鳴河崎町にて（〆）

(相手を無言で見送っては相手から遅れて公園を後にして。未だ相手への複雑な心境を抱いたまま帰宅の途について。事前に部下と飲みに行く事は伝えていたり酔いは醒めていたからこそ親から特に言われるわけでは無かったが、たまたままだ起きていた弟から「お帰り！あ、俺今度風見さんにこの町を案内するから！」と言われ相手の名が出ては思わずドクンと心臓が跳ね動き。赤くなる顔を弟から背けつつ「そ、そうか。くれぐれも迷惑はかけるなよ？」と何とか伝えつつ自室に戻り。相手の名が出てくるだけで相手の事を思い出してしまい、相手から向けられた感情を思い出して顔が赤らんでしまうもので。勿論今まで何かしら恋心を抱いたこともなく、自分のこの感情を制御できるか不安を抱きつつ自室で悶々と思慮し)

（帰路の途中にあるコンビニで焼酎のカップ酒を二つ買えば自宅からそう遠くない場所にある公園のベンチに座ってカップ酒を開けて飲み始めて。自宅で飲むならともかく、外で飲んだことが相手にバレたら怒られるかな。なんて思いながら苦笑して。仲良くなりたいの意味が通じていない時はどうしようと思ったがちゃんと通じて良かった、真っ赤な顔が可愛らしくもありながら色っぽくて良かった、など考えながら。もし、付き合えることになったても大切に出来るかなと少し想像してみて。まぁ一般的な振る舞いは出来るだろう。今日楽しそうにしていた笑顔も素敵だった。そう、笑顔も良いとは思う。けれど、きっとそれだけでは物足りなくなる。しばらくは我慢も出来るだろう。その後は？　と自問自答を行うが答えは出ず。カップ酒を一つ飲み干せばそこそこ酔いが回ってきて気分が高揚し、付き合ってもない頃から考えても仕方ないしどうにかなるだろうと楽観的な結論を出せば帰宅して。帰宅後は水分を取り寝る準備を行えばさっさとベッドに入って目を閉じて）

(悶々と思慮しながらもこれでは仕事にきたすと何とか頭を横に振りながら何とか風呂を済ませたり水分を多めに補給したりと少しでも気分が紛らわせながら夜を過ごそうとするも、水を飲もうとすればペットボトルを手渡す相手の姿が思い浮かんではまた顔を赤らめてしまい。こんなので大丈夫か、なんて思いながら、今後仕事でも自分が意識してしまって会えないかもしれないな、なんて思いながら眠りについて)


(兄と相手の間でまさか恋の関係についての進展があったりなかったり、なんて事が有ることを知らぬままに相手に鳴河崎町の紹介をする日の当日の朝、一週間ほど前に伝えておいた待ち合わせ場所である駅前の噴水付近でカジュアルコーデを身に纏って予定よりも早めに到着して相手が来るのを待っていて)

お待たせ。早いね。今日はよろしく
（待ち合わせの時間より少し早く到着したものの既に待っている相手を見つければ、相手に近づき微笑んで。普段のスーツ姿とは違ったラフな格好で）

「へへ、楽しみだったからさ」(相手の姿が見えればニッと笑いつつ本当に楽しみだったとすぐに分かるような弾んだ声色で返しては「ちなみにこの駅前噴水はこの周辺に行く時とか、大きな街とかに行く為に駅利用する人とかが待ち合わせにめちゃ使う待ち合わせスポットなんだ！」と早速と言わんばかりに今日の待ち合わせに利用した噴水を指差しながら紹介しては「ゲーセンとか娯楽施設ってさ、鳴河崎町にあるにはあるけどどれも小さかったりアーケードの種類少ないからさ。いっぱい遊びたい時とかはやっぱり大きな街にあるとこに遊びに行きたくなるんだよね」と付け加え)

