リンボ%% 2020-06-16 17:27:42 ID:4a16c616e |
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「よろしく」
嬉しそうに微笑んで改めてよろしくと言ったロンに対し、ルイアも優しく微笑んだ。
その時、ロンはアルトがなにか悩んでいると感じたらしい。指摘されたアルトはギクリとして、確かになにか考えていたのだろうが、その内容を話そうとしない。ルイアはそんなアルトの様子を見て、気にしなくてもよさそうだと解釈してしまう。
「……なんか、まだ会ったばっかだけど、ロンとは結構仲良くなってきた気がする。初めてしゃべった時よりいろいろ話してくれるようになって楽しいよ」
アルトのことは特に触れず、会話を続けるように、ロンと仲良くなってきて楽しいと、少し気分が良さそうな雰囲気でロンに話す。
「ハーイ!」
オムライスを食べ終えたスピカにハーブティーを頼まれて、ゴゴットは快活な返事をしながらキッチンへと向かう。
「おいらもごちそうさま」
「ルイア……。オヌシニ、キキタイコトガアル」
「なんだい?」
すぐ後にルイアもオムライスを完食。すると突然、さかな王子がルイアに聞きたいことがあると告げる。
「ヨハ、ルイアニツグナイヲカシタ。オヌシノコトヲヨクシラズ、モウシツケテシマッタガ……マダヤッテクレルキハアルノカ?」
「隠れ場所探しだろ?あとで付き合ってやるって」
王子はどこか不安そうな顔をして尋ねてくる。王子の体を踏みつけてしまったことへの償いとして、自身の隠れ場所を見つけろと言われていた。しかし、ルイアが徐々に本性を明かし、本音ももっと言うようになって、もしかしたら償いの話を本気にしていないか、または断られるんじゃないかと、王子は考えてしまったのかもしれない。
一方で、ルイアの方は始めから隠れ場所探しに付き合うつもりでいた。思うところもあるが、嫌と言う気はなく、快い返事をすると、ルイアは少しおかしそうに笑いだす。
「急に大人しくしてると思ったら、そんな心配してたのかい?正直妙なことになったと思ってるけど、あんたも王子さまのメンツがあるんだろ。償いだろうが、おいらは引き受けたことはちゃんとするから」
「ホントウカ……!?デハ、ヨロシクタノモウ!」
「…………ちょっと遊ばせてもらうけど」
ルイアの返事を聞いたさかな王子は、心底喜んだ様子で改めてルイアに隠れ場所探しを元気よく頼んだ。ルイアも明るい表情を浮かべている。
そんなルイアは、追加の一言を小声で呟く。かなり小さな声で、さかな王子には届いていない。
アルトの動揺を見て悟ったルイアは、ロンはアルトのことが好きだと言ったので、もう少しつっこんでみようと、どんなところがいいと思っているのか聞いてみた。ロンは笑顔で答えてくれて、諦めずに一生懸命頑張ってるところや、元気な笑顔、見てるこっちまで明るくなれると、いろいろ話してくれた。
「ふーん。なんだ、けっこう好かれてんじゃないか」
話を聞くルイアは、ロンではなくアルトの顔だけを見て、若干にやついた微笑みを浮かべて言う。仲間としてとはいえ好きな人にとって良いと思われてるところをアルトに聞かせつつ、ちょっとからかおうとしている様子である。
「えへへ、私もすごく楽しいよ。ちょっとだけど、ルイアくんのことを知ったり、私のこと知ってもらったり…これからももっと仲良くなりたいな…」
少し気分が良さそうにそう言ってくれたルイアに対し、ロンは微笑みながら答える。臆病なロンにとって、友達と呼べる人が増えるのは、とても喜ばしいことだった。
「…隠れ場所?」
「あー、そういえば俺ら、王子の隠れ場所探ししてたんだっけ」
「へー、なにそれ?おもしろそうじゃん?」
ルイアと王子の会話を聞いていたロンは、きょとんとした表情で首を傾げている。一方、オムライスを食べ終えたアルトは、ぽん、と手を叩いてさかな王子の隠れ場所を探すことを任されていたことを思い出した。正直のところ、今の今までいろいろなことがあってすっかり忘れていた。
