2人掛けの玉座 【〆】

___まさかお前も同じことを考えていたとはな。俺は……この世界にきて、俺の時代もこんな風に彩りが溢れた幸せな世界であって欲しいと願った。だが同時に、その世界に俺が立つ時にはお前が隣に居て欲しいと思った。……俺が見てきた未来など関係ない。お前は最高最善の魔王になれ。そして俺は俺の知っている未来ではない世界を、お前と一緒に作りたい。お前の隣で。だから俺は、お前の隣に居たい。
(相手が語ったのは今までの自分ならば、レジスタンスとして来た自分ならば、即座に一蹴するべき言葉だった。だがこの時代に来て一緒に過ごした時間を省みれば、最初の考えが間違っていたことを今になってようやく飲み込むことが出来た。雲がちょうど薄れたのか相手の背後で太陽の光が輝いて見つめているのさえ眩しい、まるで王としてのこいつを祝福するようだ。そして先程考えていたことを、これまで幾度となく願ったことを、ようやく口に出して相手へ伝える。この時代のような未来と相手の隣、どちらも手放し難い、手にしていたい。途方もないような願いにも思えるが、こいつとなら叶えることができると確信が持てる。目の前の男が最低最悪の魔王になるわけがない。もしその道を歩もうとした時には必ず自分が止める、彼の隣にいるのは自分なのだから。真っ直ぐと真剣な眼差しを向け自分の想いと共に返事をかえし)

－－うん。俺は最高最善の魔王になるよ。そしてゲイツの時代まで…それより先でも皆が幸せになる未来を作る。俺一人じゃ難しくても二人なら、ゲイツと一緒なら何か行ける気がするんだよね。…俺もゲイツの隣に居たいから。
（真剣な眼差しと同時に語られるのは自分が願う事と同じ事で少し驚くも大人しくその話を聞く。自分達の未来を変えるために危険も承知でこの時代に来た彼はどれほどの覚悟を決めていたのだろうか。もし、彼が自分を倒して未来が変わり平和な世界になったとしたらきっと救世主と称えられる事だろう。そんな彼が自分を信じて共に新しい未来を作りたいと言ってくれた。それが示す意味と責任の重さを自覚しながらも一旦瞼を閉じて噛み締めるように相槌を打つ。そして目を開けて此方も真剣な眼差しで改めて宣言する。今のような平和な世界をずっと続く未来を作る王様になる事と相手の隣にいること。選べないならどちらも叶えてしまえば良い。一人の時なら吐き出せなかった弱音が零れる。もし何かが起きて理想の王様になれなかったら、力不足で民を守れなかったら。夢を抱いた時からずっと付き纏っていた微かな不安。だけど、それもきっと目の前のゲイツが居てくれたら大丈夫だと思えてしまう。途方もない夢かもしれないが二人なら何とかなるという直感があった。それに王様の夢が無かったとしてもきっと相手の傍にいたいという想いは変わらないだろうと目細めて笑い）

あぁ、お前は安心してお前の行きたい道を進め。お前が躓きそうな時は支えるし、間違った道を行こうとした時は正す。それが俺の役目だ。____、しばらくは勉強の手伝いだな。
(相手が望むのはまさに自分の望む世界、互いの目指す場所が同じであることが嬉しくて、なんだか誇らしくもある。口癖のように繰り返して言われる王様になる、という言葉は確固たる精神の元で言われているのかと思っていたが、ここに来て初めてそれに不安を覚えている様子に少々驚く。しかしそれも自分と一緒ならば、と笑う姿にこちらも奮い立たされるようで、思い描く未来を必ず実現させようと強く心に思う。そしてそれと同時、滅多に口にしない心からの言葉を口にしたせいか、さらに胸の奥に秘めた願いが口をついて出そうになる。本当は隣にいるだけでは物足りない。もっと近づきたいと心が叫ぶ。心のままさらなる言葉を紡ごうと口を開くが、その瞬間にゴンドラのドアがあいた。どうやらいつの間にか地上へ戻っていたようで、案内係が降りるようにと目で促してくる。たった2人だけの空間が崩れてしまってでかかった言葉は言えないまま嚥下してしまう、結局は冗談めかした言葉をすり替えて口にするとゴンドラを降りて)

