執事長 2020-02-25 19:00:33 |
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>ゼズゥ(>1593)
王様ねえ……フハッ、柄じゃあねえなあ。
(“王様”と此方が聞いて思い付くのは、豪奢で堅苦しい服を着て玉座に凭れ、兵と側近を侍らせながら統治や政に勤しむ格好。一月とじっとしていられぬ性分の己に重ねて想像した冠姿があまりに似合わず、思わず噴き出した声の余韻のまま肩を震わせ呟く。――彼女の仕草と一言が何よりの答え。言う通りの至高であると解れば、自身も満足に胸を張って目を細める。「そりゃあ勿論、その為に拵えたモンだからな。」言葉を受けてまず先に量産の許可に対する応答を拍子良く告げて、その次に命名について頭を巡らせる。「さて、名前か……ハナシュ、コルンフォリー、ヒラール……んー…」胸元で腕を組んで零す候補はどれも己が生まれ故郷の言葉。各々眼前の彼女の姿、その瞳の色、想い出の月と連想を繋げて尚今一つ填まる形が見付からず、首まで捻って唸ったその後、「……フルム、はどうだ?覚え易くて呼び易い。」それは眠りの淵に会う追想、或いは現を惑わす幻想、或いは成就を願う理想――つまりは“夢”の意を持つ名前を、何とも単純な理由を添えて案に放る。それから改まって問われた事柄に、目の前の楽しさから交渉事に意識が戻り、「ああ、そういやそういう話だったな。いやあ忘れてた忘れてた。」からっとそう一声笑い上げた次に食指を立てて、「第一は屋敷探険の同行者が欲しい。これは後日、いつでも構わんが……まあ、死なねえ内に来てもらえると助かるな。」彼女と交渉をする切っ掛けとなった当初の目的をもう一度簡潔に、この屋敷では冗談にもならない軽口を添えて置く。続けて、「あとは俺にも吸える煙草かねえ……こっちは“お代に色を付けてもいい”と嬢ちゃんが思えたら、だな。アンタの裁量に任せるよ。」おまけのついでの嗜好品。それを二本目に立てた中指に示しながら、しかしそこは彼女次第と直ぐに引っ込める。「そんで、ゼズゥ。アンタはどこまでなら俺の希望を叶えられる?」提示された対価には最善を払えた。彼女を見据えるアンバーと伸ばされた背筋に堂々顕れるその自信のまま、此方からも交渉の結果を質し待つ。)
>ナミル(>>1594)
(新しい風味、新しい刺激、新しい依存先。その全てを思いがけず得る事が出来た今夜は酒に頼らずとも眠れるかもしれない、そんな病んだ思考も長年染み着けば自分の中では只の日常であり出し惜しみをしない相手の回答に「 ありがと 」と端的に謝意を示して。砂漠のオアシスを吹き抜ける軽やかな風を思わせるような単語の美しい響きをBGMに味わう煙草はみるみる短くなってゆく、そうして件の新たな依存先の名を提示されれば「 母国の言葉? 」単純な問いかけの中にどんな意味を含んだ単語なのかを伺う好奇を滲ませながら、立てられる指を眺めて彼の発言を結びまで傾聴し、丁度そのタイミングで尽きたフルムを吸殻で山盛りの灰皿に無理に捻じ込んで「 ……あたしのオススメはウーミンの花畑。花と蝶が好きなら楽しめると思う 」案内役を買って出ると示すように探検の行先の一つを挙げる。ここで言うところの〝オススメ〟は人体にとっていかに無害に近いかの基準で選出された云わば無難な選択肢であり、それから少しの間悩むような間を置いて「 あとは…最近見つけた〝熱い場所〟。ここは長居出来ないだろうけどあたしのお気に入り 」紹介するのを躊躇う態度にとっておきの場所を勿体ぶる意図はなく、ただ相手の、人間の身体に害を及ぼす可能性の高さから心配が先に来たもので。ずるり、規則正しい鱗の揃う太い蛇の図体をくねらせ距離を詰め「 二日後、迎えに行く。それまでにどっちがいいか決めといて。どっちもイマイチなら別の場所考えるから 」近い未来への約束を託しながら片手をおもむろに持ち上げ、天を向いた主の手のひら目掛けて天井を這うトカゲが投下したのは深い緑色のリボンで束ねられた数本の紙煙草と小さなマッチ箱。手中に乗るそれをそのまま差し出して「 これはオマケ。約束の夜まで部屋でイイコに待てるならね 」条件を付ける口調は語調に反して強制するような色ではなく、あくまでも最終的な判断は相手に委ねるが自身は忠告したからねと線を引くようなそれで「 お利口にしてたらシャグもあげちゃうかも 」冗談めかすようにふと緩く口角を引き上げて彼の琥珀を見つめよう)
