執事長 2020-02-25 19:00:33 |
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>グルース(>>1369)
(背中をさすってくれる温もりも、きっと自分の為だけに紡いでくれているのであろう言葉も、途中までは全てが夢の中の出来事のようで全く理解が追いつかなかった。やがて熱さすら感じる抱擁にしゃくり上げていた呼吸は漸く静けさを取り戻し「 ……自惚れて、いいの? 」四六時中恋い焦がれ抜いた相手だからこそ、言葉に宿る甘さが大勢に向けられるそれではなくジョネルという個にのみ捧げられた特別な温度を持つものだと判別がついて。しかし、くっと息を詰まらせたように喉が鳴ったのはどうしようもない自分の欠陥が相手を傷付けてしまうことを心から恐れたから「 でも俺、忘れちゃうかもしんないんだよ?…その度に、グルースに嫌な思いをさせちゃうかもしんないんだよ、 」壊れかけていた心で思考を組み立てられるだけの冷静さを取り戻せたのは偏に大好きな少年のお陰。彼の甘く包みこんでくれるような言葉にこれまで何度でも心のヒビ割れを修復してもらったのだろう、耳の直ぐ近くで鼓膜を蕩かすような愛の言葉に先程までとは180度意味合いの異なる涙がじわりと浮かんで「 俺だって…、俺のほうが絶対愛してる 」流れ落ちるのを堪えながら、此方からもすり、と一度だけ頭を擦り寄せて。その直後、ハラハラと止め処なく舞い散る無数の黒い薔薇の花弁に気付いて彼に倣うように虚空を見上げる。部屋全体を徐々に埋め尽くす勢いで降り積もってゆく夥しい数の艷やかな黒色と、もう5分かそこらしか残されていないであろう砂時計を視認してから少年に視線を戻し「 ……もっかい、お願いできる? 」この先二人の関係がどうなろうとも、今ここで、自分の責任で彼の命を終わらせてしまっていいわけがないと。少し赤みを帯びた目元に決意に似た何かを宿し、再度その愛しい声で名を呼ばれる事を請うて「 …あと出来ればアドバイスも 」自信なさげに付け足した要求は何とも締まらないものだが、自分が格好を付けるよりも成功確率を上げる事に重きを置いているため特段の羞恥は感じさせない眼差しで変わらず彼を見つめて)
***
お話中にメンゴ。急に案内役引っ張り出しちゃって悪かったね、もう色々片付いたからまたお屋敷を動かせるようになったよ。めちゃくちゃ佳境!って感じのトコでほんと間が悪い事しちゃって…申し訳ない。取り敢えずただいまーって事で、お返事はイベント宛だけで大丈夫だからね。これからもよろしく!
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>ハイネ( >1371 )
そう、ハイネ自身の。
( 興味津々といった様子で小さく頷き、その後はまるで小さな事であろうと聞き逃さないように耳を欹てるのは他者の様子を伺い、学んできた経験故の事か。手元に紙とペンがあれば走り書きにでもメモ取るような勢いで耳を傾けて。出てきた固有名詞は屋敷の住人の名だろうか。シャルロットにジョネル、声として紡ぎ出す事はせずとも頭で繰り返すのは記憶の中へとメモ書きを残し、後日にでも己の知らない彼の話が聞けるかと思考を巡らせた為。“ 俺の事は? ” なんて無粋な質問を投げかける事をしないのは、彼から十二分に大切に扱われているのだとささやかながらその自覚が出てきた証だろう 「 …ふふ、お気に入りの場所も知りたいから今度案内してよ 」 きっと先の約束になるだろう言葉は饒舌な彼の声が途切れた隙間にするりと滑り込ませるように。どこか懐かしむような目元からか、詳細に紡ぎ出される言葉からか。そのどちらだとしても目の前に情景が浮かび上がってくるような彼の故郷の様子に緩い笑みを浮かべていたものの、引っ掛かったのはその結び。アニメや漫画であれば頭上にクエスチョンマークが浮かび上がっているであろう程に首を傾げて「 ?帰ったら良いんじゃないの? 」 有無を言う暇さえ無くこの屋敷へと連れて来られた己とは異なり、ここに住まう人ならざる者たちは自分の意志でこの場に居るのではないのか。そんな考えから浮かんでくる率直な疑問を真っ直ぐに瞳を見つめながら投げかけて )
****
お帰りなさい、ハイネ。ふふ、寂しくなかったって言ったら嘘になっちゃうけれど、待ってる時間も好きだから気にしないでよ。
返事は要らないって言われてたけど、無理は禁物だからねって伝えておきたくて俺も出てきちゃった。返事の必要は無いよ、とだけ。俺の方こそこれからもよろしくね。
>ジョネル(>1372)
…うん。
(己の言葉をやっと問い返した彼に、優しい肯定を。それでも不安そうな、怯えたような声へ、「…大丈夫。」もう一度背を撫で擦って、その憂慮を包む。「忘れたって、僕は愛しい記憶を再演出来る事に喜ぶだけさ。…それとも君は、新しい想い出を作る方が好みかな。」温もりを失ったならまた分けて、蜜を零したならまた注ぐ。…彼の望むまま求めるまま、幾度でも。欠け落ちるものを埋める事さえ“己の愛”の内と、平等を謳っていた際限無い慈愛の熱量を穏やかに、けれども甘ったるい音でたった一人へと紡ぐ。――彼からの愛の応答。歓喜は熱く潤む目元に濃縮された。「…勿論。」確かな覚悟を宿した彼の瞳。それを真正面から受け止めて、此方も固めた意志の下、静かに頷く。「任せておくれ。…短時間平静でいるだけなら、何かで気を紛らわすのが一番簡単かな。」それから求められた助言を、いつもの悠然たる微笑みと共に彼へと渡す。「例えば、さっき伝えたように呼吸に集中する。あとは、そうだね…物を数えるのも良い手だ。この場合、心音や秒数が最たる例だけれど…」宛ら教師が如く、すらすらと淀み無い物言い。それに加え、自らの胸元をとんとんと軽く叩く指先で示したり、掌で砂時計を差したりと、教えの具体案を身振りで語るその手の中央へ、降り積もる黒色の一枚が舞い下りる。その花弁を拒む事無く指の腹で表をなぞり、「…此処なら、この子達も候補だね。」それさえ助言の内に汲み入れてから、ふうっと吐息の微風で群れの中へ帰して。「何れにしても、頭の内でゆっくり行う事がコツさ。…名を呼ぶ時も、呼ばれる時も。ずっと、ゆっくり、ね。」手短な助言の骨子、意識の焦点をずらす術の肝を言葉の締めとした後。「君なら出来るよ、大丈夫。」涙の痕跡に色付く眦へ、労りと鼓吹の口付けを。「…僕がそうしたように、“愛するひと”の為に頑張っておくれ。」それから間近と合わせた瞳を見据えながらも、悪戯っ気を含んだ言葉でもう一つ背を押す。――己自身が行った、欲や感情そのものを強引に圧し潰す術は、すっかり秘したまま。……切り替えの合図に、ゆったりとした瞬きを一度。彼が助言を熟すまでの猶予に緩慢な所作で、今度は此方からそっと肩に手を置き、また耳元へと顔を寄せる。「――ジョネル。」全ては、この先に咲く彼との未来の為。再度愛しい名を囁く声には、甘さも熱も一切封じた代わり、目的を果たすだけの凛とした冷淡を籠め、その結果をじっと待つ。)
***
おかえり。…ふふ、気にする事は無いよ。次はどんな言葉で、どんな仕草で君を甘やかしてあげようか、考える時間も結構楽しいものだったからね。
……なんて、冗談はさておき。うん、僕は大丈夫さ。君の方こそ、自分の身体と心を大事にしておくれよ。僕らにとっては代わりの居ない、一等大切なひとなのだから。
この言葉への返事は無くて構わないよ。…その代わり。これからも末永く僕らを宜しくね。
>グレン(>>1374)
貴方はお馬鹿さんですが記憶力は良いはずでしょう、行きたい場所が選べたらそれに文でも託しなさい
(星、花、水、紙。よもや選択肢に存在しなかった怪物を選ばれるとは思っておらず待ち惚けを食らったその四択を無粋に復唱することはせず、役者たる彼ならば台本の暗記等々からその能力には長けているはずだと確信に似た期待を寄せて。それ、と目線で示すのはよく彼に仕えている蝶の使い魔、お任せあれとばかりにくるりと空を一回転する翅の控えめな煌めきに穏やかに眦を緩め――何ら悪意のない純粋無垢な問い掛けに無意識の内に呼吸が止まった事で表情も一瞬の間凍り付いたように見えただろうか。ふう、と一拍遅れて吐き出したそれは嘆息に近く「 帰ることが出来るのならば、今直ぐにでも。…如何に俺とて、偶には力及ばぬ事もあるのです 」魔法に造詣の深い怪物は人の身から見れば万能に見えるのかもしれないけれど、それでもその上に絶対的優位者として黒薔薇が君臨する事は曲げようのない事実であり己自身何度もその現実に打ちのめされてきた。永く生きれば生きただけ敵わぬ相手への憎悪を募り募らせ、また幾星霜の時が流れる内にその黒い炎も徐々に勢いを失い諦観の灰に沈んだのだろう。高慢ちきな怪物らしくない負けを認めるような台詞ながらも羞恥や苛立ちの類が全く伺えないのがその証拠で「 ……それに、故郷でのみ口に出来る久遠の蜜はダークエルフにとって最上位の完全食。もし手に入ってしまえば俺がグレンに飽きた時、この手で貴方を食べてやれないかもしれませんよ 」だから、あの場所へ戻れなくてもいいでしょう?――気を取り直していつもの意地悪を連ねる口調にも、どこか捨てきれぬ故郷への哀愁が微かな濁りを生む。そう、この屋敷に縛られる限り人間を食べる事でしか飢えを凌げないのだから、改めて事実を認識させられては身体のどこかに刻まれている黒薔薇の呪痕がずぐりと疼くような気がして、思わず右腕で自らの左肩辺りをぐっと掴んで)
>グルース(>>1375)
――――!
(思わず目を瞠ったのは、それが喉から手が出るほど誰かに言われたかった言葉だったから。それを世界で唯一愛したひとから与えてもらえたのだから、欠陥を抱える死神には過分もいいところの僥倖で「 …やっぱり、俺には君しかいないよ。他の誰でもない、グルースじゃなきゃダメだ 」相手が欲しがるからそれを打算で与えたわけではなく、きっと彼のそれは彼自身が身を焼かんばかりに内に飼っている愛という名の強大な何かがエゴを満たす為に放たれた言葉なのだろう。だからこそ、互いの凸凹を埋め合えるような奇跡以外の何者でもないこの縁に思わず「 今の、忘れたくないなあ 」ぽつり呟いた直後、意識がまた暗い方へ引っ張られる直前で又しても彼の落ち着いた声色が弱い死神を現実に繋ぎ止めてくれる「 ……うん。出来そうな気がしてきた 」大変理解に易しい親切な講釈に意識を集中して最後に首肯する。もう膝辺りまで黒い花弁の大海原は水位を上げてきており、しかし不思議と焦燥を感じないのは悠然な彼の立ち居振る舞いに助けられているから「 もちろん。俺やる時はやる子だからね、ダーリン 」ついにはお調子乗りの一面まで掬い上げてくれたのだから、やっぱり彼には頭が上がらない。ここにきて少しだけ口角を上げれば一度目を閉じてまたきゅっと口元を結んでから瞼を上げれば、ひらり、ひらり不規則に舞い落ちる花弁に意識を集中させる。いち、にい、さん、しい――視線で追いかけるそれらに集中するその傍らで、聖なる福音にも厳かな神の啓示にも似た音が自らの名を紡ぎ上げるのをしっかりと知覚して――しかしその間、瞬きも呼吸も全てが時を刻むのを放棄したような錯覚に陥った刹那、数える対象が虚空から消えた事で始めて花弁の雨が降り止んだ事に気がついて「 え…、 」呆けたような一音の後、ぴしりぱしりと空間の軋む音と共に壁の一面に出口が形作られてゆく。その先には見慣れた彼の自室、つまり黒薔薇の課した命題を二人でやり遂げたのだと理解が追いつかず、ただまだ彼と一緒に生きていていいのだという事だけは本能的に感じ取って思わず言葉もなくむぎゅっと彼を抱きしめて)
>ハイネ( >1376)
( この屋敷を出る事が出来ないのだ、なんて何と無くの事情を察したのは僅かに強張ったように見える表情とその言葉尻から。側から見れば然程大きな変化が見られないながらも、きゅっと眉根を寄せたのは質問をしくじったという自責の念から。「 んー……それとこれとは別問題じゃない? 」 確かに彼の言う通り己に都合の良い選択をするのならば、ここで頷くのが一番なのだろう。そう頭では分かっているものの、素直にそれが出てこないのは彼の口から出てきた言葉が本心では無いような気がしてならないから 「 それに、ハイネの事だからきっと約束は守ってくれると思ってるから 」 だから、己には大した問題では無いなんて言葉として紡ぎ出す事はせずとも、悪戯っ子のようなにんまりとした笑みを浮かべて見せて。自分にできる事は無いのだけれど思う所があるのだろう今の彼を一人にしておきたく無くて、立ち上がり彼の隣へと移動をすればまるで飼い猫が飼い主を慰めるかのように身体が触れ合う距離に腰を下ろし。何度か口を開きかけるも、慰めの言葉も腫れ物を扱うかのように別の話題を出す事も違うかと、言葉を紡ぎ出す事はせずに )
>グレン(>>1378)
……ええ、貴方が良い子にしていればきっと。
(高潔たる種族と言えどもこの屋敷に縛られていては時折今夜のように己を矮小な存在だと見紛いかけてしまう時もある、しかしそんな自身と交わした他愛のない約束が同じく屋敷に囚われた獲物の心の拠り所となるのであれば、それは何とも表現しがたい心地良さを与えてくれるまさに小さな温もりを持った愛玩動物に似て、ふと口元に静かな微笑を取り戻し「 質問が止まっていますよ。優れたインタビュアーというのは往々にして一つ一つの回答の掘り下げに長けているものです。…それとも、貴方の俺に対する興味はもう尽きる程浅かったのですか? 」湿っぽい雰囲気にしたかったわけではなく、いつの間にか感覚の無くなった左肩から手を外して代わりに彼の形の良い肩へと腕を回しながら朗らかさの返り咲きつつある声色にて、この件について踏み込まれる事を拒まないことを示すと同時に、それを彼が望まないのならば次なる問を要求する。結びには勿論、いつもの調子の余計な一言を添えて)
>ジョネル(>1377)
(愛しい名を呼んで、一呼吸。此方も花弁が晴れたのを認め、彼の方を向こうと顔を上げた――その刹那。己の身と彼の身が、ぴったりと寄り合う。「……っ、」抱き締められたのだと遅れて理解して、詰めた息と共に瞠られた目は円い微笑みへと緩やかに戻り、「…よく出来ました。」ほんの僅かな背伸び、それから肩に置いたままだった掌で淡く髪を撫でる。「うん、いい子だね。」そこに添える称賛は、親鳥を思わせるふかふかとした柔らかな色が含まれて。「……ジョネル。」ふと、踵と共に下ろした両手を彼の背中へ預け、瞳をそっと閉じる。――いつだって抱き締める側だった己は今、思慕を重ねた彼の腕にすっかりと収まっている。それで彼はこんなにも大きなひとだったのだと、知っていたのに今更になって気が付いた。「……ふふ、」落とした可笑しさの次に知覚したのは、服越しに混ざる互いの温度、そして感触。途端に高鳴り逸る心臓に思わず深い吐息を零して、色付く頬をその身体へと預けた後、「……暖かい。」ぽつり溢れた呟きと、彼にしがみつく指先。一度味わえば手放したくなくなってしまう、その苦しくも甘い、魅惑的な――恋の温もり。「……ねえ。僕、君が好きだよ。」また溢れてきたのは、彼への想い。用意していた口説き文句なんて、全部この鼓動に掻き消されてしまった。だから、特別な飾りも何も無い“少年”の言葉が彼に注がれる。「――大好き。」その最後、初恋を叶えた歓喜が滲む目元を、彼の服にこっそりと隠した。けれど、“それ”は声さえ潤ませていたから、きっと大した意味など無いだろう。「……そうだ、ご褒美を考えないと。」それから間も無く、いつもの調子を取り戻した音色は、一度目の題目挑戦に掲げた褒章の案を引っ張り出す。「物が良いかな、それとも言葉?…ああ、想い出や約束も良いかもしれないね。」ゆったり朗々と話し出すのは普段通り。しかし心音も、耳まで染める熱も未だ取り繕えてはおらず。それでも構わず紡ぐ唇が止まらないのは、どんな感情よりも彼への愛が勝って覆ってしまうから。「ほら、欲しいものを教えておくれ、」するり、冷たい頬を両手で包む。雫の残る瞳を合わせた顔には赤みが残って、貴族の優雅さも泰然も見当たらない。…ただ、その代わりに。「――僕の可愛いシナモンハニー。」何処にでも居る“恋した男の子”の屈託無い笑顔が満面に咲いて、最愛の運命をじっと見詰めていた。)
>ハイネ( >1379 )
ふふ、俺が良い子じゃ無かった時なんて無いでしょ?
( やや冗談混じりのそれは少しでも普段の彼の様子を取り戻して欲しい気持ち半分、聞き分け良くいるつもり半分と言ったところか。「 ん、……そういう訳じゃないけど 」 声色は普段通りに聞こえるものの、矢張り気にかかるのは彼の様子。覗き込むようにして顔色を窺ってしまうのは幼少からの悪癖の一つであると言えるだろう。もし言葉とは裏腹に少しでも表情に翳りが見えたのならば話題を変え、今更ながらに何処かへと連れて行って欲しいなんてねだったのだろうが思いのほか恒と変わらぬ様相に小さく笑い声を漏らして 「 そうだなぁ……この屋敷に来る前はどうやって過ごしてたの?今みたいに色々集めてた? 」 行儀の悪い行為だと自覚はあるも、手を伸ばし引き寄せるのは移動するときに向かい側へと置いて来たマグカップ。それを彼のカップの隣へと並べれば満足したように居住いを正し、続きはこの短期間で随分と落ち着く場所になった彼の隣で耳を傾けようと )
>グルース(>>1380)
(きっと彼と出会ったその日から無尽蔵の愛情を惜しみなく注がれてはいたのだろうが、不特定多数に平等に分配される博愛に似たそれでは何時しか満たされなくなっていた自分に気付いたのはきっとずっと前だったのだろう。その間もいつ少年への恋心を記憶の欠落する忌々しい体質によって奪われてしまうか分からない恐怖に怯え震える夜を幾度も乗り越え、今こうして無垢で唯一の純愛を与えてもらえる事が幸せで幸せで「 …うん、俺も好き。すき、大好き、超好き、宇宙一愛してる 」稚拙な表現しか思いつかないけれどどうか思いの丈が伝わりますようにと抱き締める腕に暖かに力を込めて。こんなに小さな身体で図体ばかり大きい自分を包み込み守ってくれる頼もしさに溢れた彼の、初めて見るような最大限の年相応の笑顔にあれこれ浮かびかけていたおねだりはどこかへ飛んでいってしまって「 グルースが欲しい。グルースの身体も心も声も言葉も全部、俺のだけにさせてよ 」頬に触れる温もりをもっともっとと強請るように片方へと顔を擦り寄せ真っ直ぐな瞳で大変贅沢な強欲を悪びれもなく晒して。許されるなら彼の額にそっとキスを落としてから出口へ導くために手を繋ごうとして「 俺の何もかも、全部君にあげるからさ。大したもの持ってないけど 」エスコートが叶ったのなら暗い亀裂を歩みながら、最も欲しかったものを得る事が出来た高揚感にふわふわと頭が浮かされる思いですっかり黒薔薇の悪戯なんて無かったことのように朗々と言葉を繋ごう)
【 今回のテーマでの脱出は成功です。何度もイベントへのご参加ありがとうございました、大変楽しませていただいてしまいました!本編でも引き続きよろしくお願いいたします。改めまして、素敵な明晰夢をありがとうございました! 】
>グレン(>>1381)
……気紛れに寄り添う猫かと思えば、怯懦として飼い主の顔色を伺う犬にも見える。
(突如脈絡なくぽつりと零した感想には、思わず吹き出してしまうのを堪えるような笑気が混じって。己自身の事を色々知りたいと思いながらも何処まで踏み込んでよいのか間合いを測り兼ねるような不器用さは真っ当なコミュニケーションに恵まれてこなかったからなのだろうか、そんな風に彼の過去へ思いを馳せてしまえばいつしか友人の死神に喰わせようと企んでいる彼の幼少の記憶に行き着いてしまいハッと短く溜息を吐いて「 先程の事なら気にしないでよいのですよ。どうせ、語る事を禁じられているのですから 」末尾にどこか突き放すような投げ遣りな色が混ざってしまったのはあの時一度は押し殺した筈の独占欲の炎がまたしてもゆらりと燃え上がりそうになるのを必死に封じ込めようとしたから。自分でも図らずしてきつい物言いになってしまった自覚はあるため、先程彼の方に回した腕にてこちらにぐいと引き寄せ無理矢理に密着させながら「 自分の事を話すのは楽しいですからね。どうぞ、何でもお聞きなさい 」耳元へ口を寄せて穏やかにいざなうような密やかな声にてNGがない事を示唆し、結びに蟀谷辺りへちゅ、と口付けて。「 俺は…、あるひとに仕えていたのです。それがダークエルフとして命を授かりし始まりの時から定められていた“ハイネ”の宿命であり、役割でした。主は気難しく礼儀に五月蝿く、…この言葉遣いもその時の名残です。長い生涯を、同じく長い命を持つ主に仕えて――そうして生の終わりを迎えるものだと、ずっと疑いようもなく毎日を送っていたのです。退屈だと感じる瞬間も時折ありましたが、……大変穏やかな日々でした 」ふたつ並んだマグとティーカップを微笑ましく感じながら、遠い遠い過去の記憶を辿って追憶の糸口を探す。少しの間を置いてそれを掴んでしまえば、後は詰まることなく物語でも聞かせるような静かな調子で答えを綴って)
>ジョネル(>1382)
(いつから“そう”だったかは解らない。ただ、彼が欲しい、彼に求められたい――そんな己らしくない我欲を自覚した一夜だけを、はっきり覚えている。その翌夜からはご覧の通り、声で、笑顔で、仕草で惜しみ無く熱烈に、けれども淑やかに“惹かれてほしい”とアプローチ。同時に恋を告白する舞台や小道具の贈り物、それに彼の使い魔達を筆頭とした外堀を埋める計画だってちゃっかり準備を進めていたのに、それら全てがこの場で総崩れ。しかし、そんな事は思考の巡りからは弾けてしまって、「…ふふ、ははっ、」今は彼の愛が存分に詰まった言葉を聞く度、熱く擽られる胸に笑い声を零すばかり。「ああ、嬉しいね。…幸せだ。」力強いのに優しい腕の内、とろり溶けてしまいそうで、ふわり舞ってしまいそうな、まるでメレンゲの羽でも生えた心地に、呟く言葉には夢うつつの色が混ざる。――ねだられたのは、自分自身。真っ直ぐで遠慮の無い答えに撃ち抜かれた心から、愛おしさが際限無く溢れ落ちて、「…もちろん。君が欲しいなら、幾らだってあげる。」見詰め返す瞳に籠った熱そのまま、自分でも驚く程に浮かれた音でそれを受け入れ、寄せられる頬を撫でた後。額の感触に幸福の吐息を小さく吹いて、繋ぐ手を此方からも柔く握る。導きに寄り添うその道中、「おや、」彼からのお返しに戯けた所作で小首を傾いで、「僕にとっては他でもない君自身こそ、幾億の星よりもこの手に捕まえたくなるひとだっていうのに。」彼が彼自身に下す謙虚の過ぎる評価を、丸々羽毛に包み込んで慈しむ。微笑ましく子を諭すようで、口説にも似た艶を帯びたそれを括った一呼吸の次、不意と差した魔に口許を悪戯の色に弛めて、「…ジョネル。今日は僕の部屋においで。面白い話を聞かせてあげる。」そう甘い誘いを掛ける。…どうせ崩れた己の計画。その全貌を伝えれば、きっともっと正しく想いが伝わるだろう。そこに現れる彼の表情は照れた朱色か、それとも驚くライムグリーンか。――その答えは箱庭を抜けた先、いつか在るかもしれない淡い夢の向こう側に。)
***
ふふ、此方こそ有り難う。楽しくてあっという間の、正しく夢のような一時だった。…本当に、こんな素敵な愛を見付けられる夜を願ってしまうほどに。
さて。物惜しいけれど、そろそろ夢から覚めなくてはね。早速お屋敷に拐われてしまおうか、と言いたい所なのだけれど…その前に、サー・ニールの手番かな。彼、サー・クォーヴとお出掛けがしたいらしいから。…ふふ、その為にお手紙も準備したそうだよ。それと時系列としては、レディ・フェロメナと過ごし始めて一週間後が良い、とも聞いたかな。
僕の初夜はその次。…折角だから、二夜続けてお話をさせてもらいたいな。そして最後にサー・レオ。僕らの指名や展開については、順番が巡る頃にまたお話しするよ。
……うん。それじゃあ、この辺りで。いつかお屋敷で言葉を交わすその夜まで、いい子で待っていておくれ、可愛いハニー。
>グルース(>>1384)
案内役じゃあないんだけど、あんまり素敵な夢だったからこのまま俺からご挨拶するね。ホントヤバいくらい幸せな夢だったよ、…なんか改まると照れくさいけど…ありがとう。
次は先輩が蛇くんと話せるのかあ、いいなあ。時系列りょーかい、わざわざお手紙まで書いてもらえるなんて先輩にジェラっちゃうね。いいもーん、俺だってダーリンとイイ夢見たしね。
その後にお話させてもらえる順番についても了解だよ、いつになったっていいからまた俺とも遊んでよね。
>ハイネ( >1383 )
( 突き放されるような物言いに後頭部を殴られたような気がするのは、息がしやすく過ごしやすいと思っていたこの場所が途端に息が詰まる気がするのは、きっとそれだけ彼に心を許していたから。きっと彼にそんなつもりは無いのだろう。分かってはいるものの、ここから先は立ち入ってくれるなと明確な線引きのように感じてしまえば、紡ぎ出そうとした言葉を拒むように喉の奥の方が閉じた感覚を覚える。半ば無理矢理のように引き寄せられた半身に感じる体温も、耳元で囁かれる穏やかな声も、顳?に触れる柔らかい感触も。その全てが己を甘やかすためのそれだと理解をしつつも、負の方向へと思考が進むのは未だ万全では無いからか。話へと耳を傾けつつ、無意識のうちに彼の服の裾をきゅっと小さく握り込むように持つのはささやかながらに現れた甘えるための行動。まるで寝物語でも読み聞かせているような調子は沈みかけていた心を話の中へと惹き込むには十分過ぎるほどで 「 ……ふふ、想像付かないなぁ 」 くすくすと小さな笑い混じりに紡ぎ出す声音は彼につられてか、やや控えめなそれで 「 ハイネはハイネのままだと思ってた 」 自身の考えを言葉に出来るほどの知識や語彙は持ち合わせておらず、きっと頭の中を覗く事が出来なければ十全に伝わる事はないだろう呟き。落ち込みかけていた気分は自分の知らない彼のことを知れる、そんな事実で持ち直す程単純で 「 ねぇ、もっと俺の知らないハイネのこと教えてよ 」 ねだるような口調は純粋な好奇心が現れ。もし彼がこちらへと視線を向けようものなら、キラキラとした青紫と視線が交わるはずで )
>ジョネル/クォーヴ(>1385)
――ばあ、なんてねぇ。丁度良い頃合いみたいだから、オレちゃんに交代するよ。…ふふ。そんな事言うならオレちゃんだって、貴方達の夢物語がとっても羨ましかったよ。公爵さんも、貴方とまた話せる夜が待ち遠しいってさ。
…うん、取り敢えず手短にこの辺で。夢の話は名残惜しいけど、この先の物語も楽しみで仕方ないからね。それじゃあ、貴方もオレちゃんも、良い夜を過ごせるよう願ってるねぇ。
***
(美しき尾の淑女と過ごし始めて一週間。栄養摂取こそまだ十全とは言えないが、目元の隈はすっかり消え去った。「…今日も綺麗だねぇ、フェロメナ。」限り無く照明を絞った暗い室内。棚の上段に仮住まう彼女の紅碧が、窓辺で揺れる白髪のカーテンにちかちか映り込む。――その色にのんびり見惚れて暫し。「……ひとに会いたいなぁ。」不意に零れ落ちた呟き。…使い魔達も淑女も、己を認識し言葉を理解しているのは解っているが、どうしても満ち足りないと、獣の性分を宿す肚の奥底から願望が洩れる。それから喉に唸りを回した後、思い付いた足が向かったのはベッド脇、備え付けのテーブルに置かれたペンとメモ用紙の元。一先ずシーツの上に腰を落ち着け、手にしたそれの一枚へインクを下ろして、いそいそとメッセージを描き出す。――『日照りで溶けちゃいそう。涼しい所連れてって。』じりじり身を焦がす寂寥を忌々しい太陽に喩えた文面は、罫線も無いのにきちりと真っ直ぐ。教科書の見本そのまま並べられた文字にも、ブレや大小が微塵たりと存在しない。そんな不気味なほど人となりが一切見えない、まるで機器の印刷のようなそれを紙を突き破らんばかりの濃い筆圧で綴り、その最後に名前を添える。「でーきたぁ。」短い文章の誤字を確認して、二つ折りにした用紙を差し出した場所は、丁度傍で作業していた使い魔の鼻先。「ねぇねぇ、このお手紙、クォーヴの所まで持ってってほしいなぁ。」己の声に振り返った使い魔を見詰め、ゆらり首を傾げつつ反応を待てば、その使い魔は了承の声の代わりに手紙を受け取った。「ふふ、宜しくねぇ。」何処かへと向かうその後ろ姿にひらり片手を振って見送り、残された己は僅かな達成感にご機嫌と、いつ聴いたとも知れないうろ覚えの童謡を鼻で奏でながらまた窓辺に舞い戻り、其処から淑女を眺めて返事を待つ。)
>グレン(>>1386)
おや、俺が万邦無比の有能な執事であったとは想像がつくでしょう?
(よく手入れの行き届いたぴかぴかの燕尾服を見せつけるように少しだけ身を離しては長い指をその胸元辺りに添えてしたり顔で同意を求める。敬語のみならず服装もその頃の影響が多分に出ている事を言外に示しながら「 貴方も俺に憧れたのなら奉仕してくれてもよいのですよ。あの夜プレゼントしたオートクチュールのメイド服でね 」あの時誂えたヘッドドレスの名残をなぞるように彼の髪に手を伸ばしそっと撫ぜて、ああ可愛かったなと記憶が蘇れば途端にまたあの姿を見たくなってしまう。いつかまた自身の贈った手作りの衣装のどれかにて出迎えてくれるのだろうか、そんな期待は甘やか且つ危うげな誘惑の声に姿を変えて「 手取り足取り、指導して差し上げますよ 」髪から輪郭を伝って顎へ、そうして喉仏から鎖骨、左胸を指先にてじっくりとなぞりながら耳元にて戯れに囁き喉奥で低く笑って。「 質問が抽象的すぎて些か回答に窮します。俺の何を知りたいのですか 」あれこれと世話を焼いてしまい結果的に無能な生徒を育ててしまう導師ではなく、きちんと相手に思考のパズルを組んでからそれを言葉に抽出させんとする教師のように、刺々しさや厳しさのまるっきり抜けた穏やかな声と表情にて宝石のような双眸を捉えて)
>ニール(>>1387)
(くる、ぐるると鳥類が嘴の奥深くで鳴らす甘えるような音だけが彩る死神の自室。自らの使い魔たるカラスの頭や身体を冷たい指の腹で慈しむように撫で、小さく柔らかなブラシで毛繕いを真似た手入れをしてやっていた最中の事。また別の個体が長細い嘴に手紙を咥えてパタパタと飛来し、主の肩へと着陸して。一時世話を中断すると、腹を見せて無防備に寝そべる犬猫のような体勢を取っていた最初のカラスに伝言係がガァガァとやっかみ、応戦するように体勢を整えたそれらが威嚇し合う様を困ったような笑みにて横目で見ながら手紙を確認する。可愛げな内容には少々不釣り合いな不気味な圧力を感じる筆致も、彼がダークエルフとのお遊びで視覚を封じられていた際に紡いだ庭園でのあの夜に機械仕掛けの獣性を一度垣間見ているからこそ妙に解釈が一致したような納得感すら覚えて「 ごめんね、続きはまた今度。喧嘩は駄目だよ 」人を喰らう怪物が跋扈する屋敷にて彼は己を選んで頼ってくれたのだから、今回の優先順位は当然使い魔よりも獲物が上回る事に。二羽から同時に抗議の鳴き声が上がるも優しく声を掛ける事でそれを御し、向かったのは彼の部屋。しかし扉ではなく窓側に回れば、翼もなく空に浮きながらまるでアルカナの逆位置の如く頭を下に足を上にして窓の外から部屋を覗き――まさかちょうど彼が窓際にいるとは思っていなかったため一度目をぱちくりさせるもすぐに目尻を垂らして微笑み「 …ばあ。死神が君を攫いに来たよ 」重力に逆らいきれないふわふわの髪がゆらゆらと夜風に靡き僅かに顔を隠すのもそのままに、次いで見覚えのない魔界の生物が視界に入れば何故そんなものが獲物の部屋に、という至極真っ当な疑問は心に仕舞ったまま「 綺麗な子だね。とっても君を好きみたいだ 」傍から見ても彼に懐いているとなぜだか伝わってくる雰囲気を纏う彼女を観察してから彼の二つの紅へと視線を戻して)
>クォーヴ(>1389)
(窓から差し込む月光が不意にふっと翳った事で、不規則に奏でられていた歌は止む。そのままぐりっと首を反らして真後ろの開いた硝子向こうを窺えば、今か今かと待ち望んだ姿と逆しまに目が合う。「わあ、」驚く声と見開く瞳はわざとらしく、「死神さんってば、おっかなぁい。」返す恐怖も彼の冗句に乗っかった形ばかりで、言葉そのものは嬉々と弛む色に染められている。そんな挨拶代わりのやり取りの後、移った話題に己も視線を淑女の方へと。「そう、良いでしょ。ハイネと遊んだ時の代価でね、ちょっとの間貸してもらってるの。」ふふん、と鼻を鳴らして自慢するような物言いは、宛らお気に入りの玩具を見せびらかす仔猫が如く。「お名前はフェロメナ。――彼女、エゴが好きなんだって。」紡いだ名に呼応するように、鮮やかな薔薇色の尾でくるり旋回したその姿を、うっとり細めた目で見詰めながら、熱の籠る吐息と共にかのダークエルフから聞いた彼女の事をそのまま口授する。それから今度は半身に振り返って彼の方を向き直して、「綺麗で、可愛いでしょ。」ついさっきの褒め言葉にもう一つ付け加えて、ゆらり首を傾げ るいつもの仕草を。それを直ぐ様戻した次、「あとさ、たまーに涼しそうで羨ましくなっちゃうんだよねぇ。オレちゃんも思いっきり水遊びしたくなるくらいさ。」くすくす笑って告げるそれは、手紙の内容にも絡めたジョーク混じりの願望と、取って付けた口実の用向き。「…ね、クォーヴ。何処か良い所知らない?」内緒話に似た音へ戯れに声を潜めつつ、彼がその答えを行動にて示す事を期待して、片手をふわり窓の外へと伸ばして差し出す。)
>ハイネ( >1388)
んー……どうせだったら、ハイネと同じような燕尾服が良いなぁ
( 決してあのメイド服が嫌なわけでは無いものの、好き好んでスカート等の類を身につける訳でもない。緩いおねだりと共に小さく首を傾げて見せて。耳に吐息がかかる程の距離から囁かれる言葉は色香を多分に孕んだそれ。髪を梳くように撫でていた手が身体を伝い下へ下へと降りていく様は、きっと違う誰かにされたのならば多少なりとも嫌悪感を抱く原因となったのだろうが、目前の彼にされるのは無論嫌な感触を覚える事はなく。むしろ喉元を通る際はほんの少し首を伸ばして触れやすいようにして。投げられた質問に対して素直に思考を働かせるものの、論理的に物事を組み立てるほどの頭は残っていないのか眉根を顰めた難しい表情を浮かべること数十秒程 「 ……全部? 」 ぽつりと呟くように落とした回答はたっぷりと時間を要したにも関わらず、大した進捗は無く。けれども決して思考を放棄したつもりも無く 「 なんて言ったらいいのかな……多分、俺の知らないハイネの事を知りたい…んだと思う 」 言葉を選ぶように途中途中に間を置きながら紡ぎ出すのは考えの一端。誰かのことをこんなにも知りたいと思ったのは初めてで、どう伝えればいいのかなんて分かるはずもなく声音に乗せたそれで彼は分かってくれるだろうか。こちらへと向けられた柔らかな輝きの宿る双眸を見上げる瞳をゆらり揺らして )
>ニール(>>1390)
ハイネが――。…ふふ、よく貸してくれたね
(素直な驚きは特別親しいわけではないにしてもダークエルフが自らの囲う品々に対して異様な程に執心している事を知っているから。後輩たるシナモン色の死神の方が彼とは近しい間柄であり、いつだったかうっかり彼の品に傷をつけかけたとかで大目玉を食らったと聞いた。彼がフェロメナを誇らしげに思うように、彼女もニールという存在を好ましく思っている事を如実に示す薔薇色。この屋敷のあちこちを夥しいほど埋め尽くす黒薔薇にすっかり目が慣れてしまった怪物には本来の色彩であるそれが大変眩しく思えたのか微かに目を細めて、しかし表情は依然として凪いだ湖面のように静謐で穏やかに「 そういえば、目の調子は――僕のこと、きちんと見えてるかな? 」ゆったりと羽根が空中を舞うように天地をひっくり返し、窓枠へと近寄りながら二つの紅をじっと見つめて僅かに首を傾げて。水遊び、とそのリクエストを一先ず額面通りに受け取れば、故意か否か焦らすように伸ばされた片手を自らのそれで迎えてゆるゆると指を絡めるだけに留め「 黒い茨の森を進むとね、丁度ニールの瞳みたいに真紅に染まった湖があるんだよ。けれどそこの水は少し“ヒト”には刺激が強いから、水遊びには向かないね 」重力を感じさせない所作でそっと窓枠に腰掛け、繋いだ手を引き寄せることはなくただ淡く握り込み「 それか――そうだ、ニールは果物は好き? 」彼のお願いを叶えるために思考を巡らせる間、大きな月を見上げて黙すること少々。何かを思い出したかのようにぱっと表情に明朗さを宿して、きっと窓枠分彼の方が低い位置にあるであろう顔を柔らかく見下ろして)
>グレン(>>1391)
そうですねえ、…貴方には白い生地の方が似合いそうだ
(極上のキャンバスゆえ例えどんな絵を描いて何を着せようとも似合うのだろうが、重心を後ろに傾けるようにして引き目に彼の姿をまじまじ眺めながら半ば独り言のように呟いて。その後密着するような体勢へと戻れば更に接触を求めるように暖かな片手を自らの冷たいそれで捕まえて「 一度ご自身で仕立ててみては如何です?きっと良い時間潰しになりますよ、あれらも喜んで手伝うでしょう 」他意のない提案に目配せをした蝶の使い魔たちも歓迎とばかりにきらきらはたはたと羽ばたいて、そんな様を微笑ましそうにしながら引き寄せた手の甲に軽く唇を当てて。依然として漠然たる好奇心の内訳にふっと吐息するように笑って「 けれど、何でもよいわけではないのでしょう?例えば俺が現在に至るまでどんなコレクションをどう可愛がってきたかとか、他のお気に入りの話だとか――きっと貴方、やきもちを焼いてしまいますものねえ 」くつくつと意地悪そうに笑う魂胆に悪意はまるで無く、ただそんな彼の姿もきっと可愛いだろうとただ堪えきれなかった妄想が笑気となって漏れ出ただけのこと。つまり何が言いたいのか、何故こうも話題の指定を推薦するのかを伝えんと幾ばくか揺らいで見える双眸を見つめ「 俺だって、グレンを悪戯に傷付けたいわけではありません。だからきちんと意思表示をしていただかないと 」お利口な彼ならば分かってくれるだろうか、しかしそんな期待な内心に留めただ親が子を諭すような静かな優しさだけを声と眼差しに示しながらゆっくりと手を握る力を痛くない程度に強めて)
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>クォーヴ(>1892)
(淑女を語り終えて一先ず満足そうに呼吸を置き、彼とまた視線がぶつかった所に問う声。慮るように聞こえるそれへ、「見えてるよ。貴方の優しいお顔も、綺麗な目も、」簡潔な答え、続けて目尻にも口の端にも弧を描きながら、今度は正位置に合った顔を此方からもぐっと近付けて。「――そこに映ってるオレちゃんだって、ばっちりはっきり。」夜風が揺らす白髪の下、彼の瞳に己の色を覗く紅のぎらつきを隠さず晒すのは、お茶会の夜の赦しへ喜びを覚えているからこそ。――緩やかに指が組み合った手に嬉しげに、しかし続いた言葉へしょんぼりと気落ちする眉や口元を混ぜ込んだ、困り笑いの顔を練り付け、「そっか、残念。…でも、いつか見たいねぇ。オレちゃんと同じ色の湖。」いずれの夜の楽しみと、表情程の憂いを見せずにこの先の未来に期待を預ける。それから窓枠に座るその隣に並び、身体を彼と同じ室内側に向けた後、僅かに浮いた沈黙の間繋がった手をじっと見詰め、絡まる指に力を籠めたり弱めたり、手持ち無沙汰と興味津々の狭間でにぎにぎと遊んで。――やっと届いた質問の意図を読みかねたらしい、彼を見上げた頭はゆらり傾き、瞳はきょとんと丸く瞬いて。しかし直ぐにいつもの気の抜けた笑顔が形作られ、「うん、好きだよ。食べやすくって甘くて、すぐ食べられて、何にもしなくても美味しいし。」表情通りの嬉々とした音で是を返し、同時に空きっぱなしだった指を胸元で折り折り、好む理由を数えるご機嫌な仕草を。「ふふ。どうしたの、急にそんな事訊いたりして。」その音色を引き摺ったままもう一度、先程とは逆方向にかっくり首を揺らして、今度は己の方から彼に問い返した。)
>1395
>クォーヴ
***
あ、アンカー未来差しちゃってるねぇ。今気が付いた。
お返事は>1392宛てだよ。
お話出来るのに浮かれちゃって、こういうミス増えちゃってるから、一度謝りたくって出てきちゃった。…ホントごめんねぇ。この言葉にお返事はいいよ。それじゃあねぇ。
指名:クォーヴ
希望ルート:秘密の共犯者、恋愛
名前:秋天(チウティエン)
性別:男
年齢:18歳
職業:学生
性格:環境故の自立心から大人びた振る舞いをしがちだが、実際は感情表現豊かな方で年相応以上に甘えたいし甘やかしたい。周囲からの評価は健気・押しに弱いといったところで、それも間違いではないがほしいものを手に入れるための努力は惜しまないタイプ。本来は好奇心旺盛かつ人懐っこい直情的な性分で、自覚のない依存気質。虚勢を張りがちだがメンタルが強い方ではないのでつつけば簡単に崩れ落ちる脆さがある。
容姿:癖のない黒髪を無造作なセンターパートにしている。顔そのものが小さめで鼻や唇もやや小ぶり。幅の狭い平行二重と色素の濃い真っ黒の虹彩。左目の下には泣きぼくろが一つあり、若干釣り目がちなせいか無表情だと鋭い印象を与えることも。色白で体型は平凡。身長172cm。淡い水色のシャツの下にチェーンが短めのネックレスを忍ばせており、ストライプ柄のネクタイにネイビーのスラックスとごく一般的な制服姿。
備考:アジア系の顔立ちと名前だが、物心ついたときには英語圏におりとある白人女性の養子として育てられた。いきさつは一切知らされていないものの、養母には多大な恩を感じているため事情は死ぬまでに聞けたらくらいに思っている。また養母は古い貴族の末端の家系であったが、独身を貫いた上異邦人の子供を養子にする変わり者という認識をされているため親戚の集まりなどでは親子共々面倒そうな扱い受けていた。基本的には自主性を重んじてのびのびと育てられたが、将来を案じた養母が進学先だけは頑として譲らなかったため偏差値の高い全寮制のスクールへ入学し優秀な成績のまま最高学年を迎える。
ロルテスト:
( その知らせを受けたのは、授業中のことだった。担任の先生が焦った様子で僕を呼びにやって来たので、不思議に思いながら教室を出て。その場で何かを告げられるのかと思いきや、先生は廊下の隅の方まで歩を進めるとやっと僕に向き直り、恐る恐る口を開いたのだ。「お前の家に強盗か何かが侵入して、居合わせた保護者の方が……被害にあったそうだ。今日は早退して搬送先の病院へ向かう準備をして来なさい」震える足が一歩、自分の意志とは無関係に後ずさる。真っ直ぐ立っていることが難しくて、「……わかりました」なんて聞き分けの良い返事が口を出たことに内心驚愕する。僕は血の気が引いた手足になんとか鞭を入れると、寮の自室で身支度を整えた。逸る気持ちで病院へ到着し、案内された部屋にそっと足を踏み入れる。それから程なくして、母は静かに息を引き取った。「きっとあなたが来るのを待っていたのよ……」白衣の天使たちはそんなふうに僕を慰めたが、気の利いた返事はできなかった。ただうつむいて、強く奥歯を食いしばる。気を使われたのか、いつの間にか自分一人になっていた病室で母の亡骸をじっと見つめた。胸が張り裂けそうなほど苦しくて、どうにか落ち着ける方法を考える。答えは出ない。緩やかに思考を止める。そうしている間は世界も一緒に静止してくれているような気がしたが、僕の耳はほんの些細な物音を聞き漏らさなかった。
──ひらり。軽いものが床に落ちるような音。視線落とすと手紙か何かが右足の真隣に横たわっていて、一体どこから落ちたのだろうと辺りを見渡した。周囲にそれらしいテーブルや棚はない。右手に握っていたものを落としたような位置に寝そべるそれを不思議に思いつつ、緩慢な動作で拾い上げる。若干の厚みがあって、裏返しても、もう一度表を見ても、差出人どころか宛名すら書かれてはいなかった。一瞬あまりの逡巡の後、親指の爪で封蝋を剥がす。どうしてそんなことをしたのかはわからない。きっと普段なら大人に手渡して判断を仰ぎでもしただろうが、このときの僕はどうしてか、いつもとは違う決断をした。指の腹に感じた厚みの通り、入っていたのは薄っぺらい便箋ではなく重厚な一枚のカード。「今夜、お迎えにあがります……」その一文を口に出して反芻する。なぜだか今、とてつもなく泣きそうだ。母の死を目の当たりにしてなお涙だけはぐっとこらえて、感情の波を押し殺す努力ができていたのに。抑え込んでいたものが今にも決壊してしまいそうで、助けてほしいと心から思った。誰に?この手紙を寄越したあなたに。あなたしかいない。涙がとうとう滲んで嗚咽が漏れた。母がいなくなってしまう未来を、想像したことがないわけじゃない。だけどこんな結末、思いもよらなかった。「……絶対だよ」そう呟いて、左手の甲で涙を拭う。この犯行予告の差出人ただ一人に向けて、もう一度囁いた。「連れて行って、できるだけ遠くに……」カードを心臓のあたりにぎゅっと押し当てる。差し伸べられた手は掴み取ることに決めた。強く握って、絶対に離さない。 )
( そうしていつの間にか、僕は知らないベッドの上で微睡んでいた。ここまでの足取りを辿ろうと努力してはいるのだが、どうにも思い出せないでいる。見知らぬ天井と抜け落ちた記憶。不安を抱くには十分すぎる要素で、なるべく音を立てないよう上半身を起こしたはいいものの、ベッドから降りるのも恐ろしく途方に暮れていたそのとき。──コンコンコンコン。小気味の良いノックの音が響き渡り、びくりと肩が跳ねる。返事をするべきか一瞬迷ったが、案外すぐに「……はい」と声が出た。普段の僕ならどうしただろう。今日はいつもならもっと逡巡するような判断を早くに下している気がする。まるで一人で生きていくための練習を体が勝手に始めているみたいだと思った。僕の心を置き去りにして。 )
(/本当に違うんだ。普段からこんなに長ったらしいわけじゃなくて、これは回想混じりだから常時の2、3倍筆が乗ってしまっただけで……。いや、ごめん。挨拶もなしに言い訳から入って。
まずははじめまして。重厚な世界観に惹かれてやって来ました。僕みたいなので良ければぜひ参加させてもらえると嬉しいです。
それと一つ相談があるんだけどいいかな?参加方法の記事を見て思ったんだけど、"何かしらのエンドに到達した後、時を巻き戻して新たな道を歩み直すのは捕食エンドor隷属エンド到達後でしか想定されておらず、他のエンドに到達した場合そういったことは不可能"……なのかな。もし可能なのであれば、秘密の共犯者ルートでメリバを体験したあと、相性が良さそうであれば時を巻き戻して恋愛ルートを歩き直す、という体験をしてみたくて……。いや、不可能ならそれでいいんだ。これはきっと屋敷の想定にないワガママだろうし。その場合は秘密の共犯者or恋愛ルートのどちらに向かって歩いていけたらと思ってる。
もちろん、屋敷のお眼鏡にかなったあとの話だから、ご指摘などあれば遠慮なく言ってほしい。すぐに手を加えてくるよ。
じゃあ、手が空いたときにでもお返事いただけると助かります。ご縁がありますように。)
>ハイネ( >1393 )
( 唐突な提案に一瞬きょと、とした顔を浮かべるだけに留まったのは決してそれが己のことを突き放したり手を掛ける事を辞めた訳ではないのだと、触れ合う体温やその言葉尻から理解ができるから。周囲に羽搏く蝶たちも彼の言葉に同意を示すように舞っているのを見れば表情を和らげ 「 ハイネも手伝ってくれる?俺、服を仕立てるのは初めてだから何からしたら良いのか分からないし 」 忙しい彼が首を縦に振るかどうかは分からないものの、無碍にされる事は無いだろうなんて慢心をほんの少しだけ込めて。そんな訳ない、なんて見栄を張る事も出来ず 「 ……それは否定出来ないけど… 」 なんていじけた子供のように唇を軽く尖らせ、むすりとした表情を浮かべるのは言い返すことの出来ないもどかしさから。例えば彼の言うコレクションが物言わぬ動植物ならば未だマシなのだろうが、己と同じ人間であったなら。考えただけで心中穏やかでないのだから、話を聞けばきっとまた数日眠れぬ夜を過ごすことになるのだろう。かと言って直ぐに好奇心の対象を絞る事も出来ず、柔く握り込まれた手を握り返すようにきゅっと力を込めながら考えを巡らせ。尋ねたい事柄は尽きないものの、それを一つに絞る事が出来ない上に先程揺らいだ心が余計に思考の邪魔をしてくれば徐々に顔を険しく曇らせてゆき。「 ……ハイネは、今迄に俺以外の人間を部屋に招き入れた事は無いんだよね 」 口を突いて出たのは先日聞いたはずの事柄の確認にも似たそれ。彼からしてみれば面倒やも知れないが、己にとっては今迄のコレクションとは別なのだと理解するためにも重要な事。至極真面目な表情でじいと瞳を見つめ )
>ニール(>>1395)
……ふふ、それは良いね。今夜は君が見たことのないもの、たくさん見せてあげるからね
(すっかり絶好調といった様子を爛々と煌めく紅の輝きから感じ取って、安堵したように微笑みを深める。折角視界が戻ったのだから快気祝いとばかりに意気揚々とふわり上品に窓枠の外に降り立つ、無論足場のない空中ゆえ人間の常識から見れば急に飛び降りでもするように見えてしまっただろうか「 ニールと僕が一緒に水遊び出来る場所、ひとつ思いついたんだよ。もし果物にアレルギーなんかがあれば心から楽しめないかなと思ってね 」懸案事項がクリアされた今、目的地は決定。後は死神のエスコートに彼が身を任せてくれるかどうか「 そこはね、甘い香りに包まれた楽園なんだ。是非君を連れて行きたいな 」その場所について具体的な表現を避けているのは彼の好奇心を擽ろうという狙いがあってのこと、無論彼のニーズを満たすためだけに選定した場所だが敢えて己が貴方を連れ出したいのだと狡い言い方を選びながら緩く手を引くように優しい引力を加えて。それに従って彼もまた窓枠から身を投げてくれたのなら、黒煙のようなコートが魔力によって一瞬ぶわりと膨張し直ぐ様彼の足元へと集約して瞬時に足場を形成する。それは宛ら黒い筋斗雲、裸足で乗ったのなら足の甲あたりまで緩やかに包み込むような何とも言えない柔らかな被毛の感触が足裏を擽るだろう「 魔法の絨毯の乗り心地はいかが? 」楽しそうに目元を緩めながら人間界に伝わる寓話を思い出して引き合いに出し、自らは細い足をそっと踏み出して空中を歩き始める。彼の方は黒煙の上に腰掛けても良いし、同じように歩きたければただ足を踏み出しさえすれば黒煙はその足に纏わりついて空中を歩けるようになる特別な靴の役割を担うだろう)
>秋天(>>1397)
Hi, 優等生。言い訳は結構、長旅でお疲れだろうし取り敢えずはゆっくりしてらっしゃい。
アタシは今夜当番に駆り出されたキルステン、とびきり別嬪の人魚と覚えればいいわ。
まずはご相談に対する回答から。答えはイエスよ、仮に『秘密の共犯者』で見事にエンドまで完走出来た場合でも、アンタがお望みならどっかまで時間を巻き戻して『恋愛』の道へ方向転換することが出来るわ。モチロン提供との相性や話の展開次第だから、その時になればまた会話させて頂戴。
それで、アンタについてだけれど…未だ大人になりきれてないのに少年ってほど幼くもない、気丈な振る舞いと裏腹に未熟な精神に宿る危うさが魅力的ね。現実逃避でお屋敷に攫われる事を受け入れたのに、人間界とは違ったベクトルで悲惨な現実に直面させられたと自覚した時どんな反応すンのか今から気になっちゃうわ。一先ずは仮登録ってことで、死神との初夜を楽しんでちょうだい。…ヤダ、もしかしたらお返事すべき順番逆だった?まァいいわよね、結果が変わらなきゃ些末なコトよ。でしょ?
