アルバート 2020-10-07 14:22:52 |
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まあ、"エアマスター"はないわよね。
(そもそもの男女の絶対数の関係でアルバートほど多くは無いが、アイリスにも同性同世代の友人がいる。彼女に負けず劣らず気の強い連中で、"狩り事件"の話を聞きつけてくると羞恥するアイリスを半日にわたってネタにし、イジり、笑い倒した、まあ気の置けない友人たちである。依頼の帰りに通りがかったラウンジから聞こえてきた話題にも「あの連中、必殺技とか好きよね」「仕事中に技名叫んだら相手逃げるでしょ」と中々辛辣な物言いで。「実際どうするの?」という問いには聞こえた中で一番酷いセンスのものを斬り捨てておいた。
実際、一つ一つの動きの足りない力や速度を補うことが目的であって、先週の依頼の時のような大振りの技は、まだモノに出来ていない未熟さによる苦肉の策。いつかは戦闘中常に使用し続けることを想定しているなどと公言すれば、気の狂った生垣の花から挽回した名誉もまた地に落ちるに違いない。皆の関心には言及せず、近づきつつある昇格試験に向けてその精度を磨く日々で。)
大丈夫?何やってんの?
(依頼の報告を済ませ友人達と別れて訓練場へ。一週間前に一度コツを掴むと、小走りで訓練場を人や器具を避けながら横切る、それに脚力ではなく魔法を使っていると気づかれないほど自然に使える程に成長した。長時間行うと元から無い筋力を更に落とすため、予約したスペースにつくと魔法をといて一息。誰か訓練に付き合って貰えそうな相手はいないかと見回せば、恰好の相手を見つけた。奇妙な動きをしている相手に、怪我でもしたのだろうかと首を傾げて声をかけ。)
(/ありがとうございます。
お待たせして申し訳ないです笑
こちらも一日の使える時間のほとんどを使うほど楽しませていただいてます!)
ん?ああこれな、実は…
(カクカクシカジカでさ、と現在それをやっている理由を話す。あまり意味のないこと…と一見思うかもしれないが、一応体幹を鍛えたりだとか、そう言う意図は存在しておりあながち無駄、という訳でも無い。それをアルバートが自覚しているかは別として)
まぁこれ、結構バランス取るの難しいんだよな。だからちょっと離れて──っ!?
(そう言っていると、突然ヒューンとどこかから木剣が飛んでくる。恐らく別の場所で素振りをしていた誰かの物がすっぽ抜けて飛んできたのだろう。それがコーンと小気味よい音を立ててアルバートの頭に当たると、ただでさえ悪かったバランスを大いに崩し、ワタワタと両手を回してバランスを取ろうとするも叶わず、アイリスの方へ向かって倒れ込みそうになってしまって)
(/実際はホントに楽しみに待たせて貰ってます、いつもありがとうございます!
そう言っていただけると光栄です…!これからもよろしくお願いしますね(*ーωー))
危ない!きゃあっ……!
(倒れ込んだアルバートを咄嗟に伸ばした腕で支えたまでは良かったが、さらに跳ねた木剣が二次被害を引き起こすのを防ごうと、もう片方の手を伸ばしたのがいけなかった。木剣とアルバート、両方キャッチすることは出来たものの、バランスを崩してそのまま後ろに倒れ込む。)
いたたた、アルバート重いからどけて……大丈b……ひっ!
(女とはいえ普段から鍛えている身、バランスを崩したアルバートに押し潰されたくらいではまともに入ったとしても大したダメージはない。しかも受け身も取れたのでほぼ無傷、口から漏れた「いたた」も形式的なもの、正直全く痛くないが形式美だ。そして形式美といえば、古来より男の子が女の子を巻き込んで転んだ時のダイブ先の相場は決まっている。木剣を飛ばした者と、人の多いところで危ない体制をとっていたアルバートへの叱責、どちらもまずは起き上がって両者の無事を確認してからでいいだろうと頭をあげたところで飛び込んできた視覚情報にピシリと固まって。まずは木剣をとばした歳の頃は13ほどの少年、真っ青になって謝り倒しているが怪我はないらしい、それは大変喜ばしいことだ。そして問題の幼馴染だが、下敷きのアイリスが無傷なのだから、人の1番柔らかいところに頭からダイブした人間の無事は確認すべくもないだろう。狙ってできることでもないのだからアルバートが悪い訳では無い、そう悪くないのだ、それでも拳を振りかぶってしまうところまでが形式美なので仕方がない。)
(/こちらこそです!よろしくお願いします??)
いった…く、な、い…?何だ、この柔らかいの……
(ふかふかであった。それは、倒れたというのにおかしな感触である。頭を柔らかい何かに包まれているような、言うならば高級なクッションに頭を突っ込んでいるような感触だろうか。高級クッション触ったことないけど。少し気が動転してしまっていたせいかちょっと堪能してしまったあと、冷静になり何だろうかと思い体を起こす。そしてそれは、触れてはいけない禁忌だった事を悟るのに時間はかからなかった──)
アイリス、お前……太っtグフッ!
(そして出た言葉は謝罪、ではなく。よりにもよって体型への言及、しかもアイリスの体型は見事なまでにS字ラインを示しており、それは日頃の努力の賜物だろうと大抵の人間であれば察しが付くのに、この無知鈍感唐変木な愚か者は、あろう事かそれとは真逆の認識を抱く。言い終わる前に遠慮のないストレートパンチがアルバートの顔面を襲う。10割自業自得であった。先程の木刀と合わせて大ダメージ、何時ぞやの親方を彷彿とさせる流れでバタリとその場に倒れれば、白目を向いて気絶してしまうが、その姿に今回ばかりは周りの目も同情的なそれは一切なく、被害者であるアイリスにかけより、気絶するアルバートへゴミを見るような視線を向ける者がほとんどだった)
(/テンプレにお付き合いいただいてありがとうございます笑
この次のレスですが、これ以上は死体蹴りになりそうなので()場面転換をしようかと考えているのですが、昇格試験を前にやりたいロルはございますか??
アルバートくんの片足戦法の訓練描写があればそちらにに遭遇するシーンに転換しますし、もしなければ昇格試験でその完成系をババーンとお披露目という形で、そろそろ当日の朝に移ろうと考えております。試験内容はあのモンスターを1人で倒すことになるかと思っております。)
(/寧ろ付き合って貰ってるのは此方です、いつも楽しい返しをありがとうございます!
場面転換了解です。やりたかった物(ライバル、ネタ、ラブコメ?)は全てできたので問題ナッシングです!