スピカは、なにやらニヤニヤとした顔で、面白そうだと声を上げる。
アルトのどんなところがいいのかをルイアに聞かれたロンは、笑顔で次々とアルトのいいところを上げた。
それらを聞いたルイアは、若干ニヤついた笑みでアルトを見ていた。
「……こいつ、どこまで知ってんだよ…」
一方アルトは、ロンが自分のいいところを言ってる間、顔を真っ赤にさせていた。ルイアににやついた笑みを浮かべられると、少しぎくりとして帽子で顔を隠す。まるで自分の心情をルイアに悟られてる気がして、「どこまで知ってんだ」とぼそっとつぶやいた。
「そう言ってくれると、ありがたいよ。またどっかで時々会えるといいね」
これからももっと仲良くなりたいという言葉に対して、ルイアはこのようにロンに返す。実はルイアにとっても、その気持ちがあるだけでありがたいのだった。いつも初対面の相手でもフレンドリーに接することが多いルイアは、このやりとりでより親しげな雰囲気になっている。
ルイアがさかな王子と、隠れ場所探しの事で会話していると、アルトも任されていたことを思い出し、スピカはニヤニヤとした顔で面白そうにする。そういえば、ロンとスピカの前でこの話をするのは初めてだ。
「勝手にアルトを巻き込んじまって申し訳ない。ここを出たら行こうと思ってたとこだったんだ。ロンとスピカはどうする?」
ルイアはロンとスピカの知らない間にアルトを巻き込んでしまったことを詫び、二人も一緒に来るかどうかを尋ねる。
ロンの話を聞いて、アルトの反応を確認してみると、顔を真っ赤にさせていて、こちらの笑みに気づくと少しぎくりとして帽子で顔を隠してしまう。ふと察したことだが……どうやら予感は本当らしい。
「くすくすっ。……二人の話は面白いね。どんな風に仲良くなってんのかわかって、聞いてて楽しいよ」
アルトの様子を見て楽しそうに笑うと、ルイアはロンとアルトの二人の話が面白いと告げる。
「うん…!そうだね…♪」
またどこかで時々会えたら、というルイアの言葉に、ロンは嬉しそうに頷いた。
さかな王子と彼の隠れ場所について話をしていたルイアから、アルトを巻き込んでしまったことを詫びられたロンとスピカはどうするかと聞かれると…
「あ…お邪魔じゃなかったら…私も一緒にいきたいかな…?」
「もちろんあたしもいくよ!面白そうな予感がプンプンするからねぇ♪」
ロンはおずおずと、自分も一緒に行きたいと発言をし、スピカもうきうきと面白そうなので行くと言ったのだった。
顔を真っ赤にさせて帽子で顔を隠すアルトの反応を楽しむルイアは、アルトとロンの話が面白いと告げた。それを聞いたロンはキョトンとした顔で首を傾げる。
「…そうかな?特別なことでもないけど…そう言って貰えてよかったよ…!ね、アルト……?どうかした?」
「へっ!?い、いや、なんでもねえよ!?」
ただの思い出話に面白いことがあっただろうかと思うも、楽しそうならよかったと言いながらアルトに同意を求めるロン。しかし、何故か帽子で顔を隠してるアルトに、ロンはまたもやキョトンとした表情をしていた。ロンに声をかけられたアルトはあわあわと慌てている。
「フタリモツイテキテクレルカ!ココロヅヨイゾ!」
ロンとスピカも一緒に行きたいとの返事で、さかな王子はとても嬉しそうに目を輝かせる。
「ハーブティー、みんなの分いれてきたヨ!」
「お。ありがとう」
すると、ゴゴットがハーブティーをいれたカップをトレーに乗せて持ってきた。ルイアとスピカの分を頼んでいたが、気を利かせて他のみんなの分もいれてくれたようだ。
ゴゴットはハーブティーのカップを一人一人に配るので、ルイアはお礼を言いつつ受け取る。
「隠れ場所ってどういうところがいいんだい?」
ハーブティーを頂きながら、ルイアは隠れ場所の話を続ける。これからの参考のために、隠れ場所とはどういうところを望んでいるのか、さかな王子に尋ねる。
「ソウジャノウ……。ミツカリニクイコトハモチロン、キュウクツスギズ、タイクツシナイトコロジャ!」