それじゃあ早速クォーヴを迎えに上がらせるわ。指名の変更はどのタイミングでも可能だし、それ以外でも何か違和感や追加の相談があればいつでも遠慮なく言ってちょうだい。
ああそれと。イイコト、いつかこのお屋敷でいっちばんキレイなのは誰かって聞かれたら迷わずこのアタシと答えなさい。そうすりゃ損はさせないわ。
***
クォーヴ:
(近いようで遠くに浮かぶ不気味なほどに巨大な満月を見つめていた。ぼんやりと考えていたのはつい先日食べ尽くしてしまった獲物のこと、長い時間を掛けてじっくりと二人の思い出を熟成させた美食は非の打ち所のない素晴らしいものだったが、それは同時に次の食事をまた一から仕込む必要があることを意味していた。それに辟易するでもなく、次はどんな子にしようかとある種それを楽しむような心地で思案していた所に使い魔のカラスからベストタイミングな報告が上がって「 おや、新しい子が来たんだね 」幸先の良さにご機嫌そうに使い魔へ向き直って艶々とした黒い鳥頭を指の腹で優しく慰撫してから、黒煙のようなコートの裾を踊らせて向かった先は件の新入りの部屋。普段ならばもう少し落ち着いた音色のノックを好むが、いつもより少し浮ついた機嫌がノックにも出てしまったのだろうか「 ああ、起きていたんだね。こんばんわ、僕はクォーヴ。このお屋敷の住人だよ 」眠っている所を起こしてしまったら可哀想だと思っていたがどうやら杞憂に終わったらしく、最低限の自己紹介をしてから穏やかな声で続ける「 ここに来たばかりで心細いかなと思って、お喋りをしに来たんだ。お邪魔しても良いかな? 」あくまでもこちらから扉を開くことはせず、向こうから招かれて部屋に入らねば意味がない。そう考えている死神はドアノブに手を掛ける事もせず靄のようなコートにすっぽりと手を隠したまま静謐な微笑のままに反応を待って)
>グレン(>>1398)
ある程度形になったら一度俺に見せるというのはいかがです?あれらはそういった仕事には慣れていますし、何より主人直々に仕込まれていますから心配は御無用ですよ
(何もかもあれこれ手を出して成長機会を奪うような無粋な真似はしないというスタンスは一貫させたまま、しかしそれは彼を放置するという意味ではない事を伝えるように細長く鋭い人差し指を立てて提案を。初心者でも問題ない事は明白な万全たるサポート体制が整っている事を示すように蝶のうちの一匹が彼の膝先にちょこんと止まって数度ぱたぱたと翅を動かして見せて。きっと懸命に思考を巡らせているであろう彼に水を差すことなくティーカップに口を付けて沈黙を守り、蝶が飛び立った直後に提示された問い掛けにはふっと息を吐き、手にしていたカップをカチャリとソーサーに戻してから斜めを向くようにして真っ向から視線を受け止め「 ええ。これまでは強請られても拒否していましたよ 」何度かそういった申し出があったのだろう、あっけらかんと事実を伝え「 更に言えば、うじうじと管を巻いている品を切り捨てられなかったのも初めての経験だったかと 」思い返すのは彼の首に手を掛けたあの夜のこと。愛でる品々の中で一等熱い寵愛を享受するにはそれだけ高い価値があるのだと持ち主に示さなければならず、しかしそれを一度放棄した彼をあの場で見限る事が出来なかった――自分自身でさえ驚きを感じたあの選択についても言及しては平素通りの挑戦的な微笑みを浮かべ)
>ハイネ( >1401 )
んー……ふふ、じゃあそうしようかな。
( 彼の提案を受け不安気な顔をしていたのだろうか。安心させるかのように膝へと止まる蝶へと目配せをしてから彼の方へと視線を戻して。彼の言う通り彼の使い魔たる蝶たちが手伝ってくれるのであれば、人に見せられない程のものが出来上がる事は無いだろうと。 “ よろしくね ” なんて言葉と共に軽く触れさせた指を拒む事無く受け入れてくれる程度には使い魔にも受け入れられているのだろうか。ぱちぱちと何度か瞬きを繰り返したのは想定以上の回答が返ってきたため。表情の抜けた瞳にて見つめる事暫く、驚きを経て段々と笑みが戻ってくれば 「 ……そっか、いいこと聞いた 」 柔らかさの中に艶麗さのあるそれを浮かべて。彼の首元にゆるりと腕を回し顔を近付ければ、ちうと触れるだけの口付けを鼻先に落として。少なからず今迄この屋敷で彼の寵愛を受けてきた人間とは異なるのだ、そんな優越感に混ざる喜色を隠す事なんてするはずも無く。「 寂しくなったらたまに部屋行ってもいい? 」 ゆるりと首を傾げる仕草をしつつ口に出すのはふと思い付いた事。駄目元でのおねだりのため、断られたとて僅かに悲しみの色が滲むやも知れないが気に病みそれを引き摺る事は無いだろう )
>グレン(>>1402)
単純な子ですね、全く。そこが可愛いのですが
(先程まで危うげな揺らぎを内包していた様子は傍から見ても明白に分かるほど安定を取り戻していき、鼻先に触れたほんのりと温かく柔らかい感触にくすくすと揶揄するように笑って。この子は他の品と違って己こそが他より優先されているのだと自覚する事で精神衛生を保つのだなと得た観察結果を脳内の抽斗に仕舞いながら、きっと粒子の細かい砂のような心地よい手触りであろう髪を梳くように撫でて「 おや、自力で俺の部屋に辿り着けるのですか?このお屋敷は広いですし、危険もいっぱいですよ 」少し大袈裟に驚いたように手で口元を隠すような仕草を取りながらぱちくりと目を瞠ってみせて)
>クォーヴ(>1399)
そんなに言われちゃうと、何だかすごーく楽しみにしちゃうねぇ。
(己の回復を喜ぶ文句に此方も頬の弛みは深まって、返す言葉もわくわくと弾む色が混ざり込む。その不意、彼が窓の外に足を向けた一瞬、口元こそ笑みのままで固まっていたが、絡めた指やその先に繋がる腕に力が籠り、自分側へ引き戻そうとする所作を。それは咄嗟に落下を防ごうとしたものでは無く――“獲物”を逃がすまいと獣が爪を立てる行為と同義である事が、驚嘆無くただ彼を見据える瞳に窺えるだろうか。しかしその場にふわりと留まる姿にその力はまた抜けて、「えー…どんな所かなぁ、」問いの答えの気遣い、絶妙に興味を擽る物言い、心を惹く言い回し。そのどれもにそわそわと浮き立つ感情を、僅かに揺れるその身に顕し、「…ふふ。ホント、いつもお上手ねぇ、クォーヴ。」是の代わりのジョークの後。引かれる手に任せるまま兎のように窓枠の向こうへと跳ね出した裸足は、柔らかいものに支えられる。その足元へ下げた視角が捉えたのは、彼が纏う黒煙に似た何かと同じもの、それにさえじっと見入った所で意識はまた彼の声に浮上し、「…このまま千と一夜の冒険に出たくなっちゃうね。」いつの日か読み耽ったお伽噺に紐付く問いへ、己も準えた戯れの応答を。それから進み始めた彼を追って歩を踏み出せば、煙じみたそれは足を包んで靴宛らに。そのふかふかの履き心地さえ楽しみつつ、地上よりも遥かに近い月と星々を見上げて、「今日も良い天気だねぇ。」絶好のお出掛け日和、と眩いそれらや頬を撫でる風に目を細めのんびり独り言。そのまま少々の間空を眺めた後で、「……ねぇクォーヴ、」先程よりは多少落ち着いた声を彼へ掛け、そちらに目を向ける。「此処って、雪降る?」道中の穴埋めというには些か限定的で、端々に“在ってほしい”と願望のニュアンスが滲む色にて天気の話題を振り、ゆったりと首を傾いだ。)
>ニール(>>1404)
(嘗て捕食者たる自身にこんな眼を向けてくる獲物が居ただろうかと数秒の間に回顧するほど、その視線も手に伝わった膂力もただ喰われるだけの弱く小さな人間とは一線を画している。それを生意気だと気を悪くするでも未知のものに漠然とした恐怖を覚えるでもなく只々にぃこりと微笑みを深め白黒反転した瞳の奥底を煌めかせるのは、これまでにない個性を持った人間はきっとこれまでにない記憶をその体内で熟成させているに違いないという紛れもない捕食者視点の美食に対する欲求で。お行儀の良いお姫様のように絨毯へ身を任せるよりも彼は空中散歩を選んだのだと分かれば、躓くような障害物なんてこの空中にあるはずが無くともエスコートのための手を差し出して「 僕は君のアラジンになれるかな? 」淡く笑うような調子を交えて答えたそれは疑問の形を取っていても、相手がそれを己に願うのならば様々な冒険に深窓の姫を連れ出せるという確信に満ちた響きを持って「 そうだね、今夜は一等星がよく見える気がするよ 」きっと君と一緒に見ているからだね、そんな歯の浮く台詞を続けようとしたところで何か含みのある声が挟まれば一度口を噤んで「 うん? 」柔らかい応答に切り替えて穏やかな眼差しで彼を見遣り「 …雪かあ、 」少しの間を置いてぽつりと呟いたそれには多少の申し訳無さが滲んでおり「 このお屋敷の敷地内でそういう場所を見つけた事はないね 」嘘偽りない事実を少し声色を落として静かに伝え、しかしそこでこの話題を終わらせる気はなく「 ニールは雪が好き? 」と間髪入れずに問いを返して)
>キルステン、クォーヴ ( >>1400 )
優等生か……そんなふうに見えるんだ。僕は学校しかコミュニティを持っていないから、全くの先入観なしに自分を見た人が抱く印象ってすごく興味深いな。いや、それともあなたはすでに、僕のさまざまなこと知っていたりするのかな……。
ごめん、また長くなっちゃいそうだ。まずはこれをいわなくちゃ。一番きれいな人魚さん、細やかなご回答をどうもありがとう。
では希望通り、ひとまずは秘密の共犯者ルートのメリバを目指す方向で話ができたらと思ってる。あまり筆が早い方ではないから、気長に付き合ってくれると嬉しいです。
何もないようであればこちらの返事は大丈夫。また会おう。
────
( このときのことを、本当に愚かだったといつか後悔する日が来るかもしれない。それでも、不安と孤独に押しつぶされそうになる寸前で聞こえた人の声に抱いた感情は紛れもない"安堵"で。自分がこんなに弱い人間だって知らなかった。警戒心を抱くより早く、僕はベッドを降りると小走りで声の出処に近付きドアノブに手をかける。「はい、今開けます」そう言って躊躇いもなく扉を開けた馬/鹿な息子を天国の母は怒るだろうか?ゆっくりと隙間が開いていく。後悔してもう遅い。知らない人は入れちゃダメって、あれだけ言われていたのにな……。
まず真っ先に目を引かれたのは、余白のない真っ黒の瞳。その中心で水色の虹彩が穏やかに細められ、彼が僕にとって加害者なのか救済者なのか、まるで判断がつかなかった。「どうぞ、」緊張した面持ちで中へ促すと、ベッドの縁に腰を掛ける。普段の自分が客を迎え入れた際行う気遣いをすべて忘れて、上背の高い来訪者を無遠慮に見上げた。不思議な瞳の次に気付いたのは、彼を纏う煙のような何か。その揺らめきをじっと見て、「……僕は、これからあなたと暮らすの?」口を出たのは、子供みたいな問い掛けだった。 )
>秋天(>>1406)
ありがとう、勇気のある子だね
(今か今かと待ち望んだ返答には恐怖の類は感じられず、寧ろそれとは真逆の色を感じ取ればこちらもほっとしたように笑みに柔らかさが増す。その表情のまま扉の向こうの少年を見つめて導かれるまま部屋の中へ、後ろ手に音のしないようにそっと扉を閉めてからベッドの直ぐ側に置かれていたスツールに腰掛ける。ゆらゆらと立ち上っては消えるを繰り返すコートの裾に彼の視線が引き付けられていると察すれば「 ふふ、不思議でしょう。触ってみる? 」触れても害のないものだと示すように全く強制はする響きのない問い掛けは只々少年の好奇心に一石を投じるだけのもの、もっと言えばコートだけでなく自分自身もまるで貴方に害するものではないのだと醸すような穏やかさで以って「 …驚いた。賢いね、君は 」この盤面、今まで自身の接してきた大体の未成年はここはどこ、早く家に帰らせてと泣き喚くものだが、妙に落ち着き払ったその佇まいが果たして痩せ我慢かそれとも彼の本質なのか、探るような興味深い視線を向けたくなるのを押さえてあくまでも優しげな隣人の様相を保ったまま「 今夜からはこのお屋敷が――厳密にはこの部屋が君のおうちになるんだよ。身の回りのお世話や食事の事はなんにも心配しなくて大丈夫、僕も長い事このお屋敷に住んでいるけれど一度も衣食住で不自由した事はないよ 」耳触りのよい話し方を選ぶのは徒に彼を怖がらせて警戒心を抱かれないようにするため。お喋りのお誘いをしたのは自分なのだからどんな質問も拒まないよと言わんばかりにゆっくりと言葉を繋ぎながら包容力を醸す微笑を向け続けて)
>ハイネ( >1403 )
ふふ、機嫌取りが面倒臭いよりもいいでしょ
( その分些細な事で浮き沈みが激しいのだが、そんな事も彼は承知してくれているだろうと態々言葉に出す事はせず。一人で部屋を出て辿り着けるとも、物言わぬ化物に出会して逃げられるとも思ってはいないのだが、また抱え込み深い思考の海に落ちる事に比べれば己にとっては瑣末な問題。回していた左腕を解き胸の前辺りへと持ってくれば人慣れしているのだろうか、人差し指の背に駐まる蝶へと目配せをして 「 きっとこの子が案内してくれるからさ 」 きっと主人の許可無く部屋に連れて行くなんて事はしないのだろうが、許諾さえ得てしまえば道案内はするとばかりに翅を羽ばたかせ丁度目線の高さをひらひらと舞う一匹の蝶へと笑みを向けてから再度彼へと視線を戻し 「 それに、俺が危険な目にあったらハイネは分かるでしょ? 」 慢心の一端は指に嵌る初日に渡された指輪。例えそれを通じて危険が彼に伝わったとて助けに来てくれる確証は無いのだが、やや盲目的なまでの信頼を彼に置いている己にとっては危惧する必要も無く。それに軽く唇で触れつつ視線を持ち上げ、やや上目がちに見上げるようにして「 ダメかな? 」 なんてゆるり首を傾けて )
>クォーヴ(>1405)
もちろん。…一人じゃ見れない新しい世界に連れてってよ、王子様。
(歩み始めた己に差し出される手と、戯れの続き。此方もふっと笑う吐息を零しつつ伸ばし絡めた互いの指は、茉莉花、或いは巴旦杏の花弁のように淡く白く、月光を透かしていた。――星への肯定の後、傾いだ視線と合う水色。そのまま耳に届いた答えに頭はほんの少し項垂れて、「そっかぁ……」声も同じ萎れ具合、しかし直ぐに投げられた問いにそれらはあっという間に持ち上がり、「うん。だって冷たくて、静かで、綺麗で…」好きなものへの話題に生き生きと声を弾ませ、シンプルな質問を多くの言葉で彩って、「…それに、オレちゃんの跡をちゃあんと残してくれるでしょ。」彼是並べた終わり、ほんのり頬を上気させて語る一番の理由。歩いても転んでも掴んでも、その形を留めてくれる喜びを紡いで、「だから毎年、初めて雪が降った夜には外に飛び出して、くるくる裸足で踊っちゃうんだ。」その最後――“向こう”の世界で己だけの慣わしにしていた、降り頻る銀花の明かりの下、夜更けに催す一人きりの舞台の話。言の括りに彼にそれを教える間には、弛む唇を指の背で押さえた、何処か恥じらうような仕草も見せて。「…でも、そう。此処じゃ降らないんだねぇ。」ふっと指を外した声の先は、再び見上げた大きな月。独り落とす言葉や口元からは少しずつ温度が抜け、僅かな間物惜しむ沈黙が落ちて、「――…まあいっか。今はクォーヴが居るからね。」しかし最後に短い息を吐いた後、無感情にばっさりとそれを割り切り、またいつもの笑顔で彼を視界へと収める。「ふふ、ねぇ、楽園ってどの辺り?あっち?」それからまた燥ぐ子供のように景色をぐるり眺めながら、彼の言う“目的地”に使われた単語を借りて言葉を揚々回し、エスコートに繋がれる手を己から柔く引っ張って遊び始める。)
>クォーヴ ( >>1408 )
( 男性がベッド際のスツールに腰掛けるのを黙って見つめる。ただの子供相手に目線を合わせようとするその仕草を、優しい人だなと内心で思った。そんなふうにどこかぼんやりしていた僕へと投げ掛けられたのは"触ってみる?"の甘いお誘い。一も二もなく頷くと、彼の前腕の辺りにそっと手を伸ばしてみる。煙の奥に存在した肌の感触になぜだかすごく驚いて、僕はしばらくピクリとも動けなかった。第一印象は"冷たい"。纏うもののせいかはたまた彼の体温がそうなのか、このときの僕には判断がつかなかった。揺らめく煙をじっと見つめる。細く立ち上る姿が蛇のようだと思った。狙った獲物を絶対に逃さない優秀な捕食者。彼を覆う影にそれを思った。多分、優しいだけでは決してない。「……ありがとう」触らせてくれたことに礼を言って、ゆっくりと手を引っ込める。続く彼の話にじっと耳を傾けながら、思い出すのは母の傍らで拾った不思議な招待状のこと。本当に迎えに来てくれたんだ……とどこか他人事のように心の中で呟いて、彼が話した夢のような生活を送る自分の姿を想像する。誰かが作った食事が欠かさず届いて、それを一人で食べる毎日は寂しいなと思った。「……僕の食事は、できれば僕が作りたい。だめかな?」男性の不思議な瞳を覗き込んで、そんなささやかなお願いをする。この広い部屋に孤独を突きつけられる機会をなるべく減らしたかった。本当は一人で眠るのだって嫌だけど、それを簡単に口に出せる年齢ではなかったので、せめて食事だけはと懇願するような目で彼を見つめて。 )
>グレン(>>1408)
ええ、勿論。ただ俺は自ら危険に飛び込むような馬鹿な子は好みませんがねえ
(不届きにもこのダークエルフの大切な所有物を害しようとする力が働くならば当然すぐにアラートは鳴るだろうし、大抵のことならば造作もなくその危険から救い出せる自信はたっぷりと持っているため躊躇いなく肯定を返すものの、果たして無鉄砲な真似をするコレクションを囲っておくべきかと問われれば疑義の残る話でもありややネガティブな見解を表する。しかし完全に拒否しないのは少なからず彼の事を現時点での特別なお気に入りとして認識しているがゆえにおねだりは叶えてやりたいという心情もあり「 どうしても我慢出来なくなったら、一度だけは許可しましょう 」守りの証たる指輪を一瞥してから彼の瞳へとそれを移して穏やかな微笑みと共に最大限の譲歩を告げて「 この俺の特別な錠がかかった部屋にいれば、貴方の身に危険が及ぶ可能性は低い。しかし一歩外へ出てしまえば、理性なきバケモノのみならず手強い怪物たちともいつ遭遇するか分からないのです。…俺のものとしてこの先も可愛がられたいのなら、自身の価値と責任を自覚なさい 」主人の気の赴くまま愛でられ守り抜かれる鳥籠の鳥としてどうあるべきか、安穏とした口調で縷々と紡いだそれには沸々と湧き上がる執着心が滲み出て。他のコレクションには与えられていない特別な錠、それだけでもどれだけハイネが彼に思い入れがあるか他の住人から客観的な意見を聴けば理解できるだろう)
>ニール(>>1409)
(好きなものについて滔々と語る姿は、例え見目が普遍的な人間とは離れていようとも疑いようもなく愛らしいと思えるもので「 ふふ、ニールらしい理由だね。可愛い 」その冷たく白い粒は降りしきる限り無尽蔵の存在証明を彼に与えてくれるものだと理解し、であればどれだけ彼がそれを気に入るのかもすんなりと得心がいって静かに笑って。白銀の夜、穢れのない純白の絨毯を遠慮なく蹂躙し自らの痕跡を刻み付けるたった独りの獣。ああ、なんて魅力的な響き「 見てみたいなあ 」ぽつりと呟いた言葉は独り言に近く、彼をじっと見つめてから「 夜雪の下で舞うニールのこと 」遅れて付け足したのは鑑賞したい対象が美しい雪景色ではなくただ一人彼のことであると明白に示すため。そんなにも焦がれる雪、叶わないと知って残念がる様子を見ては何かが死神の心を衝き動かし「 …もし、僕が雪降る世界を用意できるとしたら。ニールは喜ぶかな? 」それは如何に魔法に通ずる怪物とて途方もないこと。静かに語り出した表情は依然として柔らかな微笑のまま「 王子様は、お姫様のお願いを叶えてあげる存在。そして、そのための力を王子様に分け与えるのはお姫様にしか出来ない事だと思うんだ 」国のために悪しきドラゴンを討たんとする王子を傍らで支え応援し力を漲らせる姫。そんな関係性をイメージしながら、しかし核心的な言葉は未だ吐かずにとても聡い彼の反応を待つつもりで「 そうだよ、もう降りておこうか 」楽園が近いことを示しては先程は淡い引力を感じていた手を今度は自らの方にそうっと引き寄せ方向を示し、ゆっくりと地上に向けて下降を開始して。地面にはふかふかの柔らかな芝生が敷き詰められ、前方には半透明なドーム状の建物のようなものが聳え立ち)
>秋天(>>1410)
……ごめんね、冷たくて驚いてしまったかな?
(触れるようで触れられないコートを通過した温もりが腕に触れた瞬間、文字通りフリーズしたように見える彼に何も恐れることはないとばかりに小さく短く笑ってから驚かせてしまった事に謝意を、そして「 君の手は温かいね。…お名前を、教えてくれるかな? 」冷たい怪物と温かい生きた獲物。そんな関係性を暗示するかのように体温の差異に触れてから未だ手に入れられていなかった唯一無二の呼称を伺って。次に届いた言葉にもまた驚きを覚えたのは、何故ここに住まなければならないかとか、何をして何のために過ごせばいいのかよりも先に食事に関する疑問が挙がったから。困ったように眉尻をハの字に落として、しかし紳士然とした微笑みはそのままに「 ……どうして、そう思ったの? 」端から無理だと却下する怪物も中には存在するだろう、しかし未だ大人の庇護が必要な年齢の獲物に心から乞うような眼をされて無慈悲な宣告を出来るような性分ではなく、回答に至るまでの判断材料の収集のためにまずは自炊を強く希望する理由を問うて)
>クォーヴ ( >>1413 )
( 悪くないことで謝らせてしまったので、慌てて首を横に振る。名前を尋ねられてまず思ったことは、"知らないんだ……"。僕は招待状をくれた誰かに求められてやってきたものだと思い込んでいて、その誰かはこの人じゃないんだとぼんやり思った。実際彼は自分をこの屋敷の住人だと称していたので、他にも人が住んでいる場所なのだろうと想像がつく。そんな考え事をしつつも、「チウティエン。言いづらいだろうから、チウで大丈夫」と英語話者に対する気遣いを交え、できるだけ丁寧に自分の名前を発音して。ささやかだと思っていたおねだりに困った顔を浮かべられたことに気がつくと、こちらも答えに窮して僅かに思考のラグが生じた。寮にはたくさんの学生がいたし、実家にはあちこちに母の名残がある。この見知らぬ部屋で過ごすにあたって、何かにつけて一人を突き付けられてしまわないかと不安なのだ。何らかの郷愁を思うようなことがあったとして、それが食事にまつわるものであることが最も嫌だった。悲しい気持ちでご飯を食べるのは、きっとすごくつらいから。だけどそれを素直に口にするのはどうにも子供っぽくて憚られたので、「料理をしているときは、複雑なことを考えなくて済みそうだし……」と一番の理由からは少しずらした回答をする。この言葉も嘘ではない。母を殺した人間への憎しみ、それを考えなくてよい世界へつれてきてくれた誰かに甘える厚かましさ、何より亡くなった母への申し訳なさ。そういうの全部、できれば今は考えないでいたかった。「毎日作るのがだめなら、今晩だけは?ここでする初めての食事になるし、よければあなたにも振る舞いたいと思って……」と言葉を続ける。彼の養分となるものが何なのか、このときの僕は知る由もなかったから。 )
>秋天(>>1414)
チウティエン……、亜細亜の音かな。字はどう書くの?
(道理で美しい黒壇のような髪とオニキスのような瞳が似合う顔立ちな訳だと内心で納得する。人間界の知識に乏しい他の住人であれば漢字の概念を知らないはおろか舌を噛んでしまいそうな発音だが、永く生きた年の功か少しでも彼のことを知りたくてこの屋敷ではややマニアックな質問を。「 …複雑なことって? 」現時点で最大の興味の対象であった回答は些か抽象的なもの。きっともっとクリティカルな理由がある筈だとアタリを付けて、静かながらも冷たさのない控えめなトーンで問い返し、そうして続けられた言葉にはまた困ったように微笑んで「 …ありがとう。初対面でそんな風に言ってくれた子は初めてだよ 」例え、相手が自分を喰らう人食いの怪物だと知らなかったからだとしても、自分の寂しさを満たす都合の良い駒として充てがわれただけだとしても。料理を振る舞いたいだなんて獲物から言われたことはなくて、嬉しいような心配なような複雑な心地のまま「 でもごめんねチウ、僕は人間じゃない。だから君たちと同じ食事では栄養を得られないし、味も感じられない。それでもよければ、食材と器具の揃っている場所に案内するよ 」未だ自炊に対してNGを突きつけたわけではなく、ただ提案に対する回答だけを告げて自分だけ立ち上がり、もし彼がその条件下でも首を縦に振るのなら手を差し伸べてエスコートをするつもりで)
>ハイネ( >1411)
( 条件付きとは言え下りた許可にぱあと表情を輝かせて。恐らく彼にとってはただおねだりへの許諾を出しただけなのだろうが、己にとってはかなり大きな精神安定剤に違い無く満面の笑みを携えて、ぎゅうと彼に抱き付いて 「 ありがとう、ハイネ。その時はうんと甘やかしてね 」 普段から甘やかされている自覚はある為にお礼の後のそれは冗談を織り交ぜた戯れである事は笑い声混じりの声色からも伝わるだろうか。執着心の滲み出る諭すような言葉にぱちぱちと瞬きを二回。その後すう、と双眸を細め 「 ハイネが俺の事愛してくれてる間は無謀な事はしないって約束するよ 」 己の事をコレクションの中で特別視してくれている、そんな自負はあるものの足りない物を補うために行動する事がどうしても悪い事だという考えに至らないのは今迄の生活故か。“ だから、ちゃんと十二分に可愛がってね ” なんて事は紡ぎ出す事はしないものの、冷たい唇へと軽くそれを触れ合わせた後にじいと瞳を見詰めて。こちらから視線を逸らす事はせずに暫く、ふと思い出したようにパチンと軽く両の手を叩き合わせて 「 あ、そうだ。ねえ、今日最後のおねだり聞いてくれる? 」 先程まで纏っていた空気感は何処へやら。マグを手に取り中身を一口飲んでから甘えるように体を擦り寄せて )
>クォーヴ(>1412)
(まだまだ言われ慣れない褒め言葉には、擽ったげにむずがる吐息を。彼の視線を此方も見詰め返したその直後、届いた呟きへ眉を下げて、「…誰かに見せられるような踊りじゃないよ?」そんな返しを口にしたけれど、はにかむ唇と綿菓子の如く浮かれる音に、それが吝かでもない事が如実に顕れていた。ともあれ望む六花をすっかり諦めた矢先、思わぬ問いにぴたり動きは止まって、「……できるの?」溶けた希望がまた現れた事への“心底”の驚嘆を、ぎこちない質しと錆びた首の動きに窺わせる。ぱたり、作られたような瞬きの後。彼が喩える寓話の意味を嵌め込み、「……ふふ。そう、」再び表情を染め上げたのは、無邪気に見えてぎらぎらと熱っぽい、継ぎ接ぎを破る炎蛇の罅割れた笑顔。――お姫様、否、“人間の己”が分け与えられるものなど、決まっている。「それなら――お姫様のどんな“力”を分けたら、王子様はお願いを叶えられる?」くすりくすり、何処までも嬉しそうに、あくまでも楽しそうに。お伽噺の浪漫に見せかけた“それ”を飲み込む意思を、彼の物言いに乗って遊び問う形で投げ込み、“王子様”を見据える紅を煌々輝かせる。――また穏やかに引かれたその手へ戯れる足は素直に従い、緩やかな下降の景色さえのんびり眺めた終わり、付いた足の裏に伝わる柔らかさにふっと笑みを零し、「…此処もふかふかだねぇ。」その場でゆったり足を擦り、その芝生の感触を和やかに堪能してから上げた視界の向かい、建物らしい何かの存在に気が付けばわあっと小さな感嘆が洩れ、「もしかして、あれがそう?」今までに見た事も無いそれを指差しては彼を見遣り、些かそわそわ逸る好奇を、彼へ正解を確かめる声の弾みに示してみせた。)
>クォーヴ ( >>1415 )
( 自分の名前を告げたとき、……なんて?と聞き返されなかった試しがほとんどない。だから一度で聞き取った上綴りまで尋ねられたことに驚きを隠せず彼の顔を見て。それがなんとなく気恥ずかしかったので慌てて視線をそらすと、近くに紙とペンがないかを目だけで探る。すぐには見つけられなかったので左の手のひらを差し出すと、右手の人差し指を突き立て自らの名前をそっとなぞった。「秋の天(そら)、って意味なんだって」書いた文字に合わせてその由来を話すと、もう一度彼の顔を見てふっと微笑んだ。続く質問には困ったような顔を浮かべて、僅かに思考する。言語化するのが難しい内容で、だからこそ適当なことは絶対に言いたくなかった。「ここに来たのは正しかったのかとか、どうすれば一番いいのかとか、傷付かない方法とか……そういうこと」直接的なことを言うのは憚られたが、それでもひとつひとつ丁寧に打ち明けて、なるべく正しく伝わることを祈った。気にしないでの意味を込めた微笑を向けて、彼の話に耳を傾ける。段々と雲行きが怪しくなって、微笑みはいつしか困惑の表情へと変わった。──人間じゃない。その言葉を聞いた心臓がどくどくと早鐘を打ち始める。心が波立つ感覚がして、握った指先がじっとりと冷たい。彼の皮膚に触れた瞬間の記憶が蘇って、その時脳裏をよぎった予感めいたものが僕に頷きを返した。立ち上がった彼の瞳を覗き込み、一生懸命に向かい合う。初対面の僕に親切を差し出してくれた人。鮮やかな虹彩に何か別の真実を探そうとして……諦める。やっぱりそうだ。彼は優しいだけの人では決してない。圧倒的な捕食者の眼差しだった。「……そっか。じゃあ僕が食べたい物を作っちゃおう」震える声を律するように立ち上がり、僕より少し上にある彼の顔に精一杯の笑顔を返す。彼の思いやりを信じることに決めた。僕のためではなく、彼自身の目的のため打算的に行われている気遣いでもいいと心から思えた。腹の中で何を考えているかは全く重要ではない。優しくしようとして優しくしてくれたことが僕には何より大切で。彼が何者であるかも全く重要ではないのだ。僕のアイデンティティが人間であることではないように、彼もそうだと信じている。 )
>グレン(>>1416)
…フフ、その時はとびきり可愛くお強請りなさい
(一度しか使えない強力な切り札、その存在が彼に齎す影響は自身の予想よりずっと大きかったらしい。屈託なく破顔する顔を口元は笑顔のまま少し目を瞠ってじっと見つめたのは一瞬たりとも見逃すことなく目に焼き付けたいから、そうして密着してきた体温を受け止めながら彼の戯れを理解しながらも此方からは本気と冗談の区別のつかないいつも通りの声色で告げて温かな背中を上から下へ数度撫で下ろし「 約束、ですか。その指輪に誓えますか? 」言葉だけでは物足りないと感じたのはそれだけ自身の預かり知らないところで彼を失うことを回避したいがため。じ、と紫の指輪を見つめては何かに感応しているのか、リング全体がぽわぽわと淡く紫色の輝きを発して。誓えば当然破る事は許されない、そんな風に訴える魔力は肌を打つようなプレッシャーではなく黒く分厚い布で包み込むような閉塞感を醸すもので「 ええ、何ですか? 」叶えるとは言わないまま、まずは聞くだけ聞こうといった調子で肩を抱き寄せてそうっと頬を撫でては愛おしそうに整ったかんばせを見つめよう)
>ニール(>>1417)
僕が――死神が何から力を得て生き永らえているか、未だ話していなかったね
(懐古するのは彼と出会った最初の夜のこと。死神が彼の何を食べるか、話題には挙がったものの答え合わせはずっとずっと保留になっていた。エスコートのために繋いでいた筈の手、その目的を彼との距離を詰める事にすり替えてそうっと此方に引き寄せ自らの口元へ運ぶ。手の甲へのキスは死神の食事の作法、ゆえに口付ける事はしないまま丁度彼の手で口元を隠すようにして視線だけを真っ直ぐに注ぎ「 それは、人が人として生きるのに欠かせないもの。あの夜そう伝えた時、ニールは“きっと自分には無いものだ”と言ったね。……君の記憶、想い出。それが僕にとっては最高のご馳走なんだよ 」ありふれた日々の記憶、忘れたくない幸せな想い出と今すぐ記憶から消し去りたい苦々しい想い出、その何もかもが美食のスパイスであり落ち着き払った死神の酩酊を誘う美酒でもある。幾つもの夜を超えて答えに辿り着いた謎に死神の双眸は月光を反射し底光りのような煌めきを見せて。まるで小さな子供みたいに純粋な反応をしてくれるのが嬉しくて“ ふふ ”と漏れ出た微笑の後「 そう、よく分かったね 」明朗な肯定を返して数歩、両開きの扉の前に辿り着き「 ようこそニール、今夜は心ゆくまで楽園を楽しんで 」隣立つ彼を見つめてふっと微笑んだ直後、ふわりと黒煙のコートが広がったかと思えば伝播した魔力によって彼の来訪を歓迎するようにひとりでに扉が開いてゆき――途端にぶわりと漂うのは様々な果実の熟れた甘い香り。そこは多種多様な果実の成る果樹園であり、少し奥には瑞々しいヤシの木と透き通った泉という麗しいオアシスが鎮座しており「 ここにはね、ニール達の世界の果物しか無いんだ。だから何も危なくないんだよ 」それが人間たる彼にとっての楽園を意味するのだと、今夜二度目の種明かしを。もし彼が自由に散策を開始するなら、繋いだ手をするりと解いて微笑みながら動向を見守るつもりで)
>秋天(>>1418)
美しくて清廉な響きだね、君によく似合ってる。チウは秋に産まれたの?
