執事 2020-07-30 19:43:59 |
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ええ、勿論です
(ふ、と彼に笑いかける。自分の命が散るその時まで、彼を守ると決めたのだから。彼にありがとうございます、と再び伝えては「お疲れ様、」と、)
──なあヴィラ、お前、この後どうするんだ?
(彼の隣へと移動するとそう尋ねる。もしこの後何もないなら、折角の誕生日、二人で何かしてみたいという想いがあって)
なにもありませんよ、…できれば
(お坊ちゃんと過ごしたいです、ぽそりと呟いた。誕生日ならば、たまにはこんなわがままも許されるのではなかろうか。そう考えていたようで、)
(彼からの願いを聞いて顔を輝かせる。誕生日、自分と共に過ごす事を選んでくれたことが嬉しくて。ワクワクした様子で尋ね)
ヴィラ、何がしたい?折角の誕生日だからな、僕に出来ることなら何でもさせてやる!
その、庭を散歩……とか、
(こうして一緒にいられるだけで良いのだが、彼はどうやら何にでも付き合ってくれそうな雰囲気だった。しかし残念なことに、これくらいしか思いついない。控え目な声でそう彼を誘い、)
庭の散歩……?よし、行くぞヴィラ!
(そんな事でいいのか、と一度驚いたような顔をするが、それが彼の願いなら喜んで付き合おうではないか。やる気十分で彼の手を引くと庭へと足を進め)
お坊ちゃん、足下にお気をつけ下さい
(つい、いつもの癖で彼にそう言ってしまう。人間誰しも少しの段差でつまづいてしまう時があるのだ、しかし彼は例外である、)
そんなの分かって──
(執事の方を振り返りながら歩いていたりと完全に油断していた。彼からそう心配された時にはもう足の先には段差が。一瞬でバランスを崩すと身体が宙を舞い)
_ッ全く、よく動く足ですねぇ
(気を抜いていた自分の責任でもある。咄嗟に彼の腕を引いて自分側へ引き寄せれば、自然と彼を抱き留める形になっていて。腕の中にぴとりと収まらせては、安堵の息を漏らして)
!、有難う……
(彼の腕の中から、安心したように息を吐くとお礼を伝え。また彼に助けられてしまった、誕生日だというのにまた迷惑を掛けてしまったのではないかと罪悪感も感じていて)
これからもドジなお坊ちゃんでいてくださいね、
(ふ、と彼の瞳の色が変わった。気落ちしたような、罪悪感が見え隠れしている色だ。彼から手を離せば、からかうようにそんなことを呟いたあとで「私の仕事が減っては困るので」にこりと歯を見せて笑いかけ、)
え……
(想定外の言葉、だった。彼はずっと自分に、1人で色々出来るように、後の国を統べる者として、なんでも完璧にこなせるように──、そんなことを望んでいると思っていた。なのにこれからもドジでいてくれ、とは。驚きで、思わずそんな声が漏れる。嬉しいのと同時に、胸に込み上げてくる何かがあり。若干瞳が潤むも、誤魔化すように彼の手を取って)
っ…ヴィラ、行くぞ!早くしないと日が落ちるだろ
_おや、綺麗に咲いてますね
(いつか、時が来ればその時は付きっきりの自分はいらなくなるだろう。それが彼が国を治める頂点になった時か、その後かはわからないが。それをわかっていながら、彼のそばにいるのが自分の存在意義なのだから。手を引かれたその先、綺麗に咲いている薔薇に触れて、)
──そうだな、
(薔薇の近くへ顔を近付け、香りを堪能する。チラッと横を見ると、薔薇と執事の綺麗な画が。思わず見惚れて、頬がほんのり赤く染まって。更にそこに薔薇の良い香り。ふにゃりと顔を綻ばせ、彼の方を向いて笑いかけて)
画になりますね、
(薔薇の良い香りと、紅の色をした薔薇の花びら。みずみずしく咲いたそれは彼の美しさをより際立たせていた。思わず見とれてしまい、こちらに笑いかけた彼と噛み合わぬ会話をしてしまう、)
それはお前も同じだろ
(丁度自分が考えていたことを彼の口から聞くとは。思考がそっちに引っ張られているらしく、自分が何と返答するかを考える前に、ほぼ反射的に言葉が出てきて。)
………ッは?
(今なんて? 目が悪いにも程がある。
お前も同じ、つまり自分も画になるということか。そんなこと言われたことがなくて、わかりやすく動揺してしまう。頭には?が浮かんだまま、彼の顔を見つめたままフリーズしており、)
何をそこまで驚いている?お前、耳は悪くなかっただろ?
(挙動不審になった彼をきょとんとした瞳で見つめて口を開く。まるでいつもの彼のように、嫌味とまではいかないが、皮肉を効かせた言葉を声に出して)
驚きますよ、私だって
(まるで自分は驚かない人間だというような彼の言い草に首を傾げて。全く彼は自分を何だと思っているのだろうか。溜息をひとつついた後、「そんなに私が驚いたのが意外でしたか?」と態と悲しげな表情を見せて)
ち、違っ──
(少し彼をからかってやろうと口にした言葉だったが、彼のことを傷付けてしまったのではないか。彼は自分ほど喜怒哀楽が激しくないのは分かっているが、勿論驚かない人間だとは思っていない。焦りか慌てて早口でフォローするような言葉を掛け)
…やはりまだまだ、おこちゃまですね
(慌てて自分が放った言葉を訂正する彼に、ふん、と鼻を鳴らして笑ってみせる。
わざとらしく目を伏せ、足元に視線を落としながら暗い雰囲気を出す。これに頭を下げるのを付け加えたら、どうしても先方に謝らなければならないと気に使う態度そのものである。本気か否か、彼は見抜けなかったようで、打って変わった表情で彼の頬を撫で)
……うぅ
(人の嘘を見抜くのは苦手だ。今までに何度か彼にそうやって騙されたことはあるが、悉くその嘘を鵜呑みにして綺麗に引っ掛かってしまう。今回だって初めてではないにせよ、何度も同じように騙されてしまうのは彼に対して絶対的な信頼を置いているからだろうか。なんにせよ、本当に彼が傷ついている訳ではなくて良かった。安堵の溜め息をつきながら、騙されたこと自体は悔しいのか少し頬を膨らませて)
いつになったら見抜けますかねぇ…
(自分がこれくらいで傷つくわけがないだろう、そんなに軟弱だと思ってもらっては困る。
安心したような表情を彼は見せたものの、騙されたこと自体はあまり良く思っていないようだ。頬を含まらせる彼に上記を呟けば楽し気にくすくす笑い)
もう騙されないからな…っ
(ぷくりと頬を膨らませたまま、決意したようにそう呟いて。しかし、その決意もきっとすぐ忘れてしまい、また騙されることになるだろう。そこが自分の甘いところ、本人は勿論気付いておらず)
私に騙されない日がくるのを、楽しみにしてます
(自分のどこが悪いのかを、彼は全く気づいていない様子だった。それに気づくのはいつになるのやら、楽しみだと思えば彼の頭を撫でて)
撫でれば許される訳じゃないんだからな…っ
(暫く拗ねていようかと思っていたが、頭を撫でられれば、先程までの怒りが段々と治まっていき笑顔が溢れる。口ではそんなことを言っているが、結局それで簡単に許してしまい。たったそれだけで機嫌が良くなるとは、自分でも単純だとは実感しているのだが、嬉しいのだから仕方ないとも思っていて)
はいはい、
(単純に変わりはないが、そんな反応がかわいらしい。撫でていた手を離せば普段、彼の前以外での仕事中は張り詰めた空気を纏っているものの、それが抜けたのか安心しているのか、ふわりとひとつ欠伸をこぼし)
……お疲れ様
(普段なかなか見ることの無い彼の欠伸。やはり、表には出さないだけで彼も疲れているんだと察して。だからこそ、今日だけでものんびりゆっくりしてほしい。結果的に、昼間の間は彼は街に出掛けてしまったため、一日中ゆっくり、はもう難しいが。残された時間、彼にとっていい時間になるよう願いつつ背中にぽんと手を当て)
外で寝たら、気持ちいいでしょうか
(背中にぽん、と当てられた手が心地よい。柔らかなあたたかさと、彼の気持ちが流れてくるようで。それに感化されたのか、ガーデンテラスのような場所を見つけては普段なら言わないようなことを口にし)
……一緒に寝るか?
(その言葉を聞いて少し考え込んだ後、そう呟く。いつもは二人別々の部屋で寝ているため、二人で寝る、なんて幼少期以来だろうか。折角の記念日、こんな日があってもいいだろうと彼に問い掛け)
お言葉に甘えても?
(外で寝るなんて、なんて無防備な真似だろうか。しかし手入れされた庭と香る薔薇の匂い、柔らかな日差しに日頃、自分でも気づかなかった疲れが溶け出していくようで、彼の誘いに素直に乗って、)
……決まりだな
(その返答に笑みを浮かべ、使用人の一人を呼び寄せると、毛布などの簡単な寝具を準備するように指示を出す。暫くして、戻ってきた使用人からそれを受け取ると、行くぞ、と視線でガーデンテラスの方を差し)
……落ち着きますね、
(欠伸をひとつふたつ零しながら、それでも寝具をてきぱきと組み立てる所はやはり執事といった所か。2人は余裕の寝具の上に、どさりと寝転べば彼を抱き枕のようにして自分の隣に寝転ばせ)
ヴィラ、その……少し、近くないか?
(この距離感。まさに幼少期そのものである。いつも顔を見ているといっても、改めてこうまじまじと執事の顔を見ることはない。変に緊張してしまい、気まずくなってしまったのか、ふいと視線を逸らしつつそう呟いて)
_もうお嫌ですか?
(眠気に加え、この安心感。明らかに普段とは違う、気の抜けた表情で彼にそう問いかけた。幼少期のように、たまにはぴとりとくっついて寝るのも良いかと思っていたのだが、目を逸らされたのをさすがにそんな歳ではないから、彼はもう嫌なのだろうと悲しそうな声色で)
違っ……、
(誤解されてしまったか、悲しげな声色に慌てて視線を彼に戻す。一緒に寝るのが嫌な訳ない。寧ろ凄く嬉しいくらいなのだが、素直に認めてしまえば余計に恥ずかしい。頬を真っ赤にして彼の顔を見つめると口を開き)
久し振りだったから…少し緊張しただけだ
ふふ、可愛らしいですねぇ
(顔を真っ赤にしてちらりと呟いた彼の言葉、それにぱちくりとまばたきをしては、子供のように顔をくしゃくしゃ崩して笑った。今日くらい、許されてくれ。まるで猫のように彼に擦り寄れば、)
……五月蠅い
(幼少の頃の記憶が鮮明に蘇る、なんだか懐かしい感覚。いつもの冷静沈着な彼からは想像つかないような態度に、何故だか此方の心の鼓動が速くなっていく。字面だけ見ると相手に対して鬱陶しさを示すような言葉を口に出すが、その声色からは照れ隠しだったり、色々な感情、気持ちが沢山含まれている。近くに来た彼を押しのけたり、邪魔だと一蹴するようなことはせず、そっと両手を開いて彼を受け入れて、そのまま抱きしめるよう背中に手を回し)
まるで抱き枕だな
(目を伏せながら、ぽそりと呟いた。目を閉じるとよりいっそうまつ毛が長いのが強調される気がしてあまり好きではないが、それより勝るのは彼が自分の背に回してくれた安心感で思わず口調が崩れ、)
すぅ……、すぅ……
(疲れが出たのか、彼のその呟きが聞こえていたかは分からないが、その数秒後にはすやすやと規則正しい寝息が聞こえてくる。抱きついたまま、彼に自分の身体を預けるように、無防備な寝顔を見せて)
しまったッ、仕事が…
(ちらりと彼の寝顔を見たそれからすぐに眠ってしまい、起きたのは実に日が傾き出してからだった。がばりと勢いよく起き上がっては、最初に出た言葉がそれだったが、隣で寝ている彼を見ては肩の力が抜けて)
すぅ……ん……っ
(彼の起き上がった気配を察したのだろうか、眠ったまま彼の服の裾を掴む。自分から離れて欲しくないという意志が表れが無意識に行動へと出ていて)
まだまだお子様だな…
(なんとなくその行動の真意を察する。服の裾を掴んだ彼の手をそっとにぎれば、ちゅ、と手の甲にキスをした。このまま寝かせたいのが本当のとこだが、もう少し彼の寝顔を見ていたくて
)
すぅ…………す……、んん……
(キスがきっかけか、その数秒後、どうやら起きたらしい。手を握られたまま、寝ぼけ眼で執事の顔を見れば安心したように一瞬口角を上げ)
お目覚めですか?
(どうやら、起きたらしい彼にそう問いかける。まだまだ寝ぼけ眼の彼がなんとも可愛らしくて。握った手をそっと、ゆっくり離せば、その手で肩を揺らして)
えぇ、おはようございます
(大きな欠伸をひとつ零す彼に、「どこかの誰かがたくさん寝ていたものだから、日が暮れてますねえ」嫌味ったらしく呟いては、自分の上着を彼に掛けてやり、)
な?!……本当だ
──久し振りに一緒に寝れて、嬉しかった
(自分のなかでは5分や10分のつもりだったが、実際はその何倍もの時間が過ぎていた。改めて空の様子を見てみれば、もう太陽なんてとっくの昔に沈んでおり、星がきらきらと輝く程で。状況を呑み込んで粗方気持ちが落ち着いた後、少し照れながらそう口にして)
おや、では毎晩添い寝しましょうか?
(少しだけ照れながらそんなことを言われ、思わず意識してしまう。ふふ、と笑いかけては嫌味を含みつつも彼を信頼した言い草であり、)
別にっ…、僕は構わない、がな……
(“毎晩添い寝”──、彼のその提案、冗談ではなく本気で捉え。悪くない、今よりも更に顔を真っ赤にしては小さな声でぼそりと呟き)
___えッ?
(思わず、素っ頓狂な声が漏れた。想像では彼がぴいぴい怒る予定だったのに、まさか本気だと捉えられるとは。いや勿論良いのだが_。ぽかん、と口を開けたまま、彼を見つめ)
っ、なんだ?!何か不満か?!
(こちらを見つめる視線に気付く。彼方から提案してきたため、そんなにも驚くとは思っていなかった。思わず反射的にそう声を上げ)
いや、冗談のつもりだったのですが…
(彼の焦りようにいつもの冷静さを取り戻してはそう一言。自分はあくまで冗談のつもりだったのだ、反射的に声を上げた彼に対してそう返せば「寝ます?今晩から」と妖しく笑って、)
じょうだっ……?!
(ここでやっと気付いて、なんとも言えない恥ずかしさが込み上げてくる。また騙された……、むぅ、と頬を膨らませるが、今度は冗談ではないであろう彼からの誘いが。こくりと頷いて肯定を示し)
ふふ、執事の特権ですね
(添い寝をしても、誰からも責められない。なぜなら自分が彼の専属執事だから。ぽそりと本音をこぼした後、「まだ1人では寝られないのですねえ…」なんて目を丸くして彼をからかい、)
っ、1人で寝れないわけじゃないっ!
(彼の方に顔を向けて慌てて反論。直ぐに下を向くと「お前が誘ってきたから……」とぶつぶつ言い訳を始め)
無理に、とは言いませんよ
(ぶつくさ言い訳を始めた彼を見て、くすりと笑った。無理にとは言わない、彼の希望ならば話は別だが。こんな話をしているうちに日はどんどん落ちていく。自分の上着を彼の背にかければ、)
…戻りましょうかね、
……あぁ、
(少し肌寒くなってきた気がする。掛けられた上着にそっと手を触れれば、そう返事をすると立ち上がって彼の方に顔を向け、彼の袖を引っ張って歩き出し)
…ありがとうございました
(彼の部屋に戻れば、深々と頭を下げて。自分の誕生日をこんなに祝ってくれる人なんて今までいなかった。大好きな、1番大切な彼に祝われたのが幸せで堪らなく、その声色は真剣なもので)
……べ、別に、当然のことをしただけだろ
(そう改まってお礼を言われると、変に照れくさくなってしまう。そっぽを向きながらもそのお礼の言葉を有り難く受け取っては「お前が喜んでくれたなら良かった」と安心から来たであろう言葉が洩れ)
生きてきて良かったと、今日ほど思った日はありません
(顔を上げては、はっきりとそう伝えた。本当に感謝でしかない、彼のためなら自分の命さえ惜しくはない。そっぽを向いている彼の元まで周り込めば、その頬をそっと撫でながら目を細めて、)
……っ、それは言い過ぎ……
(ここまで感謝されるとは、嬉しさと恥ずかしさで顔が爆発してしまいそうだ。回り込んだことで、必然的に視界に入ってくる彼の顔、真っ赤になりながらも見つめ返して)
っふふ、先が思いやられますねえ
(真っ赤になった彼の顔。これしきで顔を赤くしていてはこれからが思いやられる。意地悪く笑ったあと、彼の背にかけていた上着を取って自分が着、)
先の事なんて今じゃなくていいだろ……、
(彼の大きな上着が無くなったことで、もう自分を隠すようなものは何もない。最後の抵抗としてそんなことを呟き、ぷくりと頬を膨らませ)
何時になったら成長してくれることやら、
(子供さながら頬を膨らませる彼に困り顔を浮かべては彼をわざとらしくからかって。"先延ばしにしていては成長できませんよ"と膨らんでいる頬を指でつつき)
っ、僕は常に成長してる!
(からかいに対して反論、そして「この間も身長が伸びていたしな!」と自信ありげにそう告げる。勿論、ぐん、と数センチ伸びたわけではなく、1ミリや2ミリの話だが、本人はそれでも十分満足のようで)
…失礼。いつもと変わらない高さですが?
(彼の横にぴたりと付き、彼の頭の上に手をかざしたかと思えばそのまま横に滑らせて自分の腕にぴたりと付け。自信満々な彼をからかっているつもりでやはりいつも彼を見下ろす高さと変わらない、)
な"……っ、嘘だ!この間測ったときは確かに伸びて──
(彼からの衝撃的な言葉を信じたくないのか、ぶんぶん顔を振り。悔しさから少し背伸びをしては「どうだヴィラ!今度こそ大きくなっている筈だ!」完全に狡い手段ではあるが、めげずにふふんと背伸びをしたまま胸を張り)
そんなすぐ伸びる訳がないでしょう?
(勿論、知っている。1センチ程度彼の身長は伸びていた。自分が知らないわけがないだろう。それでもからかってしまうのは彼が可愛いからで。狡い手を使われてはぱんぱんと手を払って真面目に返してやり、)
うぅ……
(やはり彼に誤魔化しは通用しないか、少ししゅんとしながらも背伸びを止め。拗ねたように彼に背を向ければ、「伸びてた筈なのに……」とブツブツ呟いて)
おや、拗ねてしまいましたか
(こちらに背を向けてぶつくさ呟く彼の姿を見ては、少し虐めすぎてしまったかとすかさず「…丈が短くなりましたねえ」なんて呟きながら、カーテンを閉めたり寝るための準備に取り掛かりつつ遠回しに背がちゃんと伸びていることを伝え、)
……!、
(ぱっと表情を明るくし、拗ねていたのが嘘のように上機嫌になる。彼が寝るための準備を始めたのを横目に、自分は先にベッドの方へ。ぼふ、勢いよく腰掛けるとそのまま背中から倒れ、疲れが出たのかぐでんと身体の力を抜いて)
ほら、先に着替えてください
(着替える前にベッドに倒れ込んでしまった彼を呆れるように見つめて。おもむろに杖を振れば、クローゼットからひとりでにパジャマが浮き出して、ぽすんと彼の隣にパジャマが置かれ、)
うー、判ってる……
(疲れで重たい身体を気合いで起き上がらせ、服を脱ぎつつ側に置かれたパジャマへゆっくり手を伸ばす。大きな欠伸を溢せば、もたもたとパジャマのボタンを付け)
私がやりましょうか、ばぶちゃん
(ばぶちゃんだなんて言われたら大抵の人物は怒るだろうし、それが彼ならば尚更だ。今日の彼は自分のために動いてくれていたし、出来るだけ早く寝かせたい。これで動きが早くなるのを祈りつつ、ピローミストをふたつ持ってきて)
ばぶちゃ、っ……!