王子はちょっと考えて、見つかりにくいこと。窮屈すぎないこと。退屈しないことを、隠れ場所の大事な条件としてあげる。だが、一度考え始めると止まらなくなってしまうようで……。
「シカシ、コマッタトキノタメニ、テキトウナシモベヲヨビヤスイトヨイナ。アト、ウミノチカクガヨイゾ!」
「海が近いところはいいねぇ。海を見てると世界が広く感じて、好きな景色だ」
隠れ場所とはいえ、いつでも誰かをしもべにして頼れるように多少の人通りがあること。そして海の近くがいいと、どんどん要望が追加されていく。一方で、ルイアは海が近いところについて同感し、海は好きな景色だと語る。嫌な顔一つせず、さかな王子のわがままを聞き入れている様子である。
「それで、あとは……。仕掛けがしやすい広さで。人が近くを通るけど、黙ってれば誰も助けに来ない……」
「……ン?マテ。ナンノハナシジャ?」
「何って、隠れ場所の話だけど?どうか期待しててほしいね。おいらの手にかかれば、もうイヤってぐらい退屈させないよ」
「スゴク……イヤナカンジガスルカオヲシテオル……」
ところが、ルイアは途中からブツブツと、急に謎の解釈をするようになる。王子が問いかけると、そのまま喋りつづけるルイアになぜか不穏な眼差しを向けられ、さかな王子は怯んでふるふると震えてしまう。
【お待たせしました……!】
「あ、足を引っ張らないように…頑張りますね…?」
「ま、暇つぶし程度にはなりそうだからねぇ?」
さかな王子の隠れ場所探しについて行くと答えたロンとスピカ。嬉しそうに目を輝かせるさかな王子に、ロンはオドオドと、スピカは笑いながら答えたのだった。
すると、ゴゴットがルイアやスピカの分だけでなく、全員分のハーブティーを入れてきてくれた。
「お、気が利くなゴゴット!」
「あ、ありがとうございます…!」
「サンキュー!」
アルト、ロン、スピカはそれぞれお礼を言いながらティーカップを受け取る。
そして、ハーブティーを飲みながらルイアとさかな王子の話を静かに聞いていた。
「注文多いねぇ…見つかりにくくて、窮屈しなくて、退屈しない、海が近くて、人が呼べるところ…そんなとこ見つかんのかい?」
「スピカさん、文句言わないの」
「そうそう、ルイアだってちゃんと聞いてやってんだから…あ、海が近いってのは俺も賛成!」
次々と要望を追加するさかな王子に、ちょっとウンザリした顔をしながら文句を言い始めるスピカ。ロンはそんなスピカに注意をしつつ、ロンに続くようにアルトも、嫌な顔をせずに聞いているルイアを見習えというような発言をしつつ、海が近いところがいいという意見に賛成していた。
しかし…途中からルイアはブツブツと謎の解釈をしだした。
さかな王子はルイアに不穏な目を向けられて震えている。
「……っ…!!」
ロンは、自身の“ある能力”のせいでさかな王子の不安が伝染したこと、ルイアの邪な考えを察したことでぶるぶると震えだしてしまった。一方、スピカはニヤニヤとした表情でルイアを眺めている。
「おやおや、…ルイアもちゃーんと考えてくれてるみたいだねぇ?よかったね、さかな王子?」
「スピカっ…!!な、なあルイア!?本当に大丈夫なんだろうな!?」
ルイアなら大丈夫、と安心していたアルトも嫌な予感がしたのか、焦った様子で『大丈夫なんだろうな!?』とルイアに確認した。
「大丈夫大丈夫。ちょっとスリリングにしたいだけだから」
嫌な予感がしたのか、焦った様子で確認しようとするアルトに対して、ルイアは余裕そうに言う。
「スリリング……トハ、ドウイウコトジャ?」
「恐怖の部屋に放りこまれ、悲鳴を上げるのも制限されて、震えて耐えることしかできない……なんて、最高に面白そうじゃないかい? ひひっ、甘えたことばっか言いやがる命しらずにはピッタリだ」
「オ、オヌシ……ショウキナノカ……!?」
スリリングの意味を尋ねられ、具体的に答えるルイアはまるで悪魔のような笑いを浮かべていた。さかな王子は驚愕して、思わず正気なのかと声をあげる。
「キミって、ホントにふだんからそういうコトしてるんだネ。ゴゴットが料理するときより楽しそうな顔してるヨ」