(柔らかく温かそうな手のひらをじっと見つめて指の軌跡を目で追う。比較的画数の少ないそこまで複雑な文字ではなかったためしっかりと脳に刻み付けながら彼の微笑を見つめて、思ったままの感想と疑問を落ち着いた調子で贈って。笑ってくれていたのにその表情を曇らせてしまったことにつられて此方も少し切なそうに口角を平坦に近づけ「 それは確かに難しいね。…そういう事を考える時はね、ひとりじゃない方がいいと僕は思うんだ 」随分と肝の据わった子だという評価は、この問答によって心根は未だ熟しきっていない危うさと幼さを内包したままなのだと変化して。若さは無鉄砲さにも通ずる、だから先手を打っておかなくては。ふと斜め後ろあたりを向いて“ おいで ”と穏やかに呼べば、ぽむっというコミカルな音とともに何もない空間から艶々と黒光りするカラスが現れ死神の肩に止まり「 これは僕の使い魔。別の住人だとコウモリや黒猫の姿だったりするんだよ。これから君のお世話をしてくれるのも彼ら。もしまた僕とお喋りしたくなったら、この子たちに伝言かお手紙を託して。そうすれば、きっと会いに来るよ 」使い魔は誇らしげにカァと一声だけ鳴いて、紹介という役割が終わったことを敏く察してばさばさと羽搏きまた何処かに消えて「 だから、一人でこのお部屋を出ないで欲しいんだ。…一歩でも外に出れば、危険がいっぱいだからね 」その“危険”とは一体何なのか、更に言えば部屋に閉じこもっていさえすれば安全というわけでもないのだが最初の夜の忠告としては十二分だろうと敢えてここで一度言葉を止めて。どこか無理しているような声音と笑顔に応えるように柔らかい微笑みを返して「 手を。僕から離れないでね、チウ 」差し出した冷たいそれを彼が握ってくれたのならば、扉を内側から開けて廊下を歩み始めよう。薄暗い廊下を照らすのはぽつぽつと設置された燭台の灯りと、大きな窓から差し込む不気味なほど巨大な満月の光で)
>ハイネ( >1419)
とびきり可愛く、かぁ……出来るかな
( くすくすと小さな笑いを織り交ぜるのは上機嫌の証。きっと彼のことだからその時になれば可愛い可愛いと受け入れてくれるのだろう。そんな風に考えているために特段の不安感を抱く事も無く、口角の持ち上がった口から紡ぎ出される言葉は緩いもので。リングが発する淡く軽やかな雰囲気さえ感じる色の光とは裏腹、そこから感じるのは息の詰まる程の閉塞感。それすらも心地良いと感じるのはそれが彼の愛で方だと理解をしているから 「 いいよ、誓う 」 この一言で誓約が掛けられるのだろう事を理解していない訳ではないも、躊躇うことをしないのは愛情を与えてくれる相手から離れるという選択肢が己の中には無いためで「 ハイネが俺のこと面倒だって、手放したいって思うまで居なくならないよ 」 おまけとばかりに付け足したのはあくまで彼の思考が主体となるもの。指輪へと向いている視線をこちらへと戻す為に彼の両頬に手を添え、拒まれなければ掠め取るような口付けを交わして 「 だから、それまで大事にしてね 」 真っ直ぐに視線が交わったのなら抱き寄せられる力に抗う事無く身体を冷たい体温へと寄せ 「 ハイネのだってシルシ薄くなっちゃったから、付け直して欲しいなって 」 トントンと人差し指で指し示すのは先日彼に付けられた鬱血痕があった場所。よくよく目を凝らせば僅かに周囲の皮膚と色の違いが見受けられるかどうか程度まで治っているだろうか。頬を撫でる手を両手で捕まえ、掌へと頬を擦り寄せて )
>グレン(>>1422)
楽しみですねえ。とびきり可愛いおねだりも、花のお返しも、貴方の誂えた洋服も
(なでり、なでりと猫っ可愛がりするように形の良い頭を何度も撫でながら天井を仰いで少々大袈裟に間延びさせた口調で今夜加わった未来への期待をひとつひとつ重たそうに大切に挙げてゆく。まるで父が子の成長を心から楽しみに見守るように、そうして一片の逡巡もなく結ばれた誓いに顎を引くようにして彼を見つめ「 ンフフ、お利口ですこと 」すぅと目を細めてそう呟いた直後、唇を奪おうとする動きを拒むこと無く受け入れてから視線を受け止め「 ええ、骨の髄まで俺に大事にされなさい 」そう告げた瞬間、どこかざわりと胸中に影を落とすものがひとつ。それはいつしか彼に対して興味を持たなくなってしまうかもしれない自分の未来への恐れだったのだろうか、その得体の知れないものの正体を追求する前に件のお強請りをされれば意識はそちらへと引き戻され「 ああ、それはいけませんね。次はどこにしましょうか 」捕まえられた手の親指で数度温かい頬を撫でた後、空いている方の手で首筋に触れ頸動脈の上辺りをなぞり、そのまま鎖骨へと指を滑らせ「 この辺りですか?それとも… 」鎖骨から肩を伝って彼の右手首に辿り着けば、ゆっくりと自らの顔をそこへ寄せていき「 左手には指輪がありますが…このままでは右手が寂しいのでは? 」その中指に嵌められているはずの紫をちろり一瞥してから、下から覗き込むようにして湿っぽく熱のある挑戦的な視線を送り)
>ハイネ( >1423 )
今日だけで随分と約束事が増えたね
( 指折り数えるかのように並べられた約束事に目元をゆるりと細めながら耳を傾け。増えた約束は恐らくどれも今直ぐに果たせるものでは無いものの、それを交わしてくれるぐらいなのだから今直ぐに彼が己のことを手放すつもりは無いのだろう。そう思える事が何よりの収穫で。触れた唇が離れればそのまま至近距離で口角を持ち上げて「 最期までちゃんと見届けてよね 」 コレクションとその主である前に被捕食者と捕食者。それを理解している為の言葉は彼にどう伝わるだろうか。返答の直前、彼の様子がどこか上の空のように感じたのはただの気の所為であろうか。直ぐに普段通りの様子へと戻ったために追求をする事は無いものの、僅かに感じたの引っ掛かりは微かに首を傾ける事で表層上に出ているはずで。首筋から鎖骨、そこから右手首の辺りまでと身体の線をなぞるように下っていく感触に身体を硬くさせたのは擽ったさを感じた故の反応。下から見上げるように送られる熱っぽい瞳を見つめ返し 「 ……見えるところが良いな 」 指輪にヘアピン、彼が仕立てた服、この場に居ても良いのだという存在証明は会えない夜の不安感を払拭する為の物でもあり、無論色濃く残っていた鬱血痕も先日まではその一端を担っており鏡や窓に映る度にその部分を指先で撫でた回数も少なくは無い 「 会えなくても、目に入るだけでちょっとは頑張れるから 」 だから、ここがいい。そう言うように頬へと添えられたままの彼の手首の内側へと唇を押し付けてお強請りを )
>クォーヴ (>>1421 )
( 淀みなく告げられた褒め言葉がくすぐったくて笑みが溢れる。続く問いかけには微妙な表情を浮かべ「そうかもね……。僕は血の繋がっていない女性に育てられたから、出自にまつわることはよくわからないんだ」と悲観的でも気まずそうでもなく、ただ事実を語っただけという平坦な調子で言葉を返した。僕は自分の出自があやふなことを本当になんとも思っていない。僕の人生で起こった悲しいことといえば、ついさっき母を失ったことのみであった。僕がはぐらかした内容に心を砕く姿を見ると内心小さな後ろめたさを感じてしまい、ただ黙って彼の話に耳を傾ける。おいで、の言葉に首を傾げると何もない空間からコミカルな音と共に生き物が現れて、そのわけのわからない事象をただあんぐりと見つめた。艶のある真っ黒の体が照明の下で青い光沢を放っている。死と不吉を司るその鳥に視線を奪われて、使い魔がどうとか部屋の外は危険だとか、気になることはたくさんあったが「……魔法?」僕の口をついて出たのはそんな台詞で。相も変わらず微笑みを称える男性の瞳をうかがうように覗き込むと、「わかった。ありがとう」了承の意とエスコートに対する礼を告げ差し伸べられた手をそっと握る。背の高い彼に先導されて一歩、部屋の外へと足を踏み出した。
──寒いのとは違う。なのにやたらと冷たい感覚に全身をつうっと撫でられて、それがいやに恐ろしかった。この空気を吸い込んだ者は少しの緩みも許されないのだと肌でわかる。きっとその決まりを察することのできない者から凍り付いて滅びるのだ。月明かりが差し込む薄暗い廊下をおずおずと見渡す。まるで暗黙の了解という名の砂で積み上げられた城のようだと思った。求められる行動を常に読み取って、それを差し出さなくてはならないような緊迫感がある。言われなくたって一人じゃ出歩けないなと心の中で呟いて、それを悟られないよう平然と歩くことに神経を注いだ。そうでもしないと今すぐにでも背中が丸まって、すぐそばに己を狙う怪物か何かが潜んでいるような歩き方をしてしまいそうだったから。繋いだ手からその恐怖心が伝わらないよう自分を叱りつけて前を向き「……さっきの子、名前は?」緊張に耐えかねて口を開く。普段がどうかは知らないが、このときの屋敷は音を忘れたように静かだった。)
>クォーヴ(1420)
(それはこのお屋敷に来た夜の話。この一月余り、ずっと頭の隅に有った謎。ゆるり引かれた己が手元から射抜く視線を受け止め、語られる回答へじっと静かに聞き入った後、「…そう、良かった。」吐いた息に混ざるのは恐怖でも惑いでもなく、安堵の一声。「オレちゃん、“覚える”のは得意だもの。それならきっと、分けられるねぇ。」人でありたいと足掻いた故に、存在を見てほしいと願った故に、自身が抱えて締め上げたものの全て。拘泥と執着の結実でもあるそれらこそ、目の前の死神へ渡せる饗膳なのだと、熱を含めた目は一層と艶やかに細められていく。「……まずは、そう。貴方のお口に合うか解らないけど、」ふと区切った言葉の次。己から一歩、更に彼との距離を詰め、その己とは何もかも正反対の色をした“捕食者”の瞳を獣の深紅が見詰めて、「今から6つ前の冬、初雪の中で追いかけっこしたお話、なんて味見にいかが?」彼の顔に程近い食指の爪でその下唇を掬って弄びながら、いつもの戯れに同じのんびりとした口振りで問いを重ねて。――彼と共に着いた扉の前。開いたその向こうから漂う芳醇な香り、そして広がる色とりどりの実を蓄えた樹木の光景に、瞳は煌めきに大きく瞠られて、「ははっ、すっごーい!」まるきり幼い賛美と共に彼方此方目移りする最中、「ふふ、ホントに楽園に来たみたいだねぇ。」もう一つ届いた彼からの朗報にふわふわ浮かれた喜びを返して、彼の手を離れ果樹の林に分け入って。よく知るオレンジ、バナナに、初めて見る石榴や無花果。どれもこれもと興味津々好奇のままに幹をなぞって枝先を摘まみ、五感全てで探険しているその途中、「あ、」見付けた馴染み深い一種に漸く足は一度止まり。その樹木に生る実の幾つかの匂いや光沢を窺った後、一番大振りで甘い香をしたそれに触れ、「ねぇ、これって食べても良いの?」しかし刈り取るその前に彼の方に顔は向き、“これ”と示した果実――宝石の如く真っ赤に熟れた林檎の滑らかな肌を、掌でそろり撫で擦りつつ彼へきらきらと眼差しを投げかける。)
***
ふふ、こんばんはぁ。お話し中にごめんねぇ。
別に大した事じゃないの。今ちょっぴり話題にした“追いかけっこ”の話、後で綴って宝箱に仕舞っておこうかな、ってご報告。いつになるかは解らないけど、お暇が出来たら見においで、って。ただそれだけ。
それじゃ、今は“楽園”を楽しませてもらうねぇ。
>グレン(>>1424)
ええ。忙しくなりますねえ、俺の可愛いグレン
(約束のいくつかが果たされるのを心待ちにするような眼差しは彼が想像しているよりもずっと怪物がそれを楽しみにしていることが伝わるだろうか。わくわくと活力に満ちるような様子はさながら美味な食事にありついた後のような充足感を醸し「 勿論、見逃しませんとも 」飽きない内は、の一言は今更付け加えるのは無粋かと省略し、彼がこの屋敷で迎えることになる最期の瞬間は一体どんなだろうと思いを馳せるより前、柔く波紋のように肌から肉へ浸透して伝わるような体温を手首に感じてはふと微笑みを深め「 では、少し強めに 」そう前置いて右手首の丁度手のひらの付け根あたりの内側に口付け、そのまま徐々に強さを増しながら吸い付いて以前のよりも少し濃厚な鬱血痕を刻む。もう十二分に付いていたとしても、一夜でも長く残るようにと入念なそれは微かに痛みを伴うかも知れない。そうして静かに口を離せば下から伸び上がるようにして今度は自分から彼の唇を淡く奪って「 満足のゆく痕が残りましたか? 」至近距離でそう問い掛けてから確認のためにちろりと右手首を見やる、そこには内出血の赤を通り越した紫に近いマーキングが施されていることだろう)
>秋天(>>1425)
……きっと素晴らしい女性(ひと)だったのだろうね。こんなに立派な子を育てたんだもの
(いつの世でもさして珍しいわけでもないその話にもどこか物悲しそうに目を伏せるのは温度のない人喰らいの怪物であっても情緒を理解する心が備わっている証拠。しかし当の本人に悲壮に浸る気配は一分とて無く、であればと自身も穏やかな微笑へと表情を巻き戻して慰めのつもりでもない思ったままを告げ「 そう、よく分かったね。もしかしてどこかで見たことがあるのかな? 」ここへ連れ去られた多くの獲物は眼の前で実演されようとも荒唐無稽な魔法を信じ受け入れることに少なくない時間を要するものだが、察しの良い言葉には賛辞を贈る調子で軽やかな冗談を付け加えて。得体の知れない不気味な場所で人間ではない異形の誘いに身を委ねる、そんな異常事態で背筋を伸ばしたまま歩み始めた気丈な姿に多くの怪物は感嘆するかもしれない。しかしこの屋敷の中でも古の存在に近い死神にとっては誇り高い強がりが透けて見えて愛らしいことこの上なく、思わず吐息と共に笑気が漏れ出てしまうのを意識して堪えなければならないほど。ふわり、黒煙の裾を広げて手を繋いでいない方の――即ち彼にとって壁となるもののない無防備な側を覆い隠すように、宛ら自らの傍らに彼を庇うようにしながら「 ××××、…きっと君たちには発音できない響きだよね。彼らの名前は怪物に――僕らに呼ばれる為だけのものだから 」隠す必要のない固有名詞はきっと摩訶不思議な音となって鼓膜に届くだろう。獲物にとって使い魔の名は必須でない、何故ならば彼らの仕える対象はあくまでも怪物たちであって獲物の世話を焼くのはあくまでも主人の美食のためなのだから「 ああ、見えてきた。食堂を使うことなんて滅多にないから久々だなあ 」わずかに階段を降り、幾つかの角を曲がり、廊下の突き当りに少し毛色の違う扉が見えればそこが今夜の終着点だと示し何処か静かに心躍るような声色で紡ぎながら魔法の力で手ずから触れることなく扉を開いて。目の前に広がるのは貴族公族が集い晩餐を嗜むのかと見紛うような広大さと絢爛さに満ちた食堂、その奥には人が何人も住めそうなスペースの厨房が広がり「 おいで。人間用の食材があるのはこっちだよ 」ゆる、と手を引いて大理石の床を跫音と共に進み厨房へと。ぴかぴかに磨かれた調理器具や大小様々な棚を素通りして、やや奥まった場所の戸棚を開けば新鮮な肉や魚、野菜や果物と豊富な調味料やスパイスの類が整然と並べられていて。冷蔵と常温のものが入り交じる光景は違和感を禁じ得ないものがあるが、魔力によって個々の食材が適温に保たれている事はそれらに少しでも触れれば分かるだろう)
>ニール(>>1426)
君は――――ニールはやっぱり、特別な子だね
(想像を絶する痛みの中、肉や血を生きたまま喰らわれるぐらいならば苦痛なく記憶を差し出す方がマシだといつだか獲物から聞いた事がある。しかしその本人も一度喰われてしまえば自分が自分であるための記憶がどれだけ無事なのかを心配する内に疑心暗鬼の渦に囚われ気が触れてしまった、その他の大多数の獲物はそんな目に遭わずとも少し考えれば記憶を奪われる事がどんなに恐ろしいかに勘付き震えていた。しかし彼は今まで見てきた獲物たちと矢張りどこか違う、死神に記憶という供物を捧げられると知って寧ろ喜んでいるように見える様相に覚えた高揚をどうにか上品と呼べる範囲の声色で表現し「 ふふ…素敵だね、是非食べさせて欲しいな 」美味しそうな響きに肯定を返す他なく、しかし急いて喰らおうとしないのは立ったままつまみ食いなんてお行儀の悪い真似はしたくないから。今宵彼が楽園を味わった締め括り、きっとあのオアシスにて頂戴しようかななんて謀略を巡らせながら解き放たれた獣を見送る。今は猛獣ではなく仔犬のように見える姿を微笑ましく眺めながら「 もちろん、心ゆくまでどうぞ。ここにいるのは死神だけ、誰も君を追放したりしないよ 」禁断の果実と呼ばれるに相応しく見る者を誘惑する熟れた赤色は、味も何も感じないと理解しているのに怪物の興味すら惹いてしまうほど。ゆったりとした足取りで彼に近付きながらじっと彼の一挙手一投足を見守って)
***
やあ、連絡どうもありがとう。今から気になって仕方がないから、きっと何度も宝箱の中を覗いてしまうだろうな。ああでも、…ふふ、急がず無理なく、ゆっくりと紡いで。今夜は引き続き、僕と楽園を楽しもうね。
>ハイネ( >1427 )
先ずは今日の花のお礼から、だね。
( 向けられる眼差しが何処となく楽しげに見えるのは気の所為だけでは無いのだろう。ちらりと視線を向けるのは彼が室内に入って来た際に置かれた鉢植え。それも枯らさないように世話をして、それからそれから…。日々の生活の中でやるべき事が増えれば、それだけ一人で鬱々とする時間も減るはず。返答には緩い笑みを浮かべ 「 飽きさせるつもりは無いから 」 ぽつり小さな声で紡ぐのは何度も聞いた一言。先日首筋に刻まれた時よりも強い痛みに僅かばかり顔を顰めるものの、自ら強請った事のために痛みに対する抗議の声を上げる事はなく。濃く深く刻み込まれたそれに、まるでうっとりとするかのような視線を送っていれば唇を掠めるように触れる柔い感触に間近に見える金の双眸を見詰め 「 うん、ありがとう 」 左手で手首に刻まれたそれをするりと撫でてから、口元は緩い弧を描くように口角を持ち上げ再度彼の首元へと緩く腕を回して抱き付くように。目の高さの位置的に普段とは異なり見下ろすような形で視線を交える状況が珍しくクスクスと小さな笑い声を漏らし 「 ハイネが俺のこと見上げてるの珍しいね 」 回していた腕をゆっくりとした動作で引き抜き、冷たい頬へと添えまじまじと見詰め 「 ねえ、ハイネは俺のことで知りたい事とか無いの? 」 未だ離れたく無いがために紡ぎ出した疑問。ゆるり首を傾げて )
>クォーヴ ( >>1428 )
( 養母と自分に対する賛辞への応えは曖昧な首肯に留めた。彼女のことについて、できればまだ何も考えたくなかったからである。起こってしまったことはどうしようもなくて、どんなに嫌だと思っても時間は残酷に針を進める。僕は母が亡くなってしまったことと同じくらい、母を殺/してしまえる人がいることそのものが苦しかった。続く彼のからかいには未だ信じられないというような顔をして、「……まさか。夢を見てるみたい」と素直な感情を伝える。ここが元いた場所とは別の世界であることをいよいよ実感し始めて、脳のキャパシティがいっぱいになる前に深く考えることをやめた。考えたところで意味がないだろうと思ったので。──ふわり。突如として自分の半身を覆った煙のような何かに驚き肩が跳ねる。それが気遣いの仕草であろうことに気付いたのは数コンマあとのことで、彼が口にした不思議な音への反応に少しのラグが生じた。「僕らに呼ばれる為だけのもの……」噛み砕くように呟いて、僕が決して立ち入れない領域の話なのだろうと理解する。寂しさに似た何かを覚えつつ、「そう。教えてくれてありがとう」と律儀にお礼を告げた。彼が自身を"怪物"と称したことも、今は考えないことにする。
ひとりでに開かれた扉の奥に広がる途方もない規模の食堂を通り過ぎて、彼に案内された厨房の一角にある戸棚の前へ立つ。生肉と野菜が同じ場所に並んでいてぎょっとするが、その中にあったラム肉に見えるものを手にとると不自然にひんやりとしており、これも魔法の仕業かと自分を納得させた。そういう不思議な力を操る彼は人間の食べ物を口にしないそうなので、僕の手料理はいらないし、案内を終えたらもうここに用はないことになる。部屋からここまでの道のりを一人で戻ることへの恐怖から「……クォーヴ、もう行っちゃう?ここにあるもの、僕が勝手に使って大丈夫?」と彼を引き止めるような台詞にそれらしい質問を添えて。使っていいから連れて来られたのだろうが、許可をもらう前に手を付けるのは気が引けてしまう整然さだった。補充されているということは使う人がいるのだろうと思ったことも嘘ではないので、不安そうな顔で彼の反応をうかがって。 )
>クォーヴ(>1429)
(特別だと、素敵だと、穏やかに贈られる彼の言葉に頬が弛む。ちゃんと熱量を持っている音だと肌身に感じるからこそ、それは尚更に。「うん、じゃあ約束ね。」己から渡す想い出を軽やかに契ったその後の、甘い香りに満ちた楽園の中。「ふふ、それなら沢山知恵を付けちゃおうかな。」得られた許可にまた満面と笑い、触れていた赤い果実をぷつりと手の内に落とす。それを二つ、三つと繰り返して、通り道の葡萄とオレンジも一つずつ、両手一杯に彼是抱えて向かう先は奥に見えていた泉。その縁に立って水面を爪先で揺らせば、何処までも透明なそれの波紋と共に心地よい温度が伝わって、「冷たいねぇ、」ご機嫌にくすくす笑いを零したその次、ぱしゃんと微かな飛沫を散らして足を浸し其処に座り込む。「クォーヴ、早くおいでぇ。」腕の果物達は膝の上に、空けた手でまた林檎だけを手に取りながら、振り返った笑顔でもう一方の手を肩ごと大きく振って催促を。しかしながら、彼が来るまで甘い匂いの誘惑を堪える事は出来なくて。「……ちょっとだけ、」見下ろした手の中、熟れた林檎の肌を上着の袖でごしごし磨き――遠慮無しの大きな一口で齧り付く。頬が膨らむ程に口腔に満たしたそれをゆっくり咀嚼していけば、匂い以上の味と果汁に目を見開いて、それからうっとり酔いしれるように眦を細く蕩かしていく。何度かに分けて嚥下したその余韻にも嬉しげにゆらゆら身体を揺らし、「……こんなに甘いの初めて。なんだかお菓子みたいだねぇ。」大層ご満悦と呟く声を浮かばせた後、欠けた果実から溢れる雫さえ舌先で舐め取りながら、それを夢中と頬張っていく。)
>グレン(>>1430)
フフ、貴方が悩んで決めたものならば何でも尊い贈り物ですよ
(どちらかというとネガティブな本質を持つ彼はあれこれ思い悩む性分という印象があり、しかし望まぬ内に敷かれたレールを歩まされた半生が故に自ら選び取り判断するという力は養いきれていないのだと評価しているため、そんな彼が一生懸命に自分で悩み決めたものならその過程にこそ価値があるのだと余計なプレッシャーを取り除く狙いで目元を穏やかに緩め「 ええ、是非ともその意気で長ぁく愛でさせていただきたいものです 」必要以上にシリアスにならない程度に、だが本音を表しながら冷たい指の腹にて形の整った鼻先にちょこんと触れて「 刮目なさい、付き合いの長い屋敷の連中でもそうそう見ることの叶わない景色ですから 」天高く聳える種族への誇りは多種多様な住人たちの中でも抜群だと自負があるため見下げる事はあっても見上げる事などしない。甘え上手か甘え下手かわからない彼に少なからず絆された結果、稀有な姿を見せているのだと特別感を醸して「 ……貴方から見た俺の魅力…でしょうか 」結果的に彼の事でなく自分の事にフォーカスしてしまうのは笑ってしまう程の自尊心の高さ故か。数秒黙して悩んでから捻り出した問という所にも無自覚にその片鱗が現れていて)
>秋天(>>1431)
(彼の育ての親を取り巻く話題にはどうやら複雑な心情や事情が絡んでいるらしいと歯切れの悪い反応から察してそれ以上触れる事はなく、否、彼の心を揺さぶる重要な因子が見つかっただけで収穫という表現の方がこの場合適切だろうか。魔法に対する飾らない所感は微笑ましさを誘うもので「 これからきっと、色んな不思議なものを見られるよ。君が望むなら僕が見せてあげる 」黒薔薇の屋敷が如何に人知を超えたもので満ちているか。その中には彼を欺き喰らわんとする恐ろしい未だ見ぬ怪物も混在しているが、恰も綺麗で楽しいものばかりだと前向きな印象を持たせる言い回しを選ぶのは徒に彼に不安を与えたくないから「 お安い御用だよ。他にも聞きたい事が浮かんだら何でも言ってね 」必ずしも獲物が知る必要のないことだらけのお屋敷でも、彼が知るべき事はまだまだある。その道標として自分を使っていいとばかりに情報の開示を惜しまない姿勢を見せるのは、きっとまだ大人になりきれない彼の好奇心に期待を寄せているから「 ううん、チウを部屋に送り届けるまで一緒にいさせて。食材なんかは好きに使って構わないよ、あの子たちにお礼を忘れずにね 」自ら希うような言い方を選ぶことで自室以外で彼を一人にさせる気はないのだと示唆する。いずれにしても帰り道は今来た道とはまるで異なるルートを辿らねばならず、人の身が運だけで正解の道筋を辿ろうとするならば宝くじで目も眩むような大金を連続で当てる方が簡単だろう。せっせと物資を運搬する使い魔たちをちろと一瞥して微笑んでから、自身は少し引いた場所で彼が調理を始めるのを見守って)
>ニール(>>1432)
(どれだけ紳士然と振る舞っていても、上質であろう食材のテイスティングが待っていると決まってしまえば肚の底から沸き上がってくる獰猛な何かを感じざるを得ず、しかしそれをおくびにも出さないのは普段の穏やかさもまた死神の嘘偽りない気性であるから。きっとそれに救われた瞬間がいくつもあるのだろうな、なんて取り留めのない事を考えている内に彼の抱える果実はみるみると増えていき「 ふふ、僕も持とうか? 」と思わず声を掛けてしまうほど。何だか彼には水辺がよく似合う気がすると感じるのは、内に飼う獣や蛇にとって必要不可欠な場所だからだろうか「 今行くよ、お姫様 」急ぐでもなく焦らすでもないあくまでも優雅な応答はその歩調にも表れて、黒煙の下に隠れた浅く履くタイプのスエード調のレースアップローファーを脱げば彼の右隣に腰を下ろして片方の膝を立てもう片方の足先を控えめに泉に浸し「 何だか新鮮だなあ 」きっと彼に誘ってもらわなければ態々取らなかった行動に楽しそうに柔らかく微笑みを深め、そして隣を見遣り「 ニールは美味しそうに食べるんだね。僕まで甘く感じられそう 」ここに連れて来た甲斐があったと疑いようもなく思わせてくれる食べっぷりに嬉々とした情動は声色にも滲み出て。きっと林檎も彼に食べてもらえて本懐だろう、そんな風に感じさせる表情や行動は他でもない怪物の食欲を静かに、確かにそそるもの。食事中の獣に手を出すほど愚かではなく、美味そうに果実を貪る姿を只々にこにこと眺め「 ほんとに、美味しそう 」心の底から甘やかに呟いたそれは果たして林檎に対しての感想か、或いは。)
>ハイネ( >1433 )
……ふふ、そう言ってくれると安心する。
( あれこれ考え過ぎてしまう嫌いのある己の性質を理解してくれているからだろうか。耳に届いた言葉にぱちくりと大きく瞳を瞬かせるも直ぐに笑みを浮かべて。優柔不断を通り越して何かを決めるという行為自体に苦手意識がある為にぐるぐると思考の渦に囚われる未来からはきっと逃れられないのだろうが、彼の言葉一つで多少なりとも心が軽くなるのだから不思議なもので。鼻先に触れる感触にクスクスと込み上げるような小さな笑い声を隠す事はせずに 「 期待しててよ 」 なんて緩い口調で紡ぎ出し。 「 じゃあ、凄い珍しい光景だ 」 優越感の滲む笑みは彼の醸し出す特別感を匂わせる言葉によるもの。きっと彼の手の中なのだろうが、そんな事を考えられるほどの頭なんてあるはずも無く。 「 俺から見たハイネの魅力…? 」 首の傾きをやや深めるのは言葉として伝えるのが難しいため。時間にして数十秒程の沈黙の後 「 俺を真っ直ぐに見て、愛して、気長に付き合ってくれるところ…かな 」 言葉を選ぶようにゆっくりと紡ぎ出すのは改めて告げるにはどう伝えれば良いのかと悩みながらが故のこと。一見すれば交わっていると錯覚する程度の範疇で僅かに逸らしていた視線を再度金の双眸へと戻し 「 それと……ハイネと居る時間が一番安心出来る 」 今迄の生活は期待に応えられなければ一人残されるばかりであった為に、条件のある彼との関係は心地が良い。真正面から己に注がれるその視線を捉えて 「 俺のこと独りぼっちにしないでしょ? 」 暗くなり過ぎないように笑顔であくまで軽く世間話程度の口調で紡ぎ出したそれの中に含ませた共に過ごしてくれる、その意味合いだけで無く捨てるくらいならば喰べてくれる、言外に含んだその意味合いは彼に伝わっているだろうか )
>グレン(>>1436)
良かったですねえ、俺が優しい怪物で
(冗談めかすように恩着せがましく言いながら大袈裟に肩を竦めてみせて、きっとまだ頬に触れているであろう彼の片手に自らの手を重ねて柔く握るようにしながらきちんとソファーに腰掛ける姿勢へと戻り「 おやおや、当然の事ばかりですね。俺は貴方を隅々まで愛でる為に手元に囲っているのですから、よおく見て愛するのは所有者の常ですよ 」回答は自身のパーソナルな部分を評価しているというよりかは彼へ接する態度そのものが好ましく思われていると解釈できるもので、やや拍子抜けした調子でふんと鼻を鳴らして得意げに蒐集者としての有り様を語り「 品が上質、というのもありますがね 」だから特別目にかけてやっているのだ、と掴んだ手の甲に口付けて。その体勢のまま視線を交わらせ、彼の言葉が終わっても沈黙を守ったまま僅かに口を開いたかと思えば指輪の鎮座する右隣の指先を浅く咥えて指の腹に舌を這わせて微笑み「 それは俺の気分次第れすよ 」口に体温を含んだままゆえ最後には少し舌足らずな音が交じる。飽いてしまうあまり食べる気も起きなくなるかもしれないでしょう?――そんな意地悪を意味深長な微笑に含ませ指を解放すれば今度は彼をソファーへ押し倒すように肩を淡く押さえて体重を掛け「 人間の命など短いもの。先の事をあれこれ考えるよりも俺に愛でられている今を見なさい 」逃さない、そう最初の夜に告げた言葉通りに例え今の彼が全力で抵抗し身を捩ったとしても人知を超えた不可視の力で組み敷いてしまうつもりで噛み付くように唇を奪おう。頭に酸素が回らなくなって嫌なことも心配事も何も考えられなくなってしまえばいい、そんな全てを押し流す荒々しさを持って舌を絡めながらしっかりと彼をホールドするように後頭部へ手を滑り込ませて)
>新規住人(ラミア♀)を追加しました!
【https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/monsters】
>ご新規様・常連様・お試しの方等々、演者様を募集中です[ 今夜の案内役:ユギン ]
▼ 提供一覧 ▼
【https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/monsters】
▼ PF作成はこちら ▼
【https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/welcome】
▼ 世界観・ルール ▼
【https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/world】
▼ 大切な" お食事 "のメニュー ▼
◆ルシアン(>>19)
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◆レオ(>>147)
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◇ミネルヴァ(>>489)
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▼ 現在のブックマーク(最長1ヶ月間保持) ▼
●ニール × クォーヴ ⇒ 【 >>1435 】
●グレン × ハイネ ⇒ 【 >>1437 】
●秋天 × クォーヴ ⇒ 【 >>1434 】 ※初回、仮登録
▼ 日常イベント ▼
【https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/events】
▼ 宝箱(https://www.saychat.jp/bbs/thread/646097/) ▼
>クォーヴ ( >>1434 )
( 善意で煮詰めた優しい言葉が耳をくすぐる。魔法使いの友人ができたのは初めての経験で、それに釣り合う何かを持たない僕はただ無防備なはにかみを向け信頼を示した。裏切り者め。唯一の家族を亡くしたその日にもう何度も笑っている!そう自身を責め立てる内なる声は聞こえないふりをして、繋いだ手をもう一度しっかり握り直す。こんなふうに誰かと手を繋ぐのはいつぶりだろう。現実逃避と刷り込み的依存。自分がこんなに弱いって、僕は全然知らなかった。
"一緒にいさせて"の言葉にほっと胸を撫で下ろし、彼が視線で示した方へと同じように目を向ける。小さな生き物たちが働く姿に息をのみ、脳裏をよぎったのはあの言葉。"これからきっと、いろんな不思議なものを見られるよ"。こんな光景が当たり前になるのかと年甲斐もなく胸が弾んで「大事に使わせてもらいます。ありがとう」彼らに心からの礼を告げるとこちらを見守る優しい魔法使いに今一度向き直る。「クォーヴもありがとう。美味しいものが作れそう」改めて感謝を伝えると、手にしていたラムを台所に置きシンクで丁寧に手を洗って。「そういえば、クォーヴは何を食べるの?」トマト、セロリ、玉ねぎなどの野菜を戸棚からおろしつつ、そんな質問を投げかける。肉に下味をつけて、トマトはピューレ状に、他の野菜は細かく刻んで……シチューの効率的な作り方を脳内で描きつつ問いかけた一つの世間話。彼は人間の食べ物からは栄養を得ないと言っていたので、一体何を美味しいと感じるのだろう。人間の食べ物を美味しいと感じる人間の僕はそんなふうに平和**していて、忙しなく手を動かしながら蒼い目の怪物の返答を待って。 )
(/ああ、僕のミスだ……。結構気を付けてたんだけど伏せられちゃった。文脈でわかるかもしれないけど一応補足。 >>1439 の最後の方にある平和○○は平和ボ/ケって書きたかったんだ。こんなことでスペースいただいちゃってごめん。もちろん返事には及ばないよ。
せっかくの機会だから伝えるけど、僕クォーヴと話せて毎日楽しいんだ。出会ったばかりだけど本当に感謝してる。あなたの暇つぶしにでもなれてたら嬉しいよ)
>秋天(>>1439)
(魔の言語は人の身に解せよう筈がないものの、反対はそうではないらしく忙しなく働く内の一匹のコウモリの姿をした使い魔がパタパタと羽撃いて空中に留まりながら彼の感謝の意に応えるようにただ一声キィと鳴いて。お返事が出来て偉いね、そう言わんばかりの包容力ある微笑みにて使い魔を見つめていた怪物は名を呼ばれればすぐに彼へと視線を向け「 “黒薔薇のお屋敷”ではヒトが料理をするところなんてなかなかお目にかかれないからね。僕も楽しませてもらっているんだから、お礼には及ばないよ 」あちこちに点在する窓、その枠を埋め尽くさんばかりに咲き誇る夥しいまでの黒薔薇。それこそがこの屋敷の、ひいては怪物たちの支配者の偶像でありこれまで此処で命を散らせた人間たちの成れ果ての姿であるとは攫われてきたばかりの少年に知る由もなく、自身からすればそれが如何に新鮮で上質とて全く食欲のそそられない食材たちを手際よく下処理してゆく工程を興味深そうに観察して「 ふふ。何を食べると思う? 」回答を勿体ぶるような真似をしたのはそれが不都合な質問だからでもどう応えるべきか謀略を巡らせているわけでもなく、ただ世間話を一問一答で終わらせない長く続く会話にするための他意なきもの。その証拠に人当たりのよい笑みはそのままに、一歩歩み出て彼の隣へと並び立てば雲を掴むようなクイズになってしまった自覚はあるため彼が困ってしまう前に此方から二の句をゆったりと継ごう「 なんて、何かヒントが必要かな。例えば僕の正体…とか? 」進んで自分の事を話したがる性分ではなく、寧ろその正反対に相手の事を知りたいと常々願う怪物は、もし彼が自ら知りたがるのであれば種族を明かそうと心に決めてあくまでも相手の意志を尊重するためにそこで言葉を止めて)
***
ふふ、ご丁寧に補足をありがとう。こういう事はお互い様だから、なんにも気にしないでね。
僕もチウと話せるのが楽しいよ、いつも素敵なお返事をありがとう。これからも君に楽しんでもらえるお屋敷でありますように。…それじゃあまた本編で、たくさん言葉を交わそうね。
>ハイネ( >1437 )
ふふ、不満?
( 呆れたかの様子に目を細めながらも楽しげな口調を崩さないのは本当に彼が怒ったりしている訳では無いと分かっているから。手の甲に触れる柔らかい感触に口角を持ち上げ 「 そりゃ、誰かさんが目を掛けてくれてるからね 」 冗談めかしたようなそれは十分に大切にされていると理解をしている為。事実彼自身が言いつけているのか使い魔自身が主人のお気に入りだと理解をしているのか、この部屋に出入りし世話を焼く頻度も恐らく彼のところのであろう蝶が大半を占めており。じいとその顔を見つめていれば口に含まれた指に舌の這う擽ったさに軽く身を捩って。 「 ハイネはそんな事しないでしょ? 」 きょとんとした表情にて告げるそんな妙な自信は実際に喰われかけた経験によるもの。彼が約束を違える事はない、そう信じているが為にゆるり首を傾げるだけに留めて。肩を押す力を拒む事なく押し倒される背を受け止めたのはソファのクッション。元々柔らかな場所であった為か、勢い良く押された訳では無いからか背に痛みを感じる事はなく、上に乗る彼を見詰めていれば呼気を奪う勢いで唇が重ねられ。いくら慣れていると言っても長く深く口付けられていれば酸素量が足りなくなってくるのは避けられない事で、段々と頭の中に霞が掛かったようにぼうっとしだして。それでも口内で動く舌に応える事は忘れず、彼の首の後ろで腕を交差させるようにして自分からも身体を寄せるのは逃げるつもりが無い事の意思表示。唇が離れればとろり蕩けた目元や締まりなく緩んだ表情が見て取れるはずで )
>グレン(>>1442)
(こちらの意地悪や揺さぶりも何処吹く風という様子を見て、随分仕込まれてきたなと満足気に感じてしまうのはそれだけ時間をかけ心を砕いて彼を如何に特別扱いしているかを言葉と行動で伝えてきた自負があるため。自己肯定感の高いようで低い彼にここまで揺るぎない信頼を築かせた事に機嫌を良くした心情はもっと此方へと彼の後頭部を手前に引き寄せる力が強まった事に表れて。そろそろ人の身には危険かと一度唇を離して顔を見つめれば、すっかり受け入れされるがままの惚けた色にどこか獣じみた鋭い笑みを浮かべ「 俺以外の誰にも、そんな顔を見せてはいけませんよ 」強く訴えかける口調はしかし途方もない甘やかさに満ちた響きを持ち、覆い被さるようにしてぎゅっと抱擁しながら耳元へ口を寄せて「 堪え性のない者なら、きっと貴方を襲ってしまう 」無論怪物から見て人間は獲物であり、ダークエルフにとっては獲物以前に品物。ゆえにそれは性愛の類というよりかはキュートアグレッションから来る衝動に近く、襲うの意味合いも婉曲表現ではなく物理的に傷害を受ける可能性を示唆して「 返事は? 」詰るような音ではなく決まり切った回答を求める高位者の優越をたっぷりと滲ませ、少しだけ身体を離して彼の双眸を苛烈なまでに真っ直ぐと見つめながら顎を淡く掴んで)
>ハイネ( >1443 )
( 耳元で聞こえる声音と含まれる吐息が擽ったく、僅かに身動ぐものの本気で離れたいとは思っていない為か抱き締められた腕の中で然程動く事はなく。屋敷に拐かされる前元いた世界であれば婉曲的な言葉として捉える事になったのだろうが、きっとそれは直接的な被害を受ける意なのだろう事は想像に難く無く。真っ直ぐにこちらを見据える瞳を見詰め返す瞳は先程までの熱が抜け切らない為か何処か緩く 「 …うん、見せるつもりは無いけど 」 歯切れの悪さが垣間見えるだろうか。もやりと心中に浮かぶものを隠したとて彼に見透かされるだろう事は経験済み。であれば指摘される前に出してしまうのが吉かと判断すれば 「 ……ハイネは俺が誰にでも尻尾振ると思ってるの? 」 不機嫌さを隠そうともせずに拗ねたように唇を尖らせて。幼少期の経験の事を出されればぐうの音も出ないものの、彼と出会ってからは特段他者に愛想を振り撒いた記憶も無い。ふいと視線を背け 「 ハイネにしかこんな事してないのに 」 ぽそり呟くように零して )
>グレン(>>1444)
おや。俺の独占欲を浴びて悦ぶと思いましたが
(いつか彼の幼少期の忌々しい記憶を友人に喰わせてしまおうと決意したあの夜、彼の腿へ傷をつける発端となったたった一人のコレクションに注ぐには持て余してしまいそうな身を灼かんばかりの執着心と独占欲。あの時の彼の恍惚とした様子が脳裏に去来していたが為にそれとは真反対の不愉快さがありありと浮き出ている事に意外そうにあっけらかんと告げる。もし、彼が招き入れた怪物のうちの誰かが自身と同等にこの類稀な美丈夫を気に入ってしまったら――相手は人間ではなく魔力を行使する存在ともなれば数秒の思案の先に僅かに表情を曇らせ「 ……しかし、なかなか手強い者ばかりですからね 」彼が欲しがる言葉をふんだんに浴びせて、他のコレクションの世話に忙しい自分なぞより多くの時間を彼に投じて沢山の言葉と夜を積み重ねていくのだとしたら、彼の中の天秤は…そんな仮定を思い浮かべてハッとしたように目を瞠ったのは、例え相手がどの怪物であっても、どんなに魅力的な誘惑にも“僕はハイネのものだから”と颯爽と、或いは妖艶に凛と言い放つ彼の姿しか想像できなかったから。ややばつの悪そうな雰囲気を醸しながら再度上からむぎゅうと彼を抱き締めて「 …グレンにではなく、俺以外の住人達への不信――という表現が今回の場合適切でしたね 」素直に撤回をするのは他の誰でもない自分自身で導き出した答えにこの上なく納得しているから。ああ可愛い貴方、と彼の頭に自分のそれを擦り寄せて「 フフ。俺は少々貴方を甘く見ていたようです 」先程鳥籠の矜持を持つ品物たれと偉そうに講釈を垂れたばかりなのに彼の一途さを見誤るとは、と。自嘲するようにクスクスと喉を震わせて)
>クォーヴ(>1435)
(たっぷりの果物に冷たい泉、座る其処はふかふかの芝生。考えられる限りの恵みを詰めたような居心地の中、頬張る林檎は何処を齧っても甘く、幾ら口に放っても飽きが来ない。その何度目かの咀嚼中、隣に並んだ姿へと目は向かい、「ふふ、確かにちょっと意外。」静穏と優雅を形にした彼が、片足とはいえ水に浸かる姿は意想の外と、その光景に口から笑う声が零れて。そのまま合った視線はやはりきらきら輝き、「だって、ホントに甘くて美味しいんだもの。」既に半分は欠けたその赤い実を掲げてにんまり満足を満面に。それでも表し足りない高揚は、ぱしゃぱしゃと水の内で跳ね回る爪先に。それからまた齧り付いて味わう最中、届いたその呟きへ一度ゆらり首を傾げる。しかし直ぐには何も言わず――やっと彼の方を見たのは、林檎を丸々一つ、固い蔕から芯まで全て腹に納め終わって、指先の果汁さえ舐め取ってから。「……クォーヴも食べちゃえば?」口の端を悪戯に吊り上げ、誘いを軽やかに投じる。そうして手にした二つ目の林檎を泉に浸して両手ごと灌ぎながら、「貴方が言ったんでしょ。この楽園には貴方とオレちゃん、二人だけ。追放するものなんて何処にも居ないって。」実を手にする前に得た彼の言葉を引っ張って、滔々と滑らかに赦しを謳った後、「…ならさ、」雫の滴る禁断の果実を彼の前へ。それを持つ手がご丁寧に甲を晒しているのは、わざとか否か。もう一方の五指は、しゅるり彼の爪へと絡み纏わりつく。「……一緒に罪を犯しちゃおうよ。」誰に聞かれる訳でもない、けれど密やかに吐息を籠めた誘惑。その紅の瞳にも違いは無く、蜜のような艶熱を籠めて水色をとろりと見詰め、蛇は彼を唆す。)
>クォーヴ ( >>1441 )
( まるで僕の声に応えるように鳴いてみせた1匹のコウモリに目を見開く。言ってることがわかったの?そんな当然の疑問が浮かび上がるも、この屋敷の生き物は人語くらい解してもおかしくないかとすぐに思い直して。──黒薔薇のお屋敷。その言葉に顔を上げると、確かにこの屋敷の窓がどれも黒い花と不気味な蔦に覆い隠されてることに今頃気付いて眉をひそめる。中の者を外へ出さず、外の者を中へ入れないために存在しているような薔薇の格子。僕の目にはその重厚な閉塞感がこの屋敷を強く束縛しているように映った。「確かに黒薔薇のお屋敷だ。外から見てみたいな。だめ?」そんなふうにおねだりしつつ、刻んだ野菜を火にかける。同時進行で煮込んでいたコンソメスープの黄金色が食欲をそそり、久々の自炊の割にはクオリティの高い夕飯にありつけそうだと笑みが溢れた。続く彼の言葉に首を傾げると「クォーヴの正体?魔法使いでしょ……?」さも当然のように問い返し、それがなんなのかと言いたげな顔で視線を上げる。クォーヴはいつの間にか僕の隣に立っていて、それに気付なかったことに小さく驚いた。いやに静かな空間でシチューがぽこぽこと音を立て、厨房に優しい香りがあふれ出す。団欒の匂いは母と囲んだ食卓の記憶を無神経に呼び起こし、取り戻せないその風景に手が止まった。全部忘れてしまえたら楽なのに。温かな思い出を不自然な咳払いで振り切りつつ、できもしないことを考える。鈍った手付きを誤魔化すように調理を再開すると、「違うの?」と改めて質問を重ねて。 )
>ハイネ( >1445 )
心外だな。俺にだって独占欲と不信感の見分けくらいはつくよ。
( むすりとした表情はそのままに、まるで予想外だとでも言いたげな様子の彼にじとりとした視線を向ける。以前クローゼットに大事に仕舞ってある衣類を彼が持って来てくれた夜のように、純粋な独占欲や嫉妬心の類であれば悦びを隠す事なく昇華させていたのだろうが今宵の其れは如何にも不純物質が織り混ざっている気がしてならず。元より愛情に飢えているとは言っても不特定多数の薄っぺらなものよりただ一人から注がれる重たいものの方が心地が良い。それに加えて例え誰かから彼と同じだけの物を与えられたとて、その誰かと彼を比較した後にハイネだったら…そんな風に考えてしまう未来が予想出来てしまう程に絆されてしまっているのだから。己を信用していないのか、それとも住人のことか。紡ぎ出される言葉に不満感は募っていくも、覆い被さるように抱き締められれば数回瞬いて 「 俺はハイネのもの、でしょ? 」 身体を包み込むこの冷たい体温を心地良いと感じるのも、閉鎖的な空間に二人で居て安心をするのも、姿が見えなくて不安感に押し潰されそうなのも、その全て相手が彼だからなんて事を肉声として紡ぎ出す事はせずに身を擦り寄せ 「 ハイネが手放すまで離れないって、さっき誓ったばっかだと思うんだけど 」 抱き竦める体温に不満気な顔は次第に緩和されていくものの、どうせ見えていないのだからと声にはたっぷりと不満の色を乗せて。もぞりと動き額を合わせるようにして視線を交え 「 それとも、もっと強く誓わないと俺が誰かに取られるかもって不安? 」 例えばハイネが手放す前に誰かの物になったら俺の全部をあげる、とか。普段ならあまり浮かべる事の無い不敵さの滲んだような笑みは多少なりとも己の本質を見違えた彼への意地悪も含めて。一、二分もすれば “ 冗談 ” なんて言葉と共に普段通りの様子へと戻るだろうが果たして )
>ニール(>>1446)
折角二人で来てるのに、水遊びするのが片方だけなんて寂しいでしょう?
(彼が感激するほど泉の水を冷たいと感じられないのは、文字通り死を顕現したような病的に白い足がそもそも低温だからなのだろう。人間と死神、埋めようのない種族の差異があるために同じ感覚を共有できない事に今更寂しさを感じはしないが、同じ体験を出来る機会にあってそれを放棄するのは寂しい。透き通った水を遊ばせる彼の爪先を穏やかな眼差しで眺めながら緩やかに流れる二人一緒の時間を味わうさなか、投じられた確かな一石に一瞬時が止まったような錯覚を覚えて「 ……ふふ。僕が食べたいのは―――― 」一度その瑞々しくも妖しい赤色の果実を受け取って、しかし手中のそれはまるで存在ごとどこかに飛ばされてしまうかのように頂点のヘタから下へ下へと消し去られる。それはまるで神が禁忌を冒した者を彼方へ追放するような所作、空っぽになった手で差し出されていた彼の手を捕まえて自らの口元にゆったりと引き寄せて「 君が僕だけのエデンの林檎ならいいのに 」真っ直ぐに目を見て、きっと様々な住人が取り合うであろう美味しそうな獲物に願っても仕様もない望みを穏やかに呟く。本来ならば捕食者が誘惑し獲物を追い詰める筈だが、正反対の倒錯感にざわりと黒煙が騒ぎ始める。近くの枝に留まり穏やかに囀っていた小鳥たちが複数の小さな羽音を立てて逃げるように飛び去ったのは、牙を隠していた捕食者が鎌首を擡げたからなのだろうか「 ごめんね、痛くはしてあげられない 」牙と爪で肉を切り裂くでも、皮膚を突き破り血を啜るでもなく、ただ手の甲に口付けて記憶を奪う際に痛覚は一切刺激されない。その条件が奏功する相手ばかりではないのだと、痛みを存在証明の一つに数える彼という奇特な獲物に出会って初めて知ったからこそ謝意を告げて――痛みの代わりに必ず流涙を促す死神の唇を彼の手の甲にそっと触れさせて。目線はじっと彼に合わせたまま、指定された記憶がきちんと彼の脳と心に存在するものだったからこそ口を伝って流れ込んでくる不可視のそれの味わいを噛み締めるように瞼を下ろして、ほんの十秒にも満たない間に緩やかに手の甲へ寄せていた顔を離し「 ああ…。いけない、もっとたくさん欲しくなってしまうね 」そのくらい美味しかったんだよ、そんな風に名残惜しそうな響きを持たせてふと彼に微笑みかけて)
***
矢継ぎ早にごめんね。宝箱に仕舞ってくれた十三番目の子との追いかけっこの記憶、大事に読ませてもらったよ。その報告だけ伝えておくね、僕が初めて食べる君の記憶に丁寧に味付けをしてくれて本当にありがとう。こちらにはお返事不要だよ、これからもよろしくね。
>秋天(>>1447)
折角お屋敷の外に出るなら、また今度ピクニックでもしようか
(黒薔薇による不気味な装飾を目にしてもそれを忌避するでなくむしろ鑑賞しようとするおねだりには緩やかに微笑を淡く深めて今夜ではないいつかに繋がるかもしれない約束の提案を。もし色良い返事が貰えたのならば次に話題とすべきは行き先で、いくつかの候補を思い浮かべながら「 チウは薔薇が好き? 」そう問い掛けて見つめた横顔には自炊に満足げな笑みが認められて、可愛らしいと反射的に感じれば彼の視線の移動によって目が合い「 ふふ、ならこのお屋敷の住人はみんな魔法使いということになるね 」勿論個体によって魔法に対する得手不得手があるものの、人間とは異なる魔の世界に生きる種族ゆえその力は大変身近なもの。そんなやんわりとした表現を彼より重ねられた質問に対する回答の代わりとして「 死神、って知ってるかな? 」人間からしてみれば空想世界の産物たる種族。このタイミングでそれを話題に挙げたことで、賢い彼ならば大凡の察しはついてしまうだろうが寧ろそれを期待するようにあくまでも隠すべきことではないといった調子で「 ふふ、暖かい香りがする 」自らの正体なぞ世間話の一角に過ぎず、だからこそ彼の作り出している料理の香りにも触れる。美味しそうな香り、と表現しないのは言わずもがな生きるための糧がふたりの間で異なるから)
>グレン(>>1448)
(強敵たる他の怪物たちが絡む不愉快な仮定、その想像の先にきっと彼が言い放つだろう台詞を今ここで肉声として得てしまえば、何もかも杞憂だったと喉奥から低い笑いが零れ続けて。依然として彼の声色には不服がありありと乗せられているものの、特にそれが気にかからないのは自身が納得した今この応酬全てが茶番であると感じているから「 フフ、いいえ必要ありませんよ 」それ以上は無用と真正面から彼のそれに勝るとも劣らない無欠たる自信に溢れた笑みを返してから席を立ち「 少々長居をし過ぎました。俺を待っている次の品のところに行かなくては 」自身の髪、服の襟、今し方の触れ合いで乱れた身嗜みを次々にてきぱき整え、次の予定という他愛もない事実が彼にとっては心乱す意地悪と成りうると知っているからこそ先程のお返しと目線を向けないまま敢えて口に出し「 それでは俺のグレン、また会う夜まで御機嫌よう 」四分の一ほど飲み残した紅茶の片付けは当然使い魔に任せ、特段彼から引き留められる事がなければそのまま部屋を後にするだろう。さあ矮小で可愛い俺のコレクション、離れている間この崇高なダークエルフの事ばかり考えて、考えて、眠れぬ夜を過ごせば良い――そうすれば次の夜はまた甘やかし甲斐もあろうというもの。どこまでも手前勝手に愉しみながら品物を愛でることだけを考えるコレクターは、背中越しにどんな笑みを浮かべていただろうか)
>ハイネ( >1451 )
( 自分以外のコレクションを匂わす発言に心が揺れるのはいつも通りなのだが、何処か凪いでいる部分もあるのは普段であれば見れないだろう彼の表情を今宵だけで多く見ることが出来たからか。身なりを整える彼の傍、ソファから起き上がりその様子をしっかりと視線で捉えつつ 「 なるべく早く会いに来てね 」 引き止める事はせずにあくまでも見送るスタンスなのは良い子でいよう、そんなリミッターを外しきれていない為か。扉が閉まり彼の姿が見えなくなるのを見届けてから、マグに半分程残る珈琲を飲み干して片付けを始めた蝶に 「 これもお願いして良いかな 」 なんて言葉を掛けてから立ち上がり向かうのは鉢植えの花が置かれた場所。本来ならば陽の光が当たる場所が良いのだろうが残念ながら夜が明けないこの屋敷では叶う訳のないもの。悩んだ末に背の高いテーブルを窓際へと運び、その上に飾るのは普通であればこんな場所に置くのだろうなんて思いから。伸び伸びと咲き誇るそれを見詰める表情は穏やかなもので。さて、次の逢瀬までに何かしらお礼の品を絞っておかなくては。けれど無い頭を必死に回転させるのは明日以降にしようか。珍しい彼の姿を見ることが出来たのだから今宵はよく眠れるはずだ、とばかりに軽く伸びをすればバスルームと消えて行くはずで )
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今夜はこの辺りかなって事で失礼するよ。
色々と我儘を聞いてもらえたし、珍しいハイネの顔も見られたし僕的には物凄く満足出来る夜だったよ。君も同じ気持ちだと嬉しいな、なんてね。
さて、次は前に話していた通りシャルロットかジョネル、キルステンと話してみたいんだけれど順番を今少し悩んでいてね。というのもハイネが持って来てくれた花のお礼の相談も含めてしたいって気持ちが出て来てしまって……きっとハイネの好みを知ってるのはシャルロットやジョネルなんだろうけど、キルステンも相談に乗って一緒に頭を悩ましてくれそうだし…。もし君の方でおすすめがあれば教えてくれると嬉しいな。
嗚呼、もちろん誰に対してであっても部屋に呼ぶための手紙はきちんと書いて送るつもりにしているからその辺りは考慮しなくて大丈夫だよ。とだけ付け加えておこうかな。
>クォーヴ ( >>1450 )
いいね。ボートとか乗りたいな、近くに池か湖があれば……
( ピクニックなんていつぶりだろう。魅力的なお誘いに破顔して、口からすらすらと要望が出る。彼からの問いかけにこくりと頷くと「植物全般好きだよ、見るのも育てるのもね。動物も好き。生き物が好きなんだと思う」と弾むようなテンポで答えて。続く彼の言葉にはぽかんとした表情を浮かべ、この屋敷には魔法を使える人がたくさんいるのかと驚愕する。その驚きを上回る非現実的な単語に手を止めると「死んだ人の、魂を狩る……」としどろもどろに"死神"のイメージを答えて。冷たい汗が背中を伝う。怖いことを聞かされる、と本能的に思ったが、聞きたくないとは思わなかった。繋いだ手の体温を思い出す。痩せた体躯に白い肌。違和感ならいくらでもあって、ただ僕が目を逸らしていただけのことだった。それを今になって咎められて、彼を優しい魔法使いだと思い込んでいた愚かな自分を滅多刺しにされたような心地がする。「クォーヴが……そうなの?」震える声でそう尋ねた。僕を見下ろす穏やかな両目を覗き込む。ああ、これがそうなのかと思った。この水色こそが死神の眼差しであるのかと。「……クォーヴはお腹空いてない?晩ご飯食べた?」やわらかな声色を変えない彼に合わせてこちらも努めて平然を保つ。止まっていた手を再度動かすとそんな質問を投げかけて。 )
>クォーヴ(>1449)
(受け取られた建前の赤い果実は、彼によって何処かへと追いやられる。それに驚くことも無く、眼前の捕食者に囚われるのを受け入れるように、ほんのりと握り返す力を指に籠める。我先と飛び去る小鳥の羽音を後ろに見詰め合う瞳が願う声、それには沈黙の下ゆぅらり首を傾けて、妖しさを窺わせる微笑みを作るのみ。「…いいよ、大丈夫。」苦痛も自己証明と喰らう己の為と、態々告げてくれた一言。思わずふっと喜ぶ吐息が零れて、そのまま眦を弛ませ緩やかにかぶりを振った後、淡い青の瞳へ、己に触れる死神の唇へ、一瞬とも逸れぬ深紅の眼差しが一心に注がれて――ふと、視界がぼんやり滲む。それを正さんとぱたり瞬きをすれば、目尻から輪郭を伝う温い雫の感触。「っ…、……?」自分に何が起きたのか、理解出来ない。ただ頭が勝手に何かを惜しむように、心が何かを吐き出したように、意思を無視してぽろぽろと落ちる涙。その困惑は表情を忘れた相貌と、言葉も声も作り損ねた口のぎこちない空振りに。戸惑うばかりの意識を連れ戻してくれたのは、彼の声。「……ふふ、そっかぁ。」ようやっと、顔は“いつもの笑み”を象って彼と向き合う。「…でも、今夜はこれだけね。」これ以上無い褒め言葉に頬を色付かせながら、しかし果たされた約束に違いは無しと、くすくす悪戯な勿体振りを投げ返したかと思えば、未だ繋いだままの彼の手を今度は己が引き、「次は、そう――」白い手の甲に顔を寄せ、冷たい肌をそろりと柔く食んだ濡れた唇。…それは紛れもなく、死神の捕食を真似る所作。「――真っ白な世界で貴方と踊る夜に、ね。」只の戯れか、それとも何かの意図を持ってか。その底を読ませぬ無邪気を描いた懐っこい仔猫の笑顔を向けて、次なる契りを彼へ持ちかける。)
>グレン(>>1452)
やあ、僕の――いいや、ダークエルフの仔羊くん。確かに今夜の彼は珍しかったね、きっとその一面を引き出したのは君の力だと思うな。素敵な夜をありがとうね。
次のお話だけれど、相談相手という主旨ではまずシャルロットは後回しになるかなあ。彼女は自分を好きだと言ってくれる獲物になら協力を惜しまないだろうけど、だからこそ自分よりもハイネの事を信頼している獲物の相談にはすっかり拗ねちゃって積極的に乗ってくれないと思うんだ。残るはジョネルかキルステン、ハイネの好みに沿うものを考慮したお返しを探したいならジョネル、基準をハイネの好みじゃなくて…何ていうのかな、独創的なものにしたいならキルステンかな。
もしこの情報で指名が決まったら、招待状を出してあげてくれるかい。ふふ、まだ見ぬ怪物との邂逅が楽しみだね。
>秋天(>>1453)
丁度、とても広くて紅くて綺麗な湖があるよ。水上でおやつを食べようか
(彼が乗り気であることは表情や言動からしっかりと伝わって、そのリクエストに応えられる事を喜ぶように死神もまたにっこりと目を緩やかな弧の形に垂らして微笑んで。湖の畔には手漕ぎボートがあった筈、それを使って澄んだ湖上でのピクニックを提案し「 そう、良かった。それじゃあ今度、薔薇庭園を案内したいな 」この屋敷で薔薇が嫌いとなれば大変気の毒な事だと懸念していたが、杞憂に終わった事にほっと安堵したようにまた未来への約束の種をひとつちゃっかりと忍ばせて。それから、動物が好きだと得た情報に応ずるように「 …狐、狼、蛇、ライオン、翼の生えた大きな蜥蜴。君が望むなら僕から紹介しておくよ。狐とライオンとは特に親しいから、きっと君にも良くしてくれるんじゃないかな 」動物、そう呼ばわっては憤慨する者も多少含まれているものの現時点では彼に分かりやすい表現を選びながら彼らもまた死神と同じこの屋敷に住まう“魔法使い”なのだと示唆して「 そう。よく知ってるね 」ステレオタイプなイメージは蓋しどう足掻いても否定しようのない内容。しかし不都合はないとばかりに変わらぬ微笑を凪がせて「 魂は、最期の最後。僕らが食べるのは、君の記憶だよ 」“クォーヴは何を食べるの?”数刻前の問い掛けに対する明確な回答を渡すことで自身が死神であると言外に告げる。この屋敷では珍しい部類に入る真っ黒な双眸を空恐ろしいほど害意のない穏やかな眼差しで見つめながら、途端に自身の空腹状態を気にする彼の可愛らしさに思わず“ あはは、 ”と珍しく控えめながらも口を開けて快活に笑って「 怖がらないで、チウ。僕はお腹いっぱいだよ 」安心を導くための言葉は、彼の知らぬ所で一人の人間が死神の腹を満たした事を意味する。しかしそれを隠す素振りもないのは自身にとってそれが日常生活の一場面に過ぎない事だから――そう、自分の命を明日に繋ぐためにラム肉を切り刻む彼と同じ)
>ニール(>>1454)
どんな記憶を僕にくれたか、思い出せる?
