弦 2020-03-28 01:52:50 |
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…あ、お帰り。弦。(数種類の味の肉巻きおにぎりを作り終えたところで玄関が開く音が聞こえれば其方へと視線を向け相手の姿に嬉しそうに笑みを零し「肉巻きおにぎり作ったけど食べる?後、ポトフもあるよ。今日ちょっと寒かったから」玄関先まで迎えに出ては柔らかな笑みをそのままに料理の名を口にして)
弦を愛してるから言える言葉だってこと、自覚して?(くす)良かった、弦ともっと仲良くしたいって思ったから嬉しい。ロルは平気だよ。中~長も問題ない。イベント、起こすの楽しそうだ。弦の看病もしたいし?旅行にもいきたい。浴衣の弦、みたいな。
(「…遠夜サン、ただいま」数秒間目を見開いてしまったが、すぐに破顔する。そっか、一緒に住むんだなぁ、と忙殺の日々で実感が薄れていたことを再認識。「え?それ全部遠夜が作ったの?すげー!食う!」目を輝かせてはその驚きと尊敬を表すように首に手を回して抱き着き)
そういうのサラって言うからずりーわ、俺だって愛してる(むす)よかった、俺も花火の下の遠夜とか見てみたい。…てか俺が看病される側…?そうだ、この日常パート終わったら中長ロルのお試し的な感覚でどっか出掛けてみない?
お帰りなさい(共に暮らしているという事実を実感するように改めて迎えの言葉を口にしては嬉しそうに安心したように笑み。相手の背に腕を回しつつ「忙しそうだったから、手軽に食べられるものって思って。弦のために頑張ったんだ。褒めて」甘えるように相手の首筋へと顔を寄せてはちゅ、と音を立てて唇を寄せて)
弦が好きだからしょうがないね(ふふ)医者が風邪ひいちゃ意味ないでしょ。いいね。出掛けたい。旅行…よりも、デート?
…すげえ嬉しい、誉めるくらいいくらでもする。遠夜天才、マジでありがとう(首筋の感覚に擽ったげな声を上げてきゅうと抱き締める力を強め。お返しとばかりに肩口を柔く噛んでは、「エスコートしてくれる?」と悪戯に手を差し出して)
…医者の不養生とかいうじゃん(不満げ)うん、そう、デート。どこ行こうか、遊園地でも良いしデパートでも良いけど、…あれだ、例のウイルスのことは黙殺しといた方が良さそうだな…
ン…、やった。(嬉しそうにどことなく幼く笑っては一度離れ手を取り「もちろん」軽いウィンクと共に答えては相手をソファまでエスコートするように連れていき)
…俺が風邪ひいたら、弦、持つかな?(ぽつり)んー、じゃあ、デパートにしよう。買い物したり、ゲームセンターで遊んだりしたい。…例のウイルスとは違う次元ってことで(小さく笑って)
…ありがと。スマート過ぎて驚くわ(ソファに腰を下ろしては広げられた料理に目を輝かせる。「マジですごい、遠夜天才、なんでこんな完璧なの?」ぱんと手を合わせては「いただきます」そろ、と手を伸ばしておにぎりにかぶり付き、心底幸せそうに頬を緩めて)
…持たないかも、理性的な意味で(ううん)わかった、りょーかい。…今日これで寝ちゃいそうだから、そろそろいくな。置きレスお出かけ、了解です(びし)
海外じゃあ、これくらい普通だから…ある意味。(困ったように笑いつつ、褒められたことが照れくさくて頬を掻いて。相手の隣に腰を下ろし幸せそうに食べてくれることに満足そうに笑みを深めれば眺めるような視線を向けて)
俺も、我慢できなくなっちゃうかも(くす)じゃあ、宜しくお願いします。こっちは蹴ってくれていいからね。
え、普通…って、遠夜サン海外居たの?(驚いたように目を見開き、「御馳走様」と手を合わせては瞳の色を確かめるように覗き込んで)