「そう。おいらは、苦しそうな反応とか、怖がる反応を見るのが好きでねぇ。だいたいは、そこのあんたみたいな面倒くさくてイライラする野郎に、少し脅してやったりしたくなっちまう」
ゴゴットに冷静に指摘されると、ルイアはこのように言いながら、さかな王子の方を見る。そこのあんたとは、さかな王子のことだ。
ルイアは、人や動物に対して苦痛を与えることを好む嗜虐癖をもつ、いわゆるサディスト。例えばライブなど音楽で精神が高ぶるような興奮を、恐怖や苦痛の反応を見ることで覚えてしまう。実際の行為はイタズラや喧嘩、反撃などにとどまるが、やり方が過剰な場合が多く、また思考もたびたびサディスティックに偏っていたりと、かなり病的である。
とはいえ、誰でもいいというほどではなく、女性にはほとんどその感情は向かない。気に入らないかどうかに寄るところが大きいものの、男性を中心にそこそこ被害者を出している。陰湿なときもあるが、ルイアのポリシーで、周りを巻き込まないタイマン的なやり口が多い。
「ナンジャト! ヨヲオウジトモヨバズ、ブレイキワマリナイゾ!」
「無礼は承知だよ。王子って、その辺に何人もいる存在じゃないだろ。だからしっかり守られるのは当然。なのに、そんな当たり前のことを投げ出して適当にふらついて……自由を望む覚悟も知らなそうなあんたを、悪いけど王子と呼びたくはないね」
王子と呼ばないなど、勝手な言われ方をされて少し怒ったさかな王子。無礼な対応をすることについて、ルイアは冷ややかに反論し、王子と呼びたくはないとはっきりと告げる。
「ムッ。キュウニ、セッキョウクサクナリオッテ。オヌシハカッテナヤツダナ」
そのルイアの言い分がどこか説教くさく感じたのか、さかな王子は不機嫌そうな顔をする。
ルイアはハーブティーを飲みつつ話を続ける。
「まぁ別に腹立ってなくても、面白そうなことを試すのが楽しくて、退屈なとき気軽に遊べる奴隷がほしいともつねづね思ってんだよね。なる?おいらの奴隷」
「ナラン!!」
最後に明るい笑みになって奴隷になるかとルイアが問いかけ、さかな王子は全力で拒否した。
スリリングにしたいだけだから、とアルトに答えるルイアに対して、スリリングの意味を問うさかな王子。
それに対してルイアは、まるで悪魔のような笑みを浮かべて、具体的に答えて見せた。
それを見てアルトとロンは思わず「ひえっ」と声を上げて震えた。
ゴゴットの指摘に対して、ルイアは苦しそうな反応とか、怖がる反応を見るのが好きだと答える。特にさかな王子のように面倒くさくてイライラするような相手には少し脅したくなるらしい。
「……お、思ったよりすごく刺激的な考えを持ってるんだね…ルイアくん…」
「…ああ、イタズラで人を困らせるのが好きなスピカといい勝負だぜ…」
このルイアの考えを聞いたロンは、先程よりも落ち着いたものの、やはり震えながらヒソヒソとアルトに囁く。アルトもロンに頷きながら、イタズラで人を困らせるのが好きなスピカといい勝負だと話した。
スピカには盗賊として物の盗みをするだけでなく、落とし穴や料理に変な材料を仕込むなどのイタズラをして困った人の顔を見るのが好きというイタズラ好きなところがある。
それは前いた世界でもプリンプでも変わらない。
その被害者が主にアルトである。
一方、さかな王子はルイアの言い方、そして自身を王子と呼ばないことに少し怒ったようだ。しかし、ルイアは王子はしっかり守られて当たり前であることを抜け出して、適当にふらついて、自由を挑む覚悟を知らなそうなさかな王子を王子と呼びたくないと冷ややかに反論する。
「まあまあ、たしかに王子っつぅ身分も大事だけどさ、広い世界見たり、ちょいとばかし危険な目にあうのもいい経験になるんじゃないかい?」
「…王子様が危険な目にあうのは問題だけどね…」
ルイアの反論を聞いたスピカは、ハーブティーを飲みつつケラケラと笑いながら、王子という身分も大事だが、広い世界を見ることと少し危険な目にあうのもいい経験になるのではと主張する。
それを聞いたロンは苦笑いしながら、王子が危険な目にあうのは問題だと呟いた。
