執事長 2020-02-25 19:00:33 |
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>ナザリ(>1520)
(甘い果実の知らぬ逸話に興味津々前のめりに相槌を打つ。それから悠々悪戯に放られた言葉へふっと相好を柔く崩して、「おや。…それなら君は、石榴を採っておいておくれ。」此方は緩やかに首を傾げての一声を。返した果実がギリシャであれローマであれ、或いは彼の国に根差すものであれ、相手がその意味をどう捉えるか余白を残す軽やかなジョークの後。彼の放ったその存在の示唆にほんの一瞬、緊張の舞い戻った口元が結ばれて、「…ああ、そうさせてもらうよ。」しかしそれは直ぐに溶け去って、穏やかで泰然とした答えだけを返す。――己の安堵の言葉の次、文献についての回答へじっと聞き入る。「そうかい、それは残念だね。」まず童話については色好い返事は貰えず、小さく唸る音を零して眉尻を垂らす。それから今度こそ己へ提げられた読み物の題名と共に、狡智そうな瞳と再び目が合う。そこにすっと細めた探るような沈黙の視線を数秒、だがやがては柔和な笑みに何れも其れも弛緩させ、「……そうだね。しなくてはならない事はもう失くなったからね。」ごく静かに、そんな言葉をゆったり紡いで肩を竦める。そのまま流れるように椅子の背凭れへと身体を預け、「是非ともお願いするよ、サー・ナザリ。この明けない永夜の供に会わせておくれ。」またにっこりと明朗な好奇心に眦を和ませて、恩沢の計らいに是を返す。「……本に耽るだなんて何時ぶりかな。」その尾っぽについて回った呟きに回想した、図書庫の鼠と化していた頃の記憶に視線をのんびり下方へ舞わせ、「…ふふ、楽しみだ。」打算も話術も何も無い、只々単純で純粋な嬉々を一人落っことす。)
>クォーヴ ( >>1518 )
( 黒薔薇たちをチウに、ではなく黒薔薇たちにチウを……と彼は言った。僅かな引っ掛かりを覚えたが後に続いた台詞の方がよほど聞き捨てならず「スリリングなの!?」と驚いたように声を上げ。どちらを先に選ぶか問われるとしばしの逡巡ののち「……薔薇園で!」とほぼ決まりきっていた答えを口にし困ったように笑った。
僕の言葉に予想外の返事をよこした死神に目を見開く。僕だと思って、見るたび僕を思い出して……そんな台詞言われたことがなくて面食らった。彼は僕が考えているよりも、支配とか征服とかそういうものを孕んだ所有欲の強い男なのかもしれないと密かに思う。考えすぎだとしても悪い気はしなかった。「無理をするわけじゃないよ、僕がそうしたいからそうしようってだけ。ネクタイを締めたりといたりするたびあなたを思い出すよ、きっと……」気恥ずかしそうに呟いて目を伏せる。クォーヴに言われなくたってそうなっていたはずだ。本当は真綿にくるんで大切に閉まっておきたいところだけど、そうされるための贈り物でないことはわかっている。そうだ、と切り出した彼に視線をやるとこちらも思い出したように口を開き「うん。このお屋敷って、薔薇庭園の他に畑とか温室とか……とにかく植物を育てるための場所って何かある?」と問いかけて。いくら外が危険といえど、いつ蹴破られるかもわからない部屋の中でただ死を待つだけの日々を送るつもりは毛頭ない。僕は陽が当たらないこの世界の植生に強い関心があったので、もし人為的に草花を育てている空間が複数存在するならぜひ見てまわりたいと思っていた。「すべての植物が魔法の力でしか育たないなら僕は役立たずだけど、そうじゃないなら多分……そこそこ良い働き手になれると思う」ガーデニング好きな母の影響で庭弄りは得意な方。元々アクティブな性質なのでタダ飯を食らって寝て起きる日々を平常心で続けられる自信もなく、食堂で働いていた使い魔たちのように労働力の一人として気を紛らわせられる場所があればと考えていた。そこで育つ草花をきっかけに横のつながりが広がるかもしれないというささやかな打算も込みのおねだり。「たまにでいいから土弄りがしたいんだ。難しい?」相も変わらず微笑みを称える男に懇願する。僕草むしりとか結構早いよ、なんてアピールポイントが口を出そうになったが、魔法で済ませたら一瞬か……と思ったので黙った。 )
>グレン(>>1521)
やあやあ、いつもながら回収さんきゅうね。ええ、水と油?そうかなあ、おれはあんましピンと来てないけど…いやでも君がそう思ったんだったら少なからずやりにくさがあったって事だね、ゴメン!ハイネからのお仕置きは甘んじて受けとくよ。
クイーンには、『グレンはハイネが雁字搦めに守りを固めるほどのお気に入りで、グレン自身それを喜んで受け入れている節がある事』、『グレンはハイネへのお返しとして手作りのカフスボタンを贈りたく、その手伝いをして欲しいと願っている事』、『おれがグレンから受け取った対価は記憶で、つまみ食いの際にハイネからの警告があった事』を伝えておくよ。
ああ、それと!クイーンに招待状を書く時は、具体的に何を手伝って欲しいのか明記する事をオススメするよ。心根は優しい女王様だけれど、あんまり気は長くないっぽいからさ。
>グルース(>>1522)
いんやあ、俺にぁ必要ない。
(ルーツを東方に持つからか、人肉の如く赤い果実から真っ先に連想されたのは鬼子母神に纏わる昔話。人里の子供を喰らう代わりとして釈迦より齎されたそれを用意せよとの言葉遊びの意図として鬼が想像したのは二つ。いずれも途中までは同じ、人間を喰らってしまわないように代替品の赤い果実をその手に――異なるのは捕食を拒むのが彼自身か、或いは彼と同じように屋敷に攫われた見ず知らずの人間か、というだけ。もし後者を指しているのならば博愛精神に恐れ入る所だ、しかしあれこれと答え合わせを迫らないのもやんごとなき者同士の作法というもの。それ以上は言及せずにただただゆったりと首を左右に振るに留め「 それか――異界の初夜の寝かしつけ…否ぁ記念に、おいさんが読み聞かせてやろうかね 」残念そうな表情も――否、だからこそ一等可愛らしい。遠縁の好々爺が孫を甘やかす時のようなのんびりとしながらも活き活きとした色を宿す声にてつい提案を示したのは彼の知識欲を満たすためには読書ではなく他者からの朗読でも事足りるのではと想像したから。「それぁどうかな、グルゥス。今夜からもお前さんには果たさなければならない事がある 」名を呼ぶ声はこれまでののらりくらりとした軽やかさではなく獣が喉に唸りを絡ませるような低いうねりを持って夜気を揺らす。いつか喰われるその時まで健康を保ち良質な食料として自らを律すること、そこまでを求めるつもりもないが自暴自棄になられては面白くないというのが心根。無論彼に限ってそうならないとは思っているが、こんなにも賢く気高い人だもの、使命を与えられればきっと真摯に向き合い果たそうとするだろうと期待を寄せてニッタリと含みのある微笑みを深め「 “次の食事”の時に届けさせるよう段取りしておこう。…ああ、もちろんお前さんのね 」やはり年相応な顔もあるのだと再認識して、ふと流し目に首を巡らせ自身の肩先に目を落とせばちょろちょろと這い上がってきた家守の使い魔に対して忘れない内にこしょこしょと言伝を。食事、獲物にとっては自身の命を揺らがしかねないキーワードの主役を親切心のつもりで補足してはまるで大蛇を思わせるような双眸でちろりと見遣り)
>秋天(>>1523)
大丈夫、僕が傍にいるからね。…ふふ、じゃあ次の夜は薔薇を愛でに行こう
(人間界とは様々なものが異なる夜の世界で紅く煌めく湖の水が人体にとって無害と考えるほうが難しい。しかし仔細の説明は湖上のピクニックの夜に話せばよい、先に彼と踏む地が薔薇庭園に決まったのなら今夜の目的の小さな一つを果たした事と同義。ゆえに次の夜の話題には自分からはこれ以上触れないつもりで、彼の真っ黒な瞳が瞠られた事にこちらも緩やかに首に角度を付け加え「 …何かおかしな事言ったかな? 」確信犯の類ではなく心底解らないといった表情で少し困ったように微笑して、しかし続いた彼の言葉には満足したようにふっと吐息を漏らして「 きっと似合うよ 」と眦を細めて。「 ……そういった場所は沢山あるよ。魔界の植物には危険なものもあるからあんまりお薦めは出来ないけれど…君たちの食事用に人間界の果実だけを育てる為の離れなんか良いかもしれないね。ただ少し遠いから、到底一人では行かせられないな 」しっかりと最後まで彼のお願いを聞き届けてから、少しの間を置いてまずは場所があるか否かの問への回答を。しかし彼も気付いている通り全ては魔法を行使できる使い魔の仕事として管理運営されており、そこに手作業しか適わないばかりかいつ喰われて居なくなるか定かではない働き手が乱入する事には屋敷側の立場からして二つ返事を返すわけにはいかなかった。しかし願いを無碍にする事に不慣れな死神は人差し指を第二関節で折り曲げそれを唇に添え暫しの間考え込み「 この部屋にプランターを置く…のだと、きっとチウのお願いは満たされないんだよね? 」真っ直ぐに向けた眼差しは決して彼の様子を下手から伺うのではなく、寧ろ対等な者同士として互いにとって納得出来る妥結点を探す真摯なそれだった。提示した案が最適解には思えるものの、部屋に嗜好品が増えただけで結局籠の中の鳥という状況に変化を齎すことは出来ない。彼にとっての優先順位が土いじりよりもこの個室の外に繋がりを求める事なのであれば別の策が必要で、だからこそ真剣に彼の願いの核がどこにあるかを探ろうとしつつも威圧感を与えないよう柔らかな声音を保ち)
>お知らせ:執事長多忙につき、しばらく亀レス気味となる事が予想されます
>現在、ご新規様の募集を一時停止中です。お問い合わせは常時受け付けております[ 今夜の案内役:ラザロ ]
>クォーヴ ( >>1526 )
( 次の夜、とクォーヴは言った。恐らくもっと先のことになるだろうと想像していたため、楽しみがぐっと近付いたような気がして頬が緩む。正しく次の夜でなくたってよかった。彼も楽しみにしてくれているのだということが何より嬉しかったから。「楽しみだなあ。そうだ、カメラとか……写真機の類ってあったりする?」まだ見ぬ異界の薔薇園を想像し、ふと思い付いたようにそう尋ねて。人に見せて評価してもらっていたわけではないので客観的な上手い下手はわかりかねるが、写真を撮るのは好きだった。もしカメラやそれに準じる何かを貸してもらえるならぜひ薔薇園を記録に残したいと考え、ねだるような目で彼を見て。吐息を漏らすように笑ったのを見ると一気にくすぐったい心地になって、恥ずかしそうにうつむくとそれ以上何も言わなかった。
到底一人では行かせられない……正直、予想できた答えではある。食堂ですら付き添いがいるのだ、本来客人とは無縁であろう場所に人間一人で行けるようになっているはずもない。予想はできたが残念であることには変わりなく、肩を落とすと「やっぱりそっかあ」と眉を下げ。クォーヴが何かを考え始めたことに気がつくと黙って次の言葉を待ち、期待にそわそわと指先を合わせる。本当に優しい死神だ。この屋敷ではじめに出会えた住人が彼でよかったと、もう何度思ったかわからない。「……ううん、嬉しい!」外出をきっかけに横の繋がりが広がるかもしれないという別の意図を持っていたことも真実だが、それでも本心からの言葉だった。たしかにここは広さの割に殺風景で、この部屋に物を持ち込んで何かをする、という発想がなかった自分にとってクォーヴの提案は素直に喜ばしいもので。部屋を出るたび誰かを付き合わせるのは気が引けるし、この部屋で植物を育てられるならそれで充分だと心から思えた。生き死にの手綱を握られている家畜の分際で。贅沢をさせてもらっているなと頭の隅で考える。「色々考えてくれてありがとう。余分なプランターをわけてもらえたら嬉しいな」そう呟くとまた笑った。 )
>ナザリ(>1525)
おや、そうかい。