>キルステン ( >1591 )
( ぱちりぱちりと瞬きを繰り返すのは思いがけぬ提案だった為。きっと己の本質を知らない彼の事だから純粋な提案である事は思考を巡らせなくても理解に易く 「 ……きっと僕が求める物は、ハイネじゃないと重苦しく感じちゃうよ 」 一を与えられればもっともっとと際限なく求めてしまう性分、それを埋めてくれるのはあのダークエルフしかいないとの思考は単純に自身の屋敷の中での交流が浅い為か、それとも最早一種の依存じみた考え故か 「 まあ、ハイネが興味を失うかは僕の努力次第だし……キルステンがそんな顔しないでよ 」 声色から自身の未来に対して悲観している部分は一切ない、という事は過不足無く伝わるだろうか。先ほどから表情に陰りの見える彼の顔を捉えれば、くはりと小さく笑い声を漏らし。「 ふふ、じゃあ遠慮なく 」 何がきっかけか調子を取り戻したように見える彼の様子に小さく安堵の息を漏らし。服の袖で石の表面を軽く拭ってから上着のポケットの中へと仕舞い込み。キラキラと輝くこの景色を少しでも目に焼き付けておこうと、探し物をしていた先程までとは打って変わり壁や天井を見ながら「 うん、大丈夫。お気に入りの場所に連れて来てくれてありがとうね 」 キラキラと輝くこの景色を少しでも目に焼き付けておこうと、探し物をして足元ばかりを見ていた先程までとは打って変わり、壁や天井、辺りへと視線を巡らせながらゆったりとした足取りで彼の後を付いていくはず。「 それがラッピングもだけど、加工の目途も立ってないんだよね 」こちらを見る視線と目が合えば、へらりと笑って見せるのは自身の計画性の無さを自覚しているが為。それに一晩の邂逅を通し世話好きなのだろう事が分かる彼の様子を受け、困った姿を見せれば力になってくれるのでは無いかなんて打算も少し。手伝ってくれる?なんて言葉は口に出さず、やや上目がちな視線を送る事でお伺いを立てようか。 )
>キルステン ( >1591 )
( ぱちりぱちりと瞬きを繰り返すのは思いがけぬ提案だった為。きっと己の本質を知らない彼の事だから純粋な提案である事は思考を巡らせなくても理解に易く 「 ……きっと僕が求める物は、ハイネじゃないと重苦しく感じちゃうよ 」 一を与えられればもっともっとと際限なく求めてしまう性分、それを埋めてくれるのはあのダークエルフしかいないとの思考は単純に自身の屋敷の中での交流が浅い為か、それとも最早一種の依存じみた考え故か 「 まあ、ハイネが興味を失うかは僕の努力次第だし……キルステンがそんな顔しないでよ 」 声色から自身の未来に対して悲観している部分は一切ない、という事は過不足無く伝わるだろうか。先ほどから表情に陰りの見える彼の顔を捉えれば、くはりと小さく笑い声を漏らし。「 ふふ、じゃあ遠慮なく 」 何がきっかけか調子を取り戻したように見える彼の様子に小さく安堵の息を漏らし。服の袖で石の表面を軽く拭ってから上着のポケットの中へと仕舞い込み。キラキラと輝くこの景色を少しでも目に焼き付けておこうと、探し物をしていた先程までとは打って変わり壁や天井を見ながら「 うん、大丈夫。お気に入りの場所に連れて来てくれてありがとうね 」 キラキラと輝くこの景色を少しでも目に焼き付けておこうと、探し物をして足元ばかりを見ていた先程までとは打って変わり、壁や天井、辺りへと視線を巡らせながらゆったりとした足取りで彼の後を付いていくはず。「 それがラッピングもだけど、加工の目途も立ってないんだよね 」こちらを見る視線と目が合えば、へらりと笑って見せるのは自身の計画性の無さを自覚しているが為。それに一晩の邂逅を通し世話好きなのだろう事が分かる彼の様子を受け、困った姿を見せれば力になってくれるのでは無いかなんて打算も少し。手伝ってくれる?なんて言葉は口に出さず、やや上目がちな視線を送る事でお伺いを立てようか。 )
