男子高校生 2020-07-29 14:18:37 |
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蒼、おはようございます、入っても大丈夫ですか?
(あれから4年の歳月が流れ、毎日のように通う彼の病室の前、あの頃のように無遠慮にドアを開けて中へと押し入るようなことはせずドアをきちんとノックをして中にいるであろう彼へとまず声をかけて返事を待って)
(/こんな感じで始めさせていただきました!)
おはよう、縁。入っていいよ
(聞き慣れたノックのリズムで、彼女が来たことは直ぐに判った。あの時をきっかけとしてから“念のため”と付けられていた酸素マスクを外すと、そう返事をして)
(/OKです、完璧です!ありがとうございます……!)
お邪魔します、今日はお加減はどうですか?
(ドアを開けて律儀にも小さくお辞儀をしてからベッド脇へとゆっくりやってきて、彼の顔を見れば柔和な笑顔浮かべゆるりと首を傾げ、毎回恒例となっている質問を投げかけ)
元気。そろそろ縁が来る頃だと思ったよ
(いつもの質問に、いつもの答えを返す。彼女に心配をかけさせないため、いつの日からかこの問いには自分の体調が余程酷くない限りは“元気”、と答えるようにしている。実際今日も、そこまで体調が良いわけでは無いのだが、自分に向けられた笑顔に応えるように微笑んで彼女を迎え)
本当ですか?まるで心が通じ合っているようで嬉しいですね
(彼の思惑など知らず元気という答えに安堵すれば、自分の来訪をまるで予めわかっていたとでも言わんばかりの発言になんだか嬉しくなって胸元で両手をぽむと合わせれば声を弾ませて「この調子で外出の許可や一時帰宅の許可も貰えたら嬉しいのですが…」体調がいい日は続いているようだが、それでも相変わらずこの病室が彼の生活の中心であることに声に一抹の寂しさを滲ませて呟き)
……そうだね、
__あ、ねぇねぇ縁!これ読んだことある?
(今の身体の状態で許可が貰えるなんて、ほぼ有り得ないということは判っている。が、それを態々口にしてもこのあたたかい雰囲気を悪くするだけだ。あの頃のように、もう一度二人で出掛けたら楽しいだろうな、と思いを馳せながら僅かな望みをかけてそう答え。そして話を逸らすように相手の名前を呼んで、表紙に魔女のイラストが描かれている一冊の文庫本を取り出すと、それを見せて)
いえ、その本は初めて見ました。どのようなお話しなんでしょうか?
(病室ではもっぱら本を読んでいることの多い彼のことをより深く理解するためこの4年間で外に出て遊んだりするよりも読書に耽る機会も増えていたが、それでも彼が見せてきた本はまだ自分が手に取ったことのないもので興味深そうに本の表紙のイラストに顔を寄せて問いかけ)
女の人が交通事故に巻き込まれたことで魔力を持って、魔法が使えるようになる話。周りの人に正体を話しちゃいけないんだけど、主人公はお人好しだから、困っている人がいたらすぐに助けちゃってね__
(興味を持ってもらえたことが嬉しく、嬉々としてあらすじを説明する。今夢中になっている本の一つで、所謂現代ファンタジーというものだ。魔法を自分のためだけではなく人のためにも使う主人公に憧れを示すように「こうやって魔法が使えたら、すっごく楽しそうだし、立派だと思う」と呟いて)
そうですね、私もその主人公の気持ちはとてもわかります、楽しそうとか立派とは違うかもしれませんが自分の力が誰かの幸せになるのなら私はやっぱりとても嬉しいなと思うんです、それが大事な人なら特に…
(生き生きと語るその様子からよっぽど彼はその作品が気に入ったらしい、ただそんな彼の様子を見ているだけで嬉しいような気持ちになっていたがその作品の主人公にどこか親近感と共感を覚えれば、神妙な面持ちで彼の考えにそう相槌をうって)
でね、今日、病院の図書館にその新作が入るんだって!
……ねぇ縁、一緒に行かない?
(その本の魅力を語り終え、彼女にもそれが伝わったであろうところで本題に入る。要約すると、病院内の図書館にその本を借りに行きたいから付き合ってほしい、ということだ。担当医の許可は貰っていないが、まあなんとかなるだろうと幼馴染みを誘って、ベッドから降りようとして)
新作を読みたい蒼の気持ちはわかります。ですが先生の許可を貰ってからでないと…
(ちょっとぐらいならだとかバレなければ大丈夫という考えがどれだけ甘いものだったのかを実感したあの日のことを思えばとても軽い気持ちで了承は出来ず、彼の要望へと応えられないことにもどかしさを覚えて申し訳なさげに声のトーンを落とし「あの、私が代わりに借りてくるのではいけませんか?」彼がわざわざ一緒にと言った以上こんな妥協案には乗ってこないだろうとは思いながらも念の為そう尋ねて)
えぇー……、っ
わかった、じゃあお願いしていい?
