執事 2020-07-30 19:43:59 |
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ありがとうございます、お坊ちゃん。…本当に、助かりました
(ベッドから降りても、彼は一向に目を覚まさない。すやすやと眠る彼の寝顔、その頬を優しく人差し指で撫で、起こさないよう小声で上記を呟いた。病人の世話なんて慣れないことをしたからか、疲れきってしまったのだろう。本来ならばもう起きる時間だが今日は特別。"自分の身支度がまだだから、起こしに行くのが遅れた"という理由にしておいて、彼をまだ暫く寝かせることにしておいた。顔を洗い終え、杖を1振りすればあっ、という間にいつもの服を身に纏った姿が出来上がり、)
……あれ、
(あれから数分後、うっすらと瞳を開くと彼が寝ていた場所に視線を向ける。そこには既に彼の姿はなく、空っぽのベッドがひとつ。驚きで勢いよく顔を上げると、その勢いのまま立ち上がる。寝癖の付いた頭で寝起きの眼を擦りながら、部屋を彷徨いて彼の姿を探し)
おや、朝から落ち着きがありませんねぇ
(それから、彼を起こさないようにして部屋を後にした。少し遅めの朝食をワゴンに載せてころころと運んできては、とんとんと彼の部屋のドアをノックしてからドアを開け。どうやら彼は自分が部屋を後にしたあとで目を覚ましたらしい。まだ眠たげな目をしながら部屋の中を彷徨う彼に、首を傾げて)
っ?!お前……もう身体は大丈夫なのか?
(ノックの音に気が付かなかったのか、突然背後から聞こえてきた声に驚いてびくりと肩を震わせる。お陰で眠気は吹き飛んだ。振り返るとそこにはいつもの彼の姿。顔色は随分良くなっているが、まだ病み上がりであろう、なのに朝から執務とは…。幾つか心配が残る中そう問い掛け)
私を誰だとお思いで? _そう何日も引きずるような歳じゃありません
(いつものように、口から出た言葉は毒ばかり。とはいえ昨日彼が看病してくれたおかげである。昨日の彼のおかげで、治りも早かったのだ。焼きたてのクロワッサンに温かいスープ、それにベリーのスムージー。早く食べないと味が落ちますと彼を急かしつつ杖を振れば朝食がひとりでにテーブルの上へ座っていき、)
……念のため聞いただけだ
(いつも通りの彼の対応。やはりその言葉ひとつひとつに含まれる毒は健在で、どうやら自分の心配は杞憂に終わったようだ。此処で変に反論しても、また上手い返しで毒を吐かれるだけとこれ以上は言及しないこととして大人しく席に着く。素直になればいいものを…と彼を横目で見つつ、もそもそとクロワッサンを口に運び)
言葉にしなければ分かりませんねぇ
(何か言いたげな彼に、大袈裟なほど困ったように眉を寄せておやおや、と肩竦め。彼が朝食を食べているうちに今日の服を用意しようと、杖を一振り。クローゼットから生きているかのように服がひとりでに動き出し、ベッドの上に畳まれた状態で座った。この前の体調不良が嘘のように完璧な魔法だ、風邪であそこまで不調になるのかと自分でも不思議なほどだ、)
(/いつもお相手ありがとうございます、!!
この後何かしたいなどありますかね…?何しようかなって…)
(彼の含みのある言い方に、自分の気持ちなんて言葉にしなくたって本当は全て読まれているんじゃないかという気になってくる。これ以上の言及を許さないよう「うるさい」と一蹴すると、残り一欠片のクロワッサンをスープで流し込み、スムージーを飲み干したところで朝食を終え。机を離れ、横目で彼を見ながらベッドの着替えに手を掛けた)
(/此方こそいつもお世話になっております…!
そうですね……時期的にクリスマスなんて如何でしょう?)
…冷え込んできましたから、風邪をひかないように。
(一蹴されてしまい、これまたわざとらしく口元に手を当て目を見開きつつ、「ついついこの口が」なんて思っても見ないことをさらりと口にして。
彼の食べ終わった皿を片付けつつ、ふと窓を見れば外は非常に寒そうな空をしていて、彼を労わるように一言忠告し。もちろん彼の心配をしているから出た言葉なのだが。サービスワゴンに全ての皿を乗せ終え、にこりと笑みを浮かべては彼に一言、)
これ以上私の仕事が増えたら、堪ったものではありませんので
(/クリスマス…!! いいですね、そうしましょうか!
クリスマスケーキを手作り、なんてどうですか?材料買う所から一緒に行くのも楽しそうで…!)
言われなくても分かってる、
(口では了承しているものの、つい昨日寝込んでいた人間に言われたくはない、と若干不満気に眉を寄せ。
彼の用意した服に身を包みつつ、自身に向けられた皮肉気味の言葉は聞き慣れたかのように一度受け流すが、どこか腑に落ちない点があったらしく追加で一言)
僕より、まずは自分の体調を心配するんだな
(/それは名案……!大賛成です、是非やりましょう!
切り替えのタイミングに関してはお任せしても宜しいでしょうか…?)
