酒井 2020-07-23 16:24:32 |
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わざわざ「嫌がる事はしない」って言うあたりがお人好しだよなぁ、お前。…大丈夫だ、ちゃんとわかってる。お前のそういう、なんだかんだで甘いとこにも惚れてんだ。
さあ、なんでだろうな?言っておくが、そういう性格だから、ってだけじゃねーぞ。
いいに決まってんだろ。俺の方こそ、積極的に決められなくて悪い。お前とやるなら全部楽しそうだと思っちまってな。
そう言ってもらえんのは嬉しいが…。合わねぇ時はマジで無理すんなよ。過保護かもしれねーけど、心配なんだ。
あ、わりぃ。普通そっちだよな。…お前がいいなら犯人同士の設定で進めようと思うが、大丈夫か?
色々と固まってきたな。他に決めとく事とかあるか?
特に無ければそろそろ始めようぜ。…と言いつつ、『殺人鬼』で『一目惚れ』っつーと、どうも特殊な場面しか思い浮かばねぇ。一応こっちからも案は出してみるが、もしお前が考えてた展開があるならそっちを優先してくれ。
『 1:互いに相手は一般人だと思っている犯人達
たった一度すれ違っただけで、こうも記憶に残る存在がかつていただろうか。…先日隣室に越してきた男、名前すら知らない相手の顔を、昨日から何度も思い出している。
初対面なのに妙に親近感が湧くというか、他人の気がしないというか。もしや、これが──…。
小っ恥ずかしいその結論は、殺人鬼である自分にはあまりにも似合わない。思考を打ち切りソファーから腰を上げた時、まるで示し合わせたようにインターホンが鳴った。 』
『 2:初めて人を殺めた男と、連続殺人犯
深夜、血溜まりを挟んで男と向かい合う。思わぬ目撃者に動揺しているのか、やけに落ち着いている自分を不審に思っているのか、長い沈黙が続いていた。
やがて月明かりに照らされ、男の輪郭がくっきりと浮かび上がる。…ここで捨て置くのは惜しい。返り血に塗れた男を見て、何故か強くそう思った。
証拠隠滅なら慣れたもの。彼を自宅に匿ったら、すべて無かった事にしよう。その代わり…さて、何を要求しようか。 』
『 3:攫われた凶悪犯と、何も知らない犯人
目を覚ますと、見知らぬ場所にいた。柔らかいベッドから体を起こし、周囲を見回す。…上等な家具が並ぶ洒落た部屋。しかし窓は無く、部屋に不釣り合いな鉄扉は所々が錆びている。何による錆かは、経験から悟った。
拘束は片足だけ。どう返り討ちにするか算段を立てていれば、重々しい音と共に扉が開かれる。あぁ、困った。──犯人、めちゃくちゃ好みだ。
作戦変更。ただの被害者を装うにしろ、反撃するにしろ、まずは会話を試みよう。 』
好きな奴には優しくしたいと思うのが当たり前だろう、?だが…お人好しか、そんな自覚は無いんだがな…それに、そんなに惚れてるだの言われたら自惚れてしまいそうだ。
いいや、寧ろ押し付けてしまった様な此方ばかりが選んでしまった様で申し訳ない、、君と一緒に出来る、と考えるとどうしてもヒートアップしてしまう。
心配は要らない、、ふふ、そう言う過保護でストレートな所好きだぞ。
いや、いや、、謝ることでは無い、寧ろ称賛したい。犯人同士の設定で問題ない、、一目惚れ、も了解した。…と言うか凄いな…これだけ考えてくれたのか、、!そう言うところも好きだ、、頑張ってくれたのか、と抱きしめたくなる。感謝しなければな、ありがとうを何回言っても足りないくらいだ。この中から選ぶ、となると…全てが好み過ぎてどうしても迷ってしまうな、、、二つ返しても構わないか?どちらか一方は切ってくれて構わない。