連投するつもりは無かったのだけれど、何らかの手違いで同じ内容を二回送ってしまったみたいだね…。この謝罪も含めて場所を取っちゃってごめんね…。
>ゼズゥ(>1595)
ああ、俺の故郷で“夢”を意味する言葉さ。
(彼女の好奇に頷きを返す。それからその名を改めて説明する表情には懐古と情愛の綻びが含まれて、面持ちは春の夕暮れのような柔らかなものに変化する。「…俺の一番好きな言葉だ。」そうもう一つ、案に出した理由を表情に違わぬ穏やかさで付け加えて話を綴じる。――問いに返されたのは二つの目的地。それこそがこの交渉事に対する是の答えであると直ぐに理解して、一度満足げに鼻を笑い鳴らした次、「オーケー、二日後だな。」己の音でも日時を繰り返して約束を確かに結んだ後、差し出された掌を覗き込んでみればこれまた望みの物。「ほう、」嬉々籠る感嘆の声を洩らして再び顔を上げた所に、ジョークを纏う微笑みと出会し、「……フ、ハハッ!そんじゃ、頑張って“お利口さん”しとかねえとな。」思わず声を溢した勢いのまま、今度は悪戯小僧の如くにんまりと口の端を弛めて、些かわざとらしい丁寧さでその単語を引用する事で契りを確と結び、リボンに彩られたそれらを受け取る。「いやあ、此処で初めて会ったのがアンタで良かった。」唐突に攫われた常夜の異界、目の前に現れた怪物。それでも臆するどころか、この状況において最上を選び取れたと沸き立つ喜色を、満面の笑顔と彼女へ向ける真っ直ぐな友愛混じりの安堵に示して。「さて。お互い目的のモンは手に出来たし、此処ともそろそろお暇の頃合いかね。」彼女は至高の煙を、己は次なる探険の約束を。交渉の成立を改めて言葉に変えて確かめた後、少々の名残惜しさに室内に一周視線を巡らせた終わりにまた彼女を視界に捉え、その是非を視線の先の瞳に窺う。)
>グレン(>>1596)
コックが増えたらスープが台無し、ってやつね
(見る者によっては依存、あるいは全幅の信頼とも受け取れる彼の答えにコミカルな様子で肩を竦めて短く吐息するように笑って。必要以上に手を出せばかえって状況を悪化させてしまうかもしれない、そんな危ういバランスで成り立つ彼らの関係を理解したうえで〝向こうから頼られなければ〟これ以上は干渉するまいと心に決めて。「 ちゃんとお礼が言えて偉いじゃない。ついでに美声の友達を何人か紹介してくれりゃもっと良いわ 」お気に入りはなるべく広めず独り占めした方がよいと思っていたが、自分が素敵だと思った場所に共感を示してくれる存在がいるのも悪くない。屋敷に呪縛された哀れな怪物の身で心がほんのりと暖かさを取り戻すような感覚を味わえる夜は多くない、だからこそ対価を求めるような口ぶりながらもカラリと歯切れのいい口調でブラックジョークを添えるに留めて「 それ、おねだりのつもり? 」元よりへらへらしている態度を好かない人魚は途端に細い眉を吊り上げ「 ハイネはそのキレーなお顔できゅるんと甘えたら我儘聞いてくれるんでしょうけど、アタシはそうはいかないわよ 」ゴテゴテキラキラのネイルで鋭く尖った食指をびしりと彼に向け、しかし突き放すではなくふんすと鼻息を荒くした後に腕を組んで彼の前に立ちはだかるように仁王立ち「 これ以上何をして欲しいのか、きっちり言葉にしてお願いしなさい。じゃないと相手には伝わらないし、それが然るべき態度ってもんでしょ 」愛を以って厳しく生徒に接する鬼教師、もしくは人魚の紹介者である死神の言ったクイーンという形容表現が相応しいお説教は、か弱い人間がこの屋敷で出来る限り有利に事を運ぶのに必要であろう心構え。ダークエルフだけの寵愛を得られていれば生きていけるだろう彼に対して夏炉冬扇な内容かもしれないと承知の上で真っすぐに伝えるのは、きっと彼の事をこの先も気に掛け続ける対象として見捨てていない証拠なのだろう)
