No title（〆）

ハハ……あー、ダメだな。あの祭りっぽい雰囲気に感化されてんのかねぇ、いつも以上に可愛くって仕方ねぇ。好きだよ、悠チャン。(頬への口付けを笑いながら甘受し、隣を歩く恋人を暫し見つめては誤魔化す様に後頭部を掻くも込み上がる気持ちを抑え切れず、唐突に足を止めて目を見つめながら愛を囁けば満足したとばかりにまた歩き出して)な。2人で話すのが勿論1番なんだけど、やっぱああやってワイワイすんの楽しいよなぁ。…俺は結構好き勝手向こう行ったりしてっけど、お前は俺の事ばっか優先させちまうからさぁ。めちゃくちゃ嬉しいし独り占めしておきてぇんだけど、たまにゃ連れ出してやんねぇと。

気が合いますね。俺も不思議と付き合う前の事とか思い出して無性にドキドキしてます。──…うん。俺も好きで好きで…愛してますよ。（胸中に淡い感情の記憶が蘇るのを感じつつ言葉を紡いでは、ふと立ち止まる相手を不思議そうに見遣り、真摯に告げられた台詞に暗がりの中頬を紅潮させ。恥じらいげに視線を逸らし普段より下手な口調で愛を告げると、相手に引かれる様にして歩き出し）そっすね。俺は浩二さんが人と話してんの見るの好きっすよ。口上手いなーと思って惚れ直しちゃいますし。…あっは、じゃあ誘われた時には喜んで。俺は浩二さんが居れば満足なんで、そりゃもういつでも。

マジでなぁ…本当懐かしいわ。あの頃はこんな風になれるとは思って無かったし。…今となっちゃ当たり前になってたけど、あの悠チャンとこうやって手ぇ繋いで当然の様に俺ん家に帰れるっつーのが幸せだなって実感した。…ふ、やべぇなぁ。クソガキみてぇな事言ってんな、俺。──フハ、俺も悠チャンが他の奴らとニコニコ話してんの好き。内心可愛いだろ、俺のモンだぜって思ってる。…いや、今ね。浩二クン珍しく余裕ねぇんだわ。んな熱烈な事言われっとダメ。(恥じらう様な相手の姿に心臓が締め付けられる感覚を覚えては、腑抜けた表情をしているであろう顔を見せまいと視線を宙へと投げ手を引きながら大股で歩き。逸る気持ちで自宅のマンションへと着くと足早にエントランスとエレベーターを通過しては玄関の扉を開けて相手を引き入れて)

本当っすよ。高々数ヶ月前は毎日一喜一憂しながら1人で帰ってたんだもんなー。…浩二さんと楽しく話せりゃそりゃ気分良くして帰りましたし、キスしちゃった日にはその度に後悔。懐かしい。…でね、また今日確信したんですけど、俺はやっぱり浩二さんと付き合えて良かったです。──あははっ、浩二さん俺に隠れてテキーラでも飲んで来ました？（珍しくも初心な相手に愛しさは増す一方で誤魔化す様に声を立て笑っては、幸せを噛み締める様に先を歩く背中を眺め。誘導される儘玄関と入っては、首裏に腕を回し唇を奪い。顔を離すと耳元で囁く様に）皆で話すデメリットもありましてね。お預けを食らうんで、余計に浩二さんが欲しくなるんです。…ささっ、蹴って休んじゃってくださいね。じゃないと、怖い狼が出てきますよ。

俺も。お前が来りゃ嬉しかったし、お前が来なけりゃ…まぁ、物足りなかったわ。キスに関しちゃ大概が御馳走様ですって感じだったけど。…なんだよ急に。俺なんかしたっけ？──あー、そーゆー事にしといて…あんまガッツきたくねぇのよ。ダセェから。へらへらしてる方が俺らしいじゃん。(靴を脱ごうとした所で不意に口付けられれば相手の頭に手を伸ばしそうになるのを辛うじて留めるも、続けて耳元で囁かれた言葉に悶絶に近い唸り声を上げて。片手で欲に歪む口元を隠し空いた手で恋人を制しては足早に寝室に進み、下着姿になれば半ば自棄の様に寝具に寝そべり)あーもー…だぁから可愛い事言うのは今日は禁止！あんま煽るんじゃねぇよ。…ったく、怖い狼になりそうなのはコッチだわ。…悠チャンこそこのまんま蹴って寝ちゃってな。今日は浩二クンちゃあんと抱きしめるだけで我慢してやっから。おやすみ、愛してるよ。

