執事 2020-07-30 19:43:59 |
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ノエル、10歳…当たりだろ?
(こちらを向いた彼に指を指し、すらすらと彼の名前と年齢を当ててやった。ふん、と得意気な顔をしては彼の反応をうかがい、)
な、なんで分かったんだ……?!
(自分の口からは絶対に名乗っていない。心底驚いたように目を開き、まじまじと彼を見つめる。親から聞いた、なんて考えはこれっぽちも無いようで、ただ単純に凄い、と感心していて)
魔法が使えますからね
(中には人の心理を読み取る魔法もあると聞くが、そんなものは使っていない。しかし、杖をわざとらしく取り出して見せ。どこまで彼を騙せるかを試しているらしい)
そんなに凄い魔法……まだ僕には使えない、
(人の心を読み取る魔法…彼が取り出した杖を見て、完全にそうだと信じきった。そんな魔法自分には使えない…。凄い、と尊敬する一方で、猛烈な羨ましさもあり)
…ちょっと、俺だってまだそんな魔法使えないんだけど
(まさか彼が鵜呑みにしてしまうなんて。バツが悪そうに冗談だったと伝えれば、「出来過ぎよりできない方が良いですよ」どこか遠くを見つめながらそう呟き、彼はまだ若いのだからこれから使える可能性は充分にあるのだから気にするな、とも付けたし)
冗談……っ?!……でも──
(出来すぎよりも出来ない方がいい……?その言葉に首を傾げる。何故そんなことを言ったのだろう、しかし、彼の意味深な表情に何か察したのか口を噤み、黙ってコクリと頷き)
物を浮かせるくらいできるでしょう?
(物を浮かせたり、風を起こしたり。それくらいならできるだろうと彼を見込めば、それくらいでいいんだと1人納得し、)
?!、……ま、まぁ……
(ぎくり、なんだか妙な期待を掛けられている気がする。……実は、今まで魔法が使えたことなんてなく。「出来るに決まってる」と強がってしまったが、内心は冷や汗が止まらなく)
…ああ、ペンを置きっぱなしにしていたな、
(やけに強がっては、微妙な返事を返してきた彼にこれはもしやと勘づいて。たまたま窓の辺に置きっぱなしにしていたペンが目に止まれば、「魔法が得意なお坊ちゃま、お願いします」と彼を煽り、)
え、……うぅ、
(彼からの頼みに唖然となる。まさかこんなにも直ぐそんな事を言われるとは。しかしあれほど強がっておいてここで断るわけにはいかず。何度か杖を振るがペンはピクリとも動かない。若干涙目になりながら、半分自棄になって杖を振り下ろす。すると、ふわりとペンが浮き上がると、まるで矢の如く勢いよく飛んでいき、彼の後ろの壁へと突き刺さって)
………はあ?
(ああやっぱり使えないじゃないかと思ったその矢先、びしりと飛んできたのはあのペンで。そのまま自分の横を通り過ぎては後ろの壁に突き刺さり、おもむろに振り返れば呆れたような声が漏れ、)
えっと……
(またやってしまった。何故自分の魔法はこんなにも空回りしてしまうのか、下手をすれば怪我にも繋がりかねない。この状況を説明しようとも巧い言い訳も出てこなく。ちっとも上達しない魔法に落ち込みながら、気まずそうな表情で彼を見て)
…いじめすぎた、
(まさかここまで出来ないとは思っておらず、ペンすら浮かせない程度だと思っていたのだが。こうもできないとなると彼は本気で気にしていたに違いない、ゆっくり立ち上がってペンを拾えばそれを彼に手渡しで返せば、頭を軽く撫でてやり)
……ぅぐ、もっと…うまく、なりたいっ……ひぅ……っ
(出来ないだけならまだしも、魔法が制御できずに勝手に暴走してしまうのだ。今の自分ではどうにもならない、じわりと目の端に涙を浮かべ、それが零れないようにぷるぷる我慢していたが、彼から撫でられたことでそのストッパーが外れた。上手く出来ないもどかしさ、悔しさで大粒の涙を流し)
全く出来ない訳じゃないです、だいじょうぶ
(今回はただのペンだから、もし自分に当たったとしても軽い切り傷くらいで済んだだろう。しかしこれがもし、水や土、あるいは火だったら_?ぞっ、と背筋が冷え、悪夢が蘇る。涙を流す彼を見てははっとして、自分のような思いをさせたくないその一心で)
私が付き合います、魔法の練習
……ありがとう、っ
(彼の口から出てきた優しい一言、初対面の刺々しい感じではなく、純粋な優しさが感じられた。いつの間にか警戒心は殆ど溶けていて、一生懸命涙を拭いながらお礼を伝え)
まあ、私の管理能力も疑われるのでね
(つん、と澄ました顔を崩さずそう呟く。素直にありがとうございます、と言うのは気が引けてしまったのはまだまだ自分も子供だからだろうか。警戒心と彼に対する苛立ちが消えた今、この人なら自分の命をかけても良い、なんて思いが芽生えだし)
僕もがんばる、から……
(泣きはらして若干赤い瞳で彼を見上げる。鼻声でほう宣言しては、先程までのピリピリとした関係が嘘のように、くしゃりと笑って見せ)
はいはい、がんばれよ、
(ポケットからハンカチを取り出して、彼の目元を拭う。これから彼が魔法を使えるようになるまで、困難なことになるのは目に見えていたが、それもいいかと彼の笑顔につられて笑い、)
……その、最初は嫌いとか言ってごめんなさい
(こうしてお互い笑いあった後、ハッとした表情になり彼の瞳を見る。ここら辺はしっかりケジメをつけて謝っておきたいらしい。気を付けの姿勢になると申し訳なさそうに頭を下げて)
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