じゃあ背中任せちゃおうかな。 ふふ、そうだね。 …あ、売店あるしちょっと覗かない？ 小腹空いたしチュロスとかあるかな
（今まで散々敵対的な態度で接した相手が今は同じものを見て目指している。それがとても嬉しくて口元が緩みきって仕方ない。更に強い繋がりを得ることが出来て本当に良かった。調子に乗って自らの背中を預けるとも言ってしまった。相手が何か言葉を紡ごうとした途端ゴンドラのドアが開いた。乗る時は随分ゆっくり動いている様に見えたが案外早かったのかもしれない。後半は殆ど外を見ていない気がしたが、それはそれでいいだろう。相手の言いかけた言葉は気になるものの冗談に答えながらゴンドラから降りて。乗り口から降りていけば近くに軽食の売ってある売店を見つけ指さしながら提案する。次のアトラクションに並ぶにしても何か買って食べながら待つのもありだろう。そんな事を話しながらも売店に近づきメニュー表を見て）

任されるのは良いがもうちょっと締まった顔をしろ。チュロス……？あれか。確かにあれなら並びながら食べられそうだな。俺はプレーンにするか。お前はどうする？
(最初にこの時代に来た時はすぐにでもこいつを消そうとさえ思っていたのに、今ではこいつの隣が1番安心して胸を張れる場所になっている。随分と考え方が変わってしまったものだ。対してこいつは初めて会った時から変わっていない。強いて言うならこの緩い笑みをこちらに向ける頻度が高くなったことくらいだろうか。威厳も何もないこの顔が好きだが王としてはいただけない。人差し指を相手の頬にぶにと当てるとその緩んだ笑みを潰しておいた。相手につれられてきたのは売店で看板を見上げれば見たことのないメニューが並んでいる。チュロスもそのひとつで、プレーンやチョコレート、バナナといった変わり種など様々な味があるようだ。興味惹かれる味が多いが、とりあえずはスタンダードなものを食べようとプレーンを選択し)

そんな事言われてもこれが俺の普通なの、それに緩くなるとしたらゲイツのせいだし！ ね、丁度良いでしょ？ じゃあ俺はチョコにしよっかな。 － ん！ 美味しい。
（ぷにぷにと頬つつかれると相手の方に視線を向ける。締まった顔をしろと言われても相手と一緒にいるのは楽しくてつい緩んでしまう。それにこうやってほっぺたを弄ばれるのも嫌いじゃない。大人しくつつかれていながらもその責任は相手のせいだと宣言して。持ち歩いて食べるという事に好意的な感想受けると得意げに笑い。チュロスの味もせっかくなら相手と違う味にしようと少し悩んであまり好き嫌いが別れそうにない無難なチョコ味をチョイスする。無意識に相手も食べることを考慮する選択をしているのには気づかないままで。注文を行い少し待てば揚げたてのチュロスが手渡される。チョコ味のチュロスを受け取り1口齧れば熱々の生地の食感と甘みに声を上げ、感想告げれば二口目も口にして）

なっ、なんで俺のせいなんだ！そもそもお前が緩んだ性格だから悪いんだろう。ん、____確かに美味いな。それで、次はどれに乗る？
(こっちに責任転嫁してくるとは予想外で思わず抗議の声をあげる。否定しておきながらもそこまで察しが悪いわけでもない。つまり、この笑顔は自分といる時に一番出るものであるということ。そう言われるとこの顔が自分だけに向けられる特別なものに思えて、それを自分のものだけにしたいと黒い願いが湧き上がる。その願いを抑え込むようにチュロスを一口食べれば、揚げたてでホクホクとした食感と程よい甘みが口のなかに広がって数度頷く。確かにこれなら待ち時間の間に小腹を満たすにはちょうど良いだろう。美味しそうに自分のものとは別の味のチュロスを頬張る相手を見ながら次の行き先を相談し)

えー、…でもそんな俺も嫌いじゃないでしょ？ じゃあ今度は渓流滑りが良いな、 全力で水にかかりに行こうー！
（否定を受けると不満そうに声を洩らすもそれだけが本音という訳でないのはここまでのやり取りで分かっている。それでも尚悪戯したくなれば相手の方を向いて見上げれば目を細めて笑いながらも自信たっぷりに問いかけてみて。自分がオススメしたチュロスはお気に召したらしい。チュロス口に咥えたまま歩き始めれば次の行先として先程選ばなかった方のアトラクションに行くことをテンション高く宣言して其方の方に向かい始め。観覧車から見た通り人も多くなってきて乗り物に乗るのにも並ぶみたいだ。渓流滑りの前に着けば早速列に並んで順番を待ち）