>ナミル(>>1599)
……あたしにとっても好きな言葉になった。
(きっと彼にとって思い入れのある単語であろうことはその抒情的な表情から伺える。そっと灰皿に目を落として、夢の名を関する燃え殻をそっと指先で撫でながら呟いた声は今夜最も柔らかな音で部屋の静寂を揺らして。「 二日後に傷だらけになってても治してあげないからね 」イメージしたのは言いつけを破り探検を重ねた結果、約束の夜を迎える頃にはすっかり生傷まみれになってしまった少年の姿。無論この屋敷ではそんな生易しい傷を負うような状況に至れば致命傷を免れない事態の方が多いだろうが、彼がそれを理解してくれている事を信じ冗句として言葉を返して。「 …そんな事初めて言われた 」命を奪う怪物として人間たちから忌避される存在には聞き慣れない評価。口をへの字に曲げたままぽかんと瞠目したのち「 結構嬉しい 」と素直に感想を。初夜とは思えぬ有意義な時間を前に未練はなく、「 そうだね 」と返事をしてずるりぬるりと重い鱗を引き摺り部屋の出口へと。そのまますぐそこで待ってくれていた彼の自室の扉前まで送れば「 じゃ、またね 」と端的に今夜の邂逅を結び、彼から何も追加で呼びかけられる事がなければしっかりと扉が閉まるのを視認してから、再度単身でラミアの研究室に戻るのだろう。〝夢〟の量産について、可愛い使い魔に火急の指示を出すために)
>ゼズゥ(>1601)
……そうか。
(自分も、と。そう聞いて胸を擽った感情は嬉しさだろうか、それとも親しみだろうか。どちらにしても暖かく心地好かったそれが悪いものでは無い事だけを確信して、ふっと柔らかに相槌を打った。その後に続けて、「ハッ、厳しいな。」忠告の布を被った冗談に此方も軽口と肩を竦める仕草を。――己の問いに肯定を返して動き出す彼女の後に付き、「おう、またな。」一時のお別れに片手を振って、今宵より自室となった部屋の中へ。……ドアが閉じ、一人の時間。まずはソファに座って一息吐き出し、頭を背凭れに預けて窓向こうの月を仰ぎつつ、此処に来た瞬間から今までに詰め込まれた情報を、頭の内で解いて整える。「――随分面白いくたばり方すんだなあ、俺は。」事故も病も見た、飢えも獣に襲われるのも。逃れようの無いこの早世の運命に起きた突飛な奇跡に、そんな感嘆を零して。それから思い出すのは、つい先程まで顔を合わせていた怪物。気怠そうで憂うようで、しかし頼られる事を好ましいと言った、世話焼きの優しい蛇。「……まあ、悪かねえ。」彼女の瞳に灯った光と、“嬉しい”と告げた声を浮かべた目の前に、おまけと受け取ったリボンを纏う煙草と己が薬指を飾るシルバーリングを見詰めてそう笑い。「――さて。風呂入って飯食って寝るか!」暫し浸った感傷じみた静寂を破り、がばりと勢い良く身体を起こしてそう一人今夜の行動を決め立ち上がる。――いつでも剛毅豪快な虎は、異界と残酷な宿命に捕らわれたとて変わらない。まずは今生きる為の営みからと、普段と同じ大きな足取りでこの常夜を歩き始める。)
***
よう、そろそろこの辺が頃合いだろう。初日から外出歩けて、面白いモンも見れて中々楽しかったぜ。あんがとな。
互いの事すらまだ何も知らん俺達だ、この先予想もつかんくらいの長い道程が待ってるだろうが……まあ、気長に付き合ってくれよ、ゼズゥの嬢ちゃん。
さてと。名残惜しいがここらで交代の時間だな。次は狩人の坊主の出番で、随分前に宝箱で話した流れの通り【月夜の晩酌】といかせてもらいたい。…いやあ、もうちょいガキのまんまでいて楽しむのも悪かねえとも思ったんだけどな、早いとこアイツの酔っ払った所が見てえって坊主が言うからよ。酔ったついでにガキん時の事でも突っついて肴にしてやるといい……なんて、ハハッ、いや冗談さ。
ふむ、俺から伝えとくのはこんなもんかね。そっちから何も無けりゃ、晩酌向けの文を練ってくるが……どうだい、何かあるかい?