当日の朝で大丈夫ですよ!試験に合格出来るよう頑張りましょう!あと、片足戦法に関しては実はアレやりたかっただけなので今後出番があるかは未定です(小声←))
いってきます。
(今日に備えて早くベッドに入ったこともあるだろうが、昇格試験の日はいつもより早く目が覚めた。この日のためにできる限りのことをしてきたため思ったより緊張は感じない、寧ろ父の方がソワソワと視線が五月蝿かったくらいだ。階段を下る途中の背中にやっと「期待してるぞ」と声と届いて、その場では「親方が贔屓して良いんですか?」なんて強がっておいたが、父に期待されるなど第二次成長を終えてからはしばらくぶりで、必死にニヤつくのを抑えて試験場までの道を駆け抜けた。)
失礼、失礼すみません、通してくださる?
(昇格試験は、ギルドに所属する全ての者に受験資格が与えられており、余程の事情がない限り殆どの者が受験する。1日でその全てを終えるのは到底不可能なため、最低で1週間の日程が組まれている。とはいえ通常の任務を放棄するわけにもいかないため、皆自分の受験日以外は通常通り仕事をこなしている。特定の難易度の依頼が何日も保留することのないよう上手く組まれた日程の中で、アイリスとアルバートの受ける試験は最終日をまるまる使って執り行われ、場合によっては2日や3日と長引くこともあるため1番最後に配置されている。試験内容はそれぞれの階級によって異なり、同じ階級の者と手合わせして上位の数人が昇格する階級や、ギルドに入ってまだ短い階級の試験では応急手当の方法などをメインとした座学のテストなどの試験も存在する。2人の階級は試験で昇格する最後の階級であり、これ以上は日頃の活躍の度合いで評価されることになる。勿論実力次第ではあるが形式上全ての依頼が受注可能、北の渓谷に立ち入る許可がおり、活動の制約の全てが取り払われる。ここまで昇格するのに何十年もかける冒険者もいる階級で、今回の受験者も2人を含めて5人、アルバートとアイリスはかなり若くしての受験となる。今回の試験内容は、アルバートとアイリスが遭遇し不意をつき危機一髪で倒したあのモンスターを"1人で"倒すこと。倒すだけではなくその戦いぶりでも判断されることになる。受験者の人数分、5体のモンスターを無傷で生け捕りにした親方含むギルドの化物及び精鋭の集団が評価と万が一に備えて配備されているため、冒険者以外の見物もかなり集まり、陽気が良ければ調子の良い出店まで出るようなこの階級の試験は毎度ちょっとしたお祭り騒ぎである。訓練場にコロシアムのような試験場があるのはこのためで、実はギルドにとってそこそこの収入源であったりする。前回はアイリスもアルバートと呑気に出店を冷やかしてから見物し、案の定無意識にたっぷりとイチャついたりなどした。そんなアルバートであるが、胸にとびこんだ挙句暴言を吐いた件で鉄拳制裁を喰らい、たっぷり1週間以上アイリスから無視されていたが、無事仲直りを果たし現在は元通りである。周りからの目は未だかなり冷たい時もあるようだが。
試験開始にはまだ時間があるが、既に混み合い始めている訓練場を通り抜けて試験場へ向かう、受験者の顔は知られているため会場に着くまでに主に好意でではあるが、何度も呼び止められ足止めされもみくちゃにされ、かなり早めに出たアイリスでさえこれなのだからアルバートも大変だろう。関係者以外立入禁止のスペースにつくと流石に安堵の息が漏れた。一番最初の試験開始まで出店でも覗こうかと思っていたが、これでは試験前に体力を消費しかねないので諦める。前の人間の出来によっては今日中に自分の番が来るか怪しいが、控えスペースにはまだ他の受験者が来ていないため、1人でストレッチや剣の手入れをしていたが流石に手持ち無沙汰になってきて。)
(/こちらこそアルバート君に泣かされ、笑わされ、毎回レスを楽しみにしております!
片足はそういうことだったのですね、レスを読んでこれはラキスケ展開!と1人でテンションがぶち上がったので()あっていたようで良かったです笑
お言葉に甘えて試験の日の朝にさせて頂きました、アルバート君の戦いぶりが楽しみすぎてちょっと気合いが入りすぎたかもしれません。試験内容はお互いロルを1人で回すことになると思いますが、前後でライバルしたりイチャつけたら幸いです( ? ? ? ))
だからアレは事故だって!わざとじゃねぇ…不吉なこと言うなよな!
(所変わって男子宿舎、先日の一件以来益々同僚からの羨望と僻み、妬みを買いそれは試験当日の今も続いていた。やれ落ちちまえだの、あのラッキースケベで運を使い果たしただの、勿論冗談交じりではあるがアルバートへのブーイングが続いていた。朝のアイリスの状況とは真逆な、男子諸君からの熱い友情()を背に受けながら食事を終えて自室で用意を初めて)
……ようやくだな
(この試験のために、今まで貯めていたお金は殆ど使った。鎧・武器・盾を新調したのだから当然といえば当然だ。鎧は丈夫さよりも動きやすさ、軽さを重視、盾も普段より小さめで取り回しの良いものを、剣だけは形状自体は何時もと変わらないが、鞘を含めより上質且つ丈夫な素材で作られたものを購入した。それも全て、今日の試験に合格するため。準備を整えればいざ試験会場へと向かっていって)
うわ、相変わらずすげえ人混みだな……
(当然これが初めてではないが、いつ見ても最終試験時、つまり自分が受ける試験当日のギルドの雰囲気は異様と言えるモノだった。一週間行われる試験の内、座学や野外での試験は当然一般人が立ち入れる物ではないが、コレだけは別。多くの観衆から見られているプレッシャーの中、上位のモンスターを一人で倒さなければならない。今までは自分もその観客側だったが、今回はそうではない。自然と胸が高鳴り、程良い緊張感に武者震いを覚える。色々とあったが、今日に至るまでやれることはすべてやった筈だ。一から始めた基礎作り、それを元にして自分なりの戦い方を模索し、最後の一週間に(ラッキースケベによりアイリスから無視されてたため)一人で特訓しようやく身に着けられたのだ。無論、アイリスの身に付けた技ほどの派手さはないが…それさえ出来れば間違いなく合格出来る、そういった確信があった)
よぅ、おはよ…流石アイリス、早いな
(独特な場の雰囲気に気持ちが昂ぶるのを抑えられず、落ち着いた場所へ行こうと控えスペースへ急ぐ。するとそこには一番見知った顔の相手が居た。まだ時間的には開始時刻には早く、自宅がそこのアイリスならもう少し自室のリラックスした空間に居ても大丈夫だが、それでも最初に此処に居る。それだけで分かる、如何にこのライバルが向上心を持ち、高い場所を目指しているのかが。そんな姿に自分も負けられないとの思いを熱くさせ、気持ちを抑えようとしたはずが寧ろ更に激しく燃え上がる。いつもと違う、どこかギラつく雰囲気を纏わせて)
いよいよだな、試験。言っとくが、俺は落ちる事なんて考えて無いからな……ちゃんと付いて来いよ、アイリス
(負けたくない、その思いはきっと相手も同じだろう。そう思いながらアイリスの方を向けば不敵な笑みを浮かべ挑発的な言葉を述べる。ライバルとして、隣を走りたい気持ちは当然ある。しかしそれは、歩幅を合わせるというものではない。どちらかが先に行けばそれに追いつき追い越し、それを繰り返して二人でどこまでも競いながら走っていく、二人が望むものはそれであろう。ならこれに落ちる訳には行かない、自身へ言い聞かせる意味合いも込めて発破をかけて)
あ、そうだ……折角だし競争しようぜ!んで試験終わったあと、討伐タイムが遅い方は早い方へ屋台で奢る…ってのはどうだ?燃えるだろ?
