執事 2020-07-30 19:43:59 |
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体を起こさなければ、起きているとは見なしませんよ
(うっすら開いた彼の瞳を確認し、いじわるなことを呟く。今日の朝食はポタージュと焼きたてのパン、その他二、三品を説明する、いつものようによく回る舌に不調は感じられないが、カーテンを開けたのち、クローゼットから服を取り出そうと杖を振ってみたのだが、全く反応せず_つまり、失敗しているのだが、それに気づいていないようでまた杖を振り)
朝から意地悪だな、お前は……
(彼の言い分にむ、と不服そうな表情で身体を起こし。まだ若干の眠気が残るが、ここでうだうだと粘っていても終わりのない毒舌が飛んでくるだけ。ふあ、と大きな欠伸でその眠気を払拭すると、いつも通りに朝食を済ませ。さあ次は着替えか、これもいつも通り、彼が着る服を準備してくれる……筈なのだが。何故だか上手くいかない彼の魔法に不思議そうに首を傾げ)
どうしたヴィラ、何をしてる
私も人間ですから、失敗するときくらいありますよ
(その後3回目でいつものようにクローゼットから服が飛び出し、彼に着られるのを待っていたかのようにベッドの上に置かれた。なんら難しくはない、ただの日常で使う魔法で失敗するなんて、どうしたのか聞きたいのはこっちの方だ。不思議そうに首を傾げる彼に、"私を何だとお思いで?"そう返したもののいつもしない失敗をしているのは明白であり、)
…………、
(彼の言葉には若干の疑問を持ちつつも用意された服に着替え。人間なのだから仕方がない、確かにその一言で片付けられてしまう問題ではあるのだが、どこか胸に引っ掛かりを覚えてしまう。その不信感を取り除くためにも、ここは一つ彼を試してみることにして)
おいヴィラ、もう僕の勉強の時間だろ。
机に問題集を準備しろ。そこの本棚に仕舞ってある筈だから、
おや、明日は空から槍でも降るかもしれませんね
(彼から勉強の用意をしろだなんて、どういう風の吹き回しだ。慣れた手つきで勉強道具が独りでに机に広がるイメージをしながら杖を降ったのだが、教科書たちが浮くどころか独りでに動いたのは全く関係のない観葉植物であり。…つまりはイメージが上手くできていないのだがそれにも気づいておらず、まだ少ししか力を使っていないのに既に息は荒く、)
(やはり、今日の彼は明らかにおかしい。……彼を試してみて正解だった。この呼吸の乱れ具合、イメージが続かない、つまりは集中力の途切れ…これらの症状から導き出される結論なんて限られているだろう。彼の様子からしておそらく、今の自分の状態でさえ理解していないのではないか。…ともかく、このまま放っておくわけにはいかない。側にあった椅子の一つを引くと、そこに座るよう指示をして)
…一度座れ。お前は今日、魔法を使えていない。
…お坊ちゃんには言われたくないのですが…
(魔法が使えていない?彼に言われるということは、認めたくはないが本当に使えていないのだろう。それを彼に指摘されてからやっと気づくだなんて_そういえば、今日は考えがまとまらない。まるで透明のフィルムに頭が覆われたようだ。ふらりとよろけるようにして彼に言われた通り椅子に座れば、どこか焦点が合っておらず顔も火照っていて、)
今日はもう休めヴィラ、凄い熱だぞ……
(ぺたり、座り込んだ彼の額に、自身の手のひらを押し当てる。熱い。いくら執事とは言えど、こんな状態で仕事なんて頼めるわけがない。部屋まで戻って安静にしているように促し、そっと彼の背に手を当てて)
取り敢えず寝室まで戻るぞ、……動けるか?