>ナミル(>>1602)
こちらこそありがと。メタっぽくなるけど、あたしにとっても初めて屋敷で話せた人間があんたで良かったって思った。……やっぱ今の無し、忘れて。
あたしらは気長に過ごすのは慣れてんの。あんたこそ途中でくたばんないでよ。
そうだ、そんな話したよね。すごく綺麗な流れのストーリーだったから楽しみにしてたんだ、…レオが暑苦しい酔っ払いに絡まれて嫌な思いしなきゃいいけど。今のところ追加で相談させて欲しい事はないから、月夜の晩酌の始まりを楽しみに待ってる。
……ああそうだ、ナミルは今夜で本登録だからまた後でメニューに載せさせてもらうね。もし不備とか差し替えがあったら遠慮なくいつでも言って。
じゃあ、またね。
>ゼズゥ(>1603)
ふむ。では、ここから先は私の出番だな。
また久しぶりに彼に会えるというのに、嫌だと思う事などある筈が無い。…夢に見るほど楽しみにしていたのだからな。
虎の彼についても承知した。それでは、今夜も楽しい一夜になる事を願おう。
***
(狐の神通力による騒動から少々。無事元の姿へと戻り、自室へと帰って暫し経った夜の事。ここ何日かは約束通りに貰った大工仕事の端材を相手に、作業台と決めた机の上で笛作りに勤しんでいた。「ふむ、」一つの区切りに道具を置いて、拙いながらも見た目だけは整った笛を掌に乗せて眺めながら、「……困ったな。」ふとそう呟いたのは、この数日間目の前を過る追憶の所為。木や土の香りが沈んだものを起こすのか、それともドラゴンの彼と過ごす際に辿りなぞった想い出が呼び水になったのか、不意に浮かぶ幼い記憶が作業の手を何度も止めてしまう。「…どうしたのだろうな、私は。」この異界での運命を受け入れた。元の山に未練と呼べる程のものを残してもいないし、帰りたいと願う郷愁も無い。それなのに追憶の度に胸に吹き抜ける木枯らしのような寒さ。その解決策を見付けられず慣れない悩み事に困惑する思考回路は寄った眉に顕れる。「……ラザロ、」つい、口から彼の名前が零れ落ちた。危険な道では手を引いてくれた、困った時弱った時、助けてくれた彼の姿が灯火のように思考を拓いて。――会いたい。それは殆ど直感だった。彼に会えたのなら、話が出来たのなら、この囚われて絡まる“何か”も解けるだろう、などと。無防備なまでの信頼に根付くらしくもない衝動のまま立ち上がり、ポケットの“お守り”と持ったままだった形だけの笛を確と握り締めながら部屋のドアを開き、まずは通路を見回して無意味に等しい安全確認を――と、そこに。見覚えのある蜥蜴が視界を横切っていった。「あれは、ラザロの……」烏、蝙蝠と数居る中でもこの個だけは唯一間違える事は無い、彼の使い魔。「そこの君、待ってくれ、」初夜に受けていた忠告が縛った躊躇いを振り切って、その小さな背を追う。……その後どの角をどう曲がって、どの階段を上り下ったかは解らない。ただ、いつの間にか追い掛けていた姿を見失い、その代わりに――あの夜見た頑丈で無骨な、彼そのものを表したような扉が眼前に佇んでいた。事態を理解出来ず一度瞬いて、しかし本来の目的を思い出した右手の甲でノックを三度。「ラザロ、其処に居るか?」まず在室の確認を取った次、「その……今日はどうにも、寂しい、ようで。君の顔を一目見たいのだが、」普段に比べて辿々しく困惑を含んだ物言いになるのは、この感情にも、それを音にするのも不慣れであるから。それでも彼是と飾る事を知らない言葉を真っ直ぐ扉の向こうに伝えて、「…良ければ、此処を開けてもらえないだろうか?」己の膂力では到底開きようもない重厚な扉に掌を添え、請い願う声で面持ちの知れない彼の意思を窺い返答を待つ。)
>レオ(>>1604)
(大きく開け放たれた窓からは冴え冴えとした月光と心地よい夜風が舞い込み、静けさも相まって心の落ち着く穏やかな夜気の流れる時間――なのだが、部屋の主たるドラゴンは多少上気した頬を引っ提げいつも通りのしかめっ面。窓に対面する形で床にあぐらをかき、行儀悪く床をテーブル代わりにして酒瓶やらつまみやらを散らかしながら、重く冷たい鉄製の大きなジョッキの中身を飲み干してガツンとテーブルに打ち付け「 糞…ッ 」何かに悪態をつきながらごつごつと骨張った手の甲でグイと口元を拭って。そこで割り込んだノック音に、相手はきっと同胞の誰かだろう、世話の焼けるゾンビか堕天使辺りが暇潰しにやって来たのかと推察するも今は酒を呑まねばやっていられない気分。