「2:ナイフを握り直し血溜まりに倒れ伏した人間の皮を被った獣を見下ろす。殺してやった…という感覚が満ちていくと同時に血という血が逆流する、高揚か不安か恐怖か、似ても似つかない感情が脳をグルグルと駆け巡っている。荒い呼吸を沈めるも煩いぐらいに高なった心臓は中々治ってくれない。「あ」顔を拭い視線を目の前へと上げると思わず声が漏れた。我ながら間抜けな声だ。目の前に男が立っている、此方をじっと見つめている。暗く見えないが自分と同じかそれよりも若いだろう。不味い。一瞬、今度は全身の血が引いていくような感覚がしたがすぐに治る。そしてもう一度、あの全身の血が逆流するような。相手が口を開く前に血溜まりのこちら側へグイ、と腕を引く「……今日見た事は誰にも、言うんじゃない。」呼吸がどんどん荒くなり心臓が派手にノックしている。一人も二人も同じ、だと思っているのだが中々手が出ない。当たり前だ、コイツは一般人、なんの罪もない男なのだ。出来る事なら見逃したい、そんな気持ちで相手の首元へとナイフを突きつけた。」
「3:目の前から歩いて来たコイツは、失恋の自棄酒でも煽っていたのだろうか、覚束無い足取りだった。ただの酔っ払いであれば気にも留めなかったが、その男は一瞬で俺の心を奪った。甘い顔立ちは酒に当てられほんのり赤く潤んだ瞳はそれに見合わず妖艶だった。その表情は幼くも見え、ふらふらとした足取りさえとても愛おしく見えた。あぁ、駄目だ。いつの間にか俺はその男に惹きつけられ、今こんな監禁の真似事の様なものをしている。彼が人気のない、如何にも拉致られやすいような道を歩いていたのが更に悪かった。
自室で準備を終え、相手が眠っているであろう部屋へと降りていく。
「あぁ、起きていたのか」扉を開けると彼と目が合った。眠っているだろうと思い込んでいただけに少々驚いたが、近づき、鎖が届かない位置で止まる。そして「調子はどうだ」と続けた。拉致の仕方もあるが、それ以前に彼の足取りが覚束なかった事もあったから、だ。皮肉では無い。」
幾らでも自惚れてくれていいぜ。お前が思ってるより何倍も、何十倍も、俺はお前が好きだしな。
最終的にそれがいいって決めたのは俺だ。だから押し付けられたなんて微塵も思ってねーし、気にすんな。
あー、やめろやめろ。今思うと我ながら張り切りすぎてて恥ずかしいんだよ。……どっちにも返したいとこだが、今回は『2』の設定で続けようと思う。もし絡みにくかったり、不都合があれば言ってくれ。すぐ直す。
(必死に平静を保とうとするその姿にぞくりとした。笑みを浮かべそうになる唇を密かに引き結ぶ。目の前の男にならば殺されてやるのも吝かではないが、誰かのついでとなれば話は別である。腕を引かれ、間合いに入ったのをいいことに蹴り飛ばそうとして、…耳を疑った。思わず眉間に皺を寄せ「はぁ?」と声に出す。誰にも言うな。つまり、他言しなければ手出しはしない、と彼は言ったのだ。じっとその瞳を見つめては今度こそ楽しげに目を細め、くつくつと押し殺すように笑って。「あぁ、誰にも言わねぇ。約束する。」こうも興味を引かれる存在を、他の誰かに引き渡してやるものか。やはり彼を放っておくのは惜しい。あの時の直感が確信に変われば、腕を振り解き視線を足元に移して。出血は多いが何の変哲もない、至って普通の惨状だ。この程度の処理であれば目を瞑っていたって問題ない。ともあれ、まずは相手の後ろにある道を通って自宅に戻らなければ。ぶつぶつ文句を垂れながらも躊躇なく事切れたそれを担ぎ上げる。すれ違いざま、当然ついて来るだろと言わんばかりに声を掛ければ、返事は聞かずにさっさと自宅へ向かおうとして。)
ったく、この服気に入ってたのによ。──おい、行くぞ。すぐそこが俺ん家だ。
随分と愛されているんだな俺は…嬉しいな。堪らなく愛しい気持ちで一杯になる。
恥ずかしがる君も愛しいな、何時も余裕そうだから少々…得をした様な気分だ。君の新しい表情が見れて嬉しいぞ。