は、………すみません
(凄い熱だなんて、そんなはずはない。なぜなら、彼の世話をするにあたって、まずは自分の体調が万全でなければ仕事の効率も何もかも落ちるからだ。だからこそ気をつけていたはずなのに、1度熱だと言われると自分の状態がやっと自覚できたようで、素直に彼の言うことを聞けばゆっくり立ち上がって)
(立ち上がった相手を支えながら廊下を通って彼の寝室まで移動し。そのまま彼を寝かせて布団を掛けると同時に口を開いてそう言い残し、濡れタオルを取りに行くため洗面台の方へと足を進め)
今日一日はしっかり休むんだな。今タオルを持ってくるから、
…どこに、行かれたのですか…
(情けない、これでは執事の意味が無いではないか。大人しくベッドで寝ていたのもほんの少しで、上半身だけ起こして辺りを見れば彼の姿が見当たらず。熱さと怠さ、加えて鈍く響くような頭痛で頭が回らず、ついさっき彼の言っていたことすら思い出せなくて探しに行こうとするものの、これ以上体を動かせなくて今の姿勢のまま、ぼーっとドアを見つめており)
勝手に起き上がるな…!
(水の張った洗面器とタオルを持って彼の寝室へ向かう。がちゃり、ドアを開くと視界に入ってきたのは虚ろな目で此方を見つめる彼の姿。水を溢さないよう気を付けつつ洗面器をベッドの片脇にある机へと置き、半ば無理矢理起き上がっていた彼を横に寝かせ。水に浸して冷たくなった濡れタオルを絞って折り畳むと彼の額へと乗せる。汗を拭き取りながらも、病人なんだから安静にしてるよう釘を刺し)
今日一日は寝てろ、勝手に動いたら許さないからな
すみません、こんな姿を…
(戻ってきた彼を見ては、ほっと安心したように僅かだが眉を下げ。そのままされるがまま、ベッドに寝かせられては額にひんやりとした感触を感じて。
こんなことを主人にさせている情けなさだろうか、熱のせいだろうか、素直に零れた言葉は弱々しく、)
そこにいてください、見えないのは不安だ…
……僕は離れない。安心して休んでろ
(普段の彼からは考えられないような彼の弱々しい声色に、少し胸が締め付けられる。思わず表情が曇ってしまいそうだが、彼に変な心配を掛けさせないためにもここは平常心で振る舞って。彼の汗を拭いたタオルを一度畳んで避けておくと、ベッドの傍に置かれていた椅子へと腰掛け)
食欲はあるのか?……熱の時は体力を使うからな、何か食べたいものは?
いちご…
(安心して休んでいろ、そう言われれば少しは落ち着いたようで。なにか食べたいものと聞かれて、真っ先に思い浮かんだのは好物のショートケーキ。だがしかし、歩くのもしんどいこの体調でショートケーキは食べれたものじゃない。ならば、いちごだけでも口にしよう、温かいスープよりも冷たい果物の方が喉を通りそうで、彼にそのことも伝え)
……分かった、
(返答を聞くに食欲はまだ残っているようだ。こくりと頷いて了承すると、彼の要望の品をはてさてどうやって手に入れようかと思考を巡らせ。まず第一に思い浮かんだのは魔法で苺を生成する方法。……普段物を動かすだけでも一苦労だというのに、果たして何もない空間からいちごなんて出せるだろうか。今の自分の腕前からしてそれは難しいか…そんな結論に陥るが、苺の入手方法は振り出しに戻ってしまった。きっとキッチンの方へ行けば冷蔵庫に幾つか果物が冷やされてあった筈。彼の病状からしてここを離れるわけにはいかない、因って導き出される答えは1つ「冷蔵庫内の苺を魔法でこの寝室へと運ぶこと」。距離はあるものの、前述した方法よりも成功する確率はぐんと上がっただろう。そうと決まれば杖を構え)
少し待てヴィラ、直ぐに苺を持ってくる
…できます、?