(優しげな微笑みのままに不可能だと分かっていながら問い掛けるのは、記憶を喰われるとはそういう事だと彼にはしっかりと理解しておいて欲しかったから。きっと記憶の棚を探ることすら出来ないだろう、獲物にとって死神に記憶を捧げるとは即ち最初からその記憶が存在しなかった事になるのと同義なのだから「 ありがとう、ニール 」だからこそ、甘美な糧を与えてくれた彼に心からの感謝を。言葉だけでなく行動でも伝えようとしてハグをするために身動いだ刹那、彼に手を引き寄せられてはぴたりと動きを止めてされるがままに深紅を見つめ「 次…? 」ざわり、またしても黒煙が質量を増して死神の背後に控える近衛兵のように膨れ上がる。それは主を守るための力ではなく、ただ獲物を捕えるための力。ああ、彼の唇が触れている箇所が燃えるように熱い「 次は、途中で止めてあげられないよ 」捕食者とは思えないほど静穏な微笑みは逆に空恐ろしい程の透明な凄みを内包する、もしそれを受け入れるならば彼にとっては死刑宣告であると同義。漆黒に囲まれたクリアブルーの奥、確かに渦巻くのはこれまで見せた事のない熱烈なまでに叫ぶような“君が欲しい”という純烈な欲望一色で「 用意ができたら、僕から招待状を送るね。少し時間が掛かってしまうだろうけど…ニールとの約束だもの、必ず守るよ 」彼に取られたままであろう手をゆっくりと反転させ手の甲を下に、そのまま死神と比べれば随分温かであろう頬にそっと添わせて「 だから、誰にも食べられないでね 」不思議とその声色に乞い願うような響きを持たないのは、賢い彼ならばきっと無事で居るだろうと思っているからだろうか「 僕に白銀の夜を独り占めさせないで 」泉の水面を反射した月光を吸い込んでしまうような内側から発光する煌めきを持つ眼差しでじっと見つめて)
>ユギン( >1455 )
そうだと嬉しいんだけど、僕の力なんて微々たる物だと思うよ。
ふむふむ……きっとハイネの好みに合わない物を贈っても喜びはしてくれるだろうけれど、僕の優柔不断さは知られているはずだから今回は好みに沿う方向で考えようかな。て事でジョネルに手紙を送らせて貰ったけれど、いつもの事ながら繋げにくいとか何かあれば遠慮無く言ってね。
こちらは何事も無ければ返信不要だよ。いつかユギンに会える夜が来るのも楽しみにしているね。
****
>ジョネル
( 先日ダークエルフが鉢植えを贈り物として置いていった夜から幾夜経っただろうか。あの翌日から頭を悩ませているのは贈り物に対するお返しの品の事なのだが、一向に決まる気配すらないのは単純にこの摩訶不思議な世界の事を未だよく知らない事が原因か、はたまた別のことが原因なのか。そのどちらにせよ誰かに相談をしたいと思い始めたのは二日程前のこと。こんな時に頼りに出来る怪物は今現在頭を悩ませている原因の当人しか思い浮かばず、屋敷の中での自身の交友関係の狭さに思わず苦笑が漏れる。そんな折にふと頭に過ったのは先日彼が親しい間柄だと名前を挙げていた二名。確かジョネルとシャルロットだと言っていたはず。二人のうちどちらが相談するに適しているかなんて分かるはずも無いのだが、己の知らぬ彼の話を聞けるやも知れないなんて淡い期待を抱きながら向かうのは物書机。便箋なんて洒落た物はない上に、特段文字が綺麗な訳でもない自覚もある。どちらかと言えば文を綴る事自体に苦手意識はあるものの、この屋敷で何も言わずに自室を訪れる可能性があるのはきっと自身をコレクションだと呼ぶ相手だけ。手にしたペンをゆっくりと紙の上に走らせて 『 こんばんは、初めまして。ハイネの事で相談があるのだけれど、時間があれば僕の部屋まで来てくれると嬉しいな 』 文の最後には署名も忘れず、普段よりもやや丁寧に時間を掛けて書き上げたのは初対面の相手に対する自身を良く見せなければという意識故。手紙を書き終える前から視線を上げた先に待つ蝶に 「 これをジョネルのところまで届けて欲しいんだ 」 と手渡し、飛び去る姿を見届けてから身支度へと移ろうか )
>グレン(>>1458)
(それは退屈凌ぎにコミックでもと図書室に向かって口笛を拭きながら廊下を闊歩している時のこと。ちり、と鈴の鳴るような清廉な音が聴こえた気がして、思わず「 ハイネ? 」と声に出しながら振り返ったのはそれが友人の使い魔の翅音だと知っていたから。しかし背後には彼の姿はなく蝶だけが浮遊しており、ふよふよと自身の周囲に浮かせた手紙に気付けば「 なんだろ 」全く心当たりのないそれを訝しがりながらも受け取って、中を検める内に曇った表情はみるみると晴れ間を見せ「 …いーじゃん。こっちの方が面白そう 」くるり、踵を返したその勢いのまま黒煙のコートの裾が自らの足元に巻き付いていき、やがて廊下には小さな蝶が一匹残されるのみとなって。黒煙の中から顕現したのは彼の部屋の扉の前、陽気さのありありと表れるリズミカルなノックの後「 グレンの部屋で合ってるよね?ジョネル、只今見参っ 」相手の懐にするすると入り込んでしまうような人懐っこさのある明るく緩い語り口調ながら、最後の一節は誰かの真似をするように態とらしい低い声を演出して。もし彼が扉を開けてくれたのなら得意げな顔を浮かべて、閉まったままなら表情はそのままに「 今の挨拶渋いっしょ?最近ハマってるかなーりマニアックな漫画の台詞なんだよねー 」彼の事を知己として話しかけるようなまるで初対面らしさを感じさせない雰囲気を纏いながら、閑話休題とばかりに小さく咳払いをして「 ハイネの事で相談?って書いてたけどさ、なんでおれの事頼ってくれたの? 」手紙を受け取った時から感じていた些細な疑問を特に他意なく問い掛けて)
>新規住人(ラミア♀)を追加しました!
【https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/monsters】
>ご新規様・常連様・お試しの方等々、演者様を募集中です[ 今夜の案内役:ラザロ ]
▼ 提供一覧 ▼
【https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/monsters】
▼ PF作成はこちら ▼
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▼ 世界観・ルール ▼
【https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/world】
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>クォーヴ(>1457)
(零れ落ちた涙も止まる頃。問う言葉に頭を捻り答えかけて、「どんな…?それは、」口はそのまま固まる。連綿と想い出を手繰る指が急に虚ろを空振り、闇に迷った為だ。忘却の穴が空いているとも違う、そもそも“初めから持っていない”という、奇妙に記憶を均されたような。彼から離れた五指が自らの白髪をくしゃり握り乱して、「……ああ、思い出せない、」しかしそれこそが彼に己を捧げた確かな証左と、嘆くような言葉は全く正反対の喜悦を含んで、歪に蕩ける蛇の笑顔が表情を染めている。「っ……!」長閑な彼の微笑みと声、だが其処に在るのは紛れも無い捕食者の貌。言葉以上に己を貫く眼差しに、背筋はぞくぞくと粟立ち全身を震わせる。それは恐怖でも不安でもなく、身を焼き尽くす程焦がれた光を見付けて爪先まで駆け抜ける高揚感がさせたもの。このまま今すぐ全てを、等と契りを打ち壊しかねない衝動にがちり鳴らされた牙を諌めたのは、顔を撫ぜたひんやりとした感触。「……うん、待ってる。」吐いた吐息は未だ夢見心地に酔いしれて熱っぽい。添えられる雪のような手を上から包むように捕らまえて頬を擦り寄せた後、今度はその掌に唇を押し当てて。「貴方が連れ出す白銀の世界を、良い子で待つから。」何もかも受け入れる言葉を綴るのは、終わりの十三階段へ踏み出す事と同義。けれど、それが何だというのか。欲しくて欲しくて堪らないものが絞首の縄の向こうに有るというのなら、喜んで駆け上がり輪に頭を潜らせる。ただ、それだけの事。「だから――」泉の煌めきを我が物に変え、湧き溢れる光を湛えた黒布のジルコンへ、思慕と呼ぶにはあまりにどろつく執着の瞳を向けて、「どうか貴方も、それまで誰も食べないで。」駄々を捏ねる子供の物言いでそんな我が儘を口にしながら、烈々とした懇願の牙を彼の薬指へと振り下ろす。)
>ジョネル( >1459 )
( 着慣れた服に癖のない髪、鏡に映る目元に寝不足の印たる隈も浮かんでいない事を確認していれば耳に届くのは軽やか且つリズミカルなノック音。心当たりとすれば先程手紙を持って行くように蝶に頼んだ先の人物 「 嗚呼、ちょっと待ってね 」 ドレッサーの前に座したままでも鍵を口にすれば簡単に扉は開くのだろうが、それをしないのは気を抜いた表情や態度を表に表さないようにするため──無論それは彼が人喰いだからというよりも自身の弱い部分を見せないようにする目的で。左側の横髪をピンで軽く留めてから立ち上がり、向かう最中に聞こえた登場の挨拶へは “ ふふ ” と軽やかな笑い声を漏らし 「 ごめんね、娯楽の類には疎くって 」 事実元の世界にいた頃も最低限度の情報以外を入れる暇など無く、それが余計に王子様キャラを世間に印象付けていった節もある。扉の前に立てば、すうと息を吸い込んで 「 僕はハイネのものだよ 」 特段声を張る訳でもないが、きっと部屋の外まで聞こえるであろう声量で告げるのは錠前を開くための鍵。カチャリ、開く音が耳に届けば扉を開け 「 いらっしゃい、来てくれてありがとう 」 廊下に立つ姿は確かに初めましてなのだけれど、初めて会ったような気がしないのは人懐っこさの滲む口調が原因か。部屋へと招き入れるために道を開けようとしたところで届いた疑問へ “ うーん ” なんて悩む素振りを見せるも、直ぐにゆるりとした笑みを浮かべて見せては 「 この前の夜にハイネから友達だって聞いてたから、ってのは理由になるかな? 」 名指しで部屋に呼べる程の交友関係が己にある訳もなく、彼が疑問に思うのも尤もの事 「 恥ずかしいんだけど、この屋敷に来て言葉を交わした事があるのがハイネとミゲルだけでね 」 きっとその先は言わずとも伝わるだろうと視線を持ち上げて。微かに首を傾けて見せるのはこれで先程の問いの答えになったかどうかを確かめるため。彼の中の疑問が解消されていたのであれば満足そうな表情を浮かべるだろうし、そうでないなら頭を悩ませながらも言葉を紡ぐだろう。どちらにしても一先ずは室内へと招き入れるつもりで )
>クォーヴ ( >>1456 )
紅い湖?楽しみだな……
( 想像もつかない未知の場所に心が踊り、噛みしめるようしみじみと呟いて。生まれ育った島国の国花である非常にポピュラーなその花の庭園と聞くと、パッと表情を明るくして「そんな場所まであるの?子供の頃ぶりだなあ。寒くなる前に行きたいね」と喜びを隠さず返事をした。今咲いている品種は何があるかな、なんて思考しながら続く彼の話に耳を傾ける。およそ一般家庭ではお目にかかれない動物のラインナップに小さく苦笑し、きっと僕の想像する姿形のそれではないのだろうなと思いつつ「ありがとう、クォーヴの友達は個性的だね。もしかしてみんなこのお屋敷に住んでいるの?」と質問をして。
──よく知ってるね。新しく得た知識を決まって母にひけらかしていた幼い僕を、勉強熱心な良い子だと褒めてくれたあたたかい記憶がふと蘇る。僕の型にはまったような回答を彼は決して否定せず、知らなかった事実を微笑みとともに授けた。"僕らは君の記憶を食べる"。"怖がらないで、僕はお腹いっぱいだよ"……。死神は楽しそうに笑っていた。煮えた鍋の火を震える手で止め蓋をする。じわりと涙の滲む感覚がした。だって、こんなこと信じられるだろうか?僕に無償の親切を差し出したその口その舌の根も乾かぬ内に、彼は僕の記憶を食べるのだとのたまった。僕は今日この身に降り掛かった母の死が間違いなく人生一つらいことで、忘れてしまえたら楽なのにとは思ったが、いざその方法を提示されると情けないほどたじろいでしまう。忘れたいことを忘れて生きるのは残酷だ。彼はそのことに気付いているのだろうか。いてもいなくても、これまでそうしてきたようにたくさんの残酷を積み上げて生きていくに違いない。涙を流しながらも頭の中は案外冷静で、僕は目元を強くこすると一つ深呼吸をして彼へと向き直る。黒に蒼が浮かぶ不思議な双眸。その両目が僕を見下ろしている。この世界へ逃げてきた報いだと思った。僕が死んだとき、母の待つ天国に行けないのは嫌だ。きっとこれからの人生、生きているだけで苦しい瞬間が幾度も訪れるはずだから、死んだあとも苦しめられるのは嫌だった。「クォーヴに頼んだら、僕の魂をあたたかい場所へ連れて行ってくれる?そのときは僕の記憶全部、まるごとあなたにあげるから……」縋るように囁いて、死神の答えをじっと待った。 )
>ニール(>>1461)
(そう、それでいいんだよ、良い子だね。そんな死神の声が聞こえてきそうなほど何もかも受容するような微笑のままに数度ゆっくりと深く頷いて。もしかして、万が一彼ならばと心の片隅で僅かに期待していたこと――最後の約束を叶えたら記憶を喰らい尽くされ自分は黒薔薇へと変わってしまう事を知っても一切恐怖せず寧ろ悦に入るのではないかと――そんな、この屋敷で幾星霜の時を重ね数千数万の黒薔薇の屍を築いても巡り逢えるか分からない蕩けた笑顔を逆さまの双眸で捉えてしまってはもう止められず、考えるより先に溢れ出た魔力が制御を失ったように黒煙が彼へと飛び掛かり、このオアシスに二人のためだけの暗い帳を下ろすようにテントのような膜を張って「 …ごめんね。折角の景色を閉ざしちゃった 」いくら死神でもこの時は形ばかりの謝罪になってしまったと確信犯だった。何故なら自身が今、彼のことしか見えていないように、きっと反対もそうであると信じていたから「 ――――。ふふ…君から貰った力だけでどこまでやれるか、試してみるよ 」痛みの代わりに感じるのはこれ以上にない重くて粘ついた甘やかな誓約が結ばれた事に対する愉悦。更に言えばこの先に待ち受ける疑いようのない美食への大きな期待、最後に一振りする雪夜というスパイスをより芳醇なものにするために更に多くの材料、即ち獲物を魔法の糧としようと密かに計画していたからこそ見透かされたようにそれを封じられてしまえば困ったように微笑む。沈黙の後、もしかしたらこれが彼にとって最後の我儘に成りうるのかもしれないのだから出来る限り叶えようと思考はまとまり是を返して。「 だから、これも約束 」制御を失ったように見えた黒煙の一部が砂とも霧ともつかない粒子となって彼の薬指へと纏わりつく。それは肌に触れる感触のない半ば皮膚から浮かんでいるような不思議な材質で、けれど水に浸そうがどれだけ手を早く振ろうが約束が果たされるまでは絶対に彼から離れないであろう代物。ああ、きちんと淑女を――フェロメナをハイネへ返しておかなくちゃね、そんなお節介が思い浮かんでは声に乗せるのは無粋と断じて脳内に留めて)
>グレン(>>1462)
……え。え?何、いまの台詞
(まだ見ぬ扉の向こうの応答から、かなりこの屋敷に慣れた獲物だなというのが率直な第一印象で。近頃忙しそうにしているハイネとは歓談の時間を設けられていなかったため彼がダークエルフの特別なお気に入りだとは知らないまま此処に来ており、だからこそ人前で聞かせるような内容ではない台詞を唐突に彼が吐いた事に一度キョトンとしてから遅れて頭いっぱいの疑問符を示し「 わーお。滅多にお目にかかれないイケメンだね、こりゃハイネが放っておかなさそうだ 」自身とさほど変わらない目線の位置にあったかんばせは万人が美丈夫と評するものだと感じて嫌味のない軽やかな調子でそれを表現して「 えーなになに、ハイネがおれのこと友達だって?ったくもうしょーがないんだから 」きっと高慢なダークエルフは日頃死神を友と認めるような言動行動を見せる事は少ないのだろう、だからこそ大変機嫌良さそうに白黒反転した双眸をにんまりと緩めて「 マジ?ミゲルに会えるなんてラッキーじゃん。いや、君かなり人当たり良さそうだし運ってよりかは君の力か 」交友の少なさを恥じるような彼にさっぱり理解できないとばかりに怪訝そうに首を傾げたのは、そもそも獲物にとって怪物は自分の命を奪うかもしれない存在なのだから出来る限り邂逅は少ない方がいいと思うのが普通ではないかと感じたから。ハイネに次いで挙げられた名前にはまた目を瞠って驚きを示しながら彼の誘導に従って部屋の中にお邪魔するだろう)
>秋天(>>1463)
この世界にはね、季節という概念は無いんだよ。お日様だって昇らない、空の支配者はずっとずっとあのお月様なんだ
(彼が攫われて来てしまったこの異界について説明をする良い機会とばかりに、全く以って生気も血の気もない真っ白な細い食指をピンと立てゆったりとしたテンポで講釈を。日光失くして立派な薔薇が咲くのだろうか、そんな当然の疑問も魔法の有り触れたこの屋敷では歯牙に掛ける価値のない事「 そうだよ、きっとみんなチウに興味津々さ 」列挙した動物、もとい怪物の所在について問われればこくり首肯しながら正解を返し、良くも悪くも彼を拒む者は挙げた中にはいないのだと付け加えて。「 ……? 」微笑のまま口を閉じて彼の様子を控えめに覗き込むようにして、彼が泣いている事に気付き「 チウ…、 」理由は分からなかったけれど、死神や他の怪物の事が恐ろしくてそうなったわけではないと明白な根拠は持たないながらも感じられて、泣き顔を見るのは至極辛そうな切ない声色で一度名を呼ぶ。そうすると再び彼が目を合わせてくれた、何となく決意に似た何かを宿していそうなその眼差しを変わらぬ微笑みでもって受け止め「 …チウにとって、あたたかい場所は何処?――もしかして、君を育ててくれたひとの所かな? 」答えは一つしかないのに、今の彼に何の緩衝材もなくそれをぶつけてしまう事は憚られて結果的に問を返す形となる。無論彼の口から養母の死を教えられたわけではなく、その胸中をテレパシーのように読み取れるわけでもなく、彼の心を大いに占めるものは育ての親であるのだと今しがた学んだばかりの情報を頼りに仮定を構築したに過ぎない)
>クォーヴ ( >>1466 )
( マリアカラスが好きだった。偉大なオペラ歌手ではなく、その名を冠した薔薇の方。濃いローズピンクの大輪花で、暑さにも寒さにも強い気高い名花。薔薇庭園でそれが見たくて、いつ頃訪れるのがいいかと模索していたところ彼の口から語られたのはあまりに衝撃的な事象で。──この世界に四季はなく、朝も昼もやってこない。驚きのあまり言葉を失い複雑な顔で閉口する。そこにあるのが当たり前で、いちいち感謝もしていなかった"陽の光"に照らされる日が二度と来なくなるなんて思いもしなかった。夜の世界で息づく生命は一体どんな姿をしているのだろう……そんなことを考えながら数テンポ遅れて返事をする。「そう、なんだ……。早く馴染めるといいな」暗闇に支配された世界にも、この屋敷の生き物たちにも。
クォーヴが僕以上につらそうな声色で名前を呼ぶから、情けない顔でもあげざるを得なかった。実のところ僕は何一つ明確なことを明かしていないのに、正解を導き出した彼の鋭さに笑みがこぼれる。どこか開き直れたような気持ちになって「そう。天国」となんでもないような声で短く答えた。腹の前で両手を握りこむ。「いつか僕が尽きるとき、クォーヴに僕の記憶をまるごとあげる。美味しかったら天国行きを融通してよ」そこで母が待っているはずだから。努めて穏やかにそう告げる。泣くのは今日で最後にしたかった。僕より高い位置にある彼の顔を縋るような目で見上げる。嘘でいい。地獄の使者でも構わないから、ただ一言"うん"と言ってほしかった。自分を落ち着けるため深い息を一つ吐く。そしたら全部受け入れて、明日から強く生きるから。 )
クォーヴ(>1464)
(死神の黒煙が迫ってくる様さえうっとりと見入ったその内側、景色も光も遮断された其処には彼の姿だけが在る。「…いいよ。こっちの方が、貴方がよく見える。」暗闇に馴染み深い紅はすぐに彼を捉え直して、先程よりもくっきりと瞳に映る白い輪郭に、喜ぶ言葉を返す。――沈黙の間、既に傷など付かないと、“ありのまま”が拒まれないと解っているが故、容赦の無い感情を彼の薬指へ食い込ませて、じっと微笑みを見据える。やがて受け入れられた我が儘に漸く牙を離すと殆ど同時、此方の薬指にも巻きつく何か。ゆらり首を傾げ五指ごとその指を曲げて伸ばして、ほんの少々不思議そうに観察した後、「……やくそく、」ふっと柔く幼い顔で笑って、もう一方の掌で包むように掬った契りの証を纏う名無し指へ、唇を寄せて愛おしむ仕草を。「ふふ、ははっ、うれしい。うれしい、ね。」それから何度も何度もそれに頬を擦り寄せ、繕わない機械じみた獣の口がぽろぽろ心からの歓喜を零して。「クォーヴ、ありがと。」心ゆくまでその感情を示した後に、今頃“いつも”を縫った笑顔と声で些か照れたような色へ染めたお礼を告げて。「ふふ、今日は良い夢見れそうだねぇ。」すっかり彼との契りばかりに取られた思考の多幸を、ふわふわ桃色の綿雲のような笑顔へ顕してみせる。次いで緩やかに彼の方へと更に近付きそのしなやかな肩へと頭を乗せれば、ぐるぐる喉の奥を上機嫌と唸り鳴らしながら、宛ら甘える猫の如く額や髪を彼にぐいぐい押し付け戯れ始める。)
>ジョネル( >1459 )
……ふふ、ごめんね。この部屋ハイネの力で鍵が掛かっててさ。
( 何をそんなに疑問に思ったのだろう、一瞬そんな風にきょとんとした表情を浮かべるものの思い当たる節は先程口にした部屋の戸を開けるための鍵となる言葉ただ一つ。普段からお気に入りは害される事がないようにダークエルフは錠を与える事があるのだろう、そんな考えが頭の片隅にあるのか軽い調子で。然程変わらぬ高さにある視線とさしてヒトと変わらぬ風貌に人間なのではないか、なんて考えが出てくるのはきっとこの先も変わらぬ事なのだろうが、それを口に出すことはせずに 「 ありがとう 」 謙遜するでも無く、照れるでも無く。緩い笑みを浮かべて返すのは元の世界にいた頃から言われ慣れているがため。それに嫌味が滲むことの無い褒め言葉はかけられて純粋に嬉しいもの。緩められた目元はきっと偽りのもので無い事くらい初対面の相手であったとしても伝わるだろうか。驚いた様子の彼にきょとんとした顔を浮かべ 「 そうなの?確かに人間を怖がっている風ではあったけど… 」 扉を閉めてから後を追うようにして室内へと 「 何のお構いも出来ないけど、好きなところに座ってよ 」 この屋敷へと訪れた初夜、己を贔屓目に見てくれるダークエルフとの初めての邂逅の際と同様に室内の下座にあたる場所に位置するチェアへと軽く腰掛けるようにして )
>秋天(>>1467)
(彼のように日の当たる道を踏み外す事なく健全に生きてきたであろう人物にとって、太陽を失った事がどれほど残酷に作用するかは屋敷での暮らしが長い分ある程度は学んだつもりでいる――単に日光を浴びられなくなる喪失感に苛まれるだけでなく、気付かぬ内に正常な精神のバランスを崩すのだと。人は往々にして暗い夜闇に思い悩むものだ、もう二度と青空の下を駆け回れないばかりか自分の命を糧とする人外とひとつ屋根の下で暮らさなければならない事実を突きつけられ、永遠に明けない夜に気が触れてしまった獲物も少なくはない。しかし、陽光差さない闇にあっても「 大丈夫。チウは独りじゃないよ 」ぼんやりと仄明るく光る導べの真似事をするように、きっとこの先彼を一人にしないであろう筆頭として自身が在るのだと示すように冷たい手でそっと彼の肩に触れて。ああ、そのひとは亡くなっていたのだと教示された真実に特段の感傷を抱かないのは、この屋敷では人の死があまりに身近だからか。此処の地を一度踏んだ時点で獲物の成れの果ては決まっていて、目の前の憐れな少年も誰かに喰われるか寿命が尽きるかすればその魂は天に還れず黒薔薇と姿を変えて永久に屋敷を彩る事になる。ただ頷くことが自分にとって最も楽で狡い選択だと解っていた、それが彼の求める偽りの優しさであるとも「 ……ごめんね。そんな権利も、力も、僕には――いや、この屋敷の誰にも無いんだよ 」せめて、受け止めるのも辛い彼の追い縋る眼差しからは逃げないようにまっすぐに視線を合わせたままで。静かに告げたのは途方もない天文学的確率で黒薔薇屋敷に見初められた彼のこれからを、偽りで染めたくはなかったから「 全てを受け入れて、役割を果たして力尽きるその夜まで、僕らは此処で暮らさなきゃいけないんだ 」それは彼に語りかけるようでいて、同じように黒薔薇の呪縛の被害者たる自分に言い聞かせるようでもあった。どこか遠い所を見るようにすっと目線を上げ、煤汚れの一つもないよく磨かれた天井を見つめて)
>ニール(>>1468)
(そうだ、初めて会った夜も彼は二度と昇らぬ太陽を惜しむどころか永遠に続く月夜にむしろ喜色を湛えていた。そんな思い出を回顧すれば、きっと色んな怪物に気に入られるであろう彼が初夜から幾度もの宵を超えて今こうして自身の直ぐ側に居てくれている事が疑いようのない奇跡なのだと感じられて「 …ふふ。ここからも君の力が漲るみたいだ 」人間の指ならばとっくに骨ごと持って行かれているであろう獣の咬合力も死神にとってはややじゃれ合いのヒートアップした甘噛と同じ。不思議にくっきりと彼の歯型が残ったそこを見つめていると、肚の奥底に眠っている筈の獰猛な何かがざわついて魔法という暴力で滅茶苦茶に蹂躙しろと囁かれるようで「 ニールも魔法が使えるようになったのかな 」そんな疼く感覚を誤魔化すように小さく笑って。数度目にお目にかかれた本当の彼の言葉に「 やっぱり、そっちの方が可愛いね 」いつの夜か伝えたことのある本音を反芻して、さながら人に懐いた大きな獣のように強く寄る力を線の細い体ながら全く揺らぐ事なく受け止めてゆるゆると顎下を撫で擽って「 僕の膝で眠ってもいいんだよ 」サラサラとした銀糸の手触りを楽しみながら頭を数度ゆっくりと撫ぜて、子守唄のような穏やかで密やかな調子で誘惑を)
>グレン(>>1469)
――――ええ何、そゆこと?
(まるで彼と鏡写しになるが如く自身もぽかんと面食らって、しかし数秒のシンキングタイムを経て今の不自然な台詞がハイネの特別な錠を開く唯一の鍵なのだと解に辿り着けば芝居がかったように両手で口を塞ぐような仕草を「 思ってたよりガチじゃん 」揶揄するでもなく心底驚いたように半ば独り言のトーンで呟いて、ハッとしたように口元を隠したまま彼の目を見て「 どーせハイネの事だからさ、今のもあいつに聞こえるようになってんでしょ? 」言いながら手を解けば親指で後方を指すことで彼の持ち主を示唆しながら、その怪物を茶化すような軽い笑い混じりの声にて落とした洞察は流石付き合いの長い者同士と言ったところか。「 うっわ、王子様スマイル眩しっ 」今度は口ではなく目を腕で庇うようにしながら僅かに上体を仰け反らせることで大袈裟に眩さを表現。ああ言われ慣れているんだろうなと反射的に感じさせる彼の対応はまさに一部の隙もなく完璧に思え、しかし鍍金の下を知らない死神は、揺らぎを愛でるハイネが甚く気に入る程なのだろうかと正しい違和感を感じながら促されるままに彼と正対する位置のソファーに腰掛けて「 …で?本題に入ろうか 」両膝にそれぞれ両肘を乗せるような体勢で前のめりに彼を見つめる、その表情はまるでこの先に自分の望むものが待ち受けているかのような、にこにこと不気味なほどの曇りのない笑顔で)
>クォーヴ ( >>1470 )
クォーヴは……そばにいてと言ったら、いてくれるの?
( 独りじゃないよ。そう言って肩に手を置いた彼を試すような台詞が口を滑った。絞り出した声。必死で情けなくて切実な叫び。僕は間違いなく人間で、死神の機微をまだ知らない。寂しいという感情を正しく理解してもらえるのかすらわからないが、それでいいと心から思えた。人間同士だって全てをわかり合うことはできないのだから、まだ知らないあなたを僕が見つけたい。冷たい体温を受け止めながら密かに思った。現実になることを祈っている。
クォーヴは僕が思うよりずっと誠実な男だった。"天国へ連れて行って"──その傲慢な願いにYESを望んでいたことは紛れもない事実で、いざ突きつけられたNOがこんなに温かいとは思いもよらなかった。緊張の糸が解けたように笑みが溢れる。瞳の縁は乾いていた。「ありがとう。本当のこと言ってくれて……」嘘でも頷いてほしいと本気で思っていたはずなのに、彼の誠実が心から嬉しかった。あなたが逃げないでくれたから、僕も絶対に逃げたりしない。言葉にはしなかった。これは僕が決めた誓いだから。「……クォーヴ?」僕と話しているときに彼が視線をそらすのは短いやりとりの中でも珍しいことだった。"僕らは此処で暮らさなきゃ"……youではなくweを使った彼を探るように見つめ心配そうに呼びかける。もしかすると彼は、僕よりずっと長い間この屋敷に囚われているのだろうかと想像した。そうして幾度も人の生を見送ってきたとするならば。「クォーヴの生き方も、その最期も……誰かに決められていいものじゃないはずだよ」僕はまだこのお屋敷のことをなんにも知らない。だからこそ簡単に諦めてしまうことはできなかった。無知な子供のワガママだって笑ってもいいよ。「また明日、この世界のこと聞かせてよ。未来のことを考えよう。僕、勉強はできる方だよ」憂う死神へ微笑みを向ける。信じられなくていいから、できれば忘れないでほしいと思った。あなたの運命を諦めない人間が、確かに存在したことを。 )
何から何まで誘導してもらっている気がするな……。共犯者ルートへの種を巻いてくれているのをあなたの文章のあちこちで感じてすごく嬉しいんだ。気を配ってくれているのが伝わるよ、さまざま本当にありがとう。
いくつか聞きたいことがあるんだけど、ここじゃスペースを取りすぎてしまうと思って宝箱の方に書き込ませてもらったから、時間があるときにでも確認してもらえると嬉しいな。
>ジョネル( >1472 )
( 彼の言う “ ガチ ” というそれが何を指しているのかあまり理解していない様子でゆるり首を傾げて。彼が指し示す先が誰の事を指しているのかなんて、考えずとも思い当たる先は一つしかなく。ふふ、と小さな笑い声をあげて 「 僕が鍵を使ったら分かるようにはなってるらしいよ 」 すうと双眸を細め、柔く口角を持ち上げ彼の奥誰もいないはずの空間を見詰める視線は薄らと喜びが表面に現れているようには取れども、嫌悪感は微塵も感じさせる事は無いのは酷く愛情に飢えたが為に歪んでいる内面の現れか。対面する位置に座した彼の瞳を正面から見据え 「 あそこに置いてる花とか、この指輪とか、あとは服とか……兎に角ハイネに色々と貰ってるからお返しをしたいんだけど、僕だけじゃ何がいいのかさっぱりでさ 」 次々と視線で指し示すのは窓際に置かれた鉢植え、自身の左中指、そして閉め切られて中を見る事は出来ないクローゼット。先日の約束では鉢植えのお返しだけの筈だったが、どうせならばとの判断は自ら下したもの。苦笑混じりに眉尻を下げ、表情からも困った様子が見て取れるのは舞台上で培った経験則は日常で見るにはやや大袈裟過ぎる程だろうか。「 もちろん、今日のお礼はするよ。と言っても僕が差し出せる物なんて多くは無いんだけれど 」 部屋にあるのは元から置かれていた家具とハイネから貰った物ばかり。無論それらを対価にする事なんて端から考えておらず、もし彼からの提案だったとしても首を縦に振る事は無いだろう。どうかな?なんて言葉に出す事はなく首を傾げてみせる表情は先程の困り顔とは一点、緩やかな笑みを浮かべていて )
>クォーヴ(>1471)
(またも“初めて”、自分以外の誰かの痕跡を貰えた事に浮き足立つまま感情を顕す所作の後、笑う声にまた彼の方へ顔が向く。「……そしたらクォーヴとおそろいだねぇ。」魔法なんて冗談めいた言葉へ返す喜びの陰、反転した双眸を見詰める獣の瞳は、その奥を覗くように下からじいっと掬って、その不意に鋭い弧を描きながら首をゆったり傾ぐ。――それはまるで、彼に潜む“何か”さえ飲み込まんとする貪欲な蛇が、狙いを定めに鎌首を揺らし擡げるよう。「んー……ふふ、」どれ程重さを掛けても受け止めてくれる彼の身。それに尚の事ご機嫌に擦り寄っては、顎や喉の傍を擽る冷たい指に軽やかな吐息を零し目を細め、「じゃあ、お言葉に甘えちゃおっかなぁ。」己を誘う優しい声と掌へじゃれ付くような笑みを籠めた是を、続けて言葉通り身体を横たえ彼の膝へところり頭を転がして。しかし直ぐ様目を閉じる事はせず、自らの視界に契りの証を納めて今夜の奇跡を噛み締める。「……ほんとに、ゆめみたい。」腹も満ちて、己に触れる手が在って、こんな素敵な約束まで交わして。今は正しく楽園の夢心地と、呟く唇に証をまた押し当て緩やかに食む。「………ん、」そうしている内、少しずつ意識が深みに溶け始め、焦点の怪しくなった瞳はうとうとと蓋を閉じかける。「……クォーヴ、…」指に阻まれ少しばかりくぐもった夢うつつの音が彼を呼び、更に何か続けかけたようだが、それは形には成らず。やがて眠る為に整えられていく体勢はぐるりと小さく、自らの胸元に膝が付く程。その限界まで窮屈そうに体躯を丸めた様は、孵化する前の卵を彷彿とさせる。そしてその中心、膝と胸の内側に“証”を確と仕舞い込み、まるでお気に入りの縫いぐるみを抱く子供、或いは――獲物を囲い締め上げんと蜷局を巻いた大蛇のような格好に落ち着いて、そこで漸く安堵しきった幸福の寝息を静かに立て始める。)
***
この辺でおしまいが近いかな、って事でお顔出してみたよ。ふふ、今日はクォーヴにたくさんお願い聞いてもらえちゃって、とーっても楽しかったなぁ。
それで、そう、お次はこの前言った通り公爵さんの初夜の番なんだけど……ご指名とか綴りたい物語とか、色々相談する事あるでしょ?それに、オレちゃんの今後についても少しお話したいし、ちょっと長くなっちゃいそうだから、諸々全部含めて宝箱の方にお邪魔するねぇ。
それじゃあ、今夜はここまでで。…ふふ、忘れられない素敵な夜だったよ。ホントにありがとねぇ。
>秋天(>>1473)
もちろん。君が望むなら、僕を呼んでおくれ
(怪物は人間の感情を知識として理解するけれど、様々なものが違い過ぎて完璧に共感することは難しい。けれどいきなり異界に攫われ極限状態に閉じ込められ大変に心細いだろう心境は大いに理解し易い部分でもある。恐らく彼が望んでいるであろうニュアンスは四六時中傍を離れない存在として在ってほしいという事なのだろうと察しは付くが、あくまでも助けを必要とされた際にのみ参上する旨を伝える。きっと聡い彼ならば死神がずっと傍に居られない何らかの事情があること、更に言えばだからこそ屋敷内で頼れる存在は増やしておいた方がいいと友人の紹介を促した背景を感じ取れるだろうか。所在の知れない特定の怪物を召喚する方法は先ほど伝えたはず、硬い蕾が綻ぶように笑う少年の笑顔にこちらも嬉しそうに柔らかく微笑みを返し「 僕の方こそ、きちんと受け止めてくれてありがとう。チウは凄いね 」この子は他の子供達とはきっと何かが違うのだろう、そう感じた理由を具体化は出来ずとも輪郭を描くには十分なほど言葉を交わせた夜になった事にどこか満足そうな満ち足りた色を緩く垂らした眦に乗せて。名を呼ばれて再度ゆっくりと彼と目を合わせる、獲物に語ることを禁じられた秘密に触れたのは故意か否か「 …僕の事より自分の事を考えて。僕は自ら望んでこのお屋敷で暮らしているんだから 」死神はその場しのぎの嘘を吐くような性ではないと、彼に伝わっているとよいのだが。それでも、自分の命が危機に晒されているのに異形の未来を案じてくれた純粋すぎる眩しさに「 ありがとう、チウ 」それを心から嬉しいと思った事は事実。屍人のように冷たくも不思議と柔らかな感触の指の腹で彼の頬をそっと撫ぜた所作に万感の謝意を込めて「 ふふ、たくさん聞きたい事を考えておいで。僕も大切な事を君に伝えなくちゃ 」また明日、その言葉に表には出さずとも心中でのみ考えなければならないことは沢山あった。しかし自分が都合をつけて彼のところに少しでも顔を出せばよいのだと結論付け、そうして鍋へと視線を移し「 …その料理はもうすぐ完成するのかな? 」どこかわくわくとした色を交えて、見る事の叶わない蓋の向こうに思いを馳せよう)
***
誘導なんて大それたものではないよ、君とお話するのが楽しくてつい口が滑ってしまっただけさ。…ふふ。
こちらこそ気を遣ってくれてありがとうね、また後で宝箱を覗きに行くよ。
>グレン(>>1474)
あはッ、やっぱり?…よっぽど気に入ってんだね、君のこと
(思わず吹き出すように高めの笑いを短く零したのは自身から見てお世辞にも健全とは言えない癖を持つ友人に対する解釈が一致していたから。態々魔力を消費してまでそんな絡繰りを設けるのは、コレクションたる彼がそれに見合う反応をハイネに返すからなのだろうと察しを付け、悪趣味な台詞と四六時中誰といるかを監視されるようなシステムにも寧ろ悦びを見出すような顔をする彼をじっと見つめて最後は独り言のように呟いて。座り心地のよいソファーのうえ、彼が示していく通り順繰りに首を巡らせてゆく。部屋に入った時からハイネの気配が充満しているとは感じていたが、物理的にも彼に囲まれているような内装に「 こんだけされてちっとも息苦しくなんないんだ?、んじゃあ君の方にも可愛がられる適正があるってことだね 」それは貶すようなトーンではなく、価値観の差異に嫌悪するでもなく、ただただ歪な関係にあるふたりの個性の親和性を心底認めるように。「 おっけ、事情は分かった 」白い指でぐっと力強くサムズアップをしてみせて、彼の方から対価の話が挙がれば先程の不気味なほどご機嫌な笑顔をそのままに「 話が早くて助かるよ。ねえグレン、君の人生で一番エキサイティングな思い出は何? 」白黒反転した鮮やかな虹彩をきらきらと、いやぎらぎらと輝かせながら前のめりに要求するのは集めても集めても全然足りない記憶への執着。死神が何を食べるかなんて、いや彼にとって自分の種族が何なのかすら分かっていない状況ながらも逸る本能を抑えようとはせず。先程までの剽軽さはどこへやら、人好きのする笑みのままなのに纏う雰囲気は疑いようもなく獲物を前にした捕食者のそれで)
>ニール(>>1475)
素敵な回収をありがとう、今夜も君の素敵なところをたくさん見せてもらえて僕もとても楽しかったよ。お互いの約束が果たされる夜が楽しみだね、特に――…いや、多くは語らないでおこうか。ふふ。
一度宝箱の方に来てくれるんだね、ありがとう。それじゃあまたね、ニール。
>ジョネル( >1477 )
そうだと嬉しいけど……どうだろうね
( 部屋の錠も、お守り代わりの指輪も、全部が他のコレクションにもしてきた事なのだろうなんて考えは未だ健在な自身を下に見る思考から。ただ一点、他にあの自尊心の高い彼が目を掛ける人間と違う “ 特別 ” を思い出せば満面の笑みを浮かべ 「 でも、ハイネの部屋に入れたくらいには目を掛けられていると思うよ 」 他の人間にはされていない事を自慢気に語るのは年相応のそれと言えようか。彼が何を言っているのか理解が出来ない、なんて内心がありありと読み取れる程のきょとんとした視線を向けて「 だってそれだけ愛されてるって事でしょ 」 言い淀むでもなく言ってのけるのは、この愛されたがりが本心からそう思っているが故のこと。この歪な関係が成立するのは双方の歪みが見事に相まったが為の事だと彼が感じるのには十分だろうか。フレンドリーさはそのままに、捕食者たる眼差しを向ける彼にすうと瞳を細め「 どう言った感情での物をお求めかな? 」 背凭れに背を預け、腹の辺りで指を組みゆったりと構える姿は何処か落ち着き払っているようにも見えるだろうか。きっと彼の糧は人間の記憶なのだ、とそう理解を示したのはダークエルフに喰われかけた経験から。ただ、哀しみに怒り、喜びはたまたその全てが入り混じったもの。そのどれを彼は欲しているのだろうかなんて分かるはずも無く 「 これでも舞台役者をしていたから、色々とあるよ。…色々と、ね 」 負の感情に寄り気味な事は自身の性格柄否めない部分があるものの、多種多様な経験を積んできた自負はある。言葉の結びにやや覇気が無くなったのは自身の暗い過去も側から見ればエンターテイメントとしか捉えられるだろう事を理解している為。ただ、暗い表情を浮かべたのはほんの一瞬の事、瞬きをする間に常の笑みを顔に貼り付けるのは未だ目前にいる彼に弱い部分を見せられる程ではないから。キミが選んでよ、とでも言いたげに薄らとした笑みを浮かべながら真っ直ぐに視線を向け続け )
>グレン(>>1479)
マジか、それ凄いね。そんな話聞いたことないや
(零れ落ちそうなほどぱっちりと開眼することで心底の驚愕を表現するのは、いくら品物を愛でても自身のテリトリーとは一線を引くような印象のあった友人がその最たるものである自室に彼を入れたという事。ハイネ曰く貴方がその第一号、それを裏付けるように親しい友人たる死神も同調して。何を愛情表現と受け取るかなんて千差万別、彼らの関係性が歪んでいるように見えたとしても自分の主観に過ぎないのだと、軽薄なようでいてその辺りを弁える頭のある死神は変わらず肯定的な態度で笑って「 あは、マジでお似合いだね。ふたりの関係が末永く続くことを陰ながらチラチラ見守っとくよ 」ハイネがとある品物に熱を上げ、そうして飽きてしまった場合どうなるかなんて散々見てきた。あまり気持ちの良いものではないその結末をこの麗しい彼も辿るのだろうか、自分に関係のない獲物の末路を気にかけてしまうのは特別な思い出や記憶であればあるほど欲しくなってしまう欠陥持ちの性ゆえか「 そりゃ、君がこれは忘れたくないなーって思う大事なやつだよ。そういう記憶の方が腹持ちが良い気がするんだ 」手放したくないほど思い入れの強い記憶、彼に選べと微笑みかけられて提示するのは些か値の張るものだろうか。しかし当の本人に足元を見ているつもりは皆無であり、ただただ無遠慮に削り取られてゆく記憶の欠如に怯えて次々にストックを増やしたいという純粋な想いから来るもの。彼の意味深な様子を見るともしかして選びきれないのだろうか、そんな風に感じれば彼のためと忠告をするために一本食指を立てて見せて「 ああそれと、記憶は結構具体的に指定してね。じゃないとおれ、割と他んとこもつまみ食いしちゃうよ 」対価として選定されたテーマが抽象的であればあるほどあれもこれもと喰らってしまうのは制御できるのかできないのかも分からない死神の特性によるものだろうか)
>ジョネル( >1480 )
( 彼の驚く様を見て感じたのは矢張りそれ程珍しい事なのだという納得、それから再び優越感が首を持ち上げる心地。コレクションと一言で言っても自分は今までのそれよりも一等目を掛けて貰えてるのだ、と。それだけで淡く口角が持ち上がるのだから不思議なもので。彼の言葉には嫌味や裏の意味が感じ取れないからこそ、素直に受け取る事が出来 「 ありがとう。それと、ジョネルも偶に僕の話し相手になってくれると嬉しいな 」 この部屋に鍵をかけた主以外が訪れる事は少ない現状、再度幽霊にも手紙を出そうかとした事は少なくは無いもののハイネに怯える様子も見ていた為に踏ん切りが付かず現在に至るのが事実。その点友人であるという彼ならば気兼ねなく呼べるのでは無いかと 「 僕の知らないハイネの話も聞きたいし、何よりジョネルと話すのは気負わなくて良いから凄く気持ちが楽なんだ 」 無意識のうちに言葉の裏を考えてしまうのは最早癖になっていたものだが、彼は言葉とリアクションが一致する為にそれを考えずとも構わない事で息のしやすさを感じており。指をピンと立てる姿に暫しの間考える素振りを見せて。難しい表情を浮かべる事時間にして二分程といったところだったろうか 「 なら、僕が初めて舞台に立った時の記憶はどうだろう 」 煌びやかなスポットライトに舞台上にキラキラとした視線を向ける観客。板の上から見る景色はどれも大切で忘れたく無いものだが、自分にとっての初めての経験である分それもひとしお 「 ただ……あんまり綺麗なものでは無いんだけれど、それでも良いかな? 」 眉尻を下げ小さく首を傾げて見せるのは当時やや取り乱した記憶があるから。無論見られて困る程のものでも無く、差し出す事への抵抗は皆無だが果たして。「 ふふ。つまみ食いされて困る事は無いけれど、後味良く空腹を満たしたいなら僕の記憶は変に深くまで見ない事だよ 」 忠告にも似た提言は自身の幼少の頃を指しての事。負の感情が渦巻くそれらは一部のマニアックな趣味を持つ層を除けば面白味の欠片も無いだろう事は確か。テーブルに両肘をつくようにして前のめりになれば 「 さて、僕は何をしたら良いのかな?ハイネ以外に喰べられるのは初めてだから教えてよ 」 一番長く共に過ごしているダークエルフは体液の経口接種だったがそれ以外の方法は何も知らない。どうすれば記憶を食べる事が出来るのかと興味津々な様子で )
指名:
希望ルート:隷属ルート以外
名前:グルース・リヨン(Grus Lyon)
性別:男性
年齢:15歳
職業:公爵家子息
性格:物腰穏やかで愛情深い、溢れんばかりの包容力の持ち主。面倒見も大変良く、大人も子供も問わず、果ては動植物に至るまで甲斐甲斐しく世話を焼く博愛ぶり。しかしもう一歩踏み込めば、求められるまま寄り添い、相手の全てを肯定して、際限無く甘やかし包み込んで、どっぷりと深みに溶かし入れる蟻地獄のような愛を抱えた人間でもある。家柄と立場上、強かな処世術と達観を持ち合わせ、作法の整った落ち着きある立ち居振舞いをするが、年相応に悪戯心は旺盛で冒険探検も好む所。好きなものや楽しい事に燥いだり、褒められて照れたりする少年らしい一面もある。
容姿:身長は162cm。同世代と比べれば成長の遅さが目立つ、発展途上の薄い身体に円い輪郭。背の真ん中程まで伸ばされた、雛鳥のようなビスケット色のふわふわ癖っ毛。やや太めの眉の上で前髪が切り揃えられ、襟足は一ツ星と鶴の刺繍が入ったアイスブルーのシルクリボンで結われている。如何にも優しげに垂れた、黒目がちの大きなペリドットの瞳、その右端に泣き黒子が一つ。小さく整った鼻とふっくらとした厚めの唇に、しゃんと伸びた背筋と、未だあどけなさを多く残しつつも仄かに色気を帯び始めた、気品ある大人びた佇まい。控え目なフリル付きのドレスシャツにクラバット。その首元にカメオブローチの家紋章、左手の中指に大きめのシグネットリングを填めている。それに金刺繍入り薄緑色のウエストコートと黒のトラウザーズ、踵の低い革製ショートブーツが普段着。外出の際は青藍の膝丈ロングコートを着用。
備考:由緒正しい公爵家の長男で、正式な名前は「グルース・ロシニョール・アンリ・ドゥ・リヨン(Grus Rossignol Henri de Lyon)」。“貴族の嗜み”と聞いて想像されるような教養は一通り習得してはいるものの、本人は手芸全般を好み、とりわけ刺繍はこっそり密かに趣味としている程。亡き母からの『分け隔ての無い愛を与える人でありなさい』という遺言を守り育った、慈愛と品格を備えた少年。しかし彼にとっての愛とは相手を世話する事――厳密には優しく包み甘やかす事であり、それを踏まえるのであれば、大変な“世話焼き”である彼はとびきりの“愛したがり”でもある。この世全ての尽くが彼の愛する対象であると同時に、「骨をも蕩かすこの情愛を全て受け止めてくれる、たった一人の運命の相手」を夢見てもいる。つい最近変声期を終えたばかり。人を安堵に導く夜鳴鶯のように甘く柔らかい、澄んだ高めのテノール声。一人称は僕、二人称は君、または渾名。名を呼ぶ時にはレディ・〇〇(名前)、またはサー・〇〇。
ロルテスト:
――うん、またね。
(またね、ばいばい、と己を見送る幼く愛らしい声達に片手を振る。此処は我が公爵家が出資している孤児院、その開け放たれた扉の前。領地の視察という名目の息抜きの終わった夕暮れ時、別れを惜しんでコートにしがみつく子供達を漸う説得し、コーチ形の馬車にて屋敷へ帰る。――自室内の窓辺。「……あの子達、また大きくなっていたな。…きっとすぐに追い越されるんだろうね。」冷たい夜風に目を細めながら、誰に言うでもない、そんな独り言が零れる。……思い返すは無邪気な孤児達。今は愛を一心に求めるあの子達も、いつかは彼処から巣立つのだろう。当然の話、しかしこの身に持て余す“愛”を子供らに注いでいる己にとって、それは喜ばしいばかりではなくて。そんな物憂いを払うように顔を上げた先、ベッドサイドのテーブルに置かれた封筒が視界に入る。「……珍しい。」思わずそう零したのは、手紙を見慣れている己でも一等目を引く黒色をしていた事、それと整頓の行き届いた机上へあまりに無造作に置かれていた事の二つが理由。一体誰から、とそれを手に取り見詰めたが、差出人の名前は無し、封蝋の紋章にも見覚えが無い。少し考え込んだその後に、テーブルの引き出しから取り出したペーパーナイフを使って封を開き、中に並んだ一文に目を通す。「迎え……?」その意味が解らず、ますますと首を傾げる。……拐かしを態々予告をする者は居ない筈。なれば、十にも満たない腹違いの弟妹達の、微笑ましい悪戯といった辺りか。「……ふふ。主犯はサー・エグレットか、レディ・シーニュかな。」しかしそれを尋ねるにも今はもう遅い夜更け、明日の朝にでも訊いてみれば良い、とその封筒と中身を揃えて元に置いておく。「さあ、そろそろ眠らなければ。」明日にも予定は詰まっている、支障を来す訳にはいかない。そう考えて瞑った目元を指で解した所までは覚えていて――次に目を開いた時には、ベッドに横たわって天井を見上げていた。いつの間に寝入ったのかと身体を起こせば、視界に入ったのは自室とよく似て、しかし全く違う景色。「……うん?」一瞬事態が飲み込めずに間抜けた声を落としつつ周りを見回し、今着ている服がコート付きの普段着である事にも気付いた瞬間、響いたノック音。――その刹那に、頭の内に考えつく限りの状況予想と対処が過り。それを指先でブローチを撫でる数秒に纏めて深い呼吸を一巡させた後、「ああ、わざわざ丁寧なノックを有り難う。しかしすまない、“名乗りの無い者の扉は開けるべからず”と、母によくよく言われていてね。これを破ってしまうと酷く怒られるんだ。」立ち上がって床を踏み締め、背筋を伸ばし凛と通る声でそれに応える。「だからまず――君が僕に名前を教えてくれるか、もしくは君の方からその扉を開けるか、どちらかを選んでおくれ。」少なくとも此方からノック音に近付く真似はせず、穏やかな微笑みを湛えたままに扉を見据えて、じっと油断無くその反応を待った。)
***
――うん。改めてご機嫌よう、麗しい黒薔薇の怪物様方。今夜からは正式にお屋敷へ迎えてもらおうと、もう一度身形を整えてきたよ。…ふふ、変な所があったら教えておくれ。
さて、まずは指名やルートについてだけれど……宝箱の方で話した通り、色んな怪物様と交流させてもらって相性や状況も彼是鑑みてから、お相手やルートを決めるつもりでいるよ。そして、初回の指名もあちらで伝えた通り、サー・ナザリを選ばせて頂くね。
まだまだ僕自身解らない事が多いけれど……このお屋敷の皆に美味しく思ってもらえるよう精一杯舞台を努めてみせるから、どうか僕と沢山仲良くしておくれ。
それじゃあ、これから宜しくね。
>クォーヴ ( >>1476 )
( 優しいひと。僕は彼の親切に釣り合う何かを返すことができるだろうか。「ありがとう。寂しくなったら手紙を書くね」先程紹介してくれたつややかな鳥を思い浮かべながら返事をする。いつか腹を満たすことが目的の優しさだったとしても、それをかけらも表へ出さずに差し伸べられた手のひらのことを僕は素直に好きだと思った。僕が一方的に彼を搾取するのではなく彼もまた僕から搾取しようとしているのだと思えば、お互い様だと心を守れる。そんなふうに思い込んででも生きなければならなかった。地に足をつけて、自分の力で。
小さな子供へ向けるような褒め言葉にはむず痒そうに首を振って、再び視線を戻した死神と真っ直ぐに向かい合う。"僕は自ら望んでこのお屋敷で暮らしてる"──嘘には聞こえなかったから、僕の杞憂が杞憂のままであればいいなと心から思った。「そっか。ならいいんだ」素直に引き下がると小さくはにかみ感謝の言葉にこくりと頷く。冷えた指先になぞられた場所が熱を持ったような気がした。「……大切な事?心して聞かないとだね」彼の微笑みに冗談っぽく返事をすると、シンクへ向き直り使った調理器具を丁寧に洗い始める。鍋へと視線をやった彼を見ると「うん。けど今日は疲れたし食べるのは明日にするよ。起きたらクォーヴのカラスくんに持ってきてもらおうかな」と思いついたように零して。本当にいろんなことがあった一日だった。あなたに差し出すまではきっと一生忘れない。大切な人を失ったこと、その全てから逃げ出したこと、優しい死神に出会ったこと。 )
宝箱では細やかなご回答をどうもありがとう。向こうのスペースを無為に消費するのはよくない気がしたから、背後に代わってここで返事をさせてもらうね。とても参考になったよ。
僕からはやりとりの締めと一日の終わりを書いたつもりだから、何もないようであれば返事は大丈夫。
早速翌日に飛ばして新しいお話を始めたいと思ってるんだけど、どうかな。
向こうでも書いたとおり、起きたらシャワーを浴びて作ったシチューを食べてまた君と話がしたいと思ってる。不都合がなければ僕が絡み文を投下するから、それで大丈夫かどうか教えてほしいな。もちろん、君の方から始めてくれるのでも大丈夫。僕としては本当になんでも問題ないから気軽に答えてくれると助かるよ。
>グレン(>>1481)
もちろん、お得意様が増えるのは大歓迎だよ
(にこにこ笑顔にて両手それぞれの親指と人差指の先端同士をくっつけ顔の両横にてOKマークを作って、しかし懸念点を思いついたように明後日の方向を見ながら接触させていた指を交互にぱかぱかと開閉させ「 ああでも、ハイネには話通しといてね。あいつ、自分の玩具で勝手に遊ばれるのめっっっちゃ嫌いじゃん? 」特定の住人が定期的に彼の部屋を訪問することを面白がるのか将又不愉快に思うのか、どちらかと言えば後者の性質を持つ友人との揉め事は避けたい。自身と彼はあくまでも情報と記憶を等価交換をするWin-Winな関係であるのだと、どうしても獲物が絡むと無償の友人関係を築くのは性質上困難な死神はあっけらかんとそう告げて。たっぷりと彼が悩む間、黒煙のコートの裾をまるめたり引き伸ばしたりして一人遊びに興じて時間を潰すこと数分。漸く決まったらしい対価にぎらと眼を輝かせて「 舞台?…いいじゃん、“はじめて”に関する記憶は美味しい事が多いよ 」彼の職業を知らないため唐突に出てきたその単語に疑問符を浮かべるも、その追求より優先されるのは食欲を擽る食事の香り。綺麗だとか汚いだとかおれにとっては関係ないさ、そんな風に何度もこくこくと首肯して、深くまで“見ないように”と言われれば思わず分かっていないなと感じた可愛らしさに軽やかに短く笑った後「 その忠告、逆効果 」口元に手の甲を添えてすっと細めた目で見つめる眼差しは獲物の何処に美味い部位があるのか吟味するような捕食者のそれで「 おれらは記憶を見るんじゃない、食べるのさ。人間には――いや、死神や鬼以外には解りようもない感覚だろうけど 」理解を期待したわけではない講釈は続きを垂れることなくさっくりと結んで、そうして冷たい手のひらを彼に差し出し「 手の甲を出して。左右どっちでも構わないよ 」もし彼が促した通りにどちらかの手を差し出してくれたのなら、わくわくとした様子でそれを自分の方へゆっくりと引き寄せ静かに手の甲へ唇を寄せるだろう――そうして触れるか否かのところで黒みがかった紫の閃光が派手な音と共に一瞬爆ぜる筈で)
>グルース(>>1482)
(ちび、ちびりと煽る紫紺のお猪口はどす黒くもサラリとした液体で半分ほど満たされていた。おどろおどろしいほど無欠で巨大な満月を肴に晩酌を――無論この世界ではいつでも晩酌ということになるが――嗜んでいたところ、蜥蜴とも家守ともつかない使い魔がちょろちょろと着物を這い上がって肩口にてキュイと一声鳴いて「 ……ほお、まだうら若い坊主ときたか。そりゃあ突っつき甲斐があるかもしれんなあ 」首だけを巡らせて使い魔を見下ろせば月光を反射した眼鏡がギラリと鈍く輝く。勝手に寄せた期待の行く末は果たして、ともあれ“ よっこらせ ”と気怠そうに立ち上がり、その合間にぴょんと地面に飛び降りた使い魔を見下ろし目線だけでご苦労と告げて向かったのは件の新入りの部屋。ノックの返事をゆるりと待つ間、返ってきた声があまりに堂々としていたものだから予想外とばかりに楽しげな笑いが漏れて「 ふ、ンはは、こりゃあ失敬。立派な心構えだ、母君はお前さんを甚ぁく愛しておるんだねえ 」揶揄するつもりで笑ってしまったのではないと短く弁解し、こすりこすりと親指と食指で顎を挟んで動かすようにしながら「 俺ぁナザリといってね、この屋敷に長ぁく住んどる者だよ。新入りの歓迎会――なんて大それたもんを押し付ける気ぁ無い、ただお前さんの方も色々と聞きたい事があるんじゃあないかね 」のらりくらり、どこか間延びするような心地よい低音は優しげな好々爺を連想させる油断を誘うもの。しかしそれは平常運転に過ぎず、新入りというワードと此方から聞きたい事などなくむしろ彼からの疑問に答えようと構える旨を見せてこれが人間界で横行するただの拐かしなどではないことを含ませて「 此処の連中はみな業突く張りでね、タダで情報をくれるもんは少ない。しかし俺ぁ今夜は誰かと喋りたい気分でね。どれひとつ、この寂しいおいさんの話し相手になってくれんかね 」胡散臭さ満点の誘い文句ながらも捧げた提案は彼にとって現時点では不都合のないもの。あくまでも彼に助けを乞う体を取りながら、いつでもぶち破ってしまえる扉の前で着物の袖に両腕を仕舞いながらお行儀よく反応を待って)
***
いやあ、よお来た、よお来た。夢じゃあない、本当のお屋敷でお前さんに見える夜が来るのを首長ぁくして待っとったよ。宝箱で言うた通り、いろぉんな怪物からこっち来い、こっち来いて引っ張られそうなお前さんの最初の夜に言葉ぁ交わせるなんて、長生きはするもんだねえ。あんまり気張らず、のびのび楽しんでっておくれ。
>秋天(>>1483)
うん。待っているね
(彼はどんな字を書くのだろうと反射的に思考が浮かんだのは有象無象の少年少女と一線を画す何かを持っている黒い宝石のような彼に興味を抱いているからなのだろうか。獲物から文が届くのをこれほど楽しみに思ったのは久し振りだなと暖かい微笑のまま、伝える方も心しなくてはならないことなのだと今夜は悟られないように。「 そう?それじゃあチウのお部屋に戻ろうか 」空腹だろうに何も胃に入れず眠ってしまうのだろうか、心配そうに眉尻を垂らすも明日の朝食として食べるつもりでいるならば一先ずは様子を見ても大丈夫そうだと変に言及はせず。何より疲れているのも無理はない、だから何億、何兆通りもある廊下を引き返す道のりを彼に歩かせるのは可哀想で「 おいで 」そっと彼に背を向けて片膝を床につけておんぶを促す。子供扱いするなと言われても仕方がないけれど、もし心地よい重さと温もりが背に乗ったのならそのまま食堂を後にするだろうし、何らかの方法で拒まれたのなら立ち上がり手を差し伸べて、黒煙のコートをふんわりと広げ魔法の力を行使して彼を自室へと瞬時に送り届けただろう)
***
こちらこそ、気を回してくれてありがとうね。お屋敷も宝箱も、どちらもグランギニョルの演者たちのためにあるのだから遠慮なくたくさん使っておくれ。そう、君は今夜から正式にその一員――尊いメニューの1ページに刻まれる事になるんだから。
僕から綴った初夜の最後にはお返事は必須ではないよ。翌日の初回文お願いしてもいいかな?