怪訝そうに眉を寄せたあと今度は気でも触れたように楽しげに笑い出す彼に困惑し固まる。そうだ、と、普通こんな状況に陥れば叫んだり逃げたり震えたりするものだ。なのに、目の前の男はそんな素振りを一切見せない、混乱していた脳が徐々に冷静になっていくのが分かる。約束する、と言った彼の表情は少々茶化すようで、まるで新しい玩具を貰った子供の様に瞳は輝いていた。それはあまりよろしく無い事だ、恐れていないのであればこんな口約束はすぐに破綻する。振り解かれた腕をもう一度掴もうとした…ところで止める。目の前の彼が死体を担ぎ上げていた、一瞬何が起こったのか分からなかった。見るのでさえ躊躇するような物を平然と持ち上げ、普段友達に話しかけるかのように俺に話しかける。鈍い俺でも気がついた、こいつも普通じゃない、と。「どう言うつもりなんだ」彼の後ろから声をかけた、この死体をどうするか、分からない上このまま放っておく事もできない。掴み所のない彼の意図が分からないままついて行く。ふと、こうやって一切隠さずに運んでいるのだから本当に近いのだろうと考えるが、どうしても安心する事はできない、まだ少し手が震えていた。
わりぃ、ロルを書くペースがかなり落ちてる。休み前で立て込んでるってのもあるだろうが、単に俺の技量が落ちてんのかもしれねぇし、それともスランプになりかけてんのか…。いまいち判断しきれねぇ状態だ。
原因がはっきりしないんで何とも言えねーが、これから日を空けての返信が続く可能性も高い。…待つ側の気持ちは俺も知ってるし、無責任に待っててくれとは言わねぇ。もしお前に他の相手を探したいって気があるなら、悔しいが身を引くつもりだ。
一応、明日は時間も取れるし早けりゃ昼前には返せると思うが、先に連絡させてもらった。待たせちまってごめんな。
おはよう喜多見君……いや、この挨拶は固過ぎたか。…朝に覗いてみたら驚いた…
いいや、全然構わない、、寧ろ君の安否を確認できただけで十分だ。…君に飽きられたのではないかと半分ほど諦めていたのだが…そうか、そういう事なら了解だ。忙しいのであれば無理して返さなくとも構わない、これは仕事でも義務でも無いからな、気楽に行こう。俺はまだ君と話していたい、、安心してくれ俺は幾らでも待つ、君と縁を切るだなんてそれこそ悪夢だ。それと…身体は大丈夫か?最近は暑いからな、無理はするなよ。
幾らでも待つ……だが、……俺のロルは拙いし諄い、返すのが面倒くさかったら言ってくれ……って今更すぎるか?
ともかく俺が言いたいのは、気にしないでくれ、って事だけだ。
おう、おはよう京介。朝から会えて嬉しいぜ。…つってももう昼か。
まず、お前がこれからも俺といてくれるって聞いてホッとした。本当に、ありがとな。…それから、お前に飽きるなんて事は万が一にも有り得ねぇ。俺は一刻も早くお前に会いたかったし、ずっとお前の事ばっか考えてた。せめて返信の目処が立ってから、とかごちゃごちゃ考えてる暇があるなら、さっさと言いに来りゃよかったな。心配かけて悪かった。
おいおい、待たせた野郎の体調気遣うとかどんだけ優しいんだよ、お前。…マジで暑くて嫌になるが、体は健康そのものだ。そこは安心してほしい。──今年は流行病だの熱中症だの色々あるからな、お前も自分の事を第一に考えてくれよ。もしお前に何かあったら…って考えるだけで目眩がしそうだ。
お前とのやり取りが面倒なわけねぇだろ。魅力的な奴は描写も綺麗なんだな、って惚れ惚れしてたくらいだ。…もしかすると、お前に見合うようなロルを書こうとして空回りしてんのかもな。だとすれば情けねぇ話だが。
あぁ、ありがとう。お前と話して随分気が楽になった。こんな俺だが、改めて宜しく。
(逸る気持ちをなんとか押さえ、少しばかり歩調を弛めて相手の隣に並ぶ。にやりと片頬を引き上げれば「お前の共犯者になってやるよ。」と軽やかな調子で告げて。それに続けて何かを言う間もなく、やって来た道の突き当たり。息を潜めるように聳えるそれに一歩近づくと、カチリと小さな音を立ててポーチライトが柔らかい光を放った。木目調の扉を中心に明かりが広がり、ぼんやりと二階建ての外観が姿を現す。「マジですぐそこだったろ。」なんて冗談めかしつつ、死体がずり落ちないよう器用にバランスを保ちながらポケットを探れば鍵を取り出して。まずはじっくりと部屋で話し合えれば良いのだが、人を殺した後というのは大抵時間が無いものだ。自分で念入りに計画を立てたわけでもない、偶然出くわした事件の処理となれば尚のことである。開けた扉を行儀悪く足で広げると、そのまま振り返り。「悪いが、今は話をするより現場の片付けが先だ。そう時間はかからねぇし、お前には作業が終わるまで中にいてほしいんだが…まあ、どうしても不安ならそばにいてもいい。どうする?」共犯関係になる事そのものを断るという選択肢はさりげなく排除し、淡々と問いかける。視線を絡ませたまま小さく首を傾げては返事を促して。)