(ちらりと彼を見れば、杖を構える姿。…どうするつもりなのだろう、予測を立てることも出来ない。熱ってこんなにしんどかったっけ、改めて自分の体調の悪さを自覚する。それでも、杖を構えたということは魔法でどうにかするつもりなのだ。彼の魔法の力はどれ程か理解しているので、ぽそりと不安げに問いかけて)
僕の魔法を甘く見るな
(不安そうな彼を振り返ると「病人は黙って見ていろ」とでも言いたげな声色でそう返して。その後手元の方へ意識を戻すと、冷蔵庫から苺を取り出し此処まで届く、その一連の流れを想像しながら杖を振り下ろす。……数秒後、どんっ、と此処の扉に何かがぶつかる音、扉を開くとその先には苺の入った籠が転がっており。幸いにも中身は出ていない。冷やされたその籠を拾い上げ彼の元へ戻って。その途中、彼の寝室の扉が軽くへこんでいたり、料理人の叫び声が聞こえてきた気もしないが、そこは見なかった、聞かなかったことにする。先程拾ってきた籠を彼の前へ掲げ)
ほらなヴィラ、僕だってやる時はやるんだ
ふふ、…成長しましたね
(見事苺を用意することに成功したらしい。振り返った彼が自分の前に掲げた籠、それは苺を入れるもので。ゆっくり体を起こして中を見れば確かに苺が入っており、成長したなあ、と柔らかく笑って。そういえば鈍い音がした……ような気がするが、頭痛だろうか。難しいことは考えないようにしようと思考を諦めれば、あ、と小さく口を開けて)
(彼に褒められたことが嬉しくて、自分から褒めてくれと言ったようなものにも関わらず、照れくさくなってふいと視線を逸らしてしまう。ちらりと視線を戻すと開かれた彼の口が視界に入り、何事かと首を傾げるがその意図を汲み取るのにそう時間は掛からなかった。苺を一つ手にとってヘタを取ると彼の口へと入れて)
…おいしい、
(口の中に入れてもらった苺を咀嚼して、口に広がるみずみずしい甘酸っぱさに思わず頬が緩む。これが食べたかったのだ。ごくりと飲み込んでは、どこか落ち着いた様子で。普段の自分なら、彼に食べさせてもらおうだなんて思わない。しかしすでに思考が止まっているようで、ふわふわと熱特有の浮遊感に身を任せればいちごを手に取り頬張って_
……無理は、するなよ
(食欲はあるようで安心した。心なしか顔色も次第に良くなっている気がして、ふっと胸を撫で下ろす。幸せそうに苺を頬張る彼を側の椅子に腰掛けて眺め。彼が体調を崩すなんて珍しいよな、なんて改めて考えてみる。巷ではこの時期に風邪が流行っているのか、それとも日頃の疲れからか。それぞれ真偽は分からないが、どちらにせよ普段の彼は働きすぎではないか。心配からかぼそりと呟いて)
それくらい、成長していただけると有難いのですが…
(無理はするな、噛み砕いた苺と共に飲み込む。
自分は、彼のことも見ながら自分の体調管理もしっかりできているのだと思っていた。実際、体調を崩すことなんてあまり無かったし、仕事が立て込んで睡眠時間が減ったとしても、翌日の仕事には影響無かった。知らず知らず、疲れが溜まっていたのかもしれない。彼の言葉にいつもより覇気のない毒を吐いた後で、けほりと咳き込んだ後一言、)
肝に銘じておきます、お坊ちゃん
……ふぁ、
(相変わらずの毒舌は変わらないようで、む、と顔をしかめる反面、普段の調子が戻ってきたとどこか安心感も抱いており。普段使わない神経を使ったせいで疲れが出てきたのか、ぷつんと自分の中の糸が切れ、先程までの緊張感を失った欠伸をひとつ)
少し休まれてはどうですか
(彼が欠伸したのを見、自分の看病で緊張していたのだろうと察して声をかけ。
身体の関節はまだ痛むものの、怠さは大分引いた気がする。この程度なら1人でも大丈夫だ。
先程彼に釘を刺されたこともあり、熱と怠さが完全に引くまではベッドで大人しくしています、と態度で示すかのようにベッドに潜り込んで)
駄目だ、今日は離れないって言っただろ……
(いくら自分が疲れているとはいえ、さっき今日一日は一緒に居ると宣言したのだ。彼の言葉は有り難いものだったがそれは出来ないと首を横に振り。彼の態度を見るに、自分がいなくなった後こっそりベッドを抜け出して仕事に戻る、なんてことは無いと思うのだが、念には念をというやつだ。意地でも離れないというようにぐっと椅子に座り直し)
全く頑固ですねぇ……、さすが真面目なお坊ちゃま
(本当に言う事を聞かないんだから、と言いたげに見つめてはやれやれ、とため息をひとつ。加えて真面目だ、なんて茶化す言葉も付け足して。
とはいえ、体調の悪い時に彼がそばにいてくれることの心強さは自身の想像を超えていて、安心感からかだんだんと睡魔に襲われていき)
……せいぜい今日一日はベッドの上にいるんだな
(茶化しに対してはもう慣れたものだが、やはりむ、と眉をしかめ。しかし、もう既にまどろみの中にいる彼を現実へと引き戻すのは良くないだろうと声にすることは躊躇う。その代わりに小さな声でそう言っては、彼を今一度眺めた後、これ以上悪化することはないだろうと小さく微笑んで。そうこうしているうち、自分も眠気が襲ってきたらしい。彼の寝ているベッドに突っ伏してしまえば、そのまま眠りに落ちてしまい)
ずっと居たのか…?