(更に思い付いたとばかりにニシシと笑いながら上記を述べる。競争、負けた方は奢り、というよくあるモノ。因みにどっちが勝っても負けても屋台に行くことになるため、さり気なくデートの確約をしようとしている訳である、当然無自覚、コイツほんま…)
そういや順番はどうだったっけ?ま、出来れば最初と大トリは避けたいよな…
(最終試験は一人一人行うが、基本的に公平を期すため順番はランダムである。やる気は十分ではあるものの、それでもやはり気持ちとしてはその2つは避けたいというのが人情である)
(/試験、祭り……いつもいつも背後様の用意してくださる舞台は素晴らしい……!早速その設定を使わせてもらってライバル&イチャコラの雰囲気作りをしてみました!
そして順番についてですが、ここは思い切って最初と大トリこの二人がやるというのはどうでしょう?どっちがどっちになるかはお任せします!)
おはよう。
それはこっちのセリフよ。アンタがどうなろうが私の結果は変わらないわ。1人落ちてべそかかないことね、アルバート。
(扉が空いた音に立ち上がって振り返る。よく見知った相手の雰囲気がいつもと違うように見えるのは、身につけている武具などのせいだけではないだろう。昇格試験が言い渡されてから、良くも悪くも手の内を晒しあって共に訓練していた相手だが、最後の1週間によって彼がどう成長し、今日どんな戦いをするのかは予測することしか出来ない。しかしまだ少年らしさの残る顔立ちの中に浮かぶその自信が、実力に裏打ちされたものだということは嫌という程知っている。瞳をギラつかせているライバルに此方も自信に満ち溢れた笑みを浮かべて挑発に乗ってやる。口ではキツいことを言おうとも、切磋琢磨してきたライバルと2人今並んでこの場に立てることは素直に嬉しい、願わくはそれがこの試験が終わった時も続いていますように。)
いいわよ、誰かとまわる予定なんてないもの。奢ってもらえるとわかってて受けない手はないわね。
(それでやる気が出るならばなんて安上がりで可愛らしい、どこまでいってもどこか締まらないいつもの彼につい笑みが漏れる。まあ、そんな彼に惚れたのだから仕方がない。予定がないもなにも、ほかの男からの誘いは全部断っておいてこの言い草、少しは素直になったらどうなんだこの女は。)
……アンタ、知ってて聞いてるんじゃないわよね?
(まあそんな嘘をつく必要は無いか、スペースに入ってきたタイミングが悪く聞き逃したのだろう。簡素なスペースの真ん中に置かれたテーブルに順番の記された紙をすべらせてアルバートに渡した。つい先程内外に向けて発表された試験の順番は、最初が彼、大トリが自分。客席の方でもすでに周知されており、かなり若くしての受験である上、それが同い年で2人、しかも幼馴染でライバル同士、そんな2人が最初とトリを引き当てたことに、かなり場内は盛り上がっている状態だ。正直故意に客寄せを狙ったのではないかと邪推してしまうほど美味しい巡り合わせである。)
(/そう言っていただけると嬉しいです、ありがとうございます。此方の稚拙な振りにも熱いロルを返してくださる背後様のおかげで、とても楽しいです。
順番の案最高ですね!前のレスでアイリスが確実に最初ではなさげな描写を入れてしまったので、こうさせていただきました。アルバート君の戦いぶり、とっても楽しみにしております!)
言ったな?後からやっぱ無し!は通用しないからな。
(単純なモノだがやはり賭けるものがあると気持ちも盛り上がる。傍から見ていてもバチバチと二人の間に見えない火花が散っているのが分かるだろう。二人が素直にデートしたりする日は何時来るのやら──)
エ"ッ…マージかよ……
(自身の危惧が大当たりし、ガクリと肩を落とす。素直な見方をすれば、アルバートは一回アレと戦った事があるし、アイリスもトドメを刺しているため戦闘経験有りと言ってもよく、それ込みでの最初と最後という組み合わせなのかもしれない。……やっぱり客寄せの匂いが強い気がしないでも無いけど)
けどま、その方が燃えるっちゃ燃えるしな。いっちょ盛大にぶっ倒して勢い付けてやるか!
(緊張も高まるが、同時に注目度的な意味でも気持ちが燃える。落としていた顔を上げて直様気合を入れ直していると、係員からそろそろ用意を、との声がかかる。武器を持って部屋を出る前に、アイリスの方を振り向けばニッと自信満々な笑みを浮かべ、グッと親指を立てるサムズアップのポーズをしてから会場へ向かっていって)
(──十数分後、会場に向かう。訓練場の隣にある普段はあまり使わないコロシアムのような場所。設置されている観客スペースは既に満員といった様子で、ワーワーと観客の歓声が聞こえ、闘技場に立っていてもその熱気が大いに伝わってくる。だが、それは敵も同じだった。あの時、大苦戦しアイリスに助けて貰った時のモンスターが特殊な檻に入れられて解放されるのを今か今かと興奮気味に待っている。再び武者震い、あの時の借りを今ここで返してやる。自然と武器と盾を握る手に力が入る。しかし、体は熱くても頭はあくまで冷静に。アイリスとの特訓で身に付けた力を持って、今度こそ一人で勝ってみせる。短い深呼吸をしたあとで、試合のカウントダウンが始まった、3、2、1……)
──っし、行くぜ!
