通りすがりさん 2020-08-10 15:27:28 |
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(深夜・皐月の家にて)
……静かだな…。
(もうここ3年程は1人暮らしをしているものの、その日はいつにも増してその非喧騒さが自分の心をつつく。
暗い部屋、自分の毛布に身を包み、外から聞こえる虫の音や木々の揺れる音を聞きながら散歩にでも行こうか…と皐月は着替える。
と、そのとき…ふと先生の言葉を思い出し護身用の為昔爺ちゃんに貰った、厄介払いの為の木刀を肩に背負いつつ家の外へ足を踏みだした…)
………。
(「無月」は無言で本の山に埋もれながら、
本を読んでいた。恐竜時代の事がまるで直接見てきたかのように事細かに記された本や、江戸時代の制度を直接経験したかのような視点から書かれた問題点の本…)
ゴクッ…ぱぁ~っ…ウマい!
(皐月は自宅からそう遠くない所にある川の河川敷の縁に腰掛けて、月明かりに反射して綺麗に光る川を道中コンビニにて買ったジュースとスナックをつまみながら眺めて居た)
ここ落ち着くんだよなぁ~…(いっそここで寝ちゃおうかな(笑))
(昔から事ある度にここへ来ては今とさほど変わらないことをしていた為、それを懐かしみながら背中の木刀を自分の真横に置き大の字に寝転がって空を見上げ、普段通りなのにどこか幻想的に感じる月を綺麗だな…と呟きながら見つめ)
「ふふ…ふふふ…」
(不気味な低い歌声が遠くから響く…
ずり…ずり…と金属が地面と擦れ合うような音と共に…)
ふぁ~ぁ…zZ…(そろそろ…帰るか…)
(すぐ近くで川が流れているせいか、ソノ音には気づいておらず、起き上がってジュースと菓子の袋を近くのゴミ箱に入れて伸びをして)
あっ‥!(あっぶなー!忘れるとこだった‥。)
(先ほどまで自分が寝ていた所にある木刀に気づき、小走りで取りに行き)
「…首……ある……?」
(影でよく見えないが…巨大な肉切り包丁を地面に引きずっている大男の人影がそこにあった。)
っ!?ひっ…!(う、そ…だろ嘘だろ!?)
(突然現れた大男の威圧感と手元の肉切り包丁の殺意に気圧されて一歩後ずさり、そのおぞましさに悲鳴を上げそうになるものの、近所に見られると後々厄介なのでソレを押し殺し手元の木刀を握り締めて、この通りを真っ直ぐ行けば山がある為、そこでヤツを撒こうと一直線に走り始めて)
「…首……くれよ…」
(大男は肉切り包丁を引きずりながら貴方を追いかける。街灯に照らされると、その姿が明らかになった…ぼろぼろの服に、血で光る肉切り包丁、
そして男の首はありえない方向に捻じ曲がっている…)
…うっ!くっ…はっ‥はっ!(っ‥くそっ!)
(ヤツの位置を確かめようと振り返り、姿形が明らかに人とはかけ離れた化け物だということが分かり、そのグロさに嘔吐きながらも走り続けて)
「………」
(大男が巨大な肉切り包丁を地面に引きずる度に、地面の土に先端の溝が刻まれる。曲がった首の先の…そこだけ奇妙に整いすぎた美形の顔が口角を歪に吊り上げたような気がすると同時に、大男はそれまでゆっくりと歩いていた速度を急激に加速させ、貴方との距離を詰める。)
なっ!?っは!っはあ!
(後ろの足音が急に近くなった気がして顔をこわばらせて下唇を噛み締めながら、ようやく山の麓に着いたことに少し安堵を現れにしつつも、全力疾走を緩めることなく‥しかしこんどは相手のその巨大な刃物を生かしてワザと通りにくい獣道を走りはじめて)
「………」
(大男は邪魔そうに草木を包丁で断ち切りながら貴方を追うが、生い茂る草木に邪魔されているようで先程よりも速度は落ちた…)
っ!?(木が!?あの包丁そんなに切れ味いいのかよっ…!)
(野菜を切るかのごとく木やら草やらを切り進むヤツに顔はどんどん青ざめていくばかりで、目の前に崖のようなものが聳え立っているのが見え、「(嘘だろ!?)」と目を見開き、整わない呼吸で過呼吸気味になりながらも、くるっと後ろに回旋して背中から木刀を抜いて震えながらも構えて)
「…首…」
(大男はその奇妙なほどに整いすぎた顔でにやにやと笑いながら、引きずっていた肉切り包丁の切っ先を貴方の首に向ける…)
はぁっはっ…っ…おりゃぁあああ!!!
(震える手で木刀を握り直し、走りながらソレを振りかざし、「(じいちゃんの加護付きだからぜってぇ木刀は切れない!!)」と恐怖を押しのけるように願って)
「……!?」
(大男は自身の肉切り包丁で思うように切れない木刀に困惑しているようで、整いすぎた顔立ちが歪む。)
「……………」
(大男は一瞬ぐらつくものの、すぐにバランスを立て直すと肉切り包丁を振り下ろす。その包丁の切っ先が貴方の鼻先を掠め)
「………」
(大男はこれまでより、ずっと…歪な笑みを浮かべたかと思うと肉切り包丁を貴方の首に…)
「……なァ…俺のこと、覚えてる…?」
(笑みを含んだ、不気味な声が大男の背後から聞こえる…)
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