(言葉の戯れ、その最後にはふっと柔い笑みだけを括る。言語の壁へ取り零したかと思った童話がまた拾われた提案に、「それは……」一瞬躊躇で言葉を濁したのは、“寝かしつけ”なんて幼子相手のような単語の所為。その気恥ずかしさと好奇心との葛藤は、眉を垂らしたまま自らの膝元と彼を行き来する目線と、人差し指の背を当てた唇から洩れる微かな吐息がよくよく顕して。「……うん。そうだね……もう読み聞かせで眠る歳ではないけれど、微睡むまで異国の話へ耳を傾ける夜も、偶には良いかもしれないね。」悩む事たっぷり十秒程、此度の天秤は好奇が優勢に傾いた模様。消しきれない羞恥が言葉を些か遠回しに飾り付けはすれど、微笑む視線はきちりと依頼する相手である彼へと向ける。――今初めて己が名を象ったその声は、それまでの捕らえ所が見えぬ春風のような音ではない。暗澹が立ち籠めて肌を微かに痺れさせるそれに、「……“御役目”の話かい?であれば、問題は何も無いよ。」椅子に預けた身体を再度正して、すっと細めた瞳に毅然を湛えて彼を見据える。「僕は何時であれ立場を弁えぬ振る舞いはしない、己の在り方を違える事もしない。…僕は僕のまま、最期の一刻まで翔んでみせるとも。」凛と静かに、しかし堂々朗々と。どれ程常軌を逸した場所に拐われども、限り無く弱く儚い立場へ落とされようとも――果たすべき務めを放棄せず、成したい信念をも通す、その確固たる不変の意志を。「僕が授かったこの名と――あの異界の月に誓ってね。」張った胸にそっと掌を当て、誰もが初めに自己の寄す処とするそれと、いつ何処までも己を見詰めるだろう常夜の光へ誓言したその後。不意にくすりと表情を弛めてみせて、「……それとも。他に何か必要な心構えがあるのかい、サー・ナザリ?」ゆるり傾げた首と共にそんな問い掛けをする声は一転軽やかに、優雅なウィンクも一つ添えて緊迫を断つ悪戯を投げる。――“食事”。意識を僅かに和らげた所へ訪れた一言に下げた視界はまた彼へ。目が搗ち合ったその刹那、心臓から爪の先までざわめき立つ何かに囚われて息を詰まらせた一瞬の次、「……有り難いね。食事の時が待ち遠しくなる言葉だ。」それでも泰然を保ち微笑んだ面持ちと、悠然を崩さぬ物言いを返す。――今目を逸らせば丸飲みにされる小鳥のような萎縮の心地。けれどもだからこそ、怯え臆する本能は震えを握る拳に押さえ伏せて、その大蛇の瞳から逃げず真っ直ぐ視線を交わす。)
>ジョネル( >1524 )
いやいや、君が謝ることは無いから安心して。なんて言ったら良いんだろうな……多分だけれど、お互いに言えない部分があるから…って言ったら良いのかな?きっと深くまで付き合える間柄だったらきっと凄く気が楽なんだろうな、なんてね。
兎も角、ジョネルと話す時間が僕の中でも楽しかった事に変わりが無いから、また気が向いたら話し相手になってやってよ。
ふふ、女王様への伝言もありがとう。アドバイスを受けて手紙を出してみたけれど、もしもう少し言葉を付け加えた方がいいとか何かあれば教えてくれると嬉しいな。
****
>キルステン
( 先日の死神へと相談をした夜から幾夜程経ったであろうか。屑籠の中にはその際に名前が挙がった “ 女王様 ” へと手伝いを乞う為の手紙の書き損じが幾つも丸められた状態で放り込まれており、文面で頭を悩ませた事が見て取れるはず。結局書き上げた手紙には 『 ハイネへの贈り物としてカフスボタンを贈りたいから手を貸して欲しいから、手の空いている時にでも僕の部屋に来てくれないか 』 なんて要件のみの簡素なもの。無論筆記体や文面で誰からものもか分からない、なんて事を避けるためにも自身の名を添えるのは忘れずに。机に向かい合う椅子から立ち上がり向かうのは窓辺に置いた鉢の元。日が経っても最低限の手入れだけで綺麗に咲き誇っているのは鉢に植えられている事だけで無く、少なからず不思議な力も作用しているのだろうか。弓形に口角を持ち上げそれらを見詰め、一際密集している部分に咲く一輪へと手を伸ばし 「 ごめんね、俺に力貸して欲しいんだ 」 半ば独り言のように溢したのは手折る花への謝罪。他の茎に傷が付かないように茎を折り、その一輪は書き上げた手紙と共に丁度窓の外へと見えた誰の使い魔かは分からぬ蝙蝠へと 「 これ、キルステンのところへお願いしてもいいかな? 」 人当たりのいい笑みを浮かべて託し。お次は、とばかりに探るのはハイネから貰った服が仕舞われているクローゼット。先日の死神はハイネの友人という肩書きがあった為に少なからず警戒心を解いていた節があるも、今宵手紙を出した相手は全く知らぬ人物。どれだけ見栄を張ったとて構わないだろうと向かい合うのはハイネから貰った服が仕舞われているクローゼット。暫しの睨めっこの後、濃いグレーのセットアップに身を包み、何も持たない自身の唯一の武器とも言える顔がよく見えるよう少し伸びた髪の左サイドをヘアピンで留めて。準備は万端とばかりに満足気な息を吐き出し、来客が来るまでの時間はゆったりと過ごすつもりで )
>秋天(>>1528)
(次いで強請られた品はよもや今まで考え付きもしなかったもの。永久に陽光へ晒されないこの地に日傘が不要なのと同じ、ただ繰り返される聖餐と夥しい数の死に塗れた刹那の営みを連綿と織り紡いでゆくだけの屋敷には記録を残すための特別な媒体はまさに夏炉冬扇そのもの。穏やかな微笑を答えあぐねたような力ない色に染めてから浅く左右にかぶりを振って、しかし投げられた要求を否決の網で叩き落とすだけではなく代替案を柔らかい調子で返そうと「 とびきりの一輪を選んで写生大会…というのはどう?チウがどんな絵を描くか見てみたいな 」それが苦し紛れの提案でないことは、心底楽しそうに柔らかに微笑む様相から感じ取れるだろうか。思い出を増やすことが即ち美食の仕込みとなる死神は、全く悪意なく彼に楽しい時間を過ごして欲しいと考えを巡らせ「 それで帰りにプランターを見に行こう。花は株分けしようか?それとも種から育てたいかな、 」死んでしまうまで同じ部屋で寄り添うのだから、ただの余り物ではなく気に入った鉢を選ぶ方がいいだろう。ならそれを彩る花もできるだけ彼の意向に添えるようにと、視線を斜め上に向け楽しそうに思案を肉声に乗せて)
>グルース(>>1529)
あゝそれがいい。おいで、子どもはたっぷり寝にゃならん
(うきうきと弾んだ声音に対して、老体に鞭打つようにゆっくりと立ち上がる仕草は平素のものかそれともこの先に油断を誘うための撒餌か。そんな歳ではないと言う彼を臆面もなく子供扱いするのは当然悪意あっての事ではなく、重厚な着物の衣擦れと共にベッドの縁へと腰掛けて彼を誘うようにシーツをトントンと叩き。「 俺ぁね、グルース…。お前さんに会えた最初の怪物になれて光栄だよ 」攫われたその夜に異界へ宣誓した彼の気高さと、時折見せる幼さゆえの揺らぎに惹かれる怪物はきっと多いだろう。人食いばかりのこの屋敷で長生きすることはそれだけたくさんの怪物に愛でられたという事だが、短命に終わってもそれだけ熱烈に糧として求められたという事。願わくば彼の行く末をできる限り長くたっぷりと楽しみたいものだ、そんな風に心ときめくのはやはり彼の誇り高い眼差しと裏腹に震えを握り殺す人間の本能の絶妙なバランスが愛らしくて堪らないと感じるから。もし彼がベッドへと来てくれたのなら、シーツ越しに彼の腹へと手のひらを添えとん、とんと緩やかなリズムで柔く叩きながら「 むかあしむかし、あるところに―― 」静かで間延びした調子で話し始めるのは諳んじられるほどポピュラーな物語である桃太郎の最初の一節。吉祥の鳥を冠する彼がどこまで高く、長く翔べるのか――彼の物語もこの夜から始まるのだろう)
>グレン(>>1530)
(珍しい男に声を掛けられた時から尋常でない事態の予感は耳元のすぐ近くで囁いていた。ヒトは糧として喰らうべきものであり、飼い殺しにすべきものではないと考えている女王の目にはダークエルフの道楽は好ましいものに映る事はなかったけれど、シナモン色の死神から聞いた話によれば一概に彼らの関係を糾弾することも出来ず「 …で、そいつの声はどうなの 」伺った問は捕食者として最優先に興味の対象に挙がるもの。しかしその答えには件の獲物の主たる怪物による警告について言及され、呆れて物が言えないといった風情で肩を竦めるに留めたのだった。数日後、熱帯魚――具体的にはベタに似た姿をした自らの眷属ではない羽持ちの使い魔に呼び止められ、差し出された手紙に一瞬怪訝な顔をするも添えられた花から漂うダークエルフの魔力の残滓に心当たりが呼び覚まされて。手紙と花はそのまま使い魔に預け、彼の部屋の前に仁王立ちになれば高く鋭いノックを三度。もし彼が“鍵”を行使し扉が開いたのなら、悪趣味なそれに目玉を時計回りにくるりと一回転させ短く溜息を吐くだろう。そうしてピンと伸びた背筋と隙のない立居振舞からさながら女王のような示威を凪がせた強気な笑みにて彼のかんばせを見つめ「 代価も示さず一方的にオネダリなんて、ナメた真似してくれンじゃない。ねえ、ハンサムな坊や? 」成る程文句無しの美丈夫だわと素直に認め、組んでいた腕を解き自らの髪の毛先を手の甲にてさらりと弾き「 勿体ないわ。あの気の利いた花の一輪がなけりゃアンタを水責めにしてやる免罪符が手に入ったのに 」はぁっとこれ見よがしな嘆息を吐くことで冗談味を醸しながら、ビリジアンのギラギラしたネイルに彩られた食指を彼の眉間すれすれに伸ばし「 アタシはビビリは嫌いよ、特にビビリなオトコ。分かったら今すぐこのキルステンをエスコートなさい 」誰とは言わないが大変臆病な幽霊の姿が一瞬脳裏に去来したのは自分だけだろうか。しかし当然彼を話題に出すことはしない、刺々しい態度ながら悪人ではない人魚は今宵この人間に時間を使うと決めたのだから)
>ナザリ(>1532)
(この短い間だけで幾度、年相応以上に童らしい扱いを受けただろうか。蔑視でも嘲弄でもないと理解していたとて、やはりそれを受け取る手はどうも余してしまう。頼み込んだ口にまた指を当て、ぱちりと泳ぐ目を瞬かせる一秒足らずの逡巡の後、招く仕草に応じて徐と立ち上がれば彼の居るベッドへと己も足を踏み出す。「ふふ、そうかい。…それなら、僕も恐悦の至りだね。」軽やかに弛めたとしても品を崩さぬ桔梗の如き笑みの下、彼の言葉に此方も心からの喜びを示してみせる。――元の世界でもいつもそうしたように、コート類を脱いで畳み、その上へ外した装飾品達を添えて。慣れた所作でそれらを枕元へと置いて簡易の寝仕度を整え、己の屋敷と遜色無いベッドへ身体を横たえる。……人を喰らう者を前にあまりに無防備なその体勢故、話の始めにはほんの僅か強張りを窺わせて。しかし物語を綴る長閑な低音、ゆったりと身に伝わる柔い振動に段々とそれは解け、主人公が冒険へと旅立つ頃には傾聴にばかり心が向く。お伽噺の頁が捲られる毎、端から少しずつ思考の糸も綻んでいき――やがて“めでたし”で話が閉じられる頃には微睡みにすっかり揺蕩い、瞼はその重さに従順と瞑られる。「……おやすみなさい、」殆ど機能していない頭から、それでも言葉を交わした彼へ告げる挨拶は、意識の揺れから年齢よりもずっと幼いもので、それを最後に夢の内へと緩やかに沈んでいく。――まだ羽根も万全と揃わぬ一鶴の飛翔。その懸命と羽撃いた先、どんな結末へと進むか今は知れぬ物語の序章は、久方ぶりの穏やかな寝息を締め括りと筆を休める。)
***
――この辺りが一つの区切りかな。うん、幾ら動揺していたとはいえ、初めはあんな不躾にお堅い態度を取ってしまってすまないね。…でも、初夜が終わる頃にはすっかり緊張が解してもらえたのだから、本当に君は会話上手だね。
それで、そう…次について話さなくてはね。前に言った通り、もう一夜続けて僕がお話を綴らせてもらうのだけれど……ご指名したい怪物様がまだ絞りきれていなくてね。良ければ少し相談に乗ってもらえると嬉しいな。
先ず気になっているのは、僕がこれから読む書の主演であるサー・ギンハ。それから会話に少し登場した悪魔の方々…このお三方の内からであれば、僕と同じ“兄”という立場にあるサー・レンブラントとお顔合わせを願いたい。あとは、そうだね……話に挙がった以外であれば、サー・レオニダスにも少々興味を惹かれている。
……手を煩わせてしまって申し訳無いね。何せ僕、気の多い性分だから、何方も魅力的に見えて仕方が無くて……ふふ。それで、どうかな。僕が挙げた怪物様方、またはそれ以外のまだ見えぬ誰かの中で、僕とお話をしてくれる者は居るかい?
