ジェイド 2020-03-23 23:02:04 |
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ありがとうっ!早速だけど、ぽいぽいっとpfを提出させてもらうね。
いやー、普通の設定は無理なのかよってぐらい両方濃くってどっちの方がまだ絡み易いっていうか、君を楽しませれるかなぁ。
悩む時間も勿体無いし、一応両方提出してみたんだっ!
だから一先ず指名、希望ルートは現在のところ空欄にさせてもらってるんだけど…大雑把に説明させてもろうとエマの方は自分だけを見てほしいから狂った様な愛に一緒に堕ちる、若しくはそのエンドまで辿り着かなかったら片想いのまま非業の最期、捕食ルートなのかなって。ルークの方は普段はそんな事ないんだけど、持ってるコンプレックスのせいで時たま弱くなっちゃう感じ。自分がこうだ!って思って納得したら捕食もすんなり受け入れちゃう気がする。
ジェイドは僕の大切な人だからね、それ以外で動かしたいキャラとかいれば、そのキャラと相性いい方…うん、いるのか分からないけども、君にも楽しんでほしいからさ、どうかな?
ただ夏祭りの時は僕が君を独占しちゃうからね!ふふんっ。
――失礼、諸事情で今から私に交代させて頂くわね。お久しぶり、可愛いルシアン。事情、っていうのは後程きちんとご説明するわ、安心して頂戴ね。
早速新しいおふたりを拝見したのだけれど、本当にどちらも魅力的で胸が高鳴ってしまったわ。特にご令嬢の方は、背後の嗜好をことごとく具現化したような子で……くらくらしてしまうくらいよ。悲劇的な生い立ちに裏付けられた危うげな精神が筆舌に尽くしがたいほど素敵だわ。頭の中を覗かれたのかしら、なんて背筋が震えちゃう……うふふ。
貴方さえ良ければ、ひとまずはご令嬢とお話させて頂きたいわ。ルートに対してのお考えも聞かせてくれてありがとう、恋愛や共依存ルートがとてもよく似合いそうな子で今からわくわくしてしまうわ。どのような終わりを迎えるかは分からないけれど、とても濃密なグランギニョルを紡げそうで楽しみよ。
相性が良さそう、というよりかはどんなケミストリーが起こるのか興味深くて会わせてみたいだけという表現が正しいかもしれないけれど、指名候補としてはギレルモ、ジョネル、ミゲル、アッシュかしら。初回にお迎えに上がれるのは今挙げた中ではミゲルを覗く3名だけれど、気になる怪物は居る?もちろん、候補外でもエマちゃんと絡ませてみたい怪物が居たら遠慮なく教えて頂戴ね。
さて――冒頭で触れた『事情』の件なのだけれど。もし今からお伝えすることで貴方の気分を害してしまったら、本当にごめんなさい。
ジェイドと貴方が他の誰にも邪魔できない固い絆と深い愛情で結ばれているのは十二分に理解しているしとてもとても幸せなこと……それは現時点では性愛に似て非なるもので、どちらかといえば友愛に近いものだと私達は感じているの。もしこの段階で貴方との間に解釈違いがあればごめんなさい。
とはいえジェイドには貴方しか居ないのは確固たる事実なの。ジェイドにとって、今の貴方は幼過ぎて、無意識に倫理的ストッパーが掛かってそういう関係に発展するのを躊躇っている状態なのだと思うわ。だから、もし貴方がこの先お屋敷で大人になった時は、もしかしたら恋愛が関わってくるのかもしれないと考えているし、ふたりが同じ気持ちならそこで初めて【CP成立】になると思っているの。
正式に【CP成立】すれば、他の演者の方々はジェイドとルートに縛られない(つまりどのルートにも辿り着かない)交流のみとなるし、貴方さえ不快でなければ、ジェイドと結ばれた証として公式HPの方にも貴方の名前を記載させて頂くことも検討しているわ。そのくらい、貴方は私達にとってとても特別で大切なひとということをずっと伝えあぐねていたの。遅くなってごめんなさいね。
……これをジェイドの口から語らせるのはあまりに無粋だから、こうして私からお伝えさせて頂いた次第よ。突然ごめんなさい、こんなに長くなってしまって。もし私達と貴方の間で認識の違いがあれば、今後ご縁を繋いでいくためにもこの場ですり合わせが出来ればとっても幸せよ。
やあ、マリーシュカのお姉さん!えへへ、マリーシュカにも会えて僕ってなんて幸運なんだろう!
一先ずPFの段階で難色を示されなくって良かったっ。ギレルモさんとミゲルさんは特殊キャラだから後日って感じかな?今のところは不完全な者同士、ギレルモさん中心に絡んでみたいなー!初回はコミュ力の塊であるジョネルさんに案内してもらいたいなぁ。どうかな?
ええ!そんなにジェイドのこと僕が独占しちゃっていいの?
そうだね、たしかに今の僕達の関係ってお互い大切だけど恋愛かって言われると僕の精神年齢がそこまで成熟してないもの。ただ、大人になった僕は更にジェイドのことを離さないだろうけど。それだけは自信あるよ!
【CP成立】に関しては願ったり叶ったりだし、なんなら土下座してお願いしたいくらいだけども、ジェイドの幸せとか…他の可能性奪っちゃわないかな?
ううん…、もしその時が来たらジェイドのこと独占させて下さいっ!……って、なんか照れるね。えへへ。
君たちが紡ぐ本編の方に支障がなければ、是非とも!ただ、もし不都合があったりしたら無理はしないでね?