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( 会社帰りにふっと目に留まったのはデパートのフライヤーだった。どうやら近くの劇団やらなんやらの催しが開かれるらしく、少し時期外れとも思える桜で彩られたパンフレットも配られている。以前ならスルーしたであろうそれも、恋人の姿が思い浮かぶだけで検討する余地が生まれるのだから不思議なものだ。『遠夜。あのさ、今度の休み、出掛けに行かない?』携帯を開いては何度も文字を消して、出来上がったのは結局簡素な文面で。一緒に住んでいるのだからその時にでも伝えればいい話ではあるのだが、どうも春の陽気で浮かれているのかもしれない。今日は家で待っているだろうか、それとも自分の方が早く着くだろうかと思案しながら「ただいま」と玄関に手を掛けて )
なん…かびっくりしたから言う、俺遠夜だけしか見えてねえよ。何でか知らんけど見当外れ…。遠夜は見てないかも知んないけど、弁解しとく。俺が好きなの遠夜だけだ
(仕事を終え、自分宛に届いた書類を持って相手の部屋へと辿り着いてスマホの電源を入れたところで、メッセージが来ていることに気付き。内容は簡素なものなのだが、色々考えた結果なんだろうなと思えば微笑ましい一文に見えて、すぐに返事を返しても良かったのだが帰ってくる彼を待ってから直接返事を言う方が、反応をみることができていいかもしれない。そう考えてはラフな格好でソファへと腰掛け持って帰ってきた書類へと目を通していく途中で玄関の扉が開く音が聞こえれば顔をあげ。書類を手早く纏めテーブルの端っこへと寄せ置いてから出迎えるべく立ち上がっては「お帰り」先に声を掛けてから玄関まで移動して出迎えると「デートしたい」玄関で靴を脱いでいる相手にぎゅうっと抱き着きながら甘えた声で強請るようにメッセージの答えを返して)
う、ん?知ってる。俺も弦だけが大好きだよ。
(「…ただいま、遠夜サン」同棲しはじめてから幾らも経っていないけれども、出迎えられる幸福感は薄れることはないのだろう。抱き着いてきた相手の体の優しい匂いに思わず肩の力が抜ける。「やった。初デートじゃん」相手からは見えないだろうが、にへ、と笑って了承の合図を受けとって。「断られたらガチで凹んじゃうところだった」冗談めかした言葉を告げる、けれども裏では結構本気。何せ男二人だ、外聞が悪いからと断られる覚悟はしていた。靴を脱いで向き合う形になったなら、腰に手を回して鼻先に軽くキスを落とし。「あ、そうそう、この近くのデパートで何か劇とか演奏とかするらしいんだわ。商店街とかちょっとしたお祭りみたいな感じ」受け取ったパンフレットをひらりと振って見せると、「遠夜ってそう言うの平気?」顔を覗き込むようにして反応を窺って)
…ありがとう。変なこと言った、上の全部忘れてくれ。じゃあこっちは蹴ってな
(同棲し始めて日数こそそんなに経ってはいないが、出迎えるたびに本当に自分は彼と愛し合っているんだと実感できる日々が続いていて。そのために何度でも出迎えの声をあげるし、玄関まで迎えに行ってしまう。来なくていいと言われても行かなければ気が済まないのは独占欲のひとつだろうか。そんなことを考えたのと同時に嬉しそうにしている声が聞こえれば現実へと引き戻され。「断るわけないだろ?弦は俺をなんだと思ってるの」断られるかもしれないとほんの少しでも考えたということが切ない。自分はハーフということもあってか異性、同性に対する日本人の恋愛の価値観がイマイチわからない。思わず心底不思議そうに首を傾げてしまうものの、そういうものなのだろうかと考えなおせば「…俺は、弦と出掛けられるなら、どこにだって行くよ」少しの間を置いて改めて想いを伝える。彼と出掛けることに自分は躊躇いを持っていないのだと少しでも伝わればいいと願って。鼻先へと落とされたキスで肩の力が抜ければ一度離れてソファまで彼をエスコートしつつ「お祭り…毎年、そういうときに限って地元では医者が必要不可欠になるから参加したことがないんだ!行きたい。」わかりやすくぱあっと表情を明るくさせると胸に手を添え嬉しそうに笑み、数度頷いて)
