ビギナーさん 2020-11-09 08:35:35 |
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>>2の続き
「大丈夫! みんなはあくまでもモデルにするだけで、名前とか絶対に出さないから! それと、良い感じにやってくれたら、追加で報酬出すって姉ちゃんが言ってた!」
「マジか……」
追加報酬と聞いて、反対する者はいなくなった。
金に目が眩むなんて、俺らも後藤と同類じゃないか。
後藤が割りばしで作ったくじを1人1本ずつ引いていく。ふむ、2番か。なるべく当たりませんように。
全員がくじを引くと、後藤はスマホで誰かにメッセージを送った。
速攻で返信が来たらしく、後藤のスマホが音を鳴らす。
「はいっ! 王様からの命令が来ましたー!」
「あ? 王様って誰だよ?」
ヤンキー男子が訝しげに眉をひそめた。
普通の王様ゲームなら、王様は参加者の中から一人が選ばれるはずだ。
後藤はあっけらかんとした顔で答える。
「王様はオレの姉ちゃんだよ。ゲームの様子は写真や動画を撮って、送ることになってる」
「マジか……」
なんということだ。後藤姉がどんなBL作家なのかは1ミリも知らないため、どんな命令がくるか予想がつかない。えげつない行為をさせられないことを祈るばかりだ。
「まずはぁ……『3番の人が2番の人の上に乗る』だって!」
なにっ!?
2番……2番と言ったか。俺やん。
3番は誰だ? 誰が俺の上に乗っかるんだ?
「俺3番だけど」
先端に3と書いてある割りばしを掲げながら、ヤンキー男子が呟いた。
俺も渋々、自分の番号を明かす。
とりあえず床で四つん這いになると、背中にヤンキー男子が腰掛けてきた。
なんということだ。王様ゲーム開始わずか1分で、人間椅子へとクラスチェンジしてしまった。
ちくしょう……と心の中で悪態をつく。
無言で床を見つめていると、カメラのシャッター音が耳に届いた。後藤が証拠写真を献上しているらしい。
「あれ? 『なんか思ってたのと違う』だって」
後藤が拍子抜けしたような声音で言った。
そりゃそうだ。おそらく、後藤姉が期待していたのは、膝の上に座るとか、押し倒すとかいった展開なのだろう。だが、残念なことに我々は素人。顧客の要望に完璧に応えられるプロではないのだ。
「じゃ、次ね! もっかいくじ引いてー」
「うい~」
背中の上で能天気な声を出すヤンキーが心底腹立たしい。が、椅子らしく耐えることにした。
さて、今度は何番だ?
一番最後の余り物のくじをもらって確認する。
1番か。ま、連続で命令の対象になるなんて、滅多にないよね。
「『1番と4番がポッキーゲーム』」
嘘だろ……1番って俺やん。
「あ、4番は僕です」
高身長で大人しい印象の男子が、おずおずと手を上げた。仕方なく、俺も自分の番号を白状した。
後藤が俺の口にポッキーを咥えさせると、少し距離を取ってスマホを構えた。今度は動画を撮るようだ。
「なぁ、いつまでこいつに乗ってりゃいいの?」
「ゲームが終わるまでね」
ヤンキー男子と後藤の会話が聞こえて、俺の心は死んだ。ポッキーゲームを始めるため、背の高い男子が俺の正面で屈んだ。
「うわ、やりづらいなぁ。なんかチベットスナギツネみたいな顔してる」
困ったように言いながらも、俺と向かい合ってポッキーを咥える。俺はほとんど動けないため、彼に頑張ってもらうしかなかった。
結局、瞬きすらしない俺の眼光にビビった彼が、ポッキーの半分もいかないうちに口を離してしまったが。
散々な結果に、後藤も焦りだした。
「やべぇ、姉ちゃん怒ってるよ……『真面目にやれ! これじゃただのギャグでしょ!』だって」
失敬な。俺らは真面目にやっているのに。
熱心にくじをシャッフルしている後藤を横目に、霧島がニヤニヤ笑っていた。
「ラッキー。このまま無傷で生還してやるぜ」
「霧島だけずるい! 後藤姉さん、どうかあやつに命令を!」
俺の切なる願いが届いたのか、衝撃の命令が下された。
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