同じ想いでいてくれたなら何よりっすわ。ま、俺は割と見え易く尻尾振ってたと思うんでバレバレだったんでしょうけど。…あー、諸々思い出したら唐突に好きが溢れて。あのイケメンばっかりで賑わった空間で、浩二さんが別の人と付き合う可能性もあった中で、こうして今俺といてくれんのは奇跡だなって。（相手の反応を愉快げに眺め、背中を見送ってから靴を脱ぎ通路を進み寝室へと向かえば、衣服を脱ぎハンガーへと掛け下着姿で寝具へと入り込み。相手の首裏へと腕を差し込み直に触れる肌の感触を楽しんでは、額へと口付けを贈り髪を梳く様に撫でながら眠りへと就き）ちぇー、お預け喰らっちゃいましたか。じゃあ明日、いちゃいちゃしてくださいね。おやすみなさい、浩二さん。愛してますよ。

寧ろ分かり易すぎて勘ぐったもんなぁ。最初のキスん時にやり過ぎちまったから情移ったのかな、こいつって。…何度でも言ってやるけど、俺そもそも恋愛する気なんか更々無かったから。ちっとオイシイ思い出来りゃ良いかなってくらいのもんで…そーゆー意味じゃ奇跡かも知れねぇけど。多分恋人に悠チャン以外を選ぶ事は無かったと思うわ。──やっぱ我慢向いてねぇ…ま、悪戯くれぇはいっか。こんな格好で布団入ってくるのが悪ぃわ。(瞼を伏せながら髪を梳き撫でる感触を味わっていたものの、穏やかな寝息が鼓膜を揺らせば頭を上げて薄く笑みを浮かべ。眼下に広がる相手の白い肌を見つめながら舌舐めずりをする様に唇に舌を這わせ、首から肩に掛けて大きめな鬱血痕を幾つか残してから徐に恋人の左手を手に取り指輪の上から口付けを贈って。一頻り満足した所で再び寝転がり相手の背中へと腕を回して微睡み)…今度こそおやすみ、悠チャン。ゆっくり寝てくれよな。

──お、来た来た。…どーも、お疲れさんっす。(ベッドから抜け出してシャワーを浴び終えた所でインターホンが鳴れば、実家からの郵便だと想像に容易く。湯上りの身体に申し訳程度にデニムだけ穿いて玄関先で受け取ると、重量感のある段ボールをリビングに置いては開封し始め、不思議そうに箱の中を覗く愛猫の頭を撫でて)ハハ、悪ぃココ。お前のモンはねぇんだわ。

…ウケる、また随分とデカい虫が居たもんだ。（インターホンの音で目覚めれば寝ぼけ眼で上体を起こし、欠伸混じりにカットソーとデニムを纏い洗面台へと。鏡に映る首筋の痣に思わず吹き出せば、簡単に身形を整えリビングへと。上裸姿の恋人の背中に吸い寄せられる様に歩み寄れば、肩に手を載せ抱き付きつつ段ボールの中身を覗き、傍の猫と目を合わせ）おはよーございます。昨日部屋に蚊が居たかもなんですけど、浩二さん刺されませんでした？…お、通販ですか？何だろねー、ココちゃーん。

ん、おはよ悠チャン。…ん、あぁ。ちと気の早い蚊だなぁ。かわい子チャンが色っぽい格好してたから誘われたんじゃね？(段ボールに収まっていたアルバムやDVDを取り出していた所で恋人の体温を感じては首だけで振り返り。一緒に送られてきた手作りと思しきクッキーの入ったタッパーを手渡すと用意していたTシャツを纏いスマホを手に取り、母親に向けて簡素なメッセージを送りながら)俺のアルバム。…なぁんか他にも色々入ってたけど。実家顔出すっつったらちびっ子居るし今の時期不安だから来るなって言われたからさぁ、送って貰ったんだわ。

ああ、蚊が俺に惹かれてくれたってならしゃーないですね。美味しく食べてくれたなら何より。──…わあ、アルバムだー！待ってました。しかもＤＶＤまで。やったね。（恋人の体温と湯上りの香りを暫し堪能するも、目に入った品に感嘆の声を揚げては目を輝かせて。差し出された品を受け取り蓋を開けクッキーを１枚取り出しては、口に運び表情を緩めて）これママの手作りですか？１枚いただきまーす。…んー、美味しい。──さてさて、やっと浩二さんの若い頃が拝めるんですね。えー、ドキドキしますー。ねー、ココちゃーん。

