執事長 2020-02-25 19:00:33 |
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>ナザリ(>1520)
(甘い果実の知らぬ逸話に興味津々前のめりに相槌を打つ。それから悠々悪戯に放られた言葉へふっと相好を柔く崩して、「おや。…それなら君は、石榴を採っておいておくれ。」此方は緩やかに首を傾げての一声を。返した果実がギリシャであれローマであれ、或いは彼の国に根差すものであれ、相手がその意味をどう捉えるか余白を残す軽やかなジョークの後。彼の放ったその存在の示唆にほんの一瞬、緊張の舞い戻った口元が結ばれて、「…ああ、そうさせてもらうよ。」しかしそれは直ぐに溶け去って、穏やかで泰然とした答えだけを返す。――己の安堵の言葉の次、文献についての回答へじっと聞き入る。「そうかい、それは残念だね。」まず童話については色好い返事は貰えず、小さく唸る音を零して眉尻を垂らす。それから今度こそ己へ提げられた読み物の題名と共に、狡智そうな瞳と再び目が合う。そこにすっと細めた探るような沈黙の視線を数秒、だがやがては柔和な笑みに何れも其れも弛緩させ、「……そうだね。しなくてはならない事はもう失くなったからね。」ごく静かに、そんな言葉をゆったり紡いで肩を竦める。そのまま流れるように椅子の背凭れへと身体を預け、「是非ともお願いするよ、サー・ナザリ。この明けない永夜の供に会わせておくれ。」またにっこりと明朗な好奇心に眦を和ませて、恩沢の計らいに是を返す。「……本に耽るだなんて何時ぶりかな。」その尾っぽについて回った呟きに回想した、図書庫の鼠と化していた頃の記憶に視線をのんびり下方へ舞わせ、「…ふふ、楽しみだ。」打算も話術も何も無い、只々単純で純粋な嬉々を一人落っことす。)
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