有難いお言葉、肝に銘じておきます
(昨日まで寝込んでいた、彼の看病がなければ今日も寝込んでいたかもしれない自分にとってその言葉は耳に痛いものがあった。珍しく素直に頷きつつ、思わず苦笑いを零して軽く頭を下げ。
手帳を取り出し、今日の予定が特にないことを確認して手帳を閉じようとした手を止め、)
おや。今週末がもうクリスマスですか
(/お返事お待たせしてしまい申し訳ございません!
ちょっと強引な気がしますが、ここで切り替えました)
今年は何が貰えるんだろうな…!
(去年は音楽プレーヤーと、今も自身の胸元で揺れているループタイを貰った。彼の発した「クリスマス」という単語に反応しきらきら瞳を輝かせると、今年もサンタさんが来てくれる筈、そんな期待を込めた視線を向け)
(/こちらこそ反応遅れてしまい申し訳ないです…!
場面転換助かりました!)
クリスマスまででも、成長してくれると非常に助かるのですが…夢のまた夢、でしょうね
(サンタさんなんて存在を信じ、今年のプレゼントに期待を膨らませる彼の素直さに緩く微笑んだのを、上記の嫌味で誤魔化して。どうせ噛み付いてくるはずだから、…少しからかってやろうとはっとした表情と、わざとらしく大袈裟に言ってみせ)
坊ちゃん、実は…その。今年のクリマスケーキ、私たちで作らなければいけないことをいま、思い出しました
(/大丈夫です~!お返事ありがとうございます!)
(普段なら「自分はもう既に成長している」だの「勝手に決めつけるな」だの何かしら反論するはずの彼からの嫌味も、クリスマスという一大イベントを前にすると全く耳に入ってきていないようだ……ったのだが、その後に続く彼の言葉に耳を疑う。例年なら街の洋菓子店で買ってくるなり、料理人に作らせたりとケーキに困ることは無かった筈なのだが。……それにケーキなんて作ったことがない。何故?と疑問符が脳内を埋め尽くすと同時に、彼の口調やはっとした表情も相まって自然と焦りが芽生え始め)
ど、どうするヴィラ!クリスマスまでもう一週間も無いんだぞ!
はい。…ですので、作りますよ。いいですね?
坊ちゃんでも作れるように、シンプルなものにしましょうか
(彼が楽しみにしているクリスマスケーキの用意を忘れるなんて、そんな失態自分はしない。なので先程の自分の発言はちょっとしたからかいのつもり、ケーキはあるから安心するよう言うつもり…だったのだが、あまりにも焦りまくる彼の姿を見、このまま手作りするのも悪くない、にやり、と笑って実行する事を決め。焦る彼に落ち着きなさいと言うかのように杖を振れば、シンプルなショートケーキ、チョコレートケーキ、それにブッシュドノエルのレシピがふわふわと宙を浮き)
どれが食べたいですか? _好きなものを、手に取ってください
(突如現れた宙に浮く3つのレシピ。好きなものを選んでいいと言われたものの、さてどうしようか。折角のイベント事、やはりクリスマスらしいケーキを食べたいものだ。ショートケーキやチョコレートケーキも捨て難いが誕生日ケーキの際に代用できる。となるとやはり……。暫く思考を巡らせた後、ブッシュドノエルのレシピに手を伸ばし)
…これにする。僕でも作れるんだよな?
ええ、勿論。1人で作らせる訳ではありませんし、私が隣に着くので…ご安心ください
(彼にレシピが選ばれると、ほかの選ばれ無かったものはぽんぽんと消えていき。ショートケーキかチョコレートのどちらかを選ぶとばかり思っていたがブッシュドノエルとは。大人になったのか、自分が彼のことをまだまだ子供だと思いすぎていたのか。くすり、と口角を上げて笑ったのも束の間、僕でも作れるかとの彼の問いに、まさか1人で全部作るつもりだったのかとわざとらしく驚いた様子をして、)
僕はもう子供じゃない、お前は見てるだけで十分かもな
(執事という立場上、自分一人で何かさせることはないと分かってはいたのだが、改めて彼が傍につくと伝えられて安心したのも事実。思わず安堵の息が漏れるが、それを彼から指摘され、からかわれることは目に見えていた。誤魔化すようぶんぶんと首を振り、彼の手を借りることなく完成させると強がって見せ)
…では、ご自分の力で完成させてみますか? そこまで言われるなら、さぞ綺麗なケーキが出来上がることでしょうから。ねえ?
(最初から彼にできることはやらせ、まだ難しい所は自分が手伝うつもりでいた…のだが。ただからかっただけなのにそんなに反応されるとは思っていなくて。気が変わりました、とでもいうように首を振って彼を試すように見つめると、軽く笑いながら首を傾げ)
(“また何時もの強がりですか”そう軽くあしらわれて終わる――筈だったのに。彼の口から飛び出した想定外の発言に思わず言葉が詰まる。此方へと向けられた視線はどこか挑戦的に感じ、今更冗談だと言い出せる空気でもない。となれば残る手段はひとつ、覚悟を決めたように小さく頷けば彼の腕を引いて調理場へ)
あ、当たり前だろう!…ほら、早くしないと間に合わない
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