ありがとう、と言いたいのは此方の方だ。…そんなに考えてくれていた、のか、、純粋に嬉しいな。それに俺はロルを書くのも思いを文字にするのも得意では無いのでな……色々考えてしまっていた。そうか、…魅力的、か。そんな風に思われていると知れたのは、嬉しい、、これからも頑張ろう。だが、少し大袈裟だろう…そんな良いものを書いてはいないぞ、、君は妖艶で読みやすい、俺も君の様な書き方に憧れているんだ。
体調を気遣うのは当たり前だろう、、、返信
が夜遅くの時もあったからな、ちゃんと寝れているのだろうかと心配していた。君も、自分のことを第一に考えてこの夏を乗り切ってくれ、。
「…共犯者…?…何故だ、お前には何の得も無いだろう」楽しげに言い放つ相手を逆に睨んでやったのは彼の腹の中が不明瞭なせいだ。いきなり現れた奴にいきなり共犯者になってやる、と言われればきっと誰でも…いや、殺人犯なら誰でも不審に思うはずだ。重そうな荷物を持っている彼を転ばないか若干心配しつつも滴る血の後を足の裏でなぞりながら中へと入っていく。と、急に彼が後ろを振り向いた、そして彼の言葉に首を傾げる。
「…?お前のリスクの方が大きいだろう、やってもいない殺人の罪で捕まりたいのか?…余計な事はするな、、第一俺はお前の提案に乗った訳ではない。コイツを運んでくれたことに感謝はするが、それだけだ。」
彼の提案に乗ったわけでは無い、だが時間がないのは自分も分かっている。相手に自分に使うはずだったタオルを押し付ければ、外に出ようとする。その前に「ソイツは適当に外に放ってくれていて構わない。」
そう言って外へ出ると急いで先程の場所へ。
慣れている、と言うわけではないが自分も無計画でここまでやった訳ではない。第一、これを終えた後、普通の生活に戻ろうとは思っていなかったが。
お前こそ大袈裟じゃねーか?…ま、相思相愛って事で有難く受け取っておく。お前が丁寧に言葉を選んでくれてるのがわかるから、こっちも一層気合いが入るんだよな。少しでも読みやすくできてたなら何よりだ。
別に体調は崩してないから大丈夫、──ってのはさすがに無しか。わかった。お前とずっと一緒にいるためにも、夜更かしは程々にしとく。…なんつーか、よく見てくれてんだな、俺の事。
(彼に対して言葉を失うのは、これで二度目だ。戸惑う自分とは対照的に相手はすっかり気持ちを切り替えたらしい。てきぱきと引き返していく背中を思わず素直に見送ってしまった。「…あっ、おい待て!」相手が動揺している間に話を進めてしまえ。まさか此方の思惑とまったく同じ方法でやり返されるとは思わなかった。おそらく彼にそんな狙いは一切無く、ただ急いでいるだけなのだろうが。邪魔な荷物は玄関マットの上に転がしておき、慌ただしく彼を追いかける。別れたばかりの相手を見つけるのは容易く、しっかり手首を掴むと思考を鈍らせた原因…もとい、渡されたタオルをその手に握らせて。「お前、わざわざここにいた形跡残してどうすんだよ。俺を見逃そうとした時といい、こんだけ他人に甘いくせしてよく──…。」よく人殺しなんかできたな。喉まで出かかった言葉は咄嗟に飲み込んだ。僅かな気まずさを感じ手を離すと、視線を落とし小さく舌打ちして。他人に気をつかうなんてらしくない。静かに溜め息をつけば再び顔を上げ。)
…なんでもない。それより、俺が手を貸そうと思ったのは単に気になったからだ。お前に興味を引かれたから手を伸ばした、それ以外の意図はねぇ。そこは誤解しないでくれ。
相思相愛か、、何だか照れる響きだな。
無性に君を抱きしめたくなるのは何故だ…?頑張ってくれているのが凄く愛しく見えてしまう。
あぁ、今日も夜遅い…何時でも君がいい夢を見られるように祈っておく。