(薄ら感じる光に、眉を寄せつつも目を開けて。
どうやら昨晩はあのまま眠ってしまったようだ、体調を崩したのは自分が思っていたよりも体に負担をかけていたらしい。彼の介抱もあってか今はもう不調などなく、昨日のだるさがまるで嘘のようで。
ベッドから起き上がろうとすれば、ふと感じた重さで彼の存在に気づき、ぱちぱち瞬きしながら思ったことを一言、)
……すぅ
(襲いかかってきた眠気に勝てず、眠りに落ちてから数時間経過。既に外は明るく、普段ならそろそろ起きる時間であろうが、当の本人はまだ夢の中にいた。昨日の疲れがまだ利いているのか、目を覚ます様子は一切感じられない。彼が起き上がった気配にも気付かないまま、すやすやと寝息を立てており)
ありがとうございます、お坊ちゃん。…本当に、助かりました
(ベッドから降りても、彼は一向に目を覚まさない。すやすやと眠る彼の寝顔、その頬を優しく人差し指で撫で、起こさないよう小声で上記を呟いた。病人の世話なんて慣れないことをしたからか、疲れきってしまったのだろう。本来ならばもう起きる時間だが今日は特別。"自分の身支度がまだだから、起こしに行くのが遅れた"という理由にしておいて、彼をまだ暫く寝かせることにしておいた。顔を洗い終え、杖を1振りすればあっ、という間にいつもの服を身に纏った姿が出来上がり、)
……あれ、
(あれから数分後、うっすらと瞳を開くと彼が寝ていた場所に視線を向ける。そこには既に彼の姿はなく、空っぽのベッドがひとつ。驚きで勢いよく顔を上げると、その勢いのまま立ち上がる。寝癖の付いた頭で寝起きの眼を擦りながら、部屋を彷徨いて彼の姿を探し)
おや、朝から落ち着きがありませんねぇ
(それから、彼を起こさないようにして部屋を後にした。少し遅めの朝食をワゴンに載せてころころと運んできては、とんとんと彼の部屋のドアをノックしてからドアを開け。どうやら彼は自分が部屋を後にしたあとで目を覚ましたらしい。まだ眠たげな目をしながら部屋の中を彷徨う彼に、首を傾げて)
っ?!お前……もう身体は大丈夫なのか?