ああ……良かった。ごめんなさいね、もしこれを伝えて少しでも気に障ってしまったらどうしようってずっと不安だったから。貴方が理解してくれて嬉しいわ。勿論、この先何があるかは分からないけれど――きっと、いいえ絶対に、ジェイドの心の空白を埋められるのはルシアン、貴方だけだって信じているわ。
その時が来たら、是非私ではなくジェイドと誓いを立ててあげてね。――――ルシアン、本当にありがとう。
さて!裏話はこのくらいにして、また新しいグランギニョルを始めましょうか。
そうね、特殊キャラへの配慮をありがとう。ミゲルは人を避ける性質上 初回の案内役は荷が重いのだけれど、お望みであればギレルモは初回でお迎えに上がらせることが出来るわ。貴方たちだけの特別、だけれど…うふふ。ごめんなさい、言葉が足りなかったわね。
とはいえ貴方の言う通り、やっぱり初回はフレンドリーな子の方が良いかもしれないわね。一度ジョネルにお迎えに上がらせるけれど、もしギレルモの方が良ければ遠慮なく言って頂戴ね。
***
ジョネル:
(揺らめくコートの裾を椅子の縁から漂わせながら猫背気味に机へ齧りついているのは、毎夜恒例の日記をしたためている為で。記憶を刈り取る死神のくせに自分の記憶が不規則に欠落してゆく、先天的な欠陥を抱えた死神。わずかでも記憶を繋ぎ留めんと彼が必死に悪あがきしている最中には原則として誰も干渉しないのが暗黙の了解だが、珍しくカラスの使い魔が机に降り立ちカァと鳴き。ガリガリと狂気的なまでにペンを走らせる音がピタリと止んだのは、執筆を邪魔されたからではなく新しい獲物が来たと耳寄りな情報が入ったからで。「 新入りかー…ずいぶん久々な気がするじゃんね。他のやつらに獲られる前に挨拶しに行かなきゃ 」立ち上がった勢いで椅子が後ろにガガガと後退し、その音に驚いたように使い魔は飛び去って。踵を返すこともなく、その場で窓から差し込む月光に透けるように消失し一瞬にして貴女の部屋の前に現れ、記憶への飢えを埋められるやもという期待を込めてノックの返事を待ち。数秒後に返ってきた可憐な少女の声に高揚感を覚え、尻すぼみな言葉が恐怖に塗り替わったのを経験則で感じ取ればそのままゆっくりと扉を開け「 ちーす、メアリーでぇす。……流石に無理あるか。 」精一杯かわい子ぶった声と共に両拳を顎に添えて寒気のするウインクまで添えつつ一歩部屋へ立ち入ったが、一拍の沈黙を置いて普段のトーンで自嘲気味に呟きながらガリガリと後頭部を掻いて。ふっと息を吐き気を取り直せば困った様な笑みと共に顔の前で両手を合わせ「 メンゴ。君の緊張が和らげばって思ったんだけど、余計混乱させちゃったよね。 」語り口調からかなりポップな謝罪にはなったが謝意は心の底から伝え「 俺はジョネル、ここの住人。君が一人で心細くしてるかなーって思ったら居ても立っても居らんなくてさ。今夜教えてあげられる事はいっぱいあるし、少しの間だけここに居させてくんない? 」拒否されればすぐに踵を返す覚悟をしながら、それまでは貴女と関わろうと人好きのする雰囲気でお願いを形を借り、長い髪に女性らしい風貌の貴女はまるでお姫様の様だと素直な感想は胸に仕舞い「 しんどかったらベッドの上に居ていーよ。俺も絶対ベッドには触らないって約束するしさ 」手慣れた様子で部屋の中の簡易キッチンから冷たい水の入ったデカンタを取り出し、ベッドから手を伸ばせば届く位置のサイドテーブルに水で満たされたグラスとデカンタを置いて「 気が向いたらどーぞ。 」と目を細めて人懐こく笑って。どう見ても不自然な黒煙のようなコートをたなびかせ、光彩と白目が反転した不気味な双眸には自分から言及することなく、ベッドの対面に位置する一人掛けのソファに腰を下ろし)
下げ忘れは前に僕もしちゃったからね、お互い様ってことで!
此方こそ、そんな素敵な話を僕にしてくれてありがとうっ!大人になるのが今から楽しみだよ。
なるほど、そうだったんだね!なら次回は是非ギレルモさんとお話しさせてもらおうかなっ。
色々と不安定な子だから、途中で絡みにくいとかってなったら遠慮なく教えておくれよ!
とくにこれに対してお返事は大丈夫だからね。また何かあれば声を掛けておくれ。
***
(ゆっくりと開く扉は緊張感からか、まるでスローモーションのよう。ピンと張った空気を打ち消す様に場違いなまでの陽気な声音が奏でるのは冗句混じりの挨拶で、知らず寄っていた眉間の皺も開くというもの。目の前でコロコロと変わる表情も、楽しげに回る口も、軽やかな仕草さえ、遠い記憶の中にある姉と重なってしまったのは何故か。あの奇妙な招待状が起こしたある種の喜劇とでも言おうか。くっ、様々な感情が綯い交ぜとなり、泣き笑いの表情は面を下げることで隠し、一呼吸置いたあと、己もソファへ座るべく身を起こす。「ジョネルさん、と仰るのね。お気遣い有難う。後でいただくわ」サイドテーブルに置かれたグラスとデカンタにチラリと視線送り、感謝の意を示すものの、やはりと言うべきか、先程の口渇感は失せ、けむるような睫毛を瞳にかぶすと遠回しの謝罪を示す。膝の上に揃えて置いた手の先はまるで冷水に浸した様に冷たく、気丈に振る舞う態度とは裏腹に身体は正直に恐怖を現す。「……私、自分の部屋に居たはずなの。それなのに目が覚めたら知らない場所で…目の前には今まで会ったことない様な貴方がいるでしょう?まるで魔法のよう。それか妖精にでも化かされたのかしら?」ふふ、と緩やかに口角を持ち上げ、さも楽しげに話してみせる傍ら、臆病な本来の自分は情けなくも姉の亡霊の影に隠れ込んでしまっている。あの時の悲劇はそれも誘因の一つであった筈なのに、所詮成長はしないのだ。明らかに人間でない彼に豪胆にも片手を差し向け「もちろん、歓迎するわ。貴方のお話を聞かせてちょうだい」と話の続きを促しながら、未だあの日から抜け出せぬ弱き己を胸中で詰って)
……どったの?やっぱしんどい?