>キルステン( >1533 )
( 短く、けれどもしっかりと届くノック音が鼓膜を揺さぶったのは丁度身支度を終え、仕上げとばかりに鏡に写る姿へと緩く口角を持ち上げて確認をしていた頃合い。扉の外にいる人物はきっと先程手紙を出した相手だろう、なんて推測はこの屋敷の中で危険な目に合う事無くダークエルフに守護されているが故の危機感の無さが故の思考か 「 僕はハイネのものだよ 」 名を尋ねる事もせずに、部屋の内外を隔てる戸の鍵を口にしてから扉を押し開け 「 ──初めまして、僕はグレン。キミはキルステンでいいのかな?」 彼の姿を視界に捉えてから僅かに生まれた間は、先日のフレンドリーな死神との対話で出てきた情報から想像していたよりも上背があった為。自身と然程変わらぬ高さにあるビリジアンの瞳と真正面から視線を合わせて 「 残念ながら僕が持っている物が少ないからね。それに、対価なら選んでもらう方が良いでしょ?」 気後れするの無い返答は今迄接してきた人間や役柄が所以の引き出しの多さから。花の提案をしてくれた死神に心のうちで感謝を述べつつも、それを外に出す事はせずに彼の嘆息とは反対に笑い声を短く溢すだけに留めて 「 ふふ、勿論だよ。女王様 」 彼の言葉で一瞬脳裏を過ったのは言葉を交わした事のある人間嫌いの幽霊の姿。確かに彼は怖がりそうだ、なんて内心納得しつつ、眉間の間際へと突き付けられている方の手を取り手の甲へと軽く口付けてから室内へとエスコートを 「 嗚呼、そうだ。僕の部屋、ハイネの魔力が色濃いみたいだから居心地が悪かったらごめんね 」 ふと思い出したのは部屋を訪れた事のある人ならざる者たちに必ず言われる事。だからと言って一度取った手を離す事無く室内へと導くのは日々ダークエルフと接する中で中途半端に身に付き始めた自信と神経の図太さゆえ。そのままソファの元へと辿り着けば座る上座側へと座るように促し、座るのを見届けてから己は対面する位置へと座して。これでお茶菓子などがあればもてなしとしては上々なのだろうが、こういった時に限って日常生活を送る上で必要以上のお願い事を聞いてくれそうな蝶の使い魔は不在 「 何もなくてごめんね 」 へにゃり眉尻を下げ、相手の方へと視線を向け )
>グルース(>>1534)
いやぁ楽しかったよ、ありがとうグルース。お前さんが謝る必要なんざどこにもないさ、人食いのうろつく屋敷で警戒するのぁ当たり前だからねえ。
お前さんはギンハの好物に当てはまるか微妙な線だが、だからこそあいつぁお前さんに興味を持つだろうねえ。しかし誉め言葉に滅法弱い単純な奴さ、例えお前さんが好物に該当しようが易々と喰ってしまおうたぁしなさそうだ。お前さん、相手を褒め殺しにするのが大層お上手だからねえ…ンふふ。
レンブラントは気紛れに新入りの部屋を訪れるだろうが、お前さんが罠に嵌らない賢い子だと分かればギンハ程は関心を抱かないかもしれないねえ。しかし会話の中でお前さんが弟や妹を心から大事にしていると知れば余興とばかりにそれをネタに揺さぶろうとするやもしれん。気をつけなきゃぁならんよ。
あの獅子頭は…そうだねえ、きっとお前さんを捕食してしまうつもりで来るだろうね。拗らせた奴だから甘言にもなかなか蕩けないだろうが、品のあるお前さんの態度は好ましく思うはずだよ。つまり、奴にとっちゃぁお前さんは涎が出るほど旨そうな獲物だということだ。
まとめりゃあ誰を選んでも愉しい夜が待っていそうだということだね。これで次にお前さんに会える俺の次に幸運な怪物を選べそうかい、何かありゃぁ遠慮なく言うんだよ。
>グレン(>>1535)
(やはり予想もつかなかったのはその解錠の文言。うげろ、とそっぽを向いて舌を出したのは心底ダークエルフの趣味嗜好が理解に遠いためで、それを強いられているお気に入りの彼には不快感などではなく気の毒だわといった類の憐憫を覚える。が、死神の話から彼も満更でもなさそうだと事前に聞いていたために自らの所感を押し付ける気はなく内側から扉が開かれる前には勝気な笑みへと表情の修正は済ませていて「 そう言う割には他のコと比べてスペシャルなものを沢山持った坊やに見えるけど。イイじゃない、手札の多いヤツは好きよ 」逃げることもたじろぐこともせず交わった視線にニヤリと口角を持ち上げる所作には彼への好感が滲んでいるだろうか。ともすれば凶器と成り得る鋭い爪も意に介した様子のない彼の動きを観察しながらされるがままに、手の甲へ触れた仄かに温かく柔らかい感触に肩を竦め「 そこにキスする意味、解ってやってんだったら大したモンだわ 」引かれるがまま立ち入った部屋は彼の言葉通り濃厚な一つの魔力に支配された空間で、ゆっくりと見回せばそこかしこに隣人の痕跡が見て取れ思わず〝 アハ! 〟とカラッとした笑いを短く零し「 胸焼けする部屋だこと 」やれやれといった風情で軽く笑いながら限りなく独り言に近い感想を落として、ソファーへとやや浅めに腰掛けては長い足を組んで。それは図らずもダークエルフが足を組む所作に似ていたが、彼のように高飛車な威圧感ではなく今から会談に臨む敏腕な経営者のようなインテリジェンスを纏った雰囲気にてじっと獲物の顔を見つめ「 結構。お茶の一つもままならないなんて、アンタ達はホント不便ね 」この屋敷で最も弱い立場にある人間に対してもてなしなど期待していたわけもなく、当然責める素振りも見せず高らかにフィンガースナップを鳴らして自身の使い魔たるベタを呼び寄せ「 何か冷たくてさっぱりする飲み物を頂戴。アンタは? 」まるでパノプティコンを反対にしたようなこの部屋では味の濃い熱々の飲料を口にする気は起きないまま、彼を横目で見遣りながら注文を促して。使い魔が準備に戻ったのなら組んだ足の膝上を組み上げた両方の手のひらで包むようにして「 ――それで。ハイネに何をあげたいって? 」死神と違って代価の話を挙げないのはそれが無粋と思っているから。ゆえに端的に話題の進行を求めるようにどこか朗らかさを着た声を紡いで)
>現在メニューにお名前のある演者様にお知らせとお願いがございます。お手隙の際に宝箱をご確認ください
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▼ 宝箱(https://www.saychat.jp/bbs/thread/646097/) ▼
>ナザリ(>1536)
丁寧な回答有り難う、サー・ナザリ。褒め殺しだなんて……ふふ、僕は思った通りの事しか言わないよ。きっと狐の方や獅子の方が来る夜にもね。それから……そう。サー・レオニダスにはそんなにも魅力的なものとして僕が映るのだね。光栄と随喜に咽んでしまいそうだけれど、それはまた次の機会に。…うん、今回はサー・レンブラントにお相手を願おうかな。やっぱり自分の知っている怪物様にもお会いしてみたいからね。
僕は“家族”を引き合いに出されてしまうとどうにも脆いから、もしそうなれば揺さぶりに狼狽する醜態を見せる事にはなるかもしれないけれど……ふふ、又と無い希少な語らいの対価さ。その時は甘んじて受け入れるよ。
……相談はこんな所かな。本当は君ともまだ話していたいのだけれど、あまり君を独り占めしていてもいけないからね。一先ず君とのやり取りの後、目覚めてからの事も少しばかり綴らせてもらったから、そちらのお好きな頃合いにどうぞ、と彼の方に伝えておいておくれ。
それでは、サー・ナザリ。いつか再び、縁が触れ合えた夜に。
***
(――夢を見た。きっとそう、何もかも理想通りの叶わぬ夢を。瞼を開いて直ぐ、ぼんやりと靄の掛かる思考にそんな確信めいた一文が浮かんだのは、目覚めたその時に胸の内が仄かに軽い心地がしたから。「……もう少し、眠っていたかったな…」呼吸を一周する間に、するり記憶の網を抜けて霧散していったそれを惜しみながらも、身体を起こしてベッドを潔く去る。元の世界の頃と同じように彼是と朝の仕度を手際良く済ませていくその仕上げ、姿見の前で絡まり易い癖髪を丁寧に梳き、それを纏めようとリボンを手にする。――“お兄様の為に選んだの”。昨年の晩秋、誕生日に弟妹達が渡してくれた贈り物。掌から溢れる大振りなそれを暫し眺めた静寂の後、徐にその滑らかな表面へとキスを添えて、「……元気でいてね。」いつもであれば己の自室に我先と雪崩れ込むきょうだいへ施す毎朝の祝福を、いつもとほんの少し変えた別れの文言で、揺れる眼差しも合わせて。それから一つ短い息を吐いたのを切り替えに鏡の己と向き合い、手慣れた所作で刺繍の柄が上向きになるよう髪を結う。最後に服装の綻びを確かめ、振り返った先のテーブルへ何時とは無しに用意された食事に瞬いて、続けて眉を下げる。――其処にあるのは過不足無い一人分の食事であり、特別これといった食材の好き嫌いや身体の過剰反応等も己には在らず。しかし、「ううん…食べきれると、良いな……」人より浅い腑の容量だけは別問題。傾げた首と共に惑う小さな唸りは、一人きりの室内に溶けていく。今ばかりは食するものへと意識を置いて。席へと着き、もう一度その量と細めた瞳で見詰めあった後に意を決したようにカトラリーを取り、ゆっくりと食事を始める。――その視界から外れている机の上、昨夜鬼の彼に頼んだ本が予想以上の山を成す状況にもたじろぐ程驚く事にはなるが、それはまた後々。)
>グルース(>>1539)
(安定して上質な命が取り込まれるこの屋敷では、自然界の猛獣達のように明日の糧を賭けて必死に獲物を取り合う必要など皆無。しかし獲物に対する好みが一致した怪物間では往々にしてそういった事態は起こり得る事であり、特に悪魔兄弟はその争いをこの理不尽で無慈悲な屋敷の中に見出した愉しい遊戯だと捉えている。つい先日までも同様のゲームに興じていたが、連敗を喫したからだろうか弟はすっかり臍を曲げてしまい兄からの次ラウンドの誘いも突っ撥ねる始末。微笑ましいような呆れてしまうような、或いはそのどちらも胸中に提げて一人訪れたのはまさに悪魔兄弟の〝次のターゲット〟となるやもしれない彼の部屋。適度な間を空けた穏やかな調子のノックの後「 今晩わァ 」とフランクながらも軽薄さはない落ち着いた調子で挨拶を。そのまま続けて「 君、最近入ったばっかりの子やろ?なんや困っとう事あらへんかな思て来てみたんやけど… 」さて、扉の向こうの雛鳥はもう追従するべき怪物に邂逅した後だろうか。鬼に先を越されたと勘付くのはもう少し先の話だろうが、やはりこの瞬間には期待や野心の入り混じった独特の高揚感を禁じ得ない。しかしそんな手前勝手な楽しみはおくびにも出さず、あくまで今夜は彼を害するつもりはないと明朗に意思表示をして「 俺なあ、悪魔のレンブラントゆうねん。怖かったらココ開けんでもええから、名前だけでも教えてくれへんやろか 」種族と名を明かすのも疚しい事などないと示すため。悪魔などと剣呑な単語は人間相手に警戒心を煽る可能性が高いことは重々承知で、だからこそ自らの立ち居振る舞い次第でゲイン効果も期待できるというもの。両脚の踵同士をぴったりとくっつけて爪先を10度ほど開き、そこから片足を柔く引いて背筋を伸ばし紳士的な佇まいを崩さないまま、長い爪に彩られた指先を胸の前で淡く絡めるようにして反応を待とう)
>レンブラント(>1540)
(すっと伸ばした姿勢で椅子に座して向かい合うは、与えられた本の一冊目。新たな冒険へと旅立つ心地で頁を捲り文字を追う、その表情は誰知れず少年らしく好奇の輝きを以て仄かに弛んでいる。――暫しして。ふいと集中を切らして顔を上げ、近場に置かれたメモ用紙を一枚ダイヤの形へ折って栞とし、それを挟んで表紙を閉じた丁度に響いたノック音。「……おや、どちら様かな。」直後の挨拶は随分落ち着いた、しかし知らぬ声と訛り。椅子を発って落とした独り言に答えるようなタイミングで上げられた名乗りに、思わず足を止めてまだ遠い扉を見つめる。……驚きに声を零さずに済んだのは、鬼からその存在を仄めかされて構えを備えられていた事が一つ。それから、「……レンブラント?」何処かで聞いた画家と同じ名に気を取られた事が二つ目の理由。それは美術館だったか、それとも王宮の収集品か――一瞬ばかり思考を馳せて、だが直ぐに目の前の声の主へとそれを戻す。「ああ、お気遣い有り難う。」反応の遅れた声は些か緊張の固さを持ちながらも、配慮に対する丁寧な礼を。「でも、大丈夫さ。…今其処を開けるから、少々待っていておくれ。」そこに続けて和らぎが意識された音を彼へ届け、その害意の見えぬ文言を一先ず信じて半端になっていた歩を再度進める。十秒足らずと着いた扉をゆっくりと開いた先、最初に視界に入ったのは初夜の彼より幾分か馴染み深い装い、それに長い爪を持つ青白い手。視界を上げれば鋭い琥珀の瞳、さらり滑らかな紫の髪、そして――その髪から生える黒い角。更に翼に尾と、誰もが想像する“それ”の特徴を持ち得る彼へ、微かに顎を引く警戒の態度を取ってしまったのは無意識の事。「今晩は。そしてようこそ、明け星の御遣いたる方。僕はグルース・ロシニョール・アンリ・ドゥ・リヨン。君の好きに呼んでおくれ。」“悪魔”の項を聖書と絡めた己の言葉へ変換し、此方も胸元へ手を添え求められていた名の全容と共に会釈を。「…さて、うん。困り事という程ではないけれど、君のご厚意に少しばかり甘えてもいいかい?」起こした視線で琥珀の瞳を凛と油断無く見据えて、しかし声音も微笑みも悠然と柔らかなものを保ち、先の扉越しの言葉を引用した確認を一度問うた後、「今の僕は丁度、一人の静謐よりも、誰かの響きと寄り添いたい気分でね。……だから、君が来てくれた事がとても喜ばしいよ。」ふっと笑う小さな吐息と共に告げた用向きは態々訪ねた彼の面を立てる建前――それと、この胸へ澱み始めている寂寥の本音が一匙。「中へどうぞ、サー・レンブラント。大したお持て成しは叶わないけれど、どうか寛いでいっておくれ。」瞳を揺らしかけたそれを瞬きの内に伏して足を退き、扉を押さえたまま室内を掌で差して彼を招く。)
>グルース(>>1541)
――もうちょい大きい子ぉかな思たけど。しっかりしてるなあ
(扉の向こうからの応答ひとつひとつに違和感を覚えるほど落ち着いた態度にはどこか上品な余裕さえ感じられる。新入りと数えられる類の存在であるには違いない筈なのに、少なくとも未だ謁見の叶わぬ声だけの印象ではもう何ヵ月もこの屋敷で暮らしているのかと錯覚し兼ねない。開いた扉、彼が顎を引くのとはまた別の意味合いでこちらも思ったより低い位置にあったペリドットの双眸を見つめるために顎を引いて心底感心したような調子で素直な感想を。「 生憎、仕える主人はおらへんのよ。君みたいな可愛らし子ぉのワガママ叶えるンは大歓迎やけどなあ 」口角はずっと上げたまま、洒落た彼の言葉へ返すように夢とも現ともつかない悪魔らしい誘い文句を。そして縷々紡がれた流麗な響きの名には白く柔らかな翼のはためきを感じるような心地で「 綺麗な音ばっかしでどないして呼ばしてもらおか悩んでまうなあ。君の一族はみんな翼持っとるん? 」華美な服装、洗練された佇まい、年齢の割に丁寧な話言葉、決め手はやんごとなき身分を証明するカメオ。正統な血脈を受け継ぐ者たちはその名に一貫性を持つ事も多い、そんな慣習を知っていた悪魔は世間話のような調子でひたひたと彼のプロファイルに忍び寄ろうと試みて「 悪魔招き入れた上に寛いでぇ、て。君、ホンマ大したモンやわ 」いくら害意はないと表明されたとはいえ相手は見るからに得体の知れない怪物。襲われてしまえば一貫の終わりだろうにそれを気にする素振りも見せないのは、彼が穢れを知らぬ高貴な性善説の中で大切に育まれたからなのだろうかと推察を巡らせながら扉を押さえてくれている彼の肩をトンと労うように叩いて「 おおきに 」と告げ、最初に目に入ったのはデフォルトで備え付けられていないであろう大量の書籍と、そこから仄かに立ち上る鬼の残り香に目を細め「 読書の邪魔してもうたかな、堪忍 」気にする素振りはなくそう告げて、窓枠へと歩み寄ってはガラス越しに月を見上げ「 ずっと夜なんはもう慣れた? 」肩越しに彼へと振り返り変わらず口角は緩やかに上げたまま問い掛けて)
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>レンブラント(>1542)
おや、それは失礼。…ふふ、君の賛辞と照らせる我が儘を探すのは大変そうだ。
(彼の感想を和ませた瞳で受け取った後、誘う言葉はジョークにて柔らかに躱す。思惑を知ってか知らずか、話題と掛けられた声には一つ首肯を返して、「そう。このリヨンの血統を継ぐ者は皆代々、空を翔けるものの名を戴く慣わしなんだ。歴代の公爵とそのきょうだい達も、末孫である僕も。そして、僕の弟妹達も。一人として例外無く、ね。」自らの胸元に右手を添え、名に纏わる家の子細を淀み無く朗々と告げた次。その指を首元のブローチへと滑らせて、「これは家を分ける折、王家の紋章であるグリフォンの翼を名と賜った初代に由来する――つまり、王族と血脈が繋がる一族である事の、栄誉ある命名なのさ。」王冠、鷲、二輪のアイリス――己が一族を象徴するそれらが彫られたカメオの表面を親指で撫で、そのまま続けるのは家の歴史、その始まり。驕りや優越は見当たらない、宛ら書の音読でもする教師の如く、ゆったりはっきりとしつつも何処か淡白な語り口でそう名付けの由を教えた最後、「……もっとも。僕の弟妹達はまだ、名に見合わぬ愛らしい雛鳥だけれどね。」瞼の裏へ浮かべたその幼い雛達の顔に、ふっと軽やかな笑いを吹いて締め括る。「……僕に君を拒む理由は無いからね。」室内へと踏み入った背を見届ける際、肩を叩く掌への応答に選んだのは、“何が起きても受け入れる”という意思表明。凛と覚悟を通した芯の内に、何もかも綿に包むような甘さをこっそりと含ませたそれを瞬きに切り、「いいや、本には丁度飽いてしまった所だったさ。」謝意に対して茶目っ気を滲ませた仕草で肩を竦める。それから「……そうだね。この静かな藍が続く世はとても好ましいけれど――」扉を閉ざし窓辺の彼と穏やかな視線を交わらせ、問いへと答えを静かに紡ぎながら、その傍に悠々と優雅な足取りで歩み寄り、悪魔の隣へ踵を揃える。その目の前の窓から煌々光を注ぐ眩い月を見上げれば、「起きた時に誰の声も音も聞こえない事に慣れるには、もう少し時間が必要かな。…家に居る間は、愛しい雛鳥達に囲まれて過ごす事が多かったから。」その月よりもずっとずっと遠くを見詰める瞳を細めて、話す声には微かな寂寥の吐息が混ざる。更に重ねた答えの中に並べた“囲まれる”という言葉には、雛鳥――弟妹が一人や二人などではなく、もっと多数である事が示されている。「…サー・レンブラント。」しかしそれ以上の感傷からは目を逸らして、向けた半身のまま彼と顔を合わせ、「君にも兄弟や家族と呼べる者は居るのかい?」話にその存在を零したついで、悪魔の彼にもそれに並ぶものは在るのかと、興味に色付いた眼差しと音で問い掛けの微笑みを返す。)
>キルステン( >1537 )
“ それ ” を気に入るかは人によるし……それに、手札を見せちゃったら交渉に不利になる事もあるでしょ?