っ、お前……、そうだ、そうだよ。風邪を引いても知らんぞ。……朝とは違って人も増えてきたな…
(こちらを覗き込む悪戯な笑みにグッと心が詰まる。こちらが絶対に否定して来ないと踏んで問いかけられる確信犯の質問、それがあまりにもいじらしくて一瞬体を固めてしまった。こちらを見上げる顔が、こちらの肯定を確信する顔が愛らしい。が、相手の意のままにされているようで悔しい。こうやって人を手のひらで転がす所はいかにも魔王らしいじゃないかと内心憤りながらも、質問を否定してやれるほど意地悪でもない。愛憎混じったおかしな顔を浮かべつつ、結局否定出来ずにヤケクソで何度か頷いて。案内図を思い出して歩いていればやがてアトラクションの列へとたどり着く。しばし待つことになりそうだ。少しずつ進む列で順番待ちしつつプレーンのチュロスをまた一口かじる。手ごろに食べられて満足の行く味だ、チラリと相手の手元を見ると自分のものとはまた違う味のチュロスが握られている。チョコ味、とはその名の通りの味だろうがどれほどチョコレートに近いのだろう。このプレーン味と似ているのか、全く違うのか、食感は同じなのか……そうやって考えている間、相手のチョコチュロスをじっと見つめる形になっていて)

へへ、やったー！！最初から素直に言ってくれたらいいのに。 そうだね、こっちが普通って感じもするけど。……あ、こっちも気になる？ なら食べ比べしよ
（ヤケクソでありながらも望んだ答えが返ってくれば無邪気に喜びの声をあげる。何となく答えは分かっていたとしても相手の方からちゃんと答えが返ってくるのは素直に嬉しくてまたニヤニヤが止まらなくなってしまった。少しずつ彼の言動から感情が読み取れる様になったのはきっと縮まった距離感のおかげだ。それにツンとした態度を取りながらも最終的に認めてしまう甘さが愛おしいとも思ってしまう。そのまま得意げな顔で言葉続けて。順番待ちをしていればふと相手の視線が自らのチュロスに注がれてることに気づき。味を選ぶ時も悩んでいた様だし他の味も気になったのかと素直に考えればそのまま相手の口元にチョコ味のチュロスの先端差し出し、食べ比べ提案して）



あの書き込み、隠してたつもりだったのに直ぐにバレてビックリした…、返事もありがとね （こそっ）

　

っ、俺はそういうのは苦手なんだよっ！食べ比べ、……あぁ…___ん、こっちの方がしっとりしてて甘いな……
(まんまと相手の策に乗せられ、相手が喜ぶのを見ればどことなく悔しくて今度は両方の手のひらで相手の両頬を潰した。もちろん怒っているわけじゃない、こうして戯れるのが楽しいからこうやっているのだ。こつやって乗せられてこいつがニヤニヤ笑うのも、その頬を潰してやるのも好きだ。手で潰された顔は唇が丸っこく飛び出ておかしな顔になっていて満足気に笑っておいた。相手のチュロスにいく目線に気が付かれてしまったか、こちらにそれが差し出される。どんな味か興味があるのは確か、差し出された先端に顔を近づけるがその瞬間にそこが先程まで相手が齧ってた箇所だと思い出す。だがここで止まるのは不自然でそのままの勢いで先端を口に含んで1口分を齧った。プレーンのチュロスとは少し違う味わいに感想を言うが正直先程相手が同じものを口にしていた事実がチラつく。それが顔に出てしまう前に自分のプレーンのチュロスを相手に黙って差し出して )

まさか書き込まれてるなんて思わなかったがな、たまたま上がってのを見つけて……驚いたが、何より嬉しかった。向こうでも書いたが、これからもよろしくな。

むー、でも大分ゲイツの考えることは分かるようになった気がするんだよね。今のも当たったし。 やっぱり生地から色々違うのかな、じゃあ俺も食べよっと…ん、うまっ！
（両頬を潰されると抗議の声あげるもそれも本気ではなく戯れとしてだ。自分の顔を変顔にしておいて満足気に笑うなんて少し前なら考えられなかった。相手が比較的表情に出やすかったり嘘がつけない性格なのもあるが段々と相手の思っている事が読めるようになった気がする。その事をその体勢のまま得意げに宣言して見せて。差し出したチュロスを齧る様子を見ながらも食べ比べする為にも違う物を選んで良かったと何処か嬉しそうにして。代わりにと差し出されたプレーン味のチュロスに齧りついてはチョコ味とは違う風味に感想告げ、咀嚼している間にまた間接キスであることに気付けば僅かに動き止まってうっすら顔赤く染めて）

