No title（〆）

うーわ、ちと嫌だなそれ…でも大抵のモン揃っちまうから楽だよなぁ。…そりゃどっかのガキンチョが風邪なんかひくからだろ。でなけりゃ全然潰す気満々だったっつーのに。春クン酔うと気ぃデカくなるっつってたから見てみたいんだよなぁ。遊佐さんもあんま酔ってる記憶ねぇし。…まぁ人脈だけはあるよなぁ、有り難い事に。でも俺もいちご狩りは初めてだし普通に楽しみ。悠チャンの写真いっぱい撮ろ。──ハイ、決まりー。良い子で帰ろうなぁ。(聞こえてきた言葉に揶揄染みた笑みを浮かべながら相手の手を引いてはマンションへと真っ直ぐに進み大股で自宅へと向かい)

まあ風邪も風邪なんすけど、俺がテキーラ体に合わないって言ったらどこかの優しい誰かさんが頼むから飲まないでくれって言ってくれたんすよ。あれ、それは祭りの日じゃないか。何にせよ、浩二さんの事諦めようとした時にやられたんで、泣けた気がします。…えっ、パパってそうなんすか？あの優しくて気の利く愉快なお兄さんが変貌すると思うと、見てみるしかないっすね。ママは冷静沈着なんで、ちゃんと管理して飲みそうですわ。…えへ、じゃあデートの日は気合い入れて支度します。──自分でも信じられないっすわ。毎日しこたまイチャ付いてるのにそっちを選ぶだなんて。（自嘲しつつも先刻までと打って変わり速い歩調でエントランスとエレベーターを通過し家の扉の前へと赴くと、解錠し開き相手の入室を待ち）

……うっわ、そんな事言ったっけ。やーべぇ…多分無意識だわ、それ。ハァ…めちゃくちゃ小っ恥ずかしいじゃん。そりゃんな事言ってたら周りにバレてる訳だよなぁ。…意外だよなぁ、更に陽気になりそうなモンなのに。年上傅かせて飲む酒が1番旨いって話をしたら、気がデカくなるから期待には添えないって言われた覚えあるわ。遊佐さんに関しては煽っても乗ってこないだろーしなぁ…潰れてるの見てぇけど。…可愛い恋人連れ回せんの期待してるわ。──ハハ、イチャつくの好きだもんなぁ。そーゆー所可愛い。(堪らずにくつくつと喉を鳴らしては開かれた扉を潜ろうとした所でふと思い直しては立ち止まり、相手の額に口付けてから素知らぬ顔で通り過ぎ、靴を脱いで洗面所で手洗いうがいを済ませ)

何だ無意識っすか。人誑しだなぁ。風邪ひいた時も、俺は浩二さんを諦めようとしてたからそれを言い訳に離れてたのに、俺に移して良いからおいでって呼んで俺の心を掻き乱してたんですよ。きっとそれも無意識でしょうけど。罪なくらいイケメンだ。──あ、さてはパパを酔わせてナンパしようとしてましたな？でも良く良く考えたらパパって美形な年上なんで、浩二さんのドンピシャ好みっすわな。遊佐さん潰れたら色気ヤベーんじゃないっすかね。今度やってみてくださいよ。クールに躱されるでしょうが。──俺的には浩二さんがイチゴに囲まれてる絵面がアツいっすね。同じく写真撮りまくりっすよ。…生憎欲望に忠実なものでして。早くちゅーしましょ、さっきのは友情のキスっすわ。（相手の背を見てすっかりと油断しているも、不意打ちで額に口付けを贈られれば見開き僅かに耳を朱に染め。余韻に浸りながらのろのろと家に入り手洗いうがいを済ませると、リビングへと赴き猫を抱え上げ頬擦りをして）ココちゃんただいま。