(不満そうに反論する途中、顔には出さないが、少し呼吸が苦しくなって。彼女に自分が苦しむ様子を見せたくないのと、あの時のこともあるため、ここは大人しく病室で待っているのが吉だろうと、彼女の言葉に対し素直に頷き)
……やっぱり一緒に行きましょうか?病院内ならお咎めも少なくて済むでしょうから
(それほど聞き分けがない方ではないのは昔からそうだが、それでも少しも食い下がろうとせず素直に引き下がった相手には少しだけ違和感を覚えて、これまでの経験上こういう時の彼は本当に体調が良くなくて我儘をいえば迷惑をかけるかもしれないと自覚しているのだろうと推測をして、そっと自然な動作で彼の手に自身の手を重ねると4年前に備わった不思議な力を発現させ、痛みをその身に受けるとやはり不調があったのだと本音で話してくれない彼に悲しい気持ちになるがこれぐらいの痛みにはもう表情一つ動かないぐらいには力の扱いに慣れてしまっている自分がいて。何はともあれこれで一時的とはいえ彼の身を脅かすような不調は無くなったはずで、図書館に行く程度であれば危険はないだろうと誘い直し)
あ……、いいの?やった!
(彼女の手が自分に触れた途端、ふっと身体が軽くなる。そのことに気付くと思わず声を洩らし。しかし本人は何故急に痛みが消えたかなどは全く見当が付いておらず。数年前からか、こんなことはよくあったが、これも病気の気紛れだろうと勝手に納得することとしている。まあ、今朝からあった怠さが嘘のように消え、一瞬のうちに体調が良くなっていたのは確か。そこに来た、病院内を動くことに否定的だった筈の彼女からのお誘い。体調も復活したことだからそれには満面の笑みで頷いて喜ぶと、ベッドから降りると病室から廊下へと繋がるドアへ向かい)
はい、ですが騒ぎになってはいけませんから出来るだけ目につかないようにこっそり迅速に、ですよ
(足早に病室の出口へと向かった相手に追いつき、隣へと寄り添いその顔を見上げれば己の口元に人差し指を立て、ふわっと微笑めば小さく身を竦めて悪戯っ子のようにそう言ってのけて)
わかってる、
(彼女の言葉にこくりと頷いて返事をする。幼馴染みの手を引いて廊下を進み、あっという間に目的の場所、図書館へと到着。お目当ての新刊は入り口近くに数冊並べられており、迷うことなく見つけることが出来た。早速カウンターで貸し出しの手続きを済ませると、彼女に向かって「付き合ってくれてありがとね」と感謝の気持ちを伝え)
どういたしまして、蒼が喜んでくれて私もとても嬉しいです
(彼の真っ直ぐな感謝の言葉に胸の奥がじんわりと暖かくなるような感じがして、喜んでくれることが嬉しいと飾らない言葉でこちらも満面の笑みで伝えて「蒼が今夢中になってる本、私も読んでみたくなりました」新刊が入るからと図書館まで足を運ぶ程なのだからやはりよっぽど面白いのだろうなと考え、自分も読んでみたいと関心を示して)
じゃあ、僕の本貸すよ!
(彼女の口から出てきた読んでみたいという言葉が嬉しく、声のトーンがひとつ上がると目を輝かせて。つい熱くなって「縁も気に入ると思う」などと再び語りだし。しかし、途中ではっと我に返ったのか「そろそろ戻ろっか」と彼女の顔を見て微笑みかけ)
まあっ、いいのですか?とても楽しみです、それではお部屋へ戻りましょう
(そこですかさず自分の本を貸すと言ってくれるのが彼の優しさで、新しい本の世界に触れることへの期待と彼の優しさに触れた喜びとで心なしかはしゃいだ様子で彼の手をとって軽くぷらぷらと揺らして)
______
(二人で部屋に戻ってくると、机の上に一枚の紙が置いてあり。それを手に取って内容を確認すると、次回の診察について書かれていて)
、明日診察入ってたんだった
(診察のことをすっかり忘れていたようで、思い出したように納得するとそう呟いて)
(/少しシリアス含むイベントを考えているのですが、如何でしょう?
イメージ的には、診察で、最近の体調不良の原因は肺が炎症起こしてたからだと判って……みたいなもので、後の余命宣告にも繋げられたらと考えています)
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