彼らの賑やかい雰囲気に付き合える心の余裕はなく「 後にしやがれ! 」そう扉の向こうの同胞へ声を張り上げたところで、聞こえるはずのない人間の声がした事に一瞬身体の動きを止めて。「 ……レオか? 」確認の形を取ったのは彼の声を聴き当てる自信がないわけではなく、本当に人間が自力で怪物の部屋を探し当てることなど不可能に近いため空耳でも聞いたのかと自身の耳を疑っているから。いつもの毅然とした調子とは異なる弱々しさを含む声色に気付いてしまえば放っておけず、舌打ちしながら立ち上がって分厚い扉を手前に開き「 ……訊きてえ事も言いてえ事もあるがよ、とりあえず入れ。 」もしや怪我をしたのかと反射的に心配したが、見下ろした彼をざっと眺めて目立った外傷が無い事に内心で安堵。しかし廊下で立ち話をするところを誰かに見られるのは面白くない、怪訝そうな表情のまま扉を支えていない方の手で相手の腕を掴み、窓が開いていることで緩和されているもののやや酒の匂いのする部屋へと引っ張り入れようか)
>キルステン( >1600 )
美声の友達、かぁ…………心当たりが無い訳では無いけど
( 現世ではある程度の人脈を紡いできたつもりだし、その中には無論声で稼ぐような人種もいる。然しながら彼らがこの屋敷で過ごしていけるような性格をしているかはまた別の話で。すぅと目を細め 「 僕と違って聞き分けがいい訳じゃあ無いから、きっと直ぐに怪物のお腹の中に収まるよ 」 先程の歯切れの悪さから一転、にっこりとした笑みを浮かべて見せて。数回瞳を瞬かせたのは求めるものを読み違える、なんて普段では絶対にしないような失態を犯してしまった自分自身への驚きから。可愛く見上げてお強請りだなんて、それ程してきた記憶も無く思い当たる対象はダークエルフだけ。そんなところに思考が到着すれば自身で思っている以上に深いところまで侵食されている現状に思わず漏れ出た笑い声は予想以上に大きく、彼の尖った爪先がこちらに向いている事も構わずに 「 ……ははは!ごめんごめん。ハイネにおねだりする時の癖がついちゃってたみたいだね 」 一頻り笑った事により目尻に薄らと浮かぶ涙を人差し指で軽く拭い取ってしまえば、に、と口角を持ち上げ自信ありげな表情とともに 「 ラッピングと加工、手伝って欲しいんだ。対価としてあげれるものって言ったら僕自身しか無いんだけれど……きっとキルステンは “ 僕を欲しい ” とは思わないだろうけど 」 言葉の締めはやや自虐風味に、けれども決して悲壮感が漂うものでは無くたっぷりと茶目っ気を交えたもので 「 もちろん、今夜じゃなくてまた後日でも構わないよ。キルステンにも用事があるだろうし 」 今夜だってかなり急なお願い事だったに違いない。この世話好きな人魚が否定的な返答を返してくるだなんて考えてはいないものの、矢張り伺いを立てた事への返答を待つ時間は不安を煽るものに変わりはなく。どうだろう、と言葉として出すことはしないもののゆるりと首を傾げて )
>グレン(>>1606)
(彼に対して話に聞いていたよりも幼い印象を抱いていたからこそ、叱られて臍を曲げるほど子供ではなかった事に良い意味で予想を裏切られ笑う彼を見つめるに留めて。そうして思い当たるのは今しがた彼の放った自己評価、ふっと笑って「 確かに聞き分けがいいわ。ハイネに深ぁく気に入られるわけね 」納得したように呟き、きちんと自身が促したように依頼事項をてきぱきと話す相手に満足そうに頷いて、口角を上げて微笑の形を作りながらも気合を入れるように眉尻をきりりと上げて「 任せなさい、このキルステンにかかればアンタに無様なモンを持って帰らせたりしないわ 」堂々言い放って彼に向けていた食指の先、その照準を1mほど横にずらして――勢いよく紙を引き裂くような音と共に指先から射出された水が洞窟の壁にごくごく小さな、それでいて深い穴を穿っていて。人魚よろしくウォーターカッターの要領なのだろう、確かにダイヤモンドですら容易に繊細に加工できそうなその威力をお披露目した後「 どんな形がお望みかしら 」丁度そこにあった切り株のような形の岩に腰掛け、勝気な笑みと共に注文を受け付けてから「 お代は考えとくわ 」と申し添えて。本当は無償でも構わないのだが、それを伝えると安心を与えると同時に遠慮もさせてしまうかもしれない。そんな配慮から対価の事は後回し、あくまで彼が自身を呼び出した本懐を遂げるべく彼の言葉を待とう)
>キルステン( >1607 )
ふふ、でしょう?