「あ、ルイアくーん、こっちのヘタレ剣士は素質あると思うんだけど、どーう?」
「誰がヘタレ剣士だ!!つーか俺を売るな!!!」
奴隷になるかならないかというルイアとさかな王子のやりとりを見ていたスピカは、アルトの方を見てどう?と問いかけた。やはり全力でツッコミを入れていたが。
「ソウハイウガ、マモラレテバカリノクラシト、チガッテイルコトハワカル。ダカラ、ヨハシロノソトガヨイノダ。ワザワザキビシクシヨウトスルナド、ヨケイナオセワナンジャ。キケンハユルスガ、ブレイモノハユルセン」
「そういうとこなんだけど」
ちょっとばかし危険な目にあうのもいい経験になると言うスピカに、さかな王子は守られてばかりの暮らしと違う世界ということを理解していて、だからこそ危険もある城の外で過ごしてみたいと思うのだという旨の主張をする。危険をわからせようとするなどといった厳しさは余計なお世話なのだと考えるさかな王子。
なので、自身に降りかかる危険は許すが無礼者は許せないと発言するが、ルイアにそういうところだと気に食わなさそうに睨まれる。今の王子にとっての危険と無礼の意識があいまいで、ただのわがままに感じるようだ。
「きっと、なんでもしたいお年ごろなんでショ。お手やわらかにしてあげてヨ」
ゴゴットは落ち着いた調子で、さかな王子は何でもしたいお年頃なんだろうと思い、後で王子にハードな事をする気でいそうなルイアをなだめる。
「さすがにケガはさせないし、隠れ場所はちゃんと探してやる。あんまり生意気ばっかなら無理やり悲鳴あげさせて、追手のやつらに見つかるようにしてやっから。それぐらいの覚悟はしろよ」
「ヌゥ……。ムカツクガ、イロイロトゴメンジャ……」
ルイアは、身分の配慮や隠れ場所探しの約束は守るつもりだが、場合によっては悲鳴をあげさせるなりしてわざと見つかるよう仕向けることも考えているようで、さかな王子にあまり好き勝手させないように忠告する。さかな王子は不機嫌そうだが、最悪なお仕置きを突きつけられてしまい、むやみに逆らえない様子だ。
奴隷になるかと問いかけ、否定したさかな王子。すると、スピカがヘタレ剣士……アルトは奴隷にどうかと問いかけてきた。
「アルトは…………」
アルトは全力でスピカにツッコミを入れているが、ルイアはそれを無視して、アルトの顔をじっと見て長考する。
「……残念だけど、奴隷っていう関係にはできない。ふつうに付き合ってられるなら、そっちを優先したいんだ」
そして、アルトを奴隷にはできないとルイアは答えた。奴隷がほしいとは口癖のように言っているが、ふつうに友人として関われると思った人もルイアにとって貴重な存在なので、できるだけ大事にしたいと考える。むしろ、なるべく失敗を起こさないように、その気が起きなくて済む相手が増える方が本当はいいことなのだ。
「たしかに結構面白そうだから、たまに気が向くことはあるだろうねぇ」
しかし、にこやかな顔になって、ルイアは付け加える。奴隷にするつもりはないものの、アルトの事はイジると結構面白そうな相手だという興味はあった様子。
「危険はいいけど無礼はダメ、かぁ…やれやれ、王子様の価値観はわっかんないねぇ…」
自分に降りかかる危険は許すが、無礼は許さない。そんな王子の発言に、スピカは王子の価値観がわからない、とため息をついて肩を竦める。
ルイアは王子を気に食わなさそうな目で見ていたが、ゴゴットは落ち着いた調子でルイアを宥める。するとゴゴットはケガはさせないし約束も守るが、生意気ばかり言っているとわざと追っ手に見つからせる、というようなことを王子に忠告した。さかな王子は不機嫌にしつつも、逆らうことは出来ない様子。
「ルイアって…相手が王子だろうと遠慮なしって感じだな…自分を通すって感じがして、俺は嫌いじゃねえけどな」
さかな王子とルイアのやり取りを聞いていたアルトは、ルイアに対して相手が王子だろうと遠慮なしだと声をかける。その後、これは貶してるのではなくあくまでも褒めているという気持ちをこめて、自分を通すという感じで嫌いではないと告げる。