(火傷必至の挨拶には冷ややかな視線を送られることを覚悟していたが、一瞬垣間見えた複雑な表情を見る限りかなり無理をさせてしまったのだろうか。貴女の抱える事情には未だ触れる余地もなく心配そうにひゅんと眉尻を下げて、上体を起こす動作に対して慌ててブンブンと両腕を振り「 いいっていいって!そこに居た方が楽でしょ。君みたいな華奢でキレイな子が無理してんの、俺ダメなんだよ 」わーわーと大袈裟にジェスチャーした後、何故か自分の方が苦虫を噛み潰したような痛々しい表情を浮かべてかぶりを振り。「 妖精かあ。そんな可愛らしいものだったら良かったのかなあ 」答えを求めない問いは空に舞い、一見すれば嫋やかで余裕のある微笑みに言い知れぬ引っ掛かりを感じてぴたりと体の動きを停止させ、差し出された手を握るのも忘れたまま何かを考えこむようにじぃっと貴女の顔を見つめて「 君を見てるとさ、何でかなぁほら…頑張れー!じゃなくて、もういいよ頑張ったよ!って思えちゃうんだよなあ。何でなんだろ 」その感情の根拠は自分でも言い表せないが、確固たる証拠のない漠然とした違和感を敏く感じ取った死神は難しい表情で首を傾げて。しかし真相に独力で辿り着けないのは火を見るよりも明らかで、ならば常人の持たない極上の記憶を宿す可能性の高い貴女には怪物としての興味が高ぶるばかりで、その手始めとして「 そうだ。君のことはなんて呼んだらいいの? 」こちらから話を、と誘っておいて最初に問い掛ける格好となりながらようやく小さな手を柔く握り「 うっわ冷た!! 」白黒ちぐはぐな双眸を零れんばかりに見開いて「 まるで先輩と握手してるみたいだ。人間の女の子は冷え性多いよねー 」氷のように冷え切った手は体温を持たない同類の存在を思い起こさせ、まさかそれが恐怖からくるものとは思わず呑気に世間話のように感想を吐き。そっと放した手を振ればカラスの姿をした使い魔がどこからかすぐに現れ、魔物の言語で何かを命じたかと思えばすぐに慌ただしく羽ばたきを始め――数秒後には暖かいティーセットがすぐにふわふわと宙を舞いながら用意されていき「 そんなに冷えてるんじゃ水よりもあったかいお茶のがいいよ。知りたい事には全部応えるからさ、まずは身体を暖めなきゃね 」この不気味な屋敷に似合いようもないポップなマイペースを存分に発揮しながら、テーブルに頬杖をついて人好きのする笑みを湛えて)
…ふふ、おかしな方。そんなに疲れて見えたのならば、私もまだまだ精進せねばならないということね。(よく動く両腕の動きはじっと追っていると目が回りそうなほど忙しなく、口を挟む隙もないほどの慌てぶりは思わず笑いを誘うもので、袖口で口元を隠しながら小さな笑み溢して。彼が言葉を発するたびに心が落ち着き冷静になっていく自身がいる。張っていた肩の力を抜き、然しシャンと伸びた背筋はそのままに美しいライムグリーンの瞳を見詰める。神秘的でいて奥に何層も重なって見える色合いが、今は知的な煌めきをもってして己を見極めようとでもしているのか。紡がれた突拍子もない発言は得てして的を射ており、片方の柳眉がヒクリと小さく跳ね上がってしまったのを制御しきれず、強張りそうになる表情筋を細く緩やかに吐いた吐息と共に笑みの形へ解いて。「本当に不思議な方。頑張らないことには何かを成し遂げる事は出来ないわ。生きている限り、きっと努力はし続けなくてはいけないと思うの。…って、初対面の方に言うことではないわよね。御免なさい、忘れてちょうだい」難解な問題に直面したかの様な複雑な形相で誰とも知れぬ他人を思い遣る彼に少しばかりの本音を覗かせ、僅か触れた手の温度に驚いた事は自己紹介の裏に隠して。「これはとんだご無礼を。私はエマと申します。先程言った通り、ここの事は何も知らないの。だからここのルールに反しない呼び方で貴方の好きな様に呼んでくだされば結構よ」ソファから立ち上がり、優美なカーテシーを披露。心配の言葉が飛ぶ前に、と素知らぬ顔で腰を落ち着けては乱れたドレスの裾を片手でささっと直し。その間にも彼は何くれとなく世話を焼いてくれるものだから、ティーセットの準備が出来るまで色々と疑問に思う事は口にせず、静かに待ち。ただ視線は自然とカラスに向いてしまったのは不可抗力というもの。仄かに広がる甘い芳香に頬緩め、カップのハンドルを親指と人差し指で持ち、透き通る様に美しい黄金色を目で楽しんでから口へ運び喉を潤して。「とっても美味しいわ。ありがとう。…ここは、私が住んでいたところとはまるで違うのね。カラスが執事だなんて聞いたことがないわ。それにカップが浮くなんてことも…。貴方も…」音を立てずソーサーにカップを戻し、憂う様に瞼伏せたまま、一つ一つ見たままの事実を言葉にしていく。はたして、どこまで踏み込んでいい境界線なのか予測もつかず、ニコニコとまるで邪気のない幼児の様に笑う彼に困った様な笑みを返して。親切に接してくれる彼に誰だ、と聞くのはあまりに無礼だろう。知らない方が良いこともある、この先の話の舵取りは彼へ任せよう)
ふーん……精進とか努力とか、君はずいぶん頑張り屋さんなんだね。