あー、それは覚えるし…無意識じゃねぇよ。めちゃくちゃ心配してたの。いっつも引っ付いてくるクセになかなか来ねぇし、入り口付近で突っ立ってるしさぁ…気が気じゃなかったんだっつの。…それに、テキーラにしても身体に合わないとか言われたってゴリ押しする俺の性格知ってんだろ。…悠チャンじゃなけりゃんな事言う程お人好しじゃねぇよ。──ありゃお互い完全に悪ノリ。俺がヘラヘラして春クンが遇らうっつーネタみてぇなモン。…え、めちゃくちゃ楽しそうだな、それ。なんて言えば乗ってくれっかな…いやでも遊佐さん強そうな気ぃすんだよなぁ。──うっせ、どーせ似合わねぇよ。…まぁでもイチゴとかなら甘いけど一緒に買ってやれねぇ事ないかなって。…おっと、そーゆー軽口は聞き捨てなんねぇや。いーのぉ？あんな熱烈なの友情のキス扱いにして。もちっと可愛くおねだり出来んだろ？(ソファーに腰掛け背凭れに身を預けながら恋人の肩越しに目が合った愛猫に緩く手を振っていたものの、聞こえてきた言葉に反応し肩を小さく揺らしてはゆっくり身体を起こしては前屈みに座り直し相手を冷ややかに見据え)

そっちは覚えてたんすね。そんなに心配してくれてたなんて、嬉しいなぁ。テキーラの件はお預けどころか、確か浩二さん既に酔っ払ってたのに俺が注いだショット片っ端から飲んで阻止してましたからね。そっか、俺は愛されていたのか。──あーね、漫才みたいなモンだったんすね。遊佐さんはー、高級なワインでも持っていけば飲んでくれますかねー…でも確かにザルっぽい感じはありますよね。先に浩二さんがベロンベロンになるかもしれないですな。──あははっ、似合わないなんて言ってないですよ。ギャップが可愛いって言おうとしたんです。…んー、やっぱり完全に2人切りの場所じゃなきゃ緊張して腰砕けになれませんでした。不完全燃焼なんで、もう1回ちゅーしてください。（猫の頭を撫でつつ相手の冷ややかな視線を見遣っては一笑し、腕の中の子をキャットタワーへと座らせると緩慢に相手の隣へと移動し着座。甘い声で強請っては、項へと両手を回し己から触れるだけの口付けを仕掛けて）

その頃にはお前への気持ち自覚してたから割と覚えてるわ。…しかもあれだ、確かその前後くらいに悠チャンが人誑しやめるっつってて…そん時はお前は他の奴好きなんだと思ってたから、こーゆーのやめてやんねぇとなぁって思ったし余計に記憶に残ってる。…うわ、酔っ払いやべぇなぁ。まぁ酔ってる時なんか本心ダダ漏れだからなぁ…。──あー、確かにワインなら。つっても赤ワインガブ飲みすると俺、悪酔いしがちなんだよなぁ。俺がベロベロになってたら連れ帰ってくれなぁ。──…悠チャンの可愛いの基準わっかんねぇ。ま、折角の思い出作りだしなぁ、一緒に写真撮ろ。…お、可愛い事言えんじゃん。(甘えた声を出す相手に満足気なものへと表情を変えては片手で腰を抱き寄せ、空の手で顎を支えてやりながら食らいつく様に唇を重ね。ゆっくりと焦らしつつ舌を割り入れては口内を味わう様に丹念に舌を絡ませて)

…いやー、ほろ苦いっすね。人誑しだって元を辿ればお兄さんだけ特別ってバレるのが怖くてやってた事ですし。だから手前の中では本命だけ線引きしてたつもりなんすけど…おっかしいなー、俺恋愛下手だったみたいです。うん、酒の力って凄いですね。でも浩二さんがそう思ってくれたんだって分かると、やっぱニヤニヤしちゃいますね。──悪酔いしちゃうなら駄目っすね。テキーラ止められた仕返しで、俺からもＮＧにさせて貰いますよ。…えへ、上手にお強請りできてました？こんな甘いところ見せるのも、やっぱ2人きりじゃないと難しいですね。……んっ……ン、（荒々しく唇を重ねられれば、求められている心地に心臓を高鳴らせるも、焦らす様な舌遣いには体内で熱が燻るのを感じ背を震わせて。力が抜けるのを感じつつ己からも控えめに舌を絡ませては、視界が僅かに揺れる眼を薄く開き相手の表情を窺い）