("何だと思ってる?"俺の宝物"……。好きだ愛してるは言えるけれど、こう気障な文句となると喉の奥で詰まってしまう。結局答えられたのは感情の裏の言い訳だけで。「いや…人混みとか苦手かなって。ホラ、遠夜綺麗だし、絡まれることもあるかもしんないじゃん?」歯切れの悪い口調は誤魔化しを含んでいる故だろうか。自分と並ぶことで付きまとう偏見の目はやはりある。経験則からなんて大層なことを言うつもりはないが、懸念をそのまま告げてしまうことなんて出来はしない。自分はともかく相手にそんな思いなどして欲しくはない。「……ありがと」情熱的とも取れる文句に頬を緩める、その表情は本当だ。けれども自身の行く先が地獄の底なら相手の手は掴まないのだろうな、と何となく。未だに素敵な人を独り占めしてしまっている幸福感に頭が追い付かない反面、自分で良いのかと言う不安がある。相手の問題ではなく自身の問題だ、だからこそ返事は感謝の一言だけ。これでこの話はお仕舞いとばかりに目を閉じれば、身勝手な思惑も見逃してもらえるだろうか。何だかもたつくような足を動かして、エスコートされるままにソファに座り、テーブルの上にぱらりと資料を広げる。もちろんそれは仕事の堅苦しいものではなく、近所の高校に通う生徒がデザインしたらしき色とりどりのパンフレットだ。屋台の案内やフェスの時刻が印字されているそれは明らかにお手製、プロのものには遠く及ばないがまたそれが味を出している。「ん、わかった、一緒に行こ。……あーでも、待ち合わせも憧れるわ。遠夜はどっちがいい?」笑みに見惚れたことは言わないままだが、結局のところ緩む頬と和らげた目が全てを物語るのだろう)
(不安、だろうか。歯切れの悪い口振りから感じ取れる感情を救える言葉を未だ自分は持ち合わせていない。何故なら、彼の中で自分が過剰評価されており、どこか遠い存在と思われているような感覚さえ覚える。お礼と目を伏せた相手の仕草で終了を知らされてしまえば“また何も言えなかった”後悔が波のように押し寄せる。それと同時に、まだ自分たちは付き合いだしたばかりなのだ。少しずつでいい。前に進む努力を怠らなければきっと彼も自分を想ってくれるし自分も彼の感情を全て受け止めることができるだろうと切り替え。相手の隣へと自然と腰を下ろし、色とりどりのパンフレットに自然と瞳が輝く「凄い。此れ、プロの人が作ったわけじゃないんでしょ?凄い…しか、出てこない」感想のバリエーションの少なさに困ったように笑いつつ、中身へと視線を向ける。屋台の案内、フェスの時刻。今まで体験したことの無いようなことが全て此処に詰め込まれているんだと思うだけで、微笑ましい気持ちと楽しみたいという学生の時のような気持ちが込み上げてきて自然と笑みが零れる。「俺はどっちでも…、弦が憧れるなら待ちあわせにする?」掛けられた声に反応するように顔をあげると和らいだ瞳が向けられていることに気付き、思わず恥ずかしさから視線をそらしてしまいつつ、緩く頭を横に傾けて。逸らしてから逸らすんじゃなかったと後悔が押し寄せ、おそるおそる改めて向けた視線に熱がこもってしまったことは無意識だった故に気付けないでいて)
