執事長 2020-02-25 19:00:33 |
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>クォーヴ ( >>1518 )
( 黒薔薇たちをチウに、ではなく黒薔薇たちにチウを……と彼は言った。僅かな引っ掛かりを覚えたが後に続いた台詞の方がよほど聞き捨てならず「スリリングなの!?」と驚いたように声を上げ。どちらを先に選ぶか問われるとしばしの逡巡ののち「……薔薇園で!」とほぼ決まりきっていた答えを口にし困ったように笑った。
僕の言葉に予想外の返事をよこした死神に目を見開く。僕だと思って、見るたび僕を思い出して……そんな台詞言われたことがなくて面食らった。彼は僕が考えているよりも、支配とか征服とかそういうものを孕んだ所有欲の強い男なのかもしれないと密かに思う。考えすぎだとしても悪い気はしなかった。「無理をするわけじゃないよ、僕がそうしたいからそうしようってだけ。ネクタイを締めたりといたりするたびあなたを思い出すよ、きっと……」気恥ずかしそうに呟いて目を伏せる。クォーヴに言われなくたってそうなっていたはずだ。本当は真綿にくるんで大切に閉まっておきたいところだけど、そうされるための贈り物でないことはわかっている。そうだ、と切り出した彼に視線をやるとこちらも思い出したように口を開き「うん。このお屋敷って、薔薇庭園の他に畑とか温室とか……とにかく植物を育てるための場所って何かある?」と問いかけて。いくら外が危険といえど、いつ蹴破られるかもわからない部屋の中でただ死を待つだけの日々を送るつもりは毛頭ない。僕は陽が当たらないこの世界の植生に強い関心があったので、もし人為的に草花を育てている空間が複数存在するならぜひ見てまわりたいと思っていた。「すべての植物が魔法の力でしか育たないなら僕は役立たずだけど、そうじゃないなら多分……そこそこ良い働き手になれると思う」ガーデニング好きな母の影響で庭弄りは得意な方。元々アクティブな性質なのでタダ飯を食らって寝て起きる日々を平常心で続けられる自信もなく、食堂で働いていた使い魔たちのように労働力の一人として気を紛らわせられる場所があればと考えていた。そこで育つ草花をきっかけに横のつながりが広がるかもしれないというささやかな打算も込みのおねだり。「たまにでいいから土弄りがしたいんだ。難しい?」相も変わらず微笑みを称える男に懇願する。僕草むしりとか結構早いよ、なんてアピールポイントが口を出そうになったが、魔法で済ませたら一瞬か……と思ったので黙った。 )
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