──おいヴィラ、僕を何歳だと思ってる!赤ちゃん扱いするなぁ!
(やはりすぐに顔に出る。ぐでんとした態度から一変、ぷんすかと怒りを露にすれば、てきぱきと素早く着替えを終わらせ)
はい、どうぞ
(さらりと彼の叫びを聞き流し、ふたつのピローミストを魔法で調合する。出来上がったのは庭の薔薇と全く同じ香りのピローミストで、しゅ、と枕に吹きかけてやり)
ん……
(まだ不満が残っていたが、薔薇の香りが鼻へと届けば不思議とその怒りは消えていく。一度深呼吸をして心を落ち着かせると、またまた眠気がやってきて、大きな欠伸をし)
…するんでしょう、添い寝
(と呟きながら、我が物顔で彼のベッドにいそいそと潜り込み。これでも彼がいちばん広くベッドを使えるようにとなるべく端っこに寝そべっていて。大きな欠伸をした彼のあどけなさについつい頬が緩み)
……ヴィラ、もう少しこっちに来い
(こく、頷いて彼の隣、ベッドに横になりながら、いそいそと毛布の中へ入っていく。なんだか違和感を感じて改めて彼を見れば、自分に遠慮しているのか距離が空いているような気がして。そんなに隅へいく必用もないのに…、と思いつつ片手で手招きして)
はい、_ふふ、顔が近いですね
(言われた通り、彼の傍による。可愛らしい顔が真近で見れてはどこか嬉しそうに微笑み。その顔は優しさに満ち溢れたものであり、一定のリズムで彼の背を叩いて寝かしつけ)
……おやすみ
(確かに、距離はぐっと縮まった。やはりまじまじと見られては恥ずかしさが出てくる、毛布を鼻辺りまで引き上げて目だけを彼の方へ向けると、そのまま目を閉じる。そして数分後にはすやすやと眠りに落ちており)
はあ、…本当に可愛いなあ
(瞑った瞳が可愛く、小さな声で子守唄を紡いでやる。添い寝をすると約束した以上、ここからこっそり抜けるのも気が引けて)
ヴィ、ラ……、ふふっ、ははは……
(楽しい夢を見ているのだろう。ふにゃりと安心しきった笑みを浮かべながら彼の名前を呼んでは、一人で笑っていて)
夢の中まで俺と一緒か、
(彼の寝言に思わず素の自分が現れた。何だかんだで、自分が一番大切なものは彼の幸せなのだろうなと漠然と感じ。今日はこのまま寝てしまえ、これは立派な仕事だ。杖を振って部屋の証明を落とせば瞳を閉じて)
…………
(深く楽しい夢の中、彼のそんな反応なんて全く知る由もなく、警戒心なんてものは微塵と感じさせない表情で。朝を迎えるまで、そう簡単には起きそうにないほど深い眠りに落ちていた。)
……すぅ、
(小鳥のさえずりに、暖かな朝日がカーテンから差し込む。彼の隣は思いの外寝心地がよく、珍しく自分も深い眠りについていたようで、普通なら彼の朝食の用意をする時間になってもまだ眠っており)
、
(朝の心地よい光、音、そして空腹で目が覚める。欠伸をして目を擦りつつ、ちらりと視線を横に向ければまだ彼は隣におり、あの後ずっと一緒に居てくれたのかと理解。それにしても、なかなか見ない彼の寝顔…、起きているときの彼とはまた違い、なんだか可愛らしく思えてくる。いつもされていることを、今度は自分がする番。こんな機会じゃなければ、他にタイミングなんてない──、まだ眠っているであろう彼の頭を、ぽんぽん優しく撫でて)
_ふふ、
(夢に見た。自分の周りに誰もおらず、寒くて怖い夢を。ぴくりと眉を寄せたかと思えば彼に撫でられたあたりで表情が和らぎ、わずかに微笑んだその顔は普段嫌味や皮肉ばかりを言う性格だとは考えられないような穏やかなもので)
(/いつもお相手ありがとうございます!
なにかやりたいシチュなどはありますか…?)
っ……ふ、
(表情が変わった。たまに見るその彼の顔、此方までつられて笑みを浮かべれば、まだ頭を撫でるのは止めずに)
(/こちらそこいつもありがとうございます…!
そうですね、ふと考えたのが「過去編」とか如何でしょう?今ほど距離が縮まっていなくて、お互いまだぎこちない様子で……。
仮にも案ですので、もし他にやりたいことがあればそちらに合わせます!)
おはようございます…_ッ!!
(それから暫くして目を覚ました。横には彼の姿と頭を撫でられており混乱したものの、自分の方が起きるのが遅かったのかと飛び起きて)
(/過去編いいですね…!!
ぜひやりましょう…!
一区切りついたら始めますか?)
っ?!……、おはよう
(何の予兆もなく起きるものだから驚いた。びくっと肩を上下させては、彼の頭の上にあった手を引っ込めて朝の挨拶をし)
(/賛成です…!大体何歳辺りから始めましょうか?二人の年齢差が4歳だったので…かなり過去に遡っても大丈夫だと思います)
すぐに朝の支度を始めます、
(彼の身の回りのことなら自分が1番抜かりなくできていると思っていた。まさか寝坊、なんて。自分でも信じられないのかぽかんといつもより間抜けな顔をしたままベッドから降り)
(/ヴィラが14歳、ノエルくんが10歳くらいのときはどうでしょう?
ノエルくんのご両親に引き取られて執事になってすぐくらいのイメージでいかがですか?)
……ふふ
(余りにも慌てた様子に思わず吹き出してしまう。こんな彼なんて本当に稀だろう、朝から珍しいものが見れたのが面白かったのか笑っていて)
(/いいと思います!では、ノエルは少し…かなり心開いていない状態からのスタートになると思います…。どちらから始めましょうか?)
なにを笑っているんです、
(寝心地の良すぎるのが悪いんだと子供じみた言い訳を心の中でしながら、ひとつ咳払いをしては彼の今日の服と洗面器にミントのオイルを垂らした水を張らせる。杖を1振りしただけで同時に作業をさせながら自分はキッチンへ向かい)
(/こちらもかなり冷たい態度かと思われます…。
次レスで私から行きます!)
なんでもない。
(悪戯っぽく笑みを溢してそう伝えると、今日もいつものように彼の準備した服に着替え、顔を洗い、ぐっと伸びをしながら朝食を待つのだった。)
(/承知しました、宜しくお願い致します!)
……息が詰まる
(自分の不注意で両親を亡くしてしまった。地獄の炎のような、あの悪夢から数日後、とある屋敷に引き取られて。今日の朝からこで執事として、身を置かせてもらうことになったのだが。身につけた執事服のきつさに顔を顰めながら自分の仕える"お坊ちゃん"の部屋のドアを叩き、)
(確か昨日やら一昨日やらに、父から「家族が増える」だとかなんとか聞かされていた気がする。きっと犬や猫などの動物かそこらだろう。──だから今のノック音もどうせ使用人だと思いつつ、両手で取っ手を掴むとそのままドアを開き。しかし、その先にいるのは見たことのない姿。その顔を見上げながら、怪訝そうに一言、)
……なんだおまえ
今日からお坊ちゃんの執事です
(そう言うように言われたのだ、彼の両親から。
用意された言葉をさらりと並べては、部屋と彼を交互に見て一言、「今から掃除する」と告げて部屋に入ろうと、)
っ?!──ちょっと待て!
(「新しい家族」がまさかの人、しかも自分の執事だと…?正直、全く状況が飲み込めていない。更に自分が何も言っていないのに部屋に入ろうとする彼…、それを通せんぼするように精一杯両手を広げて彼の前へ)
退いてください、頼まれたんです部屋の掃除
(何をしているんだこの人はと言わんばかりの視線を彼に向ける。服のポケットには何をしたら良いのか、時間ごとに区切られてメモ書きされたものを忍ばせており、彼の腕に手をかければ無理やり手を下げようと)
嫌だ!ここは僕の部屋だぞ!勝手に入るな!
(我儘、しかし、たとえ頼まれたからと言ってそう簡単に自分の部屋へ入れたくはない。力が敵わず、広げた両手はあっさり下ろされてしまうが、抵抗するようにそう大声で)
…では頼まれないように部屋を綺麗に保てば良いのでは?
(杖を振り、窓の桟の部分や窓ガラスを雑巾に拭かせる。まだまだ安定はしていないが、そのまま杖をもう一振してベッドメイキングを初め。うるさく叫ぶ彼に聞こえるよう、盛大にため息を零してはそう一言、)
っ、う……
(今の自分の部屋は、お世辞にも綺麗とは言えない状態。言葉を詰まらせ、そのまま黙りこくってしまう。肩をぷるぷると震わせ、目の端には涙が浮かんでおり)
すぐ泣く。温室育ち、まるで薔薇ですね
(自分より年下に見えたが、まさか嫌味を言っただけで目の端に涙を溜められるとは思っていなかった。ぽろりと敬語が外れた本音を零しながら、掃除を終えればメモを取り出して次にやることを確認し、)
(/なんかヴィラがすっごいやな奴になっちゃってますが大丈夫でしょうか……。
あとノエルくんすんごいカワイイです、ありがとうございます!)
っぐ……、お前なんか嫌いだぁ!父さんに言い付けて…すぐクビになっても知らないからな……っ!
(目の端に溜まっていた涙はぼろぼろと流れ落ち、何度拭っても止まりそうにない。涙いっぱいの瞳で彼を睨み付け、何度か言葉を詰まらせながらそう言い切る。そしてその後、もう堪えきれなくなったのか大泣きで)
(大丈夫です!此方のドM精神がくすぐられております……!最高です。
8年前なので、ノエルは直ぐ泣きます、あと超我儘です(()
そうやって親に言えば済むと思ってるの?
(魔法でやれば済むものの、慣れない仕事はまだまだ山積みだ。自分には我儘を言い付けて甘えられる両親だってもういない、自分の手で亡くしてしまったのだから。わんわん泣いている彼が癪に障り、思わずそう怒り気味で言い返して)
(/両親無くしてすぐくらいでかなりカリカリしてるヴィラです…14歳難しい……。
え~~~可愛いじゃないですか!!
そこにヴィラが煽って負のループですね(()
っ……ぅ、なんでっ、なんでそんなこと言うんだよ……っ
(目の前の彼に親が居ないことなんて知らない、今まで親に頼りきっていたからの言葉……だったのに。いきなり全否定されてしまった。実は、こうして否定されるのは始めてのこと。身内に何かを話せば全肯定されてきた世界、彼の言葉に戸惑いの色を見せ、泣きじゃくるなか弱々しい声で呟き)
(/怒ってるヴィラさんもいいですね…、普段見せない子供っぽさ(過去ですけど)素敵です…!
さてさて、このループがいつまで続くことやら())
私は全肯定なんてしないですからね!
(未だ泣きじゃくりながら弱々しく呟いた彼の言葉すら真っ向から否定する。一人で生きてきた期間は短いものだったが、頼りきりであろう彼の姿をふん、と鼻で笑い。次は彼の朝食を用意しなければと一旦部屋を後にして)
(/今のヴィラに昔カリカリしてたなっていじると照れますよ!!
楽しいのでもう少し続けましょう…!!笑、)
……っぐ、……ぅう……っ
(彼がいなくなっても涙は止まらない。自分に放たれた言葉、一つ一つが心に突き刺さっている感覚。部屋の隅で体育座りをし、自分の膝に顔を埋めて)
(/これは耳より情報…ありがとうございます!
楽しいですよね(笑)了解です!)
…_ご飯!!
(さすがに、大人気なかっただろうかとは思うが、自分にだって思うところがあったのだ。料理人から教えらながら彼の朝ご飯を作り上げていく。焼きたてのクロワッサンとコーンスープ、簡単なサラダ。それらをワゴンに載せては再び彼の部屋のドアをノックして)
(/大体どのあたりまで過去編やりましょう、お互い心を開いたぐらいまでにしましょうか?)
……要らない
(もうドアを開ける気にもならなかった。鼻水をすすって鼻声でそう呟くと、表情を隠すようにより一層深く膝へ顔を近付ける。まだ小刻みに肩を震わせながら小さく踞っていて)
(/そうですね、賛成です!)
我儘言わないでくださいよ、!
(そりゃついさっき言い争いをしたばかりの相手が作ったものなんて食べたくないかもしれないが、彼が食べなければ無駄になってしまう。それに次の仕事も進まない。ドア越しに「…私が悪かったです、」そう渋々謝って、)
(/では一旦背後は失礼致します!)
……っ、
(彼の謝罪の言葉に顔をあげ、ゆっくりドアの方へ。要らない、なんて言っているが、なんだかんだお腹は減っているのだ。ドアの取っ手を掴むとそっと開き、顔だけ出して恐る恐る相手の瞳を見、)
(/では此方も背後失礼します!なにかあれば遠慮なくお呼びください~)
ほら、食べてる間私は違うことしてるので
(彼と視線がかちあえば、気まずそうに目線を逸らして。ここはひとつ自分が折れてやろうと、用意してきた朝ごはんを指さしてはそのまま彼自身から扉を開けるまで、自分からは開けようとせず、)
ん……
(扉を開けると、美味しそうな朝食の香りが鼻へ。食べたい……しかし、直接彼に言うのも気まずい気がする。何も言わず、そのお皿を頂戴、というように両手を差し出して)
…ほら、
(自分に向けて両手を向ける彼に、何をしているのかと見つめていたのも数秒で。クロワッサンにコーンスープ、サラダ、最後にオレンジジュースを彼に手渡せば「終わったらワゴンに載せといて」そう伝えてワゴンを部屋の前においては廊下の窓拭きを始め)
……、美味しい
(朝食を受け取ってそのまま自分の机へ置き、ぱたんとドアを閉めると机に戻ってクロワッサンにかぶり付く。涙で少ししょっぱいが、ほんのりと甘みが口に広がり。ぱくぱくと朝食を食べすすめ、いつの間にかお皿は空っぽ、完食していた。確か食べ終わったらワゴンの上に……と、言われていたことを思い出す。それと同時にふと思い付いたのか、引き出しの中から画用紙とクレヨンを取り出し、拙い文字で「おいしかった」と書けば、不器用に折り畳んでお皿と一緒にワゴンの上に置き)
なんだ、意地なんか張るなよ…!
(掃除は効率的に、魔法を使いながら。そう言われたのを思い出して魔法を使いながら窓を拭き終え、ワゴンに戻れば綺麗に空になった皿と一緒に添えられていた紙の中身を見てはそう一言。ふん、と鼻を鳴らしてはドアの隙間にこれからの勉強予定を書いた紙を潜り込ませ)
……こんなにっ、
(ドアへ近付いて、紙に視線を落とす。そこにはびっしりと勉強の予定が。やはり昔からそこまで勉強は好きではない、しかし、これを無視して怒られるのはもっと嫌だ。大量の勉強予定に、またまたうっすら涙を浮かばせるも、仕方なく自分の席で勉強を始め)
わかりますか?
(一通りの仕事を終え、何をすれば良いか旦那様に問いかけた所、彼の勉強を教えてくれとのことで。あまり気は進まないが、これも仕事だと自分がわかる範囲ならば、そう思って彼の部屋のドアをノックして)
…分かんない
(取り組み始めたはいいものの…さっぱり分からない。1問目で躓いてそれっきり。自棄を起こし、ペンや教科書を放り投げ、椅子の上でいじけており)
…1問も終わってない、
(いじけている彼を横目に、ぺらりと教科書とノートを確認したものの、これは思っているより重症かもしれないと思わず本音が漏れ。教える、といっても当人のやる気がなければどうにもならないので、とりあえず自分が問題を解いてやれば彼の目の前に突き出して)
……っ?なん、だよ
(いじけたまま、またまた目の端に涙を浮かべ。突き付けられた解答に視線を向ければ、その意味が分からないというように呟いて)
これ見てもわからないですか?
(丁寧に途中式まで書いてやったのだ、これを見て他の問題も考えろという意思だったのだが、いまいち伝わっていない彼に溜息を零し)
分かんない、
……ちゃんと言葉で言ってくれないと分かんない!
(何一つ分からない。問題も、彼の行動に込められた意思も。自分に向けられたであろう溜め息にムッとしたのか、ムキになってそう言い切り)
途中式も、考え方も書いてやったんだ。
ほかの問題もこれと殆ど同じだから、見ながら考えてください
(確かに言葉が足りなかったかもしれない。自分は年上であるし、彼に全て察しろというのは少し無理があったかとペンを彼に握らせて、)
っ……ぅう……!
(彼の態度には納得がいかないが、悔しいことにその解かれた問題はそこらの教科書よりも分かりやすい
。その悔しさでこみ上げてくる涙を我慢しながら、半分強制的に握らされたペンを動かして問題を解いて)
ほら、やればできますから
(余程勉強が嫌いなのだろう。彼の姿を見ていると自分までいたたまれない気持ちになるが、これもきっと将来のため。解けた問題があっているのを確認してから赤ペンで丸をつけ)
……合ってた
(ぐしぐしと涙を拭って、ぼそりとそう呟くと初めて小さな笑みを見せた。どんなに嫌なことを言われた相手だろうと、褒められるのは嬉しいらしい。しかし、そんなに直ぐに心を開ける訳でもなく…、ハッとして笑みを元のむすっとした表情に戻して)
問題はまだまだ山積みです
(全くなんてわかりやすい。呆れつつ、次のページをめくる。基本問題の次は応用だ、果たして彼はわかるのだろうか。まずはヒントを出さずに解かせようと)
……これはやってない、知らない
(問題を一目見ると、先程は順調だった筈のペンを動かす手が止まる。なんだこの問題は。応用問題だなんてこれっぽっちも考えておらず、頭の中は疑問符だらけ。目の前の問題から目を背けるように分からない、知らないとぶるぶる首を振って)
知らないなら知る努力をしてください
(基本はしっかりできていたのだ、問題文をしっかり読めば分かるはずなのに。できる能力があるのにしないのは甘えだ、問題文を途中で区切れば「ここまでなら分かりますから」と指をさし)
……む、
(問題とにらめっこしながら、彼が指で示してくれたところまでを視線で辿る。ゆっくり、何度か読み直してみると、確かにそこまでなら理解することができた……のだが。やっぱりこの後が分からない。この後はどうすれば、困ったように問題から彼に視線を移し)
…一気に解こうとするからでは?
(彼はきっと、この後からは本当にわからないのだろう。そもそもこれは式が2つ必要であり、ひとつめの答えを次の式に使う必要があり「ちゃんと教えますから、ここまで解いて」と彼をまっすぐ見て)
(彼の視線に答えるようにうん、と頷くと、先程教えて貰ったばかりの方法で解いていく。数分後、ノートに指示された場所までの答えを書いて「できた」と彼に見せ)
…次、ここはこう
(ポケットからペンを取り出し、さらさらと途中までの式を綴る。先程彼が出した答えを入れた式を完成させては、自分でやってみてと彼が解くのを待ち)
…でき、た
(一生懸命ペンを動かして、彼から受け取った式を解いていく。途中で詰まったり、少しばかり時間は掛かったものの、それらしい答えは出てきた。合っているかまでは分からないため、不安そうに答えを見せて)
_はい、合ってますよ
(不安げな彼を見つめては、彼が導き出した答えに赤ペンで大袈裟に花丸をつけてやった。自分は本当に少しのヒントしか出していない、正解にたどり着いたのは彼の力だ、)
……!