(頬杖をつきながら食指で白い頬を一定のリズムで柔く叩きながら貴女の言葉に傾聴して。自身はクォーヴと違って食事は質より量を重視する派だが、何の苦しみも目的もなくのんべんだらりと生きている獲物よりは、眼前の異形に対しても凛と〝自分〟を保っている貴女のような人の方が食べるに値すると感じる。同じ大きさでも、スカスカの果実よりもたくさんの果肉と果汁が詰まった方が腹持ちが良いだろう。そんな打算はおくびにも出さず「 君が頑張ってること、いつかいっぱい教えてくれたら嬉しいな 」と屈託なく微笑んで見せて。自分の命の保証すらないこの状況下でここまで洗練された挨拶が出来るなんて、きっとこの子は只者じゃない。この子をそうさせる重大な秘密がある筈、その記憶さえ食べれたなら――――無意識のうちに記憶への執着心はほんの数秒でも死神の正気を奪い、不気味なほど目を瞠って貴女をじっと見つめること数瞬。美味しい、との可憐な声にハッと我に返り。「 ああ……うん、きっと吃驚しただろうね。僕も驚いたよ、ここに来るヒト達はみんな取り乱すからさ。君みたいに冷静なコは初めてだな 」人間界の飲み物ゆえに味なんて分かりっこないティーカップの中身に視線を落とし。さして飲む気も起きないそれに、白い角砂糖をひとつ摘まんでポチャリと沈め「 カラスの執事も浮遊するカップも、このお屋敷では日常なんだよ。住人も僕以外に沢山居て、――みんな君に興味がある筈だ 」淡々とした、それでいてどこかメランコリックな視線は依然としてカップに注がれたまま。もうひとつ、今度は茶色の角砂糖を沈め「 ここは黒薔薇の呪いに支配されたお屋敷。僕も君も、一生ここから出られない。君は僕達の為に用意された……ゴハン、なんだよ。 」ポチャン。3つ目の正方形が紅茶の海に沈み、マドラーでかき混ぜなければ完全に溶ける筈もなくただ苦しむように角だけが少しずつ溶け丸みを帯びていき。そっと上目だけを貴女へ向けて「 ……理解、できる? 」とおずおず問い掛けて)
ジョネルさんは、白鳥という鳥をご存知かしら?純白で優美な鳥なのだけど、とても優雅に水面の上を泳いでみせる反面、水面の下では必死になって水掻きしているのよ。努力は見えぬからこそ、美しいもの。
(真っ直ぐに笑顔を向けてくれる顔が自分の過去を知ればどの様に陰ってしまうのだろうか。父の様に、母の様に、仮面を貼り付けたような能面に変わってしまうのではないか。細く繊細な人差し指でハンドルの形を追いながら、ツルリと美しい陶器のカップに白鳥を思い重ね。楽しげに囀る内容は鈍い殿方を詰る様な甘さを含んでおり、言外に秘密を暴くような無粋な真似は紳士がするべきことではないと嗜めてみせ。前方から注がれる何やら怪しげな視線には気付いたが、危機感が警鐘を鳴らし、触れるべきではないと強く訴えている。一挙手一投足、見逃さぬかのような…否、もっとその奥の深淵を覗き込むかの様な視線が本能を強く揺さぶる。うまく平常心を保てているだろうか、願わくばカップを持つ手が震えていないといい。カップから離した手は再度膝の上に揃えて置き、僅かばかり重ねた手に力が入ったのは緊張の表れ。「そうね…こんな奇奇怪怪な出来事にはそうそう合わないもの。驚く方が自然だわ。私も出迎えてくれたのが貴方でなければ取り乱していたかもしれないわね」黄金色の海に沈み溶けていく塊を視線で追いながら、それとなく冷静でいられた理由を弁明するのは常人を装うとしているからか。揺れる波紋に飛び散る錆色の景色が一瞬瞳の奥にチラつき、それ以上余計な口を効かぬよう一旦閉じて。耳に届くのは大凡非現実的で理解しかねる内容、その節々で彼が立てる生活音だけが酷く現実じみて奇妙な心地に陥る。驚きに目は見開き、不安定に視線は宙を彷徨う。やがて膝の上に落ち着いた視界の端、映り込んだのは柔らかな甘いミルクたっぷりの紅茶色。"ああ…"知らず漏れた声音は歓喜か悲哀、どちらに濡れたことだろう。「……そう、そうなの…。きっと、"今日"じゃなければ夢でも見ているんだって叫んでたわ。でも、そうなのね。把握はしたわ。理解は…暫く出来そうにないけども。ゴハンと仰るなら何故…貴方はこんな話を私にして下さるの?」荒唐無稽、まさにその一言に尽きる。瞼は伏せたまま、頬に睫毛の影を落とし、小さな声量で淡々と応じ。残念ながら視線を合わせる勇気はない。きっと瞳は仄暗い光に濁っているだろうから。過去の罪を精算する時が来たのか。重ねていた手は祈る様に組まれ、ただただ判決を待つ罪人の如く、続く言葉に耳を傾け)
アハハ、じゃあ君も見えない所ですっごく頑張ってるんだ。良いね、ますます君が魅力的に見えるなあ
(窘められたのだと察しているのかいないのか、相も変わらずただただ無邪気な笑い声と共に手のひらを上に向けた状態でしならせた食指を貴女へと向け真っすぐな視線を送る、そのちぐはぐな光彩が獲物に狙いを定めた四足動物のように爛々と底光りしたのはほんの一瞬の出来事。「 そう言ってもらえたら嬉しいな。確かにこのお屋敷には話が通じない奴もいるからねえ 」話の通じない云々は無論同胞の中にも気難しい者が居ると示す意味もあるが、廊下を徘徊する理性なきバケモノの存在は言いあぐねて。まるで人間から自分の立ち居振る舞いを評価されたかのように感じては、嬉しいともつかない複雑な声色で「 僕が君に親切にするのは、君が素敵な子だからだし 」視線を明後日の方向に向けながら半ばひとりごとのようにぽつりと。実際にこの世に在り得ない理不尽を凝縮したような事実を告げても目に見えて取り乱したりはしない貴女に感心とも怪訝ともつかない視線を注ぎながら「 ……今日? 」よほど特別な日なのだろうかと興味を惹かれ思わず聞き返し。そこに記憶への渇望を埋めてくれる濃厚な食事の香りを目敏く感じ取り、急いて事を仕損じぬように期待に逸る心は精一杯表に出さぬよう努め。何故、の問いには目許を細めて目一杯口角を上げ「 さっきも言ったじゃん。素敵だなと思った子に色々してあげたくなるのは当然のことでしょ? 」不気味な双眸に黒煙の衣装、人間とはかけ離れた異形をぶら下げながら発言はどこまでも人間臭く「 だから君がすぐ他の奴に食べられちゃったらヤだな。 」あくまで喰われる事を前提とした発言はそれがこの屋敷の常識だからだろう。折角綺麗なのに、伏し目がちな瞳を勿体ないと言わんばかりの半ば乞うような目で見つめ続け)
…ジョネルさん、そう言う貴方もそうなのではなくて?