(「学祭とかでありそうな感じだよな。懐かしいわー」凄い、凄いと称賛を繰り返す相手の様子が何だか微笑ましく思えて、同時に見逃してもらえた安堵に小さく笑んで。胸を撫で下ろすなんてことをすればバレてしまうから、代わりに一緒にパンフレットを覗き込む。「遠夜って高校とか大学の学祭どんな感じだった?」そしてちょっとだけ気になるのは過去のこと。歳の差だけは覆せないし、過去に戻ることも出来ない。以前見せてもらったアルバムの先が気になるのは、そんなどうしようもない事をせめて少しでも誤魔化そうとするからか。「マジで?じゃあお言葉に甘えよっかな、十時に駅前で待ち合わせでどう?」あそこ猫の像あるじゃん、その前で…と続けたが、たぶんその像の力に頼らなくても瞬時に見つかるだろう。何せこんなに目立つ相手だ。けれどやっぱり、こうやってあれこれと待ち合わせの場所を考えるのがいかにも"デート"という感じで楽しい。自分でも浮かれているのは分かっているが、本当に好きな人となのだから仕方がない。「…遠夜サンやっぱ可愛いよな」すっと伸ばした手が頬に伸びたのは半分無意識だったけれど、それを引っ込めることはしなかった。逸らされた視線も熱を持った視線も、一連の動作全てが愛しい。自分より大人で大きくて綺麗で、けれどそれを引っくるめて可愛いなんて思う相手が出来るとは思いもしなかった。一度唇と唇を重ねるだけのキスをしてから、お伺いを立てるようにじっと見て)
(「うーん……、大学のときは、それどころじゃなかったからなあ。早く医師免許欲しくて、がむしゃらに勉強してた。そんなことをしても早くもらえるわけじゃないのにね」緩く頭を横に傾け記憶を辿る。10年以上前の話だ。印象的な出来事があれば憶えているのだろうが、大学時代は特に勉強に熱を入れていた所為で記憶が定かではない。焦ってどうする、と父親に怒られたことを思い出し自然と自嘲してしまう。「弦は?どんな学祭してたの?」自分ばかり質問責めに合うのはあまり好ましくないな、と言わんばかりの様子で自嘲から柔らかな笑みへと変われば頭を傾けたまま問い掛けて。「十時に駅前…猫…、あそこかな?」待ち合わせ、というものをあまりしたことがないということと、駅を利用し始めたのは彼の部屋に通い始めてからなので曖昧な記憶を辿りつつも象徴的なものを思い出せば一人納得し。頬へと触れる指先の心地良さに自然と目が細められ、彼の口から何度と聞かされる“可愛い”は、慣れなくて恥ずかしさが込み上げてきて頬が熱くなるのを感じ「急に可愛いとか言わないで。吃驚して恥ずかしくなる…」軽く触れ合うだけのキスは余計なことを全て振り払ってくれる。その事実が少し恨めしくて、八つ当たり半分で恨めしそうに見詰め返したがすぐに表情を綻ばせると「弦はカッコイイね」仕事を必死に頑張る姿も、こうして不安を抱きながらもデートに誘ってくれる姿も、全てが愛おしく自分からはとても格好いいと思える。その気持ちが全て伝わればいいのにと思いながら相手の首に腕を回し身を寄せ此方からも触れ合うだけのキスを返すことで受け入れる姿勢を示して)
返事が遅くなってごめん。医者が…とか言っておいて体調を崩しててすぐに返事を返せなかった。本当にごめんね。もう治ったから、大丈夫。こっちは蹴ってくれて大丈夫。