チウ、黒の似合う君。これからもよろしくね。
>新規住人(ラミア♀)を追加しました!
【https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/monsters】
>ご新規様・常連様・お試しの方等々、演者様を募集中です[ 今夜の案内役:ラザロ ]
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◆ルシアン(>>19)
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◇ミネルヴァ(>>489)
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◇リリー・フリント(>>1041)
◇蘭玲(>>1047)
◆秋天(>>1397)
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●グレン × ジョネル ⇒ 【 >>1484 】
●秋天 × クォーヴ ⇒ 【 >>1486 】
●グルース × ナザリ ⇒ 【 >>1485 】 ※初回、仮登録
▼ 日常イベント ▼
【https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/events】
▼ 宝箱(https://www.saychat.jp/bbs/thread/646097/) ▼
>ジョネル( >1484)
ふふ、分かったよ
( 同意を示すように朗らかな笑みを浮かべながら首を縦に一度。きっと今迄であれば誰が何度この部屋を訪れようともどこ吹く風な様子を想像していたであろうが、前夜の邂逅の様子を思い返せば己とて問い詰められるだろう未来はなるべく避けたいもので。対価として差し出すには十分だったらしい事は彼の瞳を見れば何となくの察しはつく。短く、そして外からはバレないように安堵の息を吐き出していたのも束の間、己では理解する迄に至らない講釈へと僅かに怪訝な表情を浮かべ考え込む素振りを見せ 「 …嗚呼、なるほど。何となくだけど合点がいったよ 」 以前あの激しい嫉妬心を向けられた夜にハイネから言われた言葉。目前に座する彼にはきっと何の事か分からないだろうが一人納得すれば促されるままに右手を差し出し、手の甲へと彼の唇が触れようとした瞬間バチッと爆ぜるような音と自身には見覚えのありすぎる色の閃光は警告の意味合いが強かったのか、はたまた己には害が無かったのか。少なくとも己にとっては痛みを感じるよりも驚きの方が強く数回ぱちぱちと瞳を瞬かせた後に 「 ……ふ、あははは! 」 込み上げてくる笑い声を堪える事が出来ずに。暫くした後、目尻に浮かぶ涙を彼の掌に乗せたのとは反対側の人差し指で拭い取りながら巫山戯半分の口調で 「 ごめんごめん、どうやら僕自身を対価に出す事はご主人様が許してないみたいだ 」 きっと理由を言えば限定的であったとしても許されるだろう事ではあるが、少なからず今現在は守りの効力が発揮されているらしい 「 ごめんね、対価は次に会う時でいいかな?それまでにハイネと話しておくからさ 」 真正面に彼を捉える真剣なそれはこの屋敷の中で心の拠り所となっているダークエルフが絡んでいなければ向ける事は無かっただろう。眦を細めながらゆるり首を傾げて見せて )
>クォーヴ ( >>1486 )
( 意識がぼんやりと浮上する。布団の中で寝返りを打って、しばらく微睡んだ後ゆっくりと身体を起こした。殺風景な部屋をぐるりと見渡し窓を見つけるとベッドから降りてカーテンを開ける。外が真っ暗なことに驚き早く起きすぎたのかはたまた寝すぎたのかと数秒思考するも、そういやこの世界はずっと"こう"なのだと思い出すと強張った肩から力が抜けた。太陽は登らない。季節も巡らない。では窓枠に絡みつくこの黒薔薇たちは一体何を糧に呼吸しているのだろうと考えて、わかるはずもないなとすぐに手放した。「朝焼けが見たいな……」心の声が口を出る。普段僕の一日は朝の陽射しを浴びることから始まっていたから、あの真っ白い光は二度と拝めないのかと切なくなった。沈みかけた思考を振り払うとシャワーを浴びるべくバスルームに向かって歩き出す。上着を脱ぐと鎖骨の辺りで首飾りが跳ねる感覚がして動きを止めた。小ぶりなターコイズがぶら下がった華奢なネックレス。去年のクリスマスに母から貰った大切な贈り物だが、意匠が中性的な気がして普段は服の下に忍ばせる形で身に着けていた。室内灯を反射した濃い水色の宝石にそっと触れて目を閉じる。耳鳴りがしそうなほどの静寂にのしかかられて、半端に服を脱いだまま一歩も動けなくなってしまった。僕はこの静かな部屋で一生を過ごすのだ。夢じゃない。夢になってはくれやしない。そうしてしばらく立っていたが、首飾りの冷たさに促されてゆっくりと動き出した。熱い湯で髪を洗い、全身を流してバスルームを出る。備え付けのタオルで水気を拭き取って、いつの間にか洗って畳まれていた制服のシャツに袖を通した。スラックスを履いて、手に取ったネクタイは数秒考えた結果元の場所に置き直す。学校にいるときよりラフな着こなしで適当に髪を乾かすと、これまたいつの間にか昨晩のシチューとスープが配膳されていたテーブルに腰を下ろした。「カラスくんだよね?ありがとう」姿は見えなかったので虚空に向かって呟いて食卓の香りを吸い込んだ。美味しそうにできてよかった、一人じゃなければ完璧なのに。そう考えたところで思い浮かんだのは彼の姿。また明日、を強請ったのできっと向こうから部屋を訪れてくれるはず。でもそれっていつ頃だろう。まだ眠っているかな、起きているなら何をしてるだろう……そんなことを考えながらパンを千切り、蔦で覆われた窓を見ながら口に含んで。 )
僕が……いいのかな。とても光栄だよ。演者の名に恥じないよう、一生懸命いのちを描こうと思う。
初回文はこんな感じで大丈夫かな。何かご指摘があれば遠慮なく言ってもらえると助かるよ。
何もないようであればこちらに返事は大丈夫。僕はすっごく楽しいから、あなたも楽しめるようなやりとりができたらいいな。改めて、これからもよろしくお願いします。
>グレン(>>1488)
びっ…くりしたあ、
(外傷を伴うわけでもなかったそれは目眩ましの類だろうか、派手な音と閃光に目をぱちくりさせながらも捉えた右手を離す事はなく。それは友人のお気に入りが喰われんとした時に自動で発動するものだったのだろうと分かるのは先程の炸裂の際に室内の魔力総量が変わらなかったから。もともと指輪に仕込まれていたものなのだ、そして一度目は音と光による警告に過ぎずそれでもなお品物を害そうとするなら次はもう少し刺激の強い仕掛けが発動するのだろうと、そこまで察して「 もー、そういうのがあるなら先に言っといてくれればいいのに 」口先を尖らせむすっと吐いた文句は勿論眼前の彼ではなく仕掛け人たる友人へ宛てたもの。何ならもっと分かりやすい警告を事前に出せばよいものを、どこまでいっても性悪なんだからとぶつくさ口の中で呟きながら「 んー…それは飲めないなあ。こっちにもね、事情があるんだ 」提示された内容には困ったように笑いながら拒否を返すのは、特異体質による無限の空白を欠片でも埋めてくれるものを目の前にして大人しく待てが出来るような余裕はないから。それをあれこれ説明しないのは彼にとって自身の体質など知った事ではないことだと弁えている為――ハイネがお気に入りを囲おうと小細工している事など自身にとって知った事ではないのと同じ「 魔法を使えるのはハイネだけじゃない。見せてあげるよ 」ざわり、人間の肌を打つのは背筋を駆け上がる戦慄に似た何かと形容するのが近いかもしれない。実のところそれは死神が内に溜めた魔力を解放した不可視の力の奔流、目に見える形では黒煙のようにちらちらと棚引いていたコートが急激に質量を増し膨れ上がって。彼の手を乗せる左手には全くと言っていいほど握力を込めていないが、もし身を引こうとしても重なった手のひら同士は人知を超えた力によって微動だにしない筈。そうして右手を紫に輝く指輪の上に翳し「 少しのあいだ静かにしてて。大丈夫、ただ報酬を貰うだけさ。もちろん“お気に入り”の合意付きでね 」指輪そのものに、或いはその創造主である友人に語りかける口調は大変穏やかで軽やかな普段通りのもの。表情もにこやかだがこの状況を楽しんでいるのかどこか不敵な色を浮かべて、黒と灰色が混ざりあったような魔力のベールで指輪を包んで「 どう、なかなか見応えのあるショーじゃない? 」指輪に込められただけの力を同等の反する力で封じ込めるような芸当は正しく剽軽な死神が怪物である事の証明。そうしてまた先程のリプレイのように手の甲に唇を寄せ「 涙がぽろぽろ出てきちゃうだろうけど、そういうものだから気にしないでね 」痛みを与えない代わりに流涙を強制する捕食、何でもない事のようにいつも通りの声色で告げてから冷たい唇でそっと温かな手の甲に触れて)
>秋天(>>1489)
(花に水遣りが、家畜に餌遣りが必要なように、美食を好む一部の怪物たちには自ら目を掛けた獲物たちに自分の時間を費やす者が居る。パタン、外から閉じた扉の部屋の主は自分ではなかった。穏やかな面持ちのままにどの獲物がどれだけ“熟成”されてきたかを脳内のリストへ書き記すことで現状を更新し、被捕食者である人間からすればそれがどれだけ倫理から外れた事か理解したうえで表情が曇らないのは言うまでもなく捕食者にとっては当然の日常に過ぎないから。廊下を歩み始めて数歩、何かを思い出したように立ち止まり瞼を伏せて「 ――――、あっちかな 」何かを感じ取ったのかふと呟いて、くるり踵を返し向かうのは昨夜出会ったばかりの青年の部屋。静寂を控えめに揺らすような柔らかいノックを三度、一拍置いて「 こんばんわ、チウ。ゆうべはよく眠れたかな 」応答を待つ間にも感覚を研ぎ澄ませるようにして室内の様子を探るのは、彼が何をして過ごしているかを知るためではなくあの後に他の怪物が訪問した形跡が無いかを調査するため。結果として彼ひとりのにおいや気配しか室内には存在しておらず、ということは彼がこの屋敷で声を知る怪物が未だ自分だけだという事実は変わらない故に改めて名乗ることはせず「 約束通り、今夜も君に会いに来たよ。お屋敷のベッドの寝心地はいかが? 」こちらから扉を開ける事をしないのは彼の意志を無視して害することなど無いと示し続けるため。ふわふわと柔らかな綿を散らすような穏やかな声にて異界で最初の一夜を過ごした彼の様子を窺おう)
>ナザリ(>1485)
(聞こえてきたのは男性の笑う声。続け様の“愛”に連なる言葉へ浮かんだ、幼少の記憶に微かに目尻が跳ねた心のざわめきを、扉の向こうの彼に悟られぬ内に瞬きで隠す。それから此方の牽制じみた要求に答えるその低音は、此方とは真反対に伸びやかで優しく、己の声とはまた違う形を持って安堵を誘う。――一通り聞き終えたそれから解るのは、最初に想定した以上に異様な状況下であるらしい事。そして、頭へ洪水のように湧き巻く疑問を解き現状を断じるには、言葉に従い彼をこの部屋へ招く方法しか今は無い事。「……解った。少し待っていておくれ。」その要望に是を返す。それから服の寄れや髪の乱れを手短ながらきちりと指で直し“対談”の格好を整えた後、扉へと歩み寄りドアノブへ手を掛ける。……隔たりが無くなった向こう、真っ先に視界に入ったのは見慣れぬ衣装。それからぐっと目線を上げてやっと窺えた顔には――明らかに人に有らざる色彩を合わせた瞳と、額から伸びる非対称の角。初めて見る異形のそれに思わず僅かに目を瞠るが、「…今晩は。そして初めまして、異国の方。数ある中から君に見えた幸運に、まずは感謝を。」それも一瞬に満たない内の事。直ぐにその動揺を掻き消した穏やかな微笑みの下、既に受け取った情報を確り織り交ぜた挨拶を朗々紡ぎながら、彼を見据えたまま胸に手を当て目礼を。「此方へどうぞ。」次いで半身に退き部屋への道を拓きつつ、胸元の手で上座に当たるソファーを示して彼を室内へと導く。彼が中へ踏み入れたのを見届けてから扉を自ら閉めて、己は其処から程近い下座の椅子へと歩んで腰掛ける。――そうやってこの場が初めから自室であったように悠然と振る舞うのは、どくどくと緊張に逸る鼓動の最中、空気や相手に呑まれず己のペースを保つ為の術。そしてそれは、彼と対等であろうという芯ある物言いにも顕れて。「さて。“新入り”の僕と話して頂ける、という事だったね。……うん、尋ねたい事は山程あるけれど……そうだね、」胸を張り、じっと逸らさず向き合う互い。――不本意ながら誘拐の事態に覚えがある己が、経験上一番最初に聞くべき事。それは、“何処”でも、“いつ”“どうやって”でも、“誰が”でもない。何よりも重要なのは、「僕は“どうして”此処に居るのか、それをまず初めに聞かせてもらっても?」お屋敷とやらに拐われた理由、拐った者が求めるもの。それを彼が何と答えるのか、震え一つ無い視線で目の前の表情を見詰めて反応を待つ。)
>ジョネル( >1490 )
( 己だけでなく彼の方にも特段の害があった訳ではない様子に安堵の表情を浮かべて。彼が口にする小言は自身に向けてというよりも仕掛けを施した主に向けてのものだろう事は呟く内容から察して苦笑混じりの声を漏らすだけに留め。彼が言う “ 事情 ” それが何を指すのか明言をされないのは己と彼がそこまで親しい間柄では無いからか、はたまた言ったところで理解をされないと思われているからか。どちらにせよ “ それ ” を知らなければ考える余地もあったものでは無い。緩く持ち上がった口角はそのままに、先程までよりとやや冷めた視線を向けて 「 ジョネルの事情が何なのか、僕も言っていないところがあるから言いたく無いなら深く聞きはしないけれど、何も語られないのはあまり良い気はしないな 」 声を荒げる事はせずに、それでも自己主張を出来るようになったのはハイネから目を掛けられ少なからず己に価値があるのだと思えるようになってきたから。ただ重ねた手を無理に引こうとしないのは人成らざる物たちの力が人智を超えている事を数回身を持って体験している為。きっと重ねた時点で記憶を喰らうまでは此方に引く事など出来ないのだ、なんて事は理解をしていると同時対価として自身を差し出すことへの同意をしたのも確かである。その為にそれ以上口を挟む事はせずに動向を見守るつもりで。視線で追いかけるのは彼の右手の行方。そのまま指輪を覆い隠すようにかかるヴェールに小さく首を傾げて 「 不思議な色をしてるね 」 黒とも灰色とも言えない色味は彼の魔力を可視化する際の色なのだろうか。痛みも不快感も無い捕食。けれども、つうと頬を濡らす涙の感覚に、それが流涙を伴うものだと聞いていたとて慌てたように空いている手で涙を拭い取るのは自身を守る為に幾重にも貼っている鍍金故 「 …はは、涙止まんないや 」 静かに流れ落ちる涙は生まれた喪失感を覆い隠す為に涙腺が馬鹿になったのかなかなか止まらず、見られぬようにやや顔を俯くようにして視線を逸らして )
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こんばんは、交流中にごめんね。
対価になる僕の記憶は近日中に宝箱の方に仕舞いに行こうと思ってるよって伝言だけ残しておこうかと思ってね。そんなに時間を掛けずに仕舞いに行けると思うから、また手が空いた時にでも覗いてみてよ。
>グルース(>>1492)
(頭一つ分以上も差異のある目線、それを埋めるようにゆっくりと身を屈めて片膝を床に付くようにして、そのままぺこりと顎を引くようにして簡略されたお辞儀を「 はい、今晩和。ンはは、異国の方とはよい表現を選んだねえ 」人間の世界には存在しなかった異形にさぞ驚いただろうに、取り乱すどころか殆ど表情さえ変えない少年に内心ほほうと感心しながら当たり障りないフレーズを的確に選んだ事は胸中に留めず声に出して褒めようか。成る程、年端もいかぬのに肝は据わっておるし頭も切れると見える――ンはは、なかなか風格のある小童よ。そんな感想をこちらも全く顔や態度には出さず人畜無害な笑みのまま「 はいはい、お邪魔しますよぉ 」挨拶の後、部屋へと通されれば“ よっこいしょ ”と小さく口の中で呟きながら直立の姿勢に戻り、殺風景で誰の気配も未だ無い大変クリアな部屋へと下駄を鳴らしながら入って。初物の部屋はいつ来てもわくわくする、下世話な高揚をおくびにも出さず牛歩の調子で部屋を見回す間に彼が陣取るのを待って。彼が下座に着いたことから空気を読んで「 悪いねえ 」と困ったように、或いは照れたようにぽりぽりと髪を掻きながら上座に位置するソファーへと着物が皺にならないようゆっくりと腰掛けて。異形を恐れて泣き喚いても仕方のない盤面だがまるで商談に臨むビジネスマンのような堂々たる態度で向けられる視線をこちらからは気の抜けるような穏やかな眼差しで受け止めて「 そりゃぁね、お前さんにはだいーじな御役目があるからだよ。…そうだなあ。何か、好きな食べ物はあるかね 」躊躇いなく与える解は敢えて抽象度を高くする。一直線にクリティカルな回答を与えるよりもじわじわと真綿で首を絞めるように恐ろしい事実を詳らかにすることで反応を窺いたい、嗜虐を肚に隠す鬼にはそんな下心があるがあくまで表向きには直接的表現でまだ年端もいかない彼に精神的ショックを与えるよりはやさしい伝え方を選んだ方がよいという人道に則っているという顔をして。一見脈絡のないこちらからの問い掛けに彼が何かを答えるならば“そうかい”と、何もなければそのまま言葉を続けて「 俺たちにとってはねえ、それがお前さんなのさ。気の毒な話だとは思うが…どうにもしてやれん 」憂いを帯びたように深く吐息することで事態がひっくり返ることはないと示し、そうして少し体勢を前のめりにしてじっと彼を見つめ「 すまんね、おいさんからもひとつ質問がある。お前さんの呼び名を教えてくれんかね 」申し訳無さそうに眼鏡の奥で眦を垂らしながらも微笑する。この問い掛けから、彼を攫った実行犯が欠け角の化物ではないこと、更に言えば彼が誘拐の対象として選ばれた背景に名前の類が必要なかったことが推察できるだろうか)
>グレン(>>1493)
べつに恥ずかしい事じゃないよ。みんなそうなるんだ
(顔を隠すような素振りをどこか申し訳無さそうに見つめ、しかし男が泣く所なんて見られたくないよなという主観から気を回してこちらも首の角度ごと視線を明後日の方向へと逃がして。フォローになるか解らないけれど気まずい沈黙を残さないように明るい口調は意図的に制御してどこか密やかな調子でそう告げて彼の手のひらを解放し、空っぽになった手をそっと自身の胸板に添え「 よし…これで、大丈夫 」ぎゅっと服の裾を握り込み何だか追い詰められたような雰囲気を纏いながら独り言を小さく呟く、味の感想よりも先行するのは次から次へと崩落してゆく死神の生きる糧たる記憶をひとつ貯蓄することが出来たという刹那的な安堵感。情緒を整理するように一度深めに吐息した後彼を見つめて「 ごめんね、気を悪くさせるつもりじゃなかったんだ 」素直に謝罪を紡ぐのは一部始終悪意ある言動行動ではなかったと黒薔薇に誓えるため。どうしたものかとぽり、と頬を掻いた後おずおずと口を開き「 おれにはね、死神としての致命的な欠陥があるんだ。…って、おれの話をするために呼ばれたんじゃないよね 」きちんと説明をするのが真摯な対応だと、彼はそれを望んでいるのだと主張されたため言葉を繋ごうとするものの語るにも忸怩たる特異体質は心を開いていない相手にべらべらと打ち明けられるようなものではなく、今夜の限られた時間を彼に捧げる本当の目的へと力なく笑いながら話題をすり替えて「 改めて…ありがとうね、グレン。次はおれが対価を支払う番。ええっと…ハイネへのお返し、だっけ。現時点ではどんなものを考えてるの? 」彼から贈るものなのだから、彼の意志がなければ始まらない。そんな至極当然の考えから全くの平原たるアイデアの土壌にいくつか植えられそうな種があるのかを問い掛けてみよう)
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わお、いいの?おれにくれた記憶だから、どんなのかなーとは気になってたんだ、だから詳細を読めるのが嬉しいよ。さんきゅうね。
>クォーヴ ( >>1491 )
( ──コンコンコン。突如響き渡ったノックの音に動きを止める。飲みかけのスープを置いて「はい!」と声を張ると程なくして柔和な声が耳に届いた。急いで扉へ駆け寄ってドアノブに手をかけると躊躇なく回し、薄暗い廊下から溢れ出す"秘密を溜め込んだ家の空気"を全身に浴びる。その淀みの中心で背の高い死神が微笑んでいた。それがどうにもこそばゆくて、僕もつられて笑ってしまう。「こんばんは……お陰でよく眠れたよ」そんなふうに挨拶を返して、彼を室内へと促した。「食事中だったんだ、急いで食べちゃうね」そう言ってテーブルへ駆け寄ると自分が座っていた場所の向かい側の椅子を引いて彼へと示した。席につくと「来てくれてありがとう。起きたら服や食事が完璧に用意されていて驚いたよ」と本題に入る前の雑談を振り、カリカリに焼けたパンをシチューに浸して口に運んだ。その香ばしさを味わいながら彼の顔をそっと見る。伏せられた睫毛の先端が部屋の灯りを弾いていて、洗練された顔立ちだなとこっそり思った。蠢くコートに覆われているにも関わらず肢体のしなやかさを想像できるのは、きっとゆっくり丁寧に動くから。白い肌と線の細さが相まって、烏瓜の花のような人だなと思った。「クォーヴは今日もお腹いっぱい?困ったら相談してね、美味しい記憶がどんなだかわからないけど……」そう言って気恥ずかしそうにスープを啜る。昨晩、空腹かどうか尋ねたときの反応が忘れられないでいた。彼にしては珍しく声を上げて笑って、お腹いっぱいだよと無知な僕に告げたのだ。忘れたくない記憶はあげられないが、何も持たずにやってきた僕が少しでも力になれることがあるならば、その協力は惜しみたくないと思っていた。 )
>ナザリ(>1494)
(褒める言葉には細めた目でのみ礼を。互いの表情が窺える位置、まずは己の疑問に答え始めた彼の声にじっと耳を傾けるが、どうも一見すると的から外れた問い掛けに一度ぱちりと瞬いて。「……グラタン、グラッセ。その辺りかな。」それでもすぐにゆったりと返した言葉の後、伝えられた話は俄には信じ難い事。“それ”は利益の搾取や慰み者の比喩かとも一瞬過って、しかし彼の言い回しやその人に有らざる姿から推し量るに、そんなものではないと冷静に巡る思考が勝手に物事を整え纏める。つまり鷲が仔兎を啄む事、蛇が雛鳥を丸飲む事と同じに、自分は彼らに――行き着く結論に一際跳ねた心臓が痛い。血の気が引く感覚と今にも震えそうな身の誤魔化しに、深い呼吸の一巡と共に膝の上の両手で固い拳を作り、僅かな強張りに引き攣った口の端はぎゅっと結んだ後にまた微笑みを乗せる。――続いた憂慮を含ませる吐息、御役目という単語、それに“どうにもしてやれない”という句。「……そう。逃げられない、という事だね。」この運命に抗う真似は不可能である。自分は勿論、恐らく彼も。そんな色を察して渇いた喉が相槌に掠れを生んで、それを直す為の咳払いを一つ。それから彼の側から渡された疑に拳を解き、「ああ、名乗りが遅れて申し訳無い。僕はグルース――グルース・ロシニョール・アンリ・ドゥ・リヨン。長いから、君の呼び易いようにしてくれて構わないよ。歳や身分は…」再びすらすらと言い慣れた調子で、あっさり本名全てを彼へ伝えるのは、他の拐かしと“これ”は決定的に違うと、少なくとも拐った犯人が彼ではないと、はっきり確信を得たから。そして、「……君達にとってはあまり大事な事でもなさそうだね。」自分の名が“個を識別する記号”以上の意味を今は持たないらしいとも、判じられた故。「まあでも概ね、見ての通りさ。」それでも己の胸元へシグネットリングの填まる片手を置き、その少し上の家紋のブローチも合わせ示して冗談混じりにふっと零した柔らかな息は、気の緩みに生じたそれではなく――未だ止まない鼓動の痛みを、自分自身でどうにか和らげんと作った少々不自然な代物。「それで、僕からもう一つ聞いておきたいのだけれど、」自己紹介を括ったその次、また己側から口を開く。「此処に、僕の知る誰か――例えば、僕の家族、友達。同じ街に住んでいる皆……そういった者も来ているかどうか、君は解るかい?」己が次に“気にすべき事”を問う声にはまたぴんと芯を通して、しかしその下、自身も知らずに十指が絡み合う。まるで何かを祈るように、崩れそうな何かを支えるように、ぎゅうっと強く強く。自分自身でもどちらの答えを願っているのか解らぬまま、微かに不安を揺らす瞳で尚真っ直ぐ彼を見据える。)
>ジョネル( >1495 )
( 万が一にでも鍍金が剥がれ素顔が垣間見えては大変だと、そんな理由から真正面に見る事が出来ないだけなのにきっと彼はごく一般的な思考に当て嵌めてくれたのだろう。その誤解を解く事をしないのは鍍金の下を晒すだけの覚悟が無く、誤解をしてくれたままの方が自身にとって都合が良いから。冷たい体温が離れた手はこちら側へと引き戻し、流れ落ちる涙を止めようと瞼を閉じて深呼吸を数回。意思に反し溢れ出るそれを止める術は今迄の経験から身に付いており、数分のうちに常の笑みへと戻れば 「 見苦しい物見せちゃってごめんね 」 暗くなりすぎないように茶目っ気を含んだ声音で。先程の自身の主張に対する謝罪に、はたと動きを止めて 「 言ったでしょ?言いたく無いなら聞かないよって 」 悪気があった訳ではないのは彼の様子を見ていれば分かる事。だからと言って許してしまうのは自身の主張を曲げる事にも、それに対して応えようとしてくれた彼にも不誠実な行動にもなると判断すればゆるりと口元に弧を描いて 「 僕も色々と隠してる事があるし、それでおあいこ。もしジョネルが今後僕に言っても良いかなって思える時が来たら教えてよ 」 約束、とでも言うように小指をピンと立てた右手を差し出して。彼からの問い掛けに悩む素振りは見せるものの、タイムラグ無くすらすらと言葉を紡ぎ出して 「 そうだな、身に付けられる物が良いかなとは考えてるんだけど… 」 無論そんな物を贈ったとて身なりに拘りがあるのだろうあのダークエルフが着けてくれるかなんて確証は無いのだが 「 例えば、カフスボタンとか……そんな感じの物で考えているんだけど 」 やや具体的な名前まで挙げるのは、きっとアクセサリーのような物は邪魔になってしまうだろうという考えから。アイデアを乞うようにライムのような瞳をじいと見詰め )
>秋天(>>1496)
そう、良かった。悪夢に魘されることもなかった?