僕も楽しみだったよ
（相手に微笑み。まぁ地元のことを知っておくのも悪いことではないので仕事の延長で考えていたが、せっかくなら楽しめたらなぁと思って。噴水が待ち合わせスポットだと聞けばなるほどと納得し「確かに西、東出口っていうよりも噴水のあるところで待ち合わせ。っていうのは分かりやすいね」と頷いて。娯楽施設も小さいため大きな娯楽施設があるところへ行きたくなるというのにも「友達とだったら大きなゲームセンターとかの方が色々な機器で対戦出来て盛り上がるだろうね」と同調しながら）

「そーそー、一番分かりやすいから噴水前ー、とかでも大体皆分かるんだよね」(相手の言葉に乗っかるように更に付け加え。そうしてれば丁度他にも待ち合わせをしてるらしき近くに立っていた女性が電話をしているようで「私ぃ？今噴水んとこー…そそ、もう駅だから待ってるよー」と会話してるのが聴こえてきて。そして相手の同調に「そうなんだよね、1人で遊ぶなら鳴河崎町のゲーセンで間に合うけど皆で遊ぶときはどうしてもね」なんて言いながら笑えば「後は鳴河崎のバスはどれもこの駅に集結するからこっから乗るバスで間違えたらちょっと大変なんだよね。まぁ、今日は歩きで行けるルート行くつもりだから気にしなくて良いんだけど」と楽しげに笑いながら伝えながら歩き始めて)

なるほどね。デートの待ち合わせにも良さそうだ。颯太くんはゲーセンは何を遊ぶの？
（せっかくなら相手とのデートについても考えるかと思いながら。近くで待ち合わせしているらしい女性の会話を聞きつつ、いい場所だなと思って。「あー、それは気を付けないとね。」バスが集結するのは分かりやすいがだからそこ駅からの出発は間違えたら面倒くさいなと感じつつ。歩きだということで駅周辺をテーマにしているのだろうかと思いながら）

「へぇ、風見さん恋人いるのー？」(相手の何気ないであろうその呟きは当然気になるものでニヤニヤしながら相手の脇腹を力を一切込めず軽く肘でつつきながら問い掛け。そして相手からゲーセンで遊ぶ内容を問われれば「んー、レース系とかシューティング。上手い訳じゃないけど楽しいし」と笑って付け加えて。そして歩きながら「まぁバス乗って行ける辺りにも良いとこあるんだけど、駅から遠くないとこも十分あるし、一番活気もあるから」と何気なく返しては「んで、あそこはデパートね！鳴河崎町唯一なんだよね、品揃えは大きな街と比べたら良いとは言えないかもだけど、デパ地下のお総菜コーナーとかは高いけと美味しいのとか多いよ。たまに颯馬兄が買って帰ってくれるんだ」と周囲でも数少ない高層建物である七階建てのデパートを指差して)

居ない居ない。アプローチしてる人がいるんだ
（脇腹を小突かれつつ微笑みながら答えて。彼の兄だとはとても言えるわけもなく。「へー、面白そうだね。僕も興味あるなぁ。これでも学生時代は勉強ばかりで遊べなかったんだよね」とゲーム内容について聞けばその手のゲームを遊んだことがなく興味深そうに話を聞きながら。「あぁ、あのデパートは僕もお世話になってるよ。足りない家具とか買い足したり。お惣菜も見たけど確かに高かった」とデパートには行ったと言って思い出しながら答えて。相手の名前が出たのを聞けば「そうなんだ。オススメのお惣菜は何？　買ってみようかな」とデパートを見ながら興味を持って尋ねて）

「へぇ、良い人いるんだ！ならいつか俺にも会わせてよ！」(勿論相手の言うアプローチをしている人物が兄だなんて欠片も考えるわけもなくニヤニヤしながらそう提案して。そして相手は意外にもしたことがないようでその言葉に「勉強かぁ……やらないと颯馬兄に怒られるからやるけどあんま好きじゃないんだよなぁ」と苦笑いを浮かべ。デパートのお総菜でのオススメを聞かれれば「んー、俺は買ったことないし、颯馬兄も幾らとか言ったことないからわかんねぇけど……華陽軒のシュウマイ！一番大きな街に本店があるお店なんだけど、あのデパ地下に3,4年前からお店出してるんだよ！」と楽しげに話して)

