執事 2020-07-30 19:43:59 |
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_おや、綺麗に咲いてますね
(いつか、時が来ればその時は付きっきりの自分はいらなくなるだろう。それが彼が国を治める頂点になった時か、その後かはわからないが。それをわかっていながら、彼のそばにいるのが自分の存在意義なのだから。手を引かれたその先、綺麗に咲いている薔薇に触れて、)
──そうだな、
(薔薇の近くへ顔を近付け、香りを堪能する。チラッと横を見ると、薔薇と執事の綺麗な画が。思わず見惚れて、頬がほんのり赤く染まって。更にそこに薔薇の良い香り。ふにゃりと顔を綻ばせ、彼の方を向いて笑いかけて)
画になりますね、
(薔薇の良い香りと、紅の色をした薔薇の花びら。みずみずしく咲いたそれは彼の美しさをより際立たせていた。思わず見とれてしまい、こちらに笑いかけた彼と噛み合わぬ会話をしてしまう、)
それはお前も同じだろ
(丁度自分が考えていたことを彼の口から聞くとは。思考がそっちに引っ張られているらしく、自分が何と返答するかを考える前に、ほぼ反射的に言葉が出てきて。)
………ッは?
(今なんて? 目が悪いにも程がある。
お前も同じ、つまり自分も画になるということか。そんなこと言われたことがなくて、わかりやすく動揺してしまう。頭には?が浮かんだまま、彼の顔を見つめたままフリーズしており、)
何をそこまで驚いている?お前、耳は悪くなかっただろ?
(挙動不審になった彼をきょとんとした瞳で見つめて口を開く。まるでいつもの彼のように、嫌味とまではいかないが、皮肉を効かせた言葉を声に出して)
驚きますよ、私だって
(まるで自分は驚かない人間だというような彼の言い草に首を傾げて。全く彼は自分を何だと思っているのだろうか。溜息をひとつついた後、「そんなに私が驚いたのが意外でしたか?」と態と悲しげな表情を見せて)
ち、違っ──
(少し彼をからかってやろうと口にした言葉だったが、彼のことを傷付けてしまったのではないか。彼は自分ほど喜怒哀楽が激しくないのは分かっているが、勿論驚かない人間だとは思っていない。焦りか慌てて早口でフォローするような言葉を掛け)
…やはりまだまだ、おこちゃまですね
(慌てて自分が放った言葉を訂正する彼に、ふん、と鼻を鳴らして笑ってみせる。
わざとらしく目を伏せ、足元に視線を落としながら暗い雰囲気を出す。これに頭を下げるのを付け加えたら、どうしても先方に謝らなければならないと気に使う態度そのものである。本気か否か、彼は見抜けなかったようで、打って変わった表情で彼の頬を撫で)
……うぅ
(人の嘘を見抜くのは苦手だ。今までに何度か彼にそうやって騙されたことはあるが、悉くその嘘を鵜呑みにして綺麗に引っ掛かってしまう。今回だって初めてではないにせよ、何度も同じように騙されてしまうのは彼に対して絶対的な信頼を置いているからだろうか。なんにせよ、本当に彼が傷ついている訳ではなくて良かった。安堵の溜め息をつきながら、騙されたこと自体は悔しいのか少し頬を膨らませて)
いつになったら見抜けますかねぇ…
(自分がこれくらいで傷つくわけがないだろう、そんなに軟弱だと思ってもらっては困る。
安心したような表情を彼は見せたものの、騙されたこと自体はあまり良く思っていないようだ。頬を含まらせる彼に上記を呟けば楽し気にくすくす笑い)
もう騙されないからな…っ
(ぷくりと頬を膨らませたまま、決意したようにそう呟いて。しかし、その決意もきっとすぐ忘れてしまい、また騙されることになるだろう。そこが自分の甘いところ、本人は勿論気付いておらず)
私に騙されない日がくるのを、楽しみにしてます
(自分のどこが悪いのかを、彼は全く気づいていない様子だった。それに気づくのはいつになるのやら、楽しみだと思えば彼の頭を撫でて)
撫でれば許される訳じゃないんだからな…っ
(暫く拗ねていようかと思っていたが、頭を撫でられれば、先程までの怒りが段々と治まっていき笑顔が溢れる。口ではそんなことを言っているが、結局それで簡単に許してしまい。たったそれだけで機嫌が良くなるとは、自分でも単純だとは実感しているのだが、嬉しいのだから仕方ないとも思っていて)
はいはい、
(単純に変わりはないが、そんな反応がかわいらしい。撫でていた手を離せば普段、彼の前以外での仕事中は張り詰めた空気を纏っているものの、それが抜けたのか安心しているのか、ふわりとひとつ欠伸をこぼし)
……お疲れ様
(普段なかなか見ることの無い彼の欠伸。やはり、表には出さないだけで彼も疲れているんだと察して。だからこそ、今日だけでものんびりゆっくりしてほしい。結果的に、昼間の間は彼は街に出掛けてしまったため、一日中ゆっくり、はもう難しいが。残された時間、彼にとっていい時間になるよう願いつつ背中にぽんと手を当て)
外で寝たら、気持ちいいでしょうか
(背中にぽん、と当てられた手が心地よい。柔らかなあたたかさと、彼の気持ちが流れてくるようで。それに感化されたのか、ガーデンテラスのような場所を見つけては普段なら言わないようなことを口にし)
……一緒に寝るか?
(その言葉を聞いて少し考え込んだ後、そう呟く。いつもは二人別々の部屋で寝ているため、二人で寝る、なんて幼少期以来だろうか。折角の記念日、こんな日があってもいいだろうと彼に問い掛け)
お言葉に甘えても?
(外で寝るなんて、なんて無防備な真似だろうか。しかし手入れされた庭と香る薔薇の匂い、柔らかな日差しに日頃、自分でも気づかなかった疲れが溶け出していくようで、彼の誘いに素直に乗って、)
……決まりだな
(その返答に笑みを浮かべ、使用人の一人を呼び寄せると、毛布などの簡単な寝具を準備するように指示を出す。暫くして、戻ってきた使用人からそれを受け取ると、行くぞ、と視線でガーデンテラスの方を差し)
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