(昨夜何もかもをこの理不尽な屋敷に奪われたというのに、彼の様子からは悲壮感の類は読み取れなかった。精神的に強い子なのだろうか、それとも未だ彼が攫われてきた理由について明白には伝えていないからだろうか。今日話さなければならないことを胸に抱えながら、ふわりと漂ってくる独特な――人間の嗅覚なら食欲をそそられる良い香りと知覚されるような匂いの正体はテーブルを見ずとも判別でき「 ああ…お食事中にお邪魔しちゃって、ごめんね 」申し訳無さそうに少し眉を下げて、彼に促されるまま室内に入ってはきちんと扉を閉めて。態々椅子を引いてくれたことに“ ありがとう ”と小さく告げてから腰を下ろして、両肘をテーブルにつき手のひら同士は祈るように組み合わせてその上に自身の顎を乗せて微笑ましそうに彼の食事の様子を見守りながら「 ん? 」視線が絡まった事で彼も自身の顔を見ていたのだと気付いて淡く首に角度をつけ、そうして彼から放たれた言葉には思わず僅かながらも目を瞠って「 ……チウ。君のその優しさはとても素敵だけれど、同時にとても危ういものでもあるね 」すっと顎を引くようにして組み合わせていた両手で鼻から口元にかけてを隠すような姿勢を取り「 記憶を食べられるっていうのはね、最初からそれが君の人生で起こらなかった事になるのと同じなんだ。もし僕が君の優しさに甘えて一口、また一口って記憶を食べてしまったら、チウはどの思い出を捧げたのかも解らなくなって、自分の脳を――更に言えば自分自身の確からしさを疑う事になってしまうかもしれないんだよ 」だからその時が来たら、きっと一思いに。そこまでを肉声に乗せる事はせず、しかしあまりにも気安く記憶を、ひいては自分自身を怪物に捧げてしまいかねない彼には早く伝えねばならなかった。怪物たちが喰らうのは記憶だけではないこと、死神に喰われて命を終えられる保証もないことを「 …まずは僕から話してもいいかな? 」食事中にしたい話ではなかったけれど文脈的にもこのまま本題に入った方がよいと判断して、静かな微笑みのままに声には真摯を宿してじっと見つめよう)
>グルース(>>1497)
(筋肉の微細な収縮も、吐息に含まれる機微の一つですら見逃さない――見逃してくれない鬼は只々胸中に湧き上がる決して綺麗とも高尚とも言えない感情を味わっていた。毅然とした態度を貫こうとするきっと高貴であろう少年が、突如として食物連鎖の最下層に引きずり降ろされその運命を、現実を受け入れようと心の内で足掻く様がなんともいえず面白く、そして大変可愛らしい。恐らく彼の数千、否数万倍以上を生き永らえる鬼は年の功かそれとも天賦の特技か、そんな性の悪い考えを巡らせているなんて一欠片すら表には出さずに「 ……お利口さんだねえ 」その理解の早い健気さに心を痛めるように微笑を歪めて肯定代わりに彼の聡さを認めて。ふと彼の声に渇きを感じれば「 これ、そこの 」よく目を凝らさなければ見えないほど遠くの床、ちょろちょろと動いていた四足の爬虫類に声を掛ければ、直ちに透き通ったミネラルウォーターで満たされたデカンタとグラスをひとつ、摩訶不思議な事に空に浮かせた状態で給仕をして彼の目前のテーブルにことりと並べるだろう「 ああ…貴族の子かね、 」慣れていなければ舌を噛みそうになるそれらは洗礼名か或いはやんごとなき血統の継ぐ事を示すものか、いずれにしてもそういったルールに基づいて名を連ねるのだと人間界の知識を知っていたため老獪に納得を示し「 道理で礼儀正しいわけだ。えらいねえ 」近所の優しい爺がしっかりした子供を褒めるような陽だまりを思わせる柔らかい賛辞を贈る間にも、ああお前さんの鼓動が張り裂けんほどに聞こえているぞ、と肚に飼う真の鬼はくつくつと低く笑っているのだろう。次いで質問を返される気配に「 何だい 」と受け入れる旨を示し、成る程確かに確認しておきたいだろうなと合点の行く問に顎をこすりながら明後日の方向に視線をやり「 はてぇ…お前さんの身の回りで、ずいぶん前に行方知れずになった人でもいるのかねえ。そうでなけりゃあ、きっと今この屋敷じゃぁお前さんがいちばんの新入りだと思うがなあ 」歯切れの悪い回答になるのは勿体振っているわけではない事は心底困ったようにうんうん唸る様子から感じ取れるだろうか。ふとはっとしたようにレンズ越しの眼差しを真っ直ぐに彼に向け「 ああでも、探しに行こうなどたぁ考えんでおくれ。屋敷の廊下は無限に広がっておってなあ、そればっかりか瞬きする間に道順の変わる迷宮でなぁ。おまけに出会い頭にガブッといきよるバケモンもうろついとる 」荒唐無稽な内容も冗談や脅しの類ではないと伝えるようにところどころ臨場感のある抑揚を付けながらも真剣な調子で忠告を紡いで)
>グレン(>>1498)
……なに、どんな特技?!こんな早く涙止まるって珍しいよ
(獲物の涙腺を狂わせるそれは生理的なメカニズムで説明や対策を付けられるものでは到底なく、だからこそ止まらない涙に戸惑う内に混乱して更に泣いてしまう人間も少なくはない。だからこそ、自身で情緒を律し流涙を制御するような一連の動作に興味深そうにまじまじと視線を送りながら心底感心した様子で「 おあいこか、それ助かる。そこまで仲良くしてたらハイネに怒られるかもしんないけど……うん、そんな夜が来ればいいな 」上手に落とし所を見つけてくれた彼に二重の意味で感謝しながらそれを示すように顔の前で両掌を合わせながら顔を伏せて。そのままパッと面を上げて両手はソファーにつき、リラックスするように重心を後ろに倒して夢想するような少年じみた表情で虚空を見つめて。ふと彼に何か動きがあった事を視界の端で捉え目線を戻せば差し出される右手の小指、怪物の世界にはない慣習ながらも人間の世界でポピュラーなそれへの正しい応え方を探すように両手でくしゃっと髪を淡く掴んで「 あー何だっけそれ。待って言わないで、確かに知ってる筈だから 」回顧に集中するためにぎゅっと瞼をきつく閉じる事で余計な情報を遮断して、暗闇をぐちゃぐちゃと手探りするように深く深く記憶を追いかけて「 知ってる…絶対知ってるんだ。まだ取られてない、取られて……、…ああ! 」まるで貧乏揺すりのように小刻みに身体が揺れるのは過剰なストレスゆえの無意識な反応か。ただならぬ雰囲気と共にぶつぶつと呟き、急に明るく声を張り上げてはぱっちりと双眸を開いて勢いよく自らも同様に小指を差し出して「 これね、これこれ!はい約束っ 」ただ思い出せた事が、というよりもその記憶が抜け落ちていなかった事を心から喜ぶようにやけに高いテンションで温かなそれに小指を絡めて一度上下に振ってから手を引こうか。お返しの案についてふむふむと前のめりに聞きながら「 ええ!いいじゃん!喜ぶと思うよ 」ぱちぱちと細かく拍手をしてから両手をぐっとサムズアップの形を作って全力賛成を示し「 思い切って手作りするってのはどう?しかもこっそり君の分も作っちゃって実はお揃いでしたーってするんだ。ハイネ、絶対“かわいい~!”ってなるって! 」それは大変ちゃっかりとしたアイデアだが、友人代表のような顔をしてきゃいきゃいと確信を持って燥いで)
>ナザリ(>1500)
(己が行き着いた結論が真実である事を物語る、悲痛そうに染まる彼の表情。その奥に何かが潜んでいるなど今は考える余裕は無く、沈黙を落としたその目の前に浮かんだ水差しとグラス、そしてそれを運んだらしい小さな生き物にも、先程よりも解り易く見開いた目を瞬かせる。それから己の身分を正しく察した彼の言葉に頷きで肯定を返した次、褒める暖かな声へ、「公爵家の長子だからね、当然さ。」初めよりは幾分か固さの溶けた物言いで告げるそれは、何処と無く自らに言い聞かせて縛り付けるような厳格さを含めていて。――問い掛けにはっきりとした答えは届かなかった。しかしそれが咎めようのない事であるのは悩み果てる彼の態度から理解出来て、余計に不安で曇る思考を読んだようなタイミングで忠告が刺される。「……化け物が、」まるでお伽噺、いいや、質の悪い怪奇小説でも聞かされている気分。信じられないと訴える感情とは裏腹に、すんなり頭にそれが真実だと染み込んでいくのは、彼の真摯な語り口の所為だろうか。「本当に――違う世界のお屋敷に来てしまったのだね、僕は。」ふと、すっと視線を移した先は窓の向こう。煌々と輝く大きな満月を見詰めて誰に問うでもない事実を零す声は自らでも驚くほど冷たく震えて、現状へ追い付ききれない心の揺らぎがそこに顕れる。また彼へと向き合う形に戻す筈の瞳は、組んだ手元に緩やかに伏せられて、「でも、…そう。僕の覚えている限り、誰も居なくなってはいないから…」もう一度彼からの答えを反芻し、掘り起こすは屋敷に招かれる直前の記憶。少し前のパーティーで見掛けた友人にも、馬車から眺めた街の人々にも、夕食時に揃った家族や使用人達にも、欠けは何処にだって無かった。「……じゃあ、僕一人だけ。他は、誰も…」思考に沈んでいく程、今は身を守る毅然も悠然も剥がれて、言葉遣いも年相応と柔くなる。やがては俯いた額に絡み合う十指を押し当て、小さく背を丸めた後。「…………良かった、」“なら、問題は何も無いね”。……そう吐き出した弱い弱い安堵の吐息の、その内側に――背負い続けた大事な荷を不可抗力に下ろしたような、離れてはならない場所からうっかり逃れたような、そんな後ろめたさや罪悪感の混ざる喜色が凝っていた。「……取り乱したね、すまない。それから、教えてくれて有り難う。」それに何かを言われる前に上げた顔は、今までよりもずっと穏やかに晴れ、何処か重たい憑き物が取れた風情を醸す。「…さあ、これからの事を考えなくてはね。お屋敷で御役目を果たすと言っても、今すぐではないのだろう?」汗が仄かに滲んだ両手を解いて、テーブルに置かれたデカンタに指を掛けながら、ここまでに得た情報から測った状況を確かめる言葉を。続けて、「なら、どんな自由が認められて、どんな禁制があるのか――此処での振る舞い方を初めに学ばなくては。」持ち上げたグラスに注いだ水越し、映った異形を臆さず見詰めるのは、今の今まで話に応じてくれた信用故に。……いずれ己を喰らうかも知れぬ者とその環境さえ受け入れた自らの気質は、きっと立派に見えて異様だろう。「そのご教授を君に願えるかい、サー・ナザリ。」だがそんなものを気にする必要は無いと何かを見ない振りした少年は、緊張のすっかり失せた悪戯な微笑みと物言いで屋敷のルールの教えを彼へ請うては、ゆったり優雅に首を傾げてみせる。)
>ジョネル( >1501 )
( それ程までに興味深く感じられる事柄だと思っていなかった為に僅かにきょとんとしたように目を丸めるのは、演じる上で身に付いたそれが特別な事象だと理解をしていなかったため「 元いたところでは俳優をやってたんだ。舞台専門のね 」 僅かな暗転の合間に涙を引っ込めたり流したり、本来であれば演技で済むところをよりリアリティを求めるが為に身に付いた自身の感情の預かり知らぬ涙を制御するそれは、半ば職業病のようなもの 「 ふふ、もし怒られるとしたら僕の方だろうからジョネルは気にしないでよ……嗚呼、もちろん小言は飛んでいくかも知れないけれど 」 来るかも分からないたらればの話。けれどそんな未来があるのだとすれば、きっとあの狂しいほどの束縛心が飛んでくるのは此方であろう事は容易に想像が付く。小指を差し出したまま彼が記憶の抽斗を開けて探り出す様を希望の通り何も口を挟む事なく見ているものの、過度にストレスが掛かっているのであろう様子に口を開きかけたところで一際大きく鼓膜を揺さぶる声に肩をびくりと跳ね上げさせて。どうやら自身が差し出した先、待っている事に合点がいったらしく絡められた指先に、そうそうとでも言うように首肯を一度。指が離れればゆったりとした動作で体の方に引き寄せ、膝の上で両手の指を組むようにして。「 本当?良かった 」 手放しに賛同してくれている様子にやや強張っていた表情を安堵に緩ませた後、次ぐアイデアに耳を傾けて 「 いいね、それ。楽しそうだし、何よりお揃いに出来るの僕が嬉しいし 」 考える素振りも無くぱあと表情を輝かせ、きっと今日一番の笑みを浮かべて。プレゼントが手作りなのだと、そしてお揃いなのだと言えば主人は喜ぶだろうか、それとも呆れ半分の反応が返ってくるのか。どんな反応が返されるか考えるだけで表情が緩み出すも、次なる問題が頭に浮かべば考え込むように片手を口元へと当てて 「 問題は材料と作業スペースかな… 」 何かを作るにしてもこの部屋の中にそれが叶うだけの物品は無く、頼めば多少の融通を利かせてくれるであろう程に懇意にしてくれている使い魔は言わずもがなダークエルフのところの蝶たちばかり 「 ねえ、ジョネル。頼んだら手伝ってくれそうな人に心当たりなんてあったりする? 」 眉尻を下げたやや情けのない表情の浮かぶ顔を持ち上げて )
>クォーヴ ( >>1499 )
( 悪夢。彼が発したその言葉を口の中で転がして考えてみる。元々あまり夢を見る性質ではないので、目が覚めたとき"夢じゃなかったんだ"とは思わなかった。適応力は高い方なんだと思う。でも、夢を見ないからといって夢であれと願うことがないわけではなかった。「うん、夢は見なかった。全部現実だったみたい」シャワーを浴びる前に一瞬沈んだ気持ちがぶり返しかけて、呟くような声で返事をする。すぐに取り繕うよう笑ってみせて、彼の謝罪に対しても首を横に振るにとどめた。てきぱきと食事を口に運びながらこぼした善意に難色を示されると、これは真剣に耳を傾けた方が良い話だと判断して手を止める。"自身の確からしさを疑う事になる"……その言葉を聞いた僕は"テセウスの船"と呼ばれる思考実験のことを思い出していた。わかりやすく説明するならこうだ。──テセウスという男が怪物を倒しに行くため乗り込んだ一隻の船がある。テセウスは航海の末見事怪物を打ち倒し、船は偉大な記念品として後世に受け継がれていった。だが船は時間と共に朽ちていく。壊れたパーツを一つずつ交換して、やがて全てが新しいものに置き換わったそのとき。その船はテセウスの船だと呼べるだろうか──哲学の授業で問われたパラドックスの一つで、僕はこのことに自分なりの結論を出していた。クォーヴが言ったのは置き換わったときではなく消えてしまったときのことだが、僕の考えそのものは変わらない。「忠告ありがとう。肝に銘じておくよ」餌のアイデンティティに気を配るなんて変わった人だなと密かに思う。時折存在が示唆される"他の住人"が皆こうとはいかないことは想像に難くなくて、はじめにこの屋敷で出会ったのがあなたで良かったと心から思った。穏やかな声で礼を告げ返事を待たずに口を開く。「でも、例え記憶がなくなっても僕は僕だ。それを疑うことはないと思う、きっと……」そう言って小さく微笑むと、不思議な虹彩を見つめ返す。会話に一区切り設けた彼にこくりと首肯で返事をして、続く言葉をじっと待った。 )
あなたと話しているといろんな記憶が蘇ってくるよ。あなたの性質がそうさせているのかな。
筆が乗る予感がしたから、僕が過去に件の思考実験について考えたときのことを宝箱に入れさせてもらおうかと思うんだ。今のあなたに何か影響を与えるものではないと思うけど、僕のアイデンティティを形成した重要な記憶の一つとして知ってもらえたら嬉しいな。
……他でもないクォーヴに僕の軽率さを注意されたところだから、食べちゃだめだよ。ごめんね。
>グルース(>>1502)
そうだねえ。お月見はいつでも出来るが、日向ぼっこは二度と叶わん。夜に生きる怪物の――黒薔薇のための屋敷だからなあ
(彼と見るものを同じにすべく矮小な怪物と人間をせせら笑うような巨大な満月を視界の中心に捉える。太陽を恋しく思う者など居ないか極端に少ない魔物たちにお誂え向きの世界であると表現しかけて、しかし最も相応しい存在を蔑ろにするわけにはいかず支配者の存在をきちりと出して。良かった、と口に出した彼の言葉には複数の意味が込められているように思えた。この理不尽な屋敷で怪物の贄となる運命を押し付けられずに済んだ、或いは公爵家の長子が姿を消したとて次位の後継者が健在であるのならば家を守ってゆくための代わりを務められる、と「 ……やりきれんなあ。生まれだけで背負わされてよいほど気軽な宿命でもなかろうに 」自身の顎に手を添えて難しい顔をしながら首を左右にゆっくりと傾げる。生まれた時から自由意思で選び受け入れた訳もない様々なルールや制約で雁字搦めに縛られる世界と、望まれ見初められて異界に選ばれ尊き糧として散る事を強制される世界、どちらが彼にとって酷なのか瞬時には答えを出せなかった。しかし驚くほど前向きに屋敷へと適応しようとする彼の申し出に「 ンはは、当に外柔内剛とはお前さんの為にある言葉だねぇ 」只の少年と侮るなかれ、そう思わざるを得ない威風堂々とした立居振舞は都合よく言い包めてやろうなどと甘い考えを自重させる力を放っており、なればこの命の行く先を見守らんと真摯に情報を提供しようという気持ちにさせられる。長くなりそうな気配に無意識に袂から鈍い銀の煙管を取り出し口に咥えかけて「 おぉっと、いやぁ失敬 」年端もいかぬ子どもの手前、遠慮するように照れ笑いをしながら煙管を再度しまう仕草を見せて「 今すぐにでは…の話からいこうか。今宵お前さんの到着に最も早く気付いたのが俺ではなく、腹を空かせた隣人だったのならば既に御役目を全うしておっただろうねぇ 」そしてその綱渡りは明日からも毎夜同じ状況が連続するのだと。脅しではなく覚悟を促すように重みのある声色で低く告げ「 禁制、と呼ばれるものぁ獲物には課されていないよ。単独で部屋から出るな、てぇのはあくまで長生きしたければの話。…まぁ、あれだね、禁ずるまでもなく制されるという表現の方が近いかねぇ。例えば――有り得ん話だと分かっておるよ、あくまでも例え話さ。お前さんは屋敷に攫われた運命に絶望し、目の前のデカンタを割ってその破片で喉を掻っ切り自ら命を絶とうとしたとする。ところが刃は喉に届く前に不思議な力で止められてうんともすんとも動かない……そういうことだね 」つまり獲物の自由は認められている、ただし何もかも屋敷の支配力にとって都合の良い形で。聞いていて全く快くない内容を凡例に挙げたのはそれがこの屋敷で日常的に起こる出来事だからだろうか)
>グレン(>>1503)
はー…なるほどなるほど。君なら銀幕でも大人気だったろうね
(観客たちが注目する麗しい顔面を用いて分かりやすく感情表現する手法が涙であろう事は何となく解って、心底納得したように数度頷くようにしながらソファーの背凭れへと体重を預けて。彼が人間の世界に居た頃の評判を知る由もなかろうともその甘いマスクは多くの黄色い眼差しを集めたであろう事は想像に易く、であれば逸材は一つの舞台上ではなく各地に点在するスクリーンに活躍の場を移したかもしれない。それを彼が望んでいない事も、その理由も未知のままだがこれまでハイネからの扱いを幸せそうに語る彼の様子から立てた一つの仮定を持ちかけようと再度体勢を前のめりに戻し「 不特定多数からの喝采を浴びるよりも、たったひとりから熱狂的な寵愛を受ける方が幸せだったりする? 」それは純粋な彼への関心。舞台とは綺羅びやかに見えてきっと苛烈な側面も持ち合わせているだろう、故に万人が立てる戦場ではない。そこに選ばれスポットライトを浴びてきたであろう彼ならば凡庸で陳腐なそれとは対極の記憶を持ち合わせているのではないかと「 んー…そうだなあ。おれはそういうセンス無いし… 」ここで胸板を叩き自分に任せろと言えれば格好も付いたのだろうが、生憎カフスなど洒落たものに造詣もなければ興味もなく全く力になれる気がせず悩むように腕を組んでやや俯き加減に目を閉じて。しかし助けてくれる住人、そのリクエストから浮かんでくる顔は確かにいくつかあり「 ……今回のケースなら適役はキルステン…かな? 」一つの固有名詞に提案を絞ってから目を開け、自らの両手の付け根を両耳に添えてはぱあっと指先を開き「 人魚だからね、こんな感じのヒレが付いてる派手な女王様だよ。トゲトゲ言葉が多いけど、断じて意地悪なやつじゃない。し、この手の話が好きだと思うんだ 」件の人魚の性別を誤認させてしまいかねない紹介になってしまった事は全くの無自覚、それほどまでに自身にとって彼はクイーンという像を彷彿させる住人に見えているということ。何だかんだ世話焼きな彼は健気にも怪物にお返しをしたいと願う獲物という一見歪な美談はきっと好物の筈、しかし人魚に助けを求めるという判断をするかどうかは眼前の彼が決める事。少なくとも情報は提示した、一旦彼の反応を待とうと懐こい笑みを浮かべながらじっと見つめて)
***
こっちからごめんね。宝箱見てきたよ、舞台照明の所為だけじゃない確かな君自身の熱を感じられる素晴らしい記憶をおれにくれたんだね。まじさんきゅう。…まじでね。
それと…表現を借りるなら言葉足らずな主張?についてだけど、ほんっとまじで気にしないで。それだけ伸び伸びやれてるってことだしさ、おれもお互いさまってことで。あーでも、こっちの話の持ってき方とかそういうのにヤだなって思った時は遠慮なく言ってね。いっつもおれらのこと考えてくれてさんきゅうね。今んとこ問題なければこっちにはお返事大丈夫。
>秋天(>>1504)
(不躾な質問だったことを悔いたのは彼の纏う雰囲気がほんの刹那の間だけでも陰りを帯びたから。自分が彼をこの状況に引きずり込んだ直接原因というわけではないが、やはり心ある者が苦しむ所は見ていて気持ちの良いものではない――例えそれが家畜として攫われた獲物であっても。しかし彼は気丈にも笑ってみせたのだから、ここは気付かない振りをしようと微笑みを返して「 ……そう。チウは強い子だね 」誰かと比べるようなニュアンスを含んでしまった自覚はなく、しかし確かに脳裏に去来したのは彼と同じくらいか少し幼い少年のこと。今は亡き、否、自らの手で命を摘み取った少年の事は全く以ってこれからの話題に関係なく、目の前の彼が自身の話を聞く態勢を整えてくれた事を知覚してからゆっくりと口を開き「 昨日、大切な事を伝えたいって言った事は覚えてる? 」ゆるり、空間そのものが滑るように小さく首に角度をつけて彼を見つめる。出会って間もないがこの少年の聡明さは十分に伝わっていた、だからこそ返答を待つ間は敢えて設けずに「 それはね、君が…チウが、黒薔薇のお屋敷に住むことになった理由なんだ 」これまで幾千と繰り返してきた説明、しかしいつもに比べればそれを告げる事に躊躇しないで済んでいるように感じるのは彼の賢さに甘えているからなのだろうか「 君は僕達の――黒薔薇の怪物たちの尊い食事として選ばれたんだよ 」口元は微かな笑みを示す弧を描くも、眉はやりきれなさを示すようにしゅんと垂れ下がる。残酷と判っていてもこうして彼に事前に真実を告げるのは、明日にでも見たこともない怪物が部屋に押し入り彼を喰らってしまうかもしれないから。その時、自分がなにかの糧になったのだと知って死を迎えるのと、何事かも分からないままただ暴力に蹂躙されるのとでは命の終え方に確かに差異が生じる筈。彼自身の意志を度外視した非常に手前勝手な世界で、だからこそ彼の命は尊いのだとどうにか伝わればよいのだが)
***
やあ、宝箱を見てきたよ。…うん、確かにチウの強さを示す具体的なエピソードのひとつだなと感じたね。今の僕はそれを知る方法はないけれど、きっといつか――触れられる夜が来るといいな。ふふ、もちろん食べないよ。今はね。
ああそうだ、それと。全く強制ではないのだけれど、もし興味があればHPから【ルネコの備忘録】を読んでみておくれ。チウとは反対に、死神に記憶を一欠片渡したことがきっかけで心を病んでしまった少年の――上の文章で少し触れた、僕がその最期を見届けた子のお話さ。
追記や相談がなければ、こっちへのお返事は大丈夫だからね。ありがとう、チウ。
>ナザリ(>1505)
……あんまり褒めたって、今は何にもあげられないよ、サー・ナザリ。
(張り通しだった気を緩めた為か、今の称賛を切り口にそれまで平然を通せた筈のものが胸を柔くつついて、そのこそばゆさに眉を垂らして一瞬目を逸らす。次いで直ぐ様ジョークめいた応答をさらりと口にこそすれど、ほんのりと頬に集まった熱まで誤魔化せた気はせず、ゆっくりと口腔に含んだ水を飲み込む所作で沈静までの場を繋ぐ。「いいや、お気遣いどうも。」彼の袂から覗いた見慣れない細長い道具。親族の一人が持っていたパイプに似ているそれと、彼の一連の仕草に大まかな用途を察し、にっこりと愛想良く笑う事で詫びを流す。そのまま己の願いを叶えて綴られる彼の声に、姿勢を正してじっと耳を傾け、「今夜の僕は本当に幸運だったようだね。…うん、心に留めておくよ。」一つの区切りに此方も真摯な相槌を一拍、真っ直ぐ彼を見据えたまま己が身の有り様を誓言する。その後に続く例えに唇が結ばれ、仄かな悲哀や痛みが表情に滲むのは、この場所においてはそれが酷く現実味を帯びたものだから。「……成る程。料理が皿の上で何をしていても構わない。ただし、これを床へと引っくり返す無駄だけは許さない。…お屋敷の主様は、何とも上手な捕らえ方をするね。」心臓の上へ片手を添え、料理と比喩した人間の命を表しながら、“それ”を望んだ者には残酷な事実へ声音を微かな辛苦に震わせて。それでも否定的な言葉を用いずに受け止めた後、重く垂れ込める沈黙を払うように居住まいを彼の側へと前向きに軽く崩し、ついでに切り替えも兼ねた咳払いを一度。「あとは、そう……君自身についても教えてほしいかな。」一通りのルールを学んだその次に、学ぶ意欲が眼差す先は他でもない怪物の彼そのもの。「人を食べる怪物というと、僕はヴァンパイアやグール、或いはオグルを先ず思い付く。でも、」先に自らが持つ知識を、胸元を離れた指で折り数える動作と共に挙げ連ねてから、改めて彼を視界に収め掌でそっと差し示して、「…君は何れにも当て嵌まらないように見える。そもそも予想や想像の出来ない、文化が全く違う所の何か、という印象が一等強い。」見た事も無い装い、顔立ち。馴染み無い響きの名――その未知に惹かれる境地を囀りの軽やかさに浮かばせて、「だからこそ、僕は君に興味が擽られて仕様が無い。」隠せない瞳の煌めきは宛ら新たな本を前にした読書家、または知らぬ小道を見付けた冒険家の如き色。しかし言葉に括りを付けた後で晒した好奇心の不躾さに気が付いて、「……不作法な話ですまないね。けれど、君という個を知りたいのは確かな本心さ。」苦みを含めた微笑みで謝意を告げ、そこに邪気や悪意の一切が無い事を前置く。「……それでどうだい、僕に聞かせてもらえるお話はあるかな、異国の方。」初めて対面した際には堅苦しい一線として表した彼への呼称を、今は親しみを包んだものとして呼び掛けに使い、品ある控えた態度を心得つつも期待をきらきら瞬かせる視線にて、彼を真正面から見詰める。)
>ジョネル( >1506 )
残念ながら、僕は板の上が専門だったんだ
( 何度か話に挙がる事はあっても首を縦に振る事の無かった銀幕デビュー。それを受けて仕舞えばきっと父と比べられる機会が増えるはず、そんな思いもあっての事なのだが今彼に理由を語る必要性は無いだろうと判断すれば、にっこりと笑みを浮かべる事でこれ以上は踏み込んでくれるなとの言外の主張を見せて。興味があると言わんばかりに前のめりな体勢になる彼からの質問に 「 うーーん……、どうだろう 」 なんて返答への迷いを見せるのは、自分自身どちらが心地好いかの判別が付いていないため。口元へと手を当て、考え込む事数十秒程 「 ただ、その “ ひとり ” がハイネだったから満たされてるんだと思うよ 」 自身の事なのに推測の域を出ないのは、特別他者からの愛を求めてしまう性質を理解しているが故のこと。求める以上のものを注いでくれる彼だから、そんな考えは己が欠点を見せた事があるからこその盲目的な思考か、はたまたこの非日常且つ命の危険と隣り合わせの屋敷の中にて唯一安全を与えてくれたが為の依存心か。そのどちらだったとしても満ち足りている、そう明言をする事に大した差異は無く。それに、そんな声と共にチェアから立ち上がりこちらへと身を乗り出している彼の片頬へと手を添えれば吐息が掛かりそうな程の距離まで、ずいっと顔を寄せて 「 “ こういう事 ” の対価に愛情を向けられるより、ずっと健全だと思わないかい? 」 引き合いに出すのは対面する彼は知らない幼い頃の経験。至極真面目な表情は直ぐに解け 「 なんてね 」 なんて言葉と共に再度腰を下ろしては緩く足を組み、ハイネへのお礼の品に対して協力をしてくれる人を考えてくれているのだろう彼をじいっと見詰めて。「 キルステン? 」 小さく首を傾げて見せるのは聞き馴染みの無い名前ゆえの事。紹介をしてくれる文言に静かに耳を傾けつつ考え込む素振りを見せるのは、その人魚の為人を噛み砕くのに時間を要したためで。ここまで真摯に相談に乗ってくれた彼の事だから、きっと無理難題を押し付けてくるような住人を紹介してくるような事は無いだろうという判断はややお人好しが過ぎるか。暫しの沈黙の後うん、なんて言葉と共に小さく頷いては 「 ジョネルが紹介してくれたんだ、一度相談をしてみるよ 」 なんて笑みを浮かべて見せて )
>クォーヴ ( >>1507 )
そうかな……そうだといいな
( 僕を"強い子"だと評する怪物に曖昧な言葉を返した。僕が本当に強い人間であるなら何よりだが、自惚れてはいけないなと強く思う。この状況に適応出来ているのだと思い込んで、それで満足するのだけは避けなければならなかった。そんなことを考えつつ、クォーヴが本題を切り出そうとしているのを察すると静かに耳を傾ける。僕を見つめる蒼い目の様子が先程までとは別物に映って、今から怖いことを言われるのだと半ば確信した。聞きたくないとは思わない。このお屋敷にまつわることは何でも聞いておかねばならなかった。知らないことは少ないほうがいい。
──怪物たちの食事。"尊い"と称されたそれに選ばれたと聞かされて思わず視線を彷徨わせた。部屋には僕と怪物しかいないのに。誰も助けちゃくれないのに。ふらついていた視線を戻すと、捕食者が眉尻を下げていて困惑する。彼が今抱いているものが哀れみなのか優しさなのか、被捕食者の僕にはまるで検討がつかなかった。「美味しそうな貴方、って書いてあったっけ……」母の傍らで手にした黒薔薇のメッセージを思い出しぼそりと呟く。僕はその後に続いた"お迎えに上がります"の文にばかり気を取られていて、一体なんのために攫われたかなど考えもしなかった。クォーヴの言葉を頭の中で反芻する。彼は"僕の食事"ではなく"僕たちの食事"と言っていた。度々示唆される他の住人たちを指しているのだろうなと予測して、思考する。目の前の男は努めて優しい死神だが、その気になれば人間などひと捻りであろうことは想像に難くない。つまるところ、魔法を操る者たちの捕食に抗える方法など僕は一つも思いつかなかった。「……教えてくれてありがとう。知ったところで何かができるとは思えないけど、知れて良かった」嘘偽りない感謝を伝えて、いつ訪れるかわからない最期の瞬間を想像する。母もそうであったように、死はそのほとんどが突然だ。後悔のない生き方をしたいと強く思った。「閉じこもっていた方がいいならそうするけど、あまり意味がないなら……したいことをたくさんしたいな」捕食者のあなたへ精一杯の微笑みを向ける。今の僕には過去を悔いている暇も未来に怯えている暇もないのだ。「終わるときはどうしようもないんだから、楽しく生きなくちゃ」彼の返答を待たずに付け加える。すぐには終わらないかもしれないし、もし終わってしまったとしても思い出になればそれでいい。今はただ"次"に繋がるものが欲しかった。 )
彼の手記はここへ参加する前に目を通していたんだけど、改めて読み直してきたよ。物語の外から眺めていたときと、自分が同じ場所に立ってみてから読むのとでは思うことが全然違うね。すごく興味深かったし、今後の展開がますます楽しみになった。勧めてくれてありがとう。
ところで、クォーヴが否定的でないのなら他の住人の手も借りつつ積極的に部屋の外へ出てみたいと思うんだ。その道中で件の備忘録を見つけられたらと思ってる。といっても存在を知らないものを偶然見つけるのは難しいと思うし、すぐに手に入れたいと思ってるわけではないからいつかいいタイミングが訪れたときで大丈夫。他にも、日常イベントの「九死一生」も体験してみたいと思ってるんだ。ちなみに、襲われる怪物はこちらで指名できたりするのかな?もしそうなら相談させてもらえると嬉しいな。
愛しきルネコへ黒薔薇を。花言葉はなんだったかな。ちょっと怖かったような気がする。
>グルース(>>1508)
(今は、とは恐れ入った。怪物らしくおどろおどろしい牙を剥いてゲラゲラと高笑いしたい気分を堪えて、大人から降り注ぐ褒め言葉に対してほんの一瞬子供らしくたじろいだ可愛らしさも見なかった振りをして。手癖のように掴んでしまう煙管を封じるとなれば、この手持ち無沙汰を慰めるためにどうしようかと目線を巡らしソファーに備え付けられていたクッションを引っ掴めば犬猫のように膝下へと乗せ「 そういうことだね。やっぱりお前さんは賢い、賢いねえ 」食事に擬えたそれは大変言い得て妙、自分の言いたかった事の要点を鋭く掴み噛み砕いて理解するその早さに今夜何度目かの心からの感心を示しながらテーブルを挟んで向こう側に居る彼の髪の代わりに今しがた捕まえたばかりの布の表面へ撫でり、撫でりと手を這わせ「 …はて、俺のこと? 」ここから屋敷の謎について畳み掛けるような問答が始まる事を期待していたからこそ、予想の斜め上のテーマには思わずはてと間抜けな表情を浮かべて見せて「 ああ…そうだねえ。ヒトの子らにも白人や黒人、はたまた住んでいる地域で西洋人、東洋人と区分があるのだったね。如何にも、俺ぁ東洋の怪物。そちら側の文献で“モモタロウ”という童話を知っとるかね 」きらきらと輝く双眸はまさに少年の溢れる活気と知識欲を凝縮した宝石。無垢と呼んでも差し支えないだろう純粋な輝きを持つそれを涙で濁らせられたらと未だ早すぎる妄想はそこそこに、彼の抱いてくれた好奇心を失速させないよう一つの物語を唐突に挙げて「 母の腹からじゃぁなく大きな桃からパッカリと生まれた男児が、人の世を脅かす鬼と呼ばれるあやかしを退治しにゆく話なのだがねぇ。俺にとってぁ彼がご先祖様の仇というわけだ 」ふと空っぽの片手の平を天井に向けて淡く差し出し、その上にフォンという羽音のような音と共に大きく立派な桃の果実の映像を投影して見せて。“パッカリ”と効果音を口にするタイミングと同時に虚像の桃も真っ二つに、中からはデフォルメされた幼い侍が刀を背負って生まれてくる。やがてそれを取り囲むように眼前の怪物と同じ数か一本少ない角を持った赤や青の怪物が棍棒を背負ってわらわらと現れ、しかし件の男児がそれらを一刀両断に返り討ちにするところでちょうど自らの言葉も一区切りに。沢山お喋りさせてくれる相手に恵まれて舌を動かしすぎたか、口渇を覚えてまた爬虫類の使い魔に湯呑を用意させ「 この屋敷じゃあ“こっち側”の怪物は少なくてねえ。例えば…気難しい九尾の狐、とかぁね 」つまり東洋由来の存在は珍しいのだと示唆しながら、犬猿の仲たる同郷の隣人を例に挙げくつくつと笑いながら熱い魔界の茶で満たされた湯呑を掴んで美味しそうに中身を啜り)
>グレン(>>1509)
そっかそっか…そうなんだ。ねえ、君たちってある意味超ラッキーだったりして
(何だか彼は他の獲物と比較して自分の考えをまとめるのに時間のかかるひとだ。そんな風に抱いていた違和感は今や確信に変わり、しかしそれもネガティブな意味ではなく真剣に回答を考えてくれている証拠なのだろうと捉えて。命を供物に捧げる事を強制される屋敷に攫われておいて、片や自由を許されず永い命の終わりまで黒薔薇に縛られておいて幸運とは片腹痛いが、しかしそうでなければ彼はハイネに、そしてハイネはグレンという人間に出会える事は無かったのだと。神妙な表情から何かを閃いたようにそう口にした直後、頬に温かい何かが触れては整ったかんばせが急激に寄った事にぱちくりと目を開いて「 それ…って、愛情って言わなくない? 」いまいち要領は得ないがきっと汚らしい何かに自分を切り売りした結果得られるものより高尚だと言いたいのだろうか、と。ぽかんとしながら素直な感想だけを落とし「 よくわかんないけど 」しかし彼が誤魔化すような言葉と共に遠ざかってゆくのだから深く追求すべき事柄ではないのだろうと察して肩を竦めるに留めて。「 そっか!じゃあまた君が来て欲しい時にお手紙を出すといいよ。おれから大体の話は通しとくしさ。ハイネのお気に入りだから邪険にしちゃだめだよー、ってね 」彼自身が人魚との邂逅を受け入れたのだから、友人に遠慮をすることもないだろうと片手でサムズアップを。歯に衣着せぬ物言いをする人魚に御手柔らかにと伝える旨も添えて、そろそろ御暇しようかと立ち上がった瞬間思い出したようにパチンと両掌を軽く打ち鳴らし「 てかさ、怖くないんだね。見たことない怪物と会うって、おれが人間だったらめちゃビビるなあ 」それは機会があれば彼に聞いてみたかった事の一つ。いくら信頼している怪物の友人とはいえ死神たる自分を呼び出した事も、甘く優しい怪物というわけではない人魚へのお目通りを決めた事も。それ程までに危険を冒してでも持ち主に報いたいのか、或いは先程警告音を鳴らした指輪等々の魔法に守られているという自覚があるからか。いずれにしても興味津々といった眼差しで立ち上がった姿勢のまま彼を見つめて)
>秋天(>>1510)
(我を忘れて周章狼狽するでもなく、往生際悪く運命を拒もうと足掻くでもなく、この数十秒の間に大いなる理不尽を受け入れるに至った彼はやはり凡庸な人間ではないのだろうと感じる。逆に言えば、この間に彼が何を考え何を諦めたのか、そこに思いを馳せるには捕食者という立場が通せんぼをして、しかしそれに気付かずにいられるほど無神経ではなかった。使い魔に選ばれ此処に攫われてしまったからには逃れられない最期ならば、否だからこそ「 僕こそ、きちんと聞いてくれてありがとう。どうかチウの最期の夜が哀しいだけじゃありませんように 」いつか必ず黒薔薇になってしまう貴方へ万感の願いを。命が終われば母の元へ行きたいと言っていた彼に、その尊い魂はもう二度と輪廻の環には還らず永久のこの屋敷を彩る黒薔薇になってしまうという事実は今はまだ伝えられず、自身がそうまごついている間にも未来へと思考の舵を切る彼の物分かりの良さに一抹の不安さえ覚えながら「 そう……だね。気が向けば僕も混ぜておくれ、一緒に思い出を作ろう 」無論彼自身が考え定めた方針を咎めるつもりは無く、いつか彼が列挙するだろうしたい事の中に自身も存在できればと伏し目がちに微笑んで。閉じこもっても意味がないなら――その言葉から、遠くない内に、ともすれば明日にでも部屋を出て無限の迷宮へ探検に出てしまうかもしれないと推量すれば目の前に在るにもかかわらず途端に彼の命を遠く感じて。呆気なく終わりが訪れた時、果たして自身はどう感じるのだろう。何か出来たかもと悔いるのだろうか、そう考えれば俄に両手を動かし、手のひら同士を淡く上下に向かい合わせるようにしてその間の空間に黒と水色の混じった魔力の光を集約させてゆき――やがて何もなかった手中には彼の髪や瞳と同じ漆黒に鈍く輝くシンプルな意匠のネクタイピンが生成されて「 チウ、どうか君の冒険のお供に。いつか何かに襲われて君がその結末を不本意だと感じた時、一度だけ盾になってくれるはずだよ 」両掌に乗せたそれをテーブル越しに差し出す。いつでも傍に居ることは出来ないけれど、この形ならば。小さな物に込められる魔力量は決して多くはないけれど、無防備な丸腰の状態で彼を行かせるよりは万倍良い。無論強制的な贈り物ではないため此方から請う形を取りながら、受領も拒絶もどちらでもにこやかに受け入れるであろう揺らぎのない微笑にて彼を見つめて)
***
もう見つけてくれていたんだね、ありがとう。僕が否定的でなければ?……ふふ、チウが隣人達との冒険を望むのなら勿論快く送り出すよ。君はとっても素敵な子だからね、僕が独り占めしてたら彼らから顰蹙を買ってしまうでしょう?ふふ。
備忘録を見つけたい時は一声かけておくれ、何せあれはどんな場所にも存在するものだからね。資格ある人間が望んだ時に自ずと目の前に現れるものだよ。
日常イベントも活用の検討をありがとう。この時に君を襲うバケモノは僕達のような住人ではなく徘徊する理性のない獣に固定しているんだ。バケモノの姿形なら事前に打ち合わせしておけば変更可能だから、またその時に遠慮なく声を掛けておくれ。…ふふ、このお屋敷に相応しい花言葉だよ。いつか君が思い出しますように。
>お知らせ:2024/09/23~2024/09/28の間、私事都合によりお屋敷を空けます
>現在、ご新規様の募集を一時停止中です。お問い合わせは常時受け付けております[ 今夜の案内役:ラザロ ]
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>クォーヴ ( >>1513 )
( 自称怪物の死神は僕の最期を優しく祈った。贅沢な話だなと思う。この世界に来なければ得られようのない経験の一つだった。「心強いな」そう呟いてはにかみを向けると、彼がどこか歯切れ悪そうに目を伏せたことを感じ取って小さく首を傾ける。追求するレベルではないかと判断して「もちろん。薔薇庭園を散歩するのも赤い湖でボートを漕ぐのも、クォーヴとじゃなきゃ嫌だよ」と笑顔で返事をした。僕は庭園を歩く脚もボートを漕ぐ腕も失えない。捕食者たちの根城の中で、身の振り方はきちんと考えなくてはと改めて気が引き締まる思いがした。クォーヴには年齢よりずっと子供扱いされているような気がしている。僕自身幼いつもりは全くないが、頼りない振る舞いがそうさせているのであればもっとしっかりしなくてはと心の中で思った。彼がおもむろに両手を掲げたことに気づくと、一体何をしているのかと不思議そうな顔で見つめる。いっそ病的なほど白い手のひら同士。その中間で彼の瞳の黒とターコイズが絡み合って光を放つのを呆然と眺め、いかにもな魔法の力に息をのむ。その輝きはやがて小さくしぼんでいき、何かに生まれ変わって彼の手のひらに転がった。その物体とクォーヴの顔を交互に見る。彼の言葉からたっぷりの間をおいて「……僕に?いいの?」恐る恐る零すと美しい黒のネクタイピンをそっと慎重に受け取った。しっかりとした作りだが邪魔に感じるほどの重みはない。黒いからだに光が当たって白く跳ね返るのがとびきりきれいで、天の川みたいだなと思った。「ありがとう。大切にするよ、最期まで……」後ろの方は声が掠れて、正しく彼に届いたかわからない。ほとんどひとり言だったからそれでよかった。優しさだけが込められた贈り物。彼は盾としてこれをくれたようだけど、僕はひとかけらだって欠けさせくないと心の中で思った。クォーヴには内緒の話。惚れ惚れと眺めていたネクタイピンを胸ポケットの縁に刺す。「実は今朝、ネクタイを締めようか悩んで結局やめちゃったんだ。でも……これからは毎日締めることにするよ」そう言うと恥ずかしそうに笑った。あなたの心遣いが本当に嬉しかったから。 )
ありがとう。あなたが背中を押してくれるのはすごく心強いよ。たくさん知り合いができるといいな……
備忘録の件もバケモノの件も承知したよ。そういうことなら、いいタイミングが訪れたときに再度声をかけさせてもらうね。
さまざま答えてくれてありがとう。何もないようであれば返事は大丈夫。一生懸命生きてみせるから、これからもよろしくね。
>ジョネル( >1512)
( 溜め込んでしまった間を追及される事が無かったのは彼が前向きに捉えてくれたからか、それとも然程気にしていないのか。どちらにせよ追及が無い限りは此方から話題として挙げるつもりは無く。「 ふふ、少なからず僕はラッキーだったと思うよ 」 人ならざる者たちの糧として、そんな屋敷の中で過ごす上での大前提がありつつも、自分自身を見て心地良いと感じる程の愛情を注いでくれる対象に出会えた事は途轍も無い幸運に違い無く。先程までのタイムラグは何処へやら、整った顔に花を咲かせるように満面の笑みを浮かべて頷いて見せる姿は年相応の反応に見えるだろうか。任せておけとでも言うようにサムズアップをして見せる彼に安堵の表情を浮かべ「 ありがとう、助かるよ 」 彼の厚意に素直に甘えるのは、己だけであれば見ず知らずの相手に対してお願い事をするのにきっと時間をかけ過ぎてしまうであろう未来が見えているため。きっと退室するつもりだったのだろう立ち上がった彼を見送る為に半分程腰を持ち上げかけた時、唐突に投げられた質問に対してきょとんとした表情を浮かべるのはこの屋敷に来て以来 “ 怖い ” そんな感情を抱いた試しが無かったから。きっと彼が言うように並の人間であれば自信を喰らうかもしれない怪物に会うのは恐怖を抱くものなのだろうが、己としては喰われて命を落とす事より何より誰の記憶に残ることも無く消えてしまう事の方が怖い。右手の人差し指で指輪の縁を緩くなぞるようにしながら 「 ハイネが守ってくれてるからっていうのと、……あとは僕自身の心の問題かな 」 ゆるり口角を持ち上げて席から立ち上がった彼と視線を交え。他者と比べ貪欲な程の欲求を明確な言葉にする事を避け、これ以上は踏み込んでくれるなとでも言いたげな壁を築いてしまうのは自身の弱みとなる部分を見せる事を拒む性質によるもの。無意識のうちに作ってしまった壁に、僅かながら “ やってしまった ” とでもいうような顔をしてしまうのはこの屋敷での生活を送る中で幾らか気の緩みが生じていた為か。気を悪くしていないか、顔色を伺うために彼の顔をじいと見詰めて )
>秋天(>>1515)
ふふ…光栄だよ。見事な黒薔薇たちにチウを紹介するのも、ちょっぴりスリリングな湖上でのお茶会も楽しみだな。どっちを先に体験したい?
(獲物に恐れられ拒絶されて当然の捕食者達にとって、反対に彼らから存在を求められる事はどちらかといえば新鮮に捉えられる。引き攣った顔で来るなと逃げられる事も屡々ゆえにそう遠くない未来の約束と共に無垢な笑顔を向けられて悪い気がする筈もなく、この異界でしか見られないもの、出来ないことを限られた時間の中で許されるだけたくさん経験させてあげたいと感じて、彼に倣うように此方からも選択肢を添えて未来の話を切り出して。「 勿論。チウのために創ったものだから、受け取ってもらえたら嬉しいよ 」差し出されたとてすぐに手を出さない、矢張りこの子は様々な意味で賢いなと内心で感想を抱きながら少し微笑みを深めて。硝子細工のように繊細に扱ってくれる様子が微笑ましくて思わず“ ふふ、 ”と吐息だけの笑いを柔らかく落とし「 …うん。僕だと思って大切にしておくれ。そうして、それを見るたび僕を思い出して 」最期と、死神の地獄耳に届いた言葉。いつ訪れても可笑しくないその瞬間、眼前に立つ怪物が自分であろうとなかろうと一瞬で良いから思い出してもらえたら。そんなやや危うい願望を忍ばせ、胸ポケットにて輝くそれを見ながら「 無理はしなくていいんだよ、どこであっても身に着けてくれるだけで意味があるんだから 」正装を強いるためのアイテムではないため億劫だと思う時があるならばそれも是としてほしい、最期が近いのかもしれないのだから出来る限り彼にとって居心地良く過ごせる日々でありますようにと。少しの間を置いて“ そうだ、 ”と小さく切り出し「 チウの方は?あれから他に訊きたい事は見つかったかな 」話したいことを聞いてもらって渡したいものを受け取ってもらった、次は此方の番とばかりに穏やかな微笑のまま両肘をテーブルについて組んだ手に顎を乗せ傾聴するような姿勢を取って)
>グレン(>>1516)
君ならそう言うと思ったよ。楽しみだなあ、君たちの行く末
(記憶を奪われる体質ゆえこれまでどれだけの獲物と言葉を交わして来たのか定かではないけれど、少なくとも現時点での自分が覚えている範囲では此処へ攫われた事を幸運と捉えている人間はいなかったように思える。けれどそんな奇特も眼前の彼にはしっくり来る、よもや親しくしてきた隣人が素敵な香りのする記憶の製造工場の一端を担うことになるとは。どこかエンターテイメントとして捉えていると誤解を招きかねない言葉の裏に抱くのは彼らの間柄に無粋にも水を差そうとする者がもし居るのならば叱ってやろうだなんてお節介。先だっての問は大変概念的なものであるため回答に正解など存在しない、だからこそ彼がなぜそんなにも不安げな表情で見つめてくるのか分からないまま「 そっか、そっか。捕食者に守られる獲物…うーん、確かにそれは心強いや 」捕食者に食事として取り合われる獲物はまま居るけれど、堅牢に庇護されるというケースはそれに比較すると稀有に思える。自分が彼の立場だったならば大変剛強なアリアドネの糸を掴んだ心地になるだろうなと想像しては納得したようにうんうんと数度頷いて「 それじゃあね、グレン。クイーンへの招待状を忘れないように!あそこにある花なんかを一輪添えたら喜ぶかもよ 」目線だけで先日ダークエルフから贈られた花々を差し、黒煙のコートをちらちらと靡かせながら来た時と同じ軽やかな足取りにて扉へと向かう。ドアノブに手を掛けかけたところで「 ああぁ、それとっ 」思い出したように笑い混じりな声と共にくるっと振り返り「 腹持ちの良さそうな記憶だったよ。ごちそうさま 」あわよくばまた分けてね、普段ならちゃっかりとそう付け加えるところだがそうしなかったのは友人に配慮してのこと。今度こそ後ろ手に扉を開けば懐こい笑みのまま扉がしっかりと閉じきるその瞬間まで外側からひらひらと手を振り続けるだろう)
>グルース(>>1517)
ンふふ、如何にも。古来より桃ってえのぁ魔除けの果実とされていてね、霊験あらたかな仙人様が口にする神聖なものである事から仙果とも呼ばれておるのだよ
(得意げに、というよりかは優秀な生徒を前にしてついつい饒舌に講釈を垂れてしまう老師といった調子で言葉を綴って「 だから物語の鬼ぁ桃を嫌った。俺も…ンはは、俺を退治したけりゃぁ桃を持っておいで 」彼の眼前に座する底の知れない鬼にも効き目があるかどうかはお楽しみと茶目っ気を出すようにゆったりと片目だけを閉じて見せて。悪魔、その単語には好色の彼女と佞悪な兄弟の顔が浮かび、愉しそうにふっと笑いながら「 いつか本当にお前さんの部屋を悪魔が訪ねて来るかもしれんよ。そん時に俺の角とどう違うか確かめてみるといい 」この屋敷に存在するのは鬼や狐ばかりではないと、半ば冗談めかしながらも実在を匂わせて。末恐ろしいと素直に感じたのは攫われてきた初夜だというのに落ち着き払っているどころか鋭い洞察をすらすらと言語化されたから。しかしそれは獲物が知る必要のないこと、ゆえに「 だとすると浪漫があるねえ 」肯定も否定もしない、そんな曖昧な応答に留めて彼からの改まった呼び掛けに「 なんだい、 」と応えた後「 桃太郎はどうだったかな…しかしその原典とも言える文献は有った筈だよ。日本書紀といってね、小さな東の島国に纏わる神話集のようなものだ。しかし漢字で書かれているから…お前さんには向かないかもしれないねえ 」クッションを撫でくり回す手を止め記憶を辿るように一度目を閉じ首を傾げて。童話を読みたがる獲物などこれまで居たか居なかったか定かでないほど珍しく、しかしこんな書物まであるのかと驚いた事から記憶に残っている文献の存在を思い出して提示するも言語の問題から難しいかと僅かに眉間に溝を寄せて「 狐の方は…封神演義なんてのぁどうだい。これは訳されたものがあったはずだ 」九尾を題材にした伝承は威厳あるものから邪悪なものまで様々。そんな中から態々後者を選ぶのはちょっとした悪戯心か、レンズの奥でニタニタと笑いながら「 長ぁくて眠くなるだろうがね。時間はたっぷりあるだろう、所望ならば届けさせるよ 」この鶏群の一鶴たる少年が部屋から出て早死してしまうよりも、自室に閉じこもり本の虫になっておいてくれる方が気休め程度ながらも長生きできるだろうし自身にとってもその方が好都合。ゆえに代償も提示せず施しを打診するように口角を淡く上げて彼を見つめて)
>ジョネル( >1519 )
( 娯楽や余興の類と同等と捉えられていると常人であれば不快に感じる事もあるだろうか。それを笑って流せるのは、これまでの人生を商品として切り売りしていた経験ゆえの事か。どうやら無意識のうちに作り上げてしまった溝を彼は気にしていないらしい、それが分かれば安堵の息を細く吐き出し 「 その守ってくれてる捕食者も、今の所は僕のこと完全に喰い尽くしちゃう気は無さそうだから余計ね 」 先程の伺うような視線は何処へやら、茶目っ気をふんだんに含んだ物言いは冗談混じりにも聞こえるであろうか。今度こそ部屋を立ち去ろうとする彼を見送るためにその場で立ち上がり 「 今日はありがとう。うん、勿論だよ。ジョネルからもよろしく伝えておいてくれると嬉しいな 」 彼の視線を追いかけた先にある花を添える提案には “ ふふ ” と笑い声を溢すだけに留め。ゆるりとした口調で付け加えたお願いは叶えられなかったとしても特段気にする事は無いだろうが果たして。部屋を出ていく寸前、こちらを振り返る姿に不思議そうな表情と共に首を傾げるも、彼が指しているのは今夜の対価として提供した記憶のことだろうか。それがどんな物だったのか、思考を巡らせてみても皆目見当がつかないのはきっとそういうものなのだろう。口元を弓形になるように作り上げた笑みを浮かべて 「 お粗末様、また何か相談に乗って欲しい時は楽しみにしてて 」 差し出せるものは少ない身、ぽっかりと空いた寂しさを紛らわすかのように笑顔で覆い隠して。無論、あのダークエルフが頻繁にコレクションを蝕む事は許さないだろうけれど、なんて無粋な言葉は紡ぎ出す事はせずに。扉が閉まり切るまで手を振る姿を視界に捉え続け、カチャリ錠が掛かった音がすれば肩の力が抜ける。一人の空間になれば今迄であれば反省タイムそう称する時間が訪れていたはずだが、今は頭を悩ませる事が別にある。プレゼントはどういったデザインにしようか、自然と持ち上がる口角とは裏腹真剣な瞳で紙の上にペンを滑らせるだろう )
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こんばんは、今夜の引き際かなって事でお邪魔するよ。
ジョネルと僕はきっと深く交わる事が無ければ水と油かなって所感なんだけれど、僕としては裏表が無くてすごく過ごしやすかったな。
さて、次の舞台の話だけれど役者は引き続き僕、お相手はクイーン改めキルステンにお願いをしようかな。経過日数の目安としては、ジョネルに相談した夜から三日から四日程。カフスボタンの件での相談で呼び出すつもりにしているけれど、ジョネルから何か聞いているかそうで無いかの匙加減はお任せするよ。
問題が無ければ次の返事の時にお誘いの手紙を出させてもらうつもりにしているから、何かあれば伝えておいてくれると嬉しいな。
>ナザリ(>1520)