( すぅと双眸を細め見せるのは先程までと比べやや大人びた表情。有り体に言えば素直な本質は誰かに求められる為に、他者が自身に望む姿を演じるためにと吸収し演じる賜物なのだが、それを口にするのは無粋かつ己にとっての弱味をひけらかす事に繋がるために言葉にする事はせずに。自信満々な彼の指先から放たれた水が壁に穴を穿つ様子に驚きの表情を見せるのはほんの僅かな瞬間。きっと瞬きの間に口角を持ち上げた常の笑顔が戻っている事だろう。座した彼と対面する位置に立ち 「 んーー、そうだなぁ…… 」 悩む素振りを見せるのはお洒落で唯一無二のものを贈りたいというエゴに塗れた気持ちの反面、きっとそんな物よりも目立たないシンプルなものの方がきっと彼は好むだろうとの気持ちがあるから。ポケットに仕舞込んだ石を取り出し掌の上でコロコロと弄ぶように転がしながら思考を巡らせること暫く、漸く考えが纏まれば 「 まぁるい形でお願い。何処にも引っ掛けたりしないように、なるべく角のない丸い形 」 彼が手を差し出してくれるのならその手の上に自身の瞳の色に似た石を乗せるつもりで。 「 きっとキルステンなら華美なカットもしてくれるだろうけど、ハイネはあんまり身に着けてくれなさそうだからさ 」 あくまで目的は “ ダークエルフが身に付け、見る度に思い出すような贈り物をする ” その一点がブレる事はなく。今宵の代償については口を挟むのも野暮かと口出しすることはせずに )
>ラザロ(>1605)
(ノックの直後に扉を突き抜けた声の大きさに一瞬肩が跳ね、添えた掌も離れかける。しかし問いかけにまた直ぐに五指を揃え置いて、「ああ、私だ。レオだ。」明確な肯定の答えを。それから開いた其処に気弱に萎れた表情は温く弛み、見下ろす彼とは対比にその顔を仰いで安堵の息を小さく吹く。「有り難う、ラザロ。」扉を開けてくれた事にも、物言いたげであれど唐突な己の訪問を許してくれた事にも礼を告げた後、引かれた手のまま彼の部屋に足を踏み入れる――と、そこでふわり漂ってきた空気に気が付く。縁遠く嗅ぎ慣れてはいない、だが知ってはいるもの。「……ん、」目の前の彼の姿ばかりに寄っていた意識を広げて、鼻を澄ませ視線を室内に流してその正体を探る。……前に見た時と殆ど変わらぬ内装の床へ置かれたジョッキと、再び見上げた先の彼の僅かに赤い頬と、その身に纏う匂い。「…ああ、酒を飲んでいたのか。」掘り起こした街中の記憶と現在の状況の照合がようやっと済み、先程のドア越しに聞いた声へ一人納得の呟きを零し落とした後に、「すまない。君の余暇を邪魔するつもりはなかったのだが……」自己都合ばかりであった自覚の芽生えが今頃衝動を冷まして、居た堪れなさに苦く眉を下げつつ詫びを先ず一つ。続けて、「……どうしても、君に会いたくてな。」更に綴った自らの言葉に引っ張られて、視線も声も些か沈めた次に、「ほんの少しの間でいい。今だけ、君の傍に居させてほしい。」今度は彼の瞳を真っ直ぐに――ほんの僅かな寂寥の揺らぎを湛えながらも確と見据えて、「……構わない、だろうか?」今夜この一時、彼の隣へ身を寄せる許しを希い問い掛ける。)
>グレン(>>1608)
真円?楕円?球体にすりゃいいのかしら
(ただでさえきらきらしたものを得意な方法で加工できるなんて楽しくて仕方ないのに、誰かに頼られてとなれば世話好き冥利に尽きる状況。それも贈り物の品となれば健気な彼のイメージに出来る限り近い仕上がりにしたい、そんな思いから掌に受け取った宝石を色んな角度から観察しながら弾むような声色で問い掛けて「 まあ正解なんじゃない?彼、こだわり強そうだし 」仲が良いわけではない人魚とダークエルフの間柄、何なら人魚の側からすれば決して良い印象はない――好みの人間だけを好き勝手に囲って閉じ込め一方的に愛し、それでいて飽きればその甘い檻から無慈悲に放逐する身勝手なオトコ――そんな印象を抱いているため当然好みなど知る由もなく。それでも彼の考えを後押しする気遣いは忘れず「 ほんとに身に着けてくれるんなら、アンタよっぽど愛されてるわね 」それが永遠でなくても依存の愛に溺れなければこの屋敷で生きられないのならば、綺麗事は置いておいて彼らの歪んだ関係を否定すまいと。落とさないよう慎重に親指から数えて三つの指で加工前の石を摘まんで近くのランタンの灯りに翳して)
>レオ(>>1609)
…呑まなきゃやってらんねえ夜もあんだよ