上手く行って機会があれば考えておくよ
（相手の兄であることを告げるのは気まずさがあるため、簡単に紹介出来るわけもなく苦笑いして。「うちは厳しかったからねぇ。ゲーム機自体も持っていなかったよ。塾にばかり通っていたから友達と遊ぶ時間も無かった」そもそも友人も居なかったが。とは言えず。「僕も勉強は嫌いだったけど、今はその考え方も少し変わっていてね。やりすぎは良くないけど、勉強自体は大切だと思うよ。僕は数式の美しさとか分からないけど、世の中には数式が美しいと感じる人もいて、それはその数式を知らないとそう思うことも無かったかもしれない。勉強することで知らない世界を知って、自分の選択肢が広がることが勉強の意義であると思うんだ」と自分も勉強は好きではなかったが、今では別の考えだと言ってこういう考え方もあるとのだと説教にならないように気をつけつつ勉強の大切さを語って。「お、いいね！　シュウマイか、給料日の後とかお金に余裕がある時にでも買おうかな」とオススメの総菜について聞けば楽しそうに答えて）

「へへ、分かった！」(相手の考えてる事に一切気付かぬままその言葉の通りに受け取って。「えー、じゃあ学生の時ってガリ勉タイプって奴？」と今の相手の姿では正直想像がつかず、意外だと言わんばかりの驚きの声色で呟いて。そして相手の勉強に対する持論を聞いては「んー…まぁ、俺も勉強嫌ってか苦手なだけだし、俺なりに頑張るけどさ」と苦笑いをしつつ返して。そして相手の楽しげな様子に自分も楽しくなってきては嬉しげに笑っては「でさ、ここから少し歩いたところに科学館があってさ、入館料中学生まで無料だから小学校ん時から結構お世話になってたんだよね」と相手と2人で歩く道の先を指差しつつそう説明をしては「あ、でも入ったら結構楽しすぎて時間いっぱい使っちゃうから今日は入らないけどね」と苦笑を浮かべながら今日は科学館の中には入らない旨を補足しては「後、水族館とか動物園は鳴河崎町にはないけど、どっちも駅から大体数駅先にあるから一応行きやすいって言えば行きやすいんだよね。まぁ、水族館に行く時と動物園に行く時は路線違うしホームも違うからその辺も要注意なんだよね」と特に理由があるわけでもないが、さっき相手がアプローチを掛けている人物(兄とは知らない)がいると教えて貰ったからこそ、デートとかに使えそうな場所の説明をして)

そうそう、ガリ勉タイプ
（そうして必死になって勉強して刑事になったと思ったら件の事件のせいで左遷された。前の職場にいた同僚たちには終わった奴だと言われたなと思い出し不愉快な気分になるも苦笑いにとどめて。「ちょっと、全然そんな風には見えないって反応だけどこれでもエリートなんだからね？」予想外という反応を見せる相手に唇を尖らせて。内心では元、エリートだけどと呟いて。「へぇ、科学館。無料っていいね。友達と行ったら盛り上がったでしょ？」と相手が指差した先を見ながら微笑まし気に言って。「なるほどなるほど、デートへ誘う場所について迷ってたからナイス情報だよ！　どちらも一度は下見に行ってみないとなぁ。どう？　デートの下見ってことで良ければ一緒に行ってみるかい？　もちろん僕のおごりだよ」と水族館と動物園についての情報を聞けばデートに良いのではと考え、下見もしておきたいという理由で誘ってみて。両者にバレたら気まずいような気もするが、颯太と仲良くして欲しいと相手にも言われていたし、友人として出かけるのは何もおかしくないだろうと考えて）