(甘い果実の知らぬ逸話に興味津々前のめりに相槌を打つ。それから悠々悪戯に放られた言葉へふっと相好を柔く崩して、「おや。…それなら君は、石榴を採っておいておくれ。」此方は緩やかに首を傾げての一声を。返した果実がギリシャであれローマであれ、或いは彼の国に根差すものであれ、相手がその意味をどう捉えるか余白を残す軽やかなジョークの後。彼の放ったその存在の示唆にほんの一瞬、緊張の舞い戻った口元が結ばれて、「…ああ、そうさせてもらうよ。」しかしそれは直ぐに溶け去って、穏やかで泰然とした答えだけを返す。――己の安堵の言葉の次、文献についての回答へじっと聞き入る。「そうかい、それは残念だね。」まず童話については色好い返事は貰えず、小さく唸る音を零して眉尻を垂らす。それから今度こそ己へ提げられた読み物の題名と共に、狡智そうな瞳と再び目が合う。そこにすっと細めた探るような沈黙の視線を数秒、だがやがては柔和な笑みに何れも其れも弛緩させ、「……そうだね。しなくてはならない事はもう失くなったからね。」ごく静かに、そんな言葉をゆったり紡いで肩を竦める。そのまま流れるように椅子の背凭れへと身体を預け、「是非ともお願いするよ、サー・ナザリ。この明けない永夜の供に会わせておくれ。」またにっこりと明朗な好奇心に眦を和ませて、恩沢の計らいに是を返す。「……本に耽るだなんて何時ぶりかな。」その尾っぽについて回った呟きに回想した、図書庫の鼠と化していた頃の記憶に視線をのんびり下方へ舞わせ、「…ふふ、楽しみだ。」打算も話術も何も無い、只々単純で純粋な嬉々を一人落っことす。)
>クォーヴ ( >>1518 )
( 黒薔薇たちをチウに、ではなく黒薔薇たちにチウを……と彼は言った。僅かな引っ掛かりを覚えたが後に続いた台詞の方がよほど聞き捨てならず「スリリングなの!?」と驚いたように声を上げ。どちらを先に選ぶか問われるとしばしの逡巡ののち「……薔薇園で!」とほぼ決まりきっていた答えを口にし困ったように笑った。
僕の言葉に予想外の返事をよこした死神に目を見開く。僕だと思って、見るたび僕を思い出して……そんな台詞言われたことがなくて面食らった。彼は僕が考えているよりも、支配とか征服とかそういうものを孕んだ所有欲の強い男なのかもしれないと密かに思う。考えすぎだとしても悪い気はしなかった。「無理をするわけじゃないよ、僕がそうしたいからそうしようってだけ。ネクタイを締めたりといたりするたびあなたを思い出すよ、きっと……」気恥ずかしそうに呟いて目を伏せる。クォーヴに言われなくたってそうなっていたはずだ。本当は真綿にくるんで大切に閉まっておきたいところだけど、そうされるための贈り物でないことはわかっている。そうだ、と切り出した彼に視線をやるとこちらも思い出したように口を開き「うん。このお屋敷って、薔薇庭園の他に畑とか温室とか……とにかく植物を育てるための場所って何かある?」と問いかけて。いくら外が危険といえど、いつ蹴破られるかもわからない部屋の中でただ死を待つだけの日々を送るつもりは毛頭ない。僕は陽が当たらないこの世界の植生に強い関心があったので、もし人為的に草花を育てている空間が複数存在するならぜひ見てまわりたいと思っていた。「すべての植物が魔法の力でしか育たないなら僕は役立たずだけど、そうじゃないなら多分……そこそこ良い働き手になれると思う」ガーデニング好きな母の影響で庭弄りは得意な方。元々アクティブな性質なのでタダ飯を食らって寝て起きる日々を平常心で続けられる自信もなく、食堂で働いていた使い魔たちのように労働力の一人として気を紛らわせられる場所があればと考えていた。そこで育つ草花をきっかけに横のつながりが広がるかもしれないというささやかな打算も込みのおねだり。「たまにでいいから土弄りがしたいんだ。難しい?」相も変わらず微笑みを称える男に懇願する。僕草むしりとか結構早いよ、なんてアピールポイントが口を出そうになったが、魔法で済ませたら一瞬か……と思ったので黙った。 )
>グレン(>>1521)
やあやあ、いつもながら回収さんきゅうね。ええ、水と油?そうかなあ、おれはあんましピンと来てないけど…いやでも君がそう思ったんだったら少なからずやりにくさがあったって事だね、ゴメン!ハイネからのお仕置きは甘んじて受けとくよ。
クイーンには、『グレンはハイネが雁字搦めに守りを固めるほどのお気に入りで、グレン自身それを喜んで受け入れている節がある事』、『グレンはハイネへのお返しとして手作りのカフスボタンを贈りたく、その手伝いをして欲しいと願っている事』、『おれがグレンから受け取った対価は記憶で、つまみ食いの際にハイネからの警告があった事』を伝えておくよ。
ああ、それと!クイーンに招待状を書く時は、具体的に何を手伝って欲しいのか明記する事をオススメするよ。心根は優しい女王様だけれど、あんまり気は長くないっぽいからさ。
>グルース(>>1522)
いんやあ、俺にぁ必要ない。
(ルーツを東方に持つからか、人肉の如く赤い果実から真っ先に連想されたのは鬼子母神に纏わる昔話。人里の子供を喰らう代わりとして釈迦より齎されたそれを用意せよとの言葉遊びの意図として鬼が想像したのは二つ。いずれも途中までは同じ、人間を喰らってしまわないように代替品の赤い果実をその手に――異なるのは捕食を拒むのが彼自身か、或いは彼と同じように屋敷に攫われた見ず知らずの人間か、というだけ。もし後者を指しているのならば博愛精神に恐れ入る所だ、しかしあれこれと答え合わせを迫らないのもやんごとなき者同士の作法というもの。それ以上は言及せずにただただゆったりと首を左右に振るに留め「 それか――異界の初夜の寝かしつけ…否ぁ記念に、おいさんが読み聞かせてやろうかね 」残念そうな表情も――否、だからこそ一等可愛らしい。遠縁の好々爺が孫を甘やかす時のようなのんびりとしながらも活き活きとした色を宿す声にてつい提案を示したのは彼の知識欲を満たすためには読書ではなく他者からの朗読でも事足りるのではと想像したから。「それぁどうかな、グルゥス。今夜からもお前さんには果たさなければならない事がある 」名を呼ぶ声はこれまでののらりくらりとした軽やかさではなく獣が喉に唸りを絡ませるような低いうねりを持って夜気を揺らす。いつか喰われるその時まで健康を保ち良質な食料として自らを律すること、そこまでを求めるつもりもないが自暴自棄になられては面白くないというのが心根。無論彼に限ってそうならないとは思っているが、こんなにも賢く気高い人だもの、使命を与えられればきっと真摯に向き合い果たそうとするだろうと期待を寄せてニッタリと含みのある微笑みを深め「 “次の食事”の時に届けさせるよう段取りしておこう。…ああ、もちろんお前さんのね 」やはり年相応な顔もあるのだと再認識して、ふと流し目に首を巡らせ自身の肩先に目を落とせばちょろちょろと這い上がってきた家守の使い魔に対して忘れない内にこしょこしょと言伝を。食事、獲物にとっては自身の命を揺らがしかねないキーワードの主役を親切心のつもりで補足してはまるで大蛇を思わせるような双眸でちろりと見遣り)
>秋天(>>1523)
大丈夫、僕が傍にいるからね。…ふふ、じゃあ次の夜は薔薇を愛でに行こう
(人間界とは様々なものが異なる夜の世界で紅く煌めく湖の水が人体にとって無害と考えるほうが難しい。しかし仔細の説明は湖上のピクニックの夜に話せばよい、先に彼と踏む地が薔薇庭園に決まったのなら今夜の目的の小さな一つを果たした事と同義。ゆえに次の夜の話題には自分からはこれ以上触れないつもりで、彼の真っ黒な瞳が瞠られた事にこちらも緩やかに首に角度を付け加え「 …何かおかしな事言ったかな? 」確信犯の類ではなく心底解らないといった表情で少し困ったように微笑して、しかし続いた彼の言葉には満足したようにふっと吐息を漏らして「 きっと似合うよ 」と眦を細めて。「 ……そういった場所は沢山あるよ。魔界の植物には危険なものもあるからあんまりお薦めは出来ないけれど…君たちの食事用に人間界の果実だけを育てる為の離れなんか良いかもしれないね。ただ少し遠いから、到底一人では行かせられないな 」しっかりと最後まで彼のお願いを聞き届けてから、少しの間を置いてまずは場所があるか否かの問への回答を。しかし彼も気付いている通り全ては魔法を行使できる使い魔の仕事として管理運営されており、そこに手作業しか適わないばかりかいつ喰われて居なくなるか定かではない働き手が乱入する事には屋敷側の立場からして二つ返事を返すわけにはいかなかった。しかし願いを無碍にする事に不慣れな死神は人差し指を第二関節で折り曲げそれを唇に添え暫しの間考え込み「 この部屋にプランターを置く…のだと、きっとチウのお願いは満たされないんだよね? 」真っ直ぐに向けた眼差しは決して彼の様子を下手から伺うのではなく、寧ろ対等な者同士として互いにとって納得出来る妥結点を探す真摯なそれだった。提示した案が最適解には思えるものの、部屋に嗜好品が増えただけで結局籠の中の鳥という状況に変化を齎すことは出来ない。彼にとっての優先順位が土いじりよりもこの個室の外に繋がりを求める事なのであれば別の策が必要で、だからこそ真剣に彼の願いの核がどこにあるかを探ろうとしつつも威圧感を与えないよう柔らかな声音を保ち)
>お知らせ:執事長多忙につき、しばらく亀レス気味となる事が予想されます
>現在、ご新規様の募集を一時停止中です。お問い合わせは常時受け付けております[ 今夜の案内役:ラザロ ]
>クォーヴ ( >>1526 )
( 次の夜、とクォーヴは言った。恐らくもっと先のことになるだろうと想像していたため、楽しみがぐっと近付いたような気がして頬が緩む。正しく次の夜でなくたってよかった。彼も楽しみにしてくれているのだということが何より嬉しかったから。「楽しみだなあ。そうだ、カメラとか……写真機の類ってあったりする?」まだ見ぬ異界の薔薇園を想像し、ふと思い付いたようにそう尋ねて。人に見せて評価してもらっていたわけではないので客観的な上手い下手はわかりかねるが、写真を撮るのは好きだった。もしカメラやそれに準じる何かを貸してもらえるならぜひ薔薇園を記録に残したいと考え、ねだるような目で彼を見て。吐息を漏らすように笑ったのを見ると一気にくすぐったい心地になって、恥ずかしそうにうつむくとそれ以上何も言わなかった。
到底一人では行かせられない……正直、予想できた答えではある。食堂ですら付き添いがいるのだ、本来客人とは無縁であろう場所に人間一人で行けるようになっているはずもない。予想はできたが残念であることには変わりなく、肩を落とすと「やっぱりそっかあ」と眉を下げ。クォーヴが何かを考え始めたことに気がつくと黙って次の言葉を待ち、期待にそわそわと指先を合わせる。本当に優しい死神だ。この屋敷ではじめに出会えた住人が彼でよかったと、もう何度思ったかわからない。「……ううん、嬉しい!」外出をきっかけに横の繋がりが広がるかもしれないという別の意図を持っていたことも真実だが、それでも本心からの言葉だった。たしかにここは広さの割に殺風景で、この部屋に物を持ち込んで何かをする、という発想がなかった自分にとってクォーヴの提案は素直に喜ばしいもので。部屋を出るたび誰かを付き合わせるのは気が引けるし、この部屋で植物を育てられるならそれで充分だと心から思えた。生き死にの手綱を握られている家畜の分際で。贅沢をさせてもらっているなと頭の隅で考える。「色々考えてくれてありがとう。余分なプランターをわけてもらえたら嬉しいな」そう呟くとまた笑った。 )
>ナザリ(>1525)
おや、そうかい。
(言葉の戯れ、その最後にはふっと柔い笑みだけを括る。言語の壁へ取り零したかと思った童話がまた拾われた提案に、「それは……」一瞬躊躇で言葉を濁したのは、“寝かしつけ”なんて幼子相手のような単語の所為。その気恥ずかしさと好奇心との葛藤は、眉を垂らしたまま自らの膝元と彼を行き来する目線と、人差し指の背を当てた唇から洩れる微かな吐息がよくよく顕して。「……うん。そうだね……もう読み聞かせで眠る歳ではないけれど、微睡むまで異国の話へ耳を傾ける夜も、偶には良いかもしれないね。」悩む事たっぷり十秒程、此度の天秤は好奇が優勢に傾いた模様。消しきれない羞恥が言葉を些か遠回しに飾り付けはすれど、微笑む視線はきちりと依頼する相手である彼へと向ける。――今初めて己が名を象ったその声は、それまでの捕らえ所が見えぬ春風のような音ではない。暗澹が立ち籠めて肌を微かに痺れさせるそれに、「……“御役目”の話かい?であれば、問題は何も無いよ。」椅子に預けた身体を再度正して、すっと細めた瞳に毅然を湛えて彼を見据える。「僕は何時であれ立場を弁えぬ振る舞いはしない、己の在り方を違える事もしない。…僕は僕のまま、最期の一刻まで翔んでみせるとも。」凛と静かに、しかし堂々朗々と。どれ程常軌を逸した場所に拐われども、限り無く弱く儚い立場へ落とされようとも――果たすべき務めを放棄せず、成したい信念をも通す、その確固たる不変の意志を。「僕が授かったこの名と――あの異界の月に誓ってね。」張った胸にそっと掌を当て、誰もが初めに自己の寄す処とするそれと、いつ何処までも己を見詰めるだろう常夜の光へ誓言したその後。不意にくすりと表情を弛めてみせて、「……それとも。他に何か必要な心構えがあるのかい、サー・ナザリ?」ゆるり傾げた首と共にそんな問い掛けをする声は一転軽やかに、優雅なウィンクも一つ添えて緊迫を断つ悪戯を投げる。――“食事”。意識を僅かに和らげた所へ訪れた一言に下げた視界はまた彼へ。目が搗ち合ったその刹那、心臓から爪の先までざわめき立つ何かに囚われて息を詰まらせた一瞬の次、「……有り難いね。食事の時が待ち遠しくなる言葉だ。」それでも泰然を保ち微笑んだ面持ちと、悠然を崩さぬ物言いを返す。――今目を逸らせば丸飲みにされる小鳥のような萎縮の心地。けれどもだからこそ、怯え臆する本能は震えを握る拳に押さえ伏せて、その大蛇の瞳から逃げず真っ直ぐ視線を交わす。)
>ジョネル( >1524 )
いやいや、君が謝ることは無いから安心して。なんて言ったら良いんだろうな……多分だけれど、お互いに言えない部分があるから…って言ったら良いのかな?きっと深くまで付き合える間柄だったらきっと凄く気が楽なんだろうな、なんてね。
兎も角、ジョネルと話す時間が僕の中でも楽しかった事に変わりが無いから、また気が向いたら話し相手になってやってよ。
ふふ、女王様への伝言もありがとう。アドバイスを受けて手紙を出してみたけれど、もしもう少し言葉を付け加えた方がいいとか何かあれば教えてくれると嬉しいな。
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>キルステン
( 先日の死神へと相談をした夜から幾夜程経ったであろうか。屑籠の中にはその際に名前が挙がった “ 女王様 ” へと手伝いを乞う為の手紙の書き損じが幾つも丸められた状態で放り込まれており、文面で頭を悩ませた事が見て取れるはず。結局書き上げた手紙には 『 ハイネへの贈り物としてカフスボタンを贈りたいから手を貸して欲しいから、手の空いている時にでも僕の部屋に来てくれないか 』 なんて要件のみの簡素なもの。無論筆記体や文面で誰からものもか分からない、なんて事を避けるためにも自身の名を添えるのは忘れずに。机に向かい合う椅子から立ち上がり向かうのは窓辺に置いた鉢の元。日が経っても最低限の手入れだけで綺麗に咲き誇っているのは鉢に植えられている事だけで無く、少なからず不思議な力も作用しているのだろうか。弓形に口角を持ち上げそれらを見詰め、一際密集している部分に咲く一輪へと手を伸ばし 「 ごめんね、俺に力貸して欲しいんだ 」 半ば独り言のように溢したのは手折る花への謝罪。他の茎に傷が付かないように茎を折り、その一輪は書き上げた手紙と共に丁度窓の外へと見えた誰の使い魔かは分からぬ蝙蝠へと 「 これ、キルステンのところへお願いしてもいいかな? 」 人当たりのいい笑みを浮かべて託し。お次は、とばかりに探るのはハイネから貰った服が仕舞われているクローゼット。先日の死神はハイネの友人という肩書きがあった為に少なからず警戒心を解いていた節があるも、今宵手紙を出した相手は全く知らぬ人物。どれだけ見栄を張ったとて構わないだろうと向かい合うのはハイネから貰った服が仕舞われているクローゼット。暫しの睨めっこの後、濃いグレーのセットアップに身を包み、何も持たない自身の唯一の武器とも言える顔がよく見えるよう少し伸びた髪の左サイドをヘアピンで留めて。準備は万端とばかりに満足気な息を吐き出し、来客が来るまでの時間はゆったりと過ごすつもりで )
>秋天(>>1528)
(次いで強請られた品はよもや今まで考え付きもしなかったもの。永久に陽光へ晒されないこの地に日傘が不要なのと同じ、ただ繰り返される聖餐と夥しい数の死に塗れた刹那の営みを連綿と織り紡いでゆくだけの屋敷には記録を残すための特別な媒体はまさに夏炉冬扇そのもの。穏やかな微笑を答えあぐねたような力ない色に染めてから浅く左右にかぶりを振って、しかし投げられた要求を否決の網で叩き落とすだけではなく代替案を柔らかい調子で返そうと「 とびきりの一輪を選んで写生大会…というのはどう?チウがどんな絵を描くか見てみたいな 」それが苦し紛れの提案でないことは、心底楽しそうに柔らかに微笑む様相から感じ取れるだろうか。思い出を増やすことが即ち美食の仕込みとなる死神は、全く悪意なく彼に楽しい時間を過ごして欲しいと考えを巡らせ「 それで帰りにプランターを見に行こう。花は株分けしようか?それとも種から育てたいかな、 」死んでしまうまで同じ部屋で寄り添うのだから、ただの余り物ではなく気に入った鉢を選ぶ方がいいだろう。ならそれを彩る花もできるだけ彼の意向に添えるようにと、視線を斜め上に向け楽しそうに思案を肉声に乗せて)
>グルース(>>1529)
あゝそれがいい。おいで、子どもはたっぷり寝にゃならん
(うきうきと弾んだ声音に対して、老体に鞭打つようにゆっくりと立ち上がる仕草は平素のものかそれともこの先に油断を誘うための撒餌か。そんな歳ではないと言う彼を臆面もなく子供扱いするのは当然悪意あっての事ではなく、重厚な着物の衣擦れと共にベッドの縁へと腰掛けて彼を誘うようにシーツをトントンと叩き。「 俺ぁね、グルース…。お前さんに会えた最初の怪物になれて光栄だよ 」攫われたその夜に異界へ宣誓した彼の気高さと、時折見せる幼さゆえの揺らぎに惹かれる怪物はきっと多いだろう。人食いばかりのこの屋敷で長生きすることはそれだけたくさんの怪物に愛でられたという事だが、短命に終わってもそれだけ熱烈に糧として求められたという事。願わくば彼の行く末をできる限り長くたっぷりと楽しみたいものだ、そんな風に心ときめくのはやはり彼の誇り高い眼差しと裏腹に震えを握り殺す人間の本能の絶妙なバランスが愛らしくて堪らないと感じるから。もし彼がベッドへと来てくれたのなら、シーツ越しに彼の腹へと手のひらを添えとん、とんと緩やかなリズムで柔く叩きながら「 むかあしむかし、あるところに―― 」静かで間延びした調子で話し始めるのは諳んじられるほどポピュラーな物語である桃太郎の最初の一節。吉祥の鳥を冠する彼がどこまで高く、長く翔べるのか――彼の物語もこの夜から始まるのだろう)
>グレン(>>1530)
(珍しい男に声を掛けられた時から尋常でない事態の予感は耳元のすぐ近くで囁いていた。ヒトは糧として喰らうべきものであり、飼い殺しにすべきものではないと考えている女王の目にはダークエルフの道楽は好ましいものに映る事はなかったけれど、シナモン色の死神から聞いた話によれば一概に彼らの関係を糾弾することも出来ず「 …で、そいつの声はどうなの 」伺った問は捕食者として最優先に興味の対象に挙がるもの。しかしその答えには件の獲物の主たる怪物による警告について言及され、呆れて物が言えないといった風情で肩を竦めるに留めたのだった。数日後、熱帯魚――具体的にはベタに似た姿をした自らの眷属ではない羽持ちの使い魔に呼び止められ、差し出された手紙に一瞬怪訝な顔をするも添えられた花から漂うダークエルフの魔力の残滓に心当たりが呼び覚まされて。手紙と花はそのまま使い魔に預け、彼の部屋の前に仁王立ちになれば高く鋭いノックを三度。もし彼が“鍵”を行使し扉が開いたのなら、悪趣味なそれに目玉を時計回りにくるりと一回転させ短く溜息を吐くだろう。そうしてピンと伸びた背筋と隙のない立居振舞からさながら女王のような示威を凪がせた強気な笑みにて彼のかんばせを見つめ「 代価も示さず一方的にオネダリなんて、ナメた真似してくれンじゃない。ねえ、ハンサムな坊や? 」成る程文句無しの美丈夫だわと素直に認め、組んでいた腕を解き自らの髪の毛先を手の甲にてさらりと弾き「 勿体ないわ。あの気の利いた花の一輪がなけりゃアンタを水責めにしてやる免罪符が手に入ったのに 」はぁっとこれ見よがしな嘆息を吐くことで冗談味を醸しながら、ビリジアンのギラギラしたネイルに彩られた食指を彼の眉間すれすれに伸ばし「 アタシはビビリは嫌いよ、特にビビリなオトコ。分かったら今すぐこのキルステンをエスコートなさい 」誰とは言わないが大変臆病な幽霊の姿が一瞬脳裏に去来したのは自分だけだろうか。しかし当然彼を話題に出すことはしない、刺々しい態度ながら悪人ではない人魚は今宵この人間に時間を使うと決めたのだから)
>ナザリ(>1532)
(この短い間だけで幾度、年相応以上に童らしい扱いを受けただろうか。蔑視でも嘲弄でもないと理解していたとて、やはりそれを受け取る手はどうも余してしまう。頼み込んだ口にまた指を当て、ぱちりと泳ぐ目を瞬かせる一秒足らずの逡巡の後、招く仕草に応じて徐と立ち上がれば彼の居るベッドへと己も足を踏み出す。「ふふ、そうかい。…それなら、僕も恐悦の至りだね。」軽やかに弛めたとしても品を崩さぬ桔梗の如き笑みの下、彼の言葉に此方も心からの喜びを示してみせる。――元の世界でもいつもそうしたように、コート類を脱いで畳み、その上へ外した装飾品達を添えて。慣れた所作でそれらを枕元へと置いて簡易の寝仕度を整え、己の屋敷と遜色無いベッドへ身体を横たえる。……人を喰らう者を前にあまりに無防備なその体勢故、話の始めにはほんの僅か強張りを窺わせて。しかし物語を綴る長閑な低音、ゆったりと身に伝わる柔い振動に段々とそれは解け、主人公が冒険へと旅立つ頃には傾聴にばかり心が向く。お伽噺の頁が捲られる毎、端から少しずつ思考の糸も綻んでいき――やがて“めでたし”で話が閉じられる頃には微睡みにすっかり揺蕩い、瞼はその重さに従順と瞑られる。「……おやすみなさい、」殆ど機能していない頭から、それでも言葉を交わした彼へ告げる挨拶は、意識の揺れから年齢よりもずっと幼いもので、それを最後に夢の内へと緩やかに沈んでいく。――まだ羽根も万全と揃わぬ一鶴の飛翔。その懸命と羽撃いた先、どんな結末へと進むか今は知れぬ物語の序章は、久方ぶりの穏やかな寝息を締め括りと筆を休める。)
***
――この辺りが一つの区切りかな。うん、幾ら動揺していたとはいえ、初めはあんな不躾にお堅い態度を取ってしまってすまないね。…でも、初夜が終わる頃にはすっかり緊張が解してもらえたのだから、本当に君は会話上手だね。
それで、そう…次について話さなくてはね。前に言った通り、もう一夜続けて僕がお話を綴らせてもらうのだけれど……ご指名したい怪物様がまだ絞りきれていなくてね。良ければ少し相談に乗ってもらえると嬉しいな。
先ず気になっているのは、僕がこれから読む書の主演であるサー・ギンハ。それから会話に少し登場した悪魔の方々…このお三方の内からであれば、僕と同じ“兄”という立場にあるサー・レンブラントとお顔合わせを願いたい。あとは、そうだね……話に挙がった以外であれば、サー・レオニダスにも少々興味を惹かれている。
……手を煩わせてしまって申し訳無いね。何せ僕、気の多い性分だから、何方も魅力的に見えて仕方が無くて……ふふ。それで、どうかな。僕が挙げた怪物様方、またはそれ以外のまだ見えぬ誰かの中で、僕とお話をしてくれる者は居るかい?
>キルステン( >1533 )
( 短く、けれどもしっかりと届くノック音が鼓膜を揺さぶったのは丁度身支度を終え、仕上げとばかりに鏡に写る姿へと緩く口角を持ち上げて確認をしていた頃合い。扉の外にいる人物はきっと先程手紙を出した相手だろう、なんて推測はこの屋敷の中で危険な目に合う事無くダークエルフに守護されているが故の危機感の無さが故の思考か 「 僕はハイネのものだよ 」 名を尋ねる事もせずに、部屋の内外を隔てる戸の鍵を口にしてから扉を押し開け 「 ──初めまして、僕はグレン。キミはキルステンでいいのかな?」 彼の姿を視界に捉えてから僅かに生まれた間は、先日のフレンドリーな死神との対話で出てきた情報から想像していたよりも上背があった為。自身と然程変わらぬ高さにあるビリジアンの瞳と真正面から視線を合わせて 「 残念ながら僕が持っている物が少ないからね。それに、対価なら選んでもらう方が良いでしょ?」 気後れするの無い返答は今迄接してきた人間や役柄が所以の引き出しの多さから。花の提案をしてくれた死神に心のうちで感謝を述べつつも、それを外に出す事はせずに彼の嘆息とは反対に笑い声を短く溢すだけに留めて 「 ふふ、勿論だよ。女王様 」 彼の言葉で一瞬脳裏を過ったのは言葉を交わした事のある人間嫌いの幽霊の姿。確かに彼は怖がりそうだ、なんて内心納得しつつ、眉間の間際へと突き付けられている方の手を取り手の甲へと軽く口付けてから室内へとエスコートを 「 嗚呼、そうだ。僕の部屋、ハイネの魔力が色濃いみたいだから居心地が悪かったらごめんね 」 ふと思い出したのは部屋を訪れた事のある人ならざる者たちに必ず言われる事。だからと言って一度取った手を離す事無く室内へと導くのは日々ダークエルフと接する中で中途半端に身に付き始めた自信と神経の図太さゆえ。そのままソファの元へと辿り着けば座る上座側へと座るように促し、座るのを見届けてから己は対面する位置へと座して。これでお茶菓子などがあればもてなしとしては上々なのだろうが、こういった時に限って日常生活を送る上で必要以上のお願い事を聞いてくれそうな蝶の使い魔は不在 「 何もなくてごめんね 」 へにゃり眉尻を下げ、相手の方へと視線を向け )
>グルース(>>1534)
いやぁ楽しかったよ、ありがとうグルース。お前さんが謝る必要なんざどこにもないさ、人食いのうろつく屋敷で警戒するのぁ当たり前だからねえ。
お前さんはギンハの好物に当てはまるか微妙な線だが、だからこそあいつぁお前さんに興味を持つだろうねえ。しかし誉め言葉に滅法弱い単純な奴さ、例えお前さんが好物に該当しようが易々と喰ってしまおうたぁしなさそうだ。お前さん、相手を褒め殺しにするのが大層お上手だからねえ…ンふふ。
レンブラントは気紛れに新入りの部屋を訪れるだろうが、お前さんが罠に嵌らない賢い子だと分かればギンハ程は関心を抱かないかもしれないねえ。しかし会話の中でお前さんが弟や妹を心から大事にしていると知れば余興とばかりにそれをネタに揺さぶろうとするやもしれん。気をつけなきゃぁならんよ。
あの獅子頭は…そうだねえ、きっとお前さんを捕食してしまうつもりで来るだろうね。拗らせた奴だから甘言にもなかなか蕩けないだろうが、品のあるお前さんの態度は好ましく思うはずだよ。つまり、奴にとっちゃぁお前さんは涎が出るほど旨そうな獲物だということだ。
まとめりゃあ誰を選んでも愉しい夜が待っていそうだということだね。これで次にお前さんに会える俺の次に幸運な怪物を選べそうかい、何かありゃぁ遠慮なく言うんだよ。
>グレン(>>1535)
(やはり予想もつかなかったのはその解錠の文言。うげろ、とそっぽを向いて舌を出したのは心底ダークエルフの趣味嗜好が理解に遠いためで、それを強いられているお気に入りの彼には不快感などではなく気の毒だわといった類の憐憫を覚える。が、死神の話から彼も満更でもなさそうだと事前に聞いていたために自らの所感を押し付ける気はなく内側から扉が開かれる前には勝気な笑みへと表情の修正は済ませていて「 そう言う割には他のコと比べてスペシャルなものを沢山持った坊やに見えるけど。イイじゃない、手札の多いヤツは好きよ 」逃げることもたじろぐこともせず交わった視線にニヤリと口角を持ち上げる所作には彼への好感が滲んでいるだろうか。ともすれば凶器と成り得る鋭い爪も意に介した様子のない彼の動きを観察しながらされるがままに、手の甲へ触れた仄かに温かく柔らかい感触に肩を竦め「 そこにキスする意味、解ってやってんだったら大したモンだわ 」引かれるがまま立ち入った部屋は彼の言葉通り濃厚な一つの魔力に支配された空間で、ゆっくりと見回せばそこかしこに隣人の痕跡が見て取れ思わず〝 アハ! 〟とカラッとした笑いを短く零し「 胸焼けする部屋だこと 」やれやれといった風情で軽く笑いながら限りなく独り言に近い感想を落として、ソファーへとやや浅めに腰掛けては長い足を組んで。それは図らずもダークエルフが足を組む所作に似ていたが、彼のように高飛車な威圧感ではなく今から会談に臨む敏腕な経営者のようなインテリジェンスを纏った雰囲気にてじっと獲物の顔を見つめ「 結構。お茶の一つもままならないなんて、アンタ達はホント不便ね 」この屋敷で最も弱い立場にある人間に対してもてなしなど期待していたわけもなく、当然責める素振りも見せず高らかにフィンガースナップを鳴らして自身の使い魔たるベタを呼び寄せ「 何か冷たくてさっぱりする飲み物を頂戴。アンタは? 」まるでパノプティコンを反対にしたようなこの部屋では味の濃い熱々の飲料を口にする気は起きないまま、彼を横目で見遣りながら注文を促して。使い魔が準備に戻ったのなら組んだ足の膝上を組み上げた両方の手のひらで包むようにして「 ――それで。ハイネに何をあげたいって? 」死神と違って代価の話を挙げないのはそれが無粋と思っているから。ゆえに端的に話題の進行を求めるようにどこか朗らかさを着た声を紡いで)
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>ナザリ(>1536)
丁寧な回答有り難う、サー・ナザリ。褒め殺しだなんて……ふふ、僕は思った通りの事しか言わないよ。きっと狐の方や獅子の方が来る夜にもね。それから……そう。サー・レオニダスにはそんなにも魅力的なものとして僕が映るのだね。光栄と随喜に咽んでしまいそうだけれど、それはまた次の機会に。…うん、今回はサー・レンブラントにお相手を願おうかな。やっぱり自分の知っている怪物様にもお会いしてみたいからね。
僕は“家族”を引き合いに出されてしまうとどうにも脆いから、もしそうなれば揺さぶりに狼狽する醜態を見せる事にはなるかもしれないけれど……ふふ、又と無い希少な語らいの対価さ。その時は甘んじて受け入れるよ。
……相談はこんな所かな。本当は君ともまだ話していたいのだけれど、あまり君を独り占めしていてもいけないからね。一先ず君とのやり取りの後、目覚めてからの事も少しばかり綴らせてもらったから、そちらのお好きな頃合いにどうぞ、と彼の方に伝えておいておくれ。
それでは、サー・ナザリ。いつか再び、縁が触れ合えた夜に。
***
(――夢を見た。きっとそう、何もかも理想通りの叶わぬ夢を。瞼を開いて直ぐ、ぼんやりと靄の掛かる思考にそんな確信めいた一文が浮かんだのは、目覚めたその時に胸の内が仄かに軽い心地がしたから。「……もう少し、眠っていたかったな…」呼吸を一周する間に、するり記憶の網を抜けて霧散していったそれを惜しみながらも、身体を起こしてベッドを潔く去る。元の世界の頃と同じように彼是と朝の仕度を手際良く済ませていくその仕上げ、姿見の前で絡まり易い癖髪を丁寧に梳き、それを纏めようとリボンを手にする。――“お兄様の為に選んだの”。昨年の晩秋、誕生日に弟妹達が渡してくれた贈り物。掌から溢れる大振りなそれを暫し眺めた静寂の後、徐にその滑らかな表面へとキスを添えて、「……元気でいてね。」いつもであれば己の自室に我先と雪崩れ込むきょうだいへ施す毎朝の祝福を、いつもとほんの少し変えた別れの文言で、揺れる眼差しも合わせて。それから一つ短い息を吐いたのを切り替えに鏡の己と向き合い、手慣れた所作で刺繍の柄が上向きになるよう髪を結う。最後に服装の綻びを確かめ、振り返った先のテーブルへ何時とは無しに用意された食事に瞬いて、続けて眉を下げる。――其処にあるのは過不足無い一人分の食事であり、特別これといった食材の好き嫌いや身体の過剰反応等も己には在らず。しかし、「ううん…食べきれると、良いな……」人より浅い腑の容量だけは別問題。傾げた首と共に惑う小さな唸りは、一人きりの室内に溶けていく。今ばかりは食するものへと意識を置いて。席へと着き、もう一度その量と細めた瞳で見詰めあった後に意を決したようにカトラリーを取り、ゆっくりと食事を始める。――その視界から外れている机の上、昨夜鬼の彼に頼んだ本が予想以上の山を成す状況にもたじろぐ程驚く事にはなるが、それはまた後々。)
>グルース(>>1539)
(安定して上質な命が取り込まれるこの屋敷では、自然界の猛獣達のように明日の糧を賭けて必死に獲物を取り合う必要など皆無。しかし獲物に対する好みが一致した怪物間では往々にしてそういった事態は起こり得る事であり、特に悪魔兄弟はその争いをこの理不尽で無慈悲な屋敷の中に見出した愉しい遊戯だと捉えている。つい先日までも同様のゲームに興じていたが、連敗を喫したからだろうか弟はすっかり臍を曲げてしまい兄からの次ラウンドの誘いも突っ撥ねる始末。微笑ましいような呆れてしまうような、或いはそのどちらも胸中に提げて一人訪れたのはまさに悪魔兄弟の〝次のターゲット〟となるやもしれない彼の部屋。適度な間を空けた穏やかな調子のノックの後「 今晩わァ 」とフランクながらも軽薄さはない落ち着いた調子で挨拶を。そのまま続けて「 君、最近入ったばっかりの子やろ?なんや困っとう事あらへんかな思て来てみたんやけど… 」さて、扉の向こうの雛鳥はもう追従するべき怪物に邂逅した後だろうか。鬼に先を越されたと勘付くのはもう少し先の話だろうが、やはりこの瞬間には期待や野心の入り混じった独特の高揚感を禁じ得ない。しかしそんな手前勝手な楽しみはおくびにも出さず、あくまで今夜は彼を害するつもりはないと明朗に意思表示をして「 俺なあ、悪魔のレンブラントゆうねん。怖かったらココ開けんでもええから、名前だけでも教えてくれへんやろか 」種族と名を明かすのも疚しい事などないと示すため。悪魔などと剣呑な単語は人間相手に警戒心を煽る可能性が高いことは重々承知で、だからこそ自らの立ち居振る舞い次第でゲイン効果も期待できるというもの。両脚の踵同士をぴったりとくっつけて爪先を10度ほど開き、そこから片足を柔く引いて背筋を伸ばし紳士的な佇まいを崩さないまま、長い爪に彩られた指先を胸の前で淡く絡めるようにして反応を待とう)
>レンブラント(>1540)
(すっと伸ばした姿勢で椅子に座して向かい合うは、与えられた本の一冊目。新たな冒険へと旅立つ心地で頁を捲り文字を追う、その表情は誰知れず少年らしく好奇の輝きを以て仄かに弛んでいる。――暫しして。ふいと集中を切らして顔を上げ、近場に置かれたメモ用紙を一枚ダイヤの形へ折って栞とし、それを挟んで表紙を閉じた丁度に響いたノック音。「……おや、どちら様かな。」直後の挨拶は随分落ち着いた、しかし知らぬ声と訛り。椅子を発って落とした独り言に答えるようなタイミングで上げられた名乗りに、思わず足を止めてまだ遠い扉を見つめる。……驚きに声を零さずに済んだのは、鬼からその存在を仄めかされて構えを備えられていた事が一つ。それから、「……レンブラント?」何処かで聞いた画家と同じ名に気を取られた事が二つ目の理由。それは美術館だったか、それとも王宮の収集品か――一瞬ばかり思考を馳せて、だが直ぐに目の前の声の主へとそれを戻す。「ああ、お気遣い有り難う。」反応の遅れた声は些か緊張の固さを持ちながらも、配慮に対する丁寧な礼を。「でも、大丈夫さ。…今其処を開けるから、少々待っていておくれ。」そこに続けて和らぎが意識された音を彼へ届け、その害意の見えぬ文言を一先ず信じて半端になっていた歩を再度進める。十秒足らずと着いた扉をゆっくりと開いた先、最初に視界に入ったのは初夜の彼より幾分か馴染み深い装い、それに長い爪を持つ青白い手。視界を上げれば鋭い琥珀の瞳、さらり滑らかな紫の髪、そして――その髪から生える黒い角。更に翼に尾と、誰もが想像する“それ”の特徴を持ち得る彼へ、微かに顎を引く警戒の態度を取ってしまったのは無意識の事。「今晩は。そしてようこそ、明け星の御遣いたる方。僕はグルース・ロシニョール・アンリ・ドゥ・リヨン。君の好きに呼んでおくれ。」“悪魔”の項を聖書と絡めた己の言葉へ変換し、此方も胸元へ手を添え求められていた名の全容と共に会釈を。「…さて、うん。困り事という程ではないけれど、君のご厚意に少しばかり甘えてもいいかい?」起こした視線で琥珀の瞳を凛と油断無く見据えて、しかし声音も微笑みも悠然と柔らかなものを保ち、先の扉越しの言葉を引用した確認を一度問うた後、「今の僕は丁度、一人の静謐よりも、誰かの響きと寄り添いたい気分でね。……だから、君が来てくれた事がとても喜ばしいよ。」ふっと笑う小さな吐息と共に告げた用向きは態々訪ねた彼の面を立てる建前――それと、この胸へ澱み始めている寂寥の本音が一匙。「中へどうぞ、サー・レンブラント。大したお持て成しは叶わないけれど、どうか寛いでいっておくれ。」瞳を揺らしかけたそれを瞬きの内に伏して足を退き、扉を押さえたまま室内を掌で差して彼を招く。)
>グルース(>>1541)
――もうちょい大きい子ぉかな思たけど。しっかりしてるなあ
(扉の向こうからの応答ひとつひとつに違和感を覚えるほど落ち着いた態度にはどこか上品な余裕さえ感じられる。新入りと数えられる類の存在であるには違いない筈なのに、少なくとも未だ謁見の叶わぬ声だけの印象ではもう何ヵ月もこの屋敷で暮らしているのかと錯覚し兼ねない。開いた扉、彼が顎を引くのとはまた別の意味合いでこちらも思ったより低い位置にあったペリドットの双眸を見つめるために顎を引いて心底感心したような調子で素直な感想を。「 生憎、仕える主人はおらへんのよ。君みたいな可愛らし子ぉのワガママ叶えるンは大歓迎やけどなあ 」口角はずっと上げたまま、洒落た彼の言葉へ返すように夢とも現ともつかない悪魔らしい誘い文句を。そして縷々紡がれた流麗な響きの名には白く柔らかな翼のはためきを感じるような心地で「 綺麗な音ばっかしでどないして呼ばしてもらおか悩んでまうなあ。君の一族はみんな翼持っとるん? 」華美な服装、洗練された佇まい、年齢の割に丁寧な話言葉、決め手はやんごとなき身分を証明するカメオ。正統な血脈を受け継ぐ者たちはその名に一貫性を持つ事も多い、そんな慣習を知っていた悪魔は世間話のような調子でひたひたと彼のプロファイルに忍び寄ろうと試みて「 悪魔招き入れた上に寛いでぇ、て。君、ホンマ大したモンやわ 」いくら害意はないと表明されたとはいえ相手は見るからに得体の知れない怪物。襲われてしまえば一貫の終わりだろうにそれを気にする素振りも見せないのは、彼が穢れを知らぬ高貴な性善説の中で大切に育まれたからなのだろうかと推察を巡らせながら扉を押さえてくれている彼の肩をトンと労うように叩いて「 おおきに 」と告げ、最初に目に入ったのはデフォルトで備え付けられていないであろう大量の書籍と、そこから仄かに立ち上る鬼の残り香に目を細め「 読書の邪魔してもうたかな、堪忍 」気にする素振りはなくそう告げて、窓枠へと歩み寄ってはガラス越しに月を見上げ「 ずっと夜なんはもう慣れた? 」肩越しに彼へと振り返り変わらず口角は緩やかに上げたまま問い掛けて)
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●グレン × キルステン ⇒ 【 >>1537 】
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>レンブラント(>1542)
おや、それは失礼。…ふふ、君の賛辞と照らせる我が儘を探すのは大変そうだ。
(彼の感想を和ませた瞳で受け取った後、誘う言葉はジョークにて柔らかに躱す。思惑を知ってか知らずか、話題と掛けられた声には一つ首肯を返して、「そう。このリヨンの血統を継ぐ者は皆代々、空を翔けるものの名を戴く慣わしなんだ。歴代の公爵とそのきょうだい達も、末孫である僕も。そして、僕の弟妹達も。一人として例外無く、ね。」自らの胸元に右手を添え、名に纏わる家の子細を淀み無く朗々と告げた次。その指を首元のブローチへと滑らせて、「これは家を分ける折、王家の紋章であるグリフォンの翼を名と賜った初代に由来する――つまり、王族と血脈が繋がる一族である事の、栄誉ある命名なのさ。」王冠、鷲、二輪のアイリス――己が一族を象徴するそれらが彫られたカメオの表面を親指で撫で、そのまま続けるのは家の歴史、その始まり。驕りや優越は見当たらない、宛ら書の音読でもする教師の如く、ゆったりはっきりとしつつも何処か淡白な語り口でそう名付けの由を教えた最後、「……もっとも。僕の弟妹達はまだ、名に見合わぬ愛らしい雛鳥だけれどね。」瞼の裏へ浮かべたその幼い雛達の顔に、ふっと軽やかな笑いを吹いて締め括る。「……僕に君を拒む理由は無いからね。」室内へと踏み入った背を見届ける際、肩を叩く掌への応答に選んだのは、“何が起きても受け入れる”という意思表明。凛と覚悟を通した芯の内に、何もかも綿に包むような甘さをこっそりと含ませたそれを瞬きに切り、「いいや、本には丁度飽いてしまった所だったさ。」謝意に対して茶目っ気を滲ませた仕草で肩を竦める。それから「……そうだね。この静かな藍が続く世はとても好ましいけれど――」扉を閉ざし窓辺の彼と穏やかな視線を交わらせ、問いへと答えを静かに紡ぎながら、その傍に悠々と優雅な足取りで歩み寄り、悪魔の隣へ踵を揃える。その目の前の窓から煌々光を注ぐ眩い月を見上げれば、「起きた時に誰の声も音も聞こえない事に慣れるには、もう少し時間が必要かな。…家に居る間は、愛しい雛鳥達に囲まれて過ごす事が多かったから。」その月よりもずっとずっと遠くを見詰める瞳を細めて、話す声には微かな寂寥の吐息が混ざる。更に重ねた答えの中に並べた“囲まれる”という言葉には、雛鳥――弟妹が一人や二人などではなく、もっと多数である事が示されている。「…サー・レンブラント。」しかしそれ以上の感傷からは目を逸らして、向けた半身のまま彼と顔を合わせ、「君にも兄弟や家族と呼べる者は居るのかい?」話にその存在を零したついで、悪魔の彼にもそれに並ぶものは在るのかと、興味に色付いた眼差しと音で問い掛けの微笑みを返す。)
>キルステン( >1537 )
“ それ ” を気に入るかは人によるし……それに、手札を見せちゃったら交渉に不利になる事もあるでしょ?
( 持ち上がった口角を見るにどうやら特段悪い印象を与えてしまった様子も無く、寧ろ好感を抱いてくれたのではなんて考えさえ浮上する。ゆるりと口角を持ち上げ首を傾けて見せるのは同意を求めるため、というよりかは少しでも余裕があるかのように振る舞うための虚勢にも似たそれだが果たして彼にはどのように捉えられるだろうか。「 ふふ、お褒めに預かり光栄ですレディ 」 演技をする上で糧になるからと詰め込まれた所作やその意味の数々は未だに確りとインプットされているが、今はそれを深く語る必要性も無いだろうと戯れに似た少々おちゃらけたような声色で言葉を紡ぎ出すと同時、軽いウインクをお披露目するだけに留めて。部屋に充満しているであろうハイネの魔力に対する感想が思いの外さっぱりとしていたのは彼の気質によるものだろうか。そうで無いにしろ腰を据えて話を聞いてくれるらしい姿勢に小さく安堵の息をこぼした後ソファへと座す姿にぱちりと瞬きをしたのは、その所作があまりにもダークエルフのそれと似通っていたから。けれども纏う雰囲気は異なるもので、直ぐに普段通りの笑顔の仮面を被り対面する位置へと腰を下ろし。「 そう言ってくれると助かるよ 」 眉尻を下げた情けのない表情はそのままに、笑みを浮かべる事で安心した様子が伝わるであろうか。注文を促されるがままにさして悩む素振りも無く 「 じゃあ、僕は冷たいコーヒーを貰えるかな? 」 きっと主人からの伺いがあったからであろうが承諾してくれたのだろう反応を残し準備に戻る姿に “ ありがとう ” と小さく感謝の言葉を落として。率直に今夜の本題へと切り込んでくる彼の言葉に視線を戻し 「 手紙にも書いたけど、カフスボタンを贈りたくって。手作りで、僕の瞳と同じ色の石を使ったやつ 」 視界に入れば己の事が僅かにでも頭に過れば良い、そんな欲に塗れた贈り物は他の怪物の力を借りなければ一気に難易度が高くなる事なんて長くは無い屋敷での生活で痛感している。一呼吸置いて対価に関する事を付け加えるのは話しておかなければフェアで無いという意識からくるもので 「 ただ、僕自身を切り売りするのは許してくれないご主人様がいるし、キルステンに対する見返りが少ない事も理解してる 」 視線は一度も逸らす事無く、一直線に相手の瞳を見据え 「 貰ってばっかりは嫌だから。俺のとこに居なくても俺を思い出してくれる物を、ハイネの側に置ける物を贈りたいんだ 」 今迄の流暢な喋りからは一転。辿々しさを残したそれは本心からのもので )
>グルース(>>1544)
(一冊の歴史書を紐解くように流暢に紡がれた内容は大変煌びやかなもので、人間が聞けばきっと多数の人間が憧れたり羨ましがったり、或いは嫉みを向けるのだろう。だが当の本人はそれを鼻にかけるでも笠に着るでもなく只生まれながらに背負った事実として受け入れているような恬淡さえ感じさせる。雛鳥に思いを馳せたその綻んだ表情を横目に見つめ「 授かった名誉の重さをちゃぁんと理解しとる程、重苦しさを感じるもんやろ。そっから解き放たれてもなお誇り高く涼しげに羽ばたく君は根っからの貴族やね 」未だ成鳥へと育ち切らない華奢な彼の背にもきっと既に立派な翼が生えている、そう感じれば並び立つ彼へ斜めに向き直り指先をぴしりと揃えた手のひらを胸に当て敬意を示すように微かに顎を引いて浅い礼を。そうしてその手を天井に向ければ、ポンという空気が軽く弾けるような音と共に屋敷の図書館から悪魔の手中へと転送されてきたのは人間界の野鳥図鑑で「 君は鶴と夜鳴鶯。ちびちゃんらはどんな雛鳥? 」成人男性を体現するような大きく骨張った手、その親指と残り四本で図鑑を挟むようにして器用に支え開きながらページを捲ってと促すように半歩身体の距離を寄せて「 ああ…そりゃ確かに寂しいわなあ。までも、君だけやのうてちびちゃんらまで攫われてきてしまうよりマシなんちゃう? 」まだ僅かしか言葉を交わしていない中でも彼が深い愛情を弟妹たちへ抱いている事は容易に伺い知る事ができる。そんな雛鳥たちと離れ離れになったのはさぞ寂しかろう――ああ、可哀想で可愛らしい。善意なる励ましの形を借りながら含ませるのは黒薔薇の犠牲者に選ばれる可能性は彼のためだけにあるものではないという事実。この先雛鳥までもが黒い悪意の茨に絡め捕られない保証なぞどこにもないのだと――そこで少し顔を上げて周囲を見渡し、丁度窓の向こうに飛翔していたカラスの使い魔をちょいちょいと呼び寄せては少しだけ窓を開けて「 毎日この子に〝おはよう〟言うたって 」魔の言語ではなく人にも解せるそれで命令を与えれば使い魔は僅かに狼狽したようにちらと悪魔と彼の顔を交互に見て、最後にはカァと鳴いて了承を示し飛び去って。その姿を眺めながら「 窓は開けとかんでもええよ。あの子ら神出鬼没やから 」悪魔が特命を取り下げない限り、彼がここ数夜で味わった目覚めた時の静寂と孤独はきっと二度と訪れないだろう。そんな計らいの後、問い掛けられた内容にふっと笑って「 おるよ。丁度こンお屋敷に弟が一人。カナニトっちゅう可愛らし子やけど、今は色々あって拗ねとる。ろくに口も利いてくれんわ 」兄弟想いの彼と共通点を作るように、自らもさも愛おしげに弟について朗々と語る。拗ねた理由が獲物を弄ぶゲームに端を発するだなんて勿論間違っても口に出したりはせず、最後には困ったように自嘲気味の笑みさえ浮かべて「 兄ちゃんってムズいよなあ。仲良う出来るコツあったら教えて欲しいわ 」あくまでも、弟が大切で仲良くしたいけれど弟側が臍を曲げてしまって困っているのだと。そんな論調を保ったまま、眉尻をハの字に垂れさせて控えめに笑って)
>グレン(>>1545)
小賢しいコト考えてんのね。手札が多かろうが少なかろうが、相手に刺さるカードの有無で呆気なく決まっちゃうじゃない
(ハッと笑い飛ばすような言葉たちもこれまた責めるような論調ではなく、あくまでも人魚の平常運転。圧倒的に持たざる者側の立場を強いられる獲物たちが自らの思い通りに事を進めるために謀略を巡らせるのは当然の事、そのうえ異界の屋敷でそのように賢く立ち回れる胆力のある獲物は嫌いではなくむしろその逆。すぐに用意された飲み物はどちらもよく磨かれたコリンズグラスの中に注がれており、彼の前に置かれたアイスコーヒーの淵には切れ込みを入れた六角形の不思議な白い果実のようなものが差し込まれていて「 それ、見慣れないでしょ。苦いのがダメなら好きなだけ絞りなさい。ブラックが良けりゃ只の飾りとして目で楽しんで 」人間界に存在しないその果実は奇しくもガムシロップとミルクのような役割を果たすらしく、躊躇いなく彼に勧めたことから人体に害を及ぼすものではないらしい。言い終えた人魚はブルーキュラソーのような透き通った青い液体をストローで一口吸ってからコースターの上にグラスを置いて。真っすぐな彼の視線を受け止めるようにこちらも一切目を逸らさず、飼い主への返礼と言いながらそれをしっかりと自己顕示の布石にせんとする強欲さに「 ジョネルの言ってた通りね。アンタ達お似合いだわ 」納得するように数度頷きながら素直な感想を、そうしてふと勝気な笑みを浮かべて「 アタシはアンタの飼い主の事そこまで好きじゃないの。だから応援はしないケド、このキルステンを呼び出したアンタの勇気に免じて今回は甘ったれた我儘に手を貸してあげる 」変わらず棘のある物言いだが今回の件に関して助力を惜しまないという決意は彼に伝わっているだろうか。ふと思い出したようにぴっと人差し指を立て「 お代は今度飼い主に請求するわ。素寒貧に無い袖振らせるほど冷血じゃないの 」支払いであれこれ揉めるなんてスマートじゃない。半分ほど残っているグラスの中身をストローで一息に吸い込んで空っぽにして「 じゃ、行くわよ 」すくっと立ち上がり行先も告げずスタスタと扉へ向かう、その道中に「 可愛いペットが自分の為に用意してくれたプレゼントがアタシの魔力で作ったものだと知ったらアイツはどう思う?……アタシは面倒事に巻き込まれるのは御免よ。だからアンタが自分で石を見つけなきゃ 」親しくはないが同じ黒薔薇屋敷の虜囚同士、全く理解がないわけでもない。他の怪物の魔力が香る贈り物なんて身に着けるどころか粉々に砕きかねない、もしそんな事になったらあまりにもこの子が可哀想じゃない。そんなリスクをわざわざ背負わせる必要なんてないわ、そう考えを巡らせながら躊躇いなくガチャリと扉を開いて廊下に一歩踏み出し「 いらっしゃい。アタシは愚図もキライよ 」ニッと笑って彼の顔を一瞥すれば、ピンヒールの跫音を吸収する赤い絨毯の上をスタスタと淀みなく進んで)
>レンブラント(>1546)
(血統に相応しき振る舞いに向けられるものは羨望、嫉視、はたまた“出来て当然”という悪意無き威圧――そのどれでもない敬意を示した彼を見る瞳は大きく見開かれる。「……そんな事、初めて言われたね。」何度も瞬きながら発した声も些か呆けて、その言葉が偽り無いものである事を物語る。それから柔く崩れた頬が素直で幼い喜びを滲ませた後、再びすっと澄んだ微笑みを整えて、「……ならば。その言葉に恥じぬ羽ばたきを、この先も。」凛と優雅に、片足を引いた仰々しい程の一礼にてその敬意へ誓ってみせる。軽やかな音に顔を上げれば、そこには一冊の図鑑。己よりも優に一回りは大きい手の上に開かれたその本を現した意味を知れば、ふっと驚きを嬉々と弛め、「ふふ。それじゃあ、上の子から順にお教えしようか。」此方からも半歩彼に身を寄せ図鑑を覗き、それに手を伸ばす。「一番上の雛鳥……次男はエグレット、まだ九つだけれど、向上心と求心力に優れている子だ。長女がシーニュ、彼女は手先が器用で、物作りが得意な淑女。三男がピジョン…彼はとても細やかな感性を持っていて、美しい詩を綴ってくれる。」ぱらぱらと捲っていく頁から抜き出すのは、まず年長の弟妹――カリスマたる白鷺、技術家の白鳥、詩人の鳩。ただ記される画を指すだけではなくて、一人一人讃える言葉を添えるのは、家族をついつい甘やかす“世話焼き”の性分故に。「それから次女と三女のアルエットとシュエット…彼女達は双子でね、歌もお喋りも息ぴったりなんだ。そして最後の四男がイロンデル。…この子は最近やっと歩けるようになったばかりだね。」続いては年少――阿吽の雲雀と梟、それにまだ殻付きの燕。頁に描かれる一羽一羽、示したその指で絵の頭をなぞる仕草と共に注ぐ視線は、とびきり愛おしげに甘い。「……これで全員。どの子も皆眩い黄金の翼を纏う、僕の大事な子さ。」ふっと彼へ戻した瞳はまた穏やかに凪ぎ、紋章たるグリフォンと弟妹の持つ色彩に絡めた言葉を締め括りに、頁から手を下ろす。――慰めるような彼の声。しかしその内容が示す事を正しく汲み取ったその瞬間はっと息を呑み、微かに強張る顔で彼を見詰めた後に、「それは、……そうだね。僕はあの子達に、怖い思いも痛い思いもしてほしくはないから。それに……」もしや、彼ら彼女らも。過った思考に視線を逸らし伏せ、応答する音は平然を取り繕って絞られる。しかし、「同じ場所に居るのに、守れない方が、余程――」大切なものが其処に在るのに、指も届かず奪われる。そんな状況を子細に想像した――或いは“思い出した”ように、続く言葉を閉め切った唇は戦慄いて、頬は蝋の如く青褪めて。短い爪が食い込む程両手の拳を握りながら、爪先に落とした目の内に揺れた怯えの雫を振り切らんと顔を上げた直後、視界に入ったのは一羽の烏。同時に聞こえた指示にその使い魔と見合わせたような同じ動きで彼を見上げて、「……素敵な心配りを有り難う、サー・レンブラント。君は随分優しい方だね。」此方へ向けられたものが先の寂寥への答えだと知って、表情も声も暖められて綻んで。「おや、それは大変だ。僕で良ければ相談に、と進み出たい所だけれど……僕自身は、弟妹達との仲違いにとんと縁が無くて。サー・エグレットが僕と競いたがる事は多かったけれどね。」見付けた共通点に面持ちは何処か華やいで、その物言いは喧嘩した弟妹の仲裁に入るような寄り添いを持って、けれども少々戸惑う色も垂らす眉に滲ませる。「……ああでも、一度彼に“何でも出来てズルい”なんて拗ねられた事があったね。その時はいつもより沢山褒めて、頭を撫でてあげたな。あの子が出来る事を一つ一つ一緒に数えて、君は凄い子だって……随分前の話だから、あんまり参考にならないかな。」沈黙を落とした数秒の次、探った記憶の箱から取り出したエピソードの一欠片を例には出したものの、今よりも幼少のその話が、すっかり成人を過ぎているだろう悪魔の兄弟に当て嵌められるとも思えず、言葉を終えた微笑みには苦みが増す。「…ふふ。それにしても、優しい君にそんなに大事に想われているその子の顔、僕も見てみたいな。」それからまた柔い吐息を零して紡ぐは、困っている様子の彼を励ます糸と、“弟”という存在に抱く慈しみの糸。その二つをゆったりと織り込んだ興味を口にして、「君さえ良ければ、今度ご機嫌を窺ってきてはくれないかい?」まるで、仲直りを促す兄のように。目の前の兄弟がまた話せる切っ掛けに、自身の話題を差し出す形で案を掲げ、己は緩やかに首を傾げて見遣った彼の返答を窺う。)
>キルステン( >1547 )
でも、持っている物が分からなければ一先ず話は聞いて貰えるでしょう?