(やはり子供は子供。目の前の、花丸というご褒美にぱっと明るい笑顔を見せると、貰った大きな花丸を嬉しそうに一撫でする。こうやって自分で問題を解くことなんて稀だからこそ、大きな達成感を味わえたらしく)
次は一人で解けますか?
(大袈裟につけた花丸のひとつで、そんなに喜ばれるなんて思わなかった。むしろバカにするな、なんて言われるかと思っていたが所詮は10歳の子供。なんとなく可愛いなんて思ってしまったものの、涼しい顔をして次の問題を指さし)
やってみる、
(自信がついた分、やる気も湧いてきた。勉強を始めたばかりの時とは違い、勉強嫌いもそこまでではなくなった気がする。幸い次の問題の解き方も、先程の問題と殆ど変わらない。教えて貰ったことを思い出しながら答えを出すと彼に見せて)
はい、次
(解いた問題が全てあっているのを確認し終え、ぐるりぐるりと一面に花丸を書いて、隣にネコもつけてみた。今日の問題は終わり、喜んでくれるならとの行動だが、果たして自分の描いた不格好なネコはネコに見えるだろうか)
!……、犬?
(全問正解、また花丸だ!、と喜んでいたが、隣に描かれている四足歩行の生き物に首を傾げる。ノートの上のそれをじっと眺めるが、きょとんとした表情で彼を見つめ)
…ネコだよ!!
(よりによって犬に間違えられるとは。しかも彼を気遣ってのラクガキだったのに。ムキになって彼に言い返せば、自分の絵が下手なのに描くんじゃなかったとヤケになりながらノートを閉じ、)
(閉じられたノートを開いて、改めて彼の描いた猫を見てみる。始めは、これが猫……?と不思議に思っていたが、よくよく眺めてみると、なんだか愛着も湧いてくるものだ。ムキになって言い返されたのが意外だったのか少し驚きを見せながらも小さな声で)
……かわいい、と思う
べつに、無理に褒めなくて大丈夫ですけど…?
(正直、わりと上手く描けたのではないかと思っていた。しかし、それは思い過ごしだったようで。今さら褒められても、そう彼に言い返したがその顔は嬉しそうで)
無理に、じゃないし
(こんな彼の顔、初めて見た。いままでのしかめっ面からは想像できないような優しい笑み、表情に出たその嬉しそうな顔が、不覚にもかわいい、なんて思えてきて)
…そう、ですか
(彼がそう言うのなら、きっと無理に褒めてる訳では無いのだろう。顎に手を添えふ、笑えばかなり嬉しかったようで。彼より年上といえどまだ14歳、単純な所は彼とそう変わりない気もする、)
名前、まだ聞いてない
(かなり二人の距離が縮まったのではなかろうか。強かった筈の警戒心、今は大分弱くなってきた。初めのお互いの態度こそ最悪だったがほんの少しずつではあるが打ち解けてきた気がして。そういや名前さえも聞いていなかったと、)
ヴィラです、
(自分は彼の両親から彼の名前を聞いていたが、そうか、彼は自分の名前を知らないのか。彼に問いかけられたことに対して素直に返事を返せば、「名前、当ててみようか」なんて悪戯っぽく笑い)
ヴィ、ラ…
(そっと彼の名前を反復した後、彼の口から飛び出した言葉に目を見開く。……名前を当てる?、そんなことが出来るのか?半分疑いつつ、彼の方を向いて)
ノエル、10歳…当たりだろ?
(こちらを向いた彼に指を指し、すらすらと彼の名前と年齢を当ててやった。ふん、と得意気な顔をしては彼の反応をうかがい、)
な、なんで分かったんだ……?!
(自分の口からは絶対に名乗っていない。心底驚いたように目を開き、まじまじと彼を見つめる。親から聞いた、なんて考えはこれっぽちも無いようで、ただ単純に凄い、と感心していて)
魔法が使えますからね
(中には人の心理を読み取る魔法もあると聞くが、そんなものは使っていない。しかし、杖をわざとらしく取り出して見せ。どこまで彼を騙せるかを試しているらしい)
そんなに凄い魔法……まだ僕には使えない、
(人の心を読み取る魔法…彼が取り出した杖を見て、完全にそうだと信じきった。そんな魔法自分には使えない…。凄い、と尊敬する一方で、猛烈な羨ましさもあり)
…ちょっと、俺だってまだそんな魔法使えないんだけど
(まさか彼が鵜呑みにしてしまうなんて。バツが悪そうに冗談だったと伝えれば、「出来過ぎよりできない方が良いですよ」どこか遠くを見つめながらそう呟き、彼はまだ若いのだからこれから使える可能性は充分にあるのだから気にするな、とも付けたし)
冗談……っ?!……でも──
(出来すぎよりも出来ない方がいい……?その言葉に首を傾げる。何故そんなことを言ったのだろう、しかし、彼の意味深な表情に何か察したのか口を噤み、黙ってコクリと頷き)
物を浮かせるくらいできるでしょう?
(物を浮かせたり、風を起こしたり。それくらいならできるだろうと彼を見込めば、それくらいでいいんだと1人納得し、)
?!、……ま、まぁ……
(ぎくり、なんだか妙な期待を掛けられている気がする。……実は、今まで魔法が使えたことなんてなく。「出来るに決まってる」と強がってしまったが、内心は冷や汗が止まらなく)
…ああ、ペンを置きっぱなしにしていたな、
(やけに強がっては、微妙な返事を返してきた彼にこれはもしやと勘づいて。たまたま窓の辺に置きっぱなしにしていたペンが目に止まれば、「魔法が得意なお坊ちゃま、お願いします」と彼を煽り、)
え、……うぅ、
(彼からの頼みに唖然となる。まさかこんなにも直ぐそんな事を言われるとは。しかしあれほど強がっておいてここで断るわけにはいかず。何度か杖を振るがペンはピクリとも動かない。若干涙目になりながら、半分自棄になって杖を振り下ろす。すると、ふわりとペンが浮き上がると、まるで矢の如く勢いよく飛んでいき、彼の後ろの壁へと突き刺さって)
………はあ?
(ああやっぱり使えないじゃないかと思ったその矢先、びしりと飛んできたのはあのペンで。そのまま自分の横を通り過ぎては後ろの壁に突き刺さり、おもむろに振り返れば呆れたような声が漏れ、)
えっと……
(またやってしまった。何故自分の魔法はこんなにも空回りしてしまうのか、下手をすれば怪我にも繋がりかねない。この状況を説明しようとも巧い言い訳も出てこなく。ちっとも上達しない魔法に落ち込みながら、気まずそうな表情で彼を見て)
…いじめすぎた、
(まさかここまで出来ないとは思っておらず、ペンすら浮かせない程度だと思っていたのだが。こうもできないとなると彼は本気で気にしていたに違いない、ゆっくり立ち上がってペンを拾えばそれを彼に手渡しで返せば、頭を軽く撫でてやり)
……ぅぐ、もっと…うまく、なりたいっ……ひぅ……っ
(出来ないだけならまだしも、魔法が制御できずに勝手に暴走してしまうのだ。今の自分ではどうにもならない、じわりと目の端に涙を浮かべ、それが零れないようにぷるぷる我慢していたが、彼から撫でられたことでそのストッパーが外れた。上手く出来ないもどかしさ、悔しさで大粒の涙を流し)
全く出来ない訳じゃないです、だいじょうぶ
(今回はただのペンだから、もし自分に当たったとしても軽い切り傷くらいで済んだだろう。しかしこれがもし、水や土、あるいは火だったら_?ぞっ、と背筋が冷え、悪夢が蘇る。涙を流す彼を見てははっとして、自分のような思いをさせたくないその一心で)
私が付き合います、魔法の練習
……ありがとう、っ
(彼の口から出てきた優しい一言、初対面の刺々しい感じではなく、純粋な優しさが感じられた。いつの間にか警戒心は殆ど溶けていて、一生懸命涙を拭いながらお礼を伝え)
まあ、私の管理能力も疑われるのでね
(つん、と澄ました顔を崩さずそう呟く。素直にありがとうございます、と言うのは気が引けてしまったのはまだまだ自分も子供だからだろうか。警戒心と彼に対する苛立ちが消えた今、この人なら自分の命をかけても良い、なんて思いが芽生えだし)
僕もがんばる、から……
(泣きはらして若干赤い瞳で彼を見上げる。鼻声でほう宣言しては、先程までのピリピリとした関係が嘘のように、くしゃりと笑って見せ)
はいはい、がんばれよ、
(ポケットからハンカチを取り出して、彼の目元を拭う。これから彼が魔法を使えるようになるまで、困難なことになるのは目に見えていたが、それもいいかと彼の笑顔につられて笑い、)
……その、最初は嫌いとか言ってごめんなさい
(こうしてお互い笑いあった後、ハッとした表情になり彼の瞳を見る。ここら辺はしっかりケジメをつけて謝っておきたいらしい。気を付けの姿勢になると申し訳なさそうに頭を下げて)
そんなこと気にしてたのか、
(自分としてはもう気にしていなかったので、彼の改まった謝罪に拍子抜けしてしまい。きちんと謝ってくれたからには、自分の思いを素直に伝えるのが筋だと思い、彼の頭に手を置いて)
もう気にしてないから、大丈夫です
よかった、
(彼の返答を聞いて心に引っ掛かっていたもやもやが無くなった。ふっと軽くなった心で無邪気に笑みを浮かべては彼の身体に自身の身体を寄りかからせて)
じゃあ、これからはなかよし…
……もう、
(とん、と身体に掛かるのは彼の心地よい体温と重みで。何ヶ月ぶりの人の温もりに、思わず涙ぐんで。これからは一人じゃないんだ、それを心から感じれば彼を軽く抱きとめて、)
な、なんで泣いてるんだよっ、
(彼の腕の中、ふと上を向けば彼の目の端に何やら透明な粒が。それを涙だと理解しては、焦ったようにそう言って、自分がなにかやらかしたかと過去を思い返していて)
あくびです、欠伸
(慌てふためく彼をなだめるようにさらりと嘘をつけば、ふわりと欠伸をするふりも付け加えた。最初出会ったときが嘘のような彼の態度がおかしくて、思わず笑ってしまった、)
(/背後失礼します、!
ノエルくんめちゃくちゃ可愛いです…ありがとうございます……!!
大分心も開いてきたようなので、過去編の次にシチュでなにかやりたいことはありますか?)
え、あ…うん
(泣いていたかと思えば今は笑っていた、ころころ変わった彼の表情に混乱しつつも、泣いてないなら……と半強制的に自分を納得させ)
(/有難うございます!
子供っぽいヴィラさん最高です…此方こそ有難うございます……!!
そうですね……、此方ばっかり希望を叶えて頂いている気がするので、この次のシチュはお任せしたいと思っているのですが……逆に何かやりたいことはありますでしょうか?(()
あ、勉強には手を抜かないので
(衣食住、そして仕事まで与えて貰えたのだ。絶対に彼を仕上げてみせるなんて意気込みながらも頭をポンポンと撫でて、)
(/そうですね…、ノエルくんにヴィラのトラウマが火だと知られてしまうシチュをやりたいです…!
刺客が炎の魔法に長けていて、ノエルくんを守らないといけないのに中々ヴィラが動けない、みたいな…めちゃくちゃ私得ですし良ければでいいです…!)
え"
(彼の言葉にぎくりと、思わず声を洩らした。やはり嫌なものは嫌なので表情が若干暗くなる。結果として、また一人信頼できる家族が増えたはいいものの…今より勉強時間は増えそうだとため息を吐き)
(/それ最高です…、大賛成で御座います!此方としても得すぎるシュチュ……有難うございます(()
改めて、よろしくお願いします
(多少厳しくても彼のためなのだから、力を入れてやらなければ。思わず漏れ出たのであろう声にくふりと笑い、またこんな自分に家族ができたことが嬉しくて堪らずにいた、)
(/わッありがとうございます~~…!!ではそれでいきましょう、!
レスはどちらが回しましょう、?
こちらの返信は蹴って新しくシチュ始めても大丈夫です…!)
──現在
(今日は数週間に一度の、街を偵察しに行く日である。もうすぐに出るということで、外へと繋がる大きな扉の前でしゃがみこんで靴を履いていた)
(/僭越ながら新しく始めさせて頂きました…!刺客ということで、外の方が色々と狙われやすいかと思いまして……((
絡みにくかったら変えていただいて構いません、!)
ハンカチは持ちました?
(財布や傷薬、ハンカチなどを詰めた小さめの革製鞄片手に扉の前で靴を履いていたら彼に後ろからそう声をかけ。明らかに子供扱いした問いかけだが、彼はどう出るだろうかと自分も靴を履きながら、)
(/ありがとうございます~…!!
炎の魔法を前にしたヴィラを泣かせるか泣かせないかで悩んでおります……(()
当たり前だろ、ほら
(もう同じ失敗はしない、と自信満々にポケットから取り出したハンカチと──ハンカチ。どうやらティッシュの代わりにハンカチを二枚持ってきてしまったらしい。それに気が付いてハッとした表情になると、「やっちゃった…」苦笑いしながら彼を見て)
(/確かにそれは悩み所ですね…(笑)
ノエルを前にして泣かないよう必死に耐えているヴィラさん…、いつもは絶対に涙なんて見せないヴィラさんが堪えられなくて泣いてる姿…個人的にはどちらも美味しいので……)
…水遊びでもするおつもりで?
(今回は_いや、今回も大丈夫ではなかった。まさかハンカチを2枚持っているとは。思わず吹き出しかけたのを抑えて茶々を入れつつ、予備として持ってきていたティッシュを彼に渡し、)
(/う~~~ん……たぶん泣いちゃうと思うので泣かせます……!(()
、違う……
(そう否定しながら恥ずかしそうにティッシュを受け取り、二枚のハンカチと共にポケットに突っ込む。軽く服装を整えては今度こそ準備万端だ、と彼に向かって呼び掛けると扉の取っ手に手を掛け)
行くぞヴィラ!
(/了解です!)
えぇ、行きましょうか
(なんだか彼がいつもより張り切っているような気がして、自分も彼の後に続く。1歩外へ踏み出せば澄み渡る青空に鳥が飛んで、今日も穏やかな日になりそうだ。今日は彼にこっそりアイスクリームも買ってやってもいいかもしれない、なんて思いながら、)
(/では一旦失礼します…!)
、
(家の敷地内、敷地外を区切る門の前までぐんぐんと歩いていくと、彼が隣まで来るのを確認して彼の片手を取る。いつも強がっているが、実は一人っきりで街を歩くのは…怖い。家、という守られた空間から出てしまえば、どんな事件が起きるのかも予想がつかないから。殆ど無意識に彼の手を握って)
(/では此方も失礼します…!何かあれば遠慮なくお呼び下さい……!)
おや、お坊ちゃん…、
(手袋越しに感じた彼の手の温もり。ほぼ無意識に繋いできた彼の手を無下にすることなくきゅ、と握りつつも口では彼をからかっていて。もし彼が襲われても、自分が守ってやるから安心しろといいたげに)
私という優秀な執事が居ながら…怖いのです?
っ、怖い訳ないだろ!…お前が迷子にならないように、だ!
(ハッとして自分の行動に気付くが、振りほどくことはせず。より一層強く手を握りながらもそう強がって)
今日の頑張り次第で、買ってあげますよ…アイスクリームを
(強がる彼をくすりと笑った後、ぽそりと独り言のように呟く。普段の彼のおやつといえば甘さ控えめのケーキやプロが作ったチョコレートなどだ。街にある大衆向けのアイスだなんて、そうそう口にするものでは無い、)
……アイス!
(父や母、料理人に頼んでもなんだかんだ理由をつけて、なかなか食べさせて貰えないもの。キラキラと瞳を輝かせて)
分かった、約束だからな!
秘密ですよ、
(ぱっと顔を輝かせた彼に笑みを浮かべ、やはり街のアイスに憧れはあったのだろう。予想より喜んでくれた事を嬉しく思い乍、街まであと少しというところで殺気を感じてぴくりと眉をひそめ、)
……?どうか、したのか?
(突然彼の表情が険しくなった。何か嫌な予感を感じ、自分の表情も暗くなる。だが、あくまでも平気、だという表情を装いながら訊ね)
いえ、お坊ちゃんのアイスに対する熱を殺気と勘違いしました
(殺気は自分の勘違いだっただろうか。実際、今はなにも感じなかった。なんでもないです、と不安げな表情を浮かべる彼を冷やかして、少し足早に歩き出したと同時に後ろから強い魔力を感じては彼の腕を引っ張り、)
伏せろッ、!!
っ?!
(突然すぎて何を言っているのか分からなかった。状況を読み込めず、暫くその場から動けなかった……が。腕を引っ張られたことでバランスを崩し、意図せず地面に伏せる形になる。幸い怪我はなく、)
刺客です、 私の後ろにいてください
(あまりに突然で、冷静な判断ができずに伏せろなんて言ってしまった。次の攻撃がこないうちに自分と一緒に彼を立たせ、彼を背に庇った_まではよかったが、次に自分の顔の横を掠めていったのは火の玉で、思わず息を飲み、)
___ッえ、
……ヴィラッ、
(彼の背に移動したはいいものの、やはり状況は全く理解できていない。そんな中飛んできた次なる攻撃、火の玉……。ぎゅっと目を瞑り彼の服を掴んだ。彼の混乱にはまだ気付いていないようで)
火ッ、火が……! み、水、水を…、
(その火の玉は既に消えていたのにも関わらず、火を消さねばと腰から杖を抜き取って。杖を掴むその手は震えており、ろくに杖を触れなかった。姿こそ見えないが、刺客は恐らく1人か2人。火の魔法を使うんだ、そこまで判断してやっとの思いで杖を降れば、あろうことか彼に上から水をかけてしまい、)
っ!、落ち着けヴィラ!
(彼の様子がおかしい。こんな失敗、普段なら絶対にしない…それに、手が、身体が震えている。こうしてはいられないと、背中から飛び出して彼の真ん前へ。水で濡れた顔のまま彼の瞳を見据え、我を取り戻させようと必死に呼び掛け)
後ろに居てくださいッ、火が…!!
(彼が自分の前に来たことではっとして、守らなければ、その思いが先に来て、彼の肩を掴んで前に出ようとする。刺客が杖を振ったその杖先、それは熱気と火花が散っており、)
あ、…ぁ、
(再び火魔法が放たれた瞬間、ぼろぼろと涙が零れ。本人はそれに気づいていないのらしい、)
?!、……っ、
(彼の涙、あまりにも突然で声が詰まる。こんなに弱々しい姿は見たことがない。その時、脳裏に一つの仮説が浮かぶ。もしかして──彼は火が怖い、のか?確か、過去に自分が誤って魔法で火花をだしたとき、彼は動揺していたような気がする。……詳しい話は後でいい。今、彼のこんな精神状態で自分は守って貰う、なんて。いつまでも甘えていちゃ駄目だ、一度はまた背中へ移動されそうになったものの、彼に背を向けてもう一度前へ立ち、杖を構えて)
……ヴィラ、お前は何もするな
できます、私、できますから…、
(命よりも大切な彼を、わざわざ危険に晒すなんてできない。両目から零れつづける涙は止まることを知らず、少しずつ、シャツを濡らしていった。うわ言のようにできるできるとつぶやいても、今自分が泣いていることにも気づいていない、杖を振るのがやっとの状態で出来ることなんてないに等しく、)
今のお前に何ができる…!