( 持ち上がった口角を見るにどうやら特段悪い印象を与えてしまった様子も無く、寧ろ好感を抱いてくれたのではなんて考えさえ浮上する。ゆるりと口角を持ち上げ首を傾けて見せるのは同意を求めるため、というよりかは少しでも余裕があるかのように振る舞うための虚勢にも似たそれだが果たして彼にはどのように捉えられるだろうか。「 ふふ、お褒めに預かり光栄ですレディ 」 演技をする上で糧になるからと詰め込まれた所作やその意味の数々は未だに確りとインプットされているが、今はそれを深く語る必要性も無いだろうと戯れに似た少々おちゃらけたような声色で言葉を紡ぎ出すと同時、軽いウインクをお披露目するだけに留めて。部屋に充満しているであろうハイネの魔力に対する感想が思いの外さっぱりとしていたのは彼の気質によるものだろうか。そうで無いにしろ腰を据えて話を聞いてくれるらしい姿勢に小さく安堵の息をこぼした後ソファへと座す姿にぱちりと瞬きをしたのは、その所作があまりにもダークエルフのそれと似通っていたから。けれども纏う雰囲気は異なるもので、直ぐに普段通りの笑顔の仮面を被り対面する位置へと腰を下ろし。「 そう言ってくれると助かるよ 」 眉尻を下げた情けのない表情はそのままに、笑みを浮かべる事で安心した様子が伝わるであろうか。注文を促されるがままにさして悩む素振りも無く 「 じゃあ、僕は冷たいコーヒーを貰えるかな? 」 きっと主人からの伺いがあったからであろうが承諾してくれたのだろう反応を残し準備に戻る姿に “ ありがとう ” と小さく感謝の言葉を落として。率直に今夜の本題へと切り込んでくる彼の言葉に視線を戻し 「 手紙にも書いたけど、カフスボタンを贈りたくって。手作りで、僕の瞳と同じ色の石を使ったやつ 」 視界に入れば己の事が僅かにでも頭に過れば良い、そんな欲に塗れた贈り物は他の怪物の力を借りなければ一気に難易度が高くなる事なんて長くは無い屋敷での生活で痛感している。一呼吸置いて対価に関する事を付け加えるのは話しておかなければフェアで無いという意識からくるもので 「 ただ、僕自身を切り売りするのは許してくれないご主人様がいるし、キルステンに対する見返りが少ない事も理解してる 」 視線は一度も逸らす事無く、一直線に相手の瞳を見据え 「 貰ってばっかりは嫌だから。俺のとこに居なくても俺を思い出してくれる物を、ハイネの側に置ける物を贈りたいんだ 」 今迄の流暢な喋りからは一転。辿々しさを残したそれは本心からのもので )
>グルース(>>1544)
(一冊の歴史書を紐解くように流暢に紡がれた内容は大変煌びやかなもので、人間が聞けばきっと多数の人間が憧れたり羨ましがったり、或いは嫉みを向けるのだろう。だが当の本人はそれを鼻にかけるでも笠に着るでもなく只生まれながらに背負った事実として受け入れているような恬淡さえ感じさせる。雛鳥に思いを馳せたその綻んだ表情を横目に見つめ「 授かった名誉の重さをちゃぁんと理解しとる程、重苦しさを感じるもんやろ。そっから解き放たれてもなお誇り高く涼しげに羽ばたく君は根っからの貴族やね 」未だ成鳥へと育ち切らない華奢な彼の背にもきっと既に立派な翼が生えている、そう感じれば並び立つ彼へ斜めに向き直り指先をぴしりと揃えた手のひらを胸に当て敬意を示すように微かに顎を引いて浅い礼を。そうしてその手を天井に向ければ、ポンという空気が軽く弾けるような音と共に屋敷の図書館から悪魔の手中へと転送されてきたのは人間界の野鳥図鑑で「 君は鶴と夜鳴鶯。ちびちゃんらはどんな雛鳥? 」成人男性を体現するような大きく骨張った手、その親指と残り四本で図鑑を挟むようにして器用に支え開きながらページを捲ってと促すように半歩身体の距離を寄せて「 ああ…そりゃ確かに寂しいわなあ。までも、君だけやのうてちびちゃんらまで攫われてきてしまうよりマシなんちゃう? 」まだ僅かしか言葉を交わしていない中でも彼が深い愛情を弟妹たちへ抱いている事は容易に伺い知る事ができる。そんな雛鳥たちと離れ離れになったのはさぞ寂しかろう――ああ、可哀想で可愛らしい。善意なる励ましの形を借りながら含ませるのは黒薔薇の犠牲者に選ばれる可能性は彼のためだけにあるものではないという事実。この先雛鳥までもが黒い悪意の茨に絡め捕られない保証なぞどこにもないのだと――そこで少し顔を上げて周囲を見渡し、丁度窓の向こうに飛翔していたカラスの使い魔をちょいちょいと呼び寄せては少しだけ窓を開けて「 毎日この子に〝おはよう〟言うたって 」魔の言語ではなく人にも解せるそれで命令を与えれば使い魔は僅かに狼狽したようにちらと悪魔と彼の顔を交互に見て、最後にはカァと鳴いて了承を示し飛び去って。その姿を眺めながら「 窓は開けとかんでもええよ。あの子ら神出鬼没やから 」悪魔が特命を取り下げない限り、彼がここ数夜で味わった目覚めた時の静寂と孤独はきっと二度と訪れないだろう。そんな計らいの後、問い掛けられた内容にふっと笑って「 おるよ。丁度こンお屋敷に弟が一人。カナニトっちゅう可愛らし子やけど、今は色々あって拗ねとる。ろくに口も利いてくれんわ 」兄弟想いの彼と共通点を作るように、自らもさも愛おしげに弟について朗々と語る。拗ねた理由が獲物を弄ぶゲームに端を発するだなんて勿論間違っても口に出したりはせず、最後には困ったように自嘲気味の笑みさえ浮かべて「 兄ちゃんってムズいよなあ。仲良う出来るコツあったら教えて欲しいわ 」あくまでも、弟が大切で仲良くしたいけれど弟側が臍を曲げてしまって困っているのだと。そんな論調を保ったまま、眉尻をハの字に垂れさせて控えめに笑って)
>グレン(>>1545)
小賢しいコト考えてんのね。手札が多かろうが少なかろうが、相手に刺さるカードの有無で呆気なく決まっちゃうじゃない
(ハッと笑い飛ばすような言葉たちもこれまた責めるような論調ではなく、あくまでも人魚の平常運転。圧倒的に持たざる者側の立場を強いられる獲物たちが自らの思い通りに事を進めるために謀略を巡らせるのは当然の事、そのうえ異界の屋敷でそのように賢く立ち回れる胆力のある獲物は嫌いではなくむしろその逆。すぐに用意された飲み物はどちらもよく磨かれたコリンズグラスの中に注がれており、彼の前に置かれたアイスコーヒーの淵には切れ込みを入れた六角形の不思議な白い果実のようなものが差し込まれていて「 それ、見慣れないでしょ。苦いのがダメなら好きなだけ絞りなさい。ブラックが良けりゃ只の飾りとして目で楽しんで 」人間界に存在しないその果実は奇しくもガムシロップとミルクのような役割を果たすらしく、躊躇いなく彼に勧めたことから人体に害を及ぼすものではないらしい。言い終えた人魚はブルーキュラソーのような透き通った青い液体をストローで一口吸ってからコースターの上にグラスを置いて。真っすぐな彼の視線を受け止めるようにこちらも一切目を逸らさず、飼い主への返礼と言いながらそれをしっかりと自己顕示の布石にせんとする強欲さに「 ジョネルの言ってた通りね。アンタ達お似合いだわ 」納得するように数度頷きながら素直な感想を、そうしてふと勝気な笑みを浮かべて「 アタシはアンタの飼い主の事そこまで好きじゃないの。だから応援はしないケド、このキルステンを呼び出したアンタの勇気に免じて今回は甘ったれた我儘に手を貸してあげる 」変わらず棘のある物言いだが今回の件に関して助力を惜しまないという決意は彼に伝わっているだろうか。ふと思い出したようにぴっと人差し指を立て「 お代は今度飼い主に請求するわ。素寒貧に無い袖振らせるほど冷血じゃないの 」支払いであれこれ揉めるなんてスマートじゃない。半分ほど残っているグラスの中身をストローで一息に吸い込んで空っぽにして「 じゃ、行くわよ 」すくっと立ち上がり行先も告げずスタスタと扉へ向かう、その道中に「 可愛いペットが自分の為に用意してくれたプレゼントがアタシの魔力で作ったものだと知ったらアイツはどう思う?……アタシは面倒事に巻き込まれるのは御免よ。だからアンタが自分で石を見つけなきゃ 」親しくはないが同じ黒薔薇屋敷の虜囚同士、全く理解がないわけでもない。他の怪物の魔力が香る贈り物なんて身に着けるどころか粉々に砕きかねない、もしそんな事になったらあまりにもこの子が可哀想じゃない。そんなリスクをわざわざ背負わせる必要なんてないわ、そう考えを巡らせながら躊躇いなくガチャリと扉を開いて廊下に一歩踏み出し「 いらっしゃい。アタシは愚図もキライよ 」ニッと笑って彼の顔を一瞥すれば、ピンヒールの跫音を吸収する赤い絨毯の上をスタスタと淀みなく進んで)
>レンブラント(>1546)
(血統に相応しき振る舞いに向けられるものは羨望、嫉視、はたまた“出来て当然”という悪意無き威圧――そのどれでもない敬意を示した彼を見る瞳は大きく見開かれる。「……そんな事、初めて言われたね。」何度も瞬きながら発した声も些か呆けて、その言葉が偽り無いものである事を物語る。それから柔く崩れた頬が素直で幼い喜びを滲ませた後、再びすっと澄んだ微笑みを整えて、「……ならば。その言葉に恥じぬ羽ばたきを、この先も。」凛と優雅に、片足を引いた仰々しい程の一礼にてその敬意へ誓ってみせる。軽やかな音に顔を上げれば、そこには一冊の図鑑。己よりも優に一回りは大きい手の上に開かれたその本を現した意味を知れば、ふっと驚きを嬉々と弛め、「ふふ。それじゃあ、上の子から順にお教えしようか。」此方からも半歩彼に身を寄せ図鑑を覗き、それに手を伸ばす。「一番上の雛鳥……次男はエグレット、まだ九つだけれど、向上心と求心力に優れている子だ。長女がシーニュ、彼女は手先が器用で、物作りが得意な淑女。三男がピジョン…彼はとても細やかな感性を持っていて、美しい詩を綴ってくれる。」ぱらぱらと捲っていく頁から抜き出すのは、まず年長の弟妹――カリスマたる白鷺、技術家の白鳥、詩人の鳩。ただ記される画を指すだけではなくて、一人一人讃える言葉を添えるのは、家族をついつい甘やかす“世話焼き”の性分故に。「それから次女と三女のアルエットとシュエット…彼女達は双子でね、歌もお喋りも息ぴったりなんだ。そして最後の四男がイロンデル。…この子は最近やっと歩けるようになったばかりだね。」続いては年少――阿吽の雲雀と梟、それにまだ殻付きの燕。頁に描かれる一羽一羽、示したその指で絵の頭をなぞる仕草と共に注ぐ視線は、とびきり愛おしげに甘い。「……これで全員。どの子も皆眩い黄金の翼を纏う、僕の大事な子さ。」ふっと彼へ戻した瞳はまた穏やかに凪ぎ、紋章たるグリフォンと弟妹の持つ色彩に絡めた言葉を締め括りに、頁から手を下ろす。――慰めるような彼の声。しかしその内容が示す事を正しく汲み取ったその瞬間はっと息を呑み、微かに強張る顔で彼を見詰めた後に、「それは、……そうだね。僕はあの子達に、怖い思いも痛い思いもしてほしくはないから。それに……」もしや、彼ら彼女らも。過った思考に視線を逸らし伏せ、応答する音は平然を取り繕って絞られる。しかし、「同じ場所に居るのに、守れない方が、余程――」大切なものが其処に在るのに、指も届かず奪われる。そんな状況を子細に想像した――或いは“思い出した”ように、続く言葉を閉め切った唇は戦慄いて、頬は蝋の如く青褪めて。短い爪が食い込む程両手の拳を握りながら、爪先に落とした目の内に揺れた怯えの雫を振り切らんと顔を上げた直後、視界に入ったのは一羽の烏。同時に聞こえた指示にその使い魔と見合わせたような同じ動きで彼を見上げて、「……素敵な心配りを有り難う、サー・レンブラント。君は随分優しい方だね。」此方へ向けられたものが先の寂寥への答えだと知って、表情も声も暖められて綻んで。「おや、それは大変だ。僕で良ければ相談に、と進み出たい所だけれど……僕自身は、弟妹達との仲違いにとんと縁が無くて。サー・エグレットが僕と競いたがる事は多かったけれどね。」見付けた共通点に面持ちは何処か華やいで、その物言いは喧嘩した弟妹の仲裁に入るような寄り添いを持って、けれども少々戸惑う色も垂らす眉に滲ませる。「……ああでも、一度彼に“何でも出来てズルい”なんて拗ねられた事があったね。その時はいつもより沢山褒めて、頭を撫でてあげたな。あの子が出来る事を一つ一つ一緒に数えて、君は凄い子だって……随分前の話だから、あんまり参考にならないかな。」沈黙を落とした数秒の次、探った記憶の箱から取り出したエピソードの一欠片を例には出したものの、今よりも幼少のその話が、すっかり成人を過ぎているだろう悪魔の兄弟に当て嵌められるとも思えず、言葉を終えた微笑みには苦みが増す。「…ふふ。それにしても、優しい君にそんなに大事に想われているその子の顔、僕も見てみたいな。」それからまた柔い吐息を零して紡ぐは、困っている様子の彼を励ます糸と、“弟”という存在に抱く慈しみの糸。その二つをゆったりと織り込んだ興味を口にして、「君さえ良ければ、今度ご機嫌を窺ってきてはくれないかい?」まるで、仲直りを促す兄のように。目の前の兄弟がまた話せる切っ掛けに、自身の話題を差し出す形で案を掲げ、己は緩やかに首を傾げて見遣った彼の返答を窺う。)
>キルステン( >1547 )
でも、持っている物が分からなければ一先ず話は聞いて貰えるでしょう?