フハ、そりゃもう。そんだけ刺しときゃ蚊も大満足だろ。──…このDVDなぁに入ってんだろ。多分なんかの試合とかだろーけどふっつーに見るの怖ぇから後回し。(テーブルの上に中身を広げ、空になった段ボールを畳めば送られてきた返信に目を通し。クッキーの型を持ちながらあどけない笑顔をこちらに向ける姪の写真を相手に見せてはクッキーを一枚摘み上げ口の中に放り、アルバムを手に取りソファーへと腰掛け)あー、多分──…あ、いや。姪っ子が初めて作ったクッキーだって。ほれ、かわいーだろ。…俺も食お。──いやー、久々に見るわ、こんなん。

格闘技の試合ですかね。それかカメラ回しがちで言いますと、産まれたての時やら学芸会だったりして。動く浩二さんも早く観たいなー。（掲げられた写真を穏やかな表情で確認しては、無垢な笑顔に胸がきゅんとするのを自覚しつつ口元を手で隠しながら目尻を下げて。クッキーを１枚取り出してから蓋を閉めると、ソファーへと向かい相手の隣に着座してから追加で口元に菓子を差し出し）やっば、マジ可愛いっすね。上手にできましたねー。じゃあ、姪っ子ちゃんの愛情が詰まってるんで後は浩二さんが食べてくださいね。はい、あーん。──やった、早く観ましょー。楽しみ過ぎる。

…学芸会とか記憶の彼方よ。ウチのお袋、面白がってなんでもかんでもカメラ回すからなぁ。──だろー？自慢の隠し子。…ん、美味いけど…流石にこんな食えねぇわ。(相手の反応を確認してはスマホを仕舞い、口元に差し出されたクッキーを咀嚼してはもう限界といった風に手を振り。アルバムを開けば中身は年代別に整理をされていて最初のページには乳児期の写真が所狭しと並び、ハッキリとした顔立ちと二重の目や厚めの唇は今よりも海外の血の色が濃く出ていて、似たような顔立ちの兄にぎこきなく抱き上げられ、体をのけぞらせ顔を真っ赤にして泣いているてる写真を目に留めては)…うーわ、これやべぇ。ガン泣きじゃん。

お母さん浩二さんが可愛くてしょうがなかったんですね。俺もこれからカメラでも買って、お兄さんを撮影して歩こうかしら。…ええ、マジで可愛すぎて俺も隠し子欲しくなりました。生憎兄貴は独身なんでまだまだ先ですけど。じゃあ折角なんで、後で可愛子ちゃんのクッキー一緒に頂きましょ。──えー、めっちゃ可愛い。マジでハーフの赤ちゃんって感じっすねー。天使やー。（アルバムを開く所作をわくわくと眺めては、天使宛らの赤ん坊時代の姿にうっとらと感嘆の息を吐き、両頬を手で覆いつつ１枚１枚の写真をじっくりと見据えて。噂の兄の姿に目を留めては、血の繋がりを感じる顔立ちに目を細めるも示された泣く姿には肩を揺らしながら笑い。徐にスマホを手に取ると数枚の写真をカメラに収め）お兄さんも可愛いっすね。てか似てる。…あっは、この頃から浩二さんの方が立場強かったんすかね？マジ癒されますなー…えい、お写真いただきっ。

ホームビデオが好きなんだよ、あとイベント事。そーゆー意味じゃ悠チャンも写真撮るの好きだもんな。…ハハ、んじゃお兄さんより先に悠チャンが指輪付ける事になんじゃねぇの？ん、そーしよ。──あー、でもガキの頃は巻き毛だったし結構ハーフに間違えられたわ。今はこの頃に比べりゃ大分日本人寄りの顔になったけど。(写真に注視すわる恋人の姿を微笑ましく見遣りながら自分の顔を確かめる様に軽く顎を撫で、シャッター音が止まった所で幾つかページを捲り幼児期の写真に変わった所で手を止め。写真に写る姿の大半が行儀良くカメラに柔らかい微笑みを向ける巻き毛の兄の横で、スポーツ刈りに近い髪型で如何にも悪童といった風に生意気に顔を顰める幼い自分の姿に苦笑を漏らし)マージでチビの時は自分でも似てると思うわ。──あー、でも…。兄貴が小学校上がったくらいか、これ。こんくらいからはもう全然、クソガキ。