(背中を向けたまま、大声で彼に向けてそう言い放つ。かなり厳しい言葉になってしまったが、こんな状態で戦う方が危険だろう、それに、いくら自分のためでもそんなこと…絶対にさせたくない。)
…僕はもう子供じゃない、大切な人くらい自分の力で守ってみせる!
ぁ、と、父さ…
(あろうことか、その彼の背にかつて自分の不注意で亡くしてしまった厳しくも優しかった父の姿が重なった。彼はもういないはずなのに、どうして。疑問と不安、恐怖で心が渦巻く中、次に放たれた強い炎を前にいよいよ杖が振れずただそれを見つめるばかりで、)
……!
(目を細め集中力を高めた後、目の前に迫り来る炎に向けて杖を振る。“彼を守る”そう言い切ったせいもあってか、案外心は落ち着いている。炎に対する恐怖よりも、守らなくてはという正義感の方が強い。──振り下ろした杖の先からは細かな氷の粒が飛び出し、瞬時に大きな盾が形成されていく。自分達へ炎が迫るまで残り数センチ、という所で完成した氷の盾は、炎が届くと同時にその火の勢いを殺.した。更に氷の盾が溶けたことで出来た水によって消化も行われ。なんとか攻撃から身を守ることは出来た、短く息を吐いては、まだどこかに潜んでいるであろう刺客を視線で探し)
はッ、ふ…
(迫り来る炎、あれは自分が放った魔法ではない。分かっていても、自分の中の消したい記憶は蘇って。あのときはあのまま燃え盛って行った景色。それが今は、彼の創った氷の盾によって見事に防がれ。どくどくと不自然に脈打つ心臓のまま、右と左を指さして、)
……分かった
(彼の指差した方向に刺客がいるのか、小さく頷くと改めて杖を握り直す。攻撃を避けるだけではまだ何も変わっていない。どうにかしてこれ以上の攻撃を防がなくては。今までの攻撃を見るに、どうやら相手は炎やら火やらの魔法を使ってくるらしい。変に此方から攻撃を仕掛けるより、彼方の攻撃を無効化する方が大切であろう。もう炎系の魔法が使えないよう、杖を降って雨雲を作り出さば雨を降らせ)
…あの、お怪我は、
(刺客が放っていたぴりついた殺気と、炎独特の熱さを感じなくなり、ぽつぽつ雨が降っているのに気付き。火魔法しか使えないのか自信が無いのか、ばたばたと刺客が逃げていくのが視界の端に見え。彼の手に肩を添え、まだ潤んでいる瞳で彼にそう問いかけ)
ない、──
(肩に手を置かれ、これでなんとかなった、と改めて実感し。自分に怪我が無いことを伝えれば、安心感からかふっと力が抜け、彼の方に身体が傾く。今まで殆ど使わなかった大掛かりな魔法に、かなり体力を消耗したらしく)
お見苦しい所をお見せしました、
(こちらに身を任せてきた彼を抱きとめて、やっと平静を取り戻せばぽそりと震えた声で呟く。彼を守る立場であるはずなのに、自分はなにも出来なかった。彼に体力を使わせて、挙句幼少期のトラウマによって自分は動けなかったのだ、苦しげに眉を寄せれば素の一人称が漏れ)
ご、ごめんなさい__ッ、おれ、本当に、
……なんでお前が謝る、
(静かに彼の言葉を聞いていたが、呼吸を整えて彼へ顔を上げると一言。そして、ゆっくりと一つ一つの言葉を紡いで)
いつも僕が守ってもらってるんだ、だから──今度は僕の番、
いつのまに、そんなに強くなられたのですか、
(自分が彼を守るのは、それが存在意義であり自分がそうしたいから。だから、その立場が覆るとは思わなかった。たまらず彼をぎゅっと抱きしめては涙声でそう呟いて、)
…もうッ、全く…!!
(この人に仕えることができて、本当によかった。彼の呟いた言葉に子どものような笑顔を見せ。恐怖とは違う意味の涙を零せば、随分彼も成長したものだと嬉しく感じつつ彼を離し、)
大きなアイスクリーム、買ってあげますよ
そうだ、アイスクリーム……!
……当たり前だろ、約束だからな!
(確かそんな約束だった。思い出したようにハッとした表情に変わる。彼の笑顔も見る事が出来、それに念願のアイスクリーム。大きく頷き)
濡らしてしまいましたね、
(杖を一振、ドライヤーに似た熱風を起こせば彼の服と体を乾かしていく。動揺していたとはいえ、まさか頭から彼に水をかけてしまうなんて。申し訳なさそうに眉を下げながら、)
大丈夫、
(確かに体や髪は濡れたが、どこか怪我を負ったわけではない。あまりに集中していたせいもあるのか、自分が濡れていることも大して意識していなかった。気にすることはない、と慰めて)
……さて、行きましょうか
(もしあの時、大勢に囲まれていたらどうするつもりだったのだ。自分自身に対して強く反省しつつもそれは彼に出さず、にこりといつものような笑顔を浮かべ、)
うん
(彼のいつもの笑みを見て、自然と自分の心の中に安心感が溢れてくる。無事でよかった、ちゃんと守れてよかった。彼の言葉に頷くと、余程楽しみなのか彼の手を引いて)
おひとりで聞いて来れますか?
(町の中に入れば、彼の手を離して鞄の中からペンと紙を取り出した。視察および町人の聞き込みも仕事のうち。彼もひとつ成長したのだから、今日は任せてみようと試みて)
っ、僕が聞くのか……?
──おい、そこの……っ、聞いてるのかおい?!、お前だお前!
(渋々ペンと紙を受け取り、彼の元を離れ。相変わらずの高圧的な態度で町行く人に話し掛けるが、無視だったりとなかなか相手にしてくれない。執事に接する態度と全く変わっていないせいもあるが、隣に誰か大人が居ないこともあり、この国を統べる家系のうちの一人だとは思われていないようで)
__失礼、そこのお方。お時間少しだけ頂戴しても?
(暫くは彼の様子を見守っていたのだが、自分と接する時と変わらないあの態度。あれでは無視されても仕方ないし、まさかこの国を統べる家の息子だとは思われないだろうに。見兼ねて彼の隣に立てば、彼と接する時が嘘のように、優しい笑顔を浮かべながら柔らかい物腰で、先程通り過ぎて行った一人に声をかけ、)
──ヴィラ、?
(口は出さないんじゃないのか、自分が声掛けに悪戦苦闘している所に声が飛んできて、くるりと彼の方を向く。普段聞かないような優しい声色に多少驚きながら彼の様子を見ており)
まだ見習いの身ですからね、貴方は
(自分に話を合わせろと言わんばかりの視線を彼に送れば、訝しげに眉を顰める通行人にふわりと笑いかけつつ、彼の背中をとんと押す。あくまで自分は手助けをしたのみ。ここから先は自分でやれとの意思表示なのか、するりと彼から半歩離れて)
此処等で一番美味しいアイスクリーム屋を教えろ─じゃなくて…、教えて、ください
(彼から背中を押された意味を理解すると、小さく一歩踏み出し口を開く。普段使わない言い方は慣れていないもので、最後の方はどもりながらもなんとかそう伝え)
_おめでとうございます、
(どうやら、慣れない彼の様子に通行人もわかってくれたようだった。微笑ましげに彼を見遣れば、口頭でわかりやすく彼にこの辺りで1番おいしいアイスクリームショップを教えてくれたようで、)
……よし、行くぞ
(またもやどもりつつお礼はしっかり伝え、彼の方を向いて手を取る。彼のサポートはあったもののなんとか目的の情報は得られた、と笑顔を見せて)
…また随分可愛らしい店ですね
(口頭での案内を元に、彼の手を引いてその店まで来たのだが。さすがアイスクリームショップ、可愛さを全面に押し出したショップの外観に思わずたじろいで、)
……入らないのか?
(店の見た目は特に気にしていないようで、すんなりと店の入口に入っていかない彼を不思議そうに見つめ。外観よりも早くアイスクリームを食べたい、と繋いだ手を引っ張って)
あぁ、はいはい
(可愛いものが嫌い、という訳では無いが自分の趣味とはかけ離れたその店に入るのはなんだか気が引けて。手を引っ張られては促されるように店に入り。メニュー表を手渡され、生クリームやフルーツがかわいらしく盛り付けられたサンデーがたくさん載っているのが目に入り、)
今日は特別なので、何でも良いですよ、
これが……!
(キラキラと瞳を輝かせながらメニューの端から端まで目を通し、じっくりと悩んで「これにする」と指を指す。イチゴやらメロンやらの色々なアイスの他、プリンやフルーツで豪華に飾り付けられているものを選んで)
そこ、座って待っててください
(彼の分だけを買うつもりだったが、ふと目に入ったショートケーキ風サンデー。それに惹かれ、結局カウンターで2つ注文した。あんなに色々盛られたものを彼に持たせたら落とすと、椅子に座るよう伝え)
判った、
(大人しく側にあった椅子に腰掛ければ、周りの客の様子を眺めつつ、わくわくしながら頼んだアイスクリームが運ばれてくるのを待っており)
はい、お待たせしました
(片手に彼が頼んだ豪華なサンデー、片手にはショートケーキのようなケーキを手に彼の元まで戻り。テーブルにとん、とそれらを置けばちらりと彼の様子を見、)
……食べてもいいか?
(目の前に置かれた美味しそうなサンデーに目を奪われる。こうして実物を見ることなんてなかなかない、スプーン片手にそのフォルム、盛り付け等をじっと眺めていたが、食欲が勝ったらしく)
はい、どうぞ
(まるで雑誌の中で見るようなサンデーを物珍しそうに見つめつつ、彼にこくりと頷いてみせ。自分もスプーンを片手に持てば、クリームの部分を1口掬って、)
いただきま──……!
(アイスを一口分、ぱくりと口に入れる。フルーツの素材が生かされた冷たいアイスが口の中に広がり。あまりの美味しさに目を見開いてぱっと顔を輝かせ、言葉にならない悲鳴を上げて)
_はい、あーんしてください
(余程美味しいのだろう、ぱっと顔を輝かせた彼の表情に思わず笑みが零れ。掬った分をそのまま口に入れれば、苺の甘酸っぱさとクリームの優しい甘さが織り成す味わいに、きっと彼も好きだろうと予想して少し多めに掬ったそれを彼の口元まで持っていき)
……ん、!
(丁度彼の物も食べてみたいと思っていたところだった。掬われたサンデーを口に入れると、これも美味しい…!、と頬を緩ませ。貰ったお返しに、と自分のアイスも掬うと彼の口元に近付けて)
ん、美味しい…!
(ぱくり、と1口含んで。甘味と酸味が同時に広がったものの、彼から貰ったサンデーは自分が頼んだものより甘さが勝っていた。甘いものは好きな性分であるため、素直にその美味しさに頬を緩ませて)
~、
(幸せそうな表情が見れて自分も満足だ、こんな時間がずっと続けばいいのに…なんて夢を思い描きながら、今のこの時間を楽しもうと、再び自分のサンデーに口を付け)
…その、大丈夫かとは思いますが
(サンデーを食べながら、まるで普通の話をするかのように話し始めた。火が怖いことは黙っていてほしい、と。今のこの立場上、火花でさえ怖いなんて恥ずかしいにも程がある、)
……、
(口の中のサンデーを味わいつつも、真剣に彼の話を聞いていた。元々誰かに言うつもりなんて無かったし、彼の苦手なものが判ったからといって悪用しようとも思わない。分かってる、というように無言でこくりと頷いて)
助かります、
(わざわざ言わなくとも、彼はわかってくれていた。大丈夫だとは思っていたものの、自分の口から問いかけて確認しなければ、気が済まなくて。無言で頷いた彼に少しだけ口角を上げ、)
──僕は、まだ出来ないことも多いけど…少しでも力になれたら…って思ってる。だからもう、秘密は──
(信頼しているからこそ、隠し事はして欲しく無かった。お互いの苦手な部分はちゃんと理解した上で、カバーし合っていけたらと考えており。少し微笑んだ彼に対してそっと口を開き)
__では、私のもうひとつ苦手なもの。なんだと思います?
(誰しも隠し事や知られたくないことのひとつやふたつくらいはあると思っていた。彼の言ったその言葉は非常に真っ直ぐでわかりやすい。もうひとつ、自分の苦手なものが彼にわかるだろうかとそう問いかけ、)
当てたら…なにかご褒美、考えますよ
もう一つヴィラの怖いもの……?
(なんだろう、全く想像がつかない。炎に関しては、普段の生活から怯えているのが垣間見える瞬間もあったのだが、それ以外に怖いものといったら……。暫く考えたが何も出てこない。しかしご褒美は欲しい。)
……何かヒントが欲しい、
大抵の人間は、可愛いと思う生き物…でしょうか
(いくつくらいだっただろうか。1人きりになって、やっとの思いで食べ物を手に入れたかと思えば野良犬に盗られてしまったのだ。そこからだった、犬が苦手なのは。「わかります?」ふん、と当てられないだろうと高を括ったように鼻で笑い、)
可愛い生き物……、……犬?
(可愛いと思う生物と聞いて、真っ先に思い付いたのはペットの類い。これが間違っていれば猫と言ってみるつもりで、完全な当てずっぽうでそう言って)
魔法でも使いました?
(完全に当てられた。犬なんて屋敷の中ではいないし街中にいたとしても飼い主が付いてリードを付けているような犬ばかり、さりげなくそれでもその近くは避けて歩いていたのだが、今まで顔には出していなかったはずだ。大真面目な顔で彼を真っ直ぐ見つめ))
、正解か?!
(まさか合っているとは思わなかった。やった!とガッツポーズしては、勘で当てたことを誤魔化すように「御褒美ってなんだ?」と瞳をキラキラ輝かせ)
明日の書き取りは免除です、
(まさか当てられてしまうなんて思っていなかった。いつも彼には少し多めの課題をやらせているし、明日1日くらいは免除してやろう、と)
やった……!
(書き取り。魔法の実技演習の何倍も面倒で、自分の一番嫌いな課題だったりする。それが免除だなんて、こんなに嬉しいことはない。見事当てたことに対する自信も含んで、ふふんと笑顔を見せて)
いいですか、私とお坊ちゃんの秘密ですからね
(今日ここでアイスクリームを食べた事も、自分は犬と火が怖いということも。全て彼だから打ち明けたのだ。自信ありげな彼に釘を刺すように、若干機嫌悪そうに視線を逸らした子供のような表情を見せ、)
分かってる
(二人だけの秘密、なんだか照れくさいような良い響きではないか。他の人には絶対に言わない、大きくコクリと頷く。誓いは何か形として表した方が特別感があっていいと思い。不機嫌そうな彼と指切りしようと彼の方へ小指を立てて)
…指切りだなんて、いつぶりでしょうか
(小指を立ててきた彼の意図を汲み、こちらもすっと小指を出して。小指と小指を絡ませ、何度か指を振ったあとその指を離せば残り少なくなったアイスクリームを食べ終えたあとで小指を撫で、)
…僕も久し振りにやった、
(指切り後、残り数口分のアイスを食べて器を綺麗に空にして。少し汚れた口を紙のナプキンで拭きながら、彼の呟きにそう返答する。改めて思い返してみれば、この歳になって指切りだなんて恥ずかしい気もするが。恥ずかしさと同時に妙な安心感もあり)
_お坊ちゃんはまだおこちゃま、ということで良いですか?
(彼から、どことなく安心感が漂うのを感じ取り。それが指切りをしたからだとしたら、なにかしらの約束に形が欲しい彼はまだまだおこちゃま。くす、と小馬鹿にしたように笑えば彼をからかって、)
─?!な、僕はお子ちゃまじゃない!
(たった一度の指切りから、何故そこに辿り着いたのかが全く分からない。いつもの彼のからかいに、むっと眉間に皺を寄せて反論し)
形なんて、なんとでもなるんですよ
(くすくすと笑いながら彼にそう伝える。形なんてものは無くても、たとえそれが口約束だろうと彼との約束を忘れる訳がない、)
……でも……
(わざわざ指切りを選んだ明確な理由はないのだが、なんとなく落ち着くような気がして。笑われたことにぷくりと頬を膨らませればそっぽを向いて)
どうやら、拗ねてしまったようですねぇ、
(自分は決して悪くない、思ったことを言ったまでだとあくまで彼が勝手に拗ねてしまったというニュアンスでそう呟けば、やれやれと大袈裟に肩を竦め、)
(その彼の態度で更に拗ねてしまい、ぷいと視線を横に向けたままで。少しでも言い返したくて、小声でこう呟いて)
……父さんに頼んで犬を飼う
犬ッコロめが……!!
(犬。きっと彼がその気で頼んだらあの両親は買ってしまうだろう。そうしたら世話をするのは当然使用人の仕事。もふもふきゃんきゃん吠えるだけの犬に上を越された気分になり、テーブルを軽く叩いて、)
っ?!ヴィラ、落ち着け!嘘!嘘だから!
(いつも冷静な彼がここまで取り乱すとは。流石の自分にだって、この一般の客がいる状況で本気で怒られてはマズい。彼を冷静にさせなくてはと必死に弁明を始め)
……猫にしなさい、
(黙って座っていれば犬だって可愛いと思うのに、何故あいつらは吠えるんだ。彼の必死の弁明のおかげで何とか落ち着いたものの、口から出た言葉はそれであり、)
猫?!
(何かペットを飼うのも冗談のつもりだったが、まさかそこを本気に捉えられたか…?!え、とぽかんと口を開けるが、実際猫を飼うのはいいかもしれない。分かった、と頷いては)
父さんに頼んでみる、
…仕事が増えそうです、
(どんな猫がくるだろうか。ふわふわした、可愛い子だといいけれど。まだ見ぬ新しい家族の世話をする自分と彼の姿を思い描いては、嫌味とは裏腹に柔らかな表情を浮かべていて)
黒猫…白猫…三毛猫…
(いざ飼うとなると、自然と気分も高まっていく。まだ飼えると決まったわけではないけれど、彼の横で、上機嫌で次々に猫の種類を呟いて)
手がかかるのが増えそうですね、お坊ちゃん
(まだ決まった訳じゃないのに、つらつらと猫の種類を連ねる彼が可愛くて。ぽすん、と彼の肩に手を置き、わざとらしく顔を見ながらそんなことを呟き、)
、まるで僕が手がかかるみたいに言うな!
(何か裏がありそうな彼の態度、自分が手のかかる者扱いされているといっても過言ではない。引っ掛かるその言葉に律儀に反論し)
では毎朝きちんと時間通りに起きられると?
(一日や2日はきちんと起きられたとして、大体は自分が時間より少し早めに出向いて起こしているのだ。にこにこした笑顔を浮かべたまま首を傾げて、)
……それは、その……それは関係ないだろ!
