No title（〆）

──あぁ、うん。起きた。…シャツ貸して。あの人が喜びそうな派手めのヤツ。(起き抜けに見慣れない天井が視界に映り、急遽同僚の家に泊まった事を思い出しては掛けられた声に返答して。メッセージの受信を知らせてくるスマホを片手に身支度を済ませ『昨日は帰れなくて悪ぃ。ちと急な仕事入って、打ち合わせ兼ねて同期ん所泊まってた。当然だけど浮気じゃありませーん。今日は出来るだけ早く帰るよ、愛してる。』と恋人へと送信してから差し出された赤いストライプシャツにため息を漏らしながら着替えて)

（一頻りの家事を終えてから日が沈むまで惰眠しては、真っ暗な寝室で恋人からの連絡を確認し『浮気なんて文字すら浮かびませんでしたわ。今日は早く帰って、早く休んでおきましょ。愛してますよ。』と送り、大きく欠伸を掻いてから再び眠りへと就き）

おー、んじゃまた来月なぁ。(仕事を終え社内の喫煙所で一服しながら同僚と互いの仕事を労う様に2、3言葉を交わしては緩く手を振り退社し。浮ついた足取りで人通りの少ない道を歩き、恋人からのメッセージを確認して『これからいくらでも休めるから平気』と綴り、ニヤつく猫のスタンプを添えて。自宅前へと着けば意気揚々と扉を開け)ただいまぁ。

──あー…寝てんのか。(帰宅して静かな自宅に違和感を覚えてはリビングを覗いてから寝室へと進み。ベッドの中で穏やかな寝息を立てる恋人を見つけると小さく呟き、その額に口付けを落としては傍らに腰を下ろし、穏やかな表情で片手で恋人の髪を梳きながらスマホを見つめて)

…おかえりなさーい…──んー、寂しかったですー。ゆーくんまた知恵熱出しちゃいましたー。（解錠する音で目を覚ませば、微熱を自覚しつつ欠伸を噛み殺し寝ぼけ眼で玄関へと赴き。寝起き特有のふわふわとした雰囲気を纏いつつ肩口へと腕を回し抱擁しては、嬉しげに唇に弧を描き暫し体温を堪能し。ゆっくりと離れ、見慣れないシャツへと目を留めては一笑し）わっ、浮気相手からの贈り物ですか？悔しいけど似合ってんなー。

すんません、擦れ違っちゃいましたね。俺帳尻やるんで、こっちは蹴ってくださいね。

（深い眠りへと就き、相手の帰宅に気付く事なく熟睡。自身のスマホに設定したタイマーが鳴り響き飛び起きる様にして覚醒しては、想定外の恋人の姿に目を見張り双眸を擦ってから再びそちらを見て。両頬を叩いたところで漸く夢ではないと確信しては、嬉々として首元に腕を回し身を寄せて）わーい、おかえりなさーい。…あり、いつ帰って来たんですか？熟睡し過ぎて気付きませんでしたわ。いよいよやばいなー…昨日あんまり寝れなかったからかしら。

(SNSを確認している中で突如鳴り響くけたたましい音にビクリと肩を震わせてからそちらを見つめ、恋人のスマホの音だと理解すれば起き上がる人影に破顔して端末をヘッドボードへと置き。自分の存在を確かめる様にこちらを見つめる瞳にくつくつと喉を鳴らしながら寄せられた身体を受け止める為に背中へと腕を回して、まるでとっておきの秘密を教える子供の様に双眸を細めて告げるは)ん、ただいまぁ。…あー、悪ぃ。昨日連絡してやらなかったから心配掛けたよなぁ。でももう平気。…ふ、明日から暫くウチに居れるよ。その分昨日今日めーちゃくちゃ大変だったけど。



悪ぃ、せっかちな性格でちまったわ。気ぃ遣わせてごめんなぁ。蹴ってって言われたけど、やっぱ可愛い可愛い恋人には感謝の気持ちを伝えたいからそんだけ許して。帳尻合わせあんがとなぁ。んじゃ、これは蹴ってくれな。

いいえー、浩二さん疲れてないかなーとかは心配でしたけど、その他は全然。連絡した通り、浮気だなんて文字すら頭に浮かばないくらいには安心して待ってました。只々、浩二さんが隣に居なくて寝付きが悪かっただけですよん。…お、遂に全部テレワークになりました？──…良かったー、本当はお兄さんが外に出るのは心配で気が気じゃなかったんです。じゃあー、念願のお仕事のお邪魔しなきゃ。コーヒー運ぶ振りしてぎゅーしに行きます。昨日今日とお疲れ様でした。（相手が嬉しげな表情をすれば、笑みを湛えた儘話を促す様に僅かに首を傾げ。思わぬ朗報に喜びが胸中へと広がるも、それよりも先に安堵の息が溢れれば肩口へと額を預け本音を溢し。徐に顔を上げ満面の笑みを浮かべては、頬へと小さく音を立て口付けを贈り）