(向けられた人差し指を一瞥し、そのまま紅茶の上へ滑り落として。話の最中、幾分温くなった液体を飲み下し、白い陶器を鑑賞したまま送られた視線には返さず。努力を知らぬものが頑張った、頑張らなくて良い、とすんなり言葉に出来るはずない。何せ、神に愛された一握りの幸福な人種は頑張ることさえ知らぬのだから。空になったカップを音を立てずソーサーへ戻し「とても美味しかったわ。ここの従者たちは優秀ね」感想と共に称賛の言葉を添えて。気安く、朗らかな調子で語り掛けてくれるものの内容はそんな穏やかなものではない。理性を持ち、話せる彼は希少なのだろう…それが窺い知れる。窓の外はただ何処までも闇夜が覆い、暗い奈落の底に通ずるのではないか。そんな感想を抱かせるほど不気味極まりない。「そう…。どちらが良いのかしらね。食べられるのならばいっそう、話の通じないモノに食べられてしまった方がいいかもしれないわ。言葉を交わすことで情が生まれ、そこに私たちは希望を見出してしまう」彼の話が途切れた瞬間、ポツリと溢れたのは心の中にいるもう一人の自分の言葉。憂いに潤むグリーントルマリンを想起させる瞳を静かに瞬かせ、ゆっくりと視線を合わせる。姿形は違えども言葉を交わし、気遣う姿勢を見せられると、彼だけは他の住人と違い己を食べずに助けてくれるのではないか…そんな淡い期待が胸に滲むのだ。それとも期待を裏切られたヒトの絶望や悲哀さえ、彼らにとっては甘美なアクセントになるのかもしれない。きっと突き詰めて考えるべきではないのだ、特に今は。ふっと気持ちを鎮めるように一息吐くと、組んだ両手を解いてソファーから立ち上がり、惹かれるように窓辺へ歩み寄る。「今日はね…とても特別な日よ。"ワタシ"が生まれた日だもの。…貴方達には誕生日ってないのかしら?」カーテンを捲り、ガラスに映る歪な自分の姿を見詰めながら、えらく食い付きのよい彼の質問に応じる。言葉の表面をなぞれば、誕生日だからこそ、この現状を受け入れられるなんて、おかしな理由だ。皮肉に歪む口許は背を向けている彼には気付かれないだろう。一度瞳を閉じ、次に開いた時には窓に映る自分の顔はいつもの穏やかで柔らかな笑顔を戻っていた。その表情で相手を振り返っては、興味を装うフリをして質問を返し)
僕は使命とか宿命とか呪いとか、そういうのに縛られるのキライなんだ。もしそいつらが僕の首に鎖を繋ごうってんなら、一目散に逃げ出したいね。――君は逃げなかったんでしょ?
(眼前の物憂げな少女と同じ、黒薔薇の呪いに縛られる番人の身でつらつらと本音を吐き。現実として黒い茨に雁字搦めにされている自分の境遇にはそれ以上触れることなく、話題の対象を貴女へとすり替えながら立ち上がり、貴女の後を追うように大きな窓へと歩み寄って「 僕はこのお屋敷が大嫌いだよ。でも偶に言うでしょ?救いのない事こそが救いなんだって 」記憶に靄がかかったように、自分がなぜ此処にいるのかは思い出せない。しかし何かに縛られている事は感覚で理解しており、貴女の隣へ並び立ち窓枠に伝うように蔓延る茨と黒薔薇をガラス越しになぞり「 君にとっての救いは人間の世界には無いのかもしれない。だからこそ選ばれたのかもね 」願わくば自分がその救いに。なんて分不相応もいいところな陳腐な願いには自嘲の笑みが吹き零れ「 ……なんて。ごめんね、知った様な口利くつもりは無かったんだけど 」救われたいのは自分なのだと自覚してしまえば、途端に高潔な貴女の隣に立つのが居たたまれなくなって。要領を得ない自分勝手な言葉の数々に貴女がどんな呆れの表情を浮かべているのか盗み見ることさえ慙愧にたえず憚られ、けれどそちらから柔和な笑みを向けられては安堵にも焦がれにも似た複雑で歪な表情のまま辛うじて口角は持ち上げて「 誕生日だね、知ってるよ。君たち人間にとっては良くも悪くも特別な日なんでしょ?怪物にはそういうの無いから、初めて知った時は驚いたよ。――おめでとう、エマ。 」その祝いが少女にとって呪いであることはおろか、告げられた名前さえ真実と異なることなど知り得る道理もなく、心からの善意で祝賀を告げ。おもむろに黒煙のコートの懐を探るような仕草を見せれば、手品のごとくサッと腕を引き抜きその手中には淡い緑色の花弁が中央に向かうにつれて濃く発色する瑞々しいジニアが一輪握られており「 急拵えだけど、僕からのお祝い。受け取ってもらえる? 」その花言葉に悪意などなく、口許は弧を描くが異形たる双眸の奥には揺れるような何かを携えて返答を待ち)
見方の違いかもしれないわね。私は…逃げ出す勇気がなかったのよ。でも、それを言い訳に自分から逃げたわ。…って、何を言ってるのかしらね。
(使命、宿命、呪い、それこそがこの屋敷に縛られている彼等の根源にあるもの。自分もまた過去の亡霊に捕らわれている。初対面の彼に普段なら吐かぬ弱音を零したのは似たなにかを感じたからだろうか。感傷に浸る権利などないのに、痛ましげに瞼を閉じ、苦いものが込み上げてくるのを無理矢理に飲み込む。彼を閉じ込めているという荘厳たる屋敷、窓の外には夥しいほどの黒薔薇が鮮やかな花弁を開き、人々を惑わすかの如く奇しの香漂わせ、壁に這う茨は風にそよりとしなっては艶かしくも誘う女の手のようで、幾重にも生き物を絡めとり離さんとする…まさに魔性そのもの。視界の端で白くぼんやりと浮かび上がる彼の手が窓を伝う、耳を打つのは哀しげな笑息。行動を擬えるようにそっと伸ばした指先をガラス窓に当てがい、人差し指を下へ滑らせて薔薇に誘われるように花の形を指先で辿って。