(いつ何時でも弱みを見せず漢気を誇示し、恰好をつけなければ男ではない。そんな暑苦しい矜持を負う竜だからこそ、人間というより一層威風を見せ付けなければならない相手に散らばった空瓶を見られてしまった事に間が悪そうに小さく舌打ちをして、くしゃくしゃと短い髪を掻きながら言い訳をぽつり。重々しい音と共にずっしりと閉まった扉に背を預け、彼の言葉ひとつひとつに口を挟む事無く耳を傾け「 テメェにとっちゃ〝誰か〟の傍に居なきゃやってらんねえ夜ってわけか 」彼の意図、心情をすっかり理解したつもりで、しかし一点だけ――彼が訪ねたのは不特定の怪物ではなくこのドラゴンなのだということだけ――を曲解したまま、先ほどまでの苛立ちはどこへやら酔っ払っているがゆえの感情のスイッチの緩さか僅かに赤い頬を上げニカリと笑い「 邪魔するつもりじゃねえってんなら証明しな 」眉尻は吊り上げ挑戦的な笑みのまま、ずかずかと窓の前の晩酌地点に戻りドカリとあぐらをかいて。そうして自らの右隣を太い尻尾でビタンと叩き「 付き合えよ、レオ 」座布団やクッションの類を用意する繊細な気遣いは不器用な竜には適わず、〝オイ!〟と声を張り上げればトカゲの使い魔がちろちろとやってきて、木で出来たジョッキを芳醇な香りの葡萄酒で満たしたものを魔法の力で運んで。もう一匹別の個体が気を利かせて大きめの柔らかなビーズクッションを運んでくる、後は下に敷くでも体重を預けるでも使い方は彼に任せるつもりでちょこちょこと去って行き)
>ラザロ(>1611)
(己の心情を改めて彼の言葉に直された折、ほんの僅か何かずれているような感覚が胸に靄を張り、だがそれは声にする前に霧散した為に閉口する。見上げた彼の笑顔に彼是俯いていた感情も暖まって、気分も上向いた所へ告げられる言葉に一度瞬き、「……証明?」その一部を切り取って疑問の独り言を呟く。だが続けて床を打った尾へ求められる行動を理解すれば、素直と頷き彼の隣に添い。二匹の使い魔が持ってきた物の内まずはクッションを受け取り、敷いたその上に胡座を組む形で腰を下ろし、その次に木製の器の持ち手を掴み慎重に胸の前までそれを持ってくる。そのままジョッキを満たすものに興味津々と顔を寄せ、すん、と微かに鳴る音と共に鼻を利かせて中身を確かめ、「ああ、葡萄の酒か。珍しいな。」そもそも関心が薄く特別意識する機会さえ少なかった中でも、己の街にはそう見かける事の無かった酒種に感嘆を零す。しかしながらそれ以上には近付かず、寧ろ少し離してしまった濃い赤の水面には、些かそわつく躊躇を覗かせた眉の下がった面持ちが映る。それはまるで、唆しに言い付けを破ってしまう寸前の子供のような――ふと、上げた視線で隣を窺う。おずおずと強張った仕草のそれは、傍のドラゴンの姿を視界に収めた数秒後に安堵らしき表情へ緩んで。「……頂きます。」葡萄酒そのものに、或いは彼へ、感謝を籠めた挨拶を渡した後、「そうだラザロ、乾杯をしないか?」祝い事でも何でもない、二人だけの飲み交わし。それでも祭りの夜に似た浮わつきが僅かに滲み始めた心が、数少ないその経験を彼と成したいと、ジョッキをそちらへ持ち上げさせた。)
>キルステン( >1610 )
真円で、二つ出来るようにお願いしたいな。
( 悩む素振りも淀みもなく答えるのは、彼はそう言った態度を好むのだと学んだ事が半分、ちょっとした細工を思い付いた事が半分。但し、その思い付いた事を実行するためには自身の持物だけでは叶わ無いことは明白で 「 ねえ、キルステン。これは可能ならで良いんだけれど、小型のナイフとかそれに見合う先の尖った物を数日貸してもらう事は出来る? 」 理由を尋ねられるのならば、きっと怯むこと無く「 石の裏側から彫りを入れたくて 」 なんて少しでもデザイン性のある物にする為のアイデアと共に 「 石を探すだけじゃなくて、僕も何かしたいから 」 なんて心中を苦笑混じりに伝えるはずで。拘りの強いダークエルフも形が特徴的な物は好まずとも、透かして見える程度の彫りであれば『 可愛い事をする 』 なんて言葉と共に見てくれるだろうなんていうのは己の甘えだろうか。暗いモヤが頭に浮かびかけたところを晴らしてくれたのは後押しをするかのような彼の発言 「 ふふ、着けてくれても着けてくれなくてもキルステンには報告するね 」 今の所自信は半分以下と言ったところ。然しそれを覆い隠すような満面の笑顔を浮かべて見せて。彼が灯りに翳した石は反射によって青く見えたり紫に見えたりと不思議な色合いをしているはず )
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