案外分かっちゃうもんだね？ ゲイツもありがとね、こちらこそよろしくね （／蹴可）

俺もお前のやり口が大体分かってきた。俺の性格を利用して…あぁ、味に合わせて作り方を変えているのかもな……っ、お前が提案したんだから照れるなっ！
(顔を潰されても得意げな顔をする様子に呆れた様にため息をつくも、そうやって翻弄されるのも、それを得意げにされるのも心地よくて、それも隣に居たい理由になっている。ぶつくさ文句を言うものの、その口元はふわりと上がっていて上機嫌であることは明白だ。相手の思う通りいつも仏頂面をするのが崩れて顔に感情が出やすくなっている。それも目の前で緩く笑う相手に心を許している証拠なのだろう。そうして油断しているから互いのチュロスをかじれば間接キスになることに気が付かなかったのだろうか。既にチョコのチュロスは飲み込んでしまったのに、目の前の相手が赤くなると先程の行為を嫌でも意識してしまう。今顔を赤くしているということはこいつも無意識にチュロスを差し出したのだろう。こちらも耳の端を赤くしつつ軽く叫ぶも、互いのものを食べさせ合うのを自然と行ったことが心を許してくれているようで嬉しくもあり)


不思議だが読んですぐお前と分かったな。いつもお前の文字を見てるかもしれない。ついでになってしまうが、昨日は返事をできなくてすまん。前にも言ったが、ここから年始まではかなり返信ペースが鈍る。待たせてしまうことも多くなるが許してくれ。(/蹴り可です！)

バレちゃった？ 最近ゲイツが色んな表情見せてくれるし、今の方が好きだな。 ゲイツが食べたそうにしてたからあげただけだし…っ、はい、もう一口
（カラクリがバレてしまったかと声に出すのも何処かご機嫌な様子でこうやって何も無いやり取りをするのが素直に楽しい。一瞬表情が緩んだとしても直ぐに仏教面に戻っていたのが今では口振りこそツンとする事もあるがそのまま見せてくれる事も多い。それが二人の距離感を表しているようで心地良かった。そんな想いを抱いていれば口角上がりっぱなしでありながら自然と好意示す言葉が口から出てきて。ごく自然と自分の食べたものを差し出して、相手の食べかけを続けて食べていた。そのやり取りは好ましい物であるがどうしても意識してしまう。照れていること指摘されると言い訳挟むも相手の耳の端も赤い事に気付き。似たようなことを相手も思っているのだろうか。一口だけでこんなに意識しているのが妙に恥ずかしく、勢い任せに自分のチョコ味のチュロスもう一口齧って再び相手の口元に差し出して）

了解。ゲイツのペースで大丈夫だから、俺はコタツでぬくぬくしながら待ってるね （手ひらひら／蹴り可です…！ ）

な、……そ、れは……前より俺が変わったとしたら、それはお前のせいだ。確かに味に興味はあったが……んっほら、お前も
(相手の言葉にドクンと胸が強く鼓動を打って目を開く、一瞬口を開いて止まってしまった。だが直ぐに脳内で自分の体を揺すって起こす。冷静になれ、以前より良いと言われているだけ、たった2文字だけを拾い上げるな。暴走しそうな感情を抑えるよう自分のチュロスを一口齧って急いで飲み込む。こいつに対する態度が変わったのは事実、そうでなければ一緒に新しい未来を進む選択肢なとしない。その方が良いというならば、出会った頃よりもより一層2人の距離が近くなって心を許されているということか。それでもこうやって口をつけたチュロスを交換して食べさせ合うなんて恋人同士みたいな行為は慣れるものではない。勢いよく口元にチュロスを持ってこられるともう考える余裕もなく、半ばヤケクソで反射的に口を近づける。しかし位置が少々ズレていて、相手がチュロスを持つ手に自分の手を重ねて位置を微調整するとまた一口齧る。もはやそれを味わう余裕もないが、お返しはせねばと自分のチュロスをまた差し出し)

俺の影響で変わってくれたんだ？ だとしたら凄く嬉しいかも。 っ…、ん、甘いね。
（一度相手の動きが止まったような気もするが続いて語られる言葉の方に意識が向く。それはつまり自分の影響で変わって色んな表情を見せるようになったと言う事で、相手の中で自分の存在が大きいのではないかと自惚れそうになる。確認する様に問いかけるも勝手な解釈を始める頭では口元ニヤけるの止まらずにいて。もっと彼の中で大きな存在になりたいという独占欲すら芽生えそうだ。そんな思考の中、勢いのまま差し出したチュロスだったが手元に触れながら口に含む所を見るとより“食べさせている”という事を意識してしまい、その姿勢のまま硬直してその様子見つめていて。お返しと差し出されたプレーン味のチュロスでやっと正気に戻る。先程と違って今度は間接キスと最初から分かっている状態でまた熱が上がって来る前に顔を近づけ一口齧って。生地の風味の違いなど味わう余裕もなく唯一分かる甘さの感想口にしながら咀嚼して）