(自分が一人で起きられないのが事実なだけに、彼の笑顔が胸に突き刺さる。もう正論では反論出来なくなってしまい、苦し紛れに言い返し)
手をかけないとはそういうことですよ、
(肩に当てていた手を頭に当て、ぽすりとまるで可愛がるかのようにして撫でれば、「今はまだ、手をかけさせてください」なんて目を細めて呟いた後、空になったカップを2つ持ち、)
……ぅ、
(また綺麗に言いくるめられてしまった。しかし──まだ、このままでもいいのかもしれない。もう少し彼に甘えていたい、そんな風に考えている自分も確かにいて。小さく頷くと、彼が店を出る準備をしているのを察して立ち上がり)
街の視察をしていたことにしましょう
(カップを捨てた後、懐中時計を開いて、予定より時間が遅かったことにふう、と息を吐く。街の店に寄るのも立派な視察だ。彼とそう口裏を合わせれば店を後にして帰路につき、)
うん、
(帰り道を歩く途中、彼の考えたその口実を聞いて、了解したと意思表示をし。美味しかった、とつい先程食べていたサンデーの味を思い返しているうちに、いつの間にか自宅へ到着しており)
先にお戻りください、
(彼の身なりを軽く整え、家の中に入る一歩手前でまるでいたずらをした子供が口止めするかのように彼の唇に人差し指を当て。自分は書類を提出しに行かねばならないし、そこまで彼を付き合わせる訳には行かないと、)
(彼と別れて向かうのは自分の部屋……ではなく、父親がいるであろう部屋。勿論、猫を飼うことに関して直談判をするためである。大きな扉の前へ立つと一つ深呼吸を済ませ、ノックをして中へと入っていき)
──父さん、
_もうすぐか、
(書類の提出を終え、彼がいるであろう旦那様がいる部屋へと足を運ぶ。きっと彼は直談判しにいったのだろう。自分で行ってしまうなんて、手がかからなくなるのももうすぐだろうか。少しだけ寂しそうに呟き、)
…!やった!
(父親との交渉成立、速ければ明日にでも仔猫を手配してくれるそうだ。一つの命を大切にすることも勉強になる、という父親の考えから、アッサリ許可が降りた。子供のようにはしゃいで喜ぶと、早速彼に報告しようと)
その様子……
(ちょうど彼が出てきたところに出くわした。やはり旦那様のことが、あっさり許可を出したのだろう、彼の様子から容易に想像できた。「猫の種類は何にしました?」と彼に問いかけながら、柄にもなく楽しみにしている自分がいて)
明日のお楽しみだって言ってた…!
(彼の瞳をわくわくした瞳で見つめ。猫の種類に関してはよく分かっていないため、父親に任せてしまった。明日が楽しみだというように胸を踊らせて)
では明日に備えて、今日は早めに寝ましょうか
(自分が犬が平気だったら、彼は犬を頼んでいたのだろうか。苦手意識を無くしたい思いはあるものの、多分どう頑張っても無理だろう。嬉しそうな彼の肩をぽんぽん叩きながら、体力の回復の為にも早めに寝かせようとして)
うん、ヴィラも早く寝る準備を済ませておけよ
(彼の言葉に反論はない。コクリと頷くと、勿論今日も一緒に寝るつもりでそう伝え。いつもは出来るだけ起きていたかったりするのだが、今日は早く寝たいという思いが強い。明日が本当に待ち遠しく、意識していなくても表情が緩んでいて)
_はいはい、
(彼の緩みまくった表情から、よほど楽しみなのだろうとこちらまで顔が緩んでしまう。彼の部屋のドアを開け、杖を一振り。水を張った洗面器と彼のパジャマを同時に用意してやり、)
──よし
(いつもはグダグダと着替えるのにもかなり時間が掛かるのだが、今夜は明日が楽しみ、という理由だけで手際よく着替えを済ませる。顔も洗い終え、もう寝る準備は万端の状態で)
さて、寝ますか
(さらに杖を一振りしてはカーテンを閉め、ピローミストを枕にひと吹き。洗面器を片付け終えれば上着を脱き、自分も寝る準備ができたようで、ぽんぽんとベッドを叩いて彼を寝るよう促し、)
……ふあ、
(モゾモゾとベッドの中へ潜り込み、そのまま横になる。一度横になってしまうと、地道に蓄積されていた疲れがドッと出てきて直ぐに睡魔がやって来て、大きな欠伸をひとつ溢し)
おやすみ、
(彼の隣に潜り込み、寄り添うようにして体を横に、彼の方に向け、彼の背を一定のリズムでさすってやる。今日は疲れただろうに、自分を守るためにあんな大掛かりな魔法を使ったのだから)
…おやす、み……
(背中を擦られる心地よいリズムが自分を夢の世界へと誘う。余程疲れていたらしくあっという間にこてんと眠ってしまい、数分後には規則正しい寝息が聞こえてきて)
黙っていれば可愛いのに、
(面白いほどこてりとすぐに寝てしまった彼に、思わず苦笑いが漏れ。背中をさすっていた手をそっと離し、彼の髪をさらさらと手櫛で梳かしてやり。いつも生意気ばかりを零す口を指で撫で、「おやすみ」と小さく呟けば自分も眠り、)
(朝、いつもよりも早く目が覚めてしまった。ベッドから起き上がって、カーテンの隙間から微かに漏れる陽の光を浴びて大きく伸びをすれば、いそいそと毛布から出て)
_おはようございます、
(彼より一足先に目を覚ましており、これから来るであろう子猫のためにもふもふの小さめ猫用ベッドを用意していて。旦那様から既に子猫は手配済みだと連絡は受けていて、)
おはよう、
(ご機嫌で彼に挨拶を返す。彼の準備している猫のベッドを見つけると、なんだかんだ自分と同じくらい彼も楽しみなんじゃないか、とくすりと笑い)
ほら、早く着替えてください
(お楽しみはもう来ていますから、と付け足しながら杖を一振。ミントを浮かべた洗面器に水を張り、と同時にタンスから彼の今日の服を取り出して。猫のベッドとトイレと、餌と水は彼に出させよう、そこまで算段付ければ彼が着替えるのを待ち、)
(たった一つ楽しみがあるだけで、いつもとは別人のような速さで着替え終え。顔を洗うのも済ませると、準備万端で彼の方へ向かい)
よし、ヴィラ!できた!
おはようございます、旦那様
(彼を連れ、旦那様の部屋のドアを軽くノックして。失礼します、そう言い終わった後にドアを開け。部屋の中に子猫は見当たらないが、旦那様が持っているのだろうか、)
おはよう父さん、
(彼の後に続いて部屋に入り、待ちきれない、と何か言いたげな瞳で父親を見つめる。父親はそれを察したらしく、側にあった蓋付きバスケットを手渡され。ずっしりとした重みに、仄かな温かさを感じ、緊張からかドキドキと自身の心臓も鳴っており)
……小さい、
(恐る恐る、バスケットの蓋を開ける。そこには柔らかなそうなタオルケットの上に小さな子猫が座っていて。こんなに小さいだなんて思っていなかった、思わず素直な感想が漏れ出し)
……かわ、いい…
(バスケットの中から顔を覗かせる子猫の顔に、瞬時に言葉が出てこず。きゅんと心を掴まれ、初めての小さな命に少し戸惑いながらもじっと見つめており)
じっとしている場合じゃないですよ、
(しばらく彼と同じようにじっと子猫を見つめていたが、ぱっと彼の肩を叩いた。「その子の親はお坊ちゃんですから」早く部屋に戻って、この子を温めた方がいいと彼に一言、)
…そうだ、
(この猫のお世話をするのは自分なのだ。彼からの言葉にハッとするとバスケットを両手で抱えて立ち上がり、父親にお礼を言った後自分の部屋へと足を進め)
失礼します、
(旦那様の手前、挨拶を雑に済ますことはできない。深く頭を下げては彼を追うように部屋を後にして。彼の隣を歩きながらバスケットを見つめ、「名前は決めました?」と弾んだ声色で問いかけ、)
まだ、
(彼の問いかけに首を横に振る。昨日あれだけ猫のことを考えていたのに、名前に関しては「実際に見てから決める」と後回しにしていた。実際バスケットを開けて目に入ってきたのは黒色の艶のある毛並みのある子。可愛さに目を奪われ、まだ名前を決める余裕もなく)
とても可愛らしいですね、
(彼の部屋のドアを開け、中に入るよう促す。艶々の黒い毛並みと、くりくりしたまんまるの瞳。可愛くて手のかかる子が、また増えてしまった。…しかし、こんな小さな命を守るのは魔法ではなく彼の手がいいだろうと、1冊の冊子を取りだして)
?ヴィラ?
(猫の入ったバスケットをそっと床に置いて。さて、これから何をするべきなのか。脳内に疑問符を浮かべていたところ、彼が本を取り出したのを見て、何をするつもりなのか尋ね)
まとめました、
(子猫なんて育てたことが無かった。さまざまな本で集めた情報を頼りに彼がわかりやすいように、子猫の育て方をまとめた冊子だと説明して。これも勉強だと、極力世話は彼にやらせるつもりらしい、)
じゃあ次は……
(流石執事、そんな事前準備をしてくれていたとは知らなかった。有難い、と感謝の気持ちを抱くのと同時に、次は何をすべきなのかを知りたいらしく彼の手元を覗き込んで)
…ご飯、が妥当でしょうね
(ぺらりと1枚めくり、手書きでまとめた項目のひとつを指でなぞる。子猫の餌はどうするべきか、彼がわかりやすいように簡潔に、しかし丁寧に纏めたひと項目を彼に指さし、)
分かった、ご飯だな
(そう聞くと一目散に部屋を出て厨房へと走る。数分後、事前に誰かが買っておいてくれたであろうキャットフードの袋と容器を両手に抱えて戻ってきて。どんっと音を立ててそれを床に置くと、「これをあげればいいんだよな?」と彼の方に視線を向け)
…よく見ていてください、
(彼が持ってきたキャットフードの表記を見、乾燥している固形のものだとわかれば杖を振り、あたたかいお湯を入ったコップを出す。器に先ず固形のフードを出せば、お湯をたらしてふやかしていき、)
覚えました? _この子の親はお坊ちゃんですから
試しにやってみる──……っづ!
(今回の食事は彼が準備してくれたが、試しにお湯を出すことくらいなら出来る筈。杖を振ってコップを出すところまでは上手くいった。あとはそこに丁度良い温度のお湯を張るだけ─。もう一度杖を振ると、ゴポゴポとまだ沸騰しているような熱湯が出てきて、あまりの熱さにコップを持っていた手を引っ込め)
ッ、随分お熱いのが好みのようで、
(彼が思わず手を離してしまったその時、反射的に杖を振り、中の熱湯を人肌程度までの温度に下げ。手袋をしていてよかったなんて思いながら、コップは片手でしっかり掴んでおり)
危なかった……、有難うヴィラ、
(危機一髪、熱湯を床に溢して大惨事というのは逃れた。流石執事、彼の反応速度には頭が上がらない。やはりこの間のようには魔法が上手くいかないか…、少し落ち込んだらしくしゅんと眉を下げ)
…ほら、この子にご飯をあげてください
(不思議そうな顔をして餌が盛られた器に顔を近づかせている子猫。それが餌だと微妙にわかっていないのか、ふんふん鼻を鳴らすばかりで食べようとはせず。落ち込んだ様子の彼の気を他のことに向けようと試みて)
…、そうだ
(こんなところで落ち込んでいる場合では無いのだ、今はこの子猫にご飯をあげなくては。しゃがんで出来るだけ子猫と目線の高さを近付けると、そっと背中を撫でながら餌の入った器を子猫の真ん前に移動させ)
ほら、ご飯だぞ…
食べてますね、
(少しの間を置いてから、みい、と小さく鳴いた様はまるで"食べるよ!"とでも言っているようだった。真ん前にきた器に顔を突っ込み、はぐはぐと食べ進めていく勢いの良さに思わず目を丸くして)
、……うん……!
(餌を夢中になって食べているその子猫の可愛さたるや、瞬時に言語化出来ないほどで、思わずふにゃりと此方の表情も緩む。本当にずっと眺めていても飽きないな、身体を屈めたまま見守るような視線でその様子を眺めており)
_おや、
(お腹が空いていたのか、もう全て食べ終えた子猫が顔を上げた。まだ少し頼りない足取りで歩き出したかと思えば彼のほうに寄っていき。どうやら、早速彼に懐いた様だ、そろそろ"この子"なんて呼ぶのは気が引けてきた、)
そろそろ、名前を決めたらどうです?
そう…だな、
(近付いてきた黒猫の頭を一撫で。さて、この子になんて名付けよう、悩みながら棚の宝石の本を手に取る。適当にページを開くと、そこには黒い宝石の写真と「ブラックスピネル」の文字があり。それを見た途端、脳内になにかピンとくるものがあったのか)
……スピネ、とか
素敵な名前です、
(スピネ、とは彼も洒落た名前をつけたものだ。スピ坊、と自分の中であだ名をつければ、おもむろにスピネの背中をとんとんと撫でで。彼にとってはこの子が宝石なのだろう、いい名前だ。子猫特有の柔らかさを感じながら撫でつづけ、)
な、……ヴィラばっかりズルいぞ!
(先程、この子の親は自分だと彼が言っていた。のにもまるでスピネを独占するかのように見えた彼の仕草にぷくりと頬を膨らませ。自分も触りたい、とそっとスピネに手を伸ばし、ふさふさな毛並みを撫でて)
嫉妬ですか?
(犬が苦手な訳であって、動物そのものは苦手ではない。スピネは素直に可愛いと思うのだから。少し自分が彼より多く触っただけなのに、ずるいなんて言われてしまえば思わず苦笑いを浮かべて、)
し、嫉妬じゃない!……羨ましかっただけだから…
(自分は嫉妬じゃないと思っているためそう否定するが、その動機は嫉妬そのもので。単純に、自分もスピネを触りたいというのと、彼が猫ばかり触って自分を構ってくれなくなるのでは…という不安もあるらしく、小さな声でそう呟いて)
…お坊ちゃま、寂しくなってしまいました?
(今まで、彼を第一に接してきた。自分の仕事だからそれが当然なのだが、子猫という存在が増えたことによりもしや彼は自分に構われなくなってしまうのではないかと懸念しているのではないかと考えては、わざとらしくはっとした顔を浮かべて)
…………うん、
(彼のわざとらしさに気付いておらず、見事に言い当てられたことに驚きながらも此処は素直に小さく頷いて。その後、自分は何を言ってるんだ、とハッとして「…、別に」ともう遅い言い訳を呟くと、彼からふいと視線を背け)
いつからそんな甘えたになられたんです、
(まさかそんな素直に頷かれるなんて、拍子抜けしたような気の抜けた顔を彼に向けたのも一瞬のこと。もう遅いであろう言い訳を発した彼の頭を撫でながら、からかうように「よしよし」と繰り返し)
……むぅ、
(からかいに何か言い返したそうに彼を見つめるが、撫でるのは止めて欲しくないため、俯いて小さく声を洩らすだけで。もう19だというのに未だに撫でられることが嬉しいなんて自分でも子供じみているとは思うが、好きなものは好きだから仕方ない、と治す気もないらしく)
子猫とそう大差ないですね、
(ずっと彼の隣にいたのだ、撫でられるのが好きだなんてもうお見通しである。それでも彼にそれを直接言わないのは、まだ彼をからかっ底からで。口から出た嫌味とは裏腹に彼を見つめる顔は優しく、)
僕は猫じゃない……
(撫でられながらもそう反論し、猫扱いされ多少不満そうに彼を見つめ返し。自分が撫でられてばかりで何か寂しいものがあったのか、今度はスピネを撫で始め)
スピネも、もうお坊ちゃんに慣れたようですよ?
(彼が反論してくればそれを素直に受け入れ、ぱ、と手を離し。自分が撫でたときよりもスピネが心無しか嬉しそうに見え、)
そうだな、
(自分が触っても逃げたり噛んだりしないこの猫、もしかしたら元々人懐っこい性格なのかもしれないが、こうして懐いてくれるのは嬉しいもので。両手でスピネを抱き上げると幸せそうに頭や背中を撫でて)
…兄弟のようだ、
(彼がスピネを大切にしているのは、もうスピネに伝わっているようで。動物はそういうことに敏感だというし、彼も嬉しそうだ。仲のいい兄弟のようだとぽそりと零し)
兄弟…、僕がお兄ちゃん……
(一人息子のため、兄や弟の存在なんて自分には無縁だと思っていた。種族は違えど初めてのそんな存在に、自分が手本にならなければ、という責任感も自然と湧いてくる。噛み締めるようにそう呟いては嬉しそうに口角を上げ)
聞こえていましたか、
(彼には聞こえないように呟いたつもりだったが、どうやら聞こえていたらしい。きゅ、と口を結んで嬉しそうな彼を見ては顎に手を添え思わず自分も笑いかけた…のは数秒で、「さて、今日の勉強です」どさりと机に本を置き、)
げ……、…でも……!
(誕生日の時もそうだった。どんなイベントがあろうと課題の量は変わらず、毎度の如く自分を苦しめる大量のそれは、猫が来ようが何をしようが関係ないらしい。…しかし、確か昨日、彼が嫌いなものを当てたことで「書き取りは免除」になった筈…!それを思い出しては、スピネを撫でながら彼の方に顔を向けその旨を訴えて)
_確かに今日、書き取りはありません…免除、とは言いましたが…量が減るとは言ってないはずですよ?
(確かに今日の課題の中に、書き取りは一切無い。魔法を展開するための一連の流れが記された教科書や計算問題などばかりだ。その中には子猫の育て方の本も混ざっており、)
……ヴィラの意地悪
(確かに、そう言われてしまえば反論出来ず、口をへの字に曲げ。嘘はつかれていないものの、やはり腑に落ちない。ぶすっと不細工に頬を膨らませれば、スピネを抱いたまま部屋の隅へ、彼に背を向けて体育座りをするといじいじふて腐れており)
_へぇなるほど、子猫用にご飯が手作りかぁ!
(嘘はついていない、ちゃんと書き取りも除外した。おまけに今日は子猫の勉強もしてもらおうと取り入れてみたのだが、あの彼の様子では今日勉強させるのも難しそうだ。彼の興味を引く為、ひとつ参考書を開いては大袈裟に呟き、)
手作り……
(その単語に反応して、ふて腐れながらも彼の方を向き。勉強は嫌だけれどスピネの為のご飯は作ってあげたいという思いもあり、一人で眉間に皺を寄せつつ葛藤しているようで)
なるほど、ケーキも作れる時代と…
(もう一押し。本のひとつを広げてはおもむろに紙に何やら書き出して。…どうやら、勉強しているらしい。魔法の事はわかっても、子猫用のケーキなんて初耳で自分も勉強しなければいけないのだ、しかし1人ではつまらない、なんとか彼に勉強をさせなければと)
1人ではつまらないなぁ、
……
(変に意地をはって、絶対に反応するものか、とそっぽを向いていたが、うずうずと心が動く。もう我慢の限界が近づいてきたようだ。本に視線、意識が向けられている彼にバレないようゆっくりと立ち上がると、その背後からそっと本を覗き込んで)
…勉強する気になりましたか、
(彼が背後に来たことを感じ取り、わざと楽しそうなページを開いていて。このままこちらに座らせてしまえと、席を立てばわざとらしく両手を合わせ、「弟に格好がつかないですよ、先程はまるで赤子のようでしたので」と彼を煽り、)
っ!…………僕はお兄ちゃんなんだぞ!勉強くらい…
(自分では煽られたことでムキになって、もともと彼が座っていた席に座っては本に視線を落とし。その途中、「自分だってやれば出来るんだ、」と見せつけるようにチラチラ彼を見て)
ほら、弟と私も見てますから
(本当に彼があの大掛かりな魔法を成功させたというのか、にわかに信じ難い。こんな安い挑発にさらりと乗られると、思わず彼の将来を心配してしまう。スピネを抱きかかえ、彼にそれを見せて)
……、出来た!