ルイアの奴隷にアルトを進めたスピカ。それを聞いたルイアは、じっとアルトの顔を見て長考していた。アルトはゴクリと唾を飲み込む。すると、ルイアはふつうに付き合えるなら、そちらを優先したい為、奴隷にはできないと答えた。これに対してアルトはほっと安堵の息を着く。
「よかった……いやいや、全然残念なんかじゃないぜ!俺もお前と普通に仲良くしたいからさ!!やっぱり普通が一番!!」
「ちぇー…だめだったか…」
残念だけど、という言葉に、アルトは全力で首を横に振った。自分だって普通にルイアと仲良くなりたいし、奴隷になるなんてゴメンだと思ったのだった。
一方、スピカは面白くなさそうに唇を尖らせている。
しかし、ルイアがあとから付け加えた言葉に対しては…
「向けないでくれ!!!」
と、全力でツッコミをいれるのだった。
【すいません、お待たせしました…!】
さかな王子の言うことに、スピカはため息をついて肩を竦めていた。
ルイアがさかな王子に好き勝手させすぎないよう忠告していると、アルトはルイアって相手が王子だろうと遠慮なしだと言い、自分を通すって感じがして嫌いじゃないと言う。
「いくらお偉くたって、思い通りにばかりさせてらんないからね。そこは譲らないよ。相手の王子がコレだし……」
「コレトハナンダ! ヨヲバカニスルナ!」
ツンとした顔でルイアは言う。相手のペースに無防備で乗らない厳しさを持っており、誰に対しても強気。しかも、王子が生意気なので少し邪険にしたくなるようだ。さかな王子はルイアに小ばかにされて憤慨している。
アルトはルイアの奴隷にはできないとの答えに、ほっと安堵の息をついた。スピカは面白くなさそうに唇を尖らせている。そこに、ルイアはたまに気が向くことはあるだろうと付け加えると、アルトに全力でツッコミを返される。この男は、やっぱりハラハラさせてイジるのが面白い……。
「くすくすくす……。さぁ、どうだか? 何も起きないといいねぇー」
ルイアは楽しそうに笑って、本当にやる気があるともないともとれない軽々とした口ぶりである。
【お待たせしました!!】
偉くても相手の思い通りにさせられない、そこは譲らない、とルイアはツンとした表情で言う。それに対して、さかな王子は怒っている様子だった。
「…たしかに、仮にも偉い立場にたっている人だと、尚更やりたい放題にさせる訳にはいかないもんね…」
顎に手をあてながら、ロンはルイアの意見に同意した。気の弱いロンと言えど、偉いから自分の思うがままにできる、という考えは間違いだとわかっていた。
自身の奴隷には出来ない、というルイアの答えに一度は安堵するアルトだったが…気がむく時はあるだろう、という言葉を聞いて動揺する。
それに対して、ルイアは楽しそうに笑って、やる気があるのかないのかわからないようなことを言っていた。
「全く…ルイアのやつホント読めないぜ…」
ロンも、偉い立場の者をやりたい放題にさせるのはいけないと考えているのか、顎に手を当ててルイアの意見に同意する。
「そういえばキミ、教育係ならやってもいいってさっき言ってたケド、教育係になって何するつもりだったノ?」
すると、先ほどのルイアの発言を思い出したゴゴットが、その事についてルイアに問いかけた。
「ふつうにやるよ。面倒見んの得意なのはホントだからね。でもこいつ、いつも教育係に厄介かけてそうだし……他の教育係に言わないかわりに厳しくさせてもらって、すこしずつ逆らえなくさせながら、たっぷり遊んでやろっかと」
「……オヌシダケハ、シモベニシナクテヨカッタゾ」
ルイアの、しもべになりながら逆にさかな王子を手玉にとろうとする危ない思惑を聞いて、さかな王子はルイアをしもべにしようと声をかけなくてよかったと考えて呟く。
「ロン、おいしいオムライスごちそーサマ! そろそろ片づけるネ」
「おいらも手伝うよ」
みんなが食べ終わったところで、ゴゴットが片付けを始めようとする。ルイアは手伝うと声を上げた。
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