( 下手をすれば悪意を持っていると捉えられかねない語調だが、詰められているように感じる事が無いのは彼の性質故であろうか。同意を示すように小さく首肯を一つしてから、緩い笑みと共に “ 違うかな? ” とでも言いたげに首を傾けて見せて。そんな事をしている間に用意されたグラスの縁に添えられた見た事の無い果実のような物をマジマジと見詰めていれば耳に届く言葉から察するに、ミルクとガムシロップのような物らしい事が容易に想像出来。特段苦味に弱い訳では無いが、初めて見る物に興味があるのも事実。ほんの少しだけ絞り入れてからストローでくるくると軽くかき混ぜてから一口飲み込めば、人工的な甘みよりやや柔らかな甘味に口元を緩めて。先程までの真剣な表情から一転、目元を細めた笑みを浮かべて 「 ふふ、そう言って貰えると嬉しいな 」 お似合い、それが喜ばしく感じるかはきっと人によるのだろうが少なからずこの自己肯定感の低い男からしてみれば、褒め言葉以外の何者でも無く。少なからず今夜の願いに関しては助力をしてくれるらしい様子に安堵の息を漏らし 「 うん、ハイネ相手なら僕から払えるものもあるから、そうしてくれると助かるよ 」 きっとあのダークエルフの事、又借りの対価を求められる事もあるだろうが然程難しい事は要求して来ないであろうとの考えだが果たして。立ち上がる姿をぽかんとした表情を浮かべたまま見詰めるのは予想だにしていなかったから。けれども扉までの道中の言葉にくすりと小さな笑い声を漏らして 「 きっと物凄い顔をするだろうなぁ 」 稀に垣間見せる独占欲から予想するに、渡さずとも己が持っているだけで不機嫌になるだろう事が目に浮かぶ。グラスを満たす珈琲を半分程まで飲み切ってから立ち上がり、片付けを始めようとする使い魔たちに思い出したように 「 戻ってきたら飲むから、置いておいてくれると嬉しいな 」 なんて声を掛けてから部屋を出ていく彼の後をついて廊下へと。屋敷へと拐かされてから部屋を出たのはハイネの温室へと行ったあの一度きり。見渡しても見覚えのあるどころか景色に大差無く思えるのは不可思議な力によるものか。先を歩く彼との間をなるべく開けないようにしながらも物珍し気に辺りへと視線を巡らせながら歩を進めて )
>グルース(>>1548)
君に追い風が吹きますように
(綿菓子を軟らかな糸に変えたような髪をそっと撫で、鶴の高潔な誓いに悪魔から返すのは期待も心配もなくただ祈りだけ。髪に触れていた手を彼の肩へと緩やかに滑らせ「 ちょっと疲れたな思たら俺の肩に留まりい。休む場所もない大海原を孤独に行かせる気はあらへんよ 」トン、と労うようにまだ華奢な肩へ手を添え黒薔薇の鳥籠に囚われた彼の止り木へとちゃっかり立候補。正直なところ、順繰りと紹介されてゆく雛鳥たち一羽一羽よりも今触れられる距離に在る至極甘やかな声と表情で囀る彼にのみ興味の矛先は向けられているが「 ふ、みんな可愛らしなあ。お小遣いあげたいわ 」可愛いと感じるのは自慢げに弟妹たちを語る彼も等しく対象に数えられ、裕福な生まれゆえ金銭の施しなど必要ないと理解していながら駄洒落のつもりで微笑ましく自身も最後の頁の鳥――燕の絵をそっと指先でなぞり。さて小手調べのつもりだったが雛鳥を引き合いに出すことで無欠に見える彼が容易に心乱される事を瞬時に学習すれば「 ……君の翼が届かん場所もある。俺らが万能ちゃうンと一緒や 」未来に起きてしまう事を恐れているのか、はたまた過去に起きた変えられない事象を回顧し唇を震わせたのか。異界の月の下、自らを喰らうかもしれない異形を目の前にして悠然と礼をした彼からは今一つ想像出来ていなかった弱さの片鱗を垣間見れた事に悪魔の内心は色めきだつも表情も声色も神妙なそれのまま「 素敵な君のきょうだいや、いつ黒薔薇に目ぇつけられるか分からん。もちろん茨が及ばん事もある、けどもし…そうならんかったら、 」図鑑を傍に置き、空いた両腕にて緩慢な動作で小さな彼を抱擁する。兄が弟を慰めるように、或いは悪魔が甘言で人間を誑かすように、すべての災厄から彼を守る盾のように、或いは退路を断ち自らの手中に収めんとする壁のように。とん、とんと彼の背をさすりながら静かで優しい声にて「 気に掛けるわ。怖い思いも痛い思いも、出来る限りせんで済むように 」闇の中にこそ安らぎを見出させる悪魔はそう告げた後ゆるりと腕を解いて、くるり踵を返せば窓に背を預けるように体勢を変えて腕を組み「 はァー……ほんまよう出来た兄ちゃんやね、君。それ素直に聞ける白鷺くんも凄いけど 」そもそも人間と悪魔では目下の者の慈しみ方が異なるのだろうが、語られた過去はまさしく目上の者の模範たるに近いものなのだろう。感心したようにしみじみ長く吐息して、真に求心性に秀でるのは彼の方ではないかとすら思えてしまう。いずれにしても彼の甘いやり方は悪魔兄弟に効果的なものではないけれど、それでも弟の敗北を煽る際に使えそうだと半ば無意識に思考している最中に当の本人に話題が移ってしまえば困ったように低く笑って「 君の事、素敵な子やと思っとるんよ。せやからホンマやったら独り占めしたいンやけど? 」蛇のような流し目はしかし爬虫類には無いしっとりとした情熱を底光りさせるように彼を見つめて)
>グレン(>>1549)
そう、イイコだからキビキビついて来なさい。ホントはアンタを連れ回すのだって気が引けるんだから
(自身の使い魔に片手間に命じたものとはいえ、出したお茶を無下にされないのは矢張り好ましい。背後から聞こえてきた使い魔への小さなお願いに背を向けたままふっと微笑み、厳かながらも上機嫌の滲む声色にて後ろに追従しているであろう彼へとお小言に似た忠告を。あの特別製の錠、部屋を満たす彼を雁字搦めにするような魔力であの部屋は最早獲物の檻から特製の軟禁室へと変貌を遂げているように感じる。そこからたった一つの閉じ込める対象を連れ出したとなれば部屋もその創造主も心中穏やかではないだろう。面倒事は御免被るがいくら好かないとはいえ同胞に不愉快な思いをさせる事も御免だ、そんな逸りに似た心地から歩行のテンポは普段よりも早く。ふと頭上に気配を感じてちらと高い天井を見上げれば短くため息を吐き、ネイルでより長く見える指先で上を指し示し「 ホラご覧。ちんたら歩いててあんなのに囲まれたらその指輪があっても五体満足じゃ済まないわよ 」あの部屋から出たのにハイネの魔力に付き纏われているような気がしていた、その元凶且つ正体は彼の左中指にこそあったのだと部屋から十分に離れて漸く気付いて。まるで早く寝ないとオバケが来るぞと子供を緩やかに脅かすように引き合いに出したのは丁度出現していた理性なきバケモノの存在。音もなく天井を這いまわる影のような靄をまとう蜘蛛は映画館のスクリーンを覆えてしまうようなおどろおどろしい巨体でじっと怪物と獲物を見下ろしており「 怖けりゃアタシの服の裾でも握ってなさい 」いかに巨大なバケモノでも怪物に敵わない事は皆理解しているため人魚と共に在る限り手を出してはこないだろう。自身はそう分かっているからよいものの、見慣れないバケモノに彼がどう感じるかは想像に難くなくつっけんどんながらもそれに寄り添う姿勢を見せながら幾つかの階段を降りていき)
>キルステン( >1551 )
ある程度自由に過ごす事は許されているから、そんなに気を張らなくても大丈夫なのにな
( ややむくれたような声で紡ぎ出す能天気とも捉えられるだろう感覚はどれほどあの部屋を一人の魔力が満たしているのかを知らないからこそ。けれども彼が言わんとしている事も分からないでは無いために歩を止める事はせずに廊下を進み続けるも辺りを見渡しながら歩いていたためか、それとも歩みを進める彼のペースが早いのか、気が付けばいつの間にか部屋を出た時よりも開き始めた距離に気が付きつつも焦る事をしないのは指輪に守られている、そんな思考が強いため。指差された先の天井へと素直に視線を持ち上げればそこに居る巨大な蜘蛛を視界に捉え。本来であれば恐怖を覚えるところなのだろうが、それを感じるどころか内心落ち着いているのはダークエルフのお気に入りたる自覚があるからか 「 ふふ、ありがとう。でもキルステンと一緒なら安全だろうし……万が一の事があってもハイネが飛んでくるよ 」 左手の中指に嵌る指輪へと軽く口付けを落とし、服の裾を掴むまではしないものの僅かに開いた彼との距離を埋めるために小走りに近寄って半歩程後ろの辺りで 「 そういえば、今ってどこに向かってるか聞いても良い?屋敷の中に何があるとか全然分かってなくって 」 部屋の中にいれば安全、外に出る時は誰かと一緒に。そんな約束を愚直に守っているがために主な生活圏は自身のテリトリーたるあの部屋のみ。それに加えて屋敷の設備に関する話を誰かと交わした記憶も無い。へらりとした笑みを浮かべながら首を傾けて )
>グレン(>>1552)
世間知らずなガキみてえなコト言ってんじゃないわよ。大人同士は色々気ィ遣うモンなの
(ここは大いなる魔力に護られた自室の外にもかかわらず些か緊張感に欠ける彼の様子に呆れたように大袈裟な溜息を。彼の外出を〝大丈夫〟と捉えるかどうかは彼ではなく飼い主が決める事、もし彼が絶対的庇護者を持たない他の獲物と同様の立ち位置なのであればあれこれと好きに連れ回せるのだがよりにもよって囲い主はあの執着気質なダークエルフ。ハイネもそのお気に入りの獲物も自分から見れば腫れ物に近い存在であり可能な限り関わりを避けたいと感じるのは当然の事、しかし依頼を引き受けたのは少なからず彼のエゴたっぷりな願いの中にも無垢な健気さを感じ取りその気持ちは応援してやりたいと思ったからで「 ったく…。次グズグズしたら強制首根っこ鷲掴みの刑よ 」ちらと肩越しに背後の様子を窺えば指輪にキスする姿を丁度目撃し、よく懐いたものねと軽く肩を竦める。彼がしっかりと自分との距離を縮めた事を確認してから前方を正視、この見目麗しい人間がハイネに依存に近い全幅の信頼を置いている事は充分理解できた――どれだけハイネが彼を甘やかしているのかも何となく想像がついて「 きっとハイネは激しく親馬鹿になる男でしょうね。周りの方が躾にあれこれ気を揉むタイプの厄介な親馬鹿 」必ず守るからとたっぷり甘やかす余り、子の健全な危機感を養えず面倒を見る羽目になった周囲が疲弊する――そんなイフを容易に想像できてしまえば実現する夜は来ないであろうと理解しているため冗談めかしてカラカラと笑い「 終わらない廊下、ループする階段、扉だって無限に存在するってのは知ってるでしょ?とびきり運が良い夜はね、どっかの扉がステキな場所に繋がったりすンのよ。勿論黒薔薇のテリトリー内限定だけどね 」階段を降り、廊下を曲がり、それを何度か繰り返して立ち止まったのは何の変哲も装飾もない、獲物の部屋と全く同じ意匠の扉の前。自慢気にコン、と扉を一度叩いて「 これはアタシの見つけたお気に入り。誰も彼も連れて来てやるわけじゃないのよ 」そのままノブを捻り扉を押し開けると、その先には見慣れた間取りの部屋ではなくぽつぽつとランタンの灯りが点在するだけの薄暗い洞窟のような道が続いていて「 おいで。足元、滑りやすいから気をつけるのよ 」危険はないと示すようにまずは自身が一歩先に前へ、そうして半身で振り返り勝気な微笑みのまま忠告をしてから今度はカツカツと高い踵の音を響かせながら奥へと進行し――突き当たりの階段を数段登ればそこに広がるのは洞窟の吹き抜け部分。空いた穴から月光が煌々と差し込み、壁や床のあちこちに埋まった色とりどりに煌めく石がそれを反射し共鳴するようにキラキラと存在を歌う神秘的な光景が広がっていて)
***
交流中に悪いわね。アタシのお気に入りの場所、〝煌めきの塒〟のイメージ画像を公開したわ。ここにある宝石の色とか形とか自由にロル内で描写して大丈夫だからね。
【 https://grand-guignol.hatenablog.com/entry/locus 】
>レンブラント(>1550)
(誓いと祈りの後の申し出に相好をまた崩して、「そのお言葉、痛み入るよ。…うん。休みたい時には、君を呼ばせてもらおうかな。」何時か解らずともそれに甘える約束をする。「ふふ、きっと喜ぶよ。」可愛いと褒める言葉は無論弟妹達のものとして、ジョークに至極楽しげな吐息を零して相槌代わりの一言を。……雛鳥達が、決して己と同じ目に遭わない保証は無い。届く言葉はあまりに残酷で、けれどどうしようも出来ない事実に一層唇を結んで俯く。震えぬよう地を踏む力を籠めた身体へ回った腕と、安堵を促す声。それへ一瞬戸惑ったように彼の顔を覗いたのは、無条件に誰かへ凭れた記憶があまりに遠く淡く、思い出すまでに時間を要したから。「――ありがとう、サー・レンブラント。」それでも額を彼の胸元に寄せて、しかし重さを掛けないまま静かな礼を返す、安らぎをもたらす言葉への精一杯の応答を。一通り弟の話を終えた後に届いた感心へ笑みの苦みは蒸発し、「ああ。彼も他の雛鳥達も、皆真っ直ぐで人の言葉を素直に聞ける良い子だから、僕も善き兄として居られたのさ。」因果の順序は逆なのだと、甘やかす長兄の言葉で丸々弟妹達を褒め称す。――月を背にした彼の眼差し。その光と同じ冷ややかに見えたそれへ確かな温度を感じて、兄の温もりを湛えていた鶴の瞳はすっと細まる。「……熱烈だね、サー・レンブラント。」声に怯えは見当たらない、だが先程までの軽やかな囀りでもない。言うなれば、命尽きるまで情を奏でる小夜啼鳥の歌を思わせる甘い音。重ね合わせた視線も同じ、先程までのふんわりとした綿羽の如き上澄みとは違う、幾度も煮詰めた蜜に似た濃密な愛の一雫を滲ませて。深く深く、その彼の情熱さえも包んで口付けるような、いやに大人びた慈愛の笑みの後。それを泡沫と掻き消して悠然の微笑を整え、「もし本当に“そう”したいのならば、サー・カナニトときちんと仲直りをしたその後で、もう一度言っておくれ。」確実性など何も無い、出鱈目や嘘を言われた所で確かめようの無いそんな条件を差し返して、彼からの情熱に今ひと時の猶予を渡す。)
>グルース(>>1554)
(たくさん雛鳥を甘やかしてきたであろう彼は、果たして誰かに同じように甘やかしてもらっていたのだろうか。反射的にそんな疑問を抱いたのは先ほど腕に収めた彼の狼狽するような様子を垣間見たからで、甘やかされ馴れた雛達と異なりどこか遠慮して大人に甘えきれない長子、そんな印象を覚えればますます甘い誘惑を重ねたくなるのを初夜の清廉さに免じて堪えて。しかし一変、こちらの熱に呼応するように彼の中の何か重く熱いものの片鱗が首を擡げた気がして、幼さの残る姿には不似合いとも言えるひとときの表情にうなじの辺りが微かにぞく、としたのを知覚しぬらりと微笑みを深め「 ……上手に仲直り出来たらご褒美くれるん? 」退屈な屋敷では喉から手が出る程欲しい刺激。その匂いを敏く感じ取れば低い声を僅かに熱に濡らしてじっと彼を見つめ、音もなく持ち上げた鏃の尻尾の先端を形の良い彼の顎についと添わせて)
>レンブラント(>1555)
(触れるひやり冷たい悪魔の象徴。そちらに一度視線を寄せ、それからまた彼へ移して贈る眼差しに、一瞬の幻とした濃密さを再び浮かべる。「……勿論。僕にあげられるものなら、何だって。」おねだりにも聞こえるその問い掛けを甘く肯定し、緩やかに上げた指は顎に添うそれの形を柔くなぞる。「僕の言葉を果たしてくれた夜、部屋を訪れたその時に、」雛の羽を繕うような、子の髪を梳かすような、優しい優しい慈しみの掌で鏃を撫でさすった後、徐と五指に包んだ其処に唇を寄せて、「思うまま、満たしたいまま――君の望みを言ってごらん。どんな事でも、叶えてあげる。」彼を捉えたまま一度も逸らされぬ夜鳴鶯の瞳。陽と若葉を映す澄んだ湖面のその内、欲して手を伸ばせば何処までも沈み包んでいく底無し沼の甘露を湛えて、愛しみあやす音色で言葉を紡ぐ。「……約束するよ。」そう締め括って彼の尾を離し、後ろに両手を組んで低い靴の踵を一歩前へと、互いの距離を縮めて。「…仲直り、出来そうかい?」まるで、己の方から頼み込んだと言わんばかりの下手の問いに、拗ねる弟妹の機嫌を窺うような微笑ましい視線を添え、彼を見上げる為にほんの少し反らしたその首をゆったりと傾げて鋭い琥珀色を見詰める。)
>グルース(>>1556)
(どんな事でも――その言葉に万能の力など無いというのに、あわや〝自由〟の希求を口走りかけたのは彼に獲物の無力を知らしめる為の意地悪か、それともとうの昔に宿命を受け入れ未練の火が消えた筈の炉に一抹の燻りを感じたからだろうか。いずれにしてもランプの魔人を彷彿させる少年の魔性に刹那とはいえ中てられたのはきっと誤魔化しようのない事実、侫悪な悪魔ではなく単純な同胞の誰かであれば彼の虜になっていたかもしれない。怪物すら魅入ってしまいかねない彼の性質に思わずくつくつと肩を揺らしながら低く笑って「 こンお屋敷では無力なヒトの約束ほど儚いモンそうそうないで 」尾の先端に触れた体温の何と熱く感じた事か。その熱をもっともっとと欲しがるように窓へ預けていた体勢をふわりと直立に戻したかと思えば嘘か幻のようにその姿は掻き消える、まさに人の命が風前の灯火と揺らぎ消え去る儚さを体現するように。自身を見上げた彼のその背後に音もなく再臨すれば後ろから彼の首へと腕を回して、尻尾で撫ぜた顎を今度は冷たい指先で柔く掴み「 君こそ。その夜まで長生き出来そうなん? 」背後から彼の耳元へ寄せた唇で、その約束が果たされるのかを問い掛けても仕様のない雲を掴むような事と解っていながら微笑みのままに投げ掛けて)
>和風テイストの演者様募集を解禁しました。忍者や花魁、山賊にお侍様、国籍問わず個性的なお方をお待ちしております。
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>レンブラント(>1557)
(笑う悪魔の声。皿の上の料理である己の言葉に返されたそれに眉を寄せるでもなく、嘆くでもなく、ただ微笑んだままに頷いて、「……そうだね。人の世でさえ、命も約束も夢幻と同じ。一つ瞬く内に消えていく。――このお屋敷なら、きっと尚更。」ゆらり陽炎の如く姿を散らす彼へか、それとも月を見詰める独り言か、諦観と寂寥が微かに滲む静かな音を中空へと漂わせて、そっと視線を伏せる。――直後、首へと回された見覚えのある腕。背後に彼が居る、そう気付いた所で今度は顎に尾と同様ひやりとした指が這って。耳に問う近さに擽ったげにくすりと吐息を零した後、「ふふ。僕、悪いものに食べられない術には少しだけ覚えがあるからね。君より魅力的な方が現れない内は大丈夫さ。」“悪いもの”とは人か感情か、それともお屋敷の怪物か、明言はせず曖昧なまま。ともすれば“君ほど悪い子もそうは居ない”なんて解釈も出来る、そんな危うい返答を友へのジョークに同じ軽やかさで踊らせて。「…もし口上で足りなければ、何か形ある証を残そうか。」それからまた歌うは子を愛でる夜鳴鶯の音。柔く円やかに細めた瞳を背後の彼へと流しながら、傍にある滑らかな紫髪をそっと緩やかな仕草で幾度か撫で梳いた後、「……サー・レンブラント、君はどうしたい?」そうっと、冷たい頬にその掌を添えて。まるで内緒話をするような密やかな吐息を含め、何もかも赦し包んでしまう甘やかしを存分に滴らせる問いを彼に返す。)
>キルステン( >1553 )
キミたちに比べたらまだまだガキでしょ?
( 悠久とも言える時を生きる彼らと比べれば人間の寿命など些細なものだろう、そう理解をしている為にやや冗談地味た口調で。指輪への軽い口付けの後持ち上げた視線の先が交われば、ふっと表情を和らげて見せて。どこかの世界線ではあるかも知れない未来を想像し 「 ふふ、目に浮かぶな。きっと誰よりも目を掛けて育てるんだろうな 」 つられる様に軽やかな笑い声を漏らすものの、胸の内に燻る “ 羨ましい ” そんな想いは翳りとして表情へと表れてしまっていただろうか。その感情は自身へ向く執着が他者へ移る事を想定したものよりかは、己の幼少期の家庭環境を踏まえたものなのだが、どう捉えられたのかは近くにいる彼だけが知る事だろう。屋敷の中に何があるのか、そんな質問に答えてくれる声にハッと意識を浮上させ 「 それって例えば、人間だけで廊下を辿ったとしても辿り着けるようなものなの 」 ハイネとの約束を守っている身としては一人で出歩く事なんて無いだろうが、興味が無いといえば嘘になる。ゆるりと首を傾げ、その興味を消化させようと。部屋を出てからどれくらい歩いただろうか、辿り着いた先はこれまで廊下に続いていた扉と何ら変わりのないものだが、口振りから察するに特別な部屋に違いない事は容易に想像がつく 「 そんな特別な場所に連れて来て良かったの? 」 扉の開いた先に広がる景色は薄暗いだけの洞窟に見える。立ち居振る舞いからも、身につけている物からも、どちらかと言えば派手好きのような彼が好むだろう物とは正反対に思え、傾げた首の角度は深まるばかりで。彼の声に一歩室内へと踏み込めば足から伝わる感触も洞窟のそれに近く、履き慣れない靴では滑って転ぶ未来が容易に想像出来る為に一歩一歩ゆっくりとした足取りでその背中を追いかけて。階段を登った先、眼前に広がる景色にぱちりぱちりと瞬きを数回 「 ……すごい、綺麗 」 ぽつりと呟くように。月の光を受け、色とりどりに輝くそれらは人の手の加えられていない天然の物だろうか。視界に映る範囲だけでも数多の石があるように見えるこの中から目当ての石を探し出すのはかなり骨の折れる作業となるであろうが、この場で力を借りるつもり等更々無く 「 ねえ、キルステン。この部屋の中は一人で歩いてても安全だって認識でいいんだよね? 」 廊下を歩いている際も注意を促す発言こそあれども危険に晒されるような事は無かった為、横目で見遣りながらの質問は単なる確認。肯定の返答が返ってくるのならば探し物の為に足元から頭を見せる石へと視線を向けつつ歩みを進めるつもりで )
>グルース(>>1559)
どおやろなあ、切羽詰まった奴に迫られたらすぐ君明け渡してしまいそやけど
(顎に添えた指をつつと滑らせ、その頸動脈を長い爪にてくすぐるように横一文字にゆったりとなぞる。どれほど言葉を弄しても所詮悪魔は悪辣なるもの、それをこの短い間に理解したと解釈できる彼の言葉を否定するでも抗弁するでもなく、むしろ危うい綱渡のようなこの夜気を味わい愉しむように密やかな笑気を声に織り交ぜて「 ほんなら人質取らしてもらおか? 」耳を伝って脳を溺れ蕩かす毒の甘露のような声、悪魔でなければそれだけでくらくらしてしまいそうなそれを軽やかに受け止め頬に添う柔らかな手のひらの側面を唇で淡く食みながら家紋の浮かび上がるカメオをコツ、コツと硬く鋭い爪先で指し示し「 それともこっちのンが一生懸命自分守ろうと出来るやろか 」見せ付けるように背後から伸ばした手を彼の眼前に、図鑑を顕現させた時のように手のひらを上に魔力を込めればまたしてもぽむっと空気の弾ける音と共に掌上へ現れたのは精巧な白鷺の模型――否、手のひらサイズだが命あるように動き時折小さく鳴いている。「 俺がカナニトと仲直りして君の部屋に来た時、もぬけの殻やったら…… 」声には相変わらずの笑気を幽かに交えながら、ゆぅっくりと拳を握ってゆく――当然身体を押し潰す圧力を感じた小さな白鷺は苦し気に一声高らかに鳴き、それを契機にふっと力を緩め再度手のひらを開いて見せて)
>グレン(>>1560)
(こちらの忠告もどこ吹く風と生意気な態度に改めて小さく肩を竦め、しかしそれとは裏腹に曇った表情も横目に見逃さず色々あるのねと短く吐息して「 一度見つけた特別な扉はね、同じ場所でお利口に待ってくれてるわけじゃないのよ。アタシは自分の魔力でマーキングしてるからそれを辿ってるの 」無限の扉はその位置関係すら目まぐるしくスイッチを繰り返しており、だからこそこの屋敷では変動し続ける道順を覚えるのはまさに徒労を極めた行為。魔法を行使できる怪物だからこそ道を辿れるのだと種明かしをしながら、哀れな獲物にだって冒険の権利くらいはあるとふと思考し代替案を挙げようとぶつぶつと喋り始め「 クソ長い紐か何かをドアノブに括って、端っこを自分の部屋まで持って帰れれば――いいえ、それこそ無謀ね。一晩でこんがらがっちまうわ 」ゆるゆるとかぶりを振って思い付きに過ぎないアイデアの致命的な欠陥を受け入れて。「 アンタの飼い主にこのアタシがテキトーなモン持たせるわけないでしょ。持ってる手札は使うわよ 」これは自身の面子にかかわる問題なのだと背を向け洞窟を進みながら端的に疑問に答え、そうしてこの光景に目を奪われる彼の様子を満足げに眺めてはカツカツと歩いて宝石の物色に向かいながら「 ええ、この部屋の美しさを理解できないケダモノは締め出すように細工してるわ。荒らされたら堪ったもんじゃないからね。安心して目当ての石を探しなさい 」敢えて彼の方を向く事無く安全を告げることで理性無き化物からの干渉を受ける可能性が限りなくゼロに近いことを示しつつ、手や視線を忙しなく動かし宝石たちを観察しては黒と金の混じったような水晶型の石を発見しちょいちょいと手招きを「 …あら、こんな色前まで無かったわね。ハイネに似てるわ、ちょっとこっち来て御覧なさいよ。やァんコッチのも素敵じゃないッ 」招いておきながらそのすぐ近くに自身の好みにストライクな深くも透き通ったビリジアンの石を発見し、目を輝かせながらキャッキャとはしゃいで)
>レンブラント(>1561)
……雛鳥に似た誰かであれば、可能性はあるかもしれないね。
(とくとくと温かに脈打つ喉へ滑っていく指と、其処に備わる鋭い爪。命を遊ばれるようなその仕草の好きにさせ、己は彼の頬に当てた掌でゆったりと冷たい肌を撫でる。世間話の軽やかさと薄氷を辿る危うさを併せた会話は、首元から届いた硬い音に一度途切れる。「それは、」それから転がり落ちた声には緊張の糸が密かに縫われ、次にまた問いを積みかけたその眼前に現れたのは彼の掌上で囀り尾羽を揺らす白鷺。愉楽の混ざる言葉と共に畳まれていく指の内、その白鷺の悲鳴と雛鳥が己を呼ぶ声が重なって――咄嗟だった。彼の力に自身が敵う事は無いと解っていて、潰れる前に拳が緩められたのも見えていて、それでも気付けばその小さなものを庇うように彼の五指と白鷺の間に自らの手を隔てていた。「――…君はとても、上手なお人だね。」今の数秒、止めてしまっていた息を少しずつ取り込み、感情を抑え付けた静かな音色をまず一節。続けて、「いいよ。それならば僕は、僕の持ち得る全霊を以て“その時”まで生き延びてみせよう。だから、」芯を持って朗々並べ立てるは彼への宣誓、振り返り浮かべるは貴族の優雅たる笑み。……あの一瞬の間、恐れに粟立った背の震えも、跳ね上がった心臓の音も、今もまだ逸ったままの拍動も全て伝わっているだろう。それでも、「君も、僕の愛しい雛鳥達への約束を違えないように。」何もかも圧倒的な相手を前に、怖じ気を圧し潰し隠して高潔に見せる“強がり”を、微笑む眼差しに凛と宿して。彼が己を抱擁した際の、“もしも”の言葉を引き合いの契りと告げる。「…白鷺の彼に、誓っておくれ。」その最後、ふっと移した視線の先。彼の掌でふわふわ膨らむ羽を繕うその鳥を通し、今も遠い向こうで何も知らず生きる己が弟に馳せる慈しみを細めた瞳と柔い声に湛えながらも、己と同じ誓言を彼に確と求める。)
>グルース(>>1563)
……おおきに、
(取り乱すか或いは激昂するか、並の人間であれば大きく揺さぶられた感情に引っ張られて態度や行動にそれが発現してしまってもおかしくない自らの試しにも似た戯れに、期待に反さず彼は気丈を保ってみせた。無論それが虚勢だと見抜けないほど優しく無神経な怪物ではない、だからこそ自身の目には大きく跳ね上がるような鼓動も背筋の震えるような恐れも綯い交ぜに強さを圧し出す様子は大変可愛らしく好ましく映るもので。皮肉と取れる賛辞に三日月のように口角を吊り上げ背後にて小さく礼を、間髪入れずに「 君はめっちゃ魅力的な子や 」応酬を一往復だけ返すようにこちらからは心からの感想を。魔力でネジを巻いた分だけ動くに過ぎない錻力の玩具なのにやはり効果覿面だったらしい白鷺を取り囲むように、掌には黒い鳥籠が形成されていき「 勿論。悪魔は嘘吐くけど契約は守る――そういうもんや 」急に袋小路へ追い詰められ狼狽するようにきょろきょろと細い首を巡らせる自律人形に我ながら良いリアクションだと内心で微笑みながら、気を付けなければ一晩で失くしてしまいそうな小さな黒い鍵をそっと彼に差し出して。約束の夜、それと引き換えに白鷺は空へ解き放たれるのだと、そう示唆しながらぬるりと彼から離れるように姿を消しては瞬きのうちに眼前へ現れ胸に手を当て浅く礼を「 この白鷺は俺のモン。やから俺が誓うのは君自身にや、グルース 」それが未だ黒薔薇の目に留まらぬ本当の次男を指すのかそれともただ自分で作り上げた人形そのものを指すのか、煙に巻くように薄く微笑し腰を屈めてじぃっと彼の目を見つめて。もし彼が鍵を受け取ってくれたのならばその時点で契約は成立、ああ面白い愉しみが出来たと上機嫌に悪魔は微笑みを深め「 俺も作戦考えんとな。臍曲げた弟とどないして仲直りするか…どう転ぶか楽しみにしといてなあ 」サラサラと微かな音と共に足元から魔力の粒子となり掻き消えてゆく、特段呼び止められなければこのまま最後まで蛇のような笑みを残して幻の如く消え去るだろう)
>レンブラント(>1564)
……それはどうも。
(彼の賛辞に、形のみの礼言を。それから彼の五指を塞ぐように白鷺と隔てた其処からも、震えが見付からぬ内にそっと手を離せば、掌のそれは何処からと無く組み上がった鳥籠に閉じ込められる。変化に戸惑う様子を見せるその子に“ごめんね”と、音無き唇で胸中の罪悪を詫びた後、次に眼前へ現れたのは黒い鍵。差し出された小さな小さなそれを、下から掬うようにして手の中へそっと収める。視線をそちらに取られた隙にまた失せた背後の気配は、瞬きと共に上げた視界の内に。此方を覗いて細まる琥珀を、臆さず逸らさず、真っ直ぐに見詰め返して微笑んで、「…ああ。君の行く先に幸あらん事を。」少しばかり強気な振りを。声色ばかりは穏やかに、消え行く彼へ祝福を贈って――静寂の帰ってきた室内。踏み締めていた足を緩めて座るベッドの縁で、落とした目線の先にあるのは契約の証。今頃になって押さえ付けた怯えが微かに揺らすそれをぎゅっと握り込み、その上へもう一方の手を重ねて、「――大丈夫、大丈夫。」胸に抱いて背を丸め、身ごと包んで温める言葉を溢す。「僕が守ってあげるから、君は何も知らずに、安心して眠っておいで。」泣く子をあやすように手の甲越しに鍵を撫で、此処から届く筈も無い安堵の情を、それでも淡く甘い音に乗せて。「エグレット――僕の可愛い白鷺、大事な家族。…君を愛しているよ。だから、」名を呼んだ彼へ紡ぐようで、自分を確かめるようでもあるその羽毛の愛の中、「……どうか“君まで”、消えてしまわないで。」“二度目”を恐れて悲痛に絞り落とされた、切実なおまじないと祈りを。……俯ききった顔は誰も窺えない、誰にも窺わせない。弱る姿を隠す小鳥の如く、吐息さえ潜めてベッドの陰にじっと蹲った後。ふと息を深く吸い込み、すっと窓の向こうを見上げた顔に怯えは浮かべず、ただ毅然とした笑みを湛えて、「……見ていておくれ、」凛と背を伸ばし立ち上がる姿は、目一杯に翼を広げ、気高く空へ飛び立つ鶴そのもの。「ねえ、――――。」その先に続けた名は、かの悪魔か白鷺か、それとも――知るは鶴に光を注ぐ窓辺の月ばかり。)
***
今宵も良い一時を過ごせた事に感謝を、サー・レンブラント。君は駆け引きの上手なお人だね、僕では敵いようが無い。……でも、愛しい雛鳥達のお話が出来て楽しかったよ、有り難う。
さて、それでは次は宝箱で紹介させてもらった虎の方の手番……と言いたい所だけれど、その前に少し相談かな。彼、まだ指名を決めきれていないようだから。
今、彼が候補として考えている怪物様はお三方。レディ・ゼズゥとサー・キルステン、それからサー・アッシュ。僕から見る限りどの方とも相性の不安は無いのだけれど、だからこそ迷ってしまってね。君達怪物様方から見て、このお三方の内と誰が良いのか尋ねたい、もしくは彼らと彼女以外でも気の合いそうな御仁が居たのならそちらの紹介を願いたい、というのが相談事の要点さ。……候補はあくまで候補で、正直どの方も魅力的だから、君達の思うままの答えをおくれ。
では、僕は一度休息を取るから、この先は虎の方にお任せしようか。……ふふ。またね、サー・レンブラント。約束の夜まで息災を祈っているよ。
>グルース(>>1565)
回収おおきになァ、俺の方こそ君の反応が可愛ゆうて楽しませてもろたわ。また遊ぼなあ。
次は早速虎の彼に会わせてもらえるんやね、相手に選ばれる怪物が羨ましなあ。そうやね、まず挙げてくれた候補は君の見立て通りこっちも何も不安ないわ。となると希望してくれとるルートと照らし合わせて誰がより適してるかやけど…秘密の共犯者の道はこンお屋敷とそれを支配する黒薔薇だけやのうて、おんなじように囚われた俺ら怪物全員を自分勝手な炎に巻き込ンで殺戮する修羅の道や。
キルステンは挙げてくれた中では一番精神が安定しとって、同じ境遇に苛まれる同胞の事もなんやかんや大事にしとる。せやから、かなり酷な道を歩ませる事になるやろなあ…まア漢気のある奴やから心中決め込んだら迷うことなく虎と並び立って突き進むやろけど。
ゼズゥは物分かりのいいツラしながら酒やら煙草やらナシやったら屋敷に囚われた運命を直視出来ひん危うい弱さを持っとる。こン屋敷と黒薔薇が憎うてしゃアないし、こっから解放されるならそれが死っちゅう極端な形であれ同胞にとっても救いになるんちゃうかて開き直れそうやね。現状に絶望しとっても自分の無力を理解しとるから動けん、そういう奴やからこそグイグイ手ぇ引っ張って道を切り拓いてくれる虎の彼ン姿はえっらい眩しゅう映るやろうね。
アッシュは自分を愛して認めてずっと傍にいてくれる存在を渇望しとるし、そんな特別が出来たンやったら何にも顧みることなくその存在の為だけに行動してどんな犠牲も厭わんやろうね。…厭えるアタマが無い、ちゅう表現の方が適切やけど。そういう意味では無垢で無邪気にいっちばん残酷な道をズカズカ無遠慮に驀進出来る奴や。喉から手が出るほど欲しかった特別な人間にこの屋敷から出たい、言われたら後先考えんと自分から「だったら屋敷を燃やしちまおうぜ」なンて言い出すかもしれんなあ。
挙げてくれた三人以外やったら、ジョネルやギレルモなんかもアッシュに近い属性で適性があるかもしれんね。どうやろ、こン情報でお相手絞れそうやろか。
ああまたなぁ、グルース。長生きしてや。
【 黒薔薇屋敷の扉は開かれており、演者様を歓迎します 】
◆統一された世界観で、複数のキャラクターを気軽にCCしながら遊びたい
(基本的には各演者様にそれぞれの別の世界線があり人間同士の関わりを持つ事はありませんが、兄弟や姉妹等の設定であればCCしながら同じ世界線で遊ぶ事も可能です)
◆キャラメイクしたけれど満足に動かせず眠ったままのキャラクターの供養をしたい
◆亡国のお姫様、失地した忍者、古代のアマゾネス等々の一風変わったキャラメイクをしたい
――他にも、黒薔薇のお屋敷が演者様の楽しめる場となれれば幸いです
>レンブラント(>1566)
よぅし、こっからは鶴の坊主に代わって、俺の出番だな。っつう訳で、此方さんじゃあ初めまして、黒薔薇の怪物さん方。
しっかり丁寧に答えてくれてあんがとな、悪魔のアンタ。話聞いても迷っちまう所は正直多いが、そうさな…そんなら、ラミアの嬢ちゃんと道を歩ませてもらおうか。なぁに、過酷な茨道なんぞこちとら百も承知、何もかもぶっ飛ばす勢いで手を引っ張って走ってやるさ。
そんじゃ、前口上はこの辺にして、とっとと舞台に上がらせてもらうとしよう。アレコレ寄り道したり、何か問題が起きたりするかも知れねえが、まあ後の事はまた後で考えりゃ良い。
これから宜しく頼むぜ、怪物さん方よ。
***
指名:ゼズゥ様
希望ルート:秘密の共犯者ルート
名前:ナミル・アッシャムス(Namir Al-Shams)
性別:男性
年齢:46歳
職業:商人
性格:気っ風の良い豪快な人物、が第一印象。怒る事の無い余裕ある感情表現ははっきりと、言葉や態度は堂々としており、他者から扱き下ろされたとしても心一つ揺るがず笑い飛ばす自信家でもある。それを裏打ちするのは、興味を持った何事も完璧と成すまで修練を積み重ねる、粘り強く妥協の無い努力家の片鱗。『有言実行・即実行』の自銘の下、良いと思った事を直ぐ様行動に移す活発さ、自分から積極的に声を掛ける社交性の旺盛さの反面、一人きりの寂寥と退屈が苦手。それ故、一人にしておけば突拍子も無い行動に出る事もままある。
容姿:身長194センチ。幅広の骨格に筋肉が乗るがっしりとした体躯に高めの体温。黒色の髪は芯を持った固い毛質であり、一度癖が付くと直り難い為、ベリーショートに整えて額を出す形に前髪を分けている。髪と同色の眉は太めで真っ直ぐ、笑い皺の付いた切れ長のアンバーアイと相俟って、虎のような意志の強さを窺わせる。全体的に彫りが深く、やや厚い唇と浅黒の肌がエキゾチックな雰囲気を纏わせている。ゆったりとした黒の開襟シャツ、白のスラックスと至ってシンプルな格好だが、どちらも専用に仕立てられた質の良い一品。シルバーリングを左手の薬指に着用、生まれつき左側の肩と鎖骨の境界辺りに目玉のような二重丸形の赤痣がある。
備考:15歳で故郷を飛び出し、その身一つでやりたい物に片っ端から手を広げ、宝飾品から不動産まで幅広く商業を育てて財を築き上げた後、それらを子や部下に引き継がせ早々に隠居した元企業オーナー。事故や病など原因は様々ながら、親族とその伴侶全てが40代の内に終命する早世の家系であり、本人が看取った内では、両親、兄姉、弟、妻が40代の内に逝去している。多くの命の終わりに立ち会ったが故か、「いつ終わっても笑って逝ける、悔い無き人生を」としたい事を貫き通す方向に志を決め、思い立てば世界旅行やら登山やらと日々エネルギッシュに驀進している。とうに成人し独り立ちしてはいるが二人の子を持つ父親でもあり、少々荒っぽいものの年下の面倒見が良い。声は強い意志と同じく張りを有してよく通る、重ねた年の分渋みの滲むバリトン。一人称は俺、二人称はアンタ、または呼び捨て。年若い相手には嬢ちゃん、坊主などと呼ぶ事も。
ロルテスト:
(朝日が昇る少し前、熱い珈琲を片手にルーフバルコニーへ上がって紫煙を燻らせる。手摺に寄り掛かってまだ静かに眠る街を眺めていれば、遠くから顔を出す太陽がゆっくりと夜を赤く焼いていく。「おう、おはようさん。」些かの眩しさに目を細めながらも、その光へ親しげな挨拶を投げるいつもの日課の後。珈琲を啜る傍ら今日の空っぽな予定を何で埋めるか暫し思考を巡らせ、「あー……そういや、アイツ店出したっつってたな。」思い出したのは少し前の友人との会話。念願のカフェ経営を始めたと笑う若き彼の背を叩いて祝福した事が記憶に新しい。「…よし、朝飯がてら顔出すか。」そう決めるが早いか半分程吸い残した煙草を消して、準備に戻ろうと踵を返したその隣のテーブルに、真っ黒な何かが乗っているのが視界を掠めた。「……ん?」改めてよくよく見たそれは薔薇を象る封蝋であり、無論用途に適した便箋が共立って置かれていた。「ほう。今時シーリングなんて、凝った真似する手紙もあったもんだな。」思わず零れた感心する言葉はさておき、その唐突に現れた不審物を手にしてみれば紙も蝋も中々の上等品、誰かの宝物でも舞い込んできたのかと辺りを見回すが、探す素振りをする人影はどの窓にも道にも見えない。首を傾げてその黒薔薇と向き合っていると、いやに中身への興味が疼いて仕方無く、気付けばぱきりとその封を割っていた。中に書かれたその一文を目で辿り、「……迎え、ねえ。」楽しげに呟きを返す。これは己に当てた文言だと、根拠は無くともそう直感して、「カッカッカ!良いねえ、俺を選ぶたぁお目が高い!いつでも来い来い、歓迎するぞ。」大笑いしてひらり振った紙が風に浚われ、舞い上がっていくそれを見上げ――覚えていたのはそこまで。次に開いた目に飛び込んできたのは見慣れない天井、それと素っ気無いが豪奢な調度品。「……何だこりゃ。」起き抜けの嗄れ声で疑問を落として身体を起こし、室内を見回しつつ眠る直前の事を思い返す。そう、確か日課の後に妙な手紙を見付けて――「……ああ、“迎え”ってヤツか。」思い当たるのはそれくらいしか有らず、一人納得した次に、「これじゃあ“迎え”というより“誘拐”だな。」実際そうであるかもしれない可能性を一息に笑い飛ばす。……さて、少しばかり状況の情報を、と探索に立ち上がった瞬間に響いたノック音。それに思案を回したのは刹那にも満たない間、欲しいものが向こうからやってきたとばかりに口の端をにんまりと弛め、「あいよ、ちょいと待ってな。」あっさり返事をして大股にドアへ近付けば、これまた呆気なく簡単に其処を開いてノックの主を不敵な笑みにて出迎える。)
Image:※じゃろ様の「uomo」をお借りしました。
https://picrew.me/share?cd=cFnC7vbJ18
>キルステン( >1562 )
( 純粋なる興味からなる質問に真面目に思案してくれる辺り、彼が “ 良いヒト ” なのは疑いようもなく。部屋が動くなんて事のない元の世界であれば彼のアイデアも突飛だなんて感じる事は無いのだろうが、今いるのは摩訶不思議な屋敷。首を傾げ考える仕草を見せるも良い案なんて浮かんで来るはずもなく 「 仲良くなった誰かしらに連れて行ってもらう、っていうのが一番マトモそうだね 」 苦笑を浮かべて。彼の様子を見て察するに屋敷の廊下のような危険と隣り合わせと言うことは無いらしい。それが聞けて満足、とばかりに足元を彩るかのような色とりどりの宝石の中から目当てを探すべく一歩二歩とゆっくりとした足取りで歩き回っているも、呼び寄せるように手招きをされれば側にしゃがみ込み 「 ふふ、確かに 」 視界に捉えた石はダークエルフの外見を彷彿とさせるもので。すうと目を細めつつも、それに対して然程心が惹かれないのはもっと彼らしい宝石が、色があるだろうと考えているからか。隣ではしゃぐ様子にゆるりと口角を持ち上げて 「 ねえ、こっちはどう? 」 手招きをしつつ案内をするのは先程見かけたアレキサンドライトに似たそれの所 「 キルステンの好みのど真ん中からは外れるかも知れないけれど、石言葉も含めてぴったりだと思うんだよね 」 月光の差し込む洞窟内では紅いルビーのように見えるだろうが屋敷の中、少なからず人間に与えられている部屋の中で見たならば青緑色に見えるであろうそれ。傍に欠片が落ちている事に気が付けば、軽く袖口で宝石を拭ってから 「 騙されたと思って部屋の中でこれ見てみてよ 」 彼が手を差し出してくれたのならば、その手の中に宝石の欠片をコロンと転がすように入れるつもりで )
>ナミル(>>1568)
(物憂げな視線を落とす先は両手の内に収まるグラス。あと少しで飲み干せてしまう量まで減った透明の液体に目を伏せ、傍に控えるトカゲの使い魔は空っぽになったボトルの上にちょろちょろと登り心配そうに主人を見つめ「 …分かってる。今夜は一本って約束だもんね 」力なく微笑しグリーンを基調としたネイルに彩られた指先でつるつるとした使い魔の鱗をそっと撫でる。小さなトカゲは心地良さそうに目を細め、また主人の深酒を止められなかったら…という懸念が杞憂に終わった事に安堵するようにその場でくるりと一周してからぷきゅいと鳴いて「 この近くに新入り?……そう、また… 」またひとつ、理不尽に黒薔薇へ縛られる命が増えてしまった。陰る表情を引き摺ったままとぐろを巻いていた下半身をしゅるしゅると解いて立ち上がり、手慣れているというよりすっかり癖になってしまったという手つきでテーブルの上のシガレットケースから黒い煙草を一本取り出し咥えながら自室を後にし、向かうのは件の不運な新入りの部屋。あまり煙の出ない仕掛けをしているのか、僅かな紫煙をくゆらせながらノックの応答を待つ事数秒。怯えなど微塵も感じさせない、寧ろ微かな喜色さえ含むような声が扉の向こうから聞こえてくればきょとんと眉を上げ、その表情のまま想像だにしなかった剛毅な笑みと対面し「 ……こんばんわ。あんた、人間にしちゃデカいね 」些か抑揚に欠けるトーンで思ったままを告げながら相手の顔を見上げ「 新入りって聞いたよ。色々困ってるだろうから説明しに来た 」端的に訪問の用件を伝えれば答えを待つこともなく上げていた視線を真正面に戻し、明らかに人ならざる下半身を器用にくねらせその鱗をずるずると引き摺りながら彼の横をすり抜けるようにして室内へと進み、まだどの怪物の残り香もない部屋に一番乗りだと悟りながら特段それを嬉しいとも面倒とも感じることなく彼の方に顔を向けて「 …煙草、苦手だったらごめん 」言いつつ消す気は無いのか、灰が床へ落ちる代わりに微細な粒子となってハラハラと消えてゆく不思議なそれを咥えたままソファーの背凭れ部分に両腕を置くようにして体重を僅かに預け「 あたしゼズゥ。あんたは? 」自然と視線の先にある、不気味なほど巨大な銀色の満月を見据えながら問い掛けて)
>グレン(>>1569)
そういうコト。いいじゃない、アンタは他のコと違って頼む相手に事欠かないんだから
(この屋敷では風前の灯火に近い儚さをもつ命の炎、それが燃え尽きてしまう前に不思議なこの屋敷を探検したいと願う気持ちは理解できる。だがそれを易々と叶えられる獲物は決して多くない、彼のように特定の怪物から深い寵愛を受けるのならば話は別だが「 なあに? 」お気に入りの場所で煌めいているものに囲まれてすっかり上機嫌なのか、幾許か刺々しさが抜け丸みを帯びた声にて手招きに応じてカツカツとヒールを運び「 あら情熱的ね。嫌いじゃないわよ 」自身の顎に手を添えまじまじと見つめる紅は率直に綺麗だと感じるものの確かに選抜して自らの手元に持ち帰るほどのものではない。だからこそ光源が異なる場所でそれを見る機会もなく、どこか腑に落ちない様子のまま彼の意を汲んで片手を掌を上に向けて差し出し「 アンタ、石言葉なんていちいち覚えてンの?ロマンチストなのねえ 」指先でつまんだその欠片をあちこち透かして観察しながら、しかし変わる気配のない色合いに首を傾げてポケットへと仕舞い込み「 それじゃあ、ハイネにあげる石にも意味のあるもの選ぶワケ? 」ゆったりとしたテンポで洞窟を歩くヒールの音を響かせながら、自らも再度物色へと戻りながら語りかけて)
>ゼズゥ(>1570)
(己が文字通り頭抜けた体格である自負から、ドアを開きつつ下げる癖の付いた視線の先で、躑躅を彷彿とさせる濃色の瞳と搗ち合う。「おう、こんばんは。嬢ちゃんこそ随分イカした格好だな。」初めの挨拶に添えられたものを褒め言葉として受け取り、それに此方からも一言お返しをした後、「そりゃあまた、わざわざと有難い。」礼の一声と共に、入室の素振りを見せた彼女へ一歩退き、少し離れた所でやっとその全身に気付く。――作り物とは思えぬ動きをする蛇の胴と尾。それにタトゥーかと思えた肌の鱗も、照明や月光を反射して艶々と煌めいている。しかしながらそれらに呆気に取られたのは一瞬の話、今は情報収集と頭を切り替え、丁度彼女の真正面へと当たる位置まで己も移動する。それから詫びる彼女へ上げた片手をひらひら軽く振って、「いい、いい。気にすんな。俺も煙草はやるクチよ。」そう寛大に笑みながら、どっかりと傍の椅子に脚を開いて座る。「俺はナミル・アッシャムス。宜しくな、ゼズゥの嬢ちゃん。」続けて名乗りに応じて此方からも堂々あっさり答えを渡したその次、「さて、自己紹介も済んだ事だし、アンタの親切にちょいと甘えさせてもらおうか。」本題とばかりに話の道を開拓しつつ、人ならざる何かへ対して距離を縮めるように、膝の間で手を組み上体を彼女の側に傾ける。「そうだなあ…まず此処が何処で、何の目的で此処に俺を置いたのか、その辺りを訊かせてくれ。」一番初めの小手調べ、まるで交渉事でもするかの如くじっくりと彼女の瞳を見据えた問いの後、「なにぶん、誰ぞに拐われる理由に心当たりが多くてなあ。こればっかりは見当がつかん。」ジョークなのか本気なのか、少なくとも喋る当人は些事とからから笑って質問の補足をし、そのまま彼女の返答を待つべく一度言葉を締める。)
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