(「え、そうなの?遠夜サンめっちゃえらいじゃん」ぱちぱち、と目を瞬いてはその堅実で真面目な姿勢に密かに驚く。その様子を想像するとなんだか微笑ましく、いい子いい子と言いながら笑み半分に頭を撫でる。自嘲が滲んでいるのは何となく察せられたが、だからと言ってその姿勢を嘲ることに同意は出来ない。「え、俺…?うう…ん…まあ…あー、ホラ屋台とかコンテストやってたね…」質問が飛んで来ると、自身の学園祭の楽しかった記憶と、黒歴史としか呼びようの無い記憶とかない交ぜになって襲ってくる。正直なところこのまま忘れ去りたい記憶もままあるが、楽しかったことは事実なので「遠夜サンも今度一緒行く?」と首を傾けてみよう。「んー、これ」そういえば同棲したばかりだ、道順などもまだ不慣れであろうということを失念していた。納得はしているようだが、念のためスマホを開いて画像を見せる。「……事前に申し込んでたら良いの?」スッと目を細めたのは無論スイッチが入ったからだ。可愛い、という感想をまさか男相手に連呼する日が来ようとはまさか思いもしなかった。恨めしそうな顔すらもなんとなくゾクゾクしてしまうのだからもはや末期だと言えるだろう。「……遠夜サンこそ、不意打ちはズルいと思う……」そんな台詞と共に後頭部に手を回し、そのまま体重を掛けて)
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(明らかに、早起きしすぎてしまった。「遠足に浮かれる小学生かよ俺」ぽつりと零しながら相手を起こさないよう支度して、あまりまともな格好の無い手持ちの服からなんとか見栄えするものを取り繕う。「まあ…デニムジャケット着てればまともって風潮あるし…」もちろんそんな世論など存在しないが、黒いスキニーに白いシャツ、デニムジャケットならば雑踏の中浮きはしないだろうと決めつけて。そっと玄関を出れば朝の空は雲がひとつ二つあるだけの快晴である。徒歩で猫の像まで来てはその近くのベンチに腰掛け、ついでに仕事のメール確認でもするかとパソコン用の黒い眼鏡を掛けて)
いやうん…蹴れねーわ。体調良くなったんならホント良かった。マジで気を付けねえとヤバイもんな、今の時期。遠夜サンが倒れたら俺心配で屍化する。
あとあれ、別に毎日返信が義務とかじゃないからな?謝る必要もないからな?別に何日何週間何ヵ月空いたっていいよ、俺遠夜からの返信だったらずっと待ってる。蹴れねえわとか言ったけど、こっちは蹴って。
(隣にあったはずの温もりがいなくなって数十分ほど経った頃。漸く目を覚ますも、隣で寝ていたはずの相手がいなければ重たい瞼がぱっちりと開かれる。すぐに身体を起こそうとするが、相手に愛された身体の重みに中々素早く動けず。それでも、寝室だけでなく共に暮らすこの部屋に相手の姿が無いことを考えると既に先に向かったのだろうと考えられる。「こういうところは可愛いんだよなぁ…、」先に向かったという事実が自分とのデートを楽しみにしてくれているんだと実感させられて微笑ましい気持ちになりながらも、待ちあわせの時間にはまだ時間があるからと簡単にシャワーを浴び身嗜みを整える。髪型はいつもと同じハーフアップ。ブイネックの薄手の灰色のシャツに白の細身のズボンを合わせ上からカーキ色のカーディガンを羽織る。指輪とピアスも忘れずに。財布と携帯があればいいだろうと鞄は持たないまま、サングラスを掛けて部屋を出てはきちんと施錠。スマホで時間を確認すれば待ち合わせ時間の30分前。とはいえ、既に相手は待っているのだから早めに向かわなければと早足に待ち合わせ場所である猫の像近くまで移動。相手の姿を探すように周囲へと視線を向けてからスマホを取り出せば“早起きくんは今どこ?”朝起きて隣に相手の姿がないのは寂しい。その気持ちを込め意地悪をひとつ加えて送信しては改めて周囲へと視線を向けて)
じゃあ、俺も蹴れない…なんて。ひとつだけ言わせて。有難う。愛してる。