「…何故かしら。何故こんなに……。……っ」泣きたくなってしまうのか…その言葉を続けるにはあまりにも彼に申し訳がたたず、俯き溢れそうになるものをマナー違反だと知りながらも袖口で押さえて。救いのないことこそが救いだと、そう言う彼が自分には救いを示してくれるというのか。こんな奇々怪々な屋敷の中、ちっぽけな小娘に…。あまりにも哀れで狂おしいほどに労しく愛おしい。更には見ず知らずの己の誕生日を純粋に祝ってくれようとしている。「…有難う、ジョネルさん。本当に…本当に今日は特別な誕生日だわ。」差し出されたジニアの花を恭しく受け取り、鮮やかで可憐な花弁に目許を和らげ、綻ぶような笑みと共に感謝の言葉を胸にわき出る思いのままに伝える。"おめでとう、エマ。私のたった一人の大切な姉さん"胸中で明るい陽だまりの下、満面の笑顔で青空の下を駆けていく小さな幼子へ手向けて。一輪の可憐な花をハンカチーフに包み、サイドテーブルに大切に置いては彼の方に両手を伸ばし、下から掬い上げるようにして握って。「大事にさせて頂くわ。お礼を今度させていただきたいのだけれど、ジョネルさんは何がお好きかしら?」尋ねる際、首を傾げた反動で肩から緩やかに巻いた髪が一房垂れる。今はその色を見ても不思議と気持ちは穏やか。きっと彼と話したからだろう。誕生日プレゼントのお返しとかこつけ、何か贈れるものはないだろうかと思案して)
(きっと少女は計り知れない苦悩を抱えている。まだ一人で背負うには華奢過ぎる足腰の小さな小さな少女が――そんな風に突如胸へ去来した感情に名前を付ける術など知らない怪物は言葉すら失って、ただキュゥと喉を情けなく鳴らすに留まり「 君は。――君はとても綺麗だよ 」慌てたように文頭だけ声がやや大きくなったのは、考えるよりも先に貴女へ伝えたいという欲求が勝ったから。俯いたままの表情を窺うことはできないが、きっと恥も外聞もなく泣き喚きたいのを一生懸命押し殺して無音で咽いでいるのだと。真偽はともかくとしても自分にはそんな風に思えて仕方がなく、それでも寄り添い抱き締めることなど記憶への執着に囚われた醜い怪物には憚られ「 ……美しいよ。強いよ 」風前に揺らぎ消え入る灯火を彷彿させるような尻すぼみの声、その終わりはわずかに震えていたかもしれない。わずかな沈黙の後「 ごめん、自分が思った事しか言えないや。僕、もっと舌が回る方だと思ってたんだけどな 」両手を背面の腰に当て、身体を反らせるように天を仰ぎ深く吐息して「 エマの事、忘れたくないなあ 」ぽつんと落とした心からの本音は貴女に届いていなくとも良い、寧ろその方が良いのかもしれない。全ての行動原理に記憶への渇望が伴っている浅ましい自分を貴女には知られたくない。いじらしくもお返しをと申し出てくれた貴女の顔を見るために上を向いたまま覚悟を決め、今出来る精一杯の微笑みを顔面に敷いてから向き直り「 僕、毎日欲しくて欲しくて焦がれているものがあるんだ。でも、君にそれを求めるつもりはないよ。だからその気持ちだけで……、言葉だけで十分。 」どう足掻いたって綺麗ごとの域を出ない言葉を並べ、これ以上この神聖な部屋を侵すことをきらって自分勝手に踵を返し背を向けて。一歩、出入り口へ踏み出してから未練がましくはたと立ち止まり「 ――嘘。やっぱり、気が向いたら使い魔を遣って僕を呼んでよ。君とお喋り出来たら嬉しいから 」文字通り顔向けは出来なかったけれど、朗らかな声色を絞り出す事には成功した筈。それでも身を喰らわれるやもしれぬ怪物の再訪など被食者からすれば到底歓迎できるものではないと理解しているため、沈黙のままに返答を待つ死神は知らぬ間に奥歯を噛み締めており)
(彼にしては珍しい、この短時間関わっただけでそう思わせるほどの一声に、俯けていた顔をおずおずと上げる。様々な感情が入り乱れ、心は散り散り、気持ちは落ち着かず無意識に瞳は不安定に揺れており。一言、一言大切に紡がれる音はあたたかな想いで溢れている。幼く、臆病で然し純粋であった少女の頃に聞けていれば…または彼の様な味方が誰か一人でもいれば…何かが変わっていたかもしれない。所詮たられば。か細く震え消えていった声音が寂しく、耳の奥に微かな余韻として残る。緊張で渇いた唇を小さく開き「……貴方の目には…そう見える?私は…美しい?強くて…、素敵なレディ、かしら」なんとか小さな笑みをかたどったまま最後まで言い切って。闇を抱えているのは自分だけではない、天を仰ぐ青年の表情はこちらからは窺い知れず、知っているのは名前だけの寂しげな囚われ者。そんな囚われ者こそ想像もできぬほど抗えない枷を抱え生きているに違いない。吐息と共に空気へ消える様に落とされた言葉が偶然届いてしまったのは幸か不幸か。"綺麗だと、美しいと貴方が言ってくれた私を憶えていて"…だなんて、何故告げることができるだろう。目を閉じ、聞こえぬフリをしたのは優しさからではない、踏み込むことに怯え、向き合うことから逃げたからだ。そうやって嫌いな自分が積み重なっていく。…だが、今日踏み出さねばきっとこの先も後悔するだろう。そんな予感があった。柔らかな色合いの布に包まれたジニアの花が、月の光を受けながら自分に勇気を与えるように淡く輝いている。「言葉って難しいわね…。でも、これから先ジニアの花を見れば貴方のことを憶い出すわ」小さな勇気を振り絞り、憶えていて、と言えない希望を憶い出す、に変えて彼へ贈ろう。一輪の花をそっと持ち上げ、記憶に刻むよう花びらに誓いの口付けを落として。優しい拒否と共に向けられた寂寞とした背はそのまま消えてしまいそうなほどの儚さを孕んでいる。呼び止める為に持ち上げた手は、結局何も掴むことが出来ず中途半端に宙を彷徨うだけ。どうすれば引き留められるだろう、逡巡している間に彼の方からタイミングを狙ったように声を掛けられる。「…っ、勿論よ!私も貴方とお話出来て楽しかったわ。ジョネルさんさえ良ければ明日も…来てくださらない?この部屋以外のこととか…貴方のお友達のこととか…色々紹介してほしいわ」勢いこんでしまったため、僅かに声音が上擦ってしまった。その羞恥に頬を薄く染めながらも、懸命に自分の思いを口にして。もし了承を得られたならば、今度こそは笑顔で見送ることが出来るだろう)