( 下手をすれば悪意を持っていると捉えられかねない語調だが、詰められているように感じる事が無いのは彼の性質故であろうか。同意を示すように小さく首肯を一つしてから、緩い笑みと共に “ 違うかな? ” とでも言いたげに首を傾けて見せて。そんな事をしている間に用意されたグラスの縁に添えられた見た事の無い果実のような物をマジマジと見詰めていれば耳に届く言葉から察するに、ミルクとガムシロップのような物らしい事が容易に想像出来。特段苦味に弱い訳では無いが、初めて見る物に興味があるのも事実。ほんの少しだけ絞り入れてからストローでくるくると軽くかき混ぜてから一口飲み込めば、人工的な甘みよりやや柔らかな甘味に口元を緩めて。先程までの真剣な表情から一転、目元を細めた笑みを浮かべて 「 ふふ、そう言って貰えると嬉しいな 」 お似合い、それが喜ばしく感じるかはきっと人によるのだろうが少なからずこの自己肯定感の低い男からしてみれば、褒め言葉以外の何者でも無く。少なからず今夜の願いに関しては助力をしてくれるらしい様子に安堵の息を漏らし 「 うん、ハイネ相手なら僕から払えるものもあるから、そうしてくれると助かるよ 」 きっとあのダークエルフの事、又借りの対価を求められる事もあるだろうが然程難しい事は要求して来ないであろうとの考えだが果たして。立ち上がる姿をぽかんとした表情を浮かべたまま見詰めるのは予想だにしていなかったから。けれども扉までの道中の言葉にくすりと小さな笑い声を漏らして 「 きっと物凄い顔をするだろうなぁ 」 稀に垣間見せる独占欲から予想するに、渡さずとも己が持っているだけで不機嫌になるだろう事が目に浮かぶ。グラスを満たす珈琲を半分程まで飲み切ってから立ち上がり、片付けを始めようとする使い魔たちに思い出したように 「 戻ってきたら飲むから、置いておいてくれると嬉しいな 」 なんて声を掛けてから部屋を出ていく彼の後をついて廊下へと。屋敷へと拐かされてから部屋を出たのはハイネの温室へと行ったあの一度きり。見渡しても見覚えのあるどころか景色に大差無く思えるのは不可思議な力によるものか。先を歩く彼との間をなるべく開けないようにしながらも物珍し気に辺りへと視線を巡らせながら歩を進めて )
>グルース(>>1548)
君に追い風が吹きますように
(綿菓子を軟らかな糸に変えたような髪をそっと撫で、鶴の高潔な誓いに悪魔から返すのは期待も心配もなくただ祈りだけ。髪に触れていた手を彼の肩へと緩やかに滑らせ「 ちょっと疲れたな思たら俺の肩に留まりい。休む場所もない大海原を孤独に行かせる気はあらへんよ 」トン、と労うようにまだ華奢な肩へ手を添え黒薔薇の鳥籠に囚われた彼の止り木へとちゃっかり立候補。正直なところ、順繰りと紹介されてゆく雛鳥たち一羽一羽よりも今触れられる距離に在る至極甘やかな声と表情で囀る彼にのみ興味の矛先は向けられているが「 ふ、みんな可愛らしなあ。お小遣いあげたいわ 」可愛いと感じるのは自慢げに弟妹たちを語る彼も等しく対象に数えられ、裕福な生まれゆえ金銭の施しなど必要ないと理解していながら駄洒落のつもりで微笑ましく自身も最後の頁の鳥――燕の絵をそっと指先でなぞり。さて小手調べのつもりだったが雛鳥を引き合いに出すことで無欠に見える彼が容易に心乱される事を瞬時に学習すれば「 ……君の翼が届かん場所もある。俺らが万能ちゃうンと一緒や 」未来に起きてしまう事を恐れているのか、はたまた過去に起きた変えられない事象を回顧し唇を震わせたのか。異界の月の下、自らを喰らうかもしれない異形を目の前にして悠然と礼をした彼からは今一つ想像出来ていなかった弱さの片鱗を垣間見れた事に悪魔の内心は色めきだつも表情も声色も神妙なそれのまま「 素敵な君のきょうだいや、いつ黒薔薇に目ぇつけられるか分からん。もちろん茨が及ばん事もある、けどもし…そうならんかったら、 」図鑑を傍に置き、空いた両腕にて緩慢な動作で小さな彼を抱擁する。兄が弟を慰めるように、或いは悪魔が甘言で人間を誑かすように、すべての災厄から彼を守る盾のように、或いは退路を断ち自らの手中に収めんとする壁のように。とん、とんと彼の背をさすりながら静かで優しい声にて「 気に掛けるわ。怖い思いも痛い思いも、出来る限りせんで済むように 」闇の中にこそ安らぎを見出させる悪魔はそう告げた後ゆるりと腕を解いて、くるり踵を返せば窓に背を預けるように体勢を変えて腕を組み「 はァー……ほんまよう出来た兄ちゃんやね、君。それ素直に聞ける白鷺くんも凄いけど 」そもそも人間と悪魔では目下の者の慈しみ方が異なるのだろうが、語られた過去はまさしく目上の者の模範たるに近いものなのだろう。感心したようにしみじみ長く吐息して、真に求心性に秀でるのは彼の方ではないかとすら思えてしまう。いずれにしても彼の甘いやり方は悪魔兄弟に効果的なものではないけれど、それでも弟の敗北を煽る際に使えそうだと半ば無意識に思考している最中に当の本人に話題が移ってしまえば困ったように低く笑って「 君の事、素敵な子やと思っとるんよ。せやからホンマやったら独り占めしたいンやけど? 」蛇のような流し目はしかし爬虫類には無いしっとりとした情熱を底光りさせるように彼を見つめて)
>グレン(>>1549)
そう、イイコだからキビキビついて来なさい。ホントはアンタを連れ回すのだって気が引けるんだから
(自身の使い魔に片手間に命じたものとはいえ、出したお茶を無下にされないのは矢張り好ましい。背後から聞こえてきた使い魔への小さなお願いに背を向けたままふっと微笑み、厳かながらも上機嫌の滲む声色にて後ろに追従しているであろう彼へとお小言に似た忠告を。あの特別製の錠、部屋を満たす彼を雁字搦めにするような魔力であの部屋は最早獲物の檻から特製の軟禁室へと変貌を遂げているように感じる。そこからたった一つの閉じ込める対象を連れ出したとなれば部屋もその創造主も心中穏やかではないだろう。面倒事は御免被るがいくら好かないとはいえ同胞に不愉快な思いをさせる事も御免だ、そんな逸りに似た心地から歩行のテンポは普段よりも早く。ふと頭上に気配を感じてちらと高い天井を見上げれば短くため息を吐き、ネイルでより長く見える指先で上を指し示し「 ホラご覧。ちんたら歩いててあんなのに囲まれたらその指輪があっても五体満足じゃ済まないわよ 」あの部屋から出たのにハイネの魔力に付き纏われているような気がしていた、その元凶且つ正体は彼の左中指にこそあったのだと部屋から十分に離れて漸く気付いて。まるで早く寝ないとオバケが来るぞと子供を緩やかに脅かすように引き合いに出したのは丁度出現していた理性なきバケモノの存在。音もなく天井を這いまわる影のような靄をまとう蜘蛛は映画館のスクリーンを覆えてしまうようなおどろおどろしい巨体でじっと怪物と獲物を見下ろしており「 怖けりゃアタシの服の裾でも握ってなさい 」いかに巨大なバケモノでも怪物に敵わない事は皆理解しているため人魚と共に在る限り手を出してはこないだろう。自身はそう分かっているからよいものの、見慣れないバケモノに彼がどう感じるかは想像に難くなくつっけんどんながらもそれに寄り添う姿勢を見せながら幾つかの階段を降りていき)
>キルステン( >1551 )
ある程度自由に過ごす事は許されているから、そんなに気を張らなくても大丈夫なのにな
( ややむくれたような声で紡ぎ出す能天気とも捉えられるだろう感覚はどれほどあの部屋を一人の魔力が満たしているのかを知らないからこそ。けれども彼が言わんとしている事も分からないでは無いために歩を止める事はせずに廊下を進み続けるも辺りを見渡しながら歩いていたためか、それとも歩みを進める彼のペースが早いのか、気が付けばいつの間にか部屋を出た時よりも開き始めた距離に気が付きつつも焦る事をしないのは指輪に守られている、そんな思考が強いため。指差された先の天井へと素直に視線を持ち上げればそこに居る巨大な蜘蛛を視界に捉え。本来であれば恐怖を覚えるところなのだろうが、それを感じるどころか内心落ち着いているのはダークエルフのお気に入りたる自覚があるからか 「 ふふ、ありがとう。でもキルステンと一緒なら安全だろうし……万が一の事があってもハイネが飛んでくるよ 」 左手の中指に嵌る指輪へと軽く口付けを落とし、服の裾を掴むまではしないものの僅かに開いた彼との距離を埋めるために小走りに近寄って半歩程後ろの辺りで 「 そういえば、今ってどこに向かってるか聞いても良い?屋敷の中に何があるとか全然分かってなくって 」 部屋の中にいれば安全、外に出る時は誰かと一緒に。そんな約束を愚直に守っているがために主な生活圏は自身のテリトリーたるあの部屋のみ。それに加えて屋敷の設備に関する話を誰かと交わした記憶も無い。へらりとした笑みを浮かべながら首を傾けて )
>グレン(>>1552)
世間知らずなガキみてえなコト言ってんじゃないわよ。大人同士は色々気ィ遣うモンなの