(『ピコン』と言う音と共に携帯が振動。文面を開けば、そのまま自分の内心までも見透かされているようで思わず赤面。「ベンチに腰かけてた。…浮かれた」そのままキョロキョロ探していれば、さして時間もかからずに周囲より頭ひとつ高い相手の姿が目に入る。猫の像より何よりも、相手が一番の目印だなあ、なんて。「…目立つなー」雰囲気、髪色、顔立ち、長身、どこをとっても周囲とは一線を画している。空は快晴でどこまでも青く、ただ立っているだけでも絵になりそうだ。ノートパソコンを鞄に仕舞いながら、「遠夜」と呼び掛けてみる。「浮かれすぎてなんか、早起きしすぎた…」メールの文面をそのまま拡大したような台詞を呟きながら目をそらしつつ頬を掻く。「…とりあえず、行く?デパート」デートは慣れていない。過去の彼女たちとのデートだってそんなに回数があるわけではない。ぎこちなく様子を伺いながら、これまたぎこちなく用件を切り出して)
…ズルいよなー。不意打ちはズルい。俺だってだよ…
(もしかして何処かお店に入って時間を潰しているのだろうか?自分よりも此処の土地に詳しい彼ならば有り得そうだが、待ち合わせをしている時点で此処から動くとも考えにくい。などと考えていたところでメッセージの返信が届けば“やっぱり”心の声が漏れでるかのように笑みが零れる。さて、ベンチはどこだろうと改めて周囲に視線を向けたのと同時に自分の名前を呼ぶ声が耳に届き、そちらに視線をむけると華やかに色付いた。サングラスを掛けているのに彼だけが色付いて見えるから不思議でそれと同じくらい自分には彼しか見えていないのだと自覚させられ思わず笑ってしまう。返事とさして変わらない言い訳をする彼もまた愛しい「知ってる。でも、朝起きて隣に誰もいないのは弦と暮らし始めて寂しいって知ったから…せめて書き置きは残して」ふ、と小さく笑いながら頷くも注意というか説教というか不満というか。そこまで口にしたところで少し身を屈め相手の頬へと軽くキスを送ることで終わりを示す。「デパート行く。お腹空いた、ご飯食べれるかな?」サングラスを外しながら朝ご飯を食べてないので少々の空腹。軽くでいいからお腹に入れておきたいと思えば緩く首を傾げながら問い掛けては手を差し出す。握って。君は俺の恋人なんだから、遠慮なんてしなくていい。堂々としていよう。そう心に願いながらじっと見詰めて)
(「……あ。書き置き」思い至った、と言うように呟いて、自分の迂闊さに頭を掻く。どうも自分は要領が良くない。「うん、次からちゃんと書いとく…次も俺とデートしてくれる?」頬へのキスは衆人環視の中ということもあってか、嬉しくも気恥ずかしさが増す。様になっていないわけではない、むしろ絵になりすぎて怖いくらいだ。「……こういうの、二人だけの時にしねぇ?」優しい相手がその行動で終わりを告げてくれているのは分かるけれど、やっぱり迷惑になるか、と。「オッケー。俺も腹減ったわ。行こ行こ、遠夜は何食いたい……」差し出された手を前にして一瞬硬直。握っていいものかどうか。視線は明らかに答えを示しているし、自身もまたその手を掴むことを望んでいる。ただ、迷惑になるかどうかが躊躇いを生んだ。「……」長考の末に、スッとその手を握る。「デパートさ、フードコートは地下にあるけど、パン屋とかマックとか、テイクアウト系は三階にあるんだよ。どこ行く?あ、でも昼時近いし道中屋台出てるかもしんない、結構種類あったよ、王道だとたこ焼きとか」べらべらと饒舌になってしまうのは緊張のせいだろうか。握った手にきゅっと力を込めながら、大股で歩き出して)
まず、遅れてごめん。仕事で…って言い訳にもなんねーよな。
あともうひとつ謝らなきゃんないんだ。俺これからちょっと忙しくなりそうで、今回みたいにちょくちょく遅れることあると思う…。本当にごめん。
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