(彼とスピネ、一人と一匹の視線を感じながら、せかせかと一問解き終え。合ってるか間違っているかは別として、答えを書いた紙を彼に見せ。一問解き終えただけで満足したらしく、「これでいいだろ」と言いたげな視線を向けて)
"それだけ?"……と、
(このままでは、本当に彼は終わらせてしまう。ゆっくり腰の杖を抜き、軽く振ればスピネの顔を見てふんふんと頷き。動物の心がわかる魔法なんてそこまで便利なものありはしないが、あたかもそれを使ったかのように見せ)
?!……な、な訳無いだろ!僕はお兄ちゃんだからな!
(スピネの心が読める魔法があるなんて聞いていない。明らかに動揺しつつ、そんな魔法が使えたのか……と驚きながらもそう反論し。綺麗に騙されて、必死に誤魔化すようにもう一度机に体を向けるとペンを片手に問題を解き始め)
"お兄ちゃん凄いね、!"…だそうです
(まんまと罠にかかった彼に思わず吹き出しかける。それを抑えて、ふたたびスピネの顔を見てふんふん頷けばまたそんなことを言って彼をおちょくり、)
……まぁな!お兄ちゃんだからな!
(スピネから誉められたことに、へへへと照れ笑いを溢すと自身たっぷりに胸を張り。相当嬉しかったのか彼のからかいだとは微塵も気付いておらず)
…3時にまた来ますので、
(ぐ、と思わず口を噤んだ。彼があまりに素直に受け取るものだから、笑いそうになるのを堪えているのだ。抱えていたスピネを彼の近くの床におろし、今日の仕事を終わらせに行こうと部屋を後にして、)
(/背後失礼します、!
過ぎてしまいましたが、よければクリスマスネタをやりたいなと考えています…、どうでしょうか、?)
分かった、……スピネ、お兄ちゃん頑張るからな
(彼の手から離れたスピネを抱き抱えると、自分の目線まで持っていき。小さな声でそう話し掛けるとにこにこ笑顔を見せ)
(/背後としてはお久しぶりです!
クリスマス良いですね……、賛成です、!始めるとするとやはりイヴからでしょうか?)
失礼します、
(約束通り、3時に再び彼の部屋を訪れ。今日のおやつであるラズベリーのムースと桃のフレーバーティーをワゴンに載せ、こんこん、とノックして)
(/ありがとうございます、!
そうですね…、イヴ~クリスマスの流れでいきたいです!)
いいかスピネ、この問題はな……、っ!
(スピネを机の上に座らせ、問題集を一人と一匹で覗き込んでおり。自分が先生気分で夢中になって問題解説をしているところに彼の声が聞こえ、慌てて誤魔化すようにスピネを膝の上に抱え)
(/了解しました、!先レスはどちらから致しましょう?)
お邪魔でしたか、小さな先生
(部屋に入ると、聞こえてきたのは彼の解説。スピネにしても分からない…と思ったのだが、その内容を聞いていればそれは彼が前に躓いていた問題であり。解説ができるまでに理解が深まったのだと嬉しく思ったのは顔に出さず、ふんふんと自分も解説を聞くフリして彼をからかい、)
(/区切りが着いたらこちらから回します、!)
ち、ちがっ、……何の話だヴィラっ
(もしかして聞かれていたのか……、恥ずかしいところを見つかってしまった、とみるみる顔が赤くなっていき。もう遅いであろうが、からかわれに対する抵抗として、そうとぼけて誤魔化し)
(/分かりました、ありがとうございます、!)
はて、なんの話でしょうか?
(しっかり、ばっちりとこの目と耳で見て聞いた。明らかに彼は先生気分だったはずだ。どうやら恥ずかしかったようで、「私はムースを届けに来たのですが…」なんてすっとぼけ、)
(/では背後はこれで失礼します、!)
っ?!、な……何でもない
(彼の様子を見るに、まさか勘違いだったのか……?との考えが脳裏に浮かび上がる。正直予想外の彼の反応に明らかに戸惑いつつもそう否定して)
(/了解です!また何かあれば遠慮なくお呼びください……!)
出来るようになったのですね、
(なんでもない、と否定した彼にぽそりと一言。嫌々ながらやっている毎日の勉強は、割と彼の力になっているようで。かちゃかちゃと心地好い音をさせながら紅茶の準備をし、)
…………、
(彼の口から溢れた自信に対する誉め言葉に、声には出さないものの、明らかに嬉しそうに口角を上げ。彼がおやつの準備を始めたのを見ると、机上に広げられていた問題集を片付け始め)
今日はラズベリーのムースです、どうぞ
(明らかに嬉しそうな彼の表情には、あえて触れずに、淡々と今日のお菓子の説明を初め。あえて酸っぱいラズベリーを選び、ムースとして仕上げることで優しい甘さがふわりと広がるようにしてみた。ムースをテーブルに置き、彼のために椅子を引いて、)
頂きます、
(引かれた椅子に座り、フォークを手に取るとムースを一口分切り取って口に運び。口の中一杯に広がる酸味に始めは驚いたものの、それから直ぐにやってくる柔らかい甘味。勉強の疲れが吹き飛ぶほど美味しいそれに心を奪われ、意識しなくともいつの間にか二口目にフォークが伸びていて)
紅茶もどうぞ、桃のフレーバーティーです
(無意識のうちに二口目に手が伸びていく彼。余程美味しかったのだろう、その彼の嬉しそうな姿を見るのが嬉しくて。ムースが半分ほどになったところで熱過ぎずぬる過ぎない程度の温度のフレーバーティーを彼に差し出し)
……んっ、
(もぐもぐとムースを頬張っていたところ、焦って食べたのかむぐ、と喉に詰まらせてしまい。差し出された紅茶の入ったカップを両手で手に取れば、ごくごくと喉に流し込んで)
お坊ちゃまの目にはムースに足が生えているように見えるのですか?
(要するにもっと落ち着いて食べろ、ということだ。こんなに焦る様な食べ方では、クリスマスのケーキは喉に詰まらせるかもしれない。やれやれ、とわざとらしく肩を竦め、)
……、
(危うくむせる所だった、ギリギリそれを免れては数回深呼吸をして息を整えて。彼の言葉に反論したいも、もっとも過ぎて返す言葉もなく。一人口を尖らせては、またムースを口に入れ)
…スピネも、どうぞ
(伝わるのだろうか、兄が1人でおやつを食べているのが。たしたし、自分の足を柔らかいなにかにつつかれていると気づけば足元を見下ろし。そこにはスピネが機嫌悪そうにしており、ポケットから個包装のおやつを取り出してはスピネに与え)
……な、
(残りのムースもぺろりと平らげてしまった。満足そうに息を吐いてふと彼に視線を向けると、スピネにおやつをあげているではないか。見たい見たい、と椅子から立ち上がって急いで彼の方へ歩き、おやつを食べるスピネを眺め)
お坊ちゃん、スピネの教育もお忘れなく
(はぐはぐと小さなからだで満足気にお菓子を食べるスピネが愛らしくて。彼が食べ終わったのなら皿を下げなければ、とスピネから目を離しては皿をワゴンに載せながら一言、)
分かってる
(口でそう答えていても、視線や意識はスピネの方へ一直線。可愛い可愛い、と夢中になっておやつを食べる様子を眺めた後、スピネを抱き抱えてはその頭を撫でて)
…また夜、伺いますからね?
(彼のスピネに対する態度はわからなくもないが、この家に来たのだからしっかり躾て貰わなければならない。とはいえ、きっとスピネは頭のいい子だから大丈夫だろう。ワゴンを片手に部屋を後にして、)
(彼が去っていった後、この部屋にはスピネと自分だけ。抱いていたのを下ろしてやり、部屋の中を興味津々に歩き回るスピネには胸がときめくばかり。こうも眺めていると、次第に自分がスピネと遊んでやりたいという気持ちも芽生えてきて。勿論、猫じゃらしなんてものは貰っていない。それなら……と徐に自分の杖を取り出すと、そのままリズム良く一振り。猫じゃらしでもなんでも、スピネと一緒に遊べるものがいいなぁ、なんて思っていたが、ガシャンと音を立てて現れたのは……大量の釣竿。その数、ざっと数えても30は超えているだろう。猫じゃらしと系統は似ているものの、釣竿は釣竿でしかなく。やってしまった……と苦虫を噛み潰したような表情になり)
__漁師になるおつもりですか、
(午前の仕事や雑務などに追われていれば、彼が寝る時間くらい直ぐにくる。また夜に、と彼に伝えた通り再び彼の部屋の前まで来ていたのだが、部屋からガシャン、と音がして。何か物でも倒したのだろうか、とすぐさま扉を開ければ目の前に飛び込んで来たのは大量の釣竿で、思わず目を丸くして)
これは…………その……っ
(隠れて魔法を使って失敗したこと。自分にとって失敗だとは認めたくないが、猫じゃらしを出そうとして釣竿なんて失敗でしかない。それを口にしてしまえばそれを認めることに変わりはなく、声にするのを憚られてしまう。ばつが悪そうに俯いては必死に言い訳を探し)
何度も試す事、それも勉強です
(なぜ彼は釣竿を出したのか。彼の様子から出したかったものは釣竿ではなく、別の何かなんだろうと察する。ちょいちょい、と足で釣竿を触るスピネを見て何か気づいたようで、彼を責めることも、問い詰めることも無く釣竿を避けつつ部屋に入り、スピネを抱いては彼の元に退かせ。ゆっくり杖を振り、出された釣竿を片付ければ広くなった床を見つめつつ、優しい声色で、)
_はい、私はなんにも見ておりません
…………ヴィラぁ……っ
(てっきり、いつものようにを揶揄されるものだと思っていたのだが、彼の反応は真逆。単純に驚いて瞬時に言葉が出てこない。まさしく神対応と言える彼の言動に言語化できない感情を覚え、じわりと目の端に涙が浮かび。弱々しく名を呼んでは彼の元へ)
おやおや、困ったお兄さんですね、
(余程不安だったのか、たちまち瞳を潤ませて弱々しく自分の名前を呼びながらこちらに来る彼の頭を撫でつつ、やれやれ、と息を吐き。釣竿は自分が綺麗さっぱり片付けた。もう一度頑張りなさい、との意味を込めて彼の背を叩き、)
……うん
(ぐすん、と鼻を啜ると、まだ潤んだ瞳のまま彼の方を見上げてこくりと頷き。気持ちを改め、ぎゅっと杖を握り直すともう一度杖を振る。暫く間が空いた後、その場にぼんっと現れたのは猫じゃらし数十本。相変わらず数はあれだが、お目当てのものは出せたようで)
………まあ、気持ちが強い、ということにしましょう
(一か十なのか、…と、頭を抱えてからかいたくなるのを堪えて。彼は彼なりに頑張ったのだ、十数本の猫じゃらしはそれ程彼のスピネに対する気持ちが強かった、そうフォローしておいた。杖を振り、猫じゃらしを2本残せば残りは別のおもちゃに変えてやり、)
……!
(瞬く間に別のおもちゃへと変わった猫じゃらし達。その業に尊敬の視線を彼に向け、まずは早速一本猫じゃらしを手に取ってスピネの元へ。目の前でゆらゆらと揺らしてやると、見事な食い付きを見せて)
…似てしまったのでしょうか?
(猫じゃらし1本にまんまと引っかかって楽しげに遊ぶスピネ。猫じゃらしには反応しない猫もいるし、楽しげなのを見ていればこちらも嬉しい。しかし、主人であるノエルに似てこの子も単純なのかとわざとらしいとぼけた顔をしながら首傾げ)
スピネも頭がいいってことか?
(何処が似ているんだろう……と少し考えてみる。彼の本来の言葉の意図には気付いていないようで。スピネをじゃらしながらきょとんとした瞳で彼を見ては首を傾げ)
スピネの方”が”、の間違いです?
(どうやら本来の意味は伝わらなかったようだ。やれやれとため息を着けばもう一度、彼が理解出来るように噛み砕いては嫌味ったらしく説明してやり。)
僕はそこまで頭が悪くない!
(たとえ対象がスピネでも、猫と比べられて自分の方が劣っているなんて言われれば納得いく訳ない。彼のからかいはやはりいつも通りであり、腑に落ちない表情で反論し)
それはそれは、大変失礼致しました
(クスリ、顎に手を当て笑みを零せば、おもむろに杖を振り。綺麗に直されていくベッド、そのすぐ下に置かれたのはふわふわふかふかのスピネ専用のベッドで。使うかは分からないが、用意だけはしておいた。「ほら、寝る時間ですよ」ぱん、と手を叩き、)
ほらスピネ、ベッドだぞ
(彼が出したものに関心しつつ、猫じゃらしに意識が向いているスピネをベッドの方へ連れていき。そのまま抱き上げてふかふかの上に乗せると、くるりと丸まって瞳を閉じて。その様子を可愛い可愛いと眺めながら笑みをこぼし)
さ、お坊ちゃんもどうぞ
(どうやら気に入ってくれたようで安心した。丸まって目を閉じたスピネのお腹あたりがゆっくり上下に動いているところを見ると、もう寝てしまったのだろう。スピネを眺めている彼の横で枕にバニラの香りがするピローミストを吹き掛け、準備が整った所でベッドをぽすん、と軽く叩き)
、もう寝る時間なのか?
(まだ目が冴えており、まだ寝るには少し不満げで。これ以上起きていると次の日は寝坊確定といっても過言ではないのにも関わらず、もう少し起きていたいらしく。むすっと彼の方を向き視線で訴えかけて)
ご自分で起きれるのなら、いいのですよ?
(まだ目が冴えているのか、これはどう言いくるめても寝ないな、と彼の態度を見てはわざとらしく肩を竦めて首傾げ。明日は起こさないですよ、と言いたげに既に日付を超えた時計を指さしながら)
子守唄でもご所望ですかね、
子守唄……?
(自分で起きられるのかと問われれば、答えはNO。ぎくりと視線を逸らしていると、彼の口から子守唄、なんてワードが飛び出したことに驚いて。子守唄……まだ彼がこの家に来る前、母親から歌ってもらった思い出はあるが、彼の歌声は聞いた記憶がない。目は冴えたままだが、彼の子守唄を聞いてみたいという好奇心につられてベッドの中へ向かい)
随分素直な…おいくつでしたっけ、
(まさか子守唄で釣れるなんて。冗談半分、本気半分で話したことに彼がこんなに食いつくとは予想外で。おや、と目を丸くしつつもベッドの中に潜り込んできた彼の背を?一定のリズムで叩き、いつもより少し低い声で子守唄を歌って、)
別に、それで寝る訳じゃないからな
(子守唄で寝るほど子供じゃないから、なんて宣言してベッドに横になり。眠らないよう目は開いたままだが、彼の子守唄が耳に入ってくると、だんだん瞼が重たくなっていく。落ち着いていて普段とはまた違う声色に、自然と心が動かされ。あれだけ宣言した癖に、数分後にはこてんと眠りに落ちて)
はい、おやすみなさい
(”別にそれで眠る訳ではない”と、あれほど自信ありげに宣言した人物だったとは思えないほどこてんと彼は寝てしまった。狸寝入り、というわけではなく、本当に寝てしまったようで。思わず声を出して笑いかけるが、なんとかそれを抑えては自分も目を閉じて)
(/次の私のレスでクリスマスに入りますね、!)
(今日はスピネが来たり、お世話で忙しかったりと「初めて」が沢山あった。そのため、どっと疲れが出たのだろう。深い眠りの中、楽しかったことが夢に出てきたのか小さく笑みを浮かべ)
(/了解しました、宜しくお願いします……!)
(それから数日後のクリスマス。この日の為にばたばたと毎日を忙しく過ごしていた。朝焼けが見える時間帯に起きれば、廊下にも、各部屋にもきちんとクリスマスの飾りを施して。彼へ用意した朝ご飯もクリスマス風だ。食器を片しながら、彼へ問いかける)
いい子にしていましたか?
当然だろ
(彼からの問い掛けにふふんと自信ありげに胸を張ってそう答え。サンタさんが来るから、と最近は早寝早起きや勉強を頑張っていた。自分自身、今日が楽しみで仕方ないらしく明るい声色で)
お坊ちゃん、プレゼントは届いておりました?
(この時期になると、まだサンタさんを信じている彼の生活態度が急激に良くなる。自分がからかう回数も自然と減って少々寂しいものだが、胸を張る彼は微笑ましい。昨晩、プレゼントをベッドの足元に置いておいたのだ、上記を問いかけながらはて、と首傾げ)
それは…………あった!
(そういやまだプレゼントを見付けていない。起きたばかり、枕元には無かった筈で、一体何処にあるんだろうかと周りを見渡して。そしてベッドの足元に置いてある綺麗に包装された箱を見付けると、ぱぁっと顔を明るくしてそれを手に取って)
よかったですねぇ、
(3日は悩んだ、彼のクリスマスプレゼントは何にしようかと。ひとつは青い宝石がスピネとお揃いのループタイと首輪で、もうひとつは原題でいう音楽プレイヤーのようなものを箱に詰めてみたのだが、果たして彼は喜んでくれるだろうか、)
(包装紙を剥がして箱を開けると、中にはまたもや箱が二つ。どちらから開けようかとわくわくしながら片方を手に取り、そのまま蓋を開ける。きらきら光輝く宝石の付いたそれらに瞳を輝かせ、ループタイは自分の首へ、スピネを自分のところへ抱き抱えて首輪を付けると、ご機嫌に彼の方を向いて)
どうだヴィラ、似合ってるか?
ええ、とてもよくお似合いです
(それはそうだ、なにせこの自分が選んだのだから似合わないはずがない。どれだけそばに居ると思っていることか。しかし、彼は純粋にもサンタからのプレゼントだと思っている。ご機嫌な様子で自分の方を向く彼に、にこりと笑って)
(彼からの返答に満足げに笑みを浮かべ。大切にしよう、と貰ったループタイを一撫でした後、もう一つのプレゼントに手を掛けて。中身を開くと、何やら四角い機械のようなものが入っている。初めて見る代物にきょとんとした表情になりつつそれを取り出し、首を傾げて彼を見て)
なあヴィラ、なんだこれ?
…ね? 凄いでしょう、
(彼が使い方が分からないのも無理もない。なにせこれは滅多に出回らない物だから。きょとりとしたままの彼からプレーヤーを手に取れば、ぽちぽちとボタンを押し。すると、いつもラジオなどで流れる音楽が鮮明に流れ出して、)
、凄い、凄いぞヴィラ!