(ここは大いなる魔力に護られた自室の外にもかかわらず些か緊張感に欠ける彼の様子に呆れたように大袈裟な溜息を。彼の外出を〝大丈夫〟と捉えるかどうかは彼ではなく飼い主が決める事、もし彼が絶対的庇護者を持たない他の獲物と同様の立ち位置なのであればあれこれと好きに連れ回せるのだがよりにもよって囲い主はあの執着気質なダークエルフ。ハイネもそのお気に入りの獲物も自分から見れば腫れ物に近い存在であり可能な限り関わりを避けたいと感じるのは当然の事、しかし依頼を引き受けたのは少なからず彼のエゴたっぷりな願いの中にも無垢な健気さを感じ取りその気持ちは応援してやりたいと思ったからで「 ったく…。次グズグズしたら強制首根っこ鷲掴みの刑よ 」ちらと肩越しに背後の様子を窺えば指輪にキスする姿を丁度目撃し、よく懐いたものねと軽く肩を竦める。彼がしっかりと自分との距離を縮めた事を確認してから前方を正視、この見目麗しい人間がハイネに依存に近い全幅の信頼を置いている事は充分理解できた――どれだけハイネが彼を甘やかしているのかも何となく想像がついて「 きっとハイネは激しく親馬鹿になる男でしょうね。周りの方が躾にあれこれ気を揉むタイプの厄介な親馬鹿 」必ず守るからとたっぷり甘やかす余り、子の健全な危機感を養えず面倒を見る羽目になった周囲が疲弊する――そんなイフを容易に想像できてしまえば実現する夜は来ないであろうと理解しているため冗談めかしてカラカラと笑い「 終わらない廊下、ループする階段、扉だって無限に存在するってのは知ってるでしょ?とびきり運が良い夜はね、どっかの扉がステキな場所に繋がったりすンのよ。勿論黒薔薇のテリトリー内限定だけどね 」階段を降り、廊下を曲がり、それを何度か繰り返して立ち止まったのは何の変哲も装飾もない、獲物の部屋と全く同じ意匠の扉の前。自慢気にコン、と扉を一度叩いて「 これはアタシの見つけたお気に入り。誰も彼も連れて来てやるわけじゃないのよ 」そのままノブを捻り扉を押し開けると、その先には見慣れた間取りの部屋ではなくぽつぽつとランタンの灯りが点在するだけの薄暗い洞窟のような道が続いていて「 おいで。足元、滑りやすいから気をつけるのよ 」危険はないと示すようにまずは自身が一歩先に前へ、そうして半身で振り返り勝気な微笑みのまま忠告をしてから今度はカツカツと高い踵の音を響かせながら奥へと進行し――突き当たりの階段を数段登ればそこに広がるのは洞窟の吹き抜け部分。空いた穴から月光が煌々と差し込み、壁や床のあちこちに埋まった色とりどりに煌めく石がそれを反射し共鳴するようにキラキラと存在を歌う神秘的な光景が広がっていて)
***
交流中に悪いわね。アタシのお気に入りの場所、〝煌めきの塒〟のイメージ画像を公開したわ。ここにある宝石の色とか形とか自由にロル内で描写して大丈夫だからね。
【 https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/locus 】
>レンブラント(>1550)
(誓いと祈りの後の申し出に相好をまた崩して、「そのお言葉、痛み入るよ。…うん。休みたい時には、君を呼ばせてもらおうかな。」何時か解らずともそれに甘える約束をする。「ふふ、きっと喜ぶよ。」可愛いと褒める言葉は無論弟妹達のものとして、ジョークに至極楽しげな吐息を零して相槌代わりの一言を。……雛鳥達が、決して己と同じ目に遭わない保証は無い。届く言葉はあまりに残酷で、けれどどうしようも出来ない事実に一層唇を結んで俯く。震えぬよう地を踏む力を籠めた身体へ回った腕と、安堵を促す声。それへ一瞬戸惑ったように彼の顔を覗いたのは、無条件に誰かへ凭れた記憶があまりに遠く淡く、思い出すまでに時間を要したから。「――ありがとう、サー・レンブラント。」それでも額を彼の胸元に寄せて、しかし重さを掛けないまま静かな礼を返す、安らぎをもたらす言葉への精一杯の応答を。一通り弟の話を終えた後に届いた感心へ笑みの苦みは蒸発し、「ああ。彼も他の雛鳥達も、皆真っ直ぐで人の言葉を素直に聞ける良い子だから、僕も善き兄として居られたのさ。」因果の順序は逆なのだと、甘やかす長兄の言葉で丸々弟妹達を褒め称す。――月を背にした彼の眼差し。その光と同じ冷ややかに見えたそれへ確かな温度を感じて、兄の温もりを湛えていた鶴の瞳はすっと細まる。「……熱烈だね、サー・レンブラント。」声に怯えは見当たらない、だが先程までの軽やかな囀りでもない。言うなれば、命尽きるまで情を奏でる小夜啼鳥の歌を思わせる甘い音。重ね合わせた視線も同じ、先程までのふんわりとした綿羽の如き上澄みとは違う、幾度も煮詰めた蜜に似た濃密な愛の一雫を滲ませて。深く深く、その彼の情熱さえも包んで口付けるような、いやに大人びた慈愛の笑みの後。それを泡沫と掻き消して悠然の微笑を整え、「もし本当に“そう”したいのならば、サー・カナニトときちんと仲直りをしたその後で、もう一度言っておくれ。」確実性など何も無い、出鱈目や嘘を言われた所で確かめようの無いそんな条件を差し返して、彼からの情熱に今ひと時の猶予を渡す。)
>グルース(>>1554)
(たくさん雛鳥を甘やかしてきたであろう彼は、果たして誰かに同じように甘やかしてもらっていたのだろうか。反射的にそんな疑問を抱いたのは先ほど腕に収めた彼の狼狽するような様子を垣間見たからで、甘やかされ馴れた雛達と異なりどこか遠慮して大人に甘えきれない長子、そんな印象を覚えればますます甘い誘惑を重ねたくなるのを初夜の清廉さに免じて堪えて。しかし一変、こちらの熱に呼応するように彼の中の何か重く熱いものの片鱗が首を擡げた気がして、幼さの残る姿には不似合いとも言えるひとときの表情にうなじの辺りが微かにぞく、としたのを知覚しぬらりと微笑みを深め「 ……上手に仲直り出来たらご褒美くれるん? 」退屈な屋敷では喉から手が出る程欲しい刺激。その匂いを敏く感じ取れば低い声を僅かに熱に濡らしてじっと彼を見つめ、音もなく持ち上げた鏃の尻尾の先端を形の良い彼の顎についと添わせて)
>レンブラント(>1555)
(触れるひやり冷たい悪魔の象徴。そちらに一度視線を寄せ、それからまた彼へ移して贈る眼差しに、一瞬の幻とした濃密さを再び浮かべる。「……勿論。僕にあげられるものなら、何だって。」おねだりにも聞こえるその問い掛けを甘く肯定し、緩やかに上げた指は顎に添うそれの形を柔くなぞる。「僕の言葉を果たしてくれた夜、部屋を訪れたその時に、」雛の羽を繕うような、子の髪を梳かすような、優しい優しい慈しみの掌で鏃を撫でさすった後、徐と五指に包んだ其処に唇を寄せて、「思うまま、満たしたいまま――君の望みを言ってごらん。どんな事でも、叶えてあげる。」彼を捉えたまま一度も逸らされぬ夜鳴鶯の瞳。陽と若葉を映す澄んだ湖面のその内、欲して手を伸ばせば何処までも沈み包んでいく底無し沼の甘露を湛えて、愛しみあやす音色で言葉を紡ぐ。「……約束するよ。」そう締め括って彼の尾を離し、後ろに両手を組んで低い靴の踵を一歩前へと、互いの距離を縮めて。「…仲直り、出来そうかい?」まるで、己の方から頼み込んだと言わんばかりの下手の問いに、拗ねる弟妹の機嫌を窺うような微笑ましい視線を添え、彼を見上げる為にほんの少し反らしたその首をゆったりと傾げて鋭い琥珀色を見詰める。)
>グルース(>>1556)
(どんな事でも――その言葉に万能の力など無いというのに、あわや〝自由〟の希求を口走りかけたのは彼に獲物の無力を知らしめる為の意地悪か、それともとうの昔に宿命を受け入れ未練の火が消えた筈の炉に一抹の燻りを感じたからだろうか。いずれにしてもランプの魔人を彷彿させる少年の魔性に刹那とはいえ中てられたのはきっと誤魔化しようのない事実、侫悪な悪魔ではなく単純な同胞の誰かであれば彼の虜になっていたかもしれない。怪物すら魅入ってしまいかねない彼の性質に思わずくつくつと肩を揺らしながら低く笑って「 こンお屋敷では無力なヒトの約束ほど儚いモンそうそうないで 」尾の先端に触れた体温の何と熱く感じた事か。その熱をもっともっとと欲しがるように窓へ預けていた体勢をふわりと直立に戻したかと思えば嘘か幻のようにその姿は掻き消える、まさに人の命が風前の灯火と揺らぎ消え去る儚さを体現するように。自身を見上げた彼のその背後に音もなく再臨すれば後ろから彼の首へと腕を回して、尻尾で撫ぜた顎を今度は冷たい指先で柔く掴み「 君こそ。その夜まで長生き出来そうなん? 」背後から彼の耳元へ寄せた唇で、その約束が果たされるのかを問い掛けても仕様のない雲を掴むような事と解っていながら微笑みのままに投げ掛けて)
>和風テイストの演者様募集を解禁しました。忍者や花魁、山賊にお侍様、国籍問わず個性的なお方をお待ちしております。
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●グレン × キルステン ⇒ 【 >>1553 】
●秋天 × クォーヴ ⇒ 【 >>1531 】
●グルース × レンブラント ⇒ 【 >>1557 】
▼ 日常イベント ▼
【https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/events】
▼ 宝箱(https://www.saychat.jp/bbs/thread/646097/) ▼
>レンブラント(>1557)
(笑う悪魔の声。皿の上の料理である己の言葉に返されたそれに眉を寄せるでもなく、嘆くでもなく、ただ微笑んだままに頷いて、「……そうだね。人の世でさえ、命も約束も夢幻と同じ。一つ瞬く内に消えていく。――このお屋敷なら、きっと尚更。」ゆらり陽炎の如く姿を散らす彼へか、それとも月を見詰める独り言か、諦観と寂寥が微かに滲む静かな音を中空へと漂わせて、そっと視線を伏せる。――直後、首へと回された見覚えのある腕。背後に彼が居る、そう気付いた所で今度は顎に尾と同様ひやりとした指が這って。耳に問う近さに擽ったげにくすりと吐息を零した後、「ふふ。僕、悪いものに食べられない術には少しだけ覚えがあるからね。君より魅力的な方が現れない内は大丈夫さ。」“悪いもの”とは人か感情か、それともお屋敷の怪物か、明言はせず曖昧なまま。ともすれば“君ほど悪い子もそうは居ない”なんて解釈も出来る、そんな危うい返答を友へのジョークに同じ軽やかさで踊らせて。「…もし口上で足りなければ、何か形ある証を残そうか。」それからまた歌うは子を愛でる夜鳴鶯の音。柔く円やかに細めた瞳を背後の彼へと流しながら、傍にある滑らかな紫髪をそっと緩やかな仕草で幾度か撫で梳いた後、「……サー・レンブラント、君はどうしたい?」そうっと、冷たい頬にその掌を添えて。まるで内緒話をするような密やかな吐息を含め、何もかも赦し包んでしまう甘やかしを存分に滴らせる問いを彼に返す。)
>キルステン( >1553 )
キミたちに比べたらまだまだガキでしょ?