ハハ、今日の仕事はちとキツかったけど疲れは今吹っ飛んだから平気。俺も悠チャン抱き枕に出来無かったし、慣れねぇ布団で寝たから夢見悪かったわ。今日はちゃあんと一緒に寝よ。…フハ、テレワークですら無くって実質休業。店舗もほぼ全部休みだしウチの部署やる事無くなったからさぁ。ま、大口顧客から電話とか入りゃ出るけど、今日面倒なのは終わらせてきたし基本ねぇから安心して。(機嫌の良さを隠す事無く寄せられた頭を慈しむ様に撫でながら頬を寄せては満足気に鼻から息を吐きながら緩く目を閉じて。相手の動きに合わせて撫でる手を止め瞼を開けば頬への口付けを横目で見遣り、首を回してはお返しとばかりに鼻先へとキスをして。ジャケットを脱ぎつつ緩慢に立ち上がっては、暫く着ることの無いであろうスーツを脱ごうとハンガーを手に取り)──いやぁ、夢のニート生活よ。やべぇな…髭でも伸ばすかな。

（鼻先への口付けを睫毛を伏せ享受しては、前歯の先を覗かせる様に笑みを深めて。ジャケットを脱ぐ仕草を惚れ惚れと眺め、相手の言葉に相槌を打ちつつ傾聴しては、穏やかな表情で緩慢に腕を開き強請る様に視線を注ぎ）…そっか。じゃあ浩二さんがキツかった日はヒモ的にはやっぱり癒したいんで、こっちに来てくれますか？…あーね、俺も出先じゃ寝れない派っすわ。しこたま寝た筈の自分の家のベッドすら、最早あんまり安眠できないですもん。…いやはや、言い換えればどこもお店開いてなくてお買い物行けないって事ですか。んー、折角浩二さんがお休みになってもデートに行けないのかー…ぴえん。感染症が終わったら、バイクで海に行きましょうね。──…髭かぁ。似合いそうですけど、ちゅーした時に痛いのは嫌です。却下で。

(ジャケットをハンガーへと掛け、ネクタイを緩めようとした所で恋人に呼ばれてはすんなりとそちらに戻り対面するべく足をベッドへと載せ、猫の様に軽く顎を上げては気障ったらしく片側の口角を上げて)…へぇ、それは悠チャンが脱がしてくれるっつー事で良いんかなぁ。ネクタイ締められるのもイイけど緩められるのも唆るよな。ハハ、そりゃこんだけウチに入り浸ってりゃあな。正直こんな来てくれるとは思って無かったけど、鍵渡して正解だったわ。…悠チャン知ってる？世の中にはお家デートっつー言葉があるらしいんですよぉ。海はもちろん行くけど、とりあえず暫くはネトフリとかで映画しこたま観ながら昼間から酒飲もうぜ。──…チッ。でもさぁ、俺顎髭とか生やしたら箔付くと思うんだよなぁ。しかも見れるのお前だけ。どーよ、悪かねぇだろ？

ははっ、また随分とセクシーな方向に話が進んだもんだ。ネクタイを外すのは俺も好きですよ。ベタにそれで持ち主の手を縛っちゃうのも。…まあ今日はしないですけど。──あれれ、ネックレスが薄くなってきましたね。でも暫く誰かに見せ付ける必要もないんで、いらないですかね？（気障ながらもサマになっている所作に擽ったい感情を覚え、口許を手で覆いつつ愉快げに声を笑っては、両手をネクタイの結び目へと運び丁寧に外して。次いで勿体ぶる様にシャツのボタンを１つ１つゆっくりと全て外しては、薄くなり掛けたキスマークを指でなぞりつつ問いかける様に視線を送り）毎日がお家デートだからなぁ。でも一緒に映画観たりは最高に魅力的っすわ。何やかんや付き合ってからゆっくりして過ごす時間って限られてたんで、もっともっと浩二さんに惚れ込みそうです。これ以上ってない筈なのに。──あっは、口が上手いなぁ。俺だけって言葉、大好きです。よし、じゃあ髭伸ばしましょ。

だぁってスーツ皺になんじゃん。ま、どーせ暫くは着ねぇし良いんだけどさ。ハッ、いいねぇ…俺も好きよ、そーゆーの。なぁんもしてやんねぇで只俺の上でキャンキャン吠えてるの見るの楽しいし。──フハ、それこそ昨日同期に見せつけてやったわ。クッソ弄られましたとさ。…でもいーの？俺から首輪取っちまって。目ぇ離した隙に脱走するかもよ？(厭らしい笑みを携えた儘に下卑た言葉を口にしては冷めた視線で相手の手の動きを見つめる姿はふてぶてしい他なく。続く問いには声に笑いを一層滲ませながら片眉を上げ煽る様な表情を作っては問いを重ね、ダメ押しとばかりに相手の耳元の髪を一束手で掬って)ま、俺映画の好みも偏ってるから悠チャンのオススメありゃそっちの方が良いかもだけど。ゆっくり過ごせるってなると今までお前に触れたくてしゃーなかったから…いや、今もそうだけど。時間がたっぷりあるってなりゃ選択肢は広がるよなぁ。──お、やった。んじゃ明日っから伸ばすか。…あ、でもマジでキスん時嫌になったら言って。速攻で剃るわ。