今だから言うけど、悠チャンが俺に気ぃあるんかなって思った時期はあったよ。ま、その後に他の奴誑し込んでんの見て勘違いした訳だけど。…ふ、こうして考えると悉くタイミング悪かったなぁ。──あ、いや…ふっつーに飲む位なら全然平気なんだけどな。量多いとダメってだけで。…ま、遊佐さんなんだかんだで何でも飲んでくれそうだしなぁ。ビールも日本酒もオッケーだったし。……っ、…ご馳走さん。これ以上は今日はやんない。(抱いた腰から伝わる相手の反応とそれを裏付ける様に漏れ聞こえる声に自然と口角が吊り上がり。こちらを窺う様な瞳と視線が絡めばじわりと熱が広がる感覚を覚え小さく息を溢して、態と音を立てて相手の下唇に強く吸い付いてから解放し自分に言い聞かせる様に呟いて)

シガレットキスしたりお年玉でジッポ貰ったり、割と露骨なお強請りしてましたもんね。一丁前にジッポは俺だけのって、他の人に貸す用のライターも持ち歩いてたくらいですからバレても当然か。…ね、擦れ違いまくりでしたね。成人してからこんな焦ったい恋するなんて思ってませんでしたよ。──んー、じゃあワインは嗜む程度にしてくださいね。遊佐さんはそっすね、優しいんで何やかんや付き合ってくれそうっすわ。じゃあ次会ったら、良い感じに酒盛りしましょうか。……ふ、…ぅ……、（薄く開いた目が相手の視線を捉えては、羞恥で急激に体が火照るのを感じ直ぐに瞼を伏せ取り繕う様に些か激しめに舌を絡めて。鼓膜を振動させる水音に一際背を震えさせては、息を乱しつつ唇を手で拭い唾液を飲み下し、眉をハの字に下げつつ余韻に浸る様な甘い声で）…んー…また蛇の生殺しだー…寝て起きたら悪戯されてても俺のせいじゃないですからね。…さて、そろそろベッド行きます？

うわ、ジッポそこまで大切にしててくれたのかよ。つかそんな可愛い事してたのは知らねぇ…それ知ってりゃあなぁ、お前を不用意に傷付けたりしなくて済んだのかな。…ま、過ぎた事はしゃーねぇか。その分これから目一杯悠チャンの事愛していくし、大事にしてくから。──ハハ、了解。まぁもう変な飲み方も殆どしてねぇし大丈夫。いーねぇ、楽しみだわ。でもって俺とのサシ飲みも定期的にしよーなぁ。──それはダーメ。今日ちゃんと待て出来たら明日思いっ切り玩具にしてやるからそれ期待して寝て。出来なきゃ暫くしませーん。…ん、良い時間だしなぁ。今日も遅くまでごめんな、明日は早めに寝ような。蹴って寝ちゃって良いから。(相手の様子を厭らしい笑みで眺めては耳元で甘ったるい声で囁きながら首根を掴み、軽く力を込めてから直ぐに離して。緩く頷き相手の手を取れば寝室へと進み)

あんまり物には執着がないんでポイポイ買い替えちゃうんですけど、ジッポだけはダーメ。お兄さんに１番最初に貰ったものなんで、例え煙草を止めても大事にします。…ま、浩二さんが俺に気を持つ前に知ってたら絶対に引かれてたでしょうから、気付かれてなくて良かったですよ。それにもう十分過ぎるくらい幸せなんで。──サシ飲みは勿論喜んで。浩二さんのオンライン飲み会用にも、沢山お酒買っておこうかしら。…うー…玩具にしてやるだなんて俺を唆らせる言葉、よくご存知で。…キツいけど良い子で我慢します。（煽る様な声と所作に息を飲み堪えては、俯き加減で誘導される儘に寝室へと赴きのろのろと寝巻きに着替えて寝具に横たえ。燻る熱を残した儘投げキッスを送っては、欲望に耐える様に横向きで丸まり瞼を伏せ眠りへと就き）いいえ、寧ろ俺の方こそ付き合って貰っちゃってすんません。浩二さんも蹴って休んじゃってくださいね。おやすみなさい、愛してますよん。