っ、同じことを言わせるなっ！……だが、俺は……変わって良かった。____、もう交換は終わりだ！……これ以上はもたん。
(先程から向こうのにやけ顔が止まってない、同時にこちらの焦り顔も止まらない。こっちの言ったことを確認するよう問うことでその言葉を改めて自覚させてくるとは卑怯なヤツめ。だが自分で言ったことなのだから否定することも出来ず、結局は大声を出すことしかできない。だがこいつと出会わなければ、そしてこいつの世界に触れなければ、こんな彩り溢れた世界を知ることも出来ず、ともすれば今手に入れたいと思う人間を殺していた可能性だってある。そして何よりも、茶色の世界でか細くちぎれそうだった未来は、こいつと2人で紡ぐことで強力な希望になった。だから今、こいつの隣でこうやって戯れていることに何も後悔はなかった。プレーン味のチュロスが空いての口に含まれ1口分を齧られていく。オムライスの時を含めればもう何度間接キスを交わしたのだろう。まだその行為に恥ずかしさはあるが、間接キスをひとつ交わす度に互いの境界が曖昧になって行く様な気がする。その境界が崩れた時、すなわち間接でなくなったとき、どんな心地になるんだろうかとぼんやり考えたところで、頭で暴走する不埒な考えを振り払うが如くプレーンのチュロスを自分の元へ引き寄せる。相手へ近づけば近づくほど、もっと近づきたいと思ってしまう。最後には互いの境界がなくなって、誰も近づけさせないようにできないかと欲望が渦巻いた。これ以上の考えは危険だ、我を失ってはいけないと言い聞かせるように黙々とチュロスを食べ進めて)

ごめんごめん。 俺もゲイツがこの時代に来てくれてこうやって仲良くなれて良かったって本当に思うよ。 ん、もうすぐ順番だし食べちゃわないとね
（謝罪口にするもその口調は軽く茶化すような様子で。ついからかって確認したくなるほど相手の言葉は嬉しいものだった。今だって否定はせずに大声をあげるだけで遠回しに認めているようなものだ。殺しに来たと初対面の時に宣戦布告を受けた時はどうしようかと思ったがこうして遊園地に来る程の仲になったのだ。その事を喜ぶように口にして相手に告げ。先程まで食べていた相手のプレーン味のチュロスは取り上げられてしまった。何度やっても慣れることがなさそうな行為だが、それが当たり前になる未来が来るのだろうかとぼんやり考えていて。友人よりも少しだけ近い距離が嫌いではなくて寧ろもっと近づきたいとさえ欲が出てくる。その事を誤魔化すようにチョコ味のチュロス口にして。そんなやり取りをしていれば列も大分進んだようでもう2、3組でアトラクションに乗れそうだ。それまでに食べてしまおうと声掛けながらもどんな動きをするのか流れている船観察して順番待ち）

まったく、茶化して言うな……あぁそうみたいだな。……なるほど、一箇所にまとまって座ることでわざとバランスを崩しているのか。よし、俺達も隣で乗るぞ。
(軽い調子で返す相手に苦々しく言うも内容は否定しない。つまりはこちらも相手と同じ考えということだ。ふいと顔を背けはしたもののただの照れ隠しだ。アトラクションの順番が近づいてくると相手に言われて残り少しくなっていたチュロスを口の中へ放り込んで飲み込んでしまう。乗り場に案内され前の客が乗り込む様子をみると、8つ程ある座席に均等にでは無く一箇所に固まるように座っている。その様子を分析すると合点がいったと数度頷き、相手がいったびしょ濡れになろう！を実行すべく席を指定する。案内係に誘導され丸型の船に乗り込むと2組になった椅子のひとつに座り)

ご馳走様でした。そうそう、どれくらいかかるかはほんと運次第で毎回違うから楽しいんだよ。オッケー、濡れる時は一緒の運命共同体だね
（チュロスを食べ終われば丁度自分達が案内される番になる。幼い時の記憶しかないがびしょ濡れになる時もあれば殆ど水がかからない時もあり、その時折で結果が違うのがこのアトラクションの楽しみだ。そんな事を思い出しつつも相手の後を追って乗り込めばすぐ隣に腰を下ろす。2人席は割と近く片方が濡れる時はもう片方にも水がかかる様な配置だ。どちらがより濡れたかを競うのも良いが一緒に水を被るのも悪くないだろう。わくわくする気持ちで目の前のバーを握りながらも船はベルトコンベアで運ばれ川の上流に放たれて）