スーツなら俺が愛情込めてアイロン掛けるんで、いつだって皺にして貰って構わないですよ。──…ほーんと趣味合いますね。俺も浩二さんを縛って、命令される事ぜーんぶ言う事聞く遊びがしたかったんです。あははっ、やっぱり首輪見られちゃいましたか。会社で変な噂が流れない事を祈っておきます。でもって、明日付けさせて貰います。（シャツを肩口から下ろしつつ髪に触れる手に敵わないとばかりに小さく笑っては、軽く衣服を畳みネクタイと併せてヘッドボードに載せ。ふと強い眠気に襲われれば上体を倒し）…やっべ、また眠くなっちった。今日はパンイチで寝てくださいね。んー、寝たくないけど寝ます。浩二さんも蹴って休んじゃってくださいね。おやすみなさい。愛してますよ。

んじゃ、折角だし休みの間にスーツ皺になるような遊びいっぱいするかぁ。──ハハハ！…ロデオマシーンになってやるから上手く乗りこなせよ、カウボーイ。まぁほぼ1ヶ月会社いかねぇし、同期だから多分平気。噂流されたとしても『俺の恋人独占欲強くって』って惚気てやんよ。(眠たげに横たわる恋人を見ては愛おしさに眦を下げつつ冗談混じりに立ち上がり、ベルトを緩め下着姿になれば抱き寄せる様に寝そべり。額に音を立てて口付けを贈っては微睡み、次第に深い呼吸へと変わり)ハイハイ、お前俺の裸好きだよなぁ。…ふ、もしかして身体目当て？…ん、暫くはいくらでも構ってやれるから眠い時はちゃあんと寝てくれな。おやすみ、悠チャン。愛してるよ。今日も遅くまであんがと。

（セットアップを纏いきちんと目の姿でアルバイトから帰宅を果たすと、真っ先に手洗いうがいをしに洗面台へと。入念に除菌をしリビングへと入ると室内へと視線を滑らせ）ただいまでーす。来週から週に何回か本社アルバイトになりましたー。因みに来年から本社勤務も確定です。ぴえん。

(無精髭にTシャツの極めてラフな格好で暫く振りの家事を済ませ、合間合間にベランダでタバコを嗜んでから愛猫を膝へと載せて読書をしていれば聞こえてきた物音に膝から降りて緩慢にリビングの扉口へと歩いて行く猫を一瞥して。程なくして恋人の声が耳へと届けばしおりを挟んだ文庫本を傍へと置き緩んだ笑みを向けて)おかえり、悠チャン。…お、マジか。インターンみてぇな感じかな、この時期に大変だろーけどいい事じゃねぇの。おめでと。…ま、今日は疲れただろ。飯は？なんか簡単なモンなら作るけど。

ココちゃん良い子だねー。ただいまー。（視界に恋人の姿を捉えると表情を緩ませるも、足元に猫が擦り寄って来れば甘い声を揚げ抱え上げて頬擦りをし。一頻り満足したところで猫を抱いた儘恋人の元へと歩み寄れば、腿へと腰を下ろし伸びつつある髭を指の平で撫でて愉快げに笑い）凄い、宣言通り伸ばしてますね。ザラザラだー。──…あー、早い話店の稼働が止まったんで、部署の人達の余裕がある内に修行に来いって早められた感じっすわ。唐突も唐突、喜ぶ暇も無くってトコっすよ。…ご飯より今は浩二さんとイチャイチャしたいかな。俺っち飯は食わなくても生きれますけど、お兄さんがなきゃ死ぬんで。

(愛猫に出迎えられる恋人の普段は見る機会の少ない、その姿を微笑ましく見てから、距離を詰めてくる相手を迎え入れるべく片手を伸ばして。太腿に体重が掛かれば腕の中の猫ごと纏めて抱く様に腕を回し、自分の句に対して返されたつれない鳴き声にくつくつと喉を鳴らし、顔の輪郭を這う恋人の指を掴み自らのものと絡めながら生えかけの髭を頬へと摺り寄せ)ん、鼻下はイマイチだったから顎だけちょい伸ばそうかなって思って。ただ、お姫様には不評なんだよなぁ。早速心折れそうだわ…なぁ、ココ？意外とクセになるかも知れねぇのにさぁ。──なるほどなぁ、心の準備もなくっつーのはちと可哀想だな。ま、無理せず頑張っておいで。帰ってきたら手放しで褒めてやるし、愚痴でも何でも聞いてやるから。…飯も食わなきゃ死ぬっつの。俺が家に居る間に悠チャン肥えさせようと思ってたのに。まぁ今日は一日目だし、レアな浩二クン堪能させてやんよ。