あんがと、初任給で買ったジッポだからめちゃくちゃ嬉しいわ。お前にやって良かった。俺も悠チャンから貰ったジッポどっちも大事にしてんよ。今タバコ吸ってねぇのにちゃあんと2つ持ちしてんもん。…多分引きはしねぇけど、すーげぇ揶揄ってたと思うから確かに良かったかも。──つってもドチャクソにビールあるから暫くは安泰じゃね？ま、ビールしかねぇんだけど。…お、偉いじゃん。たくさんご褒美あげようなぁ。(大人しく従う姿に嗜虐心を煽られるもなんとか耐えて口元を歪ませるだけに留め。Tシャツと下着以外を脱ぎながら贈られた投げキッスに応えるべくウインクをするも思わず破顔して布団に潜り込めば恋人を抱きしめ柔な手つきで頭を撫でながらその呼吸が規則正しいものへと変わると額と頬に軽く口付けてから瞼を閉じて)おやすみ、悠チャン。愛してるよ。ゆっくり寝てくれな。

（珍しくも早めの起床を果たすと、シャワーを浴び一連の家事を済ませスマホを片手に意気揚々とキッチンに立ち料理を始めて。厚焼き卵サンドとサラダをワンプレートに盛り付けた後にカフェラテを淹れると、恋人が仕事をしている可能性を考慮して静かにリビングの様子を窺い）

──…あー、承知しました。その件に関してはまた追ってご連絡します。…はい、お疲れ様です。失礼します。(膝の上の愛猫と手慰みに戯れつつ上司からの長々とした業者連絡を漸く終えて、ふと視線を上げればこちらを窺う相手と視線が合い微笑みを向けて)おはよ、悠チャン。さっきからなぁに作ってんの。

浩二さんおはよーございます。えへ、格好良いお兄さんに片手で食べれるランチを作ってました。──ちょっと洗い物してきますねん。お仕事終わったら構ってくーださい。（仕事を熟す普段とは雰囲気の違う相手の姿にうっとりと見惚れているも、視線が合えば指でハートを作り料理を載せた皿とマグカップを相手の傍へと運び。柔な声色で語り掛けた後に頬に口付けを贈ると、仕事の邪魔にならない様にと再びキッチンへと戻り）

お、マジで？あんがと、旨そう。(イヤホンを取り外しながら運ばれてきた食事を見ては表情を明るくするも、口付けもそこそこに相手が自分に背を向けてしまえば眉根を寄せて。愛猫を床に下ろし緩慢に立ち上がるとキッチンに進み、恋人を後ろから抱きしめながら肩口に顎を乗せて)…洗い物なんか俺が明日まとめてやっとくから一緒に食お。

（キッチンへと辿り着くとシンクの前でスポンジと洗剤を手に取り、不意に背後から抱き締められれば表情を緩めてベタなシチュエーションに肩を揺らして。手中の品を戻してから手を洗いタオルで拭うと、反転し相手の肩口に腕を回しながら唇を触れさせ、柔な視線を眼へと注ぎ）あれ、お仕事終わりですか？洗い物は後で俺がやるとしても、じゃあ一緒に食べましょうか。アーンしてあげますね。

ん、今日は終わり。明日の午前中やりゃあ間に合うし。…でもアーンは要らねぇかなぁ。(子供染みた憮然な態度は相手から向けられる柔和な笑みに解けて消え、軽い口付けに応える様に幾度かその唇を啄んでは満足気に小さく息を吐いて徐に手を取りリビングへと導いて。空いた片手でテーブルの上の資料を片付けてはソファーへと腰掛けて卵サンドを手に取り齧り付き)いただきまぁす。──ん、旨い。

流石、デキる男は仕事が早いですなぁ。…ぴえん、浩二さんがアーンさせてくれないですって。虐めだー。（幾度も降る口付けを瞼を伏せ嬉しげに甘受しては、繋がれた手を握り返しリビングへと進みソファーへと着座し。己の手料理を恋人が食す姿を穏やかに眺めては、リモコンを操作し動画配信サービスにアクセスしつつ、顔を相手の方へと向け強請る様に口を開き）口に合った様で何よりです。浩二さん、一口ください。──あれ、アクション系の映画が好きなんでしたっけ。何か観ましょー。