(背後に立つ少女が一体どんな力を持っていると云うのだろう。問いの形を取られた言葉を首肯すること一つにすら計り知れない責任が圧し掛かるように思え、先ほど安易に口に乗せた自分の本音を反芻し背を向けたままおぼろげに一度だけ頷き。思うがままに熱を吹いた己の言葉さえ明日になれば言った事すら忘れているかもしれない、今更口に出たものを取り返せる筈もなく居た堪れなさに黙していればふと贈られた"憶い出す"の言葉。ちぐはぐの瞳孔を零れんばかりに見開いた顔はさぞ間抜けだっただろう、貴女に背を向けていて良かった。「 僕の事、憶えていてくれるんだ 」暗く凪いだ水面にピチョンと水滴が垂れるような、静かながらに部屋の静謐を明確に揺らす声。貴女のそれは何気ない言葉で論拠のない口約束かもしれない。それでも「 ありがとう。……それだけで少し救われる気がするよ 」決して清められる事のない汚泥に浸かり肺までとっぷりと闇に満たされていた心地が僅かながらに暖かみを帯びる感覚。これは果たして卑しい死神に許されたものなのだろうか。追い打ちのように再訪を快諾してもらえれば一意ではなく「 本当に初めてだ 」と落としたのは独り言。ゆえに返答を待つ間もなく二の句を継ぎ「 じゃあ、明日も同じ頃にお邪魔するよ。…そうそう、この世界ではずっとお月様が昇ってるんだけど時間はきちんと過ぎているからね。 」そこまで言い終えてからようやく振り返り「 またね、エマ 」それが真の名前ではないと知る由もなく、初対面の時と同じ明朗とも剽軽ともつかない微笑みと共に手を振り、黒煙のコートがぶわりと燃え上がるように膨張したかと思えば死神の全身を包み一瞬にして欠片すら残さず姿を消して)
***
初回交流お疲れ様、そしてありがとう。思っていたよりジョネルの闇が前面に出てしまったわね、貴女たちと話していると怪物たちの個性をどんどん引き出してくれるから本当に楽しくて筆が進むわ。
初対面は〆とさせていただいたけれど、お次はどうしましょう。次の約束から始めるもよし、ジョネルの忠告不足から廊下に出てしまってギレルモのもとへ導かれるもよし、ね。
勿論CCだってお気軽にしていただいていいのよ、私達は貴女たちと話せることが幸せなのだから。
とはいえリアルが最優先ですもの、どうか無理せずのんびりゆるりと参りましょうね。
(不思議な彼と邂逅し一晩過ぎた。柔らかなベットから起き上がり、垂れる横髪を耳に掛けつつ視線は吸い寄せられるように窓へ。説明通り、体感的には朝である筈の時間だが外は昨日と変わらず不気味なほど静かに月が輝いている。まるでこの屋敷だけが世界から切り離さ、時が止まっているかのように錯覚してしまうのも無理からぬこと。未だ混乱する思考を溜息とともに逃し、サイドテーブルに置いてあるデカンタから一杯水をグラスに汲み、口を潤す。戻したグラスの横には花瓶に生けられたジニアの花が一輪。単調な空間の中に鮮やかな色を添えており、目を楽しませる。「このまま枯らしてしまうには可哀想ね。折角だもの、ドライフラワーにでもして長く楽しみましょう」花を眺めるだけで心が豊かになるようだ。僅かに浮上した心のままに、花瓶からジニアの花を取り出して風当たりの良い場所に吊るす。約束通り彼が来てくれるなら、夕方ぐらいになるだろうか。常に月が浮かぶこの屋敷には不似合いな表現だろうが。どちらにせよ、彼が来るまでにはまだまだ時間がかかる。案内もなく人様の屋敷を出歩くのははしたない行為だが、少しでも現状を理解したい気持ちも確か。チラリとドアに目をやり、逡巡したのも束の間、そっと近寄りドアノブに手をあてがう。するりと抵抗もなく開かれた扉。顔を覗かせ外の様子を見てみると、左右に分かれて廊下が伸びている。動くものの気配は感じられず、思わず気後れしてしまうほど物静か。緊張から小さく喉を動かして唾を飲み込み、そろりと一歩を踏み出した。特に誰かが飛んできて注意などされる事もなさそうだ。一先ず第一関門突破、と胸を撫で下ろし。自分が出てきた扉の取手に髪を結ぶ為に持っていたリボンを目印がわりに括り付け、先ずは左曲がりで行ってみようと歩き出して)
此方こそとても楽しかったわ。
私の方もいきなりあんな事を話すつもりはなかったのだけど…不思議ね。気付いたら話してしまっていたわ。
次だけれど、そうね。私の性格からして部屋から出歩くなんてこの機会を逃したらそんな大胆な事しないだろうから、ジョネルさんとの約束までに大冒険してみることにしたの。
お相手はギレルモさんにお願いしようかしら。彼とは一度話してみたいと思っていたから、今から楽しみよ。
お心遣い感謝致します。お互い無理せずゆっくり楽しめたら本望だわ。
貴女方もご自愛くださいませね。