(試合開始を告げる合図の笛が鳴り響き、檻が開放されて勢いよくモンスターが飛び出してくる。二人の気合は十分、アルバートも負けじと駆け出して二人の距離がドンドンと縮まっていく。そして二人が接触する、そんな瞬間アルバートは小型化された盾を突き出し敵の攻撃を受け止め──ない。身体が成長したとはいえまだパワーの足りないアルバートは、僅かに盾を向ける位置をズラし、敵を攻撃を力で受け止めるのではなく、小さく力を加えて滑らせるように受け流していた。そしてそこから後は基礎通り、隙きを見せたモンスターを剣で斬りつける。受け止め弾くことより受け流す方が力はいらない分高い技術が要求されるが、元々我流で戦えるほど技術自体はあったのだ。そこに基礎が加わればそれだけの動きを行うのは造作もないこと。きっと驚く同僚や観客達の中で、唯一アイリスだけが今の自分の姿を当然のものとして感心しつつ見ていてくれているだろう。
初撃の流れで戦いを優位に進めるアルバート。しかし受け流すという戦い方は常に高い技術を必要とする分ミスが起こりやすいもので、その上いくら基礎を練習しているとはいえ実際に習ってからまだ1ヶ月程度、応用を使うには少し足りない部分もある。そのため時折受け流しきれず、モンスターのパワーに押されそのまま攻撃を喰らってしまいそうになる瞬間もあったが、そこは流石の身体能力と言うべきか、動く馬車を馬跳びで越してしまうバカげた動体視力も相まって攻撃を紙一重で躱す。足りない技術やセンスは身体能力でカバーするつもりなのだ。
戦いは、受けて、避けて、攻撃する、その基本姿勢を崩さないアルバート優位に進んでいった。派手な攻撃や動きこそ無いが、堅実な立ち回りで着実に敵モンスターを追い詰めていく。そのまま終盤に差し掛かってきたところで観客も、或いはアルバート自身も、勝敗は決したとそう思った。しかし…)
グッ…足が…!
(その時、恐れていた事態がアルバートを襲う。それは足の痛みであった。左足に力が入らない。いくら最小限の力を持って攻撃を受け流していたとはいえ、片足が使えねば動きも緩慢になり受けきれない。唐突に立場は一転する。押されぱなしだったモンスターの攻撃は既に鈍重なものになっているにも関わらず、アルバートは防戦に徹さざるを得なくなった。しかし、動きやすくなるため盾を小さくしたこともあって衝撃を受けきれない。押され始めるアルバートの姿に、単調だった試合に少し飽きていた観客はまた盛り上がり始める。再び上がった歓声に、モンスターも興奮し、更に攻撃の勢いが増す。このままでは……打開策を考えていたが、押されに押され、アルバートはいつの間にか壁を背にしてしまっていた。もう避けられない、ここぞとばかりにモンスターが勢いよく仕掛けてくる)
──ンなろぉ!
(それに対し、何を思ったのかアルバートは盾を投げ捨てた。突然の行動に観客が驚く中、アルバートは盾を捨てた方の手で剣を、そして剣を握っていた方の手で剣の"鞘"を握り、そして剣を地面に突き立ててればそこを足場として使える方の足で蹴り飛び上がってモンスターの身体を飛び越える。確実に仕留めるため突進する敵はそれに反応しようと腕を頭上に振るが、アルバートの自由が効かない左足を掠めるだけで、勢いそのままに壁へ激突し、大きな隙きを晒す。その間にアルバートは急ぎ動かない足を引きずりながら、両手で鞘を握りしめて、渾身の一撃をモンスターの頭上に喰らわせる。
ドサッとその体を地面に倒したモンスター、そして少しの静寂の後、試合終了の笛が鳴り響く。思わぬ逆転劇に観客が湧く中、動かない左足を引きずりながら闘技場を後にするのだった)
あ"あ"、いっで?……
(その後、医務室にて。先程まで勇敢に戦っていた戦士とは思えない声を上げながら治療を受けていた。盾を持っていた左腕にヒビが、最後に攻撃を食らった左足の甲が折れていた。正に辛勝といった様子であるが、大怪我という訳ではないため回復魔法を受けて適切な処置をしてもらった後はある程度自由に動けるだろう。少なくともアイリスの最終試合には間に合うはず…それを聞けばホッとした様子を見せて。因みにアルバートの試合結果は48分34秒、そこまで早くもなく遅すぎるということもない成績、寧ろ左足のアクシデントを考えればそれなりだろう。ただアイリスとの約束的には大いに不安の残る、そんな成績だった──)
(/2回に分けて書こうかと思いましたが1回にまとめてみました!見づらい点があったら申し訳ないです。アイリスちゃんは果たしてこの微妙な成績を超えられるのか!乞うご期待、しておきます!←)
(試合開始の笛をアイリスは関係者スペースから聞いていた、試験場の全てが見渡せる特等席だ。アルバートの試験は激しいと同時に楽しいものだった。共に行った特訓の成果が見えることもアイリスにとっては勿論楽しいが、そもそも街中をパルクールのように走り回るアルバートはギルドの外でも知名度と人気が高い。その気さくな性格も手伝って街中から微笑ましく長年見守られていた彼が、この最後の試験を受けるとなれば、そもそも最初から観客の多くは彼のファンのようなものだ。応援も身内からのような楽しげなものが多く、好意的で笑い声が絶えない。攻撃を受けた時でさえ、叱責ではなく純粋な心配や応援が投げかけられ、盾を投げて飛び上がった時など会場中大興奮だ。敵を切り伏せるだけではない、ギルドへの親近感を沸かせ、依頼をスムーズにこなすため彼の人気はギルドにとって大きな財産になるだろう。モンスターが地面に沈む衝撃音は、街中から愛される冒険者の誕生を派手に彩るようだった。)
そうですか、ありがとうございます。
(あれからアルバートの時ほどとはいかずとも、大いに観客をわかせながら試験は進行した。中にはモンスターに嬲られ精鋭に助けられた受験者もおり、あのモンスターの強さが伊達では無いことが証明される。試験後からずっと医務室前でアルバートの帰りを待っていたが、とうとう自分の番がやってきてしまい試験前に顔を見ることが叶わないまま待機場所へ。アイリスの試験までには医務室を出られるだろうという事だったので、ひとまず安心し試験に集中することが出来た。)
