執事 2020-07-30 19:43:59 |
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紅茶がいい
(普段とは違う褒め方で驚いたものの、相当嬉しかったらしく表情が更に明るくなって。今日の朝食をさっと見て「今日はパンケーキか」と食べるのが楽しみなようで。にこにこ気分のまま飲み物の希望を伝える。実はコーヒーは苦くてどうしても好きになれず、18歳の今でもまだ飲めないのは秘密。)
お坊ちゃま、コーヒーはお嫌いですか?
(たしか、この前もコーヒーを避けていた気がする。彼のためにほんのり甘い紅茶を用意しながら、いい豆が入って、だとか、大人の嗜みだとかをつらつら並べながら彼が座るための椅子を引き、ふわふわのパンケーキにグァバやクランベリーなど、珍しいフルーツが乗っていることを一通り説明し)
い、や……嫌いじゃない、
(引いて貰った椅子に座りながら、コーヒーが飲めないことを誤魔化すようにそっぽを向いてごにょごにょと答え。彼からの説明を聞きながら改めて今日の朝食と向き合えば、焼きたてのパンケーキのいい香りで食欲も唆られ、ゆっくりフォークとナイフを入れていく。フルーツ特有の酸味とクリームの甘味が上手い具合に絡み合ってまさに絶品。口へとパンケーキを運ぶ手は止まることがなく、美味しそうに味わっていて)
その食べっぷりの良さ、ぜひ民の前でお披露目ください
(さぞ良いお手本になることでしょう、にこりと絵に書いたようなさわやかな笑顔を浮かべて。こちらとしても作ったもの、というか用意したものをそこまで綺麗に美味しそうに食べてくれると嬉しい限りであるが、彼を弄るのはやめられない、)
それは…
(執事の冗談を真面目に捉えたのか、この姿を彼以外に見られるのはなんだか恥ずかしい…などと考え、またパンケーキへと伸ばしていたフォークを動かす手を止めて。数秒後、いつもの弄りかと気付く、ものの「それは恥ずかしいだろ!」と自分でも言う筈のなかった突っ込みをして。そんな中パンケーキをペロリと平らげると、御馳走様と両手を合わせ椅子から降り)
_では、忘れ物はありませんか?
(彼の食べ終えた皿を片付け、すべての身支度を整えいよいよ視察に行こうと外に繋がる門を開ける1歩手前で、まるで小学生の相手をするかのような物言いで問いかける。「あ、ハンカチは持ちました?」ぴらりと自分の胸ポケットから白い絹のハンカチを取り出せばぴらぴら、彼の目の前で振ってみせ、)
子供じゃあるまいし、持ってるに決まって──
(まるで自分を子供扱いしたような彼からの質問に自信満々に答え、確認するかのようにポケットに手を入れる…が、その中身は空っぽ。準備していた気にはなっていたが、実際はすっかり忘れていたらしい。本当は入っていたりして…と、何度もポケットから手を入れたり出したりを繰り返して)
ご立派ですよお坊ちゃま、その思い込みの力
(何度も何度もポケットに手を入れたり入れなかったりする彼の様子を見、これは忘れてきたなと察して。こんなこともあろうかと彼のハンカチを持ってきて良かった。綺麗に折り畳まれた彼のハンカチをポケットから取り出せば、忘れないようにそっと彼の手を退けてわざわざ彼のポケットに入れてやり、)
…ぅう
(何時もなら何か言い返しているところだが、今回ばかりは自分に非があるため、悔しそうにしながらも黙って彼の言葉を聞いていて。それと同時に、自分の分のハンカチまでしっかり準備をしてくれている彼には流石としか言いようがなく、小声で「有難う」と感謝を述べ)
素直な事は良いことですよ、学校で習いません?
