執事 2020-07-30 19:43:59 |
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黙っていれば可愛いのに、
(面白いほどこてりとすぐに寝てしまった彼に、思わず苦笑いが漏れ。背中をさすっていた手をそっと離し、彼の髪をさらさらと手櫛で梳かしてやり。いつも生意気ばかりを零す口を指で撫で、「おやすみ」と小さく呟けば自分も眠り、)
(朝、いつもよりも早く目が覚めてしまった。ベッドから起き上がって、カーテンの隙間から微かに漏れる陽の光を浴びて大きく伸びをすれば、いそいそと毛布から出て)
_おはようございます、
(彼より一足先に目を覚ましており、これから来るであろう子猫のためにもふもふの小さめ猫用ベッドを用意していて。旦那様から既に子猫は手配済みだと連絡は受けていて、)
おはよう、
(ご機嫌で彼に挨拶を返す。彼の準備している猫のベッドを見つけると、なんだかんだ自分と同じくらい彼も楽しみなんじゃないか、とくすりと笑い)
ほら、早く着替えてください
(お楽しみはもう来ていますから、と付け足しながら杖を一振。ミントを浮かべた洗面器に水を張り、と同時にタンスから彼の今日の服を取り出して。猫のベッドとトイレと、餌と水は彼に出させよう、そこまで算段付ければ彼が着替えるのを待ち、)
(たった一つ楽しみがあるだけで、いつもとは別人のような速さで着替え終え。顔を洗うのも済ませると、準備万端で彼の方へ向かい)
よし、ヴィラ!できた!
おはようございます、旦那様
(彼を連れ、旦那様の部屋のドアを軽くノックして。失礼します、そう言い終わった後にドアを開け。部屋の中に子猫は見当たらないが、旦那様が持っているのだろうか、)
おはよう父さん、
(彼の後に続いて部屋に入り、待ちきれない、と何か言いたげな瞳で父親を見つめる。父親はそれを察したらしく、側にあった蓋付きバスケットを手渡され。ずっしりとした重みに、仄かな温かさを感じ、緊張からかドキドキと自身の心臓も鳴っており)
……小さい、
(恐る恐る、バスケットの蓋を開ける。そこには柔らかなそうなタオルケットの上に小さな子猫が座っていて。こんなに小さいだなんて思っていなかった、思わず素直な感想が漏れ出し)
……かわ、いい…
(バスケットの中から顔を覗かせる子猫の顔に、瞬時に言葉が出てこず。きゅんと心を掴まれ、初めての小さな命に少し戸惑いながらもじっと見つめており)
じっとしている場合じゃないですよ、
(しばらく彼と同じようにじっと子猫を見つめていたが、ぱっと彼の肩を叩いた。「その子の親はお坊ちゃんですから」早く部屋に戻って、この子を温めた方がいいと彼に一言、)
…そうだ、
(この猫のお世話をするのは自分なのだ。彼からの言葉にハッとするとバスケットを両手で抱えて立ち上がり、父親にお礼を言った後自分の部屋へと足を進め)
失礼します、
(旦那様の手前、挨拶を雑に済ますことはできない。深く頭を下げては彼を追うように部屋を後にして。彼の隣を歩きながらバスケットを見つめ、「名前は決めました?」と弾んだ声色で問いかけ、)
まだ、
(彼の問いかけに首を横に振る。昨日あれだけ猫のことを考えていたのに、名前に関しては「実際に見てから決める」と後回しにしていた。実際バスケットを開けて目に入ってきたのは黒色の艶のある毛並みのある子。可愛さに目を奪われ、まだ名前を決める余裕もなく)
とても可愛らしいですね、
(彼の部屋のドアを開け、中に入るよう促す。艶々の黒い毛並みと、くりくりしたまんまるの瞳。可愛くて手のかかる子が、また増えてしまった。…しかし、こんな小さな命を守るのは魔法ではなく彼の手がいいだろうと、1冊の冊子を取りだして)
?ヴィラ?
(猫の入ったバスケットをそっと床に置いて。さて、これから何をするべきなのか。脳内に疑問符を浮かべていたところ、彼が本を取り出したのを見て、何をするつもりなのか尋ね)
まとめました、
(子猫なんて育てたことが無かった。さまざまな本で集めた情報を頼りに彼がわかりやすいように、子猫の育て方をまとめた冊子だと説明して。これも勉強だと、極力世話は彼にやらせるつもりらしい、)
じゃあ次は……
(流石執事、そんな事前準備をしてくれていたとは知らなかった。有難い、と感謝の気持ちを抱くのと同時に、次は何をすべきなのかを知りたいらしく彼の手元を覗き込んで)
…ご飯、が妥当でしょうね
(ぺらりと1枚めくり、手書きでまとめた項目のひとつを指でなぞる。子猫の餌はどうするべきか、彼がわかりやすいように簡潔に、しかし丁寧に纏めたひと項目を彼に指さし、)
分かった、ご飯だな
(そう聞くと一目散に部屋を出て厨房へと走る。数分後、事前に誰かが買っておいてくれたであろうキャットフードの袋と容器を両手に抱えて戻ってきて。どんっと音を立ててそれを床に置くと、「これをあげればいいんだよな?」と彼の方に視線を向け)
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