(試験場の真ん中に立ちモンスターの檻を前にして、あの素晴らしい立ち会いを見せてくれたアルバートのライバルに何かを期待した観客のざわつきが煩わしく耳に響く。生まれた時からギルドで育ったアイリスは、街の人々からの信頼がいかにギルドにとって大事か身に染みている。信用のない人間が武器を持つことを人々は良しとしない、良き冒険者は信頼される人物でなくてはならない。誰からも愛されるライバルのようには振る舞えない自分が、勝ち取れる唯一の信頼は"親方の娘"として常に同期の誰よりも優秀であることだ。自分の夢の為ならば、親の威光でもなんでも利用して、今ここでハッキリと観客達に自分が今日の誰よりも、アンタたちが大好きなアルバートよりも優秀であることを見せつけてやる。レイピアを抜いて音を立てて振るうと、檻の中のモンスターのギラギラしたそれと目があった。)
3,2,1……
(タイミングを合わせるように、カウントダウンに合わせて自分でもカウントを呟く。笛の音と同時に檻を開けられたモンスターとアイリスがお互いに向かって突進し距離を詰める。魔法を込めて地面を蹴るアイリスの速度は確かに人間としては逸脱したものであったが、そもそも体躯からして巨大なモンスターにとっては対応できないほどではない。モンスターが頭を振り下ろしてアイリスを噛み砕く、と思われた直前でアイリスが速度を落としたことでモンスターが空を噛み、狙いやすい位置に下げてくれた目をアイリスのレイピアが突き刺した。もしアイリスがただ足を止めただけならばモンスターは気づいたはずだ、それを見越してアイリスは初っ端から魔法を使って全力で走り、フォームはそのままに魔法を切って速度だけを落としタイミングをずらしたのだ。悶絶したモンスターが頭を無茶苦茶に振ったことでレイピアが目から抜けて、体が上空に投げ出される。それがどうした、暴走した魔法で吹き飛ばされて生垣に突っ込む時よりよっぽど威力も方向も予測可能な範疇だ。そのままモンスターの背後に着地すると、姿勢を限りなく低くしてモンスターの足元を一閃。自分より大きい相手と戦う時の戦術は、何度も手合わせしてきたアルバートの十八番だ。案の定背後から足元を切り込まれたモンスターの体が傾いたが、右側を下にして倒れこんだモンスターの左側から切りつけたアイリスの剣はその脚を掠っただけのように見えた。すぐに立ち上がったモンスターにそれ以上の追撃はせず、飛び退いて距離をとる。高度な魔法も、見えなければ一般の観客には伝わらない。脚はかなり早いようだが魔法戦士でありながら魔法も使わず、先程からモンスターがタイミングをミスしたり、たまたま背後に飛ばしてくれたから足元をすくえたり、それも狙いをはずし掠っただけ、幸運なだけで地味な彼女に観客のテンションが下がっていく。)
大型モンスターの命は自重を支える脚であるってね。
(今朝の試験と対照的に野次すら飛び始めた試験場に、左の脚の健から血を吹き出したモンスターが先程とは反対側に倒れ込んだ音が響き、その野次を黙らせる。1回目に倒れた時に自重で右足も痛めただろう、今度はすぐには立ち上がれずにもがくモンスターに助走をつけて近づくと剣を振り上げる、今度は観客でも確実に魔法だとわかるだろうほど遥か遥か高く跳躍するとその首を狙って剣を振り下ろした。
しんと静まり返った会場が、試合終了の笛によって正気を取り戻したかのように大トリに相応しい温度を持って沸く。モンスターと観客に向けて優雅にお辞儀をしてから、今日の誰より早いタイムをたたき出し、軽やかな足取りで試験場を後にした優等生は、観客の目が届かないバックグラウンドに足を踏み入れた瞬間、意識を失って冷たい地面に向かって倒れていった。
アイリスの武器は剣と魔法だけではない、むしろ執拗なまでに情報を調べ対策をねる執念が、力も体力も男に劣る彼女をここまで支えてきた。その彼女にとって敵の正体が判明し、しかも一体のみというこの試験の条件は相性がよく、今日のモンスターの強みや急所は調べ尽くし頭に叩き込んであった。この1週間で更にあの魔法を磨いて判明した弱点に、体力の消費が著しいというものがあった。足の防御とともに爆発を狙った威力で、しかもそれを足で行う集中力を考えれば当然だろう。長期戦に持ち込めば勝ち目はないと判断したアイリスは、考えうる全てのシナリオを作り上げて試験に及んだ。自分の体力と魔法の限界、獲物の距離と速度を判断し噛み付いてくる賢さ、急所である目をどのように狙うか、暴れた時の首の可動域に、足回りの筋肉の位置。このまま倒れても医務室に運ばれ、目を覚まして体力の問題だと分かれば帰してもらえるだろう。でも、この期に及んで気になるのはアルバートとの賭けのことで、医務室に運ばれたら出店は許して貰えないだろうなと地面に叩きつけられるまでぼんやりとそれだけを考えていた。)
(/熱い戦いに長さに気づかないほど一気に読みこんでしまうほど、とっても読みやすかったです。こちらこそ更に長くなってしまい、拙い点も多く申し訳ございません。アイリスはこの後何がなんでも出店に行きたがると思うので、アルバート君に食い意地が張ってると思われそうですね←)
ああ、良かった。間に合ったぜ……
(松葉杖を付きながら急いで会場へ向かい。関係者スペースに辿り着いたのは、丁度カウントダウンが始まったタイミングで。ホッとしながら椅子に座り、ライバルの試合に集中する。既に自分の試合が勝利で終わっているためか、その表情には余裕と安堵が浮かんでいた。しかし、アイリスの動きを見た瞬間表情は一変する。恐らく観客は気付いていないが、普段から一緒に居るアルバートや、聡い他のギルド団員なら気付いているだろう、今のアイリスの、動きの異常さに)
アイツ…跳ぶだけじゃなくてそんな所にまで…!