(ぽかんとしたまま、彼が謎の機械を操作する様子をじっと眺めていて。数秒後に聴き慣れた音楽がその謎の機械から流れ出すと、驚きと興奮で瞳が一回り大きく開かれ。いつもより一つや二つ高くなった声のトーンで感想を口にして。まるで魔法のようではないか。彼からその機械を貰うと、自分でもぽちぽちボタンを弄ったりと興味津々。ループタイ同様、此方のプレゼントも大好評らしく)
壊さないでくださいよ、
(これを持っている人なんて、珍しいんじゃないだろうか。かなり無理を言って取り寄せてもらった商品で、彼の気に入りように思わず笑みがこぼれたのも束の間。やれやれといつものように嫌味をぽろり。とはいえ、比較的ボタンを少ないのを選んだ。彼でもすぐに慣れるはずだ、)
そんなに直ぐ壊すわけないだろ
(流石に貰ったばかりの物を直ぐ壊してしまうほど、自分は無神経ではない。彼からの嫌味にむっとして、プレーヤー片手に腕をぶんぶん振って反論し。壊さないでと言われたばかりにも関わらず扱いが雑になってしまっていることは気付いていないらしく。その拍子に電源ボタンに触れてしまった、軽やかな音楽が止まり、当の本人は突然音が消えた原因なんて全く理解しておらず、驚きを隠せていない。「まさか……壊れたのか……?」なんて苦虫を噛み潰したような表情で、恐る恐る相手に視線を向け)
短い命でしたねぇ……
(彼が電源ボタンに触れたことでぴたりと音が止み。それを壊したのだと勘違いして、とんでもない顔をしている彼をからかうように、わざと肩を竦めてやれやれ、と首を振り。「そこ、真ん中のボタン押してみては?」ふふ、と意味ありげに笑いながら彼に原因を理解してもらおうと、あえて彼に電源ボタンを押してもらうことにした、)
ここ……
(彼に言われた通り、ぽちりとボタンに手を触れそのままぐっと押して。すると、また再びあの軽快なメロディが流れ出す。どうやら壊したわけではなかったらしい、と安堵の息を吐くと同時に「なんで壊れてないって教えてくれなかったんだ!」と彼に不満の意を示し)
これも勉強かと思いまして……
(不満を漏らす彼におや、と目をぱちくりさせ。まさかそんな風に言われるなんて心外だと言わんばかりの反対を見せつつ、「後は焦っている様が面白くて、つい」なんて無駄に綺麗に笑ってみせた。どのみち壊れたら壊れたで夜な夜な直すつもりではいたものだが)
またお前は……
(彼が見せたその笑み、本来ならその言い分にむっとなって言い返すところなのだが、そんな顔をされては何も言えなくなってしまう。ぷくりと不満げに視線を逸らすが、貰った音楽プレーヤーは大切そうにポケットへ仕舞って)
…これは私からのプレゼントです
(音楽プレーヤーを大切そうにポケットにしまう彼を見て、にこりとまた笑いかける。そうこうしながら杖を振れば、いつもより明らかに薄い魔法式の問題集と書き取り用紙1枚がふよふよと空中に浮いて、)
特別ですよ、どちらがいいです?
……こっち
(彼からもプレゼントが貰えるのか、と期待を込めた瞳で相手を見つめるが、そこに現れた問題集や書き取り用紙等の勉強道具にうんざりした表情に早変わり。クリスマスだから今日は勉強無し!と密かに願っていただけあって、ショックもそこそこ大きいものだったが、その量に関しては彼の優しさが感じられる気もする。ここで反論して量を増やされてしまえばたまったものではないので、渋々ふわふわ浮いている問題集に手を伸ばし)
メリークリスマス、お坊ちゃん
(ふわふわ浮いていた問題集に彼が手を伸ばし、その指先が問題集に触れた途端、問題集が新しい杖へと姿を変えた。先端には綺麗な宝石が嵌め込まれ、彼の手に馴染みやすいような形になっており。特別だと言ったでしょう?、そう付け足して、)
(一瞬、何が起きたのか分からなかった。確かに、ついさっきまでは見慣れた問題集が宙にあったのだが、今はどうだ。そこには問題集も何もない空間、その代わりに、自分がいつも使っているものよりも十分に質のいい杖が手のひらの中にある。随分とにぎり心地も良く、数回振ってみただけで使いやすさを実感した。本当に問題集がプレゼントなのか、と半分諦めていたところにこれだと、貰ったときの嬉しさや感動も倍になるというもの。きらきら、感謝の念が籠もった瞳で彼を見、)
ありがとうヴィラ。大切にする。
もう下手な失敗はできませんねぇ、
(彼が一定量の魔法を安定して扱えるようになった時には、彼に似合う杖を贈ろうと決めていた。もちろんこの杖は彼が元々使っていたものを元に仕上げたもので、これで無駄は無いはずだ。これからも彼の成長を見届けたい、その思いで贈ったプレゼントをこうも喜ばれるとは思っていなくて。いつもの嫌味をちくりと刺しながらも、彼の目を見てこくりと頷き)
(自分に向けられたその視線。毎度恒例となっている嫌味はさておき、それには彼の期待が込められていると言ってもいいだろう。その思い、無駄にはしたくないと頷き返す。……なんだか今日は物を貰ってばかりだ。そりゃあクリスマスだから当然といっては当然なのだが、こう自分だけプレゼントを貰って喜んでいると彼に申し訳無い気持ちなんかも芽生えて来て。そもそも、彼がクリスマスプレゼントを貰ったのかどうかも定かではない。まだ彼くらいの年齢でもサンタは来るのかどうか、と思考を巡らせつつ)
……お前は貰ってないのか?その、クリスマスプレゼントとかは
………私ですか、?
(なにを言われるかと待ち構えていたら、クリスマスプレゼントの心配をされてしまった。基本的にもう12歳頃で世の中のサンタクロースは役目を終えると思っていたのだが、彼が信じているサンタクロースの存在は潰したくないし、はてなんて答えようと若干答えるまでに間が空いてしまいつつも、素直に答えて)
もらっていないですね、
(やはり彼くらいの年齢になるともうサンタさんは来てくれなのか……。その返答を聞いて少ししゅんとなるも、それが大人になるということなら仕方ないのかと納得し。しかし、自分だけプレゼントを貰うのはやっぱり申し訳ないという気持ちは変わらないまま。何か決断したように立ち上がって引き出しから硬貨の入った──自分のお小遣いが入った袋を取り出してはポケットに仕舞い)
町に行くぞ、ヴィラ。お前にクリスマスプレゼントを買ってやる。
いえ、その、それは…
(基本的に自分は与える側の人間であり、与えられるのは慣れていない。しかもこのクリスマス、自分は彼のために色々用意していたのだ。自分にクリスマスプレゼントと言われればその慣れない言葉にふるふると首を振り、「その硬貨は、お坊ちゃんのためにお使い下さい」_一度意思を固めた彼が中々下がらないことを予想しつつもやんわり断ってみて、)
駄目だ
(断られるのは想定内、ここで折れてしまえば結局意味が無くなってしまうため、引き下がる訳にはいかないのだ。クリスマスプレゼントのお返し、彼への感謝の意を込めての自分からのプレゼントでもある。彼の言葉をばっさり切り捨てると、彼の片腕を引っ張って)
ほら、早く出掛けないと店が閉まるだろ
…まるで猪ですね
(こうなると彼は止まらない。それがもし、危険なことであれば止めるのが自分の義務だが、彼は自分に渡すクリスマスプレゼントを買うと言っているのだ、その気持ちを折る訳にはいかなくて、彼に腕を引っ張られながらやれやれと首を振りつつ、ぽろりとそんな嫌味を零し)
(いつもなら嫌味には言い返す所だが、今日はわざわざ反応している暇はない。あれから止まること無く足を進め、街中へとやってきた。アンティーク雑貨の専門店や宝石店やら時計店など、洒落た店が並んでいる。クリスマスプレゼントを買ってやる、なんて言ったは良いものの、そういえば彼本人の欲しいものはまだ訊いていなかった、一度足を止め彼の方を向いて)
なぁヴィラ、何が欲しいんだ?この近くにお前の欲しいものが売ってればいいんだが。
お坊ちゃんが選んで下さらないのですか?
(アンティーク雑貨、煌びやかな宝石、小洒落た時計店など様々な店が並ぶ中、正直、これが欲しいと明確な物は決まっていなかった。それもこれも、どれも彼の笑顔や存在には劣るものばかりなのだから。
彼の気持ちを無下にはできず、さてなんて答えようかと数秒の間を置いたあとで目を丸くしながら問いかけ、)
僕が……?…………分かった、
(普段彼は物を欲しがらない、だからこそ、口に出していないだけで本当は何か欲しいものがあるのではないかと思っていたが、どうやらそれは違ったらしい。回答に困っているであろう彼の口から飛び出したのは想定外の言葉で。まあなんにせよ、それが彼の願いならば無理矢理欲しいものを聞き出す必要も無いだろう。……となると、今度は自分がなにか、を探さなくてはならない。今まで彼に貰ったもの、彼の好きそうなもの……やはり日常的に使えるものがいいだろうか。その結論は未だ出ないまま、取りあえず商品を見てみようと彼を連れてアンティーク雑貨の店内へ)
へぇ、美しい時計ですね
(連れてこられた雑貨屋で、様々なアンティーク雑貨を珍しいそうに見回して。どれも凝った細工や細やかな色の変化がそれは美しいが、欲しい物は特に無い。彼が何かを選んでくれるのだろうか、年甲斐もなくわくわくと心を踊らせながらそう呟いて、)
(店内へ入るとそこは圧巻の品揃え。アクセサリーや筆記具を眺めつつプレゼントはどれにしようかと思考を巡らせていると、彼の呟きが耳に飛び込んでくる。自然と視線は時計の置かれている場所へと移動された。そこには置き時計、掛け時計、腕時計と多種多様な時計達が一定のリズムで時を刻んでおり、どれも劣らぬ優秀品。そっと値段を確認すると、流石はアンティーク。一般的な時計の何倍もするであろう数字が書かれており、思わず表情を曇らせる。お金を貯めていたとはいえ、今の自分には到底届かない値段であった。残念そうに視線を落とすと、その視線の先には懐中時計の並べられたガラスケースが。ふらりと近づいてデザインにも目を通す。安定の細かな装飾と、他の商品に比べてリーズナブルな値段。これに決めた、こっそりと此処の店主を呼びつけ、その商品を指差して会話を交わす。彼は気付いているだろうか、自分が今何を買っているのか──。支払いを終え、ラッピングされたそれを丁寧にポケットへ仕舞うと、商品を眺めていた彼の背へ声を掛け)
もう用は済んだ。帰るぞ、ヴィラ。
……おや、もう決められたのですか?
(こちこちとそれぞれの時間を刻む時計の音が心地よく、もう何年も彼の隣で仕えているとはいえ日頃の緊張された精神が解かれていくようだった。自分の部屋にも、こんな風に癒される時計があっても良いかもしれない。そうだ、雨の日がつまらない物にならないよう、彼の部屋に綺麗な時計を置こう。
いつの間にか、考えていた彼のこと。やはり自分には彼の成長と、彼と一緒に過ごせるのが1番のプレゼントのような気がする。
そんな物思いに耽っていたからか、彼が何を買ったかなんて気づいていなかった。帰る、と言われてぱっと意識を引き戻し、)
…まあな、
(彼を連れて店を出ると、人気の少ない路地へ移動し。こう、改めて二人きりになると変に緊張してしまう。普段そんな話をしないからこそ、つい表情が強張ってしまっているのだ。もう一度周りに人が居ないことを確認すると、おぼつかない手付きで先程買ったばかりのプレゼントを差し出し。丁寧に包装された箱の中身は薔薇をかたどった懐中時計であり)
……これ、お前に……メリークリスマス
メリークリスマス、……中を開けても?
(彼の強ばる表情と、おぼつかないその手付きに自分になにかを渡したいのだろうと察する。差し出されたその箱の包装を壊さないようにそっと両手で受け取って、まるで初めて外の世界を目にした鳥のようにわくわくした心を表に出さぬよう、彼に首を傾げて問いかけて、)
あぁ、
(照れくさいのか短くこくりとだけ頷く。果たして彼は喜んでくれるだろうか、ドキドキと徐々に大きくなる胸の鼓動は落ち着きそうになく、そわそわしながら相手の反応を伺い)
これは…
(ぱか、と箱を開ければそこには薔薇をかたどった懐中時計があり。この懐中時計が先程の店のどこにあったのか、自分はまったく気づかなかった。一目見ただけでそれが丁寧に作られたことがわかり、自分にこんなに丁寧に作られたものを彼が送ってくれたことが嬉しくて。箱の中の懐中時計を人差し指で撫でつつ、静かに微笑めば)
ありがとうございます、お坊ちゃん
……別に、普段のお礼も込めてだからな
(想像以上に彼は喜んでくれた。嫌味もからかいも無く、こうして素直にお礼を言われると、慣れていないせいもあるのかやっぱり照れくさい。赤く染まってゆく頬を隠すように俯いて視線を逸らし、ぼそりと呟いて)
…明日からは水をお出ししましょうか、
浮いた食費代はお坊ちゃまのお財布へどうぞ
(大人の自分から見れば、懐中時計はぽんと買えてしまうもの。それをまだ子どもである彼が買ってくれたのだ。いくらほかの時計や雑貨より手が届くような値段だったとしても、彼からしたらきっと高い買い物だったはず。
大袈裟に彼の顔を心配そうに覗き込み、心配する素振りを見せればそんなことを呟いて、)
馬鹿にするな、まだ貯金は残ってる
(流石に彼のプレゼントで今まで貯めてきた全財産を使いきるなんて真似はしない。もうお金に余裕が無いんじゃないか、とでも言いたげな彼の言葉にむ、と眉間に皺を寄せ、下がっていた顔を上げるとそう反論し)
馬鹿にした訳ではありません…、私は将来を思ったまでのことです
(彼の眉間に皺が寄っているのを見ては、馬鹿にした訳ではないのにと悲しそうに眉を下げ。勿論ただの演技で彼をからかっているだけなので、すぐにいつもの表情に戻れば彼からのプレゼントを大切そうに仕舞えば「墓場まで持っていくものが増えました」だなんてくすりと笑い、)
(墓場まで、なんて少し大袈裟な気もするが、そう言ってもらえて嬉しくない訳がない。思わず自然と口角が上がってにやついてしまいそうになるが、照れ隠しかふいとそっぽを向くと、彼の腕を引っ張って)
帰るぞヴィラ、あまり遅くなると父さんが心配するだろ
(/返信遅れてしまい大変申し訳御座いません……!見落としておりました……)
そうですね、まだまだお子ちゃまなお坊ちゃんの帰りをお待ちですから
(ふ、とそっぽを向いてしまった彼のその行動が照れ隠しだと直ぐに気づけば、あえてなにも触れずに大人しく引っ張られ。少しの毒を混ぜつつ吐いた言葉は自分のいつも通りであり、すたすた歩いては彼の隣に並んで、)
(/お気になさらず…!私も遅れてしまいすみません!
この後なにかやりたいことなどはありますか?)
(/そうですね、このままふわふわ日常を綴っていくのも、小さなハプニングを起こしてみたり、季節ネタ等イベントだったり、過去未来のパラレル的展開でも……どう転がっても盛り上がりそうなので困ってしまいます(汗)
質問を質問で返すことになってしまうのですが、背後様は逆に何か希望ありますでしょうか……!)
(/とってもベタですが、体調不良ネタやりたいです…!! なんか魔法の調子が悪いな、から実は熱だったり……介抱する側でもされる側でもどちらでも大丈夫なので、よろしければぜひ…!)
(/それも思ったんですよ…!是非是非やりましょう、大賛成です!此方としても病人側看病側どちらの立場でも大丈夫なのですが、如何いたしましょう?
…ボソ…個人的にはヴィラさんを看病してみたいところです……)
おはようございます、お坊ちゃん
(いつも通りの朝。自分の身支度を整え、向かうのは彼の元。こんこん、と彼の部屋のドアをノックしては部屋に入り、まだ眠っているであろう彼を起こす為かちゃんとドアを開けては中に入り、)
ぅ、んん……
(すやすやと心地良さそうに眠っていたところ、自室の扉が開く音、そして誰かが入ってきた気配を感じてはうっすらと瞳を開け)
体を起こさなければ、起きているとは見なしませんよ
(うっすら開いた彼の瞳を確認し、いじわるなことを呟く。今日の朝食はポタージュと焼きたてのパン、その他二、三品を説明する、いつものようによく回る舌に不調は感じられないが、カーテンを開けたのち、クローゼットから服を取り出そうと杖を振ってみたのだが、全く反応せず_つまり、失敗しているのだが、それに気づいていないようでまた杖を振り)
朝から意地悪だな、お前は……
(彼の言い分にむ、と不服そうな表情で身体を起こし。まだ若干の眠気が残るが、ここでうだうだと粘っていても終わりのない毒舌が飛んでくるだけ。ふあ、と大きな欠伸でその眠気を払拭すると、いつも通りに朝食を済ませ。さあ次は着替えか、これもいつも通り、彼が着る服を準備してくれる……筈なのだが。何故だか上手くいかない彼の魔法に不思議そうに首を傾げ)
どうしたヴィラ、何をしてる
私も人間ですから、失敗するときくらいありますよ
(その後3回目でいつものようにクローゼットから服が飛び出し、彼に着られるのを待っていたかのようにベッドの上に置かれた。なんら難しくはない、ただの日常で使う魔法で失敗するなんて、どうしたのか聞きたいのはこっちの方だ。不思議そうに首を傾げる彼に、"私を何だとお思いで?"そう返したもののいつもしない失敗をしているのは明白であり、)
…………、
(彼の言葉には若干の疑問を持ちつつも用意された服に着替え。人間なのだから仕方がない、確かにその一言で片付けられてしまう問題ではあるのだが、どこか胸に引っ掛かりを覚えてしまう。その不信感を取り除くためにも、ここは一つ彼を試してみることにして)
おいヴィラ、もう僕の勉強の時間だろ。
机に問題集を準備しろ。そこの本棚に仕舞ってある筈だから、
おや、明日は空から槍でも降るかもしれませんね
(彼から勉強の用意をしろだなんて、どういう風の吹き回しだ。慣れた手つきで勉強道具が独りでに机に広がるイメージをしながら杖を降ったのだが、教科書たちが浮くどころか独りでに動いたのは全く関係のない観葉植物であり。…つまりはイメージが上手くできていないのだがそれにも気づいておらず、まだ少ししか力を使っていないのに既に息は荒く、)
(やはり、今日の彼は明らかにおかしい。……彼を試してみて正解だった。この呼吸の乱れ具合、イメージが続かない、つまりは集中力の途切れ…これらの症状から導き出される結論なんて限られているだろう。彼の様子からしておそらく、今の自分の状態でさえ理解していないのではないか。…ともかく、このまま放っておくわけにはいかない。側にあった椅子の一つを引くと、そこに座るよう指示をして)
…一度座れ。お前は今日、魔法を使えていない。
…お坊ちゃんには言われたくないのですが…
(魔法が使えていない?彼に言われるということは、認めたくはないが本当に使えていないのだろう。それを彼に指摘されてからやっと気づくだなんて_そういえば、今日は考えがまとまらない。まるで透明のフィルムに頭が覆われたようだ。ふらりとよろけるようにして彼に言われた通り椅子に座れば、どこか焦点が合っておらず顔も火照っていて、)
今日はもう休めヴィラ、凄い熱だぞ……
(ぺたり、座り込んだ彼の額に、自身の手のひらを押し当てる。熱い。いくら執事とは言えど、こんな状態で仕事なんて頼めるわけがない。部屋まで戻って安静にしているように促し、そっと彼の背に手を当てて)
取り敢えず寝室まで戻るぞ、……動けるか?
は、………すみません
(凄い熱だなんて、そんなはずはない。なぜなら、彼の世話をするにあたって、まずは自分の体調が万全でなければ仕事の効率も何もかも落ちるからだ。だからこそ気をつけていたはずなのに、1度熱だと言われると自分の状態がやっと自覚できたようで、素直に彼の言うことを聞けばゆっくり立ち上がって)
(立ち上がった相手を支えながら廊下を通って彼の寝室まで移動し。そのまま彼を寝かせて布団を掛けると同時に口を開いてそう言い残し、濡れタオルを取りに行くため洗面台の方へと足を進め)
今日一日はしっかり休むんだな。今タオルを持ってくるから、
…どこに、行かれたのですか…
(情けない、これでは執事の意味が無いではないか。大人しくベッドで寝ていたのもほんの少しで、上半身だけ起こして辺りを見れば彼の姿が見当たらず。熱さと怠さ、加えて鈍く響くような頭痛で頭が回らず、ついさっき彼の言っていたことすら思い出せなくて探しに行こうとするものの、これ以上体を動かせなくて今の姿勢のまま、ぼーっとドアを見つめており)
勝手に起き上がるな…!