「でも、今の風見さんすげぇ楽しそう」(相手の苦笑いの意味は知らないものの、素直な感想を述べては口を尖らせる相手に「へへ、ごめんなさぁい」と少し笑いながらもキチンと謝罪を述べて。そして科学館の感想を聞かれれば「うん、後は学校の夏休みの宿題でも利用したりしてた」と笑って話して。そして相手からデートの下見がしたいから一緒に遊びに行かないかと誘われれば「えぇ、俺可愛くないんだけどなぁ？なんてね、良いよ！」からかい口調ながらもまさか相手の想い人が男で自分の兄であるなんて知らないからこそアッサリと快諾して)

楽しいよ。こうやって町を楽しんだこともなかったからね
（刑事になってからは忙しくてそんな暇も無かった。油断すれば蹴落とされるような環境であったため、余裕もあまり無かったなと思いながら。それを考えるなら今はだいぶ余裕があり、約束した当初は面倒で仕方なかったが、町探索も少しは楽しく思えて。「それはナイスアイデアだね。遊びながら宿題も出来て一石二鳥だ」夏休みの宿題でも利用したと聞けば微笑み相手を褒めて。「大丈夫大丈夫。それを言うならタイプも全然違うから。颯太くんは元気っ子って感じでしょ？　その人はクールな感じだから。それにデート相手の代わりとかじゃなくて颯太くんの意見も聞いてみたいから誘ってるの」と、想い人の代わりではなくあくまでも『想い人がいてその人をデートに誘うのであればどう気遣った方がいいのか』という観点を言い合う相手として誘っているのだと言って。相手が快諾すれば嬉しそうにありがとうとお礼を言って）

(相手の楽しげな様子に自分までも嬉しかったり自慢に感じれれば笑顔になり。相手から褒められれば家族に褒めて貰える嬉しさとはまた違った嬉しさがあり嬉しげな笑みを浮かべつつも「へへ、まぁ遊びすぎて忘れちゃうときもあったんだけどね…」とたまに忘れていた事も素直に告白し。そして相手からその理由を告げられれば「へぇ、クールな人かぁ…まぁ、それなら俺で良いなら良いんだけど」とヘラリと笑い。そして相手からお礼を言われどういたしまして、なんて返せばちょうど科学館付近に近付いてきたため「あの建物が科学館だよ。たまーに偉い人とか有名人とかが来てイベントしてたりするんだよね」なんて科学館を指差しながら説明をして)

そういうのも楽しい思い出ってことで良いと思うよ
（相手の告白にそれはそれでありだと小さく笑って言って。「クールだけど初心っぽい人でね。仲良くなりたいって言っただけだとお友達としての意味に取られたから、付き合ってる人はいないのかと質問してようやく伝わったんだ。で、顔を真っ赤にしてたのが凄く可愛くてね」と先日のやり取りを思い浮かべれば愛おしそうに、かつ少し恋に浮かれた様子で言って。「へー、あれが噂の。知ってる有名人が来るならイベントに参加してみるのもありかも」と相手が指差す先を見れば興味を引かれた様子で）

「えぇー、そんな人今時いんだ！？会ったらぜってぇ風見さんへ抱いてた気持ちとか聞きたいなぁ」(相手から良いことだと思うと褒められれば嬉しげに笑い。そして相手からその人物との話の一部を聞かされればまるで惚気を聞かせれているようでニヤニヤしながら驚いた声をあげたり相手をからかうような口調でその人物の気持ち等本来なら踏み込むべきではないであろう事について言及してみたい、なんて相手に言うべきではないかもしれない言葉をサラリと告げて。そして相手の行ってみたい、という言葉に「うん、俺もたまに参加したけど結構楽しい時多いよ！たまに説明ばっかでつまらないのもあるけど」と笑いながら更に説明を続け)

えぇ？　会ったとしてもそんな恥ずかしいこと聞いて欲しくないなぁ
（相手が自分に対して抱いている気持ちを聞きたいと言われれば困ったように笑って。「もう僕の話はいいだろ？　そういう颯太くんは気になってる子とかいないの？」と颯太は恋愛していないのかと尋ねて。「いいね。今度どんなイベントがあるか調べてみるよ」一度調べてみて場合によっては参加し颯太に報告しないとなと考えて。面倒ではあるがそういうことが相手に好印象を与えるんだよなと思いつつ）