(小さな声で発せられた感謝を決して聞き逃さなかった。とはいえ、素直にはい、いいですよと返すのは味気なくてまたそんな喧嘩を売ってしまって。
準備は揃った、あとは街の騒ぎを解決するだけ。かちゃり、と門を開けては街まで降りていき、)
ぐ…、
(お礼は聞こえていたらしいのだが、更にそう返されるとは。本当、彼は自分の何枚も上手だ。こんなにも近くにいるのになかなか届かない存在。もっと自分に正直になりたい、と心の奥底で願いながら彼と二人で街へ。そこは賑わっており、自分はここで事故が起きるようには微塵も思えなくて)
_さあ、成長する良い機会ですよ
(控えめながらもわらわらと集まってくる街人たちに、彼の前の姿からは想像できないような、いわば営業スマイルなるものを浮かべて対処していく。たとえば街灯が欲しいだとか、店を出したいだとかの希望を頭にメモして。人がまばらになったころ、彼にこっそり耳打ちをしては人気の少ない、薄暗い道で異常な魔力を感じてはす、と指を指して、なにが起きているかはあくまで彼に気づかせようと、)
……
(魔法の実力は無くとも、他人の魔力を感じ取ることは出来るようで。ある一定のラインを越えてから、先程までの和気藹々とした賑やかな雰囲気からかなり変化した気がし、条件反射的に腰から杖を抜く。彼から「成長する良い機会」と言われたということは、此処で何かが起きるということ。緊張で胸の鼓動がはやくなっているが、なんとか落ち着こうとして)
おやおや、お坊ちゃんの肩は岩ですか?
(彼が緊張するのも無理はない。なにせ、目の前で魔法の暴発を見ることになるのは初めてになるのだから。しかし、これから国を背負うもの、あまり甘やかすのは意味が無い、そうは思いながらも緊張をほぐしてやらねばと彼の両肩をさすれば、いつもの嫌味を投げかけながら大袈裟に溜息ついて)
わ、判ってる
(口ではそう言っているものの、本当は何処かに恐怖心もあったりして。しかし、こんな状況でも変わらない彼の態度。これが逆に緊張を解すきっかけになっていたりして、決意したように深く深呼吸をすると、いつ何が起きても大丈夫なように気持ちを整え)
_、これは、!
(それから程なくして、ばごん、と地中からなにか飛び出すような音が辺りに響いたかと思えば、速度はゆっくりであるのが救いだろうか、だぼだぼと水が街中にゆっくり溢れていく。明らかに魔法の暴発、そして暴走。ここまでだなんて聞いていなかった。実際に地中から水が出た訳では無いけれど、桶に水を貯めようとして杖を振ったであろう当の本人は自分でも驚いているのか、身動きが取れずにいて)
っ、おいヴィラ!どうする……っ?!
(先程落ち着いたにも関わらず、自分の想像を悠々と超えるこの事態に戸惑いを隠せずにいて。直ぐに執事の名前を呼んで彼の顔を見、今の自分1人の力では抑えきれそうにないと察する。身構えていたとはいえ、本当に突然の事だったため軽いパニックに陥っているらしく、何をすればよいか判っておらず、今は彼からの指示を待っているようで)
幼子の真似事ですか、冗談は良しなさい
(少し突き放しすぎただろうか。軽いパニックに陥っている彼をさらに畳み掛けるような言葉を投げかけ。確かにこの事態、彼一人では抑えきれない。しかし、1番にすることは人命の安全を図ること。それくらい、本来の彼ならわかるはずだとぴしゃりと言い放っては、自分の杖を振って街全体のあらゆる道の隙間からさまざまな植物の根を張らせ、地中から水を吸い取らせるつもりのようで)
ぅぐ……
(こんな事態でも彼の毒舌は健全で、此方としても何も言い返せなくなる。早速魔法で植物を出現させこの状況の改善を図っている彼を見て、いつまでもこうしてはいられないと握っていた杖を振る。確か彼はイメージか大切だと言っていた。水を吸いとってくれるタオルをイメージしていた、が実際出てきたのは想像の何倍もある巨大なスポンジ。まあどちらにせよ、水は吸い取ってくれるだろうと今回ばかりはプラスに捉えることとして、そのスポンジを大通りへと繋がる道と此処を塞いで水を塞き止めるように置いて)
あぁ助かりました、そちらまで気が回らなくて、
(皿洗い何日分のスポンジだと心の中で悪態を吐きながらも、そのばかでかいサイズのスポンジは水を含んでいくのでまあ、良しとしよう。植物は水を吸って様々な花を咲かせ、この状況でパニックに陥る人々の気を少しでも紛らわせようとして。水の水位は下がりつつあるが、肌がかすかにひりつく魔力を感じていて、)
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