( 悠久とも言える時を生きる彼らと比べれば人間の寿命など些細なものだろう、そう理解をしている為にやや冗談地味た口調で。指輪への軽い口付けの後持ち上げた視線の先が交われば、ふっと表情を和らげて見せて。どこかの世界線ではあるかも知れない未来を想像し 「 ふふ、目に浮かぶな。きっと誰よりも目を掛けて育てるんだろうな 」 つられる様に軽やかな笑い声を漏らすものの、胸の内に燻る “ 羨ましい ” そんな想いは翳りとして表情へと表れてしまっていただろうか。その感情は自身へ向く執着が他者へ移る事を想定したものよりかは、己の幼少期の家庭環境を踏まえたものなのだが、どう捉えられたのかは近くにいる彼だけが知る事だろう。屋敷の中に何があるのか、そんな質問に答えてくれる声にハッと意識を浮上させ 「 それって例えば、人間だけで廊下を辿ったとしても辿り着けるようなものなの 」 ハイネとの約束を守っている身としては一人で出歩く事なんて無いだろうが、興味が無いといえば嘘になる。ゆるりと首を傾げ、その興味を消化させようと。部屋を出てからどれくらい歩いただろうか、辿り着いた先はこれまで廊下に続いていた扉と何ら変わりのないものだが、口振りから察するに特別な部屋に違いない事は容易に想像がつく 「 そんな特別な場所に連れて来て良かったの? 」 扉の開いた先に広がる景色は薄暗いだけの洞窟に見える。立ち居振る舞いからも、身につけている物からも、どちらかと言えば派手好きのような彼が好むだろう物とは正反対に思え、傾げた首の角度は深まるばかりで。彼の声に一歩室内へと踏み込めば足から伝わる感触も洞窟のそれに近く、履き慣れない靴では滑って転ぶ未来が容易に想像出来る為に一歩一歩ゆっくりとした足取りでその背中を追いかけて。階段を登った先、眼前に広がる景色にぱちりぱちりと瞬きを数回 「 ……すごい、綺麗 」 ぽつりと呟くように。月の光を受け、色とりどりに輝くそれらは人の手の加えられていない天然の物だろうか。視界に映る範囲だけでも数多の石があるように見えるこの中から目当ての石を探し出すのはかなり骨の折れる作業となるであろうが、この場で力を借りるつもり等更々無く 「 ねえ、キルステン。この部屋の中は一人で歩いてても安全だって認識でいいんだよね? 」 廊下を歩いている際も注意を促す発言こそあれども危険に晒されるような事は無かった為、横目で見遣りながらの質問は単なる確認。肯定の返答が返ってくるのならば探し物の為に足元から頭を見せる石へと視線を向けつつ歩みを進めるつもりで )
>グルース(>>1559)
どおやろなあ、切羽詰まった奴に迫られたらすぐ君明け渡してしまいそやけど
(顎に添えた指をつつと滑らせ、その頸動脈を長い爪にてくすぐるように横一文字にゆったりとなぞる。どれほど言葉を弄しても所詮悪魔は悪辣なるもの、それをこの短い間に理解したと解釈できる彼の言葉を否定するでも抗弁するでもなく、むしろ危うい綱渡のようなこの夜気を味わい愉しむように密やかな笑気を声に織り交ぜて「 ほんなら人質取らしてもらおか? 」耳を伝って脳を溺れ蕩かす毒の甘露のような声、悪魔でなければそれだけでくらくらしてしまいそうなそれを軽やかに受け止め頬に添う柔らかな手のひらの側面を唇で淡く食みながら家紋の浮かび上がるカメオをコツ、コツと硬く鋭い爪先で指し示し「 それともこっちのンが一生懸命自分守ろうと出来るやろか 」見せ付けるように背後から伸ばした手を彼の眼前に、図鑑を顕現させた時のように手のひらを上に魔力を込めればまたしてもぽむっと空気の弾ける音と共に掌上へ現れたのは精巧な白鷺の模型――否、手のひらサイズだが命あるように動き時折小さく鳴いている。「 俺がカナニトと仲直りして君の部屋に来た時、もぬけの殻やったら…… 」声には相変わらずの笑気を幽かに交えながら、ゆぅっくりと拳を握ってゆく――当然身体を押し潰す圧力を感じた小さな白鷺は苦し気に一声高らかに鳴き、それを契機にふっと力を緩め再度手のひらを開いて見せて)
>グレン(>>1560)
(こちらの忠告もどこ吹く風と生意気な態度に改めて小さく肩を竦め、しかしそれとは裏腹に曇った表情も横目に見逃さず色々あるのねと短く吐息して「 一度見つけた特別な扉はね、同じ場所でお利口に待ってくれてるわけじゃないのよ。アタシは自分の魔力でマーキングしてるからそれを辿ってるの 」無限の扉はその位置関係すら目まぐるしくスイッチを繰り返しており、だからこそこの屋敷では変動し続ける道順を覚えるのはまさに徒労を極めた行為。魔法を行使できる怪物だからこそ道を辿れるのだと種明かしをしながら、哀れな獲物にだって冒険の権利くらいはあるとふと思考し代替案を挙げようとぶつぶつと喋り始め「 クソ長い紐か何かをドアノブに括って、端っこを自分の部屋まで持って帰れれば――いいえ、それこそ無謀ね。一晩でこんがらがっちまうわ 」ゆるゆるとかぶりを振って思い付きに過ぎないアイデアの致命的な欠陥を受け入れて。「 アンタの飼い主にこのアタシがテキトーなモン持たせるわけないでしょ。持ってる手札は使うわよ 」これは自身の面子にかかわる問題なのだと背を向け洞窟を進みながら端的に疑問に答え、そうしてこの光景に目を奪われる彼の様子を満足げに眺めてはカツカツと歩いて宝石の物色に向かいながら「 ええ、この部屋の美しさを理解できないケダモノは締め出すように細工してるわ。荒らされたら堪ったもんじゃないからね。安心して目当ての石を探しなさい 」敢えて彼の方を向く事無く安全を告げることで理性無き化物からの干渉を受ける可能性が限りなくゼロに近いことを示しつつ、手や視線を忙しなく動かし宝石たちを観察しては黒と金の混じったような水晶型の石を発見しちょいちょいと手招きを「 …あら、こんな色前まで無かったわね。ハイネに似てるわ、ちょっとこっち来て御覧なさいよ。やァんコッチのも素敵じゃないッ 」招いておきながらそのすぐ近くに自身の好みにストライクな深くも透き通ったビリジアンの石を発見し、目を輝かせながらキャッキャとはしゃいで)
>レンブラント(>1561)
……雛鳥に似た誰かであれば、可能性はあるかもしれないね。
(とくとくと温かに脈打つ喉へ滑っていく指と、其処に備わる鋭い爪。命を遊ばれるようなその仕草の好きにさせ、己は彼の頬に当てた掌でゆったりと冷たい肌を撫でる。世間話の軽やかさと薄氷を辿る危うさを併せた会話は、首元から届いた硬い音に一度途切れる。「それは、」それから転がり落ちた声には緊張の糸が密かに縫われ、次にまた問いを積みかけたその眼前に現れたのは彼の掌上で囀り尾羽を揺らす白鷺。愉楽の混ざる言葉と共に畳まれていく指の内、その白鷺の悲鳴と雛鳥が己を呼ぶ声が重なって――咄嗟だった。彼の力に自身が敵う事は無いと解っていて、潰れる前に拳が緩められたのも見えていて、それでも気付けばその小さなものを庇うように彼の五指と白鷺の間に自らの手を隔てていた。「――…君はとても、上手なお人だね。」今の数秒、止めてしまっていた息を少しずつ取り込み、感情を抑え付けた静かな音色をまず一節。続けて、「いいよ。それならば僕は、僕の持ち得る全霊を以て“その時”まで生き延びてみせよう。だから、」芯を持って朗々並べ立てるは彼への宣誓、振り返り浮かべるは貴族の優雅たる笑み。……あの一瞬の間、恐れに粟立った背の震えも、跳ね上がった心臓の音も、今もまだ逸ったままの拍動も全て伝わっているだろう。それでも、「君も、僕の愛しい雛鳥達への約束を違えないように。」何もかも圧倒的な相手を前に、怖じ気を圧し潰し隠して高潔に見せる“強がり”を、微笑む眼差しに凛と宿して。彼が己を抱擁した際の、“もしも”の言葉を引き合いの契りと告げる。「…白鷺の彼に、誓っておくれ。」その最後、ふっと移した視線の先。彼の掌でふわふわ膨らむ羽を繕うその鳥を通し、今も遠い向こうで何も知らず生きる己が弟に馳せる慈しみを細めた瞳と柔い声に湛えながらも、己と同じ誓言を彼に確と求める。)
>グルース(>>1563)
……おおきに、
(取り乱すか或いは激昂するか、並の人間であれば大きく揺さぶられた感情に引っ張られて態度や行動にそれが発現してしまってもおかしくない自らの試しにも似た戯れに、期待に反さず彼は気丈を保ってみせた。無論それが虚勢だと見抜けないほど優しく無神経な怪物ではない、だからこそ自身の目には大きく跳ね上がるような鼓動も背筋の震えるような恐れも綯い交ぜに強さを圧し出す様子は大変可愛らしく好ましく映るもので。皮肉と取れる賛辞に三日月のように口角を吊り上げ背後にて小さく礼を、間髪入れずに「 君はめっちゃ魅力的な子や 」応酬を一往復だけ返すようにこちらからは心からの感想を。魔力でネジを巻いた分だけ動くに過ぎない錻力の玩具なのにやはり効果覿面だったらしい白鷺を取り囲むように、掌には黒い鳥籠が形成されていき「 勿論。悪魔は嘘吐くけど契約は守る――そういうもんや 」急に袋小路へ追い詰められ狼狽するようにきょろきょろと細い首を巡らせる自律人形に我ながら良いリアクションだと内心で微笑みながら、気を付けなければ一晩で失くしてしまいそうな小さな黒い鍵をそっと彼に差し出して。約束の夜、それと引き換えに白鷺は空へ解き放たれるのだと、そう示唆しながらぬるりと彼から離れるように姿を消しては瞬きのうちに眼前へ現れ胸に手を当て浅く礼を「 この白鷺は俺のモン。やから俺が誓うのは君自身にや、グルース 」それが未だ黒薔薇の目に留まらぬ本当の次男を指すのかそれともただ自分で作り上げた人形そのものを指すのか、煙に巻くように薄く微笑し腰を屈めてじぃっと彼の目を見つめて。もし彼が鍵を受け取ってくれたのならばその時点で契約は成立、ああ面白い愉しみが出来たと上機嫌に悪魔は微笑みを深め「 俺も作戦考えんとな。臍曲げた弟とどないして仲直りするか…どう転ぶか楽しみにしといてなあ 」サラサラと微かな音と共に足元から魔力の粒子となり掻き消えてゆく、特段呼び止められなければこのまま最後まで蛇のような笑みを残して幻の如く消え去るだろう)
>レンブラント(>1564)
……それはどうも。
(彼の賛辞に、形のみの礼言を。それから彼の五指を塞ぐように白鷺と隔てた其処からも、震えが見付からぬ内にそっと手を離せば、掌のそれは何処からと無く組み上がった鳥籠に閉じ込められる。変化に戸惑う様子を見せるその子に“ごめんね”と、音無き唇で胸中の罪悪を詫びた後、次に眼前へ現れたのは黒い鍵。差し出された小さな小さなそれを、下から掬うようにして手の中へそっと収める。視線をそちらに取られた隙にまた失せた背後の気配は、瞬きと共に上げた視界の内に。此方を覗いて細まる琥珀を、臆さず逸らさず、真っ直ぐに見詰め返して微笑んで、「…ああ。君の行く先に幸あらん事を。」少しばかり強気な振りを。声色ばかりは穏やかに、消え行く彼へ祝福を贈って――静寂の帰ってきた室内。踏み締めていた足を緩めて座るベッドの縁で、落とした目線の先にあるのは契約の証。今頃になって押さえ付けた怯えが微かに揺らすそれをぎゅっと握り込み、その上へもう一方の手を重ねて、「――大丈夫、大丈夫。」胸に抱いて背を丸め、身ごと包んで温める言葉を溢す。「僕が守ってあげるから、君は何も知らずに、安心して眠っておいで。」泣く子をあやすように手の甲越しに鍵を撫で、此処から届く筈も無い安堵の情を、それでも淡く甘い音に乗せて。「エグレット――僕の可愛い白鷺、大事な家族。…君を愛しているよ。だから、」名を呼んだ彼へ紡ぐようで、自分を確かめるようでもあるその羽毛の愛の中、「……どうか“君まで”、消えてしまわないで。」“二度目”を恐れて悲痛に絞り落とされた、切実なおまじないと祈りを。……俯ききった顔は誰も窺えない、誰にも窺わせない。弱る姿を隠す小鳥の如く、吐息さえ潜めてベッドの陰にじっと蹲った後。ふと息を深く吸い込み、すっと窓の向こうを見上げた顔に怯えは浮かべず、ただ毅然とした笑みを湛えて、「……見ていておくれ、」凛と背を伸ばし立ち上がる姿は、目一杯に翼を広げ、気高く空へ飛び立つ鶴そのもの。「ねえ、――――。」その先に続けた名は、かの悪魔か白鷺か、それとも――知るは鶴に光を注ぐ窓辺の月ばかり。)
***
今宵も良い一時を過ごせた事に感謝を、サー・レンブラント。君は駆け引きの上手なお人だね、僕では敵いようが無い。……でも、愛しい雛鳥達のお話が出来て楽しかったよ、有り難う。
さて、それでは次は宝箱で紹介させてもらった虎の方の手番……と言いたい所だけれど、その前に少し相談かな。彼、まだ指名を決めきれていないようだから。
今、彼が候補として考えている怪物様はお三方。レディ・ゼズゥとサー・キルステン、それからサー・アッシュ。僕から見る限りどの方とも相性の不安は無いのだけれど、だからこそ迷ってしまってね。君達怪物様方から見て、このお三方の内と誰が良いのか尋ねたい、もしくは彼らと彼女以外でも気の合いそうな御仁が居たのならそちらの紹介を願いたい、というのが相談事の要点さ。……候補はあくまで候補で、正直どの方も魅力的だから、君達の思うままの答えをおくれ。
では、僕は一度休息を取るから、この先は虎の方にお任せしようか。……ふふ。またね、サー・レンブラント。約束の夜まで息災を祈っているよ。
>グルース(>>1565)
回収おおきになァ、俺の方こそ君の反応が可愛ゆうて楽しませてもろたわ。また遊ぼなあ。
次は早速虎の彼に会わせてもらえるんやね、相手に選ばれる怪物が羨ましなあ。そうやね、まず挙げてくれた候補は君の見立て通りこっちも何も不安ないわ。となると希望してくれとるルートと照らし合わせて誰がより適してるかやけど…秘密の共犯者の道はこンお屋敷とそれを支配する黒薔薇だけやのうて、おんなじように囚われた俺ら怪物全員を自分勝手な炎に巻き込ンで殺戮する修羅の道や。
キルステンは挙げてくれた中では一番精神が安定しとって、同じ境遇に苛まれる同胞の事もなんやかんや大事にしとる。せやから、かなり酷な道を歩ませる事になるやろなあ…まア漢気のある奴やから心中決め込んだら迷うことなく虎と並び立って突き進むやろけど。
ゼズゥは物分かりのいいツラしながら酒やら煙草やらナシやったら屋敷に囚われた運命を直視出来ひん危うい弱さを持っとる。こン屋敷と黒薔薇が憎うてしゃアないし、こっから解放されるならそれが死っちゅう極端な形であれ同胞にとっても救いになるんちゃうかて開き直れそうやね。現状に絶望しとっても自分の無力を理解しとるから動けん、そういう奴やからこそグイグイ手ぇ引っ張って道を切り拓いてくれる虎の彼ン姿はえっらい眩しゅう映るやろうね。
