執事長 2020-02-25 19:00:33 |
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>グルース(>>1375)
――――!
(思わず目を瞠ったのは、それが喉から手が出るほど誰かに言われたかった言葉だったから。それを世界で唯一愛したひとから与えてもらえたのだから、欠陥を抱える死神には過分もいいところの僥倖で「 …やっぱり、俺には君しかいないよ。他の誰でもない、グルースじゃなきゃダメだ 」相手が欲しがるからそれを打算で与えたわけではなく、きっと彼のそれは彼自身が身を焼かんばかりに内に飼っている愛という名の強大な何かがエゴを満たす為に放たれた言葉なのだろう。だからこそ、互いの凸凹を埋め合えるような奇跡以外の何者でもないこの縁に思わず「 今の、忘れたくないなあ 」ぽつり呟いた直後、意識がまた暗い方へ引っ張られる直前で又しても彼の落ち着いた声色が弱い死神を現実に繋ぎ止めてくれる「 ……うん。出来そうな気がしてきた 」大変理解に易しい親切な講釈に意識を集中して最後に首肯する。もう膝辺りまで黒い花弁の大海原は水位を上げてきており、しかし不思議と焦燥を感じないのは悠然な彼の立ち居振る舞いに助けられているから「 もちろん。俺やる時はやる子だからね、ダーリン 」ついにはお調子乗りの一面まで掬い上げてくれたのだから、やっぱり彼には頭が上がらない。ここにきて少しだけ口角を上げれば一度目を閉じてまたきゅっと口元を結んでから瞼を上げれば、ひらり、ひらり不規則に舞い落ちる花弁に意識を集中させる。いち、にい、さん、しい――視線で追いかけるそれらに集中するその傍らで、聖なる福音にも厳かな神の啓示にも似た音が自らの名を紡ぎ上げるのをしっかりと知覚して――しかしその間、瞬きも呼吸も全てが時を刻むのを放棄したような錯覚に陥った刹那、数える対象が虚空から消えた事で始めて花弁の雨が降り止んだ事に気がついて「 え…、 」呆けたような一音の後、ぴしりぱしりと空間の軋む音と共に壁の一面に出口が形作られてゆく。その先には見慣れた彼の自室、つまり黒薔薇の課した命題を二人でやり遂げたのだと理解が追いつかず、ただまだ彼と一緒に生きていていいのだという事だけは本能的に感じ取って思わず言葉もなくむぎゅっと彼を抱きしめて)
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