(ノックの音に気が付かなかったのか、突然背後から聞こえてきた声に驚いてびくりと肩を震わせる。お陰で眠気は吹き飛んだ。振り返るとそこにはいつもの彼の姿。顔色は随分良くなっているが、まだ病み上がりであろう、なのに朝から執務とは…。幾つか心配が残る中そう問い掛け)
私を誰だとお思いで? _そう何日も引きずるような歳じゃありません
(いつものように、口から出た言葉は毒ばかり。とはいえ昨日彼が看病してくれたおかげである。昨日の彼のおかげで、治りも早かったのだ。焼きたてのクロワッサンに温かいスープ、それにベリーのスムージー。早く食べないと味が落ちますと彼を急かしつつ杖を振れば朝食がひとりでにテーブルの上へ座っていき、)
……念のため聞いただけだ
(いつも通りの彼の対応。やはりその言葉ひとつひとつに含まれる毒は健在で、どうやら自分の心配は杞憂に終わったようだ。此処で変に反論しても、また上手い返しで毒を吐かれるだけとこれ以上は言及しないこととして大人しく席に着く。素直になればいいものを…と彼を横目で見つつ、もそもそとクロワッサンを口に運び)
言葉にしなければ分かりませんねぇ
(何か言いたげな彼に、大袈裟なほど困ったように眉を寄せておやおや、と肩竦め。彼が朝食を食べているうちに今日の服を用意しようと、杖を一振り。クローゼットから生きているかのように服がひとりでに動き出し、ベッドの上に畳まれた状態で座った。この前の体調不良が嘘のように完璧な魔法だ、風邪であそこまで不調になるのかと自分でも不思議なほどだ、)
(/いつもお相手ありがとうございます、!!
この後何かしたいなどありますかね…?何しようかなって…)
(彼の含みのある言い方に、自分の気持ちなんて言葉にしなくたって本当は全て読まれているんじゃないかという気になってくる。これ以上の言及を許さないよう「うるさい」と一蹴すると、残り一欠片のクロワッサンをスープで流し込み、スムージーを飲み干したところで朝食を終え。机を離れ、横目で彼を見ながらベッドの着替えに手を掛けた)
(/此方こそいつもお世話になっております…!
そうですね……時期的にクリスマスなんて如何でしょう?)
…冷え込んできましたから、風邪をひかないように。
(一蹴されてしまい、これまたわざとらしく口元に手を当て目を見開きつつ、「ついついこの口が」なんて思っても見ないことをさらりと口にして。
彼の食べ終わった皿を片付けつつ、ふと窓を見れば外は非常に寒そうな空をしていて、彼を労わるように一言忠告し。もちろん彼の心配をしているから出た言葉なのだが。サービスワゴンに全ての皿を乗せ終え、にこりと笑みを浮かべては彼に一言、)
これ以上私の仕事が増えたら、堪ったものではありませんので
(/クリスマス…!! いいですね、そうしましょうか!
クリスマスケーキを手作り、なんてどうですか?材料買う所から一緒に行くのも楽しそうで…!)
言われなくても分かってる、
(口では了承しているものの、つい昨日寝込んでいた人間に言われたくはない、と若干不満気に眉を寄せ。
彼の用意した服に身を包みつつ、自身に向けられた皮肉気味の言葉は聞き慣れたかのように一度受け流すが、どこか腑に落ちない点があったらしく追加で一言)
僕より、まずは自分の体調を心配するんだな
(/それは名案……!大賛成です、是非やりましょう!
切り替えのタイミングに関してはお任せしても宜しいでしょうか…?)
有難いお言葉、肝に銘じておきます
(昨日まで寝込んでいた、彼の看病がなければ今日も寝込んでいたかもしれない自分にとってその言葉は耳に痛いものがあった。珍しく素直に頷きつつ、思わず苦笑いを零して軽く頭を下げ。
手帳を取り出し、今日の予定が特にないことを確認して手帳を閉じようとした手を止め、)
おや。今週末がもうクリスマスですか
(/お返事お待たせしてしまい申し訳ございません!
ちょっと強引な気がしますが、ここで切り替えました)
今年は何が貰えるんだろうな…!
(去年は音楽プレーヤーと、今も自身の胸元で揺れているループタイを貰った。彼の発した「クリスマス」という単語に反応しきらきら瞳を輝かせると、今年もサンタさんが来てくれる筈、そんな期待を込めた視線を向け)
(/こちらこそ反応遅れてしまい申し訳ないです…!
場面転換助かりました!)
