執事 2020-07-30 19:43:59 |
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…よく見ていてください、
(彼が持ってきたキャットフードの表記を見、乾燥している固形のものだとわかれば杖を振り、あたたかいお湯を入ったコップを出す。器に先ず固形のフードを出せば、お湯をたらしてふやかしていき、)
覚えました? _この子の親はお坊ちゃんですから
試しにやってみる──……っづ!
(今回の食事は彼が準備してくれたが、試しにお湯を出すことくらいなら出来る筈。杖を振ってコップを出すところまでは上手くいった。あとはそこに丁度良い温度のお湯を張るだけ─。もう一度杖を振ると、ゴポゴポとまだ沸騰しているような熱湯が出てきて、あまりの熱さにコップを持っていた手を引っ込め)
ッ、随分お熱いのが好みのようで、
(彼が思わず手を離してしまったその時、反射的に杖を振り、中の熱湯を人肌程度までの温度に下げ。手袋をしていてよかったなんて思いながら、コップは片手でしっかり掴んでおり)
危なかった……、有難うヴィラ、
(危機一髪、熱湯を床に溢して大惨事というのは逃れた。流石執事、彼の反応速度には頭が上がらない。やはりこの間のようには魔法が上手くいかないか…、少し落ち込んだらしくしゅんと眉を下げ)
…ほら、この子にご飯をあげてください
(不思議そうな顔をして餌が盛られた器に顔を近づかせている子猫。それが餌だと微妙にわかっていないのか、ふんふん鼻を鳴らすばかりで食べようとはせず。落ち込んだ様子の彼の気を他のことに向けようと試みて)
…、そうだ
(こんなところで落ち込んでいる場合では無いのだ、今はこの子猫にご飯をあげなくては。しゃがんで出来るだけ子猫と目線の高さを近付けると、そっと背中を撫でながら餌の入った器を子猫の真ん前に移動させ)
ほら、ご飯だぞ…
食べてますね、
(少しの間を置いてから、みい、と小さく鳴いた様はまるで"食べるよ!"とでも言っているようだった。真ん前にきた器に顔を突っ込み、はぐはぐと食べ進めていく勢いの良さに思わず目を丸くして)
、……うん……!
(餌を夢中になって食べているその子猫の可愛さたるや、瞬時に言語化出来ないほどで、思わずふにゃりと此方の表情も緩む。本当にずっと眺めていても飽きないな、身体を屈めたまま見守るような視線でその様子を眺めており)
_おや、
(お腹が空いていたのか、もう全て食べ終えた子猫が顔を上げた。まだ少し頼りない足取りで歩き出したかと思えば彼のほうに寄っていき。どうやら、早速彼に懐いた様だ、そろそろ"この子"なんて呼ぶのは気が引けてきた、)
そろそろ、名前を決めたらどうです?
そう…だな、
(近付いてきた黒猫の頭を一撫で。さて、この子になんて名付けよう、悩みながら棚の宝石の本を手に取る。適当にページを開くと、そこには黒い宝石の写真と「ブラックスピネル」の文字があり。それを見た途端、脳内になにかピンとくるものがあったのか)
……スピネ、とか
素敵な名前です、
(スピネ、とは彼も洒落た名前をつけたものだ。スピ坊、と自分の中であだ名をつければ、おもむろにスピネの背中をとんとんと撫でで。彼にとってはこの子が宝石なのだろう、いい名前だ。子猫特有の柔らかさを感じながら撫でつづけ、)
な、……ヴィラばっかりズルいぞ!
(先程、この子の親は自分だと彼が言っていた。のにもまるでスピネを独占するかのように見えた彼の仕草にぷくりと頬を膨らませ。自分も触りたい、とそっとスピネに手を伸ばし、ふさふさな毛並みを撫でて)
嫉妬ですか?
(犬が苦手な訳であって、動物そのものは苦手ではない。スピネは素直に可愛いと思うのだから。少し自分が彼より多く触っただけなのに、ずるいなんて言われてしまえば思わず苦笑いを浮かべて、)
し、嫉妬じゃない!……羨ましかっただけだから…
(自分は嫉妬じゃないと思っているためそう否定するが、その動機は嫉妬そのもので。単純に、自分もスピネを触りたいというのと、彼が猫ばかり触って自分を構ってくれなくなるのでは…という不安もあるらしく、小さな声でそう呟いて)
…お坊ちゃま、寂しくなってしまいました?
(今まで、彼を第一に接してきた。自分の仕事だからそれが当然なのだが、子猫という存在が増えたことによりもしや彼は自分に構われなくなってしまうのではないかと懸念しているのではないかと考えては、わざとらしくはっとした顔を浮かべて)
…………うん、
(彼のわざとらしさに気付いておらず、見事に言い当てられたことに驚きながらも此処は素直に小さく頷いて。その後、自分は何を言ってるんだ、とハッとして「…、別に」ともう遅い言い訳を呟くと、彼からふいと視線を背け)
いつからそんな甘えたになられたんです、
(まさかそんな素直に頷かれるなんて、拍子抜けしたような気の抜けた顔を彼に向けたのも一瞬のこと。もう遅いであろう言い訳を発した彼の頭を撫でながら、からかうように「よしよし」と繰り返し)
……むぅ、
(からかいに何か言い返したそうに彼を見つめるが、撫でるのは止めて欲しくないため、俯いて小さく声を洩らすだけで。もう19だというのに未だに撫でられることが嬉しいなんて自分でも子供じみているとは思うが、好きなものは好きだから仕方ない、と治す気もないらしく)
子猫とそう大差ないですね、
(ずっと彼の隣にいたのだ、撫でられるのが好きだなんてもうお見通しである。それでも彼にそれを直接言わないのは、まだ彼をからかっ底からで。口から出た嫌味とは裏腹に彼を見つめる顔は優しく、)
僕は猫じゃない……
(撫でられながらもそう反論し、猫扱いされ多少不満そうに彼を見つめ返し。自分が撫でられてばかりで何か寂しいものがあったのか、今度はスピネを撫で始め)
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