(例えるならば、それは蜘蛛の巣。一見して怪物の気配も人影もない廊下は、黒薔薇屋敷の佞悪な支配者が張り巡らせた幾重にも絡まり合う糸の一筋であり、本来ならば決して独りで部屋を出るはずのない新鮮な獲物が狩場へ迷い込んだ事を無音のうちに知覚して。それも悪趣味な喜劇の一幕とでも言うべきか、貴女が角を左に曲がった先の分かれ道の右側にぽうっと青白い蝋燭の灯がひときわ大きく宿り、それは飛行場の滑走路のように遥か奥まで導くように順々に灯ってゆく。それを道標と取るか罠と取るか、聡明な少女が後者と惟んみたとてもう逃げることなど許さないとばかりに、ハッと今来た道を振り返ってもそこには帰り道はなくただ存在しなかったはずの壁が聳え立つだけ。出口のない袋小路の入り口と化したその廊下、どこから吹いたかも想像できない冷たい風がいざなうように吹き抜けてゆく。この屋敷のどこかで同じ風を感じたかもしれない死神は、果たして貴女に【独り歩きはいけないよ】と忠告しただろうかと肝を冷やすだろう。それはさておくとして、これ見よがしな青い蝋燭の道を選んでも、その正反対の道を選んでも辿り着くのは下へ下へと続く螺旋階段。もしそれを降りたのならば、まだ続きそうな螺旋の中腹で貴女は珍しくも“人間界の”とあるわらべ唄を耳にするだろう。所々、レコードの針が飛ぶように不自然に調子が外れたり不気味な抑揚に揺さぶられる歌は、薄暗い螺旋階段という場所も相まってさながらホラー映画のごとく血の気の引くような雰囲気を助長する。突如、プツリと歌が途切れた後に一拍置いて聴こえたのは若い男の苦しげな呻き声。「 ゥ……あァア………… 」次いで、金属製の何かを長く伸びた爪で引っ掻くようなキリキリとした音。もし奈落の底まで階段を降りきったのなら、少し開けた場所の奥にまるで独房のような牢獄がひとつ。きっとかなり奥行きが深いのだろう、例え檻の外から中を覗き込んだとて人影は垣間見えない、ただ先程までの唸り声はいつの間にかシンと静まり返っていて)
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お返事が遅くなってごめんなさいね、いつもながら暖かいお言葉をどうもありがとう。
最近また忙しくなってしまって、お返事の頻度はバラバラになってしまうけれど、こうして少しずつでもお話や縁が繋げられる事を改めて嬉しく思うわ。
ご指名頂いたギレルモへの導入文だけれど、如何せん癖のある文章になってしまったから違和感や返し難さがあれば遠慮なく仰って頂戴ね。
私達の間に遠慮はなし。そうでしょう?…ふふ。
もちろんお返事はいつでも良いわ。待つ時間すらも愛おしいもの。
あなたが変わらず息災で、幸せに居てくれている事を心から祈るわ。
大変ご無沙汰しております。
最近急激に冷え込んで参りましたが、息災でお過ごしでしょうか。どうか変わらず健やかに過ごされていますように…
完也でやり取りをさせていただいておりましたが、急に背後口調で失礼いたします。この度は大変身勝手なお願いを2点、置かせていただきに参りました。もうこちらを訪れられる事は無い可能性の方が当然高いという事は重々承知の上ですので、お願いの形を借りたご報告、というニュアンスの方が近いかもしれません。
1つ目は、ルシアンさんとジェイドをホームページにて正式にCP成立扱いにさせていただきたい事です。
まだここでやり取りを続けさせていただけていた頃、ルシアンさんとジェイドの心は通じ合っているが性愛的な意味で結ばれたわけではないので、公式にCP成立とさせていただくのは保留で…と結論を出させていただいておりました。が、ジェイドにはルシアンさんしかいないという事実は最早永遠に揺るぎない真実ですので、それを明示させていただきたいと考えております。
この先ジェイドが誰かと交流をしても、いつ誰にだってルシアンさんの事をニコニコしながら自慢してしまう場面しか思い浮かびません。「俺にはあいつしかいないんだ」と堂々と恥ずかしげもなく言い切っては幸せそうな笑顔と共にブンブン尻尾を揺らすジェイドしか存在し得ないと、今になって改めて確信しそれを形にしたいと思った次第です。
2つ目は、ルシアンさんのイメージ画像をHPへ掲載させていただきたい事です。
当方が画像メーカーさんのお力を拝借して作成させていただいたイメージ画像なので、もしかすると背後様の解釈とは一致しないやもしれず…本来ならばご確認いただいてから掲載したいのですが、思い立つのも実行に移せたのも遅すぎまして…申し訳ございません。もし、もし未だ此方を覗かれておりましたら、以下リンク先からルシアンさんのイメージ画像をご覧いただき、全然違う!となればより解像度の高い画像を頂戴出来ませんでしょうか。また、イメージ画像そのものを無しにという事でしたら、お手数ですがその旨一言頂戴出来ればと思います。
当方にとってルシアンさんはどうしてもメニューに記載させていただきたい特別な演者様です。
終始一貫して我儘ばかりの置手紙となってしまったこと、忸怩たる思い塗れなのですが、どうしても諦めきれず長文大変失礼いたしました。
最後になりますが、どうか変わらず背後様が息災で過ごされておりますように、そしてこれから先幸せなことがたくさん降り注ぐ時間を送れますように、陰ながらひっそりとお祈り申し上げます。
【https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/2024/10/21/102734】
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