凄いなぁ、ビデオも撮影した後が手掛かるでしょうし、まめなお母さんっすね。でもってイベント好きってのが何とも浩二さんのママって感じっすわ。…あっは、そっすね。俺は問題なくいけば来年には指が輝いてるんで。尤も、今の指輪でも十分幸せですけど。──ほーんと、ラテンの血万歳っすね。こんなにピュアな顔してたのに、男前に変貌を遂げるって信じられないっすわ。（写真の中の相手と今の姿を交互に見比べては、その変化に笑いを溢し言外に愛を伝えるべく口付けを贈り。次ぐ写真の変化には声を立て笑うと、胸に溢れる愛しさの儘写真の相手の頭を指で撫でて再びスマホで写真に収めて）…あっは、本当だ。この辺りからはめっちゃ浩二さんっすね。確かにお兄さんは天使の儘だー…でもって浩二さんはこの年齢にして既に貫禄がある。可愛いなぁ。

ま、その辺はあの人の血のせいだわな。親父も祭りとかはやっぱ好きだけど、イベントん時のお袋の力の入れ具合はやべぇ。…やーだよ、今のは俺がちゃんと付けらんねぇし。虫除け程度の意味しかねぇよこんなん。──でもガキん頃なんて大抵ピュアな顔してんだろ。悠チャンとかちっこい時の写真笑顔多そう。(寄せられた唇を迎え入れる様に首を動かしてから恋人の幼少期を想像して頬を緩め。嬉し気にに写真を見つめる横顔に見惚れては気を引く為に相手の頬を撫ぜつつも、兄への言葉には些か不服そうに片眉を上げて)そりゃこんな顔してりゃあ立派に御山の大将にもなるわなぁ。つか…兄貴こんなツラしてっけど、俺よりイイ性格してんぞ。口喧嘩に勝てなくて俺が手ぇ出すくらいだったし。アイツは外ヅラ良いだけ。

パパも祭好きっすか。なら、親からしっかりパリピ受け継がれてますね。あー、誕生日とかに頑張ってくれる感じっすかね？良いママですし、可愛いっすね。──ははっ、浩二さんも指輪楽しみにしてくれてんのは嬉しくてしゃーないっすわ。なら、遠慮なくお言葉に甘えれます。…あー、俺はもう大体はっちゃけた様な写真ばっかりっすね。でも浩二さんみたいに天使って感じじゃなくて、いかにも赤子、みたいな感じっすわ。（頬を撫でる手に穏やかに横目でそちらを見ては、妬いたとも取れる顔があり擽ったそうに笑いを溢して。スマホを一度ソファーへと置くと体をきちんと相手の方へと向け、首に腕を回し身を寄せながら後頭部を撫でて）へぇ…お兄さんもやっぱ血筋ちゃんと引いてるんすね。綺麗な人が口喧嘩強いと勝てる気しないっすわ。浩二さんのボスっぽいところ、好きですよ。こんなに小さい頃から貫禄があるって事は、根っからの男前って訳ですね。益々惚れちゃいます。

ハハ、そーね。俺が楽しい事好きなんはガキの頃の記憶が強ぇのかも。誕生日とかハロウィン、クリスマスとかなぁ。俺らがデカくなってからは物足りなさそうだったけど、最近は孫に矛先向いてるわ。──そりゃな。勢い任せっつーのも良くねぇから自分で待てしてるだけで、周りの事なぁんも気にしなくて良いってんなら別に直ぐにでもやりてぇもん。…えー、良いじゃん。俺ガキの頃なんてご覧の通り顰めっ面か試合に負けてベソかいてるのが大半だし。赤ん坊の悠チャンなんて問答無用で可愛い評価に決まってんじゃねぇの。(宥める様な相手の所作に自分の幼稚な嫉妬心を自覚しては気恥ずかしさが募るものの、続く言葉に思わず破顔してはアルバムをテーブルへと追い遣ってから戯けた口調で背中に腕を回し)ムカつくよなぁ、多分地頭の出来がちげぇんだわ。ま、気性の荒い所は兄貴と俺で分割したから俺らに比べりゃ弟は大人しい方。…フハ、ボスって。んじゃまぁ、そろそろ男前に成長した浩二クンのお時間っすかねぇ。