(水の張った洗面器とタオルを持って彼の寝室へ向かう。がちゃり、ドアを開くと視界に入ってきたのは虚ろな目で此方を見つめる彼の姿。水を溢さないよう気を付けつつ洗面器をベッドの片脇にある机へと置き、半ば無理矢理起き上がっていた彼を横に寝かせ。水に浸して冷たくなった濡れタオルを絞って折り畳むと彼の額へと乗せる。汗を拭き取りながらも、病人なんだから安静にしてるよう釘を刺し)
今日一日は寝てろ、勝手に動いたら許さないからな
すみません、こんな姿を…
(戻ってきた彼を見ては、ほっと安心したように僅かだが眉を下げ。そのままされるがまま、ベッドに寝かせられては額にひんやりとした感触を感じて。
こんなことを主人にさせている情けなさだろうか、熱のせいだろうか、素直に零れた言葉は弱々しく、)
そこにいてください、見えないのは不安だ…
……僕は離れない。安心して休んでろ
(普段の彼からは考えられないような彼の弱々しい声色に、少し胸が締め付けられる。思わず表情が曇ってしまいそうだが、彼に変な心配を掛けさせないためにもここは平常心で振る舞って。彼の汗を拭いたタオルを一度畳んで避けておくと、ベッドの傍に置かれていた椅子へと腰掛け)
食欲はあるのか?……熱の時は体力を使うからな、何か食べたいものは?
いちご…
(安心して休んでいろ、そう言われれば少しは落ち着いたようで。なにか食べたいものと聞かれて、真っ先に思い浮かんだのは好物のショートケーキ。だがしかし、歩くのもしんどいこの体調でショートケーキは食べれたものじゃない。ならば、いちごだけでも口にしよう、温かいスープよりも冷たい果物の方が喉を通りそうで、彼にそのことも伝え)
……分かった、
(返答を聞くに食欲はまだ残っているようだ。こくりと頷いて了承すると、彼の要望の品をはてさてどうやって手に入れようかと思考を巡らせ。まず第一に思い浮かんだのは魔法で苺を生成する方法。……普段物を動かすだけでも一苦労だというのに、果たして何もない空間からいちごなんて出せるだろうか。今の自分の腕前からしてそれは難しいか…そんな結論に陥るが、苺の入手方法は振り出しに戻ってしまった。きっとキッチンの方へ行けば冷蔵庫に幾つか果物が冷やされてあった筈。彼の病状からしてここを離れるわけにはいかない、因って導き出される答えは1つ「冷蔵庫内の苺を魔法でこの寝室へと運ぶこと」。距離はあるものの、前述した方法よりも成功する確率はぐんと上がっただろう。そうと決まれば杖を構え)
少し待てヴィラ、直ぐに苺を持ってくる
…できます、?
(ちらりと彼を見れば、杖を構える姿。…どうするつもりなのだろう、予測を立てることも出来ない。熱ってこんなにしんどかったっけ、改めて自分の体調の悪さを自覚する。それでも、杖を構えたということは魔法でどうにかするつもりなのだ。彼の魔法の力はどれ程か理解しているので、ぽそりと不安げに問いかけて)
僕の魔法を甘く見るな
(不安そうな彼を振り返ると「病人は黙って見ていろ」とでも言いたげな声色でそう返して。その後手元の方へ意識を戻すと、冷蔵庫から苺を取り出し此処まで届く、その一連の流れを想像しながら杖を振り下ろす。……数秒後、どんっ、と此処の扉に何かがぶつかる音、扉を開くとその先には苺の入った籠が転がっており。幸いにも中身は出ていない。冷やされたその籠を拾い上げ彼の元へ戻って。その途中、彼の寝室の扉が軽くへこんでいたり、料理人の叫び声が聞こえてきた気もしないが、そこは見なかった、聞かなかったことにする。先程拾ってきた籠を彼の前へ掲げ)
ほらなヴィラ、僕だってやる時はやるんだ
ふふ、…成長しましたね
(見事苺を用意することに成功したらしい。振り返った彼が自分の前に掲げた籠、それは苺を入れるもので。ゆっくり体を起こして中を見れば確かに苺が入っており、成長したなあ、と柔らかく笑って。そういえば鈍い音がした……ような気がするが、頭痛だろうか。難しいことは考えないようにしようと思考を諦めれば、あ、と小さく口を開けて)
(彼に褒められたことが嬉しくて、自分から褒めてくれと言ったようなものにも関わらず、照れくさくなってふいと視線を逸らしてしまう。ちらりと視線を戻すと開かれた彼の口が視界に入り、何事かと首を傾げるがその意図を汲み取るのにそう時間は掛からなかった。苺を一つ手にとってヘタを取ると彼の口へと入れて)
…おいしい、
(口の中に入れてもらった苺を咀嚼して、口に広がるみずみずしい甘酸っぱさに思わず頬が緩む。これが食べたかったのだ。ごくりと飲み込んでは、どこか落ち着いた様子で。普段の自分なら、彼に食べさせてもらおうだなんて思わない。しかしすでに思考が止まっているようで、ふわふわと熱特有の浮遊感に身を任せればいちごを手に取り頬張って_
……無理は、するなよ
(食欲はあるようで安心した。心なしか顔色も次第に良くなっている気がして、ふっと胸を撫で下ろす。幸せそうに苺を頬張る彼を側の椅子に腰掛けて眺め。彼が体調を崩すなんて珍しいよな、なんて改めて考えてみる。巷ではこの時期に風邪が流行っているのか、それとも日頃の疲れからか。それぞれ真偽は分からないが、どちらにせよ普段の彼は働きすぎではないか。心配からかぼそりと呟いて)
それくらい、成長していただけると有難いのですが…
(無理はするな、噛み砕いた苺と共に飲み込む。
自分は、彼のことも見ながら自分の体調管理もしっかりできているのだと思っていた。実際、体調を崩すことなんてあまり無かったし、仕事が立て込んで睡眠時間が減ったとしても、翌日の仕事には影響無かった。知らず知らず、疲れが溜まっていたのかもしれない。彼の言葉にいつもより覇気のない毒を吐いた後で、けほりと咳き込んだ後一言、)
肝に銘じておきます、お坊ちゃん
……ふぁ、
(相変わらずの毒舌は変わらないようで、む、と顔をしかめる反面、普段の調子が戻ってきたとどこか安心感も抱いており。普段使わない神経を使ったせいで疲れが出てきたのか、ぷつんと自分の中の糸が切れ、先程までの緊張感を失った欠伸をひとつ)
少し休まれてはどうですか
(彼が欠伸したのを見、自分の看病で緊張していたのだろうと察して声をかけ。
身体の関節はまだ痛むものの、怠さは大分引いた気がする。この程度なら1人でも大丈夫だ。
先程彼に釘を刺されたこともあり、熱と怠さが完全に引くまではベッドで大人しくしています、と態度で示すかのようにベッドに潜り込んで)
駄目だ、今日は離れないって言っただろ……
(いくら自分が疲れているとはいえ、さっき今日一日は一緒に居ると宣言したのだ。彼の言葉は有り難いものだったがそれは出来ないと首を横に振り。彼の態度を見るに、自分がいなくなった後こっそりベッドを抜け出して仕事に戻る、なんてことは無いと思うのだが、念には念をというやつだ。意地でも離れないというようにぐっと椅子に座り直し)
全く頑固ですねぇ……、さすが真面目なお坊ちゃま
(本当に言う事を聞かないんだから、と言いたげに見つめてはやれやれ、とため息をひとつ。加えて真面目だ、なんて茶化す言葉も付け足して。
とはいえ、体調の悪い時に彼がそばにいてくれることの心強さは自身の想像を超えていて、安心感からかだんだんと睡魔に襲われていき)
……せいぜい今日一日はベッドの上にいるんだな
(茶化しに対してはもう慣れたものだが、やはりむ、と眉をしかめ。しかし、もう既にまどろみの中にいる彼を現実へと引き戻すのは良くないだろうと声にすることは躊躇う。その代わりに小さな声でそう言っては、彼を今一度眺めた後、これ以上悪化することはないだろうと小さく微笑んで。そうこうしているうち、自分も眠気が襲ってきたらしい。彼の寝ているベッドに突っ伏してしまえば、そのまま眠りに落ちてしまい)
ずっと居たのか…?
(薄ら感じる光に、眉を寄せつつも目を開けて。
どうやら昨晩はあのまま眠ってしまったようだ、体調を崩したのは自分が思っていたよりも体に負担をかけていたらしい。彼の介抱もあってか今はもう不調などなく、昨日のだるさがまるで嘘のようで。
ベッドから起き上がろうとすれば、ふと感じた重さで彼の存在に気づき、ぱちぱち瞬きしながら思ったことを一言、)
……すぅ
(襲いかかってきた眠気に勝てず、眠りに落ちてから数時間経過。既に外は明るく、普段ならそろそろ起きる時間であろうが、当の本人はまだ夢の中にいた。昨日の疲れがまだ利いているのか、目を覚ます様子は一切感じられない。彼が起き上がった気配にも気付かないまま、すやすやと寝息を立てており)
ありがとうございます、お坊ちゃん。…本当に、助かりました
(ベッドから降りても、彼は一向に目を覚まさない。すやすやと眠る彼の寝顔、その頬を優しく人差し指で撫で、起こさないよう小声で上記を呟いた。病人の世話なんて慣れないことをしたからか、疲れきってしまったのだろう。本来ならばもう起きる時間だが今日は特別。"自分の身支度がまだだから、起こしに行くのが遅れた"という理由にしておいて、彼をまだ暫く寝かせることにしておいた。顔を洗い終え、杖を1振りすればあっ、という間にいつもの服を身に纏った姿が出来上がり、)
……あれ、
(あれから数分後、うっすらと瞳を開くと彼が寝ていた場所に視線を向ける。そこには既に彼の姿はなく、空っぽのベッドがひとつ。驚きで勢いよく顔を上げると、その勢いのまま立ち上がる。寝癖の付いた頭で寝起きの眼を擦りながら、部屋を彷徨いて彼の姿を探し)
おや、朝から落ち着きがありませんねぇ
(それから、彼を起こさないようにして部屋を後にした。少し遅めの朝食をワゴンに載せてころころと運んできては、とんとんと彼の部屋のドアをノックしてからドアを開け。どうやら彼は自分が部屋を後にしたあとで目を覚ましたらしい。まだ眠たげな目をしながら部屋の中を彷徨う彼に、首を傾げて)
っ?!お前……もう身体は大丈夫なのか?
(ノックの音に気が付かなかったのか、突然背後から聞こえてきた声に驚いてびくりと肩を震わせる。お陰で眠気は吹き飛んだ。振り返るとそこにはいつもの彼の姿。顔色は随分良くなっているが、まだ病み上がりであろう、なのに朝から執務とは…。幾つか心配が残る中そう問い掛け)
私を誰だとお思いで? _そう何日も引きずるような歳じゃありません
(いつものように、口から出た言葉は毒ばかり。とはいえ昨日彼が看病してくれたおかげである。昨日の彼のおかげで、治りも早かったのだ。焼きたてのクロワッサンに温かいスープ、それにベリーのスムージー。早く食べないと味が落ちますと彼を急かしつつ杖を振れば朝食がひとりでにテーブルの上へ座っていき、)
……念のため聞いただけだ
(いつも通りの彼の対応。やはりその言葉ひとつひとつに含まれる毒は健在で、どうやら自分の心配は杞憂に終わったようだ。此処で変に反論しても、また上手い返しで毒を吐かれるだけとこれ以上は言及しないこととして大人しく席に着く。素直になればいいものを…と彼を横目で見つつ、もそもそとクロワッサンを口に運び)
言葉にしなければ分かりませんねぇ
(何か言いたげな彼に、大袈裟なほど困ったように眉を寄せておやおや、と肩竦め。彼が朝食を食べているうちに今日の服を用意しようと、杖を一振り。クローゼットから生きているかのように服がひとりでに動き出し、ベッドの上に畳まれた状態で座った。この前の体調不良が嘘のように完璧な魔法だ、風邪であそこまで不調になるのかと自分でも不思議なほどだ、)
(/いつもお相手ありがとうございます、!!
この後何かしたいなどありますかね…?何しようかなって…)
(彼の含みのある言い方に、自分の気持ちなんて言葉にしなくたって本当は全て読まれているんじゃないかという気になってくる。これ以上の言及を許さないよう「うるさい」と一蹴すると、残り一欠片のクロワッサンをスープで流し込み、スムージーを飲み干したところで朝食を終え。机を離れ、横目で彼を見ながらベッドの着替えに手を掛けた)
(/此方こそいつもお世話になっております…!
そうですね……時期的にクリスマスなんて如何でしょう?)
…冷え込んできましたから、風邪をひかないように。
(一蹴されてしまい、これまたわざとらしく口元に手を当て目を見開きつつ、「ついついこの口が」なんて思っても見ないことをさらりと口にして。
彼の食べ終わった皿を片付けつつ、ふと窓を見れば外は非常に寒そうな空をしていて、彼を労わるように一言忠告し。もちろん彼の心配をしているから出た言葉なのだが。サービスワゴンに全ての皿を乗せ終え、にこりと笑みを浮かべては彼に一言、)
これ以上私の仕事が増えたら、堪ったものではありませんので
(/クリスマス…!! いいですね、そうしましょうか!
クリスマスケーキを手作り、なんてどうですか?材料買う所から一緒に行くのも楽しそうで…!)
言われなくても分かってる、
(口では了承しているものの、つい昨日寝込んでいた人間に言われたくはない、と若干不満気に眉を寄せ。
彼の用意した服に身を包みつつ、自身に向けられた皮肉気味の言葉は聞き慣れたかのように一度受け流すが、どこか腑に落ちない点があったらしく追加で一言)
僕より、まずは自分の体調を心配するんだな
(/それは名案……!大賛成です、是非やりましょう!
切り替えのタイミングに関してはお任せしても宜しいでしょうか…?)
有難いお言葉、肝に銘じておきます
(昨日まで寝込んでいた、彼の看病がなければ今日も寝込んでいたかもしれない自分にとってその言葉は耳に痛いものがあった。珍しく素直に頷きつつ、思わず苦笑いを零して軽く頭を下げ。
手帳を取り出し、今日の予定が特にないことを確認して手帳を閉じようとした手を止め、)
おや。今週末がもうクリスマスですか
(/お返事お待たせしてしまい申し訳ございません!
ちょっと強引な気がしますが、ここで切り替えました)
今年は何が貰えるんだろうな…!
(去年は音楽プレーヤーと、今も自身の胸元で揺れているループタイを貰った。彼の発した「クリスマス」という単語に反応しきらきら瞳を輝かせると、今年もサンタさんが来てくれる筈、そんな期待を込めた視線を向け)
(/こちらこそ反応遅れてしまい申し訳ないです…!
場面転換助かりました!)
クリスマスまででも、成長してくれると非常に助かるのですが…夢のまた夢、でしょうね
(サンタさんなんて存在を信じ、今年のプレゼントに期待を膨らませる彼の素直さに緩く微笑んだのを、上記の嫌味で誤魔化して。どうせ噛み付いてくるはずだから、…少しからかってやろうとはっとした表情と、わざとらしく大袈裟に言ってみせ)
坊ちゃん、実は…その。今年のクリマスケーキ、私たちで作らなければいけないことをいま、思い出しました
(/大丈夫です~!お返事ありがとうございます!)
(普段なら「自分はもう既に成長している」だの「勝手に決めつけるな」だの何かしら反論するはずの彼からの嫌味も、クリスマスという一大イベントを前にすると全く耳に入ってきていないようだ……ったのだが、その後に続く彼の言葉に耳を疑う。例年なら街の洋菓子店で買ってくるなり、料理人に作らせたりとケーキに困ることは無かった筈なのだが。……それにケーキなんて作ったことがない。何故?と疑問符が脳内を埋め尽くすと同時に、彼の口調やはっとした表情も相まって自然と焦りが芽生え始め)
ど、どうするヴィラ!クリスマスまでもう一週間も無いんだぞ!
はい。…ですので、作りますよ。いいですね?
坊ちゃんでも作れるように、シンプルなものにしましょうか
(彼が楽しみにしているクリスマスケーキの用意を忘れるなんて、そんな失態自分はしない。なので先程の自分の発言はちょっとしたからかいのつもり、ケーキはあるから安心するよう言うつもり…だったのだが、あまりにも焦りまくる彼の姿を見、このまま手作りするのも悪くない、にやり、と笑って実行する事を決め。焦る彼に落ち着きなさいと言うかのように杖を振れば、シンプルなショートケーキ、チョコレートケーキ、それにブッシュドノエルのレシピがふわふわと宙を浮き)
どれが食べたいですか? _好きなものを、手に取ってください
(突如現れた宙に浮く3つのレシピ。好きなものを選んでいいと言われたものの、さてどうしようか。折角のイベント事、やはりクリスマスらしいケーキを食べたいものだ。ショートケーキやチョコレートケーキも捨て難いが誕生日ケーキの際に代用できる。となるとやはり……。暫く思考を巡らせた後、ブッシュドノエルのレシピに手を伸ばし)
…これにする。僕でも作れるんだよな?
ええ、勿論。1人で作らせる訳ではありませんし、私が隣に着くので…ご安心ください
(彼にレシピが選ばれると、ほかの選ばれ無かったものはぽんぽんと消えていき。ショートケーキかチョコレートのどちらかを選ぶとばかり思っていたがブッシュドノエルとは。大人になったのか、自分が彼のことをまだまだ子供だと思いすぎていたのか。くすり、と口角を上げて笑ったのも束の間、僕でも作れるかとの彼の問いに、まさか1人で全部作るつもりだったのかとわざとらしく驚いた様子をして、)
僕はもう子供じゃない、お前は見てるだけで十分かもな
(執事という立場上、自分一人で何かさせることはないと分かってはいたのだが、改めて彼が傍につくと伝えられて安心したのも事実。思わず安堵の息が漏れるが、それを彼から指摘され、からかわれることは目に見えていた。誤魔化すようぶんぶんと首を振り、彼の手を借りることなく完成させると強がって見せ)
…では、ご自分の力で完成させてみますか? そこまで言われるなら、さぞ綺麗なケーキが出来上がることでしょうから。ねえ?
(最初から彼にできることはやらせ、まだ難しい所は自分が手伝うつもりでいた…のだが。ただからかっただけなのにそんなに反応されるとは思っていなくて。気が変わりました、とでもいうように首を振って彼を試すように見つめると、軽く笑いながら首を傾げ)
(“また何時もの強がりですか”そう軽くあしらわれて終わる――筈だったのに。彼の口から飛び出した想定外の発言に思わず言葉が詰まる。此方へと向けられた視線はどこか挑戦的に感じ、今更冗談だと言い出せる空気でもない。となれば残る手段はひとつ、覚悟を決めたように小さく頷けば彼の腕を引いて調理場へ)
あ、当たり前だろう!…ほら、早くしないと間に合わない
(/お久しぶりです。
長らくお返事できず申し訳ございませんでした。ふと懐かしくなってスレを覗いたらお返事が来ていたので、背後ですが書き込みさせてもらいました。
中々忙しくこのサイト自体に来ることも減ってしまい…。ノエルくんとのなりきりは本当に楽しかったです。寒い日が続きますので、お身体ご自愛くださいね )
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