何だ、そう改めて言われると…少し恥ずかしくなってくる……。
彼を置いて外に出た後、クリーニング代も渡しておくべきだった、とハッとする。しかし、思い出してみるとかなり広範囲に、そして時間も結構経っているはずだ。捨てるんだろうな。一人申し訳なくなっているといきなり手を掴まれ先程別れた筈の彼の方を向かされ、タオルを返された。何故追ってきたのか、と驚いた様な顔を向ける。
途切れた言葉の先を察しては、しばらく考えた後フッと微笑んで。馬鹿にした訳では無い…筈だ。
「いや、すまない。ただ、アンタは結構強引だから、あまりそう言うのは気にしないと思っていた…」
口元の歪みを隠そうと手を当てる様は少々この場には不釣り合いかもしれない。
ただ、こんなにも真っ直ぐに見てくれる奴は初めてだった。真剣な顔付きで言われるものだから思わず引き締まる。
「なるほど…。アンタ変わっているな…」
もしかして彼も人を殺しているのではないか。なんてぼんやり考えつつも、一切譲る気はない。興味があろうが、殺人犯かもしれない男であろうが、自分が犯した罪にこれ以上巻き込ませる訳にもいかないからだ。
だが、殺人を抜きにしても、ここまで関わろうとしてくれる彼に興味が湧いてくる。案外自分も人の事は言えないものだ。
だが、、「心配してくれなくとも構わない。」
強引に何度も彼の手を振り払っている事に罪悪感を覚えたのか苦笑いを浮かべる。
後で彼と話してみよう。考えるが、時間はない。急いで自分が出来る限りの後処理を始めていった。
何故って、お前が俺のこと大好きだからだろ。抱きしめたいならそうすりゃいい。お前が相手ならいつだって、喜んで抱き返してやるよ。
ははっ、そんなのガキの頃でも言われた事ねぇな。…なあ、どうせなら添い寝でもしてくれよ。そうすりゃ確実にいい夢見られるぜ。
おう、そのつもりで言った。やっぱ照れてるお前もいいな、…かわいい。
(頑なに拒む言葉を発しておきながら、彼の唇はぎこちなく弧を描く。こちらを気遣っているのが丸わかりの不器用な笑みを向けられ、牙を抜かれたような錯覚を起こした。なんだか気の抜けた声が出てしまいそうで、悪態のひとつでもついてやろうと開きかけた口を噤む。極力他人を巻き込まないという彼の決定は今更何を言ったところで覆らないのだろう。張り合うだけ時間の無駄だと諦念の溜め息を零しては、ゆるく首を横に振って。「我を通すって時に変に遠慮してんじゃねぇよ。そこは堂々としてろ。」呆れ半分に言った声にも意図せず甘さが滲んでしまい、不満げに奥歯を噛み締めた。こちらが折れるのはいいとして、まんまと毒気を抜かれた事がなんとなく気に入らない。薄暗闇の中でも鈍く光を反射する艶やかな髪に手を伸ばせば、小さな子供にするようにくしゃくしゃと撫でて。芝居がかった仕草でふんと鼻を鳴らし「今回は俺が折れてやる。」なんて恩着せがましく言い残すとその場を離れ。)
(この件には手を出さないと決めたはいいが、このままフローリングにシミを作るのは御免だ。そう思って彼の元を離れたのがおそらく数分前。諸々の道具が置いてある部屋に死体を運び込み、黙々と後片付けをしていると、どこからともなく疑問が湧いてくる。自分が彼に対して抱いている気持ちは一体なんなのか。相手には興味を引かれているのだと伝えたが、実のところ、それだけでは今の自分の心の内を半分も表現できていないように思う。この胸の奥がチリチリと焦げるような感覚は、一目見た時から彼を求めてやまない衝動は、なんと言い表すのだろう。それさえわかれば、全てを彼に伝える事ができるのに。「…くそ、はっきりしねぇな。」どうせ今すぐに答えは出ないのだから、これ以上考えたって仕方ない。結局はそんな結論に落ち着いて、曲げっぱなしにしていた腰を伸ばすと余計な思考は脳から締め出した。どれだけ時間が経ったのか曖昧なまま、やけに綺麗になった玄関を通って外に出る。彼がまだ現場に留まっていた事に内心ホッとしつつ、ある程度まで近づくと気安く声を掛けて。)
──よお、順調か?
