執事長 2020-02-25 19:00:33 |
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>ラザロ(>1605)
(ノックの直後に扉を突き抜けた声の大きさに一瞬肩が跳ね、添えた掌も離れかける。しかし問いかけにまた直ぐに五指を揃え置いて、「ああ、私だ。レオだ。」明確な肯定の答えを。それから開いた其処に気弱に萎れた表情は温く弛み、見下ろす彼とは対比にその顔を仰いで安堵の息を小さく吹く。「有り難う、ラザロ。」扉を開けてくれた事にも、物言いたげであれど唐突な己の訪問を許してくれた事にも礼を告げた後、引かれた手のまま彼の部屋に足を踏み入れる――と、そこでふわり漂ってきた空気に気が付く。縁遠く嗅ぎ慣れてはいない、だが知ってはいるもの。「……ん、」目の前の彼の姿ばかりに寄っていた意識を広げて、鼻を澄ませ視線を室内に流してその正体を探る。……前に見た時と殆ど変わらぬ内装の床へ置かれたジョッキと、再び見上げた先の彼の僅かに赤い頬と、その身に纏う匂い。「…ああ、酒を飲んでいたのか。」掘り起こした街中の記憶と現在の状況の照合がようやっと済み、先程のドア越しに聞いた声へ一人納得の呟きを零し落とした後に、「すまない。君の余暇を邪魔するつもりはなかったのだが……」自己都合ばかりであった自覚の芽生えが今頃衝動を冷まして、居た堪れなさに苦く眉を下げつつ詫びを先ず一つ。続けて、「……どうしても、君に会いたくてな。」更に綴った自らの言葉に引っ張られて、視線も声も些か沈めた次に、「ほんの少しの間でいい。今だけ、君の傍に居させてほしい。」今度は彼の瞳を真っ直ぐに――ほんの僅かな寂寥の揺らぎを湛えながらも確と見据えて、「……構わない、だろうか?」今夜この一時、彼の隣へ身を寄せる許しを希い問い掛ける。)
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