(アイリスは魔法剣士であり、その魔法の使い方は昔から巧みだった。前に手合わせした時も、ここぞと言うタイミングでフラッシュを使う、そしてこの一ヶ月は足元をカバーしながら魔法で大きく跳躍する等、派手さはないが実用的で的確だった。そして今、アイリスの動きは傍目には地味だが分かる人間にとっては恐ろしさすら感じさせるものだった。通常人間はスピードを緩める際それが動きに現れる。勿論単なるフェイントとしてそれも十分有効であるが、アイリスのそれは1段階上、「動きを変えず動きに緩急をつける」これをやられてしまえばどんなモンスターも、或いは相手する人間もお手上げだろう。最初はアイリスの試合を楽しむつもりだったが、いつの間にかその動きにアルバート自身も圧倒されていて。自分ならこう対応するだろう、こう対策するだろうと、次にアイリスと勝負する際の自分の動きのシミュレーションを真剣に始めていて。一見地味な戦いのため、観客から野次も飛ぶが、それすら耳に入らないほどアイリスの動きの観察に集中していて)
凄え……!あ、いってぇ……
(そして決着が付く。その頃には流石に観客も、自分を含めた今までの受験者が散々苦戦した敵を翻弄するアイリスの動きに対し驚愕し、惜しみのない称賛を送っていた。自身もそれは変わらず、思わず立ち上がって拍手をしてしまうが、それが傷に響いてしまい涙目になっていた。ともかく、直接この気持ちを伝えようと慌てて松葉杖を取ってアイリスの元へ向かう。しかしアイリスの元にたどり着くも、そこには倒れ込み医務室に運ばれるアイリスの姿があって)
……そう、だよな。アレだけの動きして身体が無事なわけ……なぁ、アイリス。やっぱお前、すげえよ……
(華麗で誰よりも早く、まるで苦もなく打ち払ったかのように思えたそれも、実際にはギリギリだったのだ。人体には無茶な動きをすればこうなる事は必然であり、改めてアイリスの凄さがどこにあるのかを思い知る。やると決めたら絶対にやり遂げる、鋼とも呼べる意思の強さ…運ばれるアイリスに付き添い、その目が覚めるまで一緒に居ることにして──)
──だからダメだって言われただろ?今日はもう一日安静だって。え?タイム負けたから僻んでるって……べ、別にそれ関係ねえし!大体左足のアクシデント無かったら絶対お前より早く倒せてたっつーの!
(そしてその後、目を覚ましたアイリスと医務室にてギャーギャー騒ぐ二人の様子が見受けられた。出店に行きたいというアイリスに、駄目だというアルバート。アルバート本人はこう言ってるけど、多分タイムで負けたことは相当根に持って悔しがっていると思われる。あと別に左足の件が無くても絶対タイムは負けてた)
大体なんでそこまで出店に行きたいんだよ……お前って、結構食い意地張ってたんだな。いやまぁ気持ちは分かるけど……
(デートなんて微塵も思っていないためだろうか、相手のどうしても出店に行きたいという気持ちが「食い意地」からという認識になっていて。うんうんと同意するように深く頷きながらも、賭けは賭けだし、何か別の埋め合わせをと考えて)
じゃ代わりに今度どっかアイリスの行きたい所行こうぜ、そこで俺が奢るからさ。それでどうだ?
(そして結局デートの約束である。騒ぐ彼らをヤレヤレと眺めていた医務室のおばちゃんが、若いねぇとニヤニヤしながら此方を見ている気がする)
(/めちゃくちゃアイリスちゃんカッコいいですね……最後に弱いところを周りに見せたくないという所まで含めてイケメン過ぎますね……
そして少し勝手にキャラを動かしてしまいましたが、大丈夫でしょうか?もし気になったら書き直しますので!)
行く!行きたい、約束よ!絶対だからね。
(目覚めた第一声から「出店……」で医務室中から怒られた。倒れる前の予想通り帰宅は認められたが、まっすぐ帰ることと一日安静にすることが条件、話を聞きつけたらしい父から片付けが終われば迎えに行くからそこで待っていろと伝言で念を押され逃げることも叶わず、本人のアルバートにまで叱られれば完全に拗ねて嫌味のひとつも言ってやりたくなるのが人情で。周りの目も気にせずにグズグズと騒いでいたが、アルバートに多少理由が的外れながらもデートに誘われればみるみる機嫌を治して目を輝かせる。ベッド脇のテーブルに手を着いて身を乗り出すと、真っ直ぐに見つめて念を押す程の力の入りようで。そうして少し落ち着くといつもの調子が戻ってきたようで、ベッドに大人しく戻りながらアルバートの松葉杖に目を止める。)
あ、でも……アンタの足がこれじゃあしばらく先になるかしら。それにしても、1週間でとても強くなってて驚いた。
(アルバートの足を見て試験を思い出すと、先程までの子供っぽい態度はなりを潜め、今日の試験についていつもの特訓の時のような分析が出る、それ以外も観客席の反応やら色々、本当は自分の試験の前に話したくて仕方なかったことをやっと口にすることが出来た。疲れや冷めやらぬ興奮などから少し素直になっているようで、珍しく手放しの褒め言葉が並び、極めつけにアルバートの手をとるとそれは嬉しそうにほほえんで、最大級の賛辞を。)
私、今日何度もアルバートのライバルなのが誇らしいっておもったわ。
(/ありがとうございます。此方の意図を正確に読み取っていただけて嬉しいです。
勿論大丈夫ですよ!試験が終わったら渓谷に行く前にデートもやってみたいな、とか思ってます←)
あ、ああ……まぁ怪我も実戦に戻るのがちょっと長いくらいで、どっかに出かけるくらいなら2週間もすりゃ大丈夫って言われてるしな、そう待たせることはないと思うぜ
(怪我の具合に関しては、腕はあくまでヒビだけで、足の怪我も、折れた部位が足の甲ということもあってそこまでの大事には至らなかった。とはいえ骨折は骨折、医療魔法を用いても完治までには1ヶ月ほどかかり、その間動けないのはもどかしい。そんな中誰かと出掛ける予定が作れたのは嬉しいことである。その反面、かなり食いつきがいいのを見て果たしてどこへ行ってどんなものを奢るのだろうか…という若干の恐怖もあった)
ああ、それもこれも全部アイリスのおかげだよ。アイリスが教えてくれたから俺はこうやって……ッ…それは、凄え嬉しいな……
(それを全て可能にしてくれたのは他でもないアイリスの存在があったからこそだった。丁寧な指導も、切磋琢磨していくライバルとしての存在も、自分にとってかけがえのない物である。それを担ってくれるアイリスあっての自分という自覚がより強くなってくる。そんな中、いつも以上に優しく柔らかな笑顔を向けてくれるアイリスが自分の手を握ってくれる姿、そしてライバルとして自分を賛辞してくれる姿に、今まで気付かなかったトキメキのようなものを感じて。ドクンと少し心拍数が上がり、頬が赤くなる。それを何となく悟られたくなくて、ぎゅっと手を握り返しながら俯く。傍目には褒められて照れているようにも見えるかもしれない)
そ、それに…俺も今日のアイリスの戦い振りを見て、ずっと凄いって感じてた。あんな高い技術と、誰よりも強い意思を持ったアイリスがライバルで居てくれたから俺はここまで来れたし……これからも、そんなアイリスと一緒なら二人でどこまでも行けるって、そう思ったんだ。
(照れ隠しのように自分の話題から逸れて、お返しにアイリスに対して今日思ったことを素直に告げる。話していくうちの顔の赤さも消え徐々に顔を上げていき、最後にはニッと笑みを浮かべながら同じようにアイリスへの惜しみない賛辞と自分の気持ちを送って)
(/では次は2週間後くらいにデートへ行くという場面からやっていきましょう!……アルバートはちゃんと女の子との外行き用の服とか持ってるのかな…←)
うん、ありがとう、嬉しい……
(手を握り返されれば今度はアイリスが赤くなる番で、アルバートの言葉に同じように俯いてはにかむとしおらしく小さな声で上記。自分から始めたこの会話に何を続ければいいのかわからなくなって、それでも終わらせるのがおしくて、少しかさついた身長の割に大きい手を離せずにいたところで、「待たせたな!」と医務室の扉がやかましく開いた。どうやら片付けを終えて上機嫌らしい父がズカズカと医務室に入りこみ、元々そこまで広くない医務室が大男が増えたせいでさらに狭くなる。あまりのタイミングに手を離すことも忘れ固まっていると例のごとくデリカシーの欠片もない口が開いて「なんだ、とうとうくっついたのか?」普段であれば最後まで言わせはしないが、疲労の蓄積した体ではそれも叶わず、悲鳴をあげながら寝具に顔をつっ伏すしか無かった。)
違います!!!!!!!!!