クリスマスまででも、成長してくれると非常に助かるのですが…夢のまた夢、でしょうね
(サンタさんなんて存在を信じ、今年のプレゼントに期待を膨らませる彼の素直さに緩く微笑んだのを、上記の嫌味で誤魔化して。どうせ噛み付いてくるはずだから、…少しからかってやろうとはっとした表情と、わざとらしく大袈裟に言ってみせ)
坊ちゃん、実は…その。今年のクリマスケーキ、私たちで作らなければいけないことをいま、思い出しました
(/大丈夫です~!お返事ありがとうございます!)
(普段なら「自分はもう既に成長している」だの「勝手に決めつけるな」だの何かしら反論するはずの彼からの嫌味も、クリスマスという一大イベントを前にすると全く耳に入ってきていないようだ……ったのだが、その後に続く彼の言葉に耳を疑う。例年なら街の洋菓子店で買ってくるなり、料理人に作らせたりとケーキに困ることは無かった筈なのだが。……それにケーキなんて作ったことがない。何故?と疑問符が脳内を埋め尽くすと同時に、彼の口調やはっとした表情も相まって自然と焦りが芽生え始め)
ど、どうするヴィラ!クリスマスまでもう一週間も無いんだぞ!
はい。…ですので、作りますよ。いいですね?
坊ちゃんでも作れるように、シンプルなものにしましょうか
(彼が楽しみにしているクリスマスケーキの用意を忘れるなんて、そんな失態自分はしない。なので先程の自分の発言はちょっとしたからかいのつもり、ケーキはあるから安心するよう言うつもり…だったのだが、あまりにも焦りまくる彼の姿を見、このまま手作りするのも悪くない、にやり、と笑って実行する事を決め。焦る彼に落ち着きなさいと言うかのように杖を振れば、シンプルなショートケーキ、チョコレートケーキ、それにブッシュドノエルのレシピがふわふわと宙を浮き)
どれが食べたいですか? _好きなものを、手に取ってください
(突如現れた宙に浮く3つのレシピ。好きなものを選んでいいと言われたものの、さてどうしようか。折角のイベント事、やはりクリスマスらしいケーキを食べたいものだ。ショートケーキやチョコレートケーキも捨て難いが誕生日ケーキの際に代用できる。となるとやはり……。暫く思考を巡らせた後、ブッシュドノエルのレシピに手を伸ばし)
…これにする。僕でも作れるんだよな?
ええ、勿論。1人で作らせる訳ではありませんし、私が隣に着くので…ご安心ください
(彼にレシピが選ばれると、ほかの選ばれ無かったものはぽんぽんと消えていき。ショートケーキかチョコレートのどちらかを選ぶとばかり思っていたがブッシュドノエルとは。大人になったのか、自分が彼のことをまだまだ子供だと思いすぎていたのか。くすり、と口角を上げて笑ったのも束の間、僕でも作れるかとの彼の問いに、まさか1人で全部作るつもりだったのかとわざとらしく驚いた様子をして、)
僕はもう子供じゃない、お前は見てるだけで十分かもな
(執事という立場上、自分一人で何かさせることはないと分かってはいたのだが、改めて彼が傍につくと伝えられて安心したのも事実。思わず安堵の息が漏れるが、それを彼から指摘され、からかわれることは目に見えていた。誤魔化すようぶんぶんと首を振り、彼の手を借りることなく完成させると強がって見せ)
…では、ご自分の力で完成させてみますか? そこまで言われるなら、さぞ綺麗なケーキが出来上がることでしょうから。ねえ?
(最初から彼にできることはやらせ、まだ難しい所は自分が手伝うつもりでいた…のだが。ただからかっただけなのにそんなに反応されるとは思っていなくて。気が変わりました、とでもいうように首を振って彼を試すように見つめると、軽く笑いながら首を傾げ)
(“また何時もの強がりですか”そう軽くあしらわれて終わる――筈だったのに。彼の口から飛び出した想定外の発言に思わず言葉が詰まる。此方へと向けられた視線はどこか挑戦的に感じ、今更冗談だと言い出せる空気でもない。となれば残る手段はひとつ、覚悟を決めたように小さく頷けば彼の腕を引いて調理場へ)
あ、当たり前だろう!…ほら、早くしないと間に合わない
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