを見上げ）

揶揄うなって。ここじゃ、人多いからまた帰り道な。 ああ。まあ、この辺歩いていれば見つかるだろ。…今日もいい風が吹いてるな。
（去り際の会話を聞かれていれば羞恥に誤魔化そうとするもポケットに消えた両手が惜しいと感じて、他所向きながら帰り道にと告げて。 庭といってもそこに住む住人の行動一つ一つを把握している訳でない。 だが、良く見掛ける彼らなら何処かで会えると能天気に告げればふと相棒の視線追ってタワー見上げ。元通りになった街のシンボルは冷たい風を受けながら回っており、つかの間の平和に呟いて）

…え、あぁ分かった。情報屋を探すのは難しそうだが急ぐものでもないしね
（人通りがなければ構わないとの誘いに目を丸くして驚いたのも束の間、ハッキリ口にしなかった要求を汲み取って貰えた事が嬉しく直ぐに緩い笑顔浮かべ頷いて。2人とも特徴的な為その内見付かるだろうとして、冷たくも穏やかな風受けてタワーを見たまま目を細め「すっかり元通りで、何度傷付いても立ち上がる強い街だね…あ、翔太郎あそこ」大道との壮絶な戦いも既に過去の話なのだと感慨深さに小さく息を吐き出したところで見慣れた爆発ヘアと坊主頭が見えた気がした方向を指差し）

俺の、いや俺たちの愛する街だからな。 お、ナイスだ相棒。 サンタちゃんストップ、ストップ！
（相手の口元に笑み浮かべばとりあえず安心して、帰りは違う道でも通ろうかとも考えて。 強い街という評価に自分を褒められたような気がしていつものフレーズ言おうとするも託された人達の事が浮かべば“俺達”と称して誇らしげな笑み見せて。 指さした先に見慣れた後ろ姿見つければ褒め言葉投げつつもとりあえず2人に気付いてもらおうとダッシュで駆け寄りながらまずは一方に対して制止呼び掛けて）

あぁ、その通りだ。彼らはかなり目立つから
（街が傷付いても元の姿を取り戻すように自分達も何度だって立ち上がるのだと誇らしげな気持ちは同じく、街中に飾られた風車に視線移しいい街だと改めて感じ。目的の人物を見つけた途端走り出す相棒について慌てて駆け寄り、一方で呼ばれた2人の内ウォッチャマンは此方の姿を見るなり携帯で写真を撮り出すしサンタちゃんは『もー、翔ちゃん。サンタちゃんじゃなくて店長って呼んでよね』と先ずは相棒の肩を叩いて突っ込み入れてと相変わらずな大騒ぎに笑いが止まらなくなり次第に腹を抱えて笑い便乗して相棒を小突いて）

悪い悪い。ついそっちの名前で呼んでしまうんだよ。 まあ見ての通り、相棒が帰ってきたから改めて宜しく頼むぜ…って、笑い過ぎだろ
(軽い調子で返しながらも個性豊かな彼らは相変わらずの様でそれだけのやり取りでも笑いが零れて。後ろを追ってきた相棒が隣に並べば改めて留学から帰ってきたのだと簡単に説明して、これからもお世話になると声掛け。やっと半身が戻ってきただの茶化されるのにいつもの様にツッコミ入れ合いながらもふと相棒が腹を抱えて笑っているのを見ればその事を指摘するも賑やかなやり取りの数々に楽しげにして)

ただいま、改めて宜しく。翔太郎1人じゃ寂しがって大変だから帰って来たんだ
（先に声を掛けていた相棒の背後からひょっこり現れ帰って来てのだと挨拶して。常にサンタの服装をしていた彼はどうやらペットショップの店長らしいとかウォッチャマンは相変わらずとか相棒と彼らの会話から現状を把握し、笑いすぎてしまって目尻に浮かんだ涙を指で拭いながら突っ込む相棒を揶揄してみたり。テンションの高さに圧倒されつつ組織なき今は堂々と写真に写っても構わないと記念写真にも応じわいわいガヤガヤ盛り上がって）

相棒まで何言って、あーもう、お前らも茶化すなって。 この写真は後から送れよ
(改めて相棒を紹介できた事を誇らしげに思うも揶揄うような言葉続けば思わず反応して其方見て、それに乗っかる様にここ1年の自分の様子を知っている2人が茶化し始めれば違うとは言えない話に顔赤くして喚き。傍ら記念写真に応じる様子を横目に見れば色々あった制限から解放され、自由になった相棒を感慨深く思いながらもそのデータが欲しいとウォッチャマンにお願いして)

…寂しかったのは君だけじゃない
（情報屋2人の声に紛れて聞こえるか否かのトーンで辛かったのは相棒だけでない旨ボソッと本音を漏らして、こうしてまた騒げる日が訪れた事に感謝の気持ちがいっぱいで胸元に手当て頭の中で姉に礼を述べ。撮った写真をその場で見せて貰って、ウォッチャマンは相棒のお願いに対し凸凹コンビの復活おめでとうとか嫌味と祝福の混ざった言葉掛けながら早速メール送信し）

…。 ああ、これからこの街を守る2人で1人の探偵だからな。 写真もサンキュ。 顔見せも終わったし、そろそろ帰るか。今度相棒のおかえりパーティーする予定だから日にち決まったら連絡する
（会話に混じって呟き拾いあげると瞬き一つするもこれから一緒だと相棒の肩を組み二人に見せつけるような形で格好つけて。メールに添付された写真確認すればすぐさま保存して、日も暮れ始めれば長く引き止めるのも悪いと解散切り出し。 パーティの件も伝えれば彼らは快く引き受けてくれて、当たり前の様に相棒の事を受け入れてくれる環境に感謝抱きながら2人と別れ帰路の道歩き）

君と僕、どちらが欠けても駄目だからね。留学中の翔太郎の様子なんかはまた今度聞かせてくれ
（呟きは相棒の耳に届いたらしく肩を組まれ誇らしげな気分になって、左右の人差し指と親指使って表したWの文字を情報屋達が真似をして。解散の声掛けに辺り見渡せばいつの間にやらすっかり暗くなっており、1年ぶりで彼らとの距離が遠くなっていたらどうしようなんて心配は全く不要だったと笑顔で手を振る2人に振り返して。一通り挨拶終えて賑やかだった空気がなくなり相棒と静かに歩き始め、日暮れと共に寒くなった空気感じ取り顔の前で両手合わせ）

ああ、分かってるよ。 心配無かっただろ？ 俺だけじゃなくて、皆がお前が帰って来るの待ってたんだからな。 …寒いな、
(彼らと手を振りながら別れれば相棒の心配など杞憂だった事を改めて言葉にしながら伝えて、相手が思っているよりもずっと色んな人が気にかけて待っていてくれていた事を自分の事のように伝えようとして。 すっかり冷たくなった風に肩を竦めながら大通りから外れ人通りの少ない道に出れば手を繋ぐと約束したもののいざ切り出すとなると言葉が出ずに在り来りな呟き吐きつつ冷えきった手の置き場所に迷って)