あぁ、君のそう言う所が好きなんだ。
しかし、抱きしめる、か……それは抱っこでも大丈夫なんだろうか?
そうなのか?じゃあ今度から「おやすみ、可愛い坊や」と、でも……添い寝…?凄く恥ずかしい気がする、が…それで眠れるのなら……。
それと、すまない…返信が遅れてしまった…。…すまない、ここの所忙しくて覗けて居なかったんだ…
優しい声色で頭を少し乱暴に撫でられれば、一切不満など無さそうに、自分の気を尊重してくれた彼に向け"ありがとう"と緩く口角を上げる。彼をみていると、小さい頃見た年上の従兄か長年の親友を思い出してしまう。そんな自分に苦笑しながら彼と別れ自分がやるべき事をこなしていく。
正直彼がここに現れなかったら今自分はこうして落ち着いて処理をできていなかっただろう。なんなら軽く発狂していたかもしれない。力任せに息絶えた後も馬乗りになって何度も何度も刺していたかもしれない。処理だって杜撰で証拠も大量に残していたかもしれない。
彼には感謝しなければいけない、が、、どう礼をしたら良いものか。
ぼんやりと、"かもしれない"を考えているうちに処理は終わってしまった。
再度、状況を確認し、使った物をビニール袋に押し込んでいると後ろから声がかかる。
「あぁ、丁度終わったところだ」
振り返ると先程見た顔だ。ほっと力を抜きつつ彼の元へと歩み寄る。
あとはアレの片付けのみだ。
「すまないな、アレを君の家に置きっぱだ、床が汚れてしまっただろう。すぐに回収する…」
彼の家の床は無事では無いだろうと心配し申し訳なさそうに眉を下げる。が、玄関が全く汚れていない事に気がつき思わず彼の方を振り返った。アレを運んだ上にこの辺りの掃除までしてくれたんだと言う考えに至れば、申し訳なさそうなそれでいて嬉しそうな声色で、再びありがとう、と口に出す。そしてその直後彼の名前を聞いていない事に気がついた。聞いても良いのだろうか、と散々考えた挙句、自分の名前を告げ、相手の名前を聞こうと首を傾げて問う。彼の返事が返ってくるのか否か少々緊張した面持ちだ。
…ここで呆れるでもなく真っ直ぐ言い返してくんのがずりぃよな。下手な口説き文句より効くぜ、それ。
いい歳した男が「抱っこ」とか言ってんじゃねーよ、グッときただろうが。…で、そんなもんは当然無し。却下だ。俺がお前を、って事なら考えてやるけどな。
おいこら、ガキ扱いしてっと添い寝じゃ済まさねぇぞ。
こっちの事は気にせず、好きな時に帰ってこい。相変わらず待たせちまってて悪いが、俺は黙って消えたりしねぇ。休める時はしっかり休んどけよ。
(漂う雰囲気はどこか嬉しそうにも感じられ、なんとなく首の後ろがむず痒い。相手のためにした事ならまだしも、自分の都合で起こした行動なだけに返す言葉も見つからず、せめて間が空く前にと曖昧に返事をした。不意に、微かに黒い瞳が揺れる。見過ごしても構わないような些細な変化。けれど確かな引っ掛かりを覚えて、ひょいと片眉を上げる。何かを躊躇っているらしい事はわかったが、さすがにその内容までは汲み取れない。下手に急かさず様子見していると、思いのほか早く沈黙は破られた。少し固い声で、相手は彼自身の名前を告げる。続けてこちらの名を問われれば、ゆっくりと瞬きを二回。まさかと過ぎった予想を彼の表情が裏付ける。どうやら、これこそ彼が言い淀んでいた内容らしい。思わず唇を撓め、くすくすと小さく肩を揺らす。迷う素振りも見せず一歩前に踏み出しては、少しこわばった頬をそっと指の背で撫でて。「そんな緊張しなくても、名前くらい教えてやるよ。…喜多見だ、喜多見凪。」いつも通りの勝気な笑みを浮かべ、好きに呼んでいいぜ、と短く言い添える。もしこの場限りの関係にしたいなら、こうして名前を尋ねる必要は無い筈だ。確証を得ようと切れ長の目をじっと見据え。)
酒井、だったよな。わざわざ互いに名乗ったんだ。ここでアイツを引き渡して終わり…なんて、つれねぇ事は言うなよ?