アッシュは自分を愛して認めてずっと傍にいてくれる存在を渇望しとるし、そんな特別が出来たンやったら何にも顧みることなくその存在の為だけに行動してどんな犠牲も厭わんやろうね。…厭えるアタマが無い、ちゅう表現の方が適切やけど。そういう意味では無垢で無邪気にいっちばん残酷な道をズカズカ無遠慮に驀進出来る奴や。喉から手が出るほど欲しかった特別な人間にこの屋敷から出たい、言われたら後先考えんと自分から「だったら屋敷を燃やしちまおうぜ」なンて言い出すかもしれんなあ。
挙げてくれた三人以外やったら、ジョネルやギレルモなんかもアッシュに近い属性で適性があるかもしれんね。どうやろ、こン情報でお相手絞れそうやろか。
ああまたなぁ、グルース。長生きしてや。
【 黒薔薇屋敷の扉は開かれており、演者様を歓迎します 】
◆統一された世界観で、複数のキャラクターを気軽にCCしながら遊びたい
(基本的には各演者様にそれぞれの別の世界線があり人間同士の関わりを持つ事はありませんが、兄弟や姉妹等の設定であればCCしながら同じ世界線で遊ぶ事も可能です)
◆キャラメイクしたけれど満足に動かせず眠ったままのキャラクターの供養をしたい
◆亡国のお姫様、失地した忍者、古代のアマゾネス等々の一風変わったキャラメイクをしたい
――他にも、黒薔薇のお屋敷が演者様の楽しめる場となれれば幸いです
>レンブラント(>1566)
よぅし、こっからは鶴の坊主に代わって、俺の出番だな。っつう訳で、此方さんじゃあ初めまして、黒薔薇の怪物さん方。
しっかり丁寧に答えてくれてあんがとな、悪魔のアンタ。話聞いても迷っちまう所は正直多いが、そうさな…そんなら、ラミアの嬢ちゃんと道を歩ませてもらおうか。なぁに、過酷な茨道なんぞこちとら百も承知、何もかもぶっ飛ばす勢いで手を引っ張って走ってやるさ。
そんじゃ、前口上はこの辺にして、とっとと舞台に上がらせてもらうとしよう。アレコレ寄り道したり、何か問題が起きたりするかも知れねえが、まあ後の事はまた後で考えりゃ良い。
これから宜しく頼むぜ、怪物さん方よ。
***
指名:ゼズゥ様
希望ルート:秘密の共犯者ルート
名前:ナミル・アッシャムス(Namir Al-Shams)
性別:男性
年齢:46歳
職業:商人
性格:気っ風の良い豪快な人物、が第一印象。怒る事の無い余裕ある感情表現ははっきりと、言葉や態度は堂々としており、他者から扱き下ろされたとしても心一つ揺るがず笑い飛ばす自信家でもある。それを裏打ちするのは、興味を持った何事も完璧と成すまで修練を積み重ねる、粘り強く妥協の無い努力家の片鱗。『有言実行・即実行』の自銘の下、良いと思った事を直ぐ様行動に移す活発さ、自分から積極的に声を掛ける社交性の旺盛さの反面、一人きりの寂寥と退屈が苦手。それ故、一人にしておけば突拍子も無い行動に出る事もままある。
容姿:身長194センチ。幅広の骨格に筋肉が乗るがっしりとした体躯に高めの体温。黒色の髪は芯を持った固い毛質であり、一度癖が付くと直り難い為、ベリーショートに整えて額を出す形に前髪を分けている。髪と同色の眉は太めで真っ直ぐ、笑い皺の付いた切れ長のアンバーアイと相俟って、虎のような意志の強さを窺わせる。全体的に彫りが深く、やや厚い唇と浅黒の肌がエキゾチックな雰囲気を纏わせている。ゆったりとした黒の開襟シャツ、白のスラックスと至ってシンプルな格好だが、どちらも専用に仕立てられた質の良い一品。シルバーリングを左手の薬指に着用、生まれつき左側の肩と鎖骨の境界辺りに目玉のような二重丸形の赤痣がある。
備考:15歳で故郷を飛び出し、その身一つでやりたい物に片っ端から手を広げ、宝飾品から不動産まで幅広く商業を育てて財を築き上げた後、それらを子や部下に引き継がせ早々に隠居した元企業オーナー。事故や病など原因は様々ながら、親族とその伴侶全てが40代の内に終命する早世の家系であり、本人が看取った内では、両親、兄姉、弟、妻が40代の内に逝去している。多くの命の終わりに立ち会ったが故か、「いつ終わっても笑って逝ける、悔い無き人生を」としたい事を貫き通す方向に志を決め、思い立てば世界旅行やら登山やらと日々エネルギッシュに驀進している。とうに成人し独り立ちしてはいるが二人の子を持つ父親でもあり、少々荒っぽいものの年下の面倒見が良い。声は強い意志と同じく張りを有してよく通る、重ねた年の分渋みの滲むバリトン。一人称は俺、二人称はアンタ、または呼び捨て。年若い相手には嬢ちゃん、坊主などと呼ぶ事も。
ロルテスト:
(朝日が昇る少し前、熱い珈琲を片手にルーフバルコニーへ上がって紫煙を燻らせる。手摺に寄り掛かってまだ静かに眠る街を眺めていれば、遠くから顔を出す太陽がゆっくりと夜を赤く焼いていく。「おう、おはようさん。」些かの眩しさに目を細めながらも、その光へ親しげな挨拶を投げるいつもの日課の後。珈琲を啜る傍ら今日の空っぽな予定を何で埋めるか暫し思考を巡らせ、「あー……そういや、アイツ店出したっつってたな。」思い出したのは少し前の友人との会話。念願のカフェ経営を始めたと笑う若き彼の背を叩いて祝福した事が記憶に新しい。「…よし、朝飯がてら顔出すか。」そう決めるが早いか半分程吸い残した煙草を消して、準備に戻ろうと踵を返したその隣のテーブルに、真っ黒な何かが乗っているのが視界を掠めた。「……ん?」改めてよくよく見たそれは薔薇を象る封蝋であり、無論用途に適した便箋が共立って置かれていた。「ほう。今時シーリングなんて、凝った真似する手紙もあったもんだな。」思わず零れた感心する言葉はさておき、その唐突に現れた不審物を手にしてみれば紙も蝋も中々の上等品、誰かの宝物でも舞い込んできたのかと辺りを見回すが、探す素振りをする人影はどの窓にも道にも見えない。首を傾げてその黒薔薇と向き合っていると、いやに中身への興味が疼いて仕方無く、気付けばぱきりとその封を割っていた。中に書かれたその一文を目で辿り、「……迎え、ねえ。」楽しげに呟きを返す。これは己に当てた文言だと、根拠は無くともそう直感して、「カッカッカ!良いねえ、俺を選ぶたぁお目が高い!いつでも来い来い、歓迎するぞ。」大笑いしてひらり振った紙が風に浚われ、舞い上がっていくそれを見上げ――覚えていたのはそこまで。次に開いた目に飛び込んできたのは見慣れない天井、それと素っ気無いが豪奢な調度品。「……何だこりゃ。」起き抜けの嗄れ声で疑問を落として身体を起こし、室内を見回しつつ眠る直前の事を思い返す。そう、確か日課の後に妙な手紙を見付けて――「……ああ、“迎え”ってヤツか。」思い当たるのはそれくらいしか有らず、一人納得した次に、「これじゃあ“迎え”というより“誘拐”だな。」実際そうであるかもしれない可能性を一息に笑い飛ばす。……さて、少しばかり状況の情報を、と探索に立ち上がった瞬間に響いたノック音。それに思案を回したのは刹那にも満たない間、欲しいものが向こうからやってきたとばかりに口の端をにんまりと弛め、「あいよ、ちょいと待ってな。」あっさり返事をして大股にドアへ近付けば、これまた呆気なく簡単に其処を開いてノックの主を不敵な笑みにて出迎える。)
Image:※じゃろ様の「uomo」をお借りしました。
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>キルステン( >1562 )
( 純粋なる興味からなる質問に真面目に思案してくれる辺り、彼が “ 良いヒト ” なのは疑いようもなく。部屋が動くなんて事のない元の世界であれば彼のアイデアも突飛だなんて感じる事は無いのだろうが、今いるのは摩訶不思議な屋敷。首を傾げ考える仕草を見せるも良い案なんて浮かんで来るはずもなく 「 仲良くなった誰かしらに連れて行ってもらう、っていうのが一番マトモそうだね 」 苦笑を浮かべて。彼の様子を見て察するに屋敷の廊下のような危険と隣り合わせと言うことは無いらしい。それが聞けて満足、とばかりに足元を彩るかのような色とりどりの宝石の中から目当てを探すべく一歩二歩とゆっくりとした足取りで歩き回っているも、呼び寄せるように手招きをされれば側にしゃがみ込み 「 ふふ、確かに 」 視界に捉えた石はダークエルフの外見を彷彿とさせるもので。すうと目を細めつつも、それに対して然程心が惹かれないのはもっと彼らしい宝石が、色があるだろうと考えているからか。隣ではしゃぐ様子にゆるりと口角を持ち上げて 「 ねえ、こっちはどう? 」 手招きをしつつ案内をするのは先程見かけたアレキサンドライトに似たそれの所 「 キルステンの好みのど真ん中からは外れるかも知れないけれど、石言葉も含めてぴったりだと思うんだよね 」 月光の差し込む洞窟内では紅いルビーのように見えるだろうが屋敷の中、少なからず人間に与えられている部屋の中で見たならば青緑色に見えるであろうそれ。傍に欠片が落ちている事に気が付けば、軽く袖口で宝石を拭ってから 「 騙されたと思って部屋の中でこれ見てみてよ 」 彼が手を差し出してくれたのならば、その手の中に宝石の欠片をコロンと転がすように入れるつもりで )
>ナミル(>>1568)
(物憂げな視線を落とす先は両手の内に収まるグラス。あと少しで飲み干せてしまう量まで減った透明の液体に目を伏せ、傍に控えるトカゲの使い魔は空っぽになったボトルの上にちょろちょろと登り心配そうに主人を見つめ「 …分かってる。今夜は一本って約束だもんね 」力なく微笑しグリーンを基調としたネイルに彩られた指先でつるつるとした使い魔の鱗をそっと撫でる。小さなトカゲは心地良さそうに目を細め、また主人の深酒を止められなかったら…という懸念が杞憂に終わった事に安堵するようにその場でくるりと一周してからぷきゅいと鳴いて「 この近くに新入り?……そう、また… 」またひとつ、理不尽に黒薔薇へ縛られる命が増えてしまった。陰る表情を引き摺ったままとぐろを巻いていた下半身をしゅるしゅると解いて立ち上がり、手慣れているというよりすっかり癖になってしまったという手つきでテーブルの上のシガレットケースから黒い煙草を一本取り出し咥えながら自室を後にし、向かうのは件の不運な新入りの部屋。あまり煙の出ない仕掛けをしているのか、僅かな紫煙をくゆらせながらノックの応答を待つ事数秒。怯えなど微塵も感じさせない、寧ろ微かな喜色さえ含むような声が扉の向こうから聞こえてくればきょとんと眉を上げ、その表情のまま想像だにしなかった剛毅な笑みと対面し「 ……こんばんわ。あんた、人間にしちゃデカいね 」些か抑揚に欠けるトーンで思ったままを告げながら相手の顔を見上げ「 新入りって聞いたよ。色々困ってるだろうから説明しに来た 」端的に訪問の用件を伝えれば答えを待つこともなく上げていた視線を真正面に戻し、明らかに人ならざる下半身を器用にくねらせその鱗をずるずると引き摺りながら彼の横をすり抜けるようにして室内へと進み、まだどの怪物の残り香もない部屋に一番乗りだと悟りながら特段それを嬉しいとも面倒とも感じることなく彼の方に顔を向けて「 …煙草、苦手だったらごめん 」言いつつ消す気は無いのか、灰が床へ落ちる代わりに微細な粒子となってハラハラと消えてゆく不思議なそれを咥えたままソファーの背凭れ部分に両腕を置くようにして体重を僅かに預け「 あたしゼズゥ。あんたは? 」自然と視線の先にある、不気味なほど巨大な銀色の満月を見据えながら問い掛けて)
>グレン(>>1569)
そういうコト。いいじゃない、アンタは他のコと違って頼む相手に事欠かないんだから
(この屋敷では風前の灯火に近い儚さをもつ命の炎、それが燃え尽きてしまう前に不思議なこの屋敷を探検したいと願う気持ちは理解できる。だがそれを易々と叶えられる獲物は決して多くない、彼のように特定の怪物から深い寵愛を受けるのならば話は別だが「 なあに? 」お気に入りの場所で煌めいているものに囲まれてすっかり上機嫌なのか、幾許か刺々しさが抜け丸みを帯びた声にて手招きに応じてカツカツとヒールを運び「 あら情熱的ね。嫌いじゃないわよ 」自身の顎に手を添えまじまじと見つめる紅は率直に綺麗だと感じるものの確かに選抜して自らの手元に持ち帰るほどのものではない。だからこそ光源が異なる場所でそれを見る機会もなく、どこか腑に落ちない様子のまま彼の意を汲んで片手を掌を上に向けて差し出し「 アンタ、石言葉なんていちいち覚えてンの?ロマンチストなのねえ 」指先でつまんだその欠片をあちこち透かして観察しながら、しかし変わる気配のない色合いに首を傾げてポケットへと仕舞い込み「 それじゃあ、ハイネにあげる石にも意味のあるもの選ぶワケ? 」ゆったりとしたテンポで洞窟を歩くヒールの音を響かせながら、自らも再度物色へと戻りながら語りかけて)
>ゼズゥ(>1570)
(己が文字通り頭抜けた体格である自負から、ドアを開きつつ下げる癖の付いた視線の先で、躑躅を彷彿とさせる濃色の瞳と搗ち合う。「おう、こんばんは。嬢ちゃんこそ随分イカした格好だな。」初めの挨拶に添えられたものを褒め言葉として受け取り、それに此方からも一言お返しをした後、「そりゃあまた、わざわざと有難い。」礼の一声と共に、入室の素振りを見せた彼女へ一歩退き、少し離れた所でやっとその全身に気付く。――作り物とは思えぬ動きをする蛇の胴と尾。それにタトゥーかと思えた肌の鱗も、照明や月光を反射して艶々と煌めいている。しかしながらそれらに呆気に取られたのは一瞬の話、今は情報収集と頭を切り替え、丁度彼女の真正面へと当たる位置まで己も移動する。それから詫びる彼女へ上げた片手をひらひら軽く振って、「いい、いい。気にすんな。俺も煙草はやるクチよ。」そう寛大に笑みながら、どっかりと傍の椅子に脚を開いて座る。「俺はナミル・アッシャムス。宜しくな、ゼズゥの嬢ちゃん。」続けて名乗りに応じて此方からも堂々あっさり答えを渡したその次、「さて、自己紹介も済んだ事だし、アンタの親切にちょいと甘えさせてもらおうか。」本題とばかりに話の道を開拓しつつ、人ならざる何かへ対して距離を縮めるように、膝の間で手を組み上体を彼女の側に傾ける。「そうだなあ…まず此処が何処で、何の目的で此処に俺を置いたのか、その辺りを訊かせてくれ。」一番初めの小手調べ、まるで交渉事でもするかの如くじっくりと彼女の瞳を見据えた問いの後、「なにぶん、誰ぞに拐われる理由に心当たりが多くてなあ。こればっかりは見当がつかん。」ジョークなのか本気なのか、少なくとも喋る当人は些事とからから笑って質問の補足をし、そのまま彼女の返答を待つべく一度言葉を締める。)
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