いえ、人と待ち合わせしてるので……
(遠慮するアルバートと共に問答無用で父に担がれて帰ったあの日から2週間後の土曜日、試験の合格発表を明後日に控えて、今日はアルバートと出店の代わりに約束したお出かけの日で。あれから怪我をしたアルバートは勿論、アイリスも自分の限界を見極めずに動いたことを親方にこってり絞られ、合格発表の日までは依頼は当然のこと、訓練も体力を落とさないレベルのもの以上は禁止され暇を持て余している日々だった。それ故に久しぶりの訓練場以外への外出もあってかなり上機嫌で家を出たのが今朝のこと。アイリスがアルバートとのお出かけ先に選んだのは、ギルドの近くで週末に行われているマルシェ、日用品や雑貨以外にも、食べ歩けるような料理の店が多く並ぶ賑やかなもので、噴水広場での待ち合わせに30分近く早く着いてしまったアイリスはそれはベタなテンプレのナンパに絡まれていた。膝上丈の可愛らしいがマルシェの雰囲気にあった気合いのはいりすぎないラフなワンピース(家中のワードローブをひっくり返してあーでもないこーでもないと大騒ぎして選び抜いたとっておきだ)に下ろした長い髪の綺麗な少女が、あまりの執拗さにそろそろ自分の方の身の安全を確かめた方がいいほど拳をキツく握っているとはナンパも気付いてないのだろう。)
(/ありがとうございます。
デートの途中に、暴漢かひったくりを追って入った路地とかで、謎の組織の下っ端に遭遇するというのを考えたのですが如何でしょうか?魔力のある子供を誘拐しかけていたとか、直接対峙しなくてもモンスターを凶暴化させる実験をしてる連中の噂を聞くとか、渓谷に行った時になにかヒントになる情報をここで得ておくのはアリかなと思いまして。イチャイチャも、お互いの体調が万全でない状態で協力するライバルも、メインストーリーも盛り込めるかなと、勿論ただのイチャイチャデートも大歓迎ですので(´ー`))
(親方にくっついたのか、と言われるもアルバートはやはりどういう意味か気付いておらず。その場は同じように親方に連れられて帰っていった。しかしその後、治療のため週に一度訪れる医務室において、「彼女とのデートまでに治さないとね」なんてことを言われようやく親方の発言の意図を知る。但しそれでもやはり当人に自覚は無い様子で、その場では「いやいやそんなんじゃ無いって」と照れた様子もなくあっけらかんと否定する。だが、宿舎の自室に戻ってふとこの前医務室で見たアイリスのしおらしい態度や表情を思い出し、それを先程の彼女発言と重ねると、さしものアルバートも少し顔を赤くし、モヤモヤとした何か不思議な感情が胸を締め付ける気がしていて。ブンブンと頭を振ってしまえば振り払えるだけまだ幼い感情ではあるが、確かに『それ』はアルバートの中に芽吹いている様子だった。
因みに──回復系の魔法には、通常の回復魔法、医者の使う医療魔法と、僧侶の使う治癒魔法、大きく分けてこの3つが存在している。回復魔法は失った体力を元に戻したり、痛みを和らげる魔法。医療魔法は患部の治療促進を促すいわば薬のようなもの。そして僧侶の使う治癒魔法は上記の回復魔法と医療魔法、両方の効果を有しており、更に神の加護を受けた肉体に対してはその効果が増大し、通常であれば数ヶ月の入院が必要な怪我も立ちどころに治してしまうとされていて、少人数の勇者パーティーが大戦果を挙げるもっとも大きな要因は、この神の加護による治癒能力促進にあると言われている。僧侶の治癒魔法がしばしば『奇跡』と呼ばれる理由もそこにある。──メ=ラタデ書房刊「回復系魔法の歴史」より)
(動けない間は(普段本に興味がないアルバートでも笑いながら読めるレベルの)そんなくだらない本を読んでいたこともあり、アイリスとデートの時のネタにでもなれば良いなと思いながら……いや、デートではない、単に一緒に遊びに行くだけだ、決してデートでは……そんな謎の葛藤をしつつも当日。胸元に紐のついたレースアップのシャツという無難な格好を選択、まぁそもそも他に外行き用の服が無かっただけであるが。髪型は普段よりしっかり整えることを意識し、少なくともアイリスに手直しして貰わなくとも大丈夫な状態にして。そしてソワソワする気持ちを抑えられず、少し早めであるが20分前くらいに付くよう宿舎を出て待ち合わせ場所に向かって)
ん?アレは……
(待ち合わせ場所に近づくも、どうやらまだアイリスは来ていない様子だった。代わりにストレートヘアーの見知らぬ綺麗な少女が、ナンパ男達に絡まれているのを発見する。見るからにその少女は困っているようで、見かねたアルバートが急いでその少女と男達の間に割って入って)
お前らやめろよ、その子困ってるだろ!
(背丈こそ無いものの、普段から戦いの中に身を置くアルバートにとってナンパな男を威圧し引かせる事は造作もないことだった。男達が引いたあと、ふぅっと一息付きながら「大丈夫だったか?」と振り向くと、そこには先程まで別人だと思っていた幼馴染の姿があった)
え、あれ…アイリス?
(少し離れたところから慌てて駆けつけたためちゃんと見ることが出来なかったとはいえ、いつもなら間違えることは無かったであろうが、髪を下ろしているのと、いつも以上に女性らしい格好と雰囲気が見間違えさせたのか。無論普段もかなりの美人であり女性としての魅力に溢れているが、今の彼女はそれよりも綺麗だった。それこそ間違えてしまうくらいに)
あ、わ、わりぃ……その、凄く綺麗で……
(一瞬見惚れて反応出来なくなっていたが、2週間前から少しずつアイリスに対して感じていた淡い気持ちと相まって顔を赤くして、そのうち直視できなくなる。頬を掻きつつ、ひとまずは別人と間違えてしまったことを謝罪しつつその理由を述べて)
(/おお、良いですね!末端が人の目につくと、それくらい組織が拡大しているって感じがしますね。
魔力のある子供が誘拐されているのを助けて、最近子供だけでなく魔力の強い人が度々拐われる事件が起こっており、その拐われた人が何故か北の渓谷で見つかったりっていう話を聞くとか。そういう感じでどうでしょう?勿論前後でイチャイチャもしつつ←)
は、え?……な、何言って、、その、ありがと……その、アルバートも、?ッなんでもない!!
(それがあと1秒でも遅れていれば、自慢の右ストレートをナンパの顔にお見舞してやるところだったが、スレスレで聞きなれた声が聞こえてその拳を下ろす。好きな人にナンパから救ってもらうという胸きゅん必至なシチュエーションであったが、此方も戦い慣れた身であり残念ながらイマイチ響いてない様子で、むしろアルバートの"この子"などのどこか他人行儀な様子に意識を取られていたらしい。どうやら自分だと気づいていなかったらしいと察すると少し機嫌が悪くなったが、その理由はほかの女の子に優しくするアルバートを想像して嫉妬したためである。アルバートの普段見なれていない仕事服以外の服が新鮮に映って、こんな彼に助けられたら好きになる子も絶対いると思えば胸が痛んだ。しかしその彼の間違えた訳を耳にするとみるみる真っ赤になって、口をパクパクさせる。なんとか尻すぼみな感謝を口にしたがとうとう耐えきれなくなってプイと視線を逸らすと、マルシェのある通りの方へ向けて、アルバートの手をとってずんずん歩き出す。それが医務室にいた時と同じ手だと気付くのにはしばらく時間がかかりそうだ。)
ほら!さっさと行こ!!売り切れちゃう!
(/良いですね!それではその方向でよろしくお願いいたします。)
お、おう!そうだな!
(いつの間にか二人に漂う甘い空気。それは決して嫌な物ではなく、寧ろ居心地の良いものであるがどこかむず痒い。そんななんとも言えない状況を振り払うようにアイリスから引っ張られると、フッといつもの二人に戻ったような気になって。心に去来するのは安堵、そして少し残念なような気持ち。後者には気づかないまま二人並んでマルシェを歩いていれば、その様々な物が置いてある楽しい空間に、次第に心を踊らせていく。もしかしたら誘った側のアイリスよりも興奮しているかもしれない)
これ凄いな、こんな料理見たことない……あ、アッチもなんか変わったもん置いてある!行ってみようぜアイリス!
(大勢の人混みのなか、並ぶ屋台に興奮しっぱなしで。元々こういう場所が好きなタイプであったが、お祭りの時の屋台とは違うそのラインナップに子供のようにはしゃいで居て。いつしか引っ張る側がアイリスではなくアルバートになっていたが、そのことに気づかないまま種々多様な屋台を見ては目を輝かせていて)
──ん?アレは………待て!!
(そんな風に半ばアイリスを振り回しながら屋台巡りを楽しんでいると、突然叫び声が聞こえてくる。「ひったくりー!」という高い女性の声だ。声のする方を見れば、男が女性物のカバンを抱えて走り去っているところで。見過ごす訳には行かないと、アイリスとアイコンタクトをすればその場から走り出して。人混みで中々上手く進めないが、ここはギルド近くの通り、子供の頃アイリスといつも遊んでいた二人にとっては勝手知ったる庭のような場所だ。アルバートが男を追いかけて、アイリスは違う道から男を路地裏で挟み撃ちにする、さっきのアイコンタクトはそういう算段で送ったもので。まさに阿吽の呼吸といったところ)
こら、前見なさい!
(マルシェの人混みの中をはしゃぐアルバートを窘めるアイリスだが、内心は引っ張られる手の温度や、周りからカップルに見えるかも、などマルシェとはまた違った理由でいっぱいいっぱいになっていて。色々な屋台によそ見している窘めつつもずっと頬を上気させてホクホクと嬉しそうについてまわっていただけに、空気を読まないひったくりへの憎悪は私情が大いにからんだ激しいものだった。アルバートのアイコンタクトに応じて路地へ飛び込むと、低くとび出たベランダや乱雑したガラクタを器用にくぐり飛び越えて、時には壁を登って駆け抜ける。街の外での活動が多いとはいえ、ギルドの冒険者は市街での戦闘すらも想定した訓練を叩き込まれる、ましてや完全なギルドのホームで小悪党を逃がすような2人ではない。ものの数分で逃げ場のない1本の路地でアルバートに追われるひったくりと正面から鉢合わせすれば、そのまま速度を緩めることなく自慢の飛び蹴りをお見舞いしてやった、いやしてしまったという方が正しいかもしれない、今日の自分の格好を忘れて。顔面にしっかりとくらって気を失ったひったくりはともかく、だいぶ追いついたとはいえ少し離れた距離にいたアルバートにはバッチリだろう、何とは言わないが。)
……ったく、このまま憲兵に突き出してやりましょ。
(自分のやらかしには気づかずに気を失ったひったくりを転がしてカバンを取り上げ、ゴミ捨て場から拝借した縄で縛り始める。せっかくのデートの時間を邪魔されたが、今からコイツを引き渡してすぐに戻ればまだ時間はあるだろう。ふと顔をあげると、アルバートの後ろで小さな子供が猫を撫でているのが目に入る。身なりやお世辞にも治安のいいとは言えない場所からも、貧民層の子供だろう、もしかしたら孤児かもしれない。どの街にも暗い側面はあるものだ。アイリスにも思うところはあるが、いちいち手を差し伸べていたらキリがない、せめてひったくりを引き渡すついでにもう少し治安のいい場所へ誘導してから戻ろうかと考えて、アルバートに視線で背後をさして提案しかけた瞬間、子供の背後からにゅっと大きな手が伸びて子供の口を覆うのが見えた。あっけないほど静かに路地の影に引きずり込まれた子供に一瞬目を疑うが、明らかにその足が目が助けを求めて暴れていて)
アルバート!後ろ!!走れ!!!
(詳細を説明している暇はない、あの角まで走ればすぐだ。その姿を見れば誘拐だとすぐわかるだろう。まだひったくりを縛り終わっていないため、多少雑になってしまうが焦って結びながらアルバートに叫んで。)
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