呆れる事はないだろう、。俺は君の愛されてるのを分かっている様な振る舞いが好きだからな。
…少々幼すぎたか、はは、すまない。ギャップ萌え、と言うやつか?
却下か…それは残念だな、君の方が俺よりも軽いからいけると思ったんだが。
それは…困るな……悪かった。
すまない、俺の方も先に伝えておくべきだったな。たまに数日開く事もあるが、俺もいきなり蒸発する事はない。安心してくれ、それと、ありがとう。君もまだまだ暑いから水分補給を忘れずに無理しない程度に頑張ってくれ。?
自分が思ったよりも彼の返事は早くに返ってきた。が、それ以上に彼の行動に驚かされ、一歩後ろに下がる。
「…!…あぁ、ありがとう。じゃあ喜多見君、と」
一歩下がり指が離れた部分に手を当てながら、喜多見凪と、彼の名前を繰り返した後そう告げる。悪戯っぽく細められた彼の目と視線が合うと心の奥が騒つく。
「勿論だ。アレを片付け終わった後、お礼がしたい」
お礼をする相手の名前も知らないなんて…と思ったのかどうかは分からないが平然と何の遊びもない真面目腐った返事を返す。そしてアレを置いてある場所を彼に問う、早く片付けてしまわねば。靴を脱ぎ壁を汚さない様出来るだけ触れずに、そこの扉を開ける。が、扉を開けたまま立ち尽くす。その部屋には一面糸ノコやらペンチやナタやら。明らかに"そう言う部屋"だった。この男も一線を超えている人だと思っていたが、予想以上の道具の種類に圧巻された。
「これは……喜多見君はその道の仕事人だったりするのだろうか?」
死体の近くに座れば、それを持ってきていた大きな麻袋の中に無理矢理押し込む。そしてそれを俵担ぎにすれば彼の方へと向き直る。
さらっと追撃しやがって。…まさか、全部わかっててやってんのか?
どんなお前でも好きって事だ。どっちかっつーと「恋は盲目」の方が近いかもな。
可能か不可能かの話じゃねぇ、恋人にあっさり持ち上げられたんじゃ格好つかねーだろ。…お前なりの愛情表現だって言うんなら、甘んじて、受け止めるが。
──ふ、くくっ…。お前ほんっとに真面目だなぁ!冗談だ、冗談。半分くらいはな。
今回、随分と時間かけちまってごめんな。どうも最近思うように筆が進まないっつーか…。もっと気楽に書けりゃいいんだが、お前に適当な返事はしたくないし──って、それで待たせてんじゃ世話ねぇよな。いつも報告が後になっちまう事も含めて、悪かった。
それから、勝手なこと言ってんのは承知の上で頼みがある。…これからは、モチベ上げるために時々会いに来てもいいか。正直いって、スランプそのものより長期間お前と会えない事がキツい。勿論お前が来られない間は無理に返信しなくていい、その時は俺もロルに専念する。…ってのは、さすがにダメか?
(扉が開く音を最後に、妙に息苦しい静寂が訪れる。呆然と佇む相手の背に向けていた視線は、神経質なほど几帳面に片付いた部屋の中を通り、やがて足元に落とされた。安易に踏み込ませるべきではなかったか。臍を噛む思いで気づかれないように眉を曇らせる。しかし、次いで耳に届いた声は存外冷静に凪いでいて。いまいち彼の心境を察する事ができないまま、いや、と緩やかに首を振る。「ちげーよ。お前こそ、その筋の人間…ってわけじゃあなさそうだな。」小さく肩を竦め、脳裏を掠めた考えは苦笑混じりに否定した。とりとめもない思考を散らすと、一度は飲み込んだ些細な疑問が代わりに浮上する。淡々と作業に取り掛かる相手にぽつりと切り出し。「なあ、さっき礼がしたいって言ってたよな。そういうの抜きにして会えねーの?…別に、礼されるほどの事はしてねぇだろ。」思いがけず子供じみた物言いになってしまい、ばつの悪さに首の後ろをさする。気休めにふらりと視線を泳がせて、けれど、一往復もしないうちに再び相手を視界の中心に据える。作業を終えた彼が立ち上がれば、抱えている荷物の方へ自然と目がいった。すっかりそちらに意識が向くと、思案顔で顎に手を当てる。廊下の先、靴の傍に置かれた重量感のあるビニール袋を一瞥しては、ついと指さして。)
あれもこれも持つんじゃ重いだろ。ちゃんと近くに車とめてあんのか?
恋は盲目…か。ふ、可愛らしい事を言うんだな。
腕の中に収まる君も中々に良いと思うのだが……。君の嫌がることはしないと言っただろう
な、!そんなに笑うことも無いだろう…、、半分は冗談じゃない、と?
いいや、構わない。寧ろ君の安否を確認できて良かった。丁度台風もあったからな、君の身に何かあったのでは無いかと心配だった…。
君のその誠実さも好きな所なんだ、そんなに謝らないでくれ。
…!!その、発想は無かったな……。なるほど…そう言う手も…。
勝手だなんてとんでもない、寧ろ俺も君に会って沢山話したい。
平日の早朝と23:00以降なら返信ができそうだ、それでも大丈夫ならいつでも連絡をくれ
どんなものでも構わない、待っているぞ。
まだ乾ききっていなかった血で薄く汚れる麻袋を見、滴り落ちないか心配になりながらも、最後の仕上げに、と床を綺麗に拭く。次に今節丁寧に袋の紐をリボンの形に結ぼうとした所で声がかかった。予想外の問いかけに思わず、紐が手が離れシュルシュルと元の形に戻っていく。「それは…出来ないな」そう一言背を向けて答えながら、またリボン結びに取り掛かる。今度は上手く結べた。
「俺は君の行動にかなり助けられたんだ、礼をしなければ失礼と言うものだろう…」
顔は見えないながらも少々思い出す様に喜びを含ませた声で答える。常人では抱えるだけで精一杯な荷物を片腕で軽々と持ち上げれば、彼の方へと向きなおり
「その後でなら構わないか?」
叱られた子供の様に視線を泳がせていた彼の表情を無下にすることもできず、そう返す。
暫くの沈黙に、何かおかしな事でも言っただろうかと心配になりつつも、指差された方向を見てこくりと頷く。勿論だ、そう返せば扉を開けてからビニール袋を外へと放る。
ふと時計に目がいく。そろそろ丑三時を超えそうだ。
「今日はすまなかった。ありがとう、おかげで助かった。」
すぐ戻って来る。そう一言告げれば。玄関を出、急いでビニール袋を掴み誰にも見られない様に近くに止めてあった車へと積み込む。そして駆け足で彼の元へと戻れば、電話番号が書かれているメモを渡し、「何時でもかけてくれて構わない」と最後にそう告げる。
こんな時間だし顔出すのは明日にしようとも思ったんだが、やっぱ礼だけさせてくれ。結構無茶な我儘言ったってのに、受け入れてくれてありがとな。もっと話したいって同じ気持ちでいてくれた事も、すげー嬉しい。
それじゃあ「おやすみ、可愛い坊や」。…なんてな。おやすみ、京介。体冷やすなよ。
おはよう、喜多見君……いや、凪君。すこし遅かったようだが、よく眠れただろうか?
…君から連絡が来た時、一瞬フリーズしてしまった。不意打ちで呼ばれると…その…少し恥ずかしいな。
ふふ、君も真面目だな。此方も、抱きしめて君の頭を撫でまくりたいくらいには嬉しい。なんなら、本当にそうしようか……冗談だ。
最近は朝晩が寒い。体調を崩さないよう、程よい格好で過ごしてくれ
ははっ、照れてんのかよ。かわいい奴。…まあ、好きな相手に名前で呼ばれて浮かれちまう気持ちは、俺もたった今理解したけどな。
へぇ、冗談にしていいのか?今なら好きなようにさせてやんのに。
秋らしくなってきたよなぁ。お前と出会ってもう二ヶ月近く経つとか、楽しい時間ほど早く過ぎるってのは本当なんだな。
君も浮かれたのか、?…普段なら、可愛い、を否定してしまうが…俺も君の気持ちを理解してしまった。何も言えないな。
君は誘惑するのが上手い…。だが…触っても壊れたりしないだろうか…?
……毎回の様に感じている事なんだが…俺はどうやら君の事を考えているとIQが2ぐらいまで落ちるらしい。返信しようとしても、好き、やら愛しい、しか出てこなくなる。
確かに、……もうそんなに